説明

干し柿等の乾燥装置

【課題】高品質の干し柿等を能率良く、自動生産可能な乾燥装置の提供。
【解決手段】乾燥室1内に回転軸5、5aを中心として回転する干し竿6、6aを取り付けて、この干し竿6、6aに縄掛けした柿aを吊るし、駆動モータ8、8aにより前記回転軸5、5aを回転させながら、乾燥室1内に取り付けた温風ヒータ、遠赤外線ヒータ11、除湿機、換気扇、送風機を駆動して高品質の干し柿を能率良く、自動生産可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主としてあんぽ柿に代表される干し柿、あるいはその他の乾燥果実、野菜、魚介類等を人工的に乾燥して製品に仕上げるための乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
干し柿は、通常皮をむいた後、縄掛けして軒下の竿にかけて干したり、すだれのようにして自然乾燥するものであるが、自家用ではなく、市場に出荷するものの場合は、干し柿を人工的に乾燥する場合がある。
このような人工乾燥方法として、次に記載した公開特許公報に掲載されたものが公知である。
【特許文献1】特開2001−218555号公報 この公知例は、乾燥室内の温度及び湿度を一定の環境下に自動制御することにより果物を最終的に10%以下の湿度環境下に制御すると云うものである。
【0003】
しかし、上記公知例の場合、1回に乾燥できる量が少ないのと、乾燥が均一に行われないと云う欠点がある。また、人工乾燥条件は、柿の量や干し方で変わるが、これらの条件に適合した乾燥はしていないために、品質が安定しないと云う欠点がある。また、乾燥作業に手間がかかり、更に、乾燥コストが高くつくと云う欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、斯る点に鑑みて提案されるものであって、その目的は、1回に乾燥できる量が多く、乾燥を均一に行うことができ、品質が安定し、作業性が良く、省エネルギーに基づく低コスト生産が可能な干し柿等の乾燥装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、干し柿等の乾燥装置において、乾燥室内の天井近くに回転軸を中心として放射状に形成された干し竿を取り付けたこと、前記干し竿は、駆動モータにより回転自在であること、前記乾燥室内には、乾燥用熱源器及び換気扇が取り付けられていること、前記乾燥室には、前記駆動モータ及び乾燥用熱源器と換気扇の駆動を制御する制御器が取り付けられていること、を特徴とするものである。
【0006】
更に、請求項2に記載の発明においては、請求項1の乾燥室には、室内の湿気を取り除く為の除湿機が取り付けられていること、を特徴とするものである。
この発明によると、低湿度下で乾燥が行われるため、乾燥時間の短縮と美味なる製品に仕上げることができる。
【0007】
更に、請求項3に記載の発明においては、請求項1の乾燥室には、室内の空気を撹拌するための送風機が取り付けられていること、を特徴とするものである。
この発明によると、乾燥室内の温度と湿度の均一化を図り、均一な品質の製品に仕上げることができる。
【0008】
更に、請求項4に記載の発明においては、請求項1の干し竿の回転方向は、制御器の制御により時計方向と反時計方向に切り換え自在であると共にその回転速度を任意に設定可能であること、を特徴とするものである。
この発明によると、均一な品質の製品に仕上げることができると共に、柿の出し入れが入口付近ですべて行うことができるので、スムーズに入出庫ができる。
【0009】
更に、請求項5に記載の発明においては、請求項1の干し竿は、回転軸に対して複数段に形成されていること、を特徴とするものである。
この発明によると、面積当りの生産量を高めることができる。
【0010】
更に、請求項6に記載の発明においては、請求項1の干し竿は、乾燥室内に1基又は2基以上設けられていること、を特徴とするものである。
この発明によると、1回の乾燥において、生産量の増大をもたらすことができる。
【0011】
更に、請求項7に記載の発明においては、請求項1の乾燥用熱源器は、温風ヒータ又は遠赤外線ヒータ又はこの双方から成り、それぞれ一台又は複数台が乾燥室に設備されていること、を特徴とするものである。
この発明中、特に遠赤外線ヒータを用いることにより、生産性の向上と、美味なる製品に仕上げることができる。
【0012】
更に、請求項8に記載の発明においては、請求項1の乾燥室には、出入口が設けられていると共に、この出入口には、乾燥中の柿等の状況を外から視認するための透視窓が設けられていること、を特徴とするものである。
この発明によると、自動的な乾燥に併せて、目視により乾燥状態を観察することができる。
【0013】
[作用]
乾燥室内の干し竿には、縄掛けした柿をフック等を利用して吊るす。その上で、乾燥用熱源器を駆動して、あらかじめ定めた室内温度に制御すると共に換気扇を制御しながら、排気と乾燥室内の湿度調整を行う。この室内温度、換気、除湿の制御は、それぞれ室内に取り付けたセンサからの信号に基づいてフィードバック制御方式で行う。
【0014】
その上で、駆動モータを駆動して回転軸を回転させると、干し竿に吊るされた柿が一緒に回転する。この回転スピードは、縄掛けされた柿同士が擦れたりしない微速で行う。その上で、同一方向ばかりでなく、反対方の回転も加味することで、乾燥の均一化を図る。併せて、送風機を回転することで、乾燥室内の上下を含めて温度と湿度の均一化を図る。
乾燥状態は、透視窓から視認で観察することも出来るが、あらかじめ取得したデータを基にプログラム化してあり、自動乾燥が基本である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上の如き構成から成り、次の効果を奏する。
1.被乾燥物の乾燥条件に合わせて、乾燥室内の温度、湿度を自動制御しながら、最上の 製品に仕上げることができる。
2.乾燥工程、条件をすべて自動制御するため、手間がかからないと共に製品の品質を安 定させることができる。
3.干し竿の回転方向及び速度を自由に変更できるため、被乾燥物に合わせた乾燥条件を 選択できる。
4.遠赤外線ヒータを併用することにより、被乾燥物はその表面から芯まで同一条件で乾 燥されるため、美味なる製品に仕上げることができる。
5.本発明に係る乾燥装置は、干し柿以外に種々の果実、野菜、魚介類の乾燥にも利用できる。
【実施例】
【0016】
以下に本発明の実施例を詳述する。図1は、乾燥装置全体を示す正面図、図2は側面図、図3は乾燥室内を上方から見た平面図、図4は乾燥室の縦断正面図、図5は吊り竿にフックを利用して柿(縄)を掛けた状態の説明図である。
これら図1〜図5において、符号の1は乾燥室であって、この乾燥室1は、正面の出入口に覗き窓3及びガラリ15付のドア2を取り付けると共に、このドア2の横の壁に制御盤4を取り付けた外観構造から成る。
【0017】
5、5aは乾燥室1内において、天板1aと床板1b間に取り付けられた回転軸であって、この回転軸5、5aの上部には、2段に干し竿6、6aが取り付けられていて、この干し竿6、6aは、回転軸5、5aに固定された基盤7、7aから放射状に突設した構成から成り、上下の干し竿6、6aは、上下に重ならないようにずらした状態で等角度に設定されている。8、8aは前記回転軸5、5aを回転するために、天板1aの外に取り付けられた駆動モータであって、この駆動モータ8、8aの回転は、ギアーボックス9、9aを経由して回転軸5、5aに伝達され、その回転方向と速度は前記制御盤4により制御される。
10は温風ヒータ、11は遠赤外線ヒータ、12は除湿器、13は換気扇であって、温風ヒータ10と遠赤外線ヒータ11、換気扇13の運転は、前記制御盤4により制御される。12は除湿器、14は送風機、15はガラリである。
【0018】
次に、上記乾燥装置の運転例を説明する。皮を剥いた柿aは、図5に示すように、縄bに掛け、これをフック16を利用して干し竿6、(6a)に掛ける。その上で、乾燥室1のドア2を閉じ、制御盤4の運転スイッチをONに制御すると、先ず駆動モータ8、8aが運転を開始して回転軸5、5aを一分間に2回転させ、同時に温風ヒータ10及び遠赤外線ヒータ11、送風機14が運転を開始して、乾燥室1内の温度を約40℃に昇温する。この室内の温度は、室内に取り付けられた温度センサからの信号でフィードバック制御される。
【0019】
送風機14は、常時運転を行い、室内の空気を強制的に撹拌させることにより温度の均一化が図られる。
このようにして柿aは乾燥されるが、室内の湿度が一定値以上、例えば60〜70%になると湿度センサからの信号により、除湿器12が運転を開始して、、室内の湿度調整が行われる。
【0020】
そして、室内の温度が40℃以上になると、換気扇13が運転を開始して、室内から高温多湿の空気を室外に排出し、ガラリ15から給気を行い、常時室内が40℃となるように制御される。この室温の制御は、併せて温風ヒータ10及び遠赤外線ヒータ11の運転を制御して、常時室温を40℃前後に制御する。
【0021】
以上に記述した運転はほんの一例であって、柿の種類や量等によりあらかじめ運転モードを設定することが可能であり、この設定されたモードに基づいて自動乾燥が行われる。但し、手動で運転を停止したりすることは勿論可能である。なお、本発明に係る乾燥装置は、干し柿の生産例を主に説明したが、その他、例えば干し芋の乾燥、あるいは魚介類の乾燥にも利用することが可能であり、その用途は自由である。
したがって、干し竿6、6aに対する吊り方も夫々の被乾燥物によって異なる。勿論、干し柿の場合も、縄以外のもので吊るようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る乾燥装置の全体図。
【図2】本発明に係る乾燥装置の側面図。
【図3】乾燥室内の平面図。
【図4】乾燥室の縦断正面図。
【図5】干し竿に柿を縄掛けした状態の説明図。
【符号の説明】
【0023】
1 乾燥室
4 制御盤
5、5a 回転軸
6、6a 干し竿
10 温風ヒータ
11 遠赤外線ヒータ
12 除湿機
13 換気扇
14 送風機
15 ガラリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥室内の天井近くに回転軸を中心として放射状に形成された干し竿を取り付けたこと、前記干し竿は、駆動モータにより回転自在であること、前記乾燥室内には、乾燥用熱源器及び換気扇が取り付けられていること、前記乾燥室には、前記駆動モータ及び乾燥用熱源器と換気扇の駆動を制御する制御器が取り付けられていること、を特徴とする干し柿等の乾燥装置。
【請求項2】
請求項1の乾燥室には、室内の湿気を取り除く為の除湿機が取り付けられていること、を特徴とする干し柿等の乾燥装置。
【請求項3】
請求項1の乾燥室には、室内の空気を撹拌するための送風機が取り付けられていること、を特徴とする干し柿等の乾燥装置。
【請求項4】
請求項1の干し竿の回転方向は、制御器の制御により時計方向と反時計方向に切り換え自在であると共にその回転速度を任意に設定可能であること、を特徴とする干し柿等の乾燥装置。
【請求項5】
請求項1の干し竿は、回転軸に対して複数段に形成されていること、を特徴とする干し柿等の乾燥装置。
【請求項6】
請求項1の干し竿は、乾燥室内に1基又は2基以上設けられていること、を特徴とする干し柿等の乾燥装置。
【請求項7】
請求項1の乾燥用熱源器は、温風ヒータ又は遠赤外線ヒータ又はこの双方から成り、それぞれ一台又は複数台が乾燥室に設備されていること、を特徴とする干し柿等の乾燥装置。
【請求項8】
請求項1の乾燥室には、出入口が設けられていると共に、この出入口には、乾燥中の柿等の状況を外から視認するための透視窓が設けられていること、を特徴とする干し柿等の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−14601(P2006−14601A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192411(P2004−192411)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(594066327)株式会社福一屋 (1)
【Fターム(参考)】