説明

帯電部材の製造方法

【課題】紫外線照射による表面処理を行う際、電気抵抗むらが生じるのを抑制し、環境の変動に対しても安定した電気抵抗を有し、表面へのトナー等の付着を抑制し、耐久性に優れる帯電部材を安定して得られる帯電部材の製造方法を提供する。
【解決手段】バンダーと、該バインダーに分散してなる電子導電性粒子とを含有する導電性部材の表面に、該導電性部材の外部に配置した光源からの紫外線を照射して表面処理を行う工程を有する帯電部材の製造方法である。該表面処理を行う工程が、可視光線の透過を低減又は排除するフィルターを該光源と該導電性部材との間に介在させて行う工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LBP(Laser Beam Printer)、複写機及びファクシミリ等のOA機器において、電子写真プロセスを利用した画像形成装置に用いる帯電ローラ等の帯電部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感光体ドラム(以下、感光体ともいう。)に接触、回転して感光体の帯電処理を行う帯電部材は、画像形成に伴い現像剤に含まれるトナーや外添剤等が、感光体を介して帯電部材に付着することがある。このような、表面にトナーが外添剤等が付着した帯電部材を用いて感光体の帯電を行った場合、帯電部材のトナー等の付着が生じた部分に接触した感光体の表面の帯電が不充分となり、その部分を起点に、所謂白スジ等の画像不良が生じることがある。
【0003】
帯電部材の表面へのトナー等の付着の原因の一つとして、感光体と帯電部材の表面との動摩擦係数が大きいことが挙げられる。すなわち、動摩擦係数が大きい場合、感光体上に残留するトナーや外添剤に外力がかかり帯電部材の表面に付着しやすくなる。従って、帯電部材の表面の動摩擦係数を下げることは、トナー等の付着を抑制する上で重要である。また、帯電部材の表面に水分が付着すると、トナー等が付着しやすくなるため、帯電部材表面の親水性や粘着性を抑制することも良好な画像形成に効果がある。ここで、特許文献1には、ゴムローラ表面の摩擦係数や粘着性を低減させるために、ゴムローラに紫外線照射をする方法が提案されている。一方、画像形成装置は様々な環境で使用されるようになっている。そのため、帯電部材においても環境変動から受ける影響を低減させることは重要な課題である。特許文献2には、帯電部材の電気抵抗に関して、多様な環境において所望の体積抵抗値を有するように、カーボンブラック等の電子導電性粒子を含有する抵抗調整層を設けた帯電ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−292640号公報
【特許文献2】特開平11−237782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らの検討によれば、電子導電性粒子を含有した帯電ローラに対し、紫外線照射を行った場合、帯電ローラの電気抵抗が紫外線の照射によって電気抵抗むらが大きくなることがある。そこで、本発明の目的は、環境の変動に対しても安定した電気抵抗を有し、表面へのトナー等の付着を抑制し、耐久性に優れる帯電部材を製造方する法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、帯電部材の製造方法工程中、紫外線を発光する光源の光を照射して導電性部材の表面処理を行う場合、帯電部材の電気抵抗が紫外線の照射前後で変動し、また長手方向の電気抵抗むらが大きくなることの原因について探求した。そして、紫外線照射に用いる低圧水銀ランプ等から発光される光には紫外線の他、可視光線や赤外線も含まれることに着目し、適切な紫外線量を帯電部材に照射する間に、同時に可視光線や赤外線が照射され、それによって帯電部材が加熱されることの知見を得た。そして、帯電部材が加熱されることにより電気抵抗が変化し低抵抗化してしまうことを確認した。一方、紫外線照射前の帯電部材の成形時の加硫のための加熱や研磨時の圧力によっても、帯電部材に電気抵抗むらが生じる場合があるが、この電気抵抗むらが紫外線照射時の可視光線や赤外線による加熱によって増大することの知見を得た。紫外線照射による表面処理において帯電部材の電気抵抗むらが増大することの原因の解明により、帯電部材の表面処理を行う際に、紫外線を発光する光源からの光に含まれる可視光線や赤外線を除去又は低減すればよいことを見出した。紫外線照射の表面処理工程において、紫外線を透過し可視光線や赤外線の透過を阻害するフィルターを介在させて帯電部材に光源からの紫外線を照射することにより、必要な紫外線量を確保しつつ、帯電部材が加熱されるのを抑制することができることの知見を得た。特に、電子導電性粒子を含有し、環境の変動に対しても安定した電気抵抗値を有する導電性部材に対して、フィルターを介在させて紫外線を照射することにより、加熱により生じる電気抵抗むらを顕著に抑制することができることの知見を得た。これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明に係る帯電部材の製造方法は、バンダーと、該バインダーに分散してなる電子導電性粒子とを含有する導電性部材の表面に、該導電性部材の外部に配置した光源からの紫外線を照射して表面処理を行う工程を有する帯電部材の製造方法であって、
該表面処理を行う工程が、可視光線の透過を低減又は排除するフィルターを該光源と該導電性部材との間に介在させて行う工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紫外線照射による表面処理を行う際、電気抵抗むらが生じることを抑制することができる。そのため、安定した電気抵抗を有し、かつ、表面へのトナー等の付着が抑制された帯電部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る帯電部材を示す斜視図である。
【図2】本発明の帯電部材の製造方法に用いる紫外線照射装置の一例を示す構成図である。
【図3】本発明に係る帯電部材が適用される画像形成装置の一例を示す構成図である。
【図4】帯電部材の製造に用いる押出機の一例を示す構成図である。
【図5】本発明の帯電部材の製造方法に用いる光源の一例の発光スペクトルを示す図である。
【図6】本発明の帯電部材の製造方法に用いるフィルターの一例の透過率を示す図である。
【図7】本発明に係る帯電部材の電気抵抗測定装置を示す構成図である。
【図8】本発明の帯電部材の製造方法に用いる紫外線照射装置の例を示す構成図である。
【図9】本発明に係る帯電部材の電気抵抗測定装置の一部を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る帯電部材の製造方法は、バンダーと、該バインダーに分散してなる電子導電性粒子とを含有する導電性部材の表面に、該導電性部材の外部に配置した光源からの紫外線を照射して表面処理を行う工程を有する帯電部材の製造方法であって、
該表面処理を行う工程が、可視光線の透過を低減又は排除するフィルターを該光源と該導電性部材との間に介在させて行う工程を有する。
【0011】
本発明に係る帯電部材は、バンダーと、該バインダーに分散してなる電子導電性粒子とを含有する導電性部材を有する。
【0012】
上記帯電部材の形状は、特に限定されるものではなく、ローラ状、板状等いずれのものであってもよい。帯電部材の一態様としては、図1に示すように、円柱状又は円筒状の支持体101の周囲に導電性部材としての導電性弾性層102を設けた帯電ローラを挙げることができる。このような帯電ローラは、支持体と導電性弾性層との間や導電性弾性層の外周に機能層を設けたものであってもよい。
【0013】
支持体としては、導電性部材に感光体の帯電に必要な所望の導電性を付与するために外部電源を印加する場合、電極としての機能を有するように導電性を有することが好ましい。支持体の材質としては、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル等を挙げることができる。また、支持体は耐傷性の向上を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理等を施したものであってもよい。
【0014】
導電性部材に含まれるバインダーは、電子導電性粒子を分散し得るものであればよく、ゴム又は樹脂の少なくとも一方を含有するものが好ましい。バインダーとしてのゴムの例は、以下ものを含む。ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム。エピクロルヒドリンゴム、アルキルエーテルゴム等。
【0015】
バインダーとしての樹脂は、熱可塑性樹脂や、熱可塑性エラストマー等を含む。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。スチレン系エラストマーとしては、例えば、三菱化学(株)製商品名「ラバロン」、クラレ(株)製商品名「セプトンコンパウンド」等を挙げられる。また、オレフィン系エラストマーとしては以下のものが挙げられる。三菱化学(株)製商品名「サーモラン」、三井石油化学工業(株)社製商品名「ミラストマー」、住友化学工業(株)社製商品名「住友TPE」、アドバンストエラストマーシステムズ社製商品名「サントプレーン」。
【0016】
これらのゴム又は樹脂は1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
上記バインダーに分散される電子導電性粒子は、電子がキャリアとなって導電性を付与するものである。電子導電性粒子は、その種類及び使用量が適宜選択され、導電性部材の電気抵抗を略調整する。電子導電性粒子の使用量としては、導電性部材の電気抵抗が102〜108Ωの範囲、より好適には103〜106Ωの範囲となるような量を選択することが好ましい。導電性部材の電気抵抗が108Ω以下であれば、感光体の帯電を充分に行うことができ、得られる画像に、横スジ等の画像不良が発生するのを抑制することができる。また、導電性部材の電気抵抗が102以上であれば、高電流が流れるのを抑制し、感光体がリークするのを抑制することができる。使用する画像形成装置やそのプロセスに応じて、導電性部材の電気抵抗値が所望の値となるように電子導電性粒子やその使用量を適宜選択することができる。
【0018】
電子導電性粒子として、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、熱分解カーボン等の導電性カーボンを用いることもできる。ゴム用カーボンとして、具体的には、以下のものを挙げることができる。Super Abrasion Furnace(SAF:超耐摩耗性)、Intermediate Super Abrasion Furnace(ISAF:準超耐摩耗性)、High Abrasion Furnace(HAF:高耐摩耗性)。Fast Extruding Furnace(FEF:良押し出し性)、General Purpose Furnace(GPF:汎用性)、Semi Rein Forcing Furnace(SRF:中補強性)。Fine Thermal(FT:微粒熱分解)、Medium Thermal(MT:中粒熱分解)等。
【0019】
また、電子導電性粒子として、天然グラファイト、人造グラファイト等のグラファイトを用いることもできる。また、電子導電性粒子として、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物や、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属の粒子の他、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマーの粒子を用いることもできる。
【0020】
上記導電性部材は、無機化合物又は有機化合物からなる充填剤や架橋剤を含有してもよい。充填剤としては、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、イオウ、過酸化物、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤等を挙げることができる。
【0021】
上記導電性部材の厚さは、例えば、1〜4mmを挙げることができる。
【0022】
このような導電性部材を成形する方法としては、注型成形、押出成形等、いずれであってもよい。例えば、円筒金型に同軸状に2つの円筒駒によって支持される支持体をセットし、電子導電性粒子と未硬化のゴム又は樹脂材料を混合した導電性部材材料を金型内へ注入し、加熱することにより材料を硬化させて導電性部材を成形する射出成形を挙げることができる。また、導電性部材材料をチューブ状に押出し成形した後、チューブに支持体を挿入する方法、あるいは、支持体と導電性部材材料を一体に押出して導電性部材を成形する押出成形、トランスファー成形、プレス成形等を挙げることができる。製造時間の短縮を考えると導電性部材材料を支持体と一体に押出して導電性部材を成形する押出成形が好ましい。
【0023】
導電性部材がゴムを含有する場合、導電性部材材料を硬化する方法としては、加熱状態の円筒状又は平面状の部材に回転させながら押し当てる方法を用いることができる。更に、これと共に熱風炉、加硫缶、熱盤、遠・近赤外線、誘導加熱等のいずれかの方法を併用してもよい。加熱温度としては140℃以上220℃以下の範囲、加熱時間としては10分以上120分以下の範囲であることが好ましい。
【0024】
硬化後、導電性部材の表面を研磨する工程を有していてもよい。表面を研磨する工程においては、導電性部材を所望の形状、表面粗さの導電性部材にすることができる。導電部材の研磨は、砥石等を用いた乾式研磨を用いることができる。
【0025】
導電性部材の成形後、紫外線を照射して導電性部材の表面を処理する表面処理工程を行う。以下に表面処理工程について説明する。
【0026】
表面処理工程は、動摩擦係数が低く、かつ、粘着性の低い帯電部材表面を形成するためのものである。当該表面処理工程で用いる導電性部材の外部に配置する光源は、紫外線を発生するものである。当該紫外線は、400nm以下の波長を有するものであればよいが、200nm以上であることが好ましい。紫外線の波長が200nm以上であれば、オゾンの発生を低減できる。該光源が発する光の最大の発光ピークの波長が、200nm以上400nm以下であることが好ましい。特には、当該最大の発光ピークの波長が、254nm近傍、例えば、254±1nmの範囲にあることが好ましい。これは、上記波長域または上記波長の紫外線が導電性部材の表面を改質させる活性酸素を効率よく発生させることができるためである。紫外線の発光ピークが複数存在する場合、そのうち一つが254nm近傍に存在することが好ましい。
【0027】
光源から発光される光の強度は導電性部材の表面を改質できる程度であれば、特に限定されるものではなく、後述するフィルターを透過後において、35mW/cm2とすることができる。光の強度は、分光放射照度計(USR−40V/D ウシオ電機株式会社製)、紫外線積算光量計(UIT―150−A、UVD−S254、VUV−S172、VUV−S365 ウシオ電機株式会社製)等を用いて測定した値を採用することができる。
【0028】
また、表面処理工程で導電性部材に照射される紫外線の積算光量は、得られる表面処理の効果に応じて適宜選択すればよい。その調節は、後述するフィルターの種類、光源からの光による導電性部材の照射時間、光源の出力、光源と導電性部材間の距離等により行うことが可能で、例えば、10000mJ/cm2等所望の積算光量が得られるように決めればよい。
【0029】
導電性部材に照射される紫外線の積算光量は以下の方法により算出することができる。
【0030】
紫外線積算光量(mJ/cm2)=紫外線強度(mW/cm2)×照射時間(sec)
ここで紫外線強度は、後述するフィルター透過後の紫外線強である。
【0031】
紫外線を発光する光源としては、例えば、高圧水銀ランプや低圧水銀ランプを好適に使用することができる。これらの光源は、照射距離による減衰が少ない好適な波長の紫外線を安定して発光することができ、導電性部材の表面を全体に亘り均一に容易に照射することができることから、好ましい。
【0032】
上記紫外線を導電性部材に照射する際、光源と導電性部材との間に介在させるフィルターは、光源が発光する光に含まれる可視光線や赤外線の透過を低減又は排除する機能を有する。フィルターは、光源からの光に含まれる紫外線を透過させ、導電性部材の表面処理に必要な紫外線量を確保しつつ、かかる光源から発光される可視光線量や赤外線量を低減し又は除去し、昇温による導電性部材の電気抵抗の変化を制御し、電気抵抗むらを低減する。
【0033】
上記フィルターは、光源から発光される光のうち、400nm以下の波長の紫外線の透過率が、400nmを超える波長の可視光や赤外線の透過率より高いものであればよいが、400nm以下の波長光の平均透過率が70%以上であることが好ましい。400nm以下の波長光の平均透過率が70%以上であれば、導電性部材の表面処理を短時間で行うことができる。更に、400nmを超える波長光の平均透過率が50%以下であることが、導電性部材の余剰な過熱による劣化を抑制することができるため、好ましい。上記平均透過率は、光源から発光する各波長における光の強度及びフィルターの透過率から以下の式から算出される値とすることができる。
平均透過率(%)=∫(波長λの強度(mW/cm2)×波長λ透過率)/∫(波長λの強度(mW/cm2))×100
例えば、光源から発光される400nm以下の紫外線の平均透過率は、上記の式の積分区間を400nm以下として求めることができる。また、分光光度計を用いてフィルターの配置前後での各波長における強度の比を求めて計算してもよい。
【0034】
このようなフィルターとしては、例えば、ガラス等を基板とし、基板上にチタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、クロムの窒化物等を含む層を形成したものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0035】
表面処理工程において、導電性部材の紫外線照射は、光源と導電性部材間にフィルターを配置して、導電性部材全体に亘って均一に紫外線を照射して行うことができる。ローラ形状の場合は、ローラ面に光源の光を照射し、ローラを一定の回転速度、例えば、30rpmで回転させて行うことが、均一に表面処理を行うことができることから、好ましい。
【0036】
また、フィルターは、導電性部材の全体に亘って照射される可視光線や赤外線の透過を低減又は除去させるように配置することもできるが、特定の部分に照射される可視光線や赤外線の透過を低減又は除去するように配置してもよい。更に、可視光や赤外線の透過率が異なる複数種のフィルターを用い、導電性部材の特定の部分に生じる電気抵抗むらの低減を図り、全体として均一な電気抵抗を有するようにすることも可能である。上記表面処理を行うために、紫外線照射装置を用いてもよい。紫外線照射装置の一例としては、図2の模式図に示すものを挙げることができる。
【0037】
図2に示す紫外線照射装置は、成形したゴムロ−ラ206の支持体206aに接触しつつ一定速度で回転する1対のローラを有するローラ回転部材207、紫外線照射口208を有する光源208aを有する。紫外線照射口は、例えば、2つの円形を有し、この紫外線照射口から放出される光路中にフィルター209が設けられる。紫外線照射口から放出される光がフィルターにより、これに含まれる可視光及び赤外線の光量が低減又は排除され、フィルターを透過した紫外線が帯電ローラを照射し、導電性部材の表面処理がなされる。
【0038】
また、導電性部材の成形後、紫外線照射を行う表面処理を行う工程の前に、表面処理剤を導電性部材の表面に付着させる工程を行い、導電性部材の更なる動摩擦係数の低減や粘着性の低下を図ってもよい。表面処理剤を導電性部材に付着させるには、表面処理剤を導電性部材に含浸・浸透させる方法を挙げることができる。表面処理剤としては、シリコーン系、フッ素系、ウレタン系、アクリル系、ウレタン変性アクリル系、シリコーン変性ウレタン系を用いることができる。また、表面処理剤として光重合開始剤とカチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物を用いることが好ましい。表面処理剤を含浸・浸透させる方法としては、円筒状のリングヘッドを用いたリング塗布方法、浸漬方法、スプレー塗布方法等を挙げることができる。
【0039】
本発明の帯電部材の製造方法により得られる帯電部材は、LBP(Laser Beam Printer)、複写機及びファクシミリ等の画像形成装置の感光体を帯電する帯電部材として用いられる。上記帯電部材を用いた画像形成装置の一例を図3に示す。図3に示す画像形成装置は、回転ドラム型・転写方式の電子写真装置であって、像担持体としてのドラム型の感光体301を有し、感光体が右方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動されるようになっている。回転する感光体に接触回転可能に配置される帯電部材である帯電ローラ303が電源302に接続されて設けられ、帯電バイアスが印加された導電性弾性層に接触回転する感光体が、表面を所定の極性・電位に一様帯電される。更に、目的の画像情報に対応したネガ画像露光を受けて静電潜像を形成する露光系304が設けられる。更に、静電潜像にマイナストナーを供給する現像ローラ305が設けられ、静電潜像が反転現像されトナー画像として現像されるようになっている。更に、トナー画像を感光体から紙等の転写材に転写する転写ローラ306が設けられ、電源307から転写バイアスが印加された転写ローラーと感光体との間に、不図示の給紙手段から所定のタイミングで供給される転写材にトナー像が順次転写される。転写材上のトナー画像を定着する定着手段(不図示)が設けられ、これによりトナー画像は転写材に定着される。一方、トナー画像転写後の感光体表面に残留するトナーの除去を行うクリーニング手段308が設けられ、残留トナー等の付着汚染物の除去処理により清浄面化された感光体は繰り返して画像形成に供されるようになっている。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明の帯電部材の製造方法を具体的に詳細に説明する。
[実施例1]
[ゴムローラの作製]
原料ゴムとして、以下の材料を6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX トーシン社製)にて、充填率70vol%、ブレード回転数30rpmで16分混合して未加硫ゴム組成物を得た。
【0041】
NBR(商品名:JSR N230SV JSR社製)100質量部
加工助剤としてステアリン酸亜鉛1質量部
加硫促進助剤として酸化亜鉛5質量部
充填剤として炭酸カルシウム(商品名:シルバーW 白石工業社製)10質量部
導電剤としてカーボンブラック(商品名:シーストG600 東海カーボン社製)45質量部
得られた未加硫ゴム組成物161質量部に対して、以下のものを加えロール径12インチのオープンロールにて、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで20分混合した。
【0042】
架橋剤として硫黄1.2質量部
加硫促進剤としてテトラベンジルチウラムジスルフィド(商品名:ノクセラーTBzTD、大内新興化学社製)4.0質量部
その後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、弾性体層用の未加硫ゴム組成物を得た。次いで、外径φ6mm、長さ258mmのステンレス棒の芯金を用意し、図4の模式的に示す押出機を用いて、芯金と得られた未加硫ゴム組成物とを一体に押出してローラを成形した。図4に示す押出機においては、押出機上部に配置される不図示の芯金保持容器から順次取り出された芯金は、複数対の芯金送りローラ403によって、垂直下方向へ間隙なく搬送され、クロスヘッド402へ導入される。一方、混合された未加硫ゴム組成物は押出機401により芯金の搬送方向に対し垂直方向からクロスヘッド402へ供給され、ここで芯金の周囲に充填されクロスヘッドから押し出される。その後、切断除去機405によりゴム層を切断して、各芯金毎に分断しローラ406とする。その後、160℃、2時間の加熱加硫を行い、端部の切断・除去処理により、ゴム部の長さ232mmの加硫ゴムローラを得た。この加硫ゴムローラを幅広研磨機(ゴムロール専用 CNC研削盤LEO−600−F4L-BME)を用いて中心外径が8.5mmになるまで、切り込み速度2m/分で研削しゴムローラを得た。
【0043】
[表面処理]
得られたゴムローラに対し、図2に示す紫外線照射処理装置を用いて紫外線照射を5分間行い、表面処理を行い、帯電ローラを得た。光源は、254nmを最大発光ピークとする酸化チタン含有の石英ガラスを用いた低圧水銀オゾンレスランプ(ハリソン東芝ライティング製)を用いた。フィルターは紫外線透過可視吸収フィルターUTVAF-33U(シグマ光機株式会社製)を用いた。このフィルターは400nm以下の波長光に対する平均透過率が約60%であり、400nmより大きい波長光に対する平均透過率は約10%であった。低圧水銀オゾンレスランプの発光スペクトルを波長254nmにおける最大発光強度を基準として図5に、フィルターの透過率を図6(a)に示す。
【0044】
[評価方法]
得られた帯電ローラについて、以下のように動摩擦係数、電気抵抗を測定し、画像評価を行った。結果を表1に示す。
[動摩擦係数]
ローラ摩擦係数測定機を用いて帯電ローラの動摩擦係数を測定した。ローラ摩擦係数測定機による動摩擦係数の測定においては、一端をロードセル或いはテンションゲージに接続し、他端に一定荷重Wを負荷したシート状体(例えば、ステンレス等の金属フィルムやPET等のプラスチックフィルム)を用いる。ここで、厚み25μm、幅30mmのPETフィルムを用い、総荷重Wは100g、ローラ回転数は115ppmの条件で測定を行った。被測定体の帯電ローラの表面に所定の巻付け角度θでシート状体を接触させておき、帯電ローラを一定速度で回転させてシート状体を帯電ローラの表面に摺動させたときの張力Tを測定する。この測定値張力Tを、次のオイラーの式に適用して動摩擦係数μを求めた。
【0045】
μ=(1/θ)・ln(T/W)
μ:動摩擦係数
θ:巻付け角(ラジアン)
W:荷重(g)
T:張力(g)
[電気抵抗]
図7の概略図に示す電気抵抗測定装置を用いて帯電ローラの電気抵抗を測定した。図7に示す電気抵抗測定装置による被測定体の帯電ローラの電気抵抗の測定は、帯電ローラ501の芯金の両端部を不図示の押圧手段で円柱形上のアルミドラム503に圧接させ、アルミドラムの回転駆動に伴って従動回転させる。この状態で、帯電ローラの芯金部分に電源502を用いて直流電圧(200V)を印加し、アルミドラムに直列に接続した抵抗504にかかる電圧から帯電ローラの電気抵抗を測定する。電気抵抗の測定は紫外線照射前のゴムローラ(抵抗値R1)、照射後(耐久前)の帯電ローラ(抵抗値R2)、耐久試験後の帯電ローラ(抵抗値R3)にそれぞれについて行った。測定した抵抗値から、紫外線照射前後の抵抗比(抵抗値R1/抵抗値R2)、耐久試験前後の抵抗比(抵抗値R2/抵抗値R3)を求めた。実施例1において、得られた帯電ローラは、紫外線照射前後、また耐久試験前後において電気抵抗値の変化は小さく、評価画像上問題となる不良は発生しなかった。
【0046】
[画像評価]
帯電ローラを図3に示す画像形成装置(Color LaserJet 3500n ヒューレット・パッカード製A4出力用)に帯電ローラとして、感光体の両端に500gづつの荷重を負荷して圧接して組み込んだ。23.5℃/60%の環境でハーフトーン画像を連続6000枚出力し、耐久試験を行った。耐久試験前後の出力画像を比較して、以下の基準により画像評価を行った。
[リーク]
○:耐久試験前の画像にリークによる画像異常がない
×:耐久試験前の画像にリークによる画像異常が発生した
[耐久試験後の横スジ]
○:耐久試験後の画像に帯電不良によって発生する横スジ状の画像異常がない
×:耐久試験後の画像に帯電不良によって発生する横スジ状の画像異常が発生した
[耐久試験後の汚れ]
◎:画像、ローラ表面上のどちらにも汚れは確認されない
○:汚れによる不良画像はないが、ローラ表面には、若干汚れが発生した
×:画像に汚れによる不良が見られた。
実施例1において、得られた帯電ローラ表面上の汚れは若干確認されたものの汚れによる不良画像もなく、良好な画像を得ることができた。
【0047】
[実施例2]
フィルターを長波長カットフィルターSU0400(朝日分光株式会社製、透過率は図6(b)に示す。)にし、照射時間を3分に変更した以外は実施例1と同様に帯電ローラを作製し、評価を行った。得られた帯電ローラは、紫外線透過率の高いフィルターを用いたため、比較的短い照射時間でも、動摩擦係数は低下した。
【0048】
[実施例3]
フィルターを長波長カットフィルターSU0450(朝日分光株式会社製、透過率は図6(c)に示す。)に変更した以外は実施例2と同様に帯電ローラを作製し、評価を行った。 得られた帯電ローラは、紫外線照射装置から発光する可視光に対して透過率が実施例2で用いたフィルターより高いフィルターを用いたことから、紫外線照射前後、耐久試験前後の抵抗比が実施例2と比較して大きくなった。しかし、画像異常は発生しなかった。
【0049】
[実施例4]
以下の表面処理剤を調製し、ゴムローラの紫外線処理直前にリング塗布により均一に塗布した以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製し、評価を行った。
【0050】
フェニルトリエトキシシラン(PhTES)37.44g(0.156mol(加水分解性シラン化合物総量に対して48.67mol%相当))
グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)21.68g(0.078mol)
ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)13.21g(0.064mol)
トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6)11.42g(0.022mol)
水25.93g
エタノール71.91gとを混合した後、室温で攪拌し、次いで120℃にて24時間還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物を得た。この縮合物を2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の縮合物含有アルコール溶液を調製した。この縮合物含有アルコール溶液100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を添加し、エタノールで希釈して、固形分2質量%の表面処理剤を調製した。得られた帯電ローラは、耐久試験後、表面上の汚れはほとんど観察されなかった。
【0051】
[比較例1、2]
フィルターを使用せずに照射時間を3分、2分とした以外は実施例1と同様に帯電ローラを作製し、評価を行った。得られた帯電ローラは、耐久試験前に感光体のリークによる画像異常が現れた。紫外線照射時に抵抗が低くなったためと考えられる。また、比較例2においては紫外線量が不足したため、十分な動摩擦係数が得られていなかった。
【0052】
【表1】

【0053】
[実施例5]
押出機により芯金の周囲に押し出した未加硫ゴム組成物の160℃2時間加熱を160℃1時間に変更して加熱加硫を行いゴムローラを作製し、図8に示す紫外線照射装置に変更して紫外線照射を行った他は、実施例1と同様に帯電ローラを作製した。得られた帯電ローラに対し、以下に示す電気抵抗の測定を除き、実施例1と同様に動摩擦係数を測定し、画像評価を行った。
【0054】
図8に示す紫外線照射装置は、ゴムローラ206の支持体に懸架されるエンドレスベルトを有するローラ回転部材217、紫外線照射口218を有する光源218aを有する。紫外線照射口から放出される光路の一部にフィルター219を備えたものである。この紫外線照射装置においては紫外線照射口から放出される光は一部がフィルターによりこれに含まれる可視光及び赤外線の光量が低減又は排除され紫外線による帯電ローラの表面処理がされる。
【0055】
このような紫外線照射装置を用いて表面処理を行って得られた帯電ローラについて、実施例1と同様に、図7に示す電気抵抗測定装置を用いて、紫外線照射前後の抵抗比1(抵抗値R1/抵抗値R2)を求めた。更に、図7に示す電気抵抗測定装置のアルミドラム503を、図9に示すように軸方向に対し表面を垂直方向に8分割し、それぞれに抵抗504を接続した測定部1〜8を有するアルミドラム505に変更した測定装置を用いて電気抵抗を測定した。各測定部は幅23mmとし、測定部間には幅5mmの非導電部を設けた。 紫外線照射前のゴムローラ、照射後の帯電ローラについて、それぞれ測定部1〜8の電気抵抗を測定し、8つの測定値のうち最小値と最大値の比を算出した。測定は帯電ローラ周分(360点)行い、平均値を算出した。結果を表2に示す。表中、抵抗比2、抵抗比3は以下の値を示す。
【0056】
抵抗比2(Ω/Ω):紫外線照射前のゴムローラにおける最大値/最小値の平均値
抵抗比3(Ω/Ω):紫外線照射後の帯電ローラにおける最大値/最小値の平均値
得られた帯電ロ−ラは、抵抗比2が3.1に対して抵抗比3が1.9となり、抵抗むらが改善された。紫外線照射前後とも最小抵抗値は測定部5であり、最高抵抗値は測定部1であった。
【0057】
[実施例6]
カーボンブラック量を43質量部とし、フィルターを長波長カットフィルターSU0450(朝日分光株式会社製)に変更した以外は実施例5と同様に帯電ローラを作製し評価を行った。得られた帯電ローラは、紫外線の透過率が実施例5に比べ高いため、3分間の照射時間で動摩擦係数が低減した。また、抵抗比3も1.5と小さい値になり、画像評価においても良好な結果となった。
【0058】
[実施例7]
フィルターを長波長カットフィルターSU0400(朝日分光株式会社製)に変更した以外は実施例5と同様に帯電ローラを作製し評価を行った。得られた帯電ローラは、抵抗比3が1.7と小さく、動摩擦係数が小さい。また、紫外線照射前後における抵抗比1も0.75と変化が少ない結果となった。
【0059】
[実施例8]
フィルターを以下のように変更した以外は実施例5と同様に帯電ローラを作製し評価を行った。帯電ローラの両端部から各60mm位置までの区間において、低圧水銀オゾンレスランプから発する光が主に長波長カットフィルターSU0450(朝日分光株式会社製)を通って照射されるようにフィルターを配置した。上記両端部間の帯電ローラ中央部分には長波長カットフィルターSU0400(朝日分光株式会社製)を配置して、紫外線照射を行った。得られた帯電ローラは、3分間の紫外線照射で動摩擦係数が十分に低下し、また抵抗比3は1.4と長手方向の電気抵抗むらが少なかった。
【0060】
[比較例3]
カーボンブラック量を41質量部とし、紫外線照射時にフィルターを配置しなかった以外は実施例5と同じ条件で帯電ローラを作製し、評価した。得られた帯電ローラは、動摩擦係数は十分に低下したものの、抵抗比3が3.6と大きくなり、画像評価において、帯電ローラの長手方向に若干の濃淡むらがみられた。
【0061】
【表2】

【符号の説明】
【0062】
101 支持体
102 導電性弾性層
206 ゴムローラ
207 ローラ回転部材
208 紫外線照射口
208a 光源
209 フィルター
303、501 帯電ローラ(帯電部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンダーと、該バインダーに分散してなる電子導電性粒子とを含有する導電性部材の表面に、該導電性部材の外部に配置した光源からの紫外線を照射して表面処理を行う工程を有する帯電部材の製造方法であって、
該表面処理を行う工程が、可視光線の透過を低減又は排除するフィルターを該光源と該導電性部材との間に介在させて行う工程を有することを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項2】
前記光源が発する光の最大の発光ピ−クの波長が200nm以上400nm以下の範囲にある請求項1に記載の帯電部材の製造方法。
【請求項3】
前記フィルターが、前記光源が発する光に含まれる400nm以下の波長光に対し、70%以上の平均透過率を有する請求項1又は2に記載の帯電部材の製造方法。
【請求項4】
前記フィルターが、前記光源が発する光に含まれる400nmを超える波長光に対し、50%以下の平均透過率を有する請求項1から3のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項5】
前記導電性部材がローラ形状を有し、前記表面処理を行う工程において、該導電性部材を回転させて行う請求項1から4のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項6】
前記光源が発する光の最大の発光ピークの波長が254nm近傍にある請求項1から5のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項7】
前記表面処理を行う工程の前に、光重合開始剤とカチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物を含有する表面処理剤を導電性部材の表面に付着させる工程を有する請求項1から6のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−229319(P2010−229319A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79149(P2009−79149)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】