説明

工程剥離紙

【課題】200℃以上の温度下で行われる合成皮革製造工程において使用可能であり、繰り返し使用してもコート層の脱落がなく、且つ表面光沢のあるエンボス付離型紙を提供する。
【解決手段】離型紙は、基体とその上に設けたエンボス付離型層からなる。エンボス付離型層は、基体上にポリオレフィン樹脂に活性シラン架橋基を含有した樹脂組成物層を設け、この塗料組成物層にエンボス加工を施した後水分架橋により更なる耐熱性を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成皮革製造用の工程離型紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、合成皮革製造の際に用いるエンボス付離型紙、即ち工程離型紙として、ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1重合体等のポリオレフィン樹脂からなるコート層を有する離型紙が用いられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特公昭64−10656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらポリオレフィン系コート層を設けた離型紙においては、ポリオレフィン樹脂を基体に溶融押し出し塗工する際に、表面形状の異なったクーリングロールに塗工層を接触させることにより鏡面やマット調の表面を形成できるという利点を有する反面、コート層の樹脂の軟化点以上の温度では使用不能であるという欠点を有する。
本発明の課題は、200℃以上の温度下で行われる合成皮革製造工程において使用可能であり、繰り返し使用してもコート層の脱落がなく、且つ表面光沢のあるエンボス付離型紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、上記の課題を解決するもので、基体とその上に設けたエンボス付離型層からなる離型紙において、エンボス付離型層は、基体上にポリオレフィン樹脂に活性シラン架橋基を含有する樹脂組成物層を設け、この樹脂組成物層にエンボス加工を施した後、水分架橋させた、更なる耐熱性を有することを特徴とする離型紙を要旨とする。
【0005】
本発明において、樹脂組成物層は、好ましくはポリオレフィン樹脂100重量部に対して活性シラン架橋基を5〜80重量部含有する。活性シラン架橋基含有量が5重量部未満のときは、充分な耐熱性が得られない。一方活性シラン架橋基含有量が80重量部よりも大きくなるとエンボス加工性が悪くなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の離型紙は、基体とその上に設けたエンボス付離型層からなる離型紙において、エンボス付離型層は、基体上にポリオレフィン樹脂に活性シラン架橋基を含有する樹脂組成物層を設け、この樹脂組成物層にエンボス加工を施した後、水分架橋させた、更なる耐熱性を有するものであるので、200℃以上の温度下で行われる合成皮革製造工程において使用可能であり、賦型性は良好であり、繰り返し使用してもエンボス付離型層の脱落がなく、且つ離型層は従来のポリオレフィンからなる離型層と比べて遜色ない表面光沢を有するという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明の離型紙を示す。また、図2は本発明の製造過程の、エンボス加工前の状態を示す。
【0008】
本発明の離型紙は、図1に示すように基体1とその上に設けたエンボス付離型層2からなり、エンボス付離型層2は、基体1上にポリプロピレン、4−メチルペンテン−1重合体(TPX)等のポリオレフィン樹脂に活性シラン架橋基を含有する樹脂組成物を塗布し、次いで冷却して、図2に示すように樹脂組成物層3を形成し、次いでこの樹脂組成物層3に所定の温度に加熱したエンボスロールを用いてエンボス加工を施してエンボス模様4を形成した後、水分架橋させることにより、更なる耐熱性を付与したものである。
【0009】
本発明において、樹脂組成物層2は、好ましくはポリオレフィン樹脂100重量部に対して活性シラン架橋基を5〜80重量部含有する。活性シラン架橋基の含有量が5重量部未満のときは、充分な耐熱性が得られない。一方活性シラン架橋基の含有量が80重量部よりも大きくなるとエンボス加工性が悪くなる。
【0010】
本発明において、ポリオレフィン樹脂に3次元架橋された活性シラン架橋基を含ませ、エンボス加工を施した後水分架橋することで、合成皮革製造用工程離型紙に要求される耐熱性が付与される。
【0011】
本発明において、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1(TPX)等のポリオレフィン樹脂に活性シラン架橋基を共重合もしくはグラフト重合法等により導入することにより、シラン架橋ポリマーが合成される。このシラン架橋ポリマーは、活性シラン架橋基が水分と接触することで下記の架橋反応を起こして網目状高分子を形成する。
【0012】
【化1】

【0013】
この反応により、本来樹脂の有する耐熱性よりも更に高い耐熱性が付与される。
【0014】
樹脂組成物は、活性シラン架橋基含有ポリオレフィン樹脂にその他添加剤として、帯電防止剤、顔料、分散剤、造粘剤、流動調整剤、無機質充填剤等を必要に応じて添加したものを混練し、基体1上にラミネートすることにより形成することができる。
【0015】
本発明において、前記樹脂組成物の塗工は、押出コティング法等の公知の方法の何れによってもよい。
【0016】
前記樹脂組成物の塗布量は、5g/m2から100g/m2が適当であり、好ましくは30g/m2から80g/m2である。塗布量が30g/m2未満の場合は均一な塗工が困難になる。一方塗布量が80g/m2を越えるとコスト高となる。
【0017】
本発明において、基体1としては耐熱性のある中性紙、耐熱性が良い。この原紙は、合成皮革の製造に必要な温度に耐える高い耐熱性を有し、合成皮革の製造工程において5回以上の繰り返し使用に耐え、転写の過程で離型紙の伸び等を生ずることなく高い転写精度で離型紙の型を転写して風合いのある合成皮革を形成する。また、紙基体の坪量は、製品としての強度、合成皮革加工作業性、離型紙の繰り返し使用耐久性及びエンボス加工適性の面から100〜200g/m2であることが好ましい。坪量が100g/m2よりも低いと合成皮革の製造時にカールや波打ちが発生し易くなる。逆に坪量が200g/m2より高くなるとエンボス加工性が悪く、また離型紙が厚くなることによりその巻き径が大きくなって作業能率が低下する。
【0018】
また、本発明において、エンボス加工としては、エンボスロールで転写する方法による方法が一般的であるが、その他ベルト法、金型模様のプレス法等の加工法も適用可能である。
【0019】
次に実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
基体として中性紙(坪量130g/m2)を用い、活性シラン架橋基含有ポリオレフィン樹脂(PP系、密度1.13g/m3、活性シラン架橋基含有量約15%)を押出コーティング法により、60μの厚みにコーティングすることにより、エンボス前基体を作製した。その後、エンボス加工機(由利ロール機械製)を用い、紙柄として象柄を用いて130℃のエンボス温度でエンボス加工を行った。その後、湿度60%RH、気温30℃の環境下で24時間保管し架橋反応を完結させてエンボス加工紙を作製した。
【0021】
(比較例)
基体として中性紙を用い、その表面に押出コーティング樹脂として通常のポリプロピレンPP(密度0.9g/m2、融点157℃)を押出コーティング法により、60μの厚みにコーティングすることにより、エンボス前基体を作製した。その後、エンボス加工機(由利ロール機械製)を用い、紙柄として象柄を用いて130℃のエンボス温度でエンボス加工を行った。
【0022】
実施例のエンボス加工紙及び比較例のエンボス加工紙について塩化ビニールレザーの製造を行い、両エンボス加工紙の耐熱性を確認した。
【0023】
塩化ビニールレザーの製造:
塩化ビニール樹脂100重量部、錫系安定剤3重量部、加工助剤0.5重量部、炭酸カルシウム5重量部、MBS5重量部を混合した塩化ビニールゾルを作製した。この塩化ビニールゾルを実施例のエンボス加工紙及び比較例のエンボス加工紙の上にブレードコーターにより約50g/m2コーティングし、その後乾燥炉で約210°の温度下で3分間乾燥した。冷却後エンボス加工紙を剥がして塩化ビニールレザーを作製した。
【0024】
耐熱性の確認:
実施例のエンボス加工紙及び比較例のエンボス加工紙を用いて作製した塩化ビニールレザーの賦型性を確認することで両エンボス加工紙の耐熱性を比較した。その結果実施例のエンボス加工紙を用いて製造した塩化ビニールレザーの賦型性は良好であり、十分な耐熱性を有することがわかった。それに対し比較例のエンボス加工紙を用いて製造した塩化ビニールレザーの賦型性は悪く耐熱性が劣ることがわかった。
【0025】
以上の結果から活性シラン架橋基含有ポリオレフィンを水分架橋させることで通常のポリオレフィン系樹脂よりも更なる耐熱性を付与できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の離型紙は、ポリウレタン合成皮革、ポリ塩化ビニル合成皮革等の合成皮革の製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の離型紙の断面図である。
【図2】本発明の製造過程における、エンボス加工前の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 基体
2 エンボス付離型層
3 樹脂組成物層
4 エンボス模様


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体とその上に設けたエンボス付離型層からなる離型紙において、エンボス付離型層は、基体上にポリオレフィン樹脂に活性シラン架橋基を含有する樹脂組成物層を設け、この樹脂組成物層にエンボス加工を施した後、水分架橋させた、更なる耐熱性を有することを特徴とする離型紙。
【請求項2】
前記樹脂組成物層は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して活性シラン架橋基を5〜80重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の離型紙。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−264260(P2006−264260A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89440(P2005−89440)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】