説明

巻取カラー

【課題】多数の巻取カラーを用いて構成した巻軸から、その巻軸により貫通支持した巻芯と共に該巻芯上に形成した巻取ロールを、予め面倒な作業をすることなく円滑に抜取ることができるようにする。
【解決手段】巻取カラー1は、カラー本体4の外周面の、リテーナ8で覆われる部分に、複数の底面傾斜溝の列に沿うように形成した収容溝10と、この収容溝10に収容した圧縮コイルバネ11と、カラー本体4に設けた、圧縮コイルバネ11一端に係合する第1係合手段と、リテーナ8に設けた、圧縮コイルバネ11の他の一端に係合する第2係合手段とからなり、カラー本体4に巻芯が被さっていないとき転動体6が底面傾斜溝5の深い部分に戻るようにリテーナ8をカラー本体4に対して底面傾斜溝5が深くなる方向へ付勢するリテーナ付勢機構9を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空の巻芯を帯状シート巻取装置の中心駆動軸上に該中心駆動軸に対して回転可能に保持すると共に、中心駆動軸から回転力伝達手段を介して回転力を受け、その回転力を前記巻芯に伝達する環状の巻取カラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯状シート巻取装置には、広幅の帯状シートをスリッターで複数条に分割しながら、その分割された帯状シートを個々の巻芯のまわりに巻取るために、分割された帯状シート毎の巻芯を貫通して支持する共通の巻軸を備えるものがある。この巻軸は、中心駆動軸と、この中心駆動軸の外周に所定の間隔で装着した多数個の狭幅の巻取カラーと、中心駆動軸から巻取カラーに回転力を伝達する回転力伝達手段とからなる。
【0003】
従来、巻取カラーには、帯状シートを巻取るための中心駆動軸に同心に回転自在に装着され、前記中心駆動軸から回転力伝達手段を介して回転力を受けるカラー本体と、前記カラー本体の外周面に円周方向に間隔をとって設けた複数の溝であって当該溝の底面が夫々前記中心駆動軸の回転方向沿いに次第に低くなるように形成してある複数の底面傾斜溝と、前記底面傾斜溝に配置した転動体と、前記転動体を前記底面傾斜溝から脱落しないよう収容する空所を持つ、前記カラー本体に回転自在に装着した環状のリテーナとを備え、前記カラー本体に被さっている、帯状シート巻取用の中空の巻芯が、前記カラー本体に対して前記底面傾斜溝が浅くなる方向に回転することにより、前記転動体が前記底面傾斜溝の浅い部分に移動すると共に底面傾斜溝の底面により押上げられ、この転動体が前記巻芯の内周面を押圧することによって、巻芯をカラー本体に固く保持するものがある(例えば特開平02−132043号公報参照)。
【0004】
上述のような巻取カラー多数個を中心駆動軸に装着して構成された巻軸では、巻芯の着脱を円滑に行うという観点から、巻芯の着脱時には巻取カラーの転動体が底面傾斜溝の深い部分に移動しており、カラー本体の中心から転動体の頂点までの距離が巻芯の内周面の半径以下になっていることが望ましい。
【0005】
ところが、一般に、巻芯の長さは巻軸の長さより短く、巻軸には巻芯を装着していない部分が生じる。そしてこの巻芯を装着していない部分にある巻取カラーのリテーナは巻取中にカラー本体に対して回転し得るため、巻取終了後には、巻取カラーの転動体が底面傾斜溝の最も深い部分に位置から浅い部分に移動しており、カラー本体の中心から転動体の頂点までの距離が巻芯の内周面の半径より大きくなるように様々な突出量で突出している場合が多い。その場合、巻芯上に形成された帯状シートの巻取ロールを巻芯と一緒に巻軸から抜取るとき、その抜取り抵抗が非常に大きくなり円滑な抜取りができなくなるので、転動体が巻芯内周面の高さを超えて突出している巻取カラーについて、巻取ロールを抜取る前に転動体の突出力が最も小さくなるように、予め作業者がリテーナをカラー本体に対して底面傾斜溝が深くなる方向に回転させる必要がある。しかし、このような作業は面倒あり時間もかかるので、帯状シート巻取装置の稼働率を低下させる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平02−132043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような問題点に鑑み、多数個の巻取カラーを用いて構成した巻軸から、その巻軸により貫通して支持した巻芯と共に該巻芯上に形成した帯状シートの巻取ロールを、予め面倒な作業をすることなく円滑に抜取ることができるようにするのに適した巻取カラーを得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、帯状シートを巻取るための中心駆動軸に同心に回転自在に装着され、前記中心駆動軸から回転力伝達手段を介して回転力を受けるカラー本体と、前記カラー本体の外周面に円周方向に間隔をとって設けた複数の溝であって当該溝の底面が夫々前記中心駆動軸の回転方向沿いに次第に低くなるように形成してある複数の底面傾斜溝と、前記底面傾斜溝に配置した転動体と、前記転動体を前記溝から脱落しないよう収容する空所を持つ、前記カラー本体に回転自在に装着した環状のリテーナとを備え、前記カラー本体に被さっている、帯状シート巻取用の中空の巻芯が、前記カラー本体に対して前記底面傾斜溝が浅くなる方向に回転することにより、前記転動体が前記溝の浅い部分に移動すると共に溝の底面により押上げられ、この転動体が前記巻芯の内周面を押圧することによって、前記巻芯を前記カラー本体に固く保持することができる巻取カラーにおいて、前記カラー本体の外周面の、前記リテーナで覆われる部分に、前記複数の底面傾斜溝の列に沿うように形成した収容溝と、前記収容溝に収容した、該収容溝の伸長方向に弾力的に伸縮可能な伸縮体と、前記カラー本体に設けた、前記伸縮体の一端に係合する第1係合手段と、前記リテーナに設けた、前記伸縮体の他の一端に係合する第2係合手段とからなり、前記カラー本体に巻芯が被さっていないとき前記転動体が前記底面傾斜溝の深い部分に戻るように前記リテーナを前記カラー本体に対して前記底面傾斜溝が次第に深くなる方向へ付勢するリテーナ付勢機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、転動体が自動的に底面傾斜溝の深い部分に確実に戻る巻取カラーを得ることができ、しかも、巻取カラーの幅や厚みを、従来の巻取カラーと同程度に小さく抑えることができる。そのため、本発明の巻取カラーを用いて巻軸を構成すると、その巻軸により貫通して支持した巻芯上に形成された巻取ロールを、その巻芯と一緒に巻軸から、予め面倒な作業をすることなく円滑に抜取ることができるようになる。また外径の大きい中心駆動軸を採用することで撓みにくい巻軸を得ることができ、帯状シート巻取装置の生産性が向上する。
【0010】
また、伸縮体が圧縮コイルバネであると、その両端と第1係合手段と第2係合手段とを結合する必要がないので組立が簡単になる。
【0011】
また、本発明では、少なくとも一つの前記底面傾斜溝の中に、転動体の移動方向沿いに伸長した支持体を底面傾斜溝の深さ方向に弾力的に変位可能に設け、底面傾斜溝の深い部分に移動した転動体を巻芯の内周面に押付け可能に支持体によって下から支えるとよい。それによって、リテーナ付勢機構によりリテーナをカラー本体に対して底面傾斜溝が次第に深くなる方向へ付勢していても、転動体を、底面傾斜溝の深い部分から、その転動体が底面傾斜溝の底面と巻芯内周面とに挟まれて楔として働く位置まで確実に移動させることができ、巻芯の内径にばらつきがあり巻芯の内径が標準より多少大きくても、その巻芯を確実にカラー本体に固定することができる巻取カラーを得ることができる。また支持体による転動体の巻芯への押付け力が比較的小さくても、巻芯固定時にリテーナには支持体上の転動体を介して十分大きい回転力が働くので、支持体による転動体の押上げ力を小さくすることで、巻芯の外挿抵抗を小さく抑えることができる。そのため多数個の幅の狭い巻取カラーを中心駆動軸に装着して巻軸を構成する場合、巻芯が長いものであっもてその巻芯を容易に外挿可能な巻軸を得ることができる。しかも従来のように転動体とは別に巻芯内周面を押接するピンやバネ手段埋設用の穴をリテーナに設けることが不要になる。
【0012】
また、本発明では、前記収容溝内に、該収容溝の伸長方向に拘束して収容した、該収容溝の深さ方向に自由端が変位可能な片持ち梁状の止め板と、前記止め板の自由端付近に形成した穴又は切欠きと、前記転動体が底面傾斜溝の深い部分の所定位置にあるとき前記穴又は切欠きに嵌り得る、前記リテーナの内周面に設けた突起と、前記リテーナの外周面の、止め板に対応する箇所に形成した開口とを備えるとよい。それによって、中心駆動軸から受けた回転力を巻芯に伝達する機能を簡単に短時間で選択的に停止したり復活させたりすることができる。そのため、例えば、中心駆動軸に多数の巻取カラーを装着して構成した巻軸を用いて幅の狭い多数の帯状シートを同時に個々の巻芯に取る場合に、各帯状シートに生ずる帯状シート単位幅当りの巻取張力が帯状シート相互間で均一になるよう、各巻芯に対して回転力を伝達する巻取カラーの個数を帯状シーとの幅に応じて簡単に調整することができるようになるので、歩留の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る巻取カラーの正面図である。
【図2】図2は図1のA1ーA1矢視断面図である。
【図3】図3は巻取カラーの縦断面の上半分を示す断面図である。
【図4】図4は図1のA2ーA2矢視断面図である。
【図5】図5は巻芯非装着時の巻取カラーの図2に相当する断面図である。
【図6】図6は図5のA3−A3矢視断面図である。
【図7】図7は支持体の平面図である。
【図8】図8は巻芯外挿前の支持体の状態を示す説明図である。
【図9】図9は巻芯外挿後の支持体の状態を示す説明図である。
【図10】図10は図4のA4−A4矢視断面図である。
【図11】図11は突起が止め板から外れた状態を示す拡大断面図である。
【図12】図12は止め板を押し下げた状態を示す拡大断面図である。
【図13】図13は止め板の穴に突起を嵌めた状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に図面を参照して本発明の一実施例について説明する。図1は本発明の一実施例に係る巻取カラーの正面図、図2は図1のA1ーA1矢視断面図、図3は図1に示す巻取カラーの縦断面の上半分を示す断面図、図4は図1のA2ーA2矢視断面図である。
【0015】
巻取カラー1は、帯状シートを巻取るための中心駆動軸2に同心に回転自在に装着され、中心駆動軸2から公知の回転力伝達手段3を介して回転力を受けるカラー本体4と、カラー本体4の外周面に円周方向に間隔をとって設けた複数の溝であって当該溝の底面が夫々中心駆動軸の回転方向沿いに次第に低くなるように形成してある複数の底面傾斜溝5と、底面傾斜溝5に配置した転動体6と、転動体6を底面傾斜溝5から脱落しないよう収容する空所7を持つ、カラー本体4に回転自在に装着した環状のリテーナ8とを備え、図2に示すように帯状シート巻取用の中空の巻芯がカラー本体4に被さっているとき、巻芯Cが、カラー本体4に対して底面傾斜溝5が浅くなる方向(図2に矢印Aで示す方向)に回転することにより、転動体6が底面傾斜溝5の浅い部分に移動すると共に底面傾斜溝5の底面により押上げられ、この転動体6が巻芯Cの内周面を押圧することによって、巻芯Cをカラー本体4に固く保持することができるものである。そしてカラー本体4に巻芯Cが被さっていないとき図5に示すように転動体6が底面傾斜溝5の深い部分に戻るようにリテーナ8をカラー本体4に対して底面傾斜溝5が次第に深くなる方向へ付勢するリテーナ付勢機構9を備える。
【0016】
リテーナ付勢機構9は、カラー本体4の外周面の、リテーナ8で覆われる部分に、複数の底面傾斜溝5の列に沿うように形成した収容溝10と、収容溝10に収容した、該収容溝10の伸長方向に弾力的に伸縮可能な伸縮体11と、カラー本体4に設けた、伸縮体11の一端に係合する第1係合手段12と、リテーナ8に設けた、伸縮体11の他の一端に係合する第2係合手段13とからなる。
【0017】
この実施例では、収容溝10は、図4に示すようにカラー本体4の外周面を一定の深さで一周している。また伸縮体11は、圧縮コイルバネであり、巻芯Cをカラー本体4に固定するとき、転動体6が底面傾斜溝5の浅い部分へ移動するようリテーナ9がカラー本体4に対して回転するのに支障がないよう、かつ、巻芯Cがカラー本体4上に被さってないとき、転動体6が底面傾斜溝5の深い部分へ移動するようリテーナ8がカラー本体4に対して回転するのに支障がないように、適当する長さ及びバネ定数を有している。リテーナ8のカラー本体4に対する回転力は、主に巻芯Cと転動体との摩擦力や、巻芯Cとリテーナとの摩擦力により生ずる。第1係合手段12は、収容溝10を横断するように固設した係合体であり、カラー本体4の側面からカラー本体4の幅方向に形成した穴に装着したピン14からなる。なお、第1係合手段12は、必要に応じて、例えば収容溝10の底面に設けた突起としてもよいし、収容溝10がカラー本体の外周面を一周していないものであれば、その収容溝10の端部の壁面としてもよい。第2係合手段13は、リテーナ8の内周面に設けた突起であり、リテーナ8の外周面に設けた孔に装着したピン15からなる。
【0018】
リテーナ8は、カラー本体4の外周面にすきまばめし、カラー本体4の片方の端部に形成した鍔部4aと、カラー本体4のもう片方に端部に止めねじ16で固着した環状体17とで挟んでいる。カラー本体4の鍔部4aの内周と、環状体17の、カラー本体4から突き出た端部の内周には、夫々ベアリング19が装着してある。各ベアリング19の内輪は中心駆動軸2の外周面に装着する。
【0019】
転動体6が図5に示すように底面傾斜溝5の深い部分に位置しているとき、伸縮体11は圧縮されておらず、リテーナ付勢機構9は、リテーナ8をカラー本体4に対して底面傾斜溝5が深くなる方向へ付勢していない状態にある。この巻取カラー1上に巻芯Cを装着していない状態において、何らかの原因でカラー本体4に対してリテーナ8が回転すると共に転動体6が底面傾斜溝5の浅い部分に移動したとすると、第1係合手段12に第2係合手段13が接近して伸縮体11が弾力的に圧縮され、その圧縮された伸縮体に反発力が生じ、それによってリテーナ付勢機構9は、リテーナ8をカラー本体4に対して底面傾斜溝5が次第に深くなる方向へ付勢する状態になり、リテーナ8がカラー本体4に対して底面傾斜溝5が次第に深くなる方向へ回転し、それに伴い転動体6が底面傾斜溝5の深い部分に復帰する。なお、転動体6の復帰を確実にするために、例えば伸縮体11を少し長いものに変更する等により、転動体6が底面傾斜溝5の深い部分に位置しているとき、巻芯Cの装着時に転動体6が底面傾斜溝5の浅い部分へ移動することに支障がない範囲で僅かに伸縮体11が圧縮されるようにしてもよい。
【0020】
巻取カラー1は、巻芯Cの内径の大きさに多少のバラツキがあっても巻芯Cがカラー本体4に対して空回りしないよう確実に固定できるようすることが望ましい。そこで、この実施例の場合、巻取カラー1では、巻取開始時に巻芯Cを回転させたとき、その巻芯Cの内径が多少大きくても、その巻芯Cの内周面に、底面傾斜溝5の深い部分にある転動体6が確実に係合するようにするために、図5に示すように複数の底面傾斜溝5のうちの一つの底面傾斜溝5の中に、転動体6の移動方向沿いに伸びた支持体20を底面傾斜溝5の深さ方向に弾力的に変位可能に設け、底面傾斜溝5の深い部分に移動した転動体6を支持体20によって巻芯Cの内周面に押付け可能に下から支えている。
【0021】
図6は図5のA3−A3矢視断面図、図7は支持体の長手方向を図面の左右方向に向けて示した支持体の平面図である。図8は巻取カラーに巻芯を外挿する前の支持体及び転動体の状態を示し、図9は巻取カラーに巻芯を外挿した後の支持体及び転動体の状態を示す。
【0022】
支持体20を底面傾斜溝5の深さ方向に弾力的に変位可能に設けるために、支持体20が、当該支持体20の、底面傾斜溝5の深い部分側の一端20aを自由端とし、他の一端20bを固定端とする片持ち梁になるよう、支持体20の他の一端20bに装着部21を設け、この装着部21を底面傾斜溝5の底面5沿いに装着している。装着部21は、その幅を底面傾斜溝5の幅に適合する幅を有し、その長さを底面傾斜溝5の長さに略等しい長さを有しているので、その装着部21を底面傾斜溝5に嵌めるだけで装着することができ、支持体20を底面傾斜溝5の中の所定位置に保持することができる。
【0023】
支持体20は弾性体からなり、それを底面傾斜溝5の中に収容する前には装着部21に対して図8に2点鎖線で示すように持ち上がっている。この支持体20を底面傾斜溝5の中に収容するとき、図8に実線で示すように下方に撓ませてあるので、底面傾斜溝5の中の支持体20は、その上に載せた転動体6を、その撓みの大きさ応じた力で弾力的に押上げることができる。そして支持体20によって押上げられた転動体6はリテーナ8の空所7内を上限に至るまで移動して、テーナ8外周面から突出する。この支持体20は、例えばばね鋼やステンレス鋼等のように弾性限度や疲労限度の高い弾性体で作るのが望ましい。
【0024】
支持体20の、転動体6との係合部20cは、図6に示すように転動体6と底面傾斜溝5の底面との接触部分Pの両脇に分かれており、図7に示すように転動体6の移動方向に沿って伸びている。そのため、支持体20は、転動体6の、底面傾斜溝5の底面との接触部分Pの両脇部分に係合して下から支えることができる。
【0025】
図7において支持体20と装着部21は一本の線材Wから形成してある。支持体20は、線材Wを一端に近い部分においてU字状に折曲げて形成してあり、U字状の折曲げ部分20aは支持体20の自由端となっており、折曲げ部分20aの両側の直線状の係合部20cで転動体6に係合することができる。装着部21は、線材Wの、支持体20を形成した残りの部分を底面傾斜溝5に適合するように折曲げて形成してある。支持体20と線材Wの残り部分との境目Bが折曲げてあり、ここが支持体20の固定端20bとなっている。
【0026】
巻取カラー1に巻芯Cを外挿するとき、図8に示すように、リテーナ8の空所7がカラー本体3の底面傾斜溝5の深い部分の上方に位置し、転動体6は底面傾斜溝5の深い部分に移動しており、支持体20により弾力的に押上げられて、リテーナ8の外周面から最大限に突出している。
【0027】
巻芯Cをカラー本体3に外挿すると、この巻芯Cは、図5に示すように、突出している転動体6を押下げ、転動体6を支えている支持体20は撓む。即ち支持体20は底面傾斜溝5の深さ方向に弾力的に変位して底面傾斜溝5の底面に近づく。そして転動体6は、支持体20と巻芯Cとに挟まれた状態で、支持体20から押上げ力を受け、巻芯Cの内周面に押付けられる。この実施例では、転動体6が球体でありリテーナ8に対してあらゆる方向に回転可能に保持されているので、外挿中の巻芯Cに働く抵抗が小さくなる。
【0028】
この状態で、巻芯Cに帯状シート先端を接続して中心駆動軸2を回転駆動すると、巻芯Cがカラー本体3に対して底面傾斜溝5が浅くなる方向に回転しようとする。そして中心駆動軸2を回転駆動するか、或いは作業者が巻芯Cを中心駆動軸2の回転方向と反対の方向に回すと、巻芯Cの内周面と転動体6との摩擦力によりその転動体6に回転力が生じ、その転動体6が支持体20上を底面傾斜溝5の浅い方へ向けて転がろうとしてリテーナ8をカラー本体3の外周面に沿う方向に押す。このとき、転動体6とリテーナ8との接点は、その接点とリテーナ8の中心とを結ぶ直線方向において、転動体6と支持体と15の接点と、転動体6と巻芯Cの内周面との接点の間にあるため、転動体6は、その転動体6と巻芯Cの内周面との摩擦力より大きい力でリテーナ8を押すことができる。また回転力が生じた転動体と6リテーナ8との摩擦力は、転動体6による巻芯Cの内周面の押付力を増大させる方向に働く。それによってリテーナ8は、リテーナ付勢機構9の付勢力に抗しながらカラー本体3に対して底面傾斜溝5が浅くなる方向に回転し、そのリテーナ8の回転に伴い他の転動体15も底面傾斜溝5の浅い方へ移動し、各転動体6が溝の底面5と巻芯Cの内周面とに挟まれて楔として働く位置(図9に2点鎖線で示す)まで確実に移動することができる。その後は、転動体6は溝の底面5に押し上げられて、巻芯Cの内周面を押圧し、それによって巻芯Cがカラー本体3に固定される。
【0029】
中心駆動軸2に多数の巻取カラー1を装着して巻軸を構成する場合に、巻取カラー1は、中心駆動軸2から受けた回転力を巻芯Cに伝達する機能を選択的に停止したり復活させたりすることが簡単にできるのが望ましい。
【0030】
そこで、この実施例の巻取カラー1では、巻取開始前に必要に応じて転動体6を底面傾斜溝5の深い部分の所定位置に拘束したり、その拘束を解いたりすることができるようにするために、図4及び図10に示すように、収容溝10内に設けた片持ち梁状の止め板22と、止め板22の自由端付近に形成した穴23(図11に拡大して示す)と、転動体6が底面傾斜溝5の深い部分の所定位置にあるとき、穴23に嵌り得る、リテーナ8の内周面に設けた突起24と、リテーナ8の外周面の、止め板22に対応する箇所に形成した開口25とを備えている。
【0031】
止め板22はバネ鋼等の弾力的な板状の素材を折り返して形成してあり、その折り返し部分を挟んだ反対側は装着部26となっている。装着部26を収容溝10の底面に沿わせ、装着部26の後端の折り返し部分の内側をピン14に沿わせて係合させると共に装着部26の先端側に形成した折り曲げ部分の内側をピン27に沿わせて係合させることにより、止め板22をカラー本体4に係止している。そのため止め板22はカラー本体4に対して底面傾斜溝5の伸長方向に移動しないよう拘束されており、止め板22の自由端は収容溝10の深さ方向に弾力的に変位可能である。また圧縮コイルバネ11の一端は、止め板22の後端の折り返し部分を通じてピン14に係合している。突起24はリテーナの外周面に設けた孔に装着したピンからなる。なお穴23の代わりに止め板22の自由端付近に側縁から切り欠きを設けてもよい。
【0032】
図4において止め板22の先端に接する突起24は、図5において破線で示した突起24であり、右上の底面傾斜溝5の深い部分に位置する転動体6の背後にある。突起24が穴23に対応する位置までリテーナ8をカラー本体4に対して更に反時計方向に回転可能にするために、転動体6は図5に示す位置から2点鎖線で示す位置まで移動可能にしてある。
【0033】
図11は、図4に示す止め板22及びその付近を拡大して示してあり、図11に示す状態で開口25に棒状体28を挿入して止め板22を押すことにより、図12に示すように止め板22の先端付近を下方へ変位させ、その状態で、図13に示すように、穴23と突起24が対向するようにリテーナ8をカラー本体4に対して反時計方向に回転させた後、棒状体28を開口25から抜くことにより、図13に示すように穴23に突起24が嵌まり、リテーナ8が突起24及び止め板22を通じてカラー本体4に拘束されて回転不能になって、転動体6が底面傾斜溝5の深い部分の所定位置に拘束され、巻取カラー1による巻芯Cへの回転力伝達機能が停止される。
【0034】
また図13の状態から、棒状体28を図13に鎖線で示すように開口25に挿入して止め板22を押すことにより、図13に2点と鎖線で示すように止め板22の先端付近を下方へ変位させて、突起24を穴23から抜き、図11に示すように突起24が止め板22の自由端の前方に位置するまで、リテーナ8を、拘束時とは逆方向に回転させた後、棒状体28を開口25から抜去ることにより、リテーナ8はカラー本体4に対して回転可能になり、転動体6が底面傾斜溝5の深い部分の所定位置から解放され、底面傾斜溝5の浅い部分へ移動可能になる。そしてカラー本体4に巻芯Cが固定可能な状態になり、巻取カラー1による巻芯Cへの回転力伝達機能が復帰する。
【0035】
以上、一実施例を説明したが、本発明の実施形態は必要に応じて発明の要旨を変えることなく多様に変わり得る。例えば、本発明では、回転力伝達機能停止復帰用の上述の止め板22等を備えないものもあり得る。或いは、何れの底面傾斜溝内にも上述の支持体20を備えないものもあり得る。また転動体としてコロを用いることもできる。
【符号の説明】
【0036】
C 巻芯
1 巻取カラー
2 中心駆動軸
3 回転力伝達手段
4 カラー本体
5 底面傾斜溝
6 転動体
7 空所
8 リテーナ
9 リテーナ付勢機構
10 収容溝
11 伸縮体
12 第1係合手段
13 第2係合手段
14 ピン
15 ピン
19 ベアリング
20 支持体
21 装着部
22 止め板
23 穴
24 突起
25 開口
26 装着部
27 ピン
28 棒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状シートを巻取るための中心駆動軸に同心に回転自在に装着され、前記中心駆動軸から回転力伝達手段を介して回転力を受けるカラー本体と、前記カラー本体の外周面に円周方向に間隔をとって設けた複数の溝であって当該溝の底面が夫々前記中心駆動軸の回転方向沿いに次第に低くなるように形成してある複数の底面傾斜溝と、前記底面傾斜溝に配置した転動体と、前記転動体を前記溝から脱落しないよう収容する空所を持つ、前記カラー本体に回転自在に装着した環状のリテーナとを備え、前記カラー本体に被さっている、帯状シート巻取用の中空の巻芯が、前記カラー本体に対して前記溝が浅くなる方向に回転することにより、前記転動体が前記底面傾斜溝の浅い部分に移動すると共に該底面傾斜溝の底面により押上げられ、この転動体が前記巻芯の内周面を押圧することによって、前記巻芯を前記カラー本体に固く保持することができる巻取カラーにおいて、前記カラー本体の外周面の、前記リテーナで覆われる部分に、前記複数の底面傾斜溝の列に沿うように形成した収容溝と、前記収容溝に収容した、該収容溝の伸長方向に弾力的に伸縮可能な伸縮体と、前記カラー本体に設けた、前記伸縮体の一端に係合する第1係合手段と、前記リテーナに設けた、前記伸縮体の他の一端に係合する第2係合手段とからなり、前記カラー本体に巻芯が被さっていないとき前記転動体が前記底面傾斜溝の深い部分に戻るように前記リテーナを前記カラー本体に対して前記底面傾斜溝が深くなる方向へ付勢するリテーナ付勢機構を備えることを特徴とする巻取カラー。
【請求項2】
前記伸縮体が圧縮コイルバネである、請求項1に記載の巻取カラー。
【請求項3】
前記複数の底面傾斜溝のうちの少なくとも一つの底面傾斜溝の中に、前記転動体の移動方向沿いに伸長した支持体を前記底面傾斜溝の深さ方向に弾力的に変位可能に設け、前記底面傾斜溝の深い部分に移動した転動体を前記巻芯の内周面に押付け可能に前記支持体によって下から支えたことを特徴とする請求項1に記載の巻取カラー。
【請求項4】
前記収容溝内に、該収容溝の伸長方向に拘束して収容した、該収容溝の深さ方向に自由端が変位可能な片持ち梁状の止め板と、前記止め板の自由端付近に形成した穴又は切欠きと、前記転動体が底面傾斜溝の深い部分の所定位置にあるとき前記穴又は切り欠きに嵌り得る、前記リテーナの内周面に設けた突起と、 前記リテーナの外周面の、止め板に対応する箇所に形成した開口とを備える 請求項1又は請求項3に記載の巻取カラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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