説明

工程紙、工程紙用原紙、工程紙の製造方法、および工程紙用原紙の製造方法

【課題】シリコーンを含有する剥離層の耐溶剤性を改善する工程紙、工程紙用原紙、工程紙の製造方法、及び工程紙用原紙の製造方法を提供する。
【解決手段】工程紙10は、基紙30の少なくとも片面に下塗り層32を介して剥離層22が設けられており、その剥離層22がシリコーンを含有する紙である。この下塗り層32は、カオリンと、第1バインダと、第2バインダとを含有している。第1バインダは、ポリビニルアルコールを含有している。第2バインダは、ポリビニルアルコールによって予め乳化されたアクリル重合体を含有している。第1バインダに含有されるポリビニルアルコールの配合比は、カオリン100重量部に対し0重量部を超え20重量部未満である。第2バインダに含有されるアクリル重合体の配合比は、カオリン100重量部に対し15重量部を超え35重量部以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程紙、工程紙用原紙、工程紙の製造方法、および工程紙用原紙の製造方法に関し、特に、シリコーンを含有する剥離層の耐溶剤性を改善する、工程紙、工程紙用原紙、工程紙の製造方法、および工程紙用原紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工程紙とは、プリプレグ材料などを製造する際のキャリアとして用いられる剥離紙である。一般的な工程紙は、基紙と、下塗り層と、剥離層とを備える。基紙は、下塗り層や剥離層を保持する紙である。下塗り層は、工程紙が使用不能になる(使用不能になる原因は基紙に薬剤が侵入するためである)のを防止する。下塗り層はSBR(Styrene Butadien Rubber)と顔料とを含有することが一般的である。剥離層は、プリプレグ材料などに直接接触する層である。剥離層には、プリプレグ材料などを工程紙から容易かつきれいにはがさせることことが求められる。
【0003】
プリプレグなどの製造に工程紙を用いる場合、剥離層をシリコーンによって形成するのが一般的である。そのために、下塗り層にシリコーン溶液が直接塗工される。(このようにして塗工されたシリコーンを「ダイレクトシリコーン」と称する。
【0004】
下塗り層には耐溶剤性が必要である。耐溶剤性が必要なのは、下塗り層に塗工されるシリコーン溶液がトルエンその他の溶剤を含むためである。また、下塗り層には、剥離層に凸凹を生じさせないような高度な平滑性も要求される。
【0005】
さらに、工程紙には、繰り返し使用適性や剥離性が要求される。繰り返し使用適性とは、何度も繰り返して使用することが可能な程度の耐久性を意味する。剥離性とは、プリプレグなどの成型品と工程紙とが簡単に剥離する性質を意味する。
【0006】
特許文献1は、工程紙を開示する。この工程紙は、基紙の両面に顔料塗被層および剥離層を積層した面の平滑度が60〜200mmHgであることを特徴とする。ここで言う「平滑度」は、スムースター平滑度計による測定値である。
【0007】
特許文献1に開示された発明によると、エポキシ樹脂層が形成された工程紙の裏面を加熱するとそのエポキシ樹脂を均一に加熱でき、その工程紙の裏面に筆記ができ、かつ、炭素繊維強化樹脂を積層して加熱成型しても強度の低下を防止できる。
【0008】
特許文献2は、工程紙を開示する。この工程紙は、基紙の少なくとも片面に剥離層が設けられたものである。この剥離層と基材との間には下塗り層が設けられている。下塗り層は、水溶性高分子100重量部に対し、顔料を0〜400重量部、アクリル樹脂および/またはスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを10〜200重量部含有している。アクリル樹脂および/またはスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスのガラス転移温度は、いずれも−50〜20℃である。
【0009】
特許文献2に開示された発明によると、ポリエチレンラミネートを必要とせず、直接シリコーンなどの有機溶剤溶液を塗工することができ、かつ、ラベル印刷時でのシートカット時に断裁面が毛羽立つことや紙粉の発生を防止できる。
【0010】
特許文献3は、両面に防湿層を有する原紙の少なくとも片面に剥離処理を施したプリプレグ用工程紙を開示する。このプリプレグ用工程紙は、JIS(Japanese Industrial Standards) Z 0208に準拠して測定した透湿度が、200g/m・24時間以下であることを特徴とする。
【0011】
特許文献3に開示された発明によると、吸湿した場合であってもプリプレグが浮いて剥がれることを防止でき、かつ、寸法安定性を向上させることができる。
【0012】
【特許文献1】特開平8−174767号公報
【特許文献2】特開平10−131094号公報
【特許文献3】特開2005−220482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1〜3に開示された発明では、剥離層にシリコーンを含有させると、セラミックシートの製造にそれらの発明にかかる工程紙を利用できないという問題点がある。その原因について以下に具体的に説明する。
【0014】
セラミックシートとは、携帯電話のコンデンサやIC(Integrated Circuit)基板などを製造する工程における中間材料のことである。セラミックシートは、グリーンシートあるいは生シートなどとも呼ばれる。図2を参照しつつ具体的に説明すると、セラミックシートの製造方法は、次に述べる3つの工程を経る。第1の工程は、工程紙12の表面にセラミックスラリーを塗工し、そこにセラミック層40を形成する工程である。第2の工程は、そのセラミック層40の表面に電極42を配置する工程である。第3の工程は、工程紙12とセラミック層40とが剥離される工程である。このとき、セラミック層40および電極42はセラミックシートとなる。その後、セラミックシートは、ダイシングや焼結などを経てコンデンサとなる。一方、剥離後の工程紙12は再度セラミックシートの製造に用いられる。一般に、工程紙12に対して、10回程度繰り返して使用可能なことが求められる。
【0015】
ところが、従来において、剥離層がシリコーンを含有する工程紙を10回程度繰り返して使用することは困難であった。10回程度繰り返して使用することが困難なのは、剥離層の耐溶剤性に原因がある。シリコーンはトルエンなどの溶剤に溶けやすい。これに対し、セラミックシート層となるセラミックスラリーにはトルエンその他の溶剤が含まれている。その結果、セラミックスラリーに含まれたトルエンによって剥離層が脆弱化する。従来においてこの問題を解決するには、シリコーンではなくアルキド樹脂(ポリエステル樹脂)を剥離層が含有する工程紙を用いるしかなかった。しかし、アルキド樹脂はシリコーン樹脂に比べ高価である。そこで、剥離層がシリコーンを含有する、セラミックシート製造用の工程紙が要望されている。
【0016】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、シリコーンを含有する剥離層の耐溶剤性を改善する工程紙、工程紙用原紙、工程紙の製造方法、および工程紙用原紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のある局面に従うと、工程紙は、基紙の少なくとも片面に下塗り層32を介して剥離層22が設けられており、剥離層22がシリコーンを含有する。下塗り層32は、カオリンと、第1バインダと、第2バインダとを含有している。第1バインダは、ポリビニルアルコールを含有している。第2バインダは、ポリビニルアルコールによって予め乳化されたアクリル重合体を含有している。
【0018】
第1バインダに含有されるポリビニルアルコールの配合比は、カオリン100重量部に対し0重量部を超え20重量部未満である。第2バインダに含有されるアクリル重合体の配合比は、カオリン100重量部に対し15重量部を超え35重量部以下である。
【0019】
また、上述した第1バインダの配合比が、カオリン100重量部に対し5重量部以上10重量部以下であることが望ましい。この場合、第2バインダの配合比は、カオリン100重量部に対し30重量部以上35重量部以下であることが望ましい。
【0020】
第1バインダの配合比がカオリン100重量部に対し5重量部以上10重量部以下であり、かつ、第2バインダの配合比がカオリン100重量部に対し30重量部以上35重量部以下であると、セラミックシートの製造に何度も利用できるだけでなく、剥離層22が下塗り層32からはがれにくくなる。
【0021】
本発明の他の局面に従うと、工程紙用原紙は、基紙の少なくとも片面に下塗り層32が設けられているものである。この下塗り層32は、カオリンと、第1バインダと、第2バインダとを含有している。第1バインダは、ポリビニルアルコールを含有している。第2バインダは、ポリビニルアルコールによって予め乳化されたアクリル重合体を含有している。この工程紙用原紙は、シリコーンを含有する剥離層22を下塗り層32の上に設けて工程紙とするためのものである。
【0022】
第1バインダに含有されるポリビニルアルコールの配合比は、カオリン100重量部に対し0重量部を超え20重量部未満である。第2バインダに含有されるアクリル重合体の配合比は、カオリン100重量部に対し15重量部を超え35重量部以下である。
【0023】
本発明の他の局面に従うと、工程紙の製造方法は、下塗り塗料調製工程と、下塗り層形成工程と、剥離層形成工程とを備える。下塗り塗料調製工程は、下塗り塗料を調製する工程である。下塗り層形成工程は、下塗り塗料を基紙に塗ることで下塗り層32を形成する工程である。剥離層形成工程は、下塗り層32の上にシリコーン溶液を塗ることで剥離層22を形成する工程である。
【0024】
この下塗り塗料調製工程は、第1添加工程と、第2添加工程とを有している。第1添加工程は、カオリンと第1バインダとを水に添加する工程である。第2添加工程は、水に第2バインダを添加する工程である。第1バインダは、ポリビニルアルコールを含有している。第2バインダは、ポリビニルアルコールによって予め乳化されたアクリル重合体を含有している。第1バインダに含有されるポリビニルアルコールの配合比は、カオリン100重量部に対し0重量部を超え20重量部未満である。第2バインダに含有されるアクリル重合体の配合比は、カオリン100重量部に対し15重量部を超え35重量部以下である。
【0025】
本発明の他の局面に従うと、工程紙用原紙の製造方法は、下塗り塗料調製工程と、下塗り層形成工程とを備える。下塗り塗料調製工程は、下塗り塗料を調製する工程である。下塗り層形成工程は、下塗り塗料を基紙に塗ることで下塗り層32を形成する工程である。
【0026】
この下塗り塗料調製工程は、第1添加工程と、第2添加工程とを有している。第1添加工程は、カオリンと第1バインダとを水に添加する工程である。第2添加工程は、水に第2バインダを添加する工程である。第1バインダは、ポリビニルアルコールを含有している。第2バインダは、ポリビニルアルコールによって予め乳化されたアクリル重合体を含有している。第1バインダに含有されるポリビニルアルコールの配合比は、カオリン100重量部に対し0重量部を超え20重量部未満である。第2バインダに含有されるアクリル重合体の配合比は、カオリン100重量部に対し15重量部を超え35重量部以下である。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る工程紙、工程紙用原紙、工程紙の製造方法、および工程紙用原紙の製造方法は、シリコーンを含有する剥離層の耐溶剤性を改善する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本発明について説明する。なお、以下の説明において「ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョン」とは、ポリビニルアルコールによって乳化されたアクリル系重合体エマルジョンのことである。そして、アクリル系重合体エマルジョンとは、乳化分散されているアクリル酸エステル共重合体のことである。
【0029】
《工程紙の構成》
図1に示したように、本実施形態にかかる工程紙10は、工程紙用原紙20と、剥離層22とを備える。工程紙用原紙20は、剥離層22を保持する紙である。剥離層22は、セラミック層40を保持し、かつ、セラミック層40を工程紙用原紙20から剥離する際にそれを容易にする層である。工程紙用原紙20は、基紙30と、下塗り層32とを備える。基紙30と下塗り層32との役割は、一般に広く知られている通りである。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。ちなみに、本発明にかかる工程紙用原紙20は、図1に示すものとは異なる構成を備えていてもよい。たとえば、下塗り層32は、基紙30の表裏双方に形成されていてもよい。
【0030】
《工程紙用原紙の製造方法》
本実施形態にかかる工程紙10の製造方法は、基紙抄造工程と、下塗り塗料調製工程と、下塗り層形成工程と、剥離層形成工程を備える。基紙抄造工程と、下塗り塗料調製工程と、下塗り層形成工程とは、本実施形態にかかる工程紙用原紙20の製造方法にも該当する。以下、その具体的な内容について説明する。
【0031】
<基紙抄造工程>
基紙抄造工程は、基紙30を製造する工程である。本実施形態においては、原料調製工程と、抄紙工程とを有する。原料調製工程は、基紙30の原料を調製する工程である。抄紙工程は、基紙30の原料から基紙30を漉く工程である。
【0032】
本実施形態において、原料調製工程は、次の手順に沿って進められる。まず、濾水度が410ml:CSFになるまで、LBKP(Laubholz Bleached Kraft Pulp)80重量部とNBKP(Northern Bleached Kraft Pulp)20重量部とを叩解する。それらが叩解されると、LBKPとNBKPとは水中に分散される。LBKPとNBKPとが水中に分散されると、0.6重量部のカチオン化デンプンと、1.5重量部のコーンスターチと、0.1重量部のコロイダルシリカと、0.15重量部のロジン系サイズ剤と、0.15重量部のアルミン酸ソーダとをこの順に従って添加する。それらが添加されると、それらが添加された水に硫酸バンドを添加してpHを4.8に調節する。これにより、基紙30の原料が完成する。もちろん、本実施形態とは異なる工程をへて原料を完成させてもよい。また、基紙30の原料や配合は本実施形態にかかるものに限定されない。
【0033】
基紙30の原料が完成すると、抄紙工程が開始される。本実施形態においては、坪量が105g/mとなるよう、完成した原料を用いて、長網式抄紙機で基紙30が漉かれる。基紙30を漉くための具体的な方法は公知の方法と同様である。これにより、基紙30が得られる。
【0034】
<下塗り塗料調製工程>
下塗り塗料調製工程は、下塗り塗料を調製する工程である。その具体的な内容は実施例ごとに異なる。各実施例の具体的な内容は次の通りである。ちなみに、35重量部を超えるポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンが添加する実施例は以下のうちに含まれていない。ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの重量部が35重量部を超えると、下塗り塗料の粘度が上昇しそれを塗工することが困難となるためである。
【0035】
[実施例1]
まず、100重量部のカオリン(商品名:ハイドラスパース/米国ヒューバー社製)を水に添加する。カオリンが添加されると、5重量部のポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールGL−03/日本合成化学社製)をその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、pH調整剤(本実施例においては蟻酸)をその水に加えて十分に攪拌する。pH調整剤は、水のpHが4.5になるまで加える。pHが調製された後、30重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョン(商品名:ニューコートPV−400改/新中村化学社製)と、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョン(商品名:SNコート289/サンノプコ社製)とを更に添加して混合する。これにより、下塗り塗料が完成する。なお、カオリンは顔料として用いられている。
【0036】
[実施例2]
ポリビニルアルコールの添加量を2重量部とした以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、2重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンと、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。なお、下塗り塗料の調製に用いた原料のメーカおよび商品名は、実施例1と同様である。特に言及されている場合を除き、以下の説明においても同様である。
【0037】
[実施例3]
ポリビニルアルコールの添加量を10重量部とした以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、10重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンと、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0038】
[実施例4]
ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの添加量を25重量部とした以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、5重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、25重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンと、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0039】
[実施例5]
ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの添加量を35重量部とした以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、5重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、35重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンと、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0040】
[実施例6]
ポリビニルアルコールの添加量を2重量部とし、ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの添加量を25重量部とした以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、2重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、25重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンと、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0041】
[実施例7]
ポリビニルアルコールの添加量を10重量部とし、ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの添加量を35重量部とした以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、10重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、35重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンと、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0042】
[実施例8]
実施例1におけるポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンに代えて別のメーカが製造したポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンを用いた以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、5重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョン(商品名:サイビノールX−506−628E1/サイデン化学社製)と、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0043】
[実施例9]
実施例1におけるポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンに代えて実施例8にかかるものとは別のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンを用いた以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、5重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョン(商品名:PV−303/新中村化学社製)と、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0044】
[実施例10]
実施例1におけるポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンに代えて実施例8,9にかかるものとは別のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンを用いた以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、5重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョン(商品名:PV−400/新中村化学社製)と、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。なお、実施例1におけるポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンと本実施例に係るポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンとは、界面活性剤の有無が異なる。本実施例にかかるものには界面活性剤が含まれているが、実施例1にかかるものには界面活性剤が含まれていない。
【0045】
<下塗り層形成工程>
下塗り層形成工程は、下塗り塗料調製工程において得られた下塗り塗料を基紙30に塗工し、それを乾燥させる工程である。これにより、下塗り層32が形成される。上述した説明や図1から明らかなように、本実施形態においては、基紙30の一方の面にその下塗り塗料を塗工する。本実施形態において、その下塗り塗料は、エアナイフコーターにて塗工される。本実施形態において、塗工量は、固形分に換算した量が15g/mとなる。もちろん、下塗り層形成工程の具体的内容は、これに限定されない。下塗り塗料が乾燥すると、工程紙用原紙20が完成する。
【0046】
<剥離層形成工程>
剥離層形成工程は、下塗り層形成工程において形成された下塗り層32の上にシリコーン溶液を塗工し、それを乾燥させる工程である。これにより、剥離層22が形成される。本実施形態において、剥離層形成工程は、次の工程を有する。まず第1の工程は、シリコーン溶液を調製する工程(シリコーン溶液調製工程)である。本実施形態において、シリコーン溶液は、5.8重量部の付加反応型シリコーンと、0.2重量部の白金触媒と、94重量部のトルエンとからなる。もちろん、シリコーン溶液の組成は、これに限定されない。また、シリコーン溶液の調製の具体的な方法は周知なのでここではその説明を繰り返さない。シリコーン溶液が調製されると、下塗り層32の上にそのシリコーン溶液を塗工する。シリコーン溶液は、メイヤーバーによって塗工される。本実施形態において、塗工量は、固形分に換算した量が1.0g/mとなる。もちろん、シリコーン溶液の塗工の具体的内容は、これに限定されない。シリコーン溶液の塗工が完了し、シリコーン溶液が乾燥すると、工程紙紙10が完成する。
【0047】
《比較例にかかる工程紙用原紙の製造》
比較のため、以下に説明する下塗り塗料を調製し、それらの下塗り塗料を用いて工程紙用原紙20を製造した。それらの下塗り塗料を用いたことを除けば、工程紙用原紙20の製造方法は上述したものと同様である。
【0048】
[比較例1]
ポリビニルアルコールを添加しなかった以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンと、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0049】
[比較例2]
ポリビニルアルコールの添加量を20重量部とした以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、20重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンと、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0050】
[比較例3]
ポリビニルアルコールの添加量を10重量部とし、ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの添加量を15重量部とした以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、10重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、15重量部のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンと、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0051】
[比較例4]
実施例1におけるポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンに代えスチレンブタジエンラテックス(商品名:L−7063/旭化成社製)を用いた以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、5重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のスチレンブタジエンラテックスと、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0052】
[比較例5]
実施例1におけるポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンに代え界面活性剤のみを乳化剤として使用したアクリル重合体エマルジョン(商品名:サイビノールX−504−311−E1/サイデン化学社製)を用いた以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、5重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のアクリル重合体エマルジョン(上述したもの)と、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0053】
[比較例6]
次に述べる点以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。その点とは、実施例1におけるポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンに代え、比較例5とは別のタイプの、界面活性剤のみを乳化剤として使用したアクリル重合体エマルジョン(商品名:サイビノールEK−81/サイデン化学社製)を用いた点である。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、5重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のアクリル重合体エマルジョン(上述したもの)と、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0054】
[比較例7]
次に述べる点以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。その点とは、実施例1におけるポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンに代え、比較例5および6とは別のタイプの、界面活性剤のみを乳化剤として使用したアクリル重合体エマルジョン(商品名:サイビノールEK−55/サイデン化学社製)を用いた点である。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、5重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のアクリル重合体エマルジョン(上述したもの)と、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0055】
[比較例8]
次に述べる点以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。その点とは、実施例1におけるポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンに代え、比較例5〜7とは別のタイプの、界面活性剤のみを乳化剤として使用したアクリル重合体エマルジョン(商品名:ボンコート5462K/大日本インキ化学工業社製)を用いた点である。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、5重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のアクリル重合体エマルジョン(上述したもの)と、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0056】
[比較例9]
次に述べる点以外は実施例1と同様にして下塗り塗料を得た。その点とは、実施例1におけるポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンに代え、比較例5〜8とは別のタイプの、界面活性剤のみを乳化剤として使用したアクリル重合体エマルジョン(商品名:ボンコートU−40/大日本インキ化学工業社製)を用いた点である。すなわち、まず、100重量部のカオリンを水に添加する。カオリンが添加されると、5重量部のポリビニルアルコールをその水に加える。ポリビニルアルコールが水に加えられると、水のpHが4.5になるまでその水に蟻酸を加えて十分に攪拌した。pHが調製された後、30重量部のアクリル重合体エマルジョン(上述したもの)と、0.5重量部のポリエチレンワックスエマルジョンとを更に添加して混合し、下塗り塗料を得た。
【0057】
《評価手順》
本実施形態においては、上述した実施例および比較例に基づいて製造された工程紙10を、密着性、剥離性、および繰り返し使用適性の観点から評価した。各評価の具体的な手順を以下に説明する。
【0058】
[剥離層22と下塗り層32との密着性]
剥離層22と下塗り層32との密着性について評価した。評価の方法は、剥離層22の表面にトルエンを2ml滴下し、10秒経過後にガーゼで拭き取った後に滴下部分を指で擦り、擦った箇所の剥離層22表面の状態を感応評価した。なお、剥離層22が脱落しているか否かは、剥離層22の光沢の度合いを目視により確認することにより容易に判別することができる。
【0059】
光沢をそのまま維持しており、剥離層22の脱落がないと考えられるものを丸印とした。光沢がやや低下したものの、剥離層22の脱落が軽度であり、実用上問題のないものを三角印とした。光沢の低下が著しく、剥離層22の脱落が顕著であり、実用上問題のあるものをバツ印とした。
【0060】
[セラミックシートの剥離性]
アルミナ90重量部、アクリル酸エステル系接着剤10重量部、トルエン100重量部を組成とするセラミックシート形成用の塗料を調製した。このセラミックシート形成用の塗料を、上述した実施例および比較例に基づいて製造された工程紙10それぞれの剥離面に、乾燥後の厚みが400μmとなるようブレードナイフ方式にて塗工し、120℃にて乾燥させた。これにより、工程紙10それぞれの表面にセラミックシートが形成された。セラミックシートが形成された後、そのセラミックシートと工程紙10とを剥離し、その剥離性を感応評価した。剥離が軽く綺麗に剥離できたものを丸印とした。剥離が重く、綺麗に剥離できず、実用上問題のあるものをバツ印とした。
【0061】
[繰り返し使用適性]
セラミックシートの剥離性を評価した後、評価が完了した工程紙10を、前述と同じ方法によるセラミックシートの形成に再度用いた。これを繰り返すことにより、工程紙10の繰り返し使用適性の評価を行った。この繰り返しは、工程紙10の剥離層22が崩れたり、欠落するなどして、セラミックシートの形成が困難になるまで実施した。なお、ここで説明する評価においては、繰り返し使用可能回数が10回を超えた合格レベルであると判断する。もちろん、繰り返し使用可能回数が何回であれば合格かということは任意に定め得ることである。ただし、上述したように、工程紙10は多くの場合において10回程度繰り返して用いられるものなので、10回以上繰り返して使用できる工程紙10は、セラミックシートの製造に利用できる程度の耐溶剤性を有すると判断できる。ちなみに、剥離層22と下塗り層32との密着性の評価及びセラミックシートの剥離性の評価の何れかが悪いものは、実用に供しえないと判断できるため、繰り返し使用適性の評価を行っていない。
【0062】
《評価結果》
上述した実施例および比較例に基づいて製造された工程紙10を、上述した手順に従って評価した。表1は、その評価結果の一覧表である。表1に基づいて、評価結果を具体的に説明する。なお、表1における「繰り返し使用適性」欄に記載された数字は、繰り返し使用可能回数を示す。
【表1】

【0063】
実施例1で得られた工程紙10は、剥離層22と下塗り層32との密着性が良く、セラミックシートの剥離性も良好であり、繰り返し使用可能回数も12回であり、満足できるものであった。
【0064】
実施例2で得られた工程紙10は、実施例1で得られた工程紙10に比べ剥離層22と下塗り層32との密着性がやや劣る。これは、ポリビニルアルコールの添加量が少ないことが原因と考えられる。ただし、その密着性は実用上問題のないものである。
【0065】
実施例3で得られた工程紙10は、ポリビニルアルコールの添加量が多かったものの、各評価は実施例1で得られた工程紙10のものと遜色なく、満足できるものであった。
【0066】
実施例4で得られた工程紙10は、実施例1で得られた工程紙10に比べ剥離層22と下塗り層32との密着性がやや劣る。これは、ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの添加量が少ないことが原因と考えられる。ただし、その密着性は実用上問題のないものである。
【0067】
実施例5で得られた工程紙10は、ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの添加量が多かったものの、各評価では実施例1で得られた工程紙10と遜色なく、満足できるものであった。
【0068】
実施例6で得られた工程紙10は、実施例1で得られた工程紙10に比べ剥離層22と下塗り層32との密着性がやや劣り、繰り返し使用可能回数も10回と実施例1で得られた工程紙10に比べ少ない。これは、ポリビニルアルコールとポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの添加量とが共に少ないことが原因と考えられる。ただし、その密着性および繰り返し使用可能回数は実用上問題のないものであった。
【0069】
実施例7で得られた工程紙10は、ポリビニルアルコールと、ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの添加量とが共に多かったが、実施例1で得られた工程紙10と遜色なく、満足できるものであった。
【0070】
実施例8,9で得られた工程紙10は、実施例1において添加したポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンとは別のポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンを添加したものであったが、実施例1で得られた工程紙10と遜色なく、満足できるものであった。
【0071】
実施例10で得られた工程紙10は、ポリビニルアルコールだけでなく界面活性剤をアクリル重合体の乳化剤に用いた点が実施例1と異なるが、実施例1で得られた工程紙10と遜色なく、満足できるものであった。
【0072】
また、実施例1,3,5,7〜10で得られた工程紙10は、その他の実施例で得られた工程紙10に比べ、密着性が優れていると言える。
【0073】
比較例1で得られた工程紙10は、実施例1で得られた工程紙10に比べ剥離層22と下塗り層32との密着性が劣り、かつ、セラミックシートと工程紙10との剥離性も悪いため、実用に供し得ないものであった。密着性および剥離性が劣ったのは、ポリビニルアルコールの添加を行わなかったことが原因と考えられる。
【0074】
比較例2で得られた工程紙10は、実施例1で得られた工程紙10に比べセラミックシートと工程紙10との剥離性が悪いため、実用に供し得ないものであった。これは、下塗り層32の性状が変化し、セラミックシートの剥離性に影響が生じたためと推察される。下塗り層32の性状が変化したのは、ポリビニルアルコールの添加量が多すぎたためと推察される。ただし、剥離層22と下塗り層32との密着性には問題ない。
【0075】
比較例3で得られた工程紙10は、実施例1で得られた工程紙10に比べ剥離層22と下塗り層32との密着性がやや劣るものの実用上問題のないレベルであり、セラミックシートの剥離性も満足できるものであった。しかし、繰り返し使用可能回数が5回となり、実施例1の工程紙10に比べ大きく劣る結果となった。これは剥離層22と下塗り層32との密着性が、何度も繰り返しての使用に耐えうるほど十分ではなかったためであると推察される。密着性が十分でなかったのは、ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの添加量が少なすぎたためと推察される。
【0076】
比較例4で得られた工程紙10は、実施例1で得られた工程紙10に比べ剥離層22と下塗り層32との密着性に劣り、また、セラミックシートと工程紙10との剥離性も悪く、実用に供しえないものであった。これは、ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの代わりにスチレンブタジエンラテックスを使用したためと推察される。
【0077】
比較例5〜9で得られた工程紙10は、実施例1で得られた工程紙10に比べ剥離層22と下塗り層32との密着性にやや劣るものの実用上問題のないレベルであり、セラミックシートの剥離性も満足できるものであったが、繰り返し使用可能回数が4〜7回となり、実施例1の工程紙10に比べ大きく劣る結果となった。これは、剥離層22と下塗り層32との密着性が、何度も繰り返しての使用に耐えうるほど十分ではなかったためであると推察される。密着性が十分ではなかったのは、ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの代わりに、界面活性剤のみを乳化剤として用いたアクリル重合体エマルジョンを使用したためと推察される。
【0078】
以上のようにして、本発明にかかる工程紙用原紙20および工程紙10において、シリコーンを含有する剥離層22は、セラミックシートの製造に何度も利用できる程度の耐溶剤性を有する。
【0079】
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよいのはもちろんである。
【0080】
たとえば、工程紙用原紙20および工程紙10にあたっては、カオリンに代え、他の平板顔料が用いられてもよい。
【0081】
また、カオリンとポリビニルアルコールとpH調整剤との添加の順序は実施例1などで説明した順序に限られるものではない。ただし、実施例1などで示したように、カオリンを水に添加した後、pH調整剤を水に添加するより前にポリビニルアルコールを添加することが好ましい。その理由は、ポリビニルアルコールがカオリンを水中で分散させる作用を有するためである。
【0082】
また、ポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンの分散性を重視するのでなければ、pH調整剤は添加しなくてよい。pH調整剤が添加されていなくともポリビニルアルコール保護コロイド型アクリル重合体エマルジョンが十分分散する場合にも、pH調整剤は添加しなくてよい。pH調整剤を添加する場合であっても、蟻酸以外のpH調整剤を添加してよい。
【0083】
また、剥離層の平滑性に対して求められる水準が高くなければ、ポリエチレンワックスエマルジョン以外の潤滑剤を添加したり、潤滑剤を添加しなかったりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一例にかかる工程紙用原紙の構成を示す概念図である。
【図2】セラミックシートの製造手順を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
10,12 工程紙
20 工程紙用原紙
22 剥離層
30 基紙
32 下塗り層
40 セラミック層
42 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の少なくとも片面に下塗り層を介して剥離層が設けられており、前記剥離層がシリコーンを含有し、
前記下塗り層が、
カオリンと、
第1バインダと、
第2バインダとを含有し、
前記第1バインダは、ポリビニルアルコールを含有し、
前記第2バインダは、ポリビニルアルコールによって予め乳化されたアクリル重合体を含有する工程紙において、
前記第1バインダに含有されるポリビニルアルコールの配合比は、前記カオリン100重量部に対し0重量部を超え20重量部未満であり、
前記第2バインダに含有される前記アクリル重合体の配合比は、前記カオリン100重量部に対し15重量部を超え35重量部以下であることを特徴とする、工程紙。
【請求項2】
前記第1バインダの配合比は、前記カオリン100重量部に対し5重量部以上10重量部以下であり、
前記第2バインダの配合比は、前記カオリン100重量部に対し30重量部以上35重量部以下であることを特徴とする、請求項1に記載の工程紙。
【請求項3】
基紙の少なくとも片面に下塗り層が設けられ、
前記下塗り層が、
カオリンと、
第1バインダと、
第2バインダとを含有しており、
前記第1バインダは、ポリビニルアルコールを含有し、
前記第2バインダは、ポリビニルアルコールによって予め乳化されたアクリル重合体を含有し、
シリコーンを含有する剥離層を前記下塗り層の上に設けて工程紙とするための工程紙用原紙において、
前記第1バインダに含有されるポリビニルアルコールの配合比は、前記カオリン100重量部に対し0重量部を超え20重量部未満であり、
前記第2バインダに含有される前記アクリル重合体の配合比は、前記カオリン100重量部に対し15重量部を超え35重量部以下であることを特徴とする、工程紙用原紙。
【請求項4】
下塗り塗料を調製する下塗り塗料調製工程と、
前記下塗り塗料を基紙に塗ることで下塗り層を形成する下塗り層形成工程と、
前記下塗り層の上にシリコーン溶液を塗ることで剥離層を形成する剥離層形成工程とを備える工程紙の製造方法において、
前記下塗り塗料調製工程は、
カオリンと第1バインダとを水に添加する第1添加工程と、
前記水に第2バインダを添加する第2添加工程とを有しており、
前記第1バインダは、ポリビニルアルコールを含有し、
前記第2バインダは、ポリビニルアルコールによって予め乳化されたアクリル重合体を含有し、
前記第1バインダに含有されるポリビニルアルコールの配合比は、前記カオリン100重量部に対し0重量部を超え20重量部未満までであり、
前記第2バインダに含有される前記アクリル重合体の配合比は、前記カオリン100重量部に対し15重量部を超え35重量部以下である、工程紙の製造方法。
【請求項5】
下塗り塗料を調製する下塗り塗料調製工程と、
前記下塗り塗料を基紙に塗ることで下塗り層を形成する下塗り層形成工程とを備える工程紙用原紙の製造方法において、
前記下塗り塗料調製工程は、
カオリンと第1バインダとを水に添加する第1添加工程と、
前記水に第2バインダを添加する第2添加工程とを有しており、
前記第1バインダは、ポリビニルアルコールを含有し、
前記第2バインダは、ポリビニルアルコールによって予め乳化されたアクリル重合体を含有し、
前記第1バインダに含有されるポリビニルアルコールの配合比は、前記カオリン100重量部に対し0重量部を超え20重量部未満であり、
前記第2バインダに含有される前記アクリル重合体の配合比は、前記カオリン100重量部に対し15重量部を超え35重量部以下である、工程紙用原紙の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−47879(P2010−47879A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214849(P2008−214849)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(592175416)紀州製紙株式会社 (23)
【Fターム(参考)】