説明

平行リンク駆動機構及びこの駆動機構を備えた搬送装置

【課題】アームの長さを長くしても小さい駆動力でスムーズに移動できる駆動手段を有する平行リンク駆動機構を提供すること。
【解決手段】一対の第1、第2アーム4、4と、一対の第1、第2連結アーム4、4とを平行に配設し、第1、第2連結アームのいずれか一方を静止アーム、他方を運動アームとして、静止アームの端部と第1、第2アームの一端部とを第1、第2支軸6、6及び第1、第2アームの他端部と運動アームの他端とを第3、第4軸支6、6をそれぞれ回動自在に支軸した平行リンク機構3と、この平行リンク機構を駆動する駆動手段と、を有し、静止アーム4には駆動手段GMを設け、駆動手段と運動アームの第3、第4支軸6、6との間に、伝動部材5を襷掛けに懸架して、駆動手段GMの駆動により、第3、第4支軸6、6のいずれか一方の支軸に結合された部分の伝動部材5A、5Bを牽引して運動アーム4を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平行リンク駆動機構及びこの駆動機構を備えた搬送装置に係り、詳しくは所定長さの一対のアーム一端部に各種部品、工具、機器などを取付けて、これらの部品などを搬送するのに好適な平行リンク駆動機構及びこの駆動機構を備えた搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種部品、例えば半導体ウェーハ、精密部品などの部品を製造工程にしたがって移送し、或いは所定の作業台上にローディングしたりするのに平行リンク駆動機構を備えた搬送装置が使用されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、このような平行リンク駆動機構を備えた搬送装置が記載されている。なお、図7は下記特許文献1に記載された搬送装置の斜視図、図8は図7に示す搬送装置の動作説明図である。
この搬送装置30は、一対の駆動アームを有する平行リンク機構と、このリンク機構を駆動する駆動部とを備え、駆動アームの端部に半導体ウェーハが載置されるハンドルが枢支されて、このハンドルがリンク機構を介して駆動部のアーム駆動モータに連結されて所定方向に移動できる構成となっている。細部の構造は、以下の動作で説明する。
アーム駆動用モータ31が駆動されると、このモータの回転によって、第1アーム32は駆動プーリ33が停止されたままの状態で所定方向、例えば時計方向へ0〜90度の範囲で回転する。この第1アーム32が時計方向へ回転すると、ベルト34を介して従動プーリ35が固定軸36を中心にして反時計方向に回転する。これにより、従動プーリ35は、第1アーム32の回動によって、駆動プーリ33の中心軸線を中心に時計方向に回る(公転)と共に固定軸36を中心に反時計方向に回転(自転)する。この固定軸36には、駆動ギヤ37が固定されていることから、この駆動ギア37は、従動プーリ35と同様に駆動プーリ33の中心軸線を中心にして時計回りに回動(公転)する。
【0004】
この公転及び自転する従動プーリ35と、公転のみする駆動ギア37とにより、この駆動ギア37に噛合している従動ギア40が第1支持軸38を中心に反時計方向に回転する。この従動ギア40が反時計方向へ回転すると、駆動第2アーム41は第1支持軸38を回転中心にして反時計方向へ回転して、この駆動第2アーム41は、図8(a)〜図8(d)に示すように、反時計方向へ回転して図8(e)に示す第1アーム32と一直線上に移動される。この時、平行リンク機構を構成する従動第2アーム42及びハンドル43は、駆動第2アーム41と同様に図8(e)に示すように第1アーム32と一直線上に移動される。つまり、ハンドル43は、図8(a)に示す位置から右方向に平行移動することになる。また、図8(a)に示す位置から第1アーム32を反対の反時計方向に90度回動させると、ハンドル43は図8(a)に示す位置から左方向に平行移動する。又、プーリ駆動用プーリ44を適宜回転させることにより、ハンドル43のみを適宜回転させることもできる。
【0005】
【特許文献1】特開平9−323276号公報(段落〔0035〕〜〔0040〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記搬送装置30によると、アーム駆動用モータ31が回転すると、第1アーム32、駆動プーリ33及びベルト34を介して従動プーリ35を回転させ、この従動プーリ35の回転によって、ハンドル43が所定方向へ移動し、このハンドル43端部の載置部43aに載置されたウェーハを所定位置へ搬送することができる。
【0007】
この搬送装置30は、一対の駆動第2アーム41、42のうち、一方のアーム41に従動ギヤ40を支軸し、この従動ギヤ40を駆動ギヤ37に噛合させて、この駆動ギヤ37を回転させることにより、一対の駆動第2アーム41、42が所定方向へスイング移動して、この駆動第2アームに結合されたハンドル43が所定方向へ移動される。すなわち、駆動第2アームの端部に軸支した従動ギヤの回転によって、一対の駆動第2アーム41、42及びハンドル43が移動する。したがって、この構造の平行リンク機構は、一対の駆動第2アーム41、42を駆動ギヤ37を基点にして回転させなければならないので、大きな駆動力が必要になる。この駆動力は、これらの駆動アームが長くなれば、その長さに比例して大きな駆動力が必要となる。しかしながら、駆動力を大きくするためには、大型の駆動モータなどを使用しなければならないので、アームの長さを長くするのには限界がある。また、この平行リンク機構は、駆動アームの基点、すなわち駆動ギヤに噛合した部分で回転させるので、一対の駆動アーム及びハンドルの移動速度を速くしてハンドルの移動速度を上げることにも限界がある。
【0008】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、アームの長さを長くしても小さい駆動力でスムーズに移動できる駆動手段を有する平行リンク駆動機構及びこの駆動機構を備えた搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願の請求項1に記載の平行リンク駆動機構の発明は、所定長さの一対の第1、第2アームと、該第1、第2アームの端部間を連結する所定長さの一対の第1、第2連結アームとを平行に配設し、該第1、第2連結アームのいずれか一方の連結アームを静止アーム、他の連結アームを運動アームとして、該静止アームの端部と該第1、第2アームの一端部とを第1、第2支軸及び該運動アームの端部と該第1、第2アームの他端部とを第3、第4支軸でそれぞれ回動自在に枢支した平行リンク機構と、該平行リンク機構を駆動する駆動手段と、を有する平行リンク駆動機構において、
前記静止アームに前記駆動手段を設け、該駆動手段と前記運動アームの第3、第4支軸との間に、伝動部材を襷掛けに懸架して、該駆動手段の駆動により、該第3、第4支軸のいずれか一方の支軸に結合された部分の伝動部材を牽引して前記運動アームを移動させることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の平行リンク駆動機構において、前記駆動手段は、駆動モータと該モータに連結した駆動部材とで構成して、前記静止アームの第1、第2支軸にそれぞれ第1、第2回転部材を回動自在に装着し、これらの第1、第2回転部材間に該駆動部材を配設して、前記伝動部材を該第1、第2回転部材を経て該駆動部材に懸架したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の平行リンク駆動機構において、前記回転部材は、円板状の回転ギヤで形成して、前記駆動部材は円板状の駆動ギヤで形成して、これらのギヤに前記伝動部材を懸架したことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の平行リンク駆動機構において、前記伝動部材は、前記第1、第2回転ギヤ及び前記駆動ギヤに懸架する部分をこれらのギヤに懸架されるチェーンで形成したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項5に記載の平行リンク駆動機構において、前記伝動部材は、前記チェーンと前記第1、第2支軸とを繋ぐ部分に伸張バネ部材を介在して該第1、第2支軸に結合したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の平行リンク駆動機構において、前記第1、第2アームは、前記第1、第2連結アームに比して長尺な長尺アームで形成したことを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1又は6に記載の平行リンク駆動機構において、前記静止アームには、支持体への取付け部を設け、前記運動アームには、機器取付け部を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の搬送装置の発明は、請求項1〜7のずれか1つに記載のリンク駆動機構において、前記静止アームを支持体に固定し、前記運動アームに機器を設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の搬送装置において、前記静止アームは、前記支持体に回動自在に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏するものである。すなわち、請求項1の発明によれば、静止アームに駆動手段を設け、この駆動手段と運動アームの第3、第4支軸との間に、伝動部材を襷掛けに懸架し、駆動手段の駆動により、第3、第4支軸のいずれか一方の支軸に結合された部分の伝動部材を牽引して運動アームを移動させる。すなわち、伝動部材を牽引することにより、静止アーム側から離れた運動アームの第3、第4支軸のいずれか一方の支軸に結合された部分の伝動部材を引っ張るので、運動アームは小さい牽引力で押上げ或いは押下げられる。したがって、従来技術のように、静止アーム側の駆動ギヤでアームの端部に設けた従動ギヤを回動させる構造の平行リンク機構と比べて、格段に駆動力を小さくできる。その結果、第1、第2長尺アームが長くなっても容量の小さい駆動手段で作動させることができ、またスピードアップも可能になる。
【0019】
請求項2、3の発明によれば、静止アームの第1、第2支軸に回転自在に第1、第2回転部材を設けて、第1、第2回転部材間に駆動手段の駆動部材を配設し、伝動部材を駆動部材及び第1、第2回転部材に懸架したので、第3、第4支軸の牽引がスムーズになる。また、請求項3の発明のように、回転ギヤにすることにより、回動がスムーズになる。
【0020】
請求項4の発明によれば、伝動部材は、第1、第2回転ギヤ及び駆動ギヤに懸架する部分をこれらのギヤに懸架されるチェーンで形成したので、駆動手段からの動力の伝達が確実になり、牽引力を強くすることができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、伝動部材は、チェーンと第1、第2支軸とを繋ぐ部分に伸張バネ部材を介在して第1、第2支軸に結合したので、駆動手段からの動力は、一旦、伸張バネ部材に作用してこのバネ部材が伸張し、この伸張したバネ力で運動アームが移動する ので、駆動手段に無理な力が加わることなく円滑に運動アームを移動させることができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、第1、第2アームの長さを長くしても、従来より小さな駆動力で平行リンク機構を作動させることが可能となる。
【0023】
請求項7の発明によれば、静止アームに、支持体への取付け部を設け、運動アーム部には、機器取付け部を設けることにより、リンク駆動機構を支持体へ取付けて、機器取付け部に工具、部品、機器などを取付けて、これらの部材を所定の場所へ搬送させることができる。
【0024】
請求項8の発明によれば、静止アームを支持体に固定し、運動アームに機器、例えば吹付けノズルなどを装着すると、吹付けノズルを所定の箇所へ移動できる搬送装置となる。
【0025】
請求項9の発明によれば、静止アームを支持体に回動自在に固定したので、平行リンク駆動機構を支持体に対して回動でき平行リンク駆動機構の移動範囲が拡大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための平行リンク駆動機構及びこの駆動機構を備えた搬送装置を例示するものであって、本発明をこれらのものに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例1】
【0027】
まず、図1を参照して本発明の一実施形態に係る平行リンク駆動機構を乾燥装置に適用した例で説明する。なお、図1は本発明の一実施形態に係る平行リンク駆動機構を乾燥装置に適用した状態の斜視図である。
乾燥装置1は、不図示の送風機と、この送風機から送風された空気を加熱して高温の熱風に変換生成する熱風発生器8と、この熱風発生器8からの熱風を塗装面などに吹付ける吹付けノズル12と、熱風発生器8及び吹付けノズル12が装着されてこの吹付けノズル12を移動させる平行リンク駆動機構2と、この平行リンク駆動機構2を制御する制御手段と、を有している。
【0028】
この乾燥装置1は、所定の大きさ、例えば自動車などを収容できる程度の大きさの塗装ブースBTに設置されて使用される。この塗装ブースBTは、自動車などが収容できる大きさの床面BEと、この床面BEの外周囲から立設されて自動車の背高より高い側壁WL、WLと、これらの側壁WL、WLの上方を覆う天井壁とを有し、一側壁に自動車が搬入及び搬出される出入口が設けられて、この出入口に開閉自在な開閉扉が取付けられている。なお、図1では側壁WL、WLと対向する側壁及び天井壁は省略されており、また、出入口及び開閉扉は、1つの側壁WLに設けられている。この塗装ブースBTには、不図示の換気装置が設置されて、塗装作業時にブース内が換気できるようになっている。一側壁WLには、水平方向に所定の間隔をあけて2本の水平レールR、Rと、これらのレール間に移動自在に連結した直立レールRが設けられている。直立レールRには、平行リンク駆動機構2が上下動する結合手段Cで結合されている。したがって、平行リンク駆動機構2は直立レールRに対して上下動自在、しかもこの直立レールRが水平レールR、Rに対して水平方向への移動自在に結合されるので、平行リンク駆動機構2の先端に連結された吹出しノズル12は、自動車などの被塗装物の如何なる箇所へも移動可能になる。
【0029】
次に、図2及び図3を参照して平行リンク駆動機構を説明する。なお、図2は平行リンク駆動機構の側面図、図3は図2の平行リンク駆動機構のギヤモータを取外してギヤを露出させた状態の側面図である。
平行リンク駆動機構2は、平行リンク機構3と、この平行リンク機構に連結された駆動手段とを有している。この駆動手段は、駆動ギヤ7が連結されたギヤモータGMで構成されている。平行リンク機構3は、平行に配設した2本の第1、第2長尺アーム4、4と、これらのアームの両端部を連結する短尺な第1、第2連結アーム4、4とを有し、第1、第2長尺アーム4、4の端部と第1、第2連結アーム4、4の端部とは、それぞれ第1〜第4軸支6〜6で枢支されている。なお、駆動手段にギヤモータを使用したが他の手段でもよい。
【0030】
この平行リンク機構3は、各アームが平行四辺形の形を維持したまま変形移動できるようになっている。第1、第2連結アーム4、4は、第1、第2長尺アーム4、4より短くなっている。第1、第2長尺アーム4、4の長さは、例えば1000mmであり、また、第1、第2連結アーム4、4の長さは例えば130mmである。
第1連結アーム4は、直立レールRに結合手段Cで結合されるアームであって、静止アームとなっている。また、第2連結アーム4は、上下動するアームであって運動アームとなっている。
【0031】
第1連結アーム4には、第1、第2支軸6、6を結ぶ直線より第2連結アーム4側に駆動ギヤ7の支軸6が回動自在に固定されている。この駆動ギヤ7は、ギヤモータGMに連結されて、このモータの回転によって駆動ギヤ7が時計及び反時計方向へ回転される。第1、第2支軸6、6には、略同じ直径を有する円板状の第1、第2回転ギヤ7、7が回転自在に固定されている。すなわち、これらの回転ギヤ7、7は、第1、第2支軸6、6にフリーに回動できるようになっている。なお、これらの回転ギヤに代えて、その他の回動部材、例えば筒状の回転部材を使用してもよい。また、回転ギヤは必須でなく省いてもよい。駆動ギヤ7と各回転ギヤ7、7は、それぞれの外周縁に所定ピッチの山型歯が設けられている。
【0032】
第1連結アーム4には、駆動ギヤ7及び第1、第2回転ギヤ7、7が千鳥状に配設されて、これらのギヤに伝動部材5のチェーン5が懸架される。伝動部材5は、第1支軸6に固定した第1回転ギヤ7と第4支軸6との間、及び第2支軸6に固定した第2回転ギヤ7と第3支軸6との間に襷掛けに交差させて懸架する。この伝動部材5は、所定長さのベルト体5、5と、このベルト体の略中間部に連結したチェーン5とを有し、各ベルト体5、5の端部はそれぞれ伸張スプリング5、5を介在してそれぞれ第3、第4支軸6、6に固定される。すなわち、伝動部材5は、第1回転ギヤ7と第4支軸6間の第1伝動部5Aと、第2回転ギヤ7と第3支軸6間の第2伝動部5Bと、第1、第2伝動部の端部を連結するチェーン5とで構成されている。駆動ギヤ7及び第1、第2回転ギヤ7、7は、第1連結アーム(静止アーム)4に千鳥状に配設されているので、伝動部材5のチェーン5はこれらのギヤに蛇行状に懸架される。
【0033】
駆動ギヤ7に懸架された部分のチェーン5は、第1、第2回転ギヤ7、7に懸架された後に、伝動部材5の端部が第2連結アーム(運動アーム)4の第3、第4支軸6、6に結合される。第1、第2連結アーム4、4は、互いに平行に配設され、伝動部材5が襷掛に交差して懸架されているので、第1、第2回転ギヤ7、7と第3、第4支軸6、6との位置関係は、例えば、図3において、第1連結アーム(静止アーム)4の第1回転ギヤ7が第2連結アーム(運動アーム)の第4支軸6より上方に位置し、逆に、第1連結アーム(静止アーム)4の第2回転ギヤ7が第2連結アーム(運動アーム)44の第3支軸6より下方に位置することになる。この位置関係により、駆動ギヤ7に懸架されたチェーン5は第1、第2回転ギヤ7、7に懸架することにより、第1、第2伝動部5A、5Bと牽引する位置が第1連結アーム(静止アーム)4の長さ方向に広げられる。この位置関係で、ギヤモータGMによって駆動ギヤ7が時計方向に回転すると、チェーン5を介して第1回転ギヤ7が反時計方向へ回転して、第1伝動部5Aを矢印方向Xへ牽引する。この牽引は第1回転ギヤ7が上方に位置するので、この上方位置から下方の第4支軸6部分を牽引、すなわち引っ張り上げるので、小さい牽引力で第2連結アーム(運動アーム)4を上方へ持ち上げることが可能になる。
【0034】
また、この牽引力(引張り力)が第1伝動部材5Aに作用すると、最初、伸張スプリング5が所定長さ伸張する。この段階では、第2連結アーム4は移動せずにスプリングだけが伸張する。この状態で更に駆動ギヤ7が同じ方向へ回転すると、第1伝動部5Aは更に牽引されて、伸張スプリング5は略伸び切った状態となり、第2連結アーム4は上昇移動する。この一連の動作において、第2伝動部5Bは図3の矢印X方向へ送られる。また、ギヤモータGMの回転を逆にして、駆動ギヤが反時計方向へ回転すると、第2回転ギヤ7と第2連結アーム(運動アーム)の第3支軸6に懸架された伝動部材との関係も、方向が異なるだけで同じように作動して、第2連結アーム4が下方へ移動する。
【0035】
この構成によると、第1連結アーム4に固定された駆動ギヤ7が時計或は反時計方向に回転すると、この回転により、第1、第2伝動部材5A、5Bのいずれか一方が牽引され、この牽引によって第2連結アームが上下動するので、駆動ギヤからの小さい駆動力で第2連結アーム4を移動させることができる。すなわち、駆動ギヤの回転は、第1、第2伝動部材5A、5Bにより第1連結アーム4側から離れた第2連結アーム4を押上げ或いは押下げするので、例えば、従来技術のように、第1連結アーム4側の駆動ギヤを基点にして長尺アームを持ち上げ或は下げするものと比べて、格段に駆動力を小さくできる。その結果、第1、第2長尺アーム4、4の長さが長くなっても容量の小さいギヤモータで作動させることが可能になる。また、伝動部材の端部に設けた伸縮スプリングにより、モータを過負荷にすることなくスプリングのバネ力を利用して第2連結アーム4の押上げ或いは押下げをスムーズにすることができる。
【0036】
図4を参照して、この平行リンク駆動機構を使用した乾燥装置を説明する。なお、図4は平行リンク駆動機構を使用した乾燥装置を示し、図4(a)は上面図、図4(b)は側面図である。
乾燥装置1は、平行リンク駆動機構2と、この平行リンク機構3の一方の第2長尺アーム4に固定した熱風発生器8と、平行リンク駆動機構2の第2連結アーム4に固定した吹付けノズル12とを有している。熱風発生器8は、内部に蓄熱体を収容した小型のものが使用される。また、吹付けのノズル12は、熱風発生器8から送風される熱風を被乾燥物、例えば、塗料などへ吹付けるものである。吹付けノズル12は、第2連結アーム4に水平アーム10を介して固定されている。すなわち、第2連結アーム4に固定部材9を取付けて、この固定部材9に水平アーム10が水平方向へスイング移動できるように固定されている。この水平アーム10には、その先端に下方へ垂下した支持アーム11が回転自在に結合されて、この支持アーム11に吹付けノズル12が固定されている。この吹付けノズル12には、ギヤモータGMを所定方向へ回転させるスイッチ装置13が固定されている。また、熱風発生器8と吹付けノズルとは、ホースHで連結されている。
【0037】
この平行リンク駆動機構2は、吹付けヘッド12に設けたスイッチ装置13によって操作される。図5を参照してスイッチ装置を説明する。なお、図5はスイッチ装置を示し、図5(a)はスイッチ装置の外観斜視図、図5(b)〜図5(d)は図5(a)のスイッチ装置を縦方向から切断して示した断面図であって、スイッチ動作を説明する説明図である。
スイッチ装置13は、図5に示すように、2個のマイクロスイッチMS、MSと、これらのマイクロスイッチMS、MSを作動させるスイッチ操作部材17と、ヒータスイッチ15とを有している。各マイクロスイッチMS、MSはスイッチボックス14に収納され、このスイッチボックス14にスイッチ操作部材17及びヒータスイッチ15が固定されている。ヒータスイッチ15は、小ボックスPB内に収納されている。スイッチボックス14は、上方が基台16となっている。このスイッチボックス14は、その内部に2個のマイクロスイッチMS、MSが対向して設けられ、各マイクロスイッチMS、MSの間にスイッチ操作部材17が位置している。各マイクロスイッチMS、MSは、それぞれ作動突起M、Mを有し、各作動突起M、Mが上下に異なる位置となるように固定されている。この作動突起M、Mがスイッチ操作部材17で押圧されることによりスイッチがオンされる。
【0038】
スイッチ操作部材17は、所定長さの第1中空管18と、この第1中空管18の下方端から嵌挿された中空の第2中空管19と、を有している。第2中空管19は、第1中空管18の下方端から嵌挿されて第1中空管18に沿って摺動できるようになっている。第1中空管18は、基台16の略中央部に固定されて、この基台16からスイッチボックス14内を貫通して下方へ所定長さ垂下している。この第1中空管18は、その内部に伸張スプリングSPが挿入されて、この伸張スプリングSPの下端が第1中空管18の下端に固定されている。第2中空管19は、内部に圧縮プリングSP及びガイド棒20が挿入されて、このガイド棒20の下端が第2中空管19の下端に固定されている。このガイド棒20は、各スプリングSP、SP内を挿通されて、その先が伸張プリングSPの上端に固定されている。また、この第2中空管19には、上方に各マイクロスイッチMS、MSの作動突起M、Mを押圧する第1、第2突起19、19が対向する位置に設けられている。
【0039】
図6を参照して、乾燥装置における平行リンク駆動機構の操作方法を説明する。なお、図6は図4の平行リンク駆動機構の動作を説明する側面図である。
このスイッチ装置13は、スイッチ操作部材17の第2中空管19の上下動操作により、各マイクロスイッチMS、MSのON/OFF動作が行われることで操作される。詳しくはこのマイクロスイッチMS、MSのON/OFF動作によって、ギヤモータGMが作動されて平行リンク駆動機構2を介して吹出しノズル12が上下動される。すなわち、スイッチ操作部材17は、吹出しノズル12を非作動時、すなわち待機状態で、図5(c)に示すように、第2中空管19が中間に位置し、第1、第2突起19、19は第1、第2マイクロスイッチMS、MSの作動突起M、Mに当接せず、これらのスイッチはOFF状態にある。
【0040】
この状態から、スイッチ操作部材17の第2中空管19を押上げると、第1突起19が第1作動突起Mを押圧して、第1マイクロスイッチMSがONされる(図5(d)参照)。この第1マイクロスイッチMSのON動作により、ギヤモータGMが作動されて、平行リンク駆動機構2を介して吹出しノズル12が上方へ移動される。すなわち、ギヤモータGMの作動により、駆動ギヤ7が図3において時計方向に回転される。この駆動ギヤの回転により、伝動部5Aが右から左方向へ牽引される。この牽引により、第2連結アーム4は上方へ上昇する(図6(a)参照)。この上昇で吹付けノズル12も上方へ持ち上げられる。この状態にして、ヒータスイッチ15を押圧すると、不図示の送風機及びヒータが作動して、吹付けノズルから熱風が噴出される。
【0041】
また、第2中空管19を押下げると、第2突起19が第2作動突起Mに当接し押圧して第2マイクロスイッチMSをONさせる(図5(b)参照)。この第2マイクロスイッチMSのON動作により、ギヤモータGMが作動されて、リンク駆動機構2を介して吹出しノズル12が下方へ移動される。すなわち、駆動ギヤが図3において反時計方向に回転され、この回転により、伝動部5Bが右から左方向へ牽引される。この牽引により、第2連結アーム4は下方へ下降する(図6(b)参照)。この下降で吹付けノズル12も下方へ降下する。
【0042】
スイッチ装置13は、吹出しノズル12に固定されているので、作業者は、塗装作業時にスイッチ装置の操作部材17の第2中空管19を上下動することにより、吹出しのノズル12を所望の位置へ簡単に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る平行リンク駆動機構を乾燥装置に適用した状態の斜視図である。
【図2】図2は平行リンク駆動機構の側面図である。
【図3】図3は図2の平行リンク駆動機構のギヤモータを取外してギヤを露出させた状態の側面図である。
【図4】図4は平行リンク駆動機構を使用した乾燥装置を示し、図4(a)は上面図、図4(b)は側面図である。
【図5】図5はスイッチ装置を示し、図5(a)はスイッチ装置の外観斜視図、図5(b)〜図5(d)は図5(a)のスイッチ装置を縦方向から切断してしめした断面図であって、スイッチ動作を説明する説明図である。
【図6】図6は図4のリンク駆動機構の動作を説明する側面図である。
【図7】図7は従来技術の搬送装置の斜視図である。
【図8】図8は図7に示す搬送装置の動作説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 乾燥装置
2 平行リンク駆動機構
3 平行リンク機構
、4 第1、第2アーム
連結アーム(静止アーム)
連結アーム(運動アーム)
5 伝動部材、
、5 伸張スプリング
〜6 第1〜第4支軸
、7 回転ギヤ、
駆動ギヤ
8 熱風発生器
12 吹付けノズル
13 スイッチ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの一対の第1、第2アームと、該第1、第2アームの端部間を連結する所定長さの一対の第1、第2連結アームとをそれぞれ平行に配設し、該第1、第2連結アームのいずれか一方の連結アームを静止アーム、他の連結アームを運動アームとして、該静止アームの端部と該第1、第2アームの一端部とを第1、第2支軸により、該運動アームの端部と該第1、第2アームの他端部とを第3、第4支軸によりそれぞれ回動自在に枢支した平行リンク機構と、該平行リンク機構を駆動する駆動手段と、を有する平行リンク駆動機構において、
前記静止アームに前記駆動手段を設け、該駆動手段と前記第3、第4支軸との間に、伝動部材を襷掛けに懸架して、該駆動手段の駆動により、該伝動部材のうち、前記第3、第4支軸にそれぞれ結合された部分のいずれか一方を牽引して前記運動アームを移動させることを特徴とする平行リンク駆動機構。
【請求項2】
前記駆動手段は、駆動モータと該モータに連結した駆動部材とで構成して、前記静止アームの第1、第2支軸にそれぞれ第1、第2回転部材を回動自在に装着し、これらの第1、第2回転部材間に該駆動部材を配設して、前記伝動部材を該第1、第2回転部材を経て該駆動部材に懸架したことを特徴とする請求項1に記載の平行リンク駆動機構。
【請求項3】
前記回転部材は、円板状の回転ギヤで形成して、前記駆動部材は円板状の駆動ギヤで形成して、これらのギヤに前記伝動部材を懸架したことを特徴とする請求項2に記載の平行リンク駆動機構。
【請求項4】
前記伝動部材は、前記第1、第2回転ギヤ及び前記駆動ギヤに懸架する部分をこれらのギヤに懸架されるチェーンで形成したことを特徴とする請求項3に記載の平行リンク駆動機構。
【請求項5】
前記伝動部材は、前記チェーンと前記第1、第2支軸とを繋ぐ部分に伸張バネ部材を介在して該第1、第2支軸に結合したことを特徴とする請求項5に記載の平行リンク駆動機構。
【請求項6】
前記第1、第2アームは、前記第1、第2連結アームに比して長尺な長尺アームで形成したことを特徴とする請求項1に記載の平行リンク駆動機構。
【請求項7】
前記静止アームには、支持体への取付け部を設け、前記運動アームには、機器取付け部を設けたことを請求項1又は6に記載の平行リンク駆動機構。
【請求項8】
請求項1〜7のずれか1つに記載のリンク駆動機構において、前記静止アームを支持体に固定し、前記運動アームに機器を設けたことを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
前記静止アームは、前記支持体に回動自在に固定したことを特徴とする請求項8に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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