説明

平滑末端および3’修飾を有する干渉性RNA二本鎖

【課題】平滑末端および3'修飾を有する、干渉性RNAの提供。
【解決手段】少なくとも1つの式:


[式中、Xは、OまたはSであり;R1およびR2は式Y−Zであり、ここで、YはOであり、Zは、Hまたはアルキル(ここで、アルキルは、非置換であるか、または、1個またはそれ以上のヘテロ原子および/または1個またはそれ以上の官能基により置換されており、ここで、ヘテロ原子はN、OおよびSの群から選択され、官能基は、OH、NH2、SH、カルボン酸もしくはエステルの群から選択される)であり;R1およびR2が両方ともOHであるならば、XはOではない]の3'末端を含む少なくとも1個の平滑末端を有する二本鎖RNA。好ましい3'末端修飾は、ヒドロキシプロピルホスホジエステルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、二本鎖RNAを使用する標的遺伝子の選択的阻害に関し、この目的に有用な化合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
短いRNA二本鎖は、多くのインビトロおよびインビボモデルで、RNA干渉を媒介する有効なガイドであることが示された(Hamilton et al. 1999, Zamore et al., 2000, Caplen et al., 2001, Elbashir et al., 2001, Yang et al., 2000)。
【0003】
最も一般的には、ひと続きの19個の隣接するリボヌクレオチド塩基対が、2−3個の対にならないヌクレオチドと各鎖の3'末端で隣り合う(「オーバーハング」)ように、合成siRNA二本鎖を設計する。この21−ntのsiRNA種は、哺乳動物および非哺乳動物の系で、DICERに媒介される長いds−RNAの切断の間に生成されることが判明した (Bernstein et al., 2001, Ketting et al., 2001)。この特定の21−merのsiRNAの形状は、ショウジョウバエモデルから最初に選択され、その後その有効性に関して強調された(Elbashir et al. 2001)。その結果、遺伝子阻害物質として合成siRNAを適用する今日の研究の大部分は、この「野生型」21−merのsiRNA誘導体に依存している。オーバーハングには、通常2'−デオキシヌクレオチドを使用する。これは、とりわけ費用上の理由によるが、細胞内ヌクレアーゼ活性に対する強力な保護にも関連する。
【0004】
本発明は、この度、RNAiを媒介する二本鎖RNA(「dsRNA」)に、新たな創意に富む形状を提供する。本発明による平滑末端のsiRNAは、当分野で現在使用されている3'オーバーハングを有する合成siRNAの欠点を克服する。
【発明の概要】
【0005】
発明の要旨
本発明は、少なくとも1つの式:
【化1】

式中、
Xは、OまたはSであり、
およびRは、独立して、OH、NH、SH、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキル(ここで、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルは、さらなるヘテロ原子および官能基、好ましくは、N、OまたはSの群から選択されるヘテロ原子またはOH、NH、SH、カルボン酸もしくはエステルの群から選択される官能基、により置換されていてもよい)であり;
また、RおよびRは式Y−Zのものであってもよく、ここで、Yは、O、N、Sであり、Zは、H、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキル(ここで、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルは、さらなるヘテロ原子、好ましくはN、OまたはSの群から選択されるヘテロ原子により置換されていてもよい)である;
の3'末端を含む少なくとも1つの平滑末端を有する二本鎖RNAであって、該二本鎖RNAがRNA干渉を媒介する、二本鎖RNAを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
(原出願に記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、あるタイプの化学修飾を含む少なくとも1つの平滑末端を有する合成二本鎖RNA(dsRNA)分子が、効率的にRNA干渉を媒介するという驚くべき知見に基づく。本発明のdsRNAは、それらの簡潔な合成手順のために、例えば汎用固体支持体の使用などの、siRNAを使用する高処理量(high throughput)アプローチに特に有用である。
【0008】
ある態様では、本発明は、少なくとも1つの式:
【化2】

式中、
Xは、OまたはSであり、
およびRは、独立して、OH、NH、SH、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキル(ここで、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルは、さらなるヘテロ原子および官能基、好ましくは、N、OまたはSの群から選択されるヘテロ原子またはOH、NH、SH、カルボン酸もしくはエステルの群から選択される官能基、により置換されていてもよい)であり;
また、RおよびRは式Y−Zのものであってもよく、ここで、Yは、O、N、Sであり、Zは、H、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキル(ここで、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルは、さらなるヘテロ原子、好ましくはN、OまたはSの群から選択されるヘテロ原子により置換されていてもよい)である;
の3'末端を含む少なくとも1つの平滑末端を有する二本鎖RNAであって、該二本鎖RNAがRNA干渉を媒介する、二本鎖RNAに関する。
【0009】
およびRは、環構造、例えば、炭素環式または複素環式環の環構造を形成していてもよく、該環構造は、好ましくは3員ないし7員を有する。
【0010】
好ましい実施態様では、Zは、1またはそれ以上の脱塩基ヌクレオシド、好ましくはリボヌクレオシド、部分である。ヌクレオシド部分は、例えばホスホジエステルまたはホスホロチオエート基により連結していることもある。
【0011】
別の好ましい実施態様では、RはOHである。別の好ましい実施態様では、RおよびRは、一体となって、1個ないし24個のC原子、より好ましくは、1個ないし12個、または、2個ないし10個、そして最も好ましくは1個ないし8個または2個ないし6個を含む。別の好ましい実施態様では、RおよびRは、独立して、OH、低級アルキル、低級アリール、低級アルキル−アリール、低級アリール−アルキルであり、ここで、低級アルキル、低級アリール、低級アルキル−アリール、低級アリール−アルキルは、上記定義のさらなるヘテロ原子および官能基により置換されていてもよい。別の好ましい実施態様では、RおよびRは、両方ともOHではない。
【0012】
用語「低級」は、有機の基または化合物に関して、7個以下の炭素原子、好ましくは1−4個の炭素原子を有する分枝または非分枝であってよい化合物または基を意味する。例えば、低級アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルおよび分枝ペンチル、n−ヘキシルおよび分枝ヘキシルを表す。
【0013】
関連する態様では、本発明は、少なくとも1つの式:
【化3】

式中、Rは、OH、NH、SH、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルであり(ここで、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルは、さらなるヘテロ原子、好ましくは、N、OまたはSの群から選択されるヘテロ原子により置換されていることもある)、そして、Rは、独立して、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルである(ここで、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルは、さらなるヘテロ原子、好ましくは、N、OまたはSの群から選択されるヘテロ原子、または、OH、NH、SH、カルボン酸またはエステルの群から選択される官能基により置換されていることもある)
の3'末端を含む少なくとも1つの平滑末端を有する二本鎖RNAであって、該二本鎖RNAがRNA干渉を媒介する、二本鎖RNAに関する。RおよびRは、環構造、例えば炭素環式または複素環式環を形成していてもよく、該環構造は、好ましくは3員ないし7員を有する。RおよびRは、さらなるヘテロ原子、好ましくは、N、OまたはSの群から選択されるヘテロ原子をさらに含んでもよい。
【0014】
好ましい実施態様では、RはOHである。別の好ましい実施態様では、RおよびRは、各々が、一体となって、1個ないし24個のC原子、より好ましくは、1個ないし12個、または、2個ないし10個、そして最も好ましくは1個ないし8個または2個ないし6個を含む。別の好ましい実施態様では、Rは、低級アルキル、低級アリール、低級アルキル−アリール、低級アリール−アルキルであり、ここで、低級アルキル、低級アリール、低級アルキル−アリール、低級アリール−アルキルは、上記定義のさらなるヘテロ原子および官能基により置換されていてもよく、Rは、独立して、低級アルキル、低級アリール、低級アルキル−アリール、低級アリール−アルキルであり、ここで、低級アルキル、低級アリール、低級アルキル−アリール、低級アリール−アルキルは、上記定義のさらなるヘテロ原子および官能基により置換されていてもよい。
【0015】
関連する態様では、本発明は、少なくとも1つの式:
【化4】

式中、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、H、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルであり(ここで、アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキルは、さらなるヘテロ原子、好ましくは、N、OまたはSの群から選択されるヘテロ原子、または、OH、NH、SH、カルボン酸またはエステルの群から選択される官能基により置換されていることもある)
の3'末端を含む少なくとも1つの平滑末端を有する二本鎖RNAであって、該二本鎖RNAがRNA干渉を媒介する、二本鎖RNAに関する。RおよびRは、環構造、例えば炭素環式または複素環式環を形成していてもよく、該環構造は、好ましくは3員ないし7員を有する。RおよびRは、さらなるヘテロ原子、好ましくは、N、OまたはSの群から選択されるヘテロ原子をさらに含んでもよい。
【0016】
好ましい実施態様では、RおよびRは、各々が、一体となって、1個ないし24個のC原子、より好ましくは、1個ないし12個、または、2個ないし10個、そして最も好ましくは1個ないし6個または2個ないし6個を含む。別の好ましい実施態様では、RおよびRは、独立して、低級アルキル、低級アリール、低級アルキル−アリール、低級アリール−アルキルであり、ここで、低級アルキル、低級アリール、低級アルキル−アリール、低級アリール−アルキルは、上記定義のさらなるヘテロ原子および官能基により置換されていてもよい。別の実施態様では、RおよびRは、両方ともHではない。
【0017】
本発明のRNA分子は、少なくとも、式I、IIまたはIIIの3'末端を含む少なくとも1本の鎖を有する。好ましくは、二本鎖RNAの両方の鎖が式I、IIまたはIIIの基を含む3'末端を含む。本発明のRNA分子は、さらに、少なくとも1つの平滑末端、好ましくは2つの平滑末端を有する。特に好ましい実施態様では、本発明のRNA分子は両側で平滑末端であり、両端が式I、IIまたはIIIの3'末端を含む。
【0018】
本発明に従うRNA分子は、少なくとも部分的に二本鎖の特徴を有する。好ましい実施態様では、それらは完全に二本鎖である。それらは2本の分離した鎖で構成されてもよいが、ヘアピンループを形成する1本の鎖で構成されてもよい。特に好ましい実施態様では、本発明のRNA分子は、2本の分離した鎖で構成され、それは、少なくとも1つの、好ましくは2つの、平滑末端を含む、完全な二本鎖である。
【0019】
本発明によるRNA分子は、RNA干渉(「RNAi」)を媒介する。用語「RNAi」は、当分野で周知であり、一般的に、標的遺伝子に相補的な領域を有するdsRNAによる細胞内での1またはそれ以上の標的遺伝子の阻害を意味すると理解される。dsRNAをそのRNAiを媒介する能力について試験する様々なアッセイが当分野で知られている(例えば、Elbashir et al., Methods 26 (2002), 199-213 参照)。遺伝子発現に対する本発明のdsRNAの効果は、典型的には、本発明によるRNA分子で処理されていない細胞と比較したとき、少なくとも10%、33%、50%、90%、95%または99%阻害されている標的遺伝子の発現をもたらす。
【0020】
本発明に従うRNA分子は、標的遺伝子のmRNAの領域と実質的に同一である二本鎖領域を含む。特に好ましいのは、標的遺伝子の対応する配列に100%同一の領域である。しかしながら、その領域はまた、標的遺伝子の対応領域と比較して、1または2のミスマッチを含有してもよい。本発明は、1種より多い遺伝子を標的とするRNA分子を含む。好ましい実施態様では、本発明のRNA分子は、1種の所定の遺伝子を特異的に標的とする。所望のmRNAのみを標的とするために、siRNA試薬は、標的mRNAに対して100%の相同性を、そして、その細胞または生物に存在する全ての他の遺伝子に対して少なくとも2個のミスマッチしたヌクレオチドを有するべきである。特定の標的配列の発現を特異的に阻害するために十分な配列同一性を有するdsRNAの分析および同定方法は、当分野で知られている。配列同一性は、当分野で知られている配列比較およびアラインメントアルゴリズムにより最適化し得(Gribskov and Devereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991, およびその中の引用文献を参照)、例えば、デフォルトのパラメーターを使用するBESTFITソフトウエアプログラムにおいて実行されるような Smith-Waterman アルゴリズム(例えば、University of Wisconsin Genetic Computing Group)により、ヌクレオチド配列間の差異の割合を算出する。RNAi試薬の有効性に影響を与える他の要因は、標的遺伝子の標的領域である。RNAi試薬による阻害に有効な標的遺伝子の領域は、実験により決定し得る。最も好ましいmRNA標的領域は、コード領域であろう。非翻訳領域、特に3'−UTR、スプライスジャンクションも好ましい。例えば、Elbashir S.M. et al, 2001 EMBO J., 20, 6877-6888 に記載されている通りの形質移入アッセイを、この目的で実施し得る。数々の他の適するアッセイおよび方法が当分野で存在し、当業者に周知である。
【0021】
本発明によるRNA分子の相補的領域の長さは、好ましくは10ないし100ヌクレオチド、より好ましくは15ないし50ヌクレオチド、さらにより好ましくは17ないし30ヌクレオチド、そして最も好ましくは19ないし25ヌクレオチドである。特に好ましい実施態様では、本発明によるRNA分子は、15ないし50ヌクレオチド、より好ましくは17ないし30ヌクレオチド、そして最も好ましくは19ないし25ヌクレオチドの長さの短いdsRNA分子からなる。
【0022】
本発明によるdsRNAの3'末端は、血清または細胞培養の増殖培地中で、高いインビボ安定性を与える。従って、本発明によるdsRNAは、当分野では一般的なことであるヌクレアーゼ分解に対する付加的安定化、例えば、2個または3個のデオキシヌクレオチドの3'−オーバーハングを付加することによる、を必要としない。しかしながら、本発明によるdsRNAはまた、少なくとも1つの修飾または非天然リボヌクレオチドを含有してもよい。好ましい修飾には、糖部分の2'位での修飾、例えば、2'−O−−(2−メトキシエチル)または2'−MOE)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504)、即ち、アルコキシアルコキシ基が含まれるが、これに限定されるものではない。他の好ましい修飾には、隣接するリボヌクレオチドを連結しているホスホエステル基を、例えばホスホロチオエート類、キラルホスホロチオエート類またはホスホロジチオエート類で置き換えることを含むがこれらに限定されるものではない、主鎖修飾が含まれる。修飾または非天然リボヌクレオチドの合成方法は周知であり、当業者にとって容易に利用可能である。
【0023】
dsRNA分子は、
(i)例えば、実施例1に例示説明する通り、TOM化学を使用して、2本のRNA鎖を各々合成すること。RNA鎖を合成するための他の方法は、当業者には容易に理解できるものであろう。反応は、溶液中で、または、好ましくは、固相上で、またはポリマー支持試薬の使用により、実行し得る。
(ii)合成したRNA鎖を、RNAを媒介する能力のあるdsRNA分子が形成される条件下で一緒にすること。
の各段階を含む方法により調製し得る。
【0024】
別の態様では、本発明は、RNAiにより少なくとも1つの標的遺伝子を阻害する能力のある本発明によるdsRNAを細胞に導入することを含む、標的遺伝子の阻害方法を提供する。また、各々別の標的領域に特異的な1より多いdsRNA種を、同時または連続的に細胞に導入し得る。本発明によるdsRNAは、物理的方法、例えば、単純拡散、核酸を含有する溶液の注入により、核酸で被覆した粒子による打ち込み、細胞または生物を核酸溶液に浸すこと、核酸存在下での細胞膜のリポフェクションまたはエレクトロポレーションを含む、遺伝子工学の様々な標準的方法により細胞に導入できる。特に好ましい核酸送達方法は、リポフェクションの使用である。その後、細胞をRNAiが起こる条件下で維持する。RNAiが起こるようにどのような条件下で所定の細胞株を維持するかは、当業者は容易に理解できる。この標的遺伝子の阻害方法は、治療的に(例えば、特定の疾患で過剰発現される遺伝子をノックダウンするために)、または、研究のために(例えば、遺伝子機能の調査、または、薬物発見の標的の確認)使用できる。好ましい実施態様では、この方法により遺伝子の機能は完全に排除される。即ち、この方法により、特定遺伝子のノックアウト細胞を生成できる。
【0025】
細胞は、植物または動物細胞であり得る。好ましい実施態様では、細胞は哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞である。細胞のタイプおよび供給源は、本発明に決定的ではなく、従って、本発明には、例えば、内部細胞塊由来の細胞、胚体外外胚葉または胚性幹細胞、全能性または多能性、分裂、または非分裂、実質または上皮、不死化または形質移入細胞などが含まれる。細胞は、幹細胞であっても分化細胞であってもよい。分化した細胞タイプには、脂肪細胞、繊維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮細胞、樹状細胞、神経細胞、グリア細胞、マスト細胞、血液細胞および白血球(例えば、赤血球、巨核細胞、B、Tおよびナチュラルキラー細胞などのリンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、血小板、顆粒球)、上皮細胞、ケラチノサイト、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝細胞、内分泌または外分泌腺の細胞、並びに感覚細胞が、非限定的に含まれる。
【0026】
他の態様では、本発明によるdsRNAは、生物における遺伝子機能の同定に使用する。ここでは、事前に機能が未知である標的遺伝子の活性を阻害する。時間がかかり骨の折れる伝統的な遺伝子スクリーニングによる変異体の単離の代わりに、ゲノム機能解析は、本発明によるdsRNAを用いて、標的遺伝子活性の量を減らす、かつ/または、時機を変更することにより、特徴解析されていない遺伝子の機能を決定することを想定する。本発明によるdsRNAは、医薬の潜在的標的の決定、発生に関連する正常または病的な現象の理解、出生後の発生/加齢を担うシグナル伝達経路の決定などに使用し得る。ヒトゲノムを含む遺伝学および発現された遺伝子供給源からヌクレオチド配列情報を獲得する速度の高まりを、本発明と組み合わせて、哺乳動物系における、特にヒト細胞培養系における遺伝子の機能を決定できる。
【0027】
標的遺伝子を含有する無傷の哺乳動物細胞にRNAを容易に導入できることは、本発明による標的遺伝子の阻害方法を、高処理量スクリーニング(HTS)に使用することを可能にする。例えば、所定の標的遺伝子を阻害する能力のある本発明によるRNA分子を含有する溶液を、順序づけられたアレイとしてマイクロタイタープレートに位置する個々のウェルに入れることができる。その後、各ウェルの無傷の細胞を、標的遺伝子活性の阻害に起因する行動または発生の変化または改変について、または、プロテオミクス、ゲノミクスおよび標準的な分子生物学の技法により、アッセイできる。このように、標的遺伝子の機能は、遺伝子活性が阻害されるときに、それが細胞に対して有する効果からアッセイできる。
【0028】
本発明は、いかなる標的遺伝子またはヌクレオチド配列のタイプにも限定されない。例えば、標的遺伝子は、細胞の遺伝子、内在性遺伝子、病原体関連遺伝子、ウイルス遺伝子または癌遺伝子であり得る。次のクラスの潜在的標的遺伝子は、例示目的のみで列挙するものであり、限定と解釈されるべきではない:転写因子および発生関連遺伝子(例えば、接着分子、サイクリンキナーゼ阻害因子、Wntファミリーのメンバー、Paxファミリーのメンバー、翼状らせん(Winged helix)ファミリーのメンバー、Hoxファミリーのメンバー、サイトカイン/リンホカインおよびそれらの受容体、増殖/分化因子およびそれらの受容体、神経伝達物質およびそれらの受容体);癌遺伝子(例えば、ABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBFA2、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、ERBB2、ETSI、ETV6、FGR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIMI、PML、RET、SKP2、SRC、TALI、TCL3およびYES);腫瘍抑制遺伝子(例えば、APC、BRAI、BRCA2、CTMP、MADH4、MCC、NFI、NF2、RBI、TP53、およびWTI);並びに酵素(例えば、ACPデサチュラーゼ類およびヒドロキシラーゼ類、ADP−グルコースホスホリラーゼ類、ATPアーゼ類、アルコールデヒドロゲナーゼ類、アミラーゼ類、アミログルコシダーゼ類、カタラーゼ類、シクロオキシゲナーゼ類、デカルボキシラーゼ類、デキストリナーゼ類、DNAおよびRNAポリメラーゼ類、ガラクトシダーゼ類、グルコースオキシダーゼ類、GTPアーゼ類、ヘリカーゼ類、インテグラーゼ類、インスリナーゼ類、インベルターゼ類、イソメラーゼ類、キナーゼ類、ラクターゼ類、リパーゼ類、リポオキシゲナーゼ類、リゾチーム類、ペルオキシダーゼ類、ホスファターゼ類、ホスホリパーゼ類、ホスホリラーゼ類、プロテイナーゼ類およびペプチダーゼ類、リコンビナーゼ類、逆転写酵素類、RNAおよび/またはタンパク質成分を含むテロメラーゼ、およびトポイソメラーゼ類)。
【0029】
いかなる病原体に由来する遺伝子も、阻害の標的にし得る。例えば、その遺伝子は、直接宿主の免疫抑制を引き起こし得るか、または、病原体の複製、病原体の伝染、または感染の維持に必須であり得る。病原体感染のリスクがある細胞、または既に感染した細胞、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、インフルエンザ感染、マラリア、肝炎、プラスモディウム、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、および足口病ウイルスに感染した細胞を、本発明のRNAの導入による処置の標的にし得る。標的遺伝子は、病原体の宿主への侵入、病原体または宿主による薬物代謝、病原体ゲノムの複製または組込み、宿主における感染の確立または拡散、次世代の病原体のアセンブリーを担う病原体または宿主の遺伝子であってよい。予防方法(即ち、感染の防止またはリスク低下)、並びに感染の頻度または関連症状の重篤度の低減を想定できる。
【0030】
別の態様では、本発明はさらに、少なくとも1つの標的タンパク質に対して作用する薬理的物質の同定および/または特徴解析の方法を提供する。その方法は、関心のあるタンパク質をコードする少なくとも1つの内在性遺伝子を発現する能力のある真核生物細胞、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞を、(a)関心のあるタンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害する能力のある少なくとも1つの本発明によるdsRNA分子、および(b)試験物質または試験物質の集合であって、該試験物質または該試験物質の集合の薬理特性を同定および/または特徴解析しようとするもの、と接触させることを含む。細胞を同時または連続的にdsRNAおよび試験しようとする化合物と接触させてよく、細胞をdsRNAおよび化合物と接触させる順序は重要ではない。好ましい実施態様では、細胞はさらに、関心のあるタンパク質の変異体または変異導入形をコードする少なくとも1つの外来性核酸を含み、該外来性核酸の発現は、該dsRNAにより弱く阻害される。
【0031】
別の態様では、本発明はまた、細胞における標的遺伝子の発現を阻害する試薬を含むキットを提供し、該キットは、本発明によるdsRNAを含む。そのキットは、本発明によるdsRNAを試験サンプルまたは対象にインビトロまたはインビボで導入することの実行に必要な試薬の少なくとも1つを含む。好ましい実施態様では、かかるキットは、キットの成分を使用する手順を詳述する指示書も含む。
【0032】
本発明の別の態様は、RNAiにより少なくとも1つの標的遺伝子を阻害する能力のある本発明によるdsRNAを含む医薬組成物および製剤を提供する。医薬組成物は、各々別の標的領域に特異的な1より多いdsRNA種を含有してもよい。本発明の医薬組成物は、局所または全身的処置のどちらが望まれるかに、そして、処置すべき領域に応じて、数々のやり方で投与し得る。投与は、局所(眼に、そして膣および直腸送達を含む粘膜へ、を含む)、肺に、例えば、粉末剤またはエアゾル剤の吸入またはガス注入によるもの、噴霧器によるものを含む;気管内に、鼻腔内に、上皮に、そして経皮で)、経口または非直腸であり得る。非経腸投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内の注射または点滴;または、頭蓋内、例えば、くも膜下腔内または脳室内投与が含まれる。
【0033】
本発明の組成物は、錠剤、カプセル剤、液状シロップ剤、ソフトゲル剤、坐剤および浣腸剤などだがこれらに限定されるものではない、多くの可能な投与形に製剤化し得る。本発明の組成物は、水性、非水性または混合媒体中の懸濁剤としても製剤化し得る。水性懸濁剤はさらに、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む、懸濁剤の粘性を高める物質を含有し得る。該懸濁剤は、安定化剤も含有し得る。医薬組成物は、塩として提供してもよく、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがこれらに限定されるものではない、多くの酸で形成できる。塩は、対応する遊離塩基形態よりも水性または他のプロトン性溶媒に可溶性である傾向がある。他の場合では、好ましい製剤は、以下:1−50mMヒスチジン、0.1%−2%スクロース、および2−7%マンニトールのいずれかまたは全てを含有し得る凍結乾燥粉末剤であり得、4.5ないし5.5のpH範囲で、使用に先立ちバッファーと一緒にする。
【0034】
有効用量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。治療的有効性および毒性は、細胞培養または実験動物において、標準的な医薬の手法、例えばED50(集団の50%で治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%に致死的な用量)、により決定し得る。毒性と治療的効果との用量比は、治療係数であり、比LD50/ED50と表現できる。大きい治療係数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータを、ヒト使用のための投与量範囲を公式化するのに使用する。好ましくは、かかる組成物に含有される投与量は、ED50を含み毒性が殆どまたは全くない循環濃度範囲内にある。投与量は、この範囲内で、用いる投与形、患者の感受性および投与経路に応じて変動する。通常の投与量は、投与経路に応じて、0.1ないし100,000マイクログラム、総用量約1gまでで変動し得る。特定の投与量および送達方法に関するガイダンスは、文献で提供され、当分野の実務者にとって一般的に入手可能である。当業者は、ヌクレオチドのために、タンパク質またはそれらの阻害剤とは異なる製剤を用いるであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、条件、場所などに特異的であろう。
【0035】
以下の実施例は、本発明を例示説明することを意図するが、さらに限定するものではない。
【実施例】
【0036】
実施例
実施例1:
固体支持体LM−17の合成手順
3−[ビス−(4−メトキシ−フェニル)−フェニル−メトキシ]−プロパン−1−オール(LM−14)
【化5】

無水ピリジン(20ml)中の1,3−プロパンジオール(20ml、268mmol)の溶液に、アルゴン雰囲気下で、4,4'−ジメトキシトリフェニルクロロメタン(1.87g、5.4mmol)を添加した。室温で10分間撹拌した後、混合物を氷/水混合物に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(2回)。一緒にした有機相を水(2回)および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた茶色の液体を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:酢酸エチル/ヘキサン=1:2)で精製し、1,56g(77%)のLM−14を僅かに黄色の油状物として得た。
【0037】
コハク酸モノ−{3−[ビス−(4−メトキシ−フェニル)−フェニル−メトキシ]−プロピル}エステル(LM−15)
【化6】

無水ピリジン(5ml)中のLM−14(250mg、0.69mmol)の溶液に、アルゴン雰囲気下で、N,N−ジメチルアミノピリジン(45mg、0.37mmol)を添加した。コハク酸無水物の添加後(57mg、0.57mmol)、混合物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、塩水で洗浄した(3回)。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、粗製LM−15(536mg)を得た。これは、これ以上精製せずに後の段階に使用した。
【0038】
固体支持体LM−17
【化7】

無水DMF(5ml)の混合物中の粗製LM−15(0.69mmol)の溶液に、ピリジン(0.13ml)、4−ニトロフェノール(143mg、1.0mmol)およびN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、156mg、0.76mmol)を、アルゴン雰囲気下で添加した。黄色の溶液を室温で2日間撹拌した。その後、黄色の懸濁液が形成された。セライトで濾過した後、アミノ−誘導化ポリスチレン(457mg)を濾液に添加した。トリエチルアミン(0.046ml)を添加し、メカニカルボトルシェーカーを使用して混合物を24時間震盪した。混合物を濾過し、固体支持体をDMF(5ml)、メタノール(5ml)およびジエチルエーテル(5ml)で2回ずつ洗浄し、LM−17(453mg)を得た。アセトニトリル(100ml)中のp−トルエンスルホン酸(1.9g)の溶液0.1mlでの処理の際に放出されるトリチル基の定量(498nmでの吸光)は、14μmol/gの負荷率(loading)を明らかにした。
【0039】
実施例2
1.オリゴリボヌクレオチド(siRNA)の合成
本発明の明細書に記載の修飾合成オリゴリボヌクレオチドは、ABI394 または Expedite/Moss Synthesizers (Applied Biosystems)で標準的TOM−ホルホラミダイト化学を使用して調製できる。ホスホラミダイトを0.05M濃度でアセトニトリルに溶解し(OligoPilot II で0.2M)、ベンゾイミダゾリウムトリフレートの0.2Mアセトニトリル溶液によるホスホラミダイトの活性化によりカップリングを行う。カップリングの時間は、通常3ないし6分間からなる。最初のキャッピングは、標準的キャッピング試薬を使用して行う。酸化は、THF/ピリジン/水(77:20:3)中の0.1Mヨウ素溶液、または、ジクロロメタン中の0.5M t−ブチルヒドロキシペルオキシド(Fluka)により、2分間行う。第2のキャッピングは、酸化後に実施する。オリゴヌクレオチド伸長鎖を、ジクロロメタンまたはジクロロエタン中の2%ジクロロ酢酸により、次のカップリングのために脱トリチル化する。配列完成後、メチルアミン溶液(41%水性メチルアミン/33%エタノール性メチルアミン1:1v/v)により、35℃で6時間、支持体結合化合物を切断し、「トリチル−オン」として脱保護する。得られる懸濁液を、乾燥するまで凍結乾燥する。2'−O−シリル基は、1Mテトラブチルアンモニウムフロリドで10分間50℃、6時間35℃で処理する際に除去される。得られる粗製溶液をRP−HPLCにより直接精製する。精製した脱トリチル化化合物を、エレクトロスプレー質量分析およびキャピラリーゲル電気泳動により分析し、260nMでの吸光係数によりUVで定量する。
【0040】
オリゴヌクレオチド配列を、表1に列挙する:
【表1】

N:RNA、n:2'−メトキシエチルリボヌクレオシド、dN:デオキシリボヌクレオシド、ab:脱塩基リボヌクレオシド、p:ホスフェート、s:ホスホロチオエート、C3:ヒドロキシプロピルホスホジエステル
【0041】
実施例3
3.1材料と方法
材料:オリゴフェクタミンおよび他の細胞培養試薬は、Life Technologies, GibcoBRL, now Invitrogen, Gaithersburg, MD)から入手する。JetPEI は、Polyplus-Transfection (Illkirch, France)から購入する。
【0042】
細胞株:組換えラットP2Xを発現する、安定に形質移入されたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)(ATCC CCL61, American Type Culture Collection, Rockville, MD)を、記載された通りに(Hemmings et al., NAR 31 (2003), 2117-2126)生成させる。CHO細胞を、10%(v/v)FBS、2mMグルタミンを添加した最小必須培地(MEM−α)中、5%COの湿潤チャンバー内で培養する。HeLa細胞を、10%(v/v)FBS、2mMグルタミンを添加したダルベッコ変法必須培地(DMEM41965)中、5%COの湿潤チャンバー内で培養する。
【0043】
オリゴヌクレオチド合成:オリゴリボヌクレオチドを、Qiagen で購入するか、または、製造業者(Qiagen)により記載された通りにTOM−ホスホラミダイト化学を使用して合成し、RP−HPLCにより精製する。3'−ヒドロキシプロピルホスフェートオリゴリボヌクレオチドを固相LM−17(充填率:14μmol/g)上で合成する。オリゴヌクレオチド鎖伸長、支持体からの切断、脱保護および精製は、3'−オーバーハングとして2個のデオキシヌクレオチドを有する21−merオリゴリボヌクレオチドのものと同一である。
【0044】
キャピラリーゲル電気泳動により純度を評価する。定量は、260nMでの吸光係数によりUVで実行する。他所で記載された通りに(Elbashir et al., Methods 26 (2002), 199-213)、二本鎖RNA(dsRNA)のアニーリングを実施する。本報告で使用するオリゴヌクレオチド配列を、表1に列挙し、エレクトロスプレー質量分析により特徴解析する。
【0045】
細胞の形質移入:陽イオン性脂質−オリゴヌクレオチド(オリゴフェクアミン)およびポリマー−オリゴヌクレオチド(jetPEI)混合物を、以前に記載された通りに形質移入の直前に調製する。形質移入の18時間前に、4x10個の細胞を、24ウェルプレートに、ウェル当たりCHO細胞は体積0.5mlのMEM−α、または、HeLa細胞は0.5mlのDMEM(両方とも10%(v/v)FBS、2mMグルタミンを添加)の中で播く。形質移入に先立ち、増殖培地を細胞から除去し、OptiMEM 500μlおよび形質移入試薬/オリゴヌクレオチド混合物100μlで置き換える。プレートを、湿潤5%CO2インキュベーター中、37°でインキュベートする。4時間後、FBS60μlを各ウェルに添加し、インキュベーションを20時間延長した。
【0046】
RNAの回収およびリアルタイム定量的PCRによるmRNAの分析:オリゴヌクレオチド形質移入の24時間後に、RNeasy 96 kit (Qiagen, Chatsworth, CA)で、製造業者のプロトコールに準じて総RNAを単離する。RNAサンプルを Reverse Transcriptase Q-PCR mastermix kit (Eurogentec) の試薬と混合し、含まれるプロトコールに従い実行する。
【0047】
3.2平滑末端化siRNAの活性
ラットP2Xプリン受容体を発現するCHO細胞株を、第1および第2世代のオリゴヌクレオチド(ASO)などの様々なmRNA阻害物質並びに短い干渉性RNAの相対的活性を比較するために使用する。「汎用」形質移入試薬としての直鎖PEIの使用は、これらの様々な遺伝子発現阻害物質間の直接比較の実施を可能にする。siRNA配列は、以前に特徴解析された最適ASO配列から選択し(Dorn et al., Antisense & Nucleic Acid Drug Development 11 (2001): 165-174)、P2X3コード配列を標的化するように設計した。これは、Q−RT−PCR、免疫検出および機能アッセイにより立証される通り、分子レベルで効率的かつ選択的にP2X3発現を下方調節すると示された。正の対照として、我々は、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を介して一緒に連結された2つの標的相補性2'−MOE修飾オーバーハングを有するsiRNA配列を使用する。次いで、我々は、対応する19−merの平滑末端化siRNAを合成し、固体支持体からのアンモニア媒介切断の後、放出された化合物がヒドロキシプロピルホスフェート(hpp)基をその最後のリボヌクレオチドの3'−位置に持ち続けるようにする。
【0048】
21−merのsiRNA(2つの相補的オーバーハング)と平滑末端化した19−merとの中間体として、2つの脱塩基ヌクレオシドオーバーハングを有する配列相同性21−nt siRNAも合成する。そのような非ヌクレオシドオーバーハングは、RNAi経路に関与する段階の1つが、特に二本鎖の巻き戻しの間に、絶対的にsiRNAの3'−伸長を必要とするか否かを評価することを我々に可能にする。
【0049】
JetPEI をN/P比5で使用して、siRNAをCHO細胞に形質移入する。RT−Q−PCRにより形質移入の24時間後にmRNAレベルを評価する。図2に示す通り、CHO細胞で、3種全部の化合物について、匹敵する下方調節レベルでGAPDHのmRNAレベルの低下が検出される。3'−ヒドロキシプロピルホスフェートリボヌクレオチドを有する平滑末端化19bpのsiRNAは、P2XmRNAの阻害において、「野生型」21−merのsiRNAと同じ有効性を示す。
【0050】
この度、我々は、内在性遺伝子を標的化するsiRNAに、類似の形状の修飾を適用し、チャイニーズハムスターGAPDHのmRNAを標的とするsiRNA配列を、ヒトGAPDH遺伝子に対しても特異的かつ十分に相同的であるようなやり方で設計する。21−merのsiRNA(2つのデオキシリボヌクレオチドオーバーハング)および平滑末端化3'−ヒドロキシプロピルホスフェートsiRNA(19−mer)を25ないし200nMの範囲の濃度でCHO細胞に形質移入した後、チャイニーズハムスターGAPDHのmRNAレベルのRT−Q−PCR分析は、2種の化合物について同等のmRNA下方調節を示すが、下方調節は、高濃度の「野生型」siRNAの場合に僅かに明白である。しかしながら、陽イオン性脂質オリゴフェクタミンにより同濃度で形質移入するとき、両化合物は、全く同じmRNA阻害を示した。
【0051】
まとめると、これらのデータは、siRNAの3'末端のオリゴヌクレオチドオーバーハングの修飾または不在が、CHO細胞ではそれらの干渉活性に関して決定的ではないことを示す。
【0052】
3.3ヒト細胞における平滑末端化siRNAの活性
ヒト細胞におけるこの最初の結果を確認するために、ヒトGAPDHのmRNAオープンリーディングフレームを標的化するsiRNA配列を設計する。平滑末端化および野生型siRNAの両方とも、同じ標的下方調節レベルで、HeLa細胞においてヒトGAPDHを抑制する(図3)。
【0053】
3.4平滑末端化siRNAの3'末端機能要件
2つの異なる哺乳動物細胞株で、そして異なる標的に対して、オーバーハングの欠如は、その結果である平滑末端化siRNAの抑制活性を損なわないことを示したところで、我々は、また、平滑末端化siRNAの最初の3'−リボヌクレオチド上の3'−リボヌクレオチドの位置が、抑制過程に最適な特定の化学部分を必要とするか否かを評価する。
【0054】
図4に示す通り、平滑末端化3'−ヒドロキシおよび3'−ホスフェートsiRNAの両方とも、HeLa細胞において、3つのntミスマッチ対照と比較して高い選択性で、野生型21−merのsiRNAと同レベルの標的化GAPDHmRNAの下方調節を導く。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの式:
【化1】

[式中、
Xは、OまたはSであり;
およびRは式Y−Zであり、
ここで、YはOであり、
Zは、Hまたはアルキル(ここで、アルキルは、非置換であるか、または、1個またはそれ以上のヘテロ原子および/または1個またはそれ以上の官能基により置換されており、ここで、ヘテロ原子はN、OおよびSの群から選択され、官能基は、OH、NH、SH、カルボン酸もしくはエステルの群から選択される)であり;
およびRが両方ともOHであるならば、XはOではない]
の3'末端を含む少なくとも1個の平滑末端を有する二本鎖RNAであって、該二本鎖RNAがRNA干渉を媒介する、二本鎖RNA。
【請求項2】
二本鎖RNAが両方の鎖に式Iの3'末端を含む、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項3】
二本鎖RNAが2個の平滑末端を含む、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項4】
二本鎖RNAが2個の平滑末端を含み、両方の鎖に式Iの3'末端を含む、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項5】
2'−アルコキシアルコキシ置換基を含む少なくとも1個の修飾リボヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項6】
2'−O−(2−メトキシエチル)を含む少なくとも1個の修飾リボヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項7】
二本鎖RNAが、ひと続きの19個の隣接するリボヌクレオチド塩基対を含む、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項8】
二本鎖RNAが、ひと続きの19個の隣接するリボヌクレオチド塩基対を有する、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項9】
二本鎖RNAが、ひと続きの19個の隣接するリボヌクレオチド塩基対を含み、二本鎖RNAが2個の平滑末端を含む、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項10】
二本鎖RNAが、ひと続きの19個の隣接するリボヌクレオチド塩基対を含み、二本鎖RNAが2個の平滑末端を含み、両方の鎖に式Iの3'末端を含む、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項11】
二本鎖RNAが、ひと続きの19個の隣接するリボヌクレオチド塩基対を有し、二本鎖RNAが2個の平滑末端を含み、両方の鎖に式Iの3'末端を含む、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項12】
請求項1に記載の二本鎖RNAを含む医薬組成物。
【請求項13】
標的遺伝子の選択的阻害のための医薬として使用するための、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項14】
標的遺伝子の選択的阻害のための医薬の製造において使用するための、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項15】
インビトロまたはヒトを除く動物における標的遺伝子の選択的阻害において使用するための、請求項1に記載の二本鎖RNA。
【請求項16】
少なくとも1個の平滑末端を有する二本鎖RNAであって、該二本鎖RNAが少なくとも1つの鎖の3'末端に化学修飾を含み、該化学修飾がヒドロキシプロピルホスホジエステルである、二本鎖RNA。
【請求項17】
二本鎖RNAが両方の鎖の3'末端にヒドロキシプロピルホスホジエステルの化学修飾を含む、請求項16に記載の二本鎖RNA。
【請求項18】
二本鎖RNAが2個の平滑末端を含む、請求項16に記載の二本鎖RNA。
【請求項19】
二本鎖RNAが2個の平滑末端を含み、両方の鎖の3'末端にヒドロキシプロピルホスホジエステルの化学修飾を含む、請求項16に記載の二本鎖RNA。
【請求項20】
2'−アルコキシアルコキシ置換基を含む少なくとも1個の修飾リボヌクレオチドをさらに含む、請求項16に記載の二本鎖RNA。
【請求項21】
2'−アルコキシアルコキシ置換基が2'−O−(2−メトキシエチル)である、請求項20に記載の二本鎖RNA。
【請求項22】
二本鎖RNAが、ひと続きの19個の隣接するリボヌクレオチド塩基対を含む、請求項16に記載の二本鎖RNA。
【請求項23】
二本鎖RNAが、ひと続きの19個の隣接するリボヌクレオチド塩基対を有する、請求項16に記載の二本鎖RNA。
【請求項24】
二本鎖RNAが、ひと続きの19個の隣接するリボヌクレオチド塩基対を含み、二本鎖RNAが2個の平滑末端を含む、請求項16に記載の二本鎖RNA。
【請求項25】
二本鎖RNAが、ひと続きの19個の隣接するリボヌクレオチド塩基対を含み、二本鎖RNAが2個の平滑末端を含み、両方の鎖の3'末端にヒドロキシプロピルホスホジエステルの化学修飾を含む、請求項16に記載の二本鎖RNA。
【請求項26】
二本鎖RNAが、ひと続きの19個の隣接するリボヌクレオチド塩基対を有し、二本鎖RNAが2個の平滑末端を含み、両方の鎖の3'末端にヒドロキシプロピルホスホジエステルの化学修飾を含む、請求項16に記載の二本鎖RNA。
【請求項27】
請求項16に記載の二本鎖RNAを含む医薬組成物。
【請求項28】
標的遺伝子の選択的阻害のための医薬として使用するための、請求項16に記載の二本鎖RNA。
【請求項29】
標的遺伝子の選択的阻害のための医薬の製造において使用するための、請求項16に記載の二本鎖RNA。
【請求項30】
インビトロまたはヒトを除く動物における標的遺伝子の選択的阻害において使用するための、請求項16に記載の二本鎖RNA。

【公開番号】特開2011−160796(P2011−160796A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189117(P2010−189117)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【分割の表示】特願2006−524342(P2006−524342)の分割
【原出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】