説明

平面アンテナ

【課題】誘電体基板の寸法安定性に優れるとともに、誘電正接が低く、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)特性が1.6以下となり、安定して高いアンテナ特性が得られる平面アンテナを提供する。
【解決手段】導体によって構成されるグランド板12と、誘電体によって構成される誘電体層14と、導体によって構成されるパッチ素子16とを備え、誘電体層14が、ポリオレフィン樹脂とグラスファイバーとを積層し熱融着することによって形成された積層体とする、平面アンテナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、RFID用の通信や、放送電波の受信などに用いることができる平面アンテナに関し、具体的には、860〜960MHzのUHF帯を利用する低周波対応の平面アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、RFID用の通信や、放送電波の受信などに用いることができる平面アンテナの一種であり、パッチアンテナやマイクロストリップアンテナと呼ばれる帯域が狭く広い指向性を有するアンテナが知られている。
【0003】
パッチアンテナは、例えば、特許文献1(特開平5−121935号公報)に開示されているような構造を有している。図23,24は従来のパッチアンテナの構造を説明するための構成図である。
【0004】
図23(a)は、従来のパッチアンテナの構成を模式的に表す平面図であり、図23(b)は、図23(a)のM−M断面を模式的に表すM−M断面図である。また、図24(a)は、従来のパッチアンテナの構成を模式的に表す平面図であり、図24(b)は、図24(a)のM−M断面を模式的に表すM−M断面図である。
【0005】
図23に示すように、パッチアンテナ100は、グランド板110、誘電体基板120、パッチ素子130、給電線路140から構成されている。そして、パッチ素子130とグランド板110とに挟まれた誘電体基板120としては、フッ素樹脂やポリエチレンなどと、グラスファイバーを積層した材料が用いられており、その比誘電率εrは、2〜3程度であった。
【0006】
このようなパッチアンテナ100の帯域特性は、誘電体基板120の比誘電率εr及び誘電体基板の厚さによって左右され、広帯域にするためには、比誘電率εrを小さくする(1に近づける)とともに、厚さを大きくする必要がある。
【0007】
また、図24に示すパッチアンテナ200では、グランド板110の開口110aを貫通する導体ピン150によって、グランド板110を挟んで位置している給電線路140とパッチ素子130とを接続している。
【0008】
このように構成することによって、図23に示したパッチアンテナ100と比べて、給電線路140の放射損失を抑制し、かつ、広帯域特性を持つパッチアンテナ200を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−121935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図24に示すパッチアンテナ200でも、パッチ素子130とグランド板110との間に配置される誘電体基板120bの厚さを大きくする必要があり、また、パッチアンテナの帯域特性は、誘電体基板120の比誘電率εr及び誘電体基板120の厚さによって左右されることになる。
【0011】
特に、860〜960MHzのUHF帯を利用する低周波対応のアンテナの場合には、アンテナの電波特性を向上させるために、誘電体基板120の厚さを大きくする必要がある。このように、誘電体基板120の厚さが大きくなると、アンテナの性能は、誘電体基板120に使用される材料にも影響されることになる。
【0012】
使用される材料によっては、給電線路140の放射損失が増大したり、アンテナの利得が低下したりすることになる。また、使用される材料の寸法安定性が損なわれると、さらに損失が増大してしまう問題があった。
【0013】
特許文献1にも開示されているように、従来は、誘電体やスペーサーとして、発泡ポリエチレンが用いられていたが、発泡ポリエチレンは、寸法安定性が悪く、全体として形状が大きくなってしまいがちであり、安定して高いアンテナ特性を得ることができなかった。
【0014】
本発明はこのような現状を鑑み、アンテナの誘電体基板(誘電体層)にポリオレフィン樹脂とグラスファイバーを積層した材料を用いることによって、誘電体基板の寸法安定性に優れるとともに、誘電正接が低く、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)特性が1.6以下となり、安定して高いアンテナ特性が得られる平面アンテナを提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明では、従来の平面アンテナと比較して非常に軽量で、使用用途を広げることができるとともに、安定して高いアンテナ特性が得られる平面アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の平面アンテナは、UHF帯の電波を送受信するための平面アンテナであって、
導体によって構成されるグランド板と、
誘電体によって構成される誘電体層と、
導体によって構成されるパッチ素子と、
を備え、
前記誘電体層が、ポリオレフィン樹脂とグラスファイバー樹脂とを積層し、熱融着することによって形成された積層体であることを特徴とする。
【0017】
このように構成することによって、誘電体層の寸法安定性に優れるとともに、誘電正接が低く、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)特性が1.6以下となり、安定して高いアンテナ特性が得られる平面アンテナとすることができる。
【0018】
また、本発明の平面アンテナは、前記平面アンテナが、さらに、誘電体によって構成される第二誘電体層と、ストリップライン回路を構成するストリップライン層とを備え、
前記グランド板、前記誘電体層、前記パッチ素子、前記第二誘電体層、前記ストリップライン層の順に積層されて構成されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成することによって、ストリップライン層を調整することによって、平面アンテナのアンテナ特性を調整することができるため、所望の帯域に応じたアンテナ設計を容易に行うことができる。
【0020】
また、本発明の平面アンテナは、前記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレートのうちから選択される樹脂であることを特徴とする。
【0021】
このような樹脂を用いることによって、平面アンテナを軽量にすることができ、特に、ポリメチルペンテンなどのように比重が1以下となる樹脂を用いることによって、平面アンテナの比重を1以下とし、例えば、水に浮かばせることなどを可能とし、平面アンテナの用途を広げることができる。
【0022】
また、本発明の平面アンテナは、前記グラスファイバーが、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、炭素繊維のうちから選択される繊維を含有する織布または不織布の繊維基材であることを特徴とする。
【0023】
このような繊維を用いることによって、誘電体層の寸法安定性を高めることができ、良好なアンテナ特性を有する平面アンテナを容易に製造することができる。
【0024】
また、本発明の平面アンテナは、前記平面アンテナの表面の一部に保護層が設けられていることを特徴とする。
【0025】
このように、保護層を設けることで、誘電体基板は、良好な特性の維持、劣化防止、形状維持などを図ることができる。
【0026】
また、本発明の平面アンテナは、前記平面アンテナの厚みが、0.5mm〜10mmであることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の平面アンテナは、前記UHF帯の電波が、860MHz〜960MHzの周波数の電波であることを特徴とする。
【0028】
このように、860MHz〜960MHzの周波数の電波を用いる平面アンテナの場合、平面アンテナの厚みが1.5mm以上になると、安定した電波特性を発揮するため好ましい。一方で、平面アンテナにスルーホール加工などを施すことを考慮すれば、厚くとも10mmとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、誘電体層をポリオレフィン樹脂とグラスファイバーを積層した材料によって構成しているため、寸法安定性に優れるとともに、誘電正接が低く、VSWR特性が1.6以下となり、安定して高いアンテナ特性が得られる平面アンテナとすることができる。
【0030】
また、ポリオレフィン樹脂を使用しているため、従来の平面アンテナと比較して非常に軽量で、特に、ポリオレフィン樹脂としてポリメチルペンテン(PMP)を使用することによって、比重を1以下とすることができ、水に浮かばせることも可能で、平面アンテナの使用用途を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の平面アンテナの一実施例に係る構造を説明するための平面構成図である。
【図2】図2は、図1の部分拡大図である。
【図3】図3は、図1の平面アンテナの背面構成図である。
【図4】図4は、図3の部分拡大図である。
【図5】図5は、図1の平面アンテナの部分拡大A−A断面図である。
【図6】図6は、本実施例の平面アンテナの形成方法の一例を説明するための模式図である。
【図7】図7は、本発明の平面アンテナの別の実施例に係る構造を説明するための平面構成図である。
【図8】図8は、図7の部分拡大図である。
【図9】図9は、図7の平面アンテナの背面構成図である。
【図10】図10は、図9の部分拡大図である。
【図11】図11は、図7の平面アンテナの部分拡大A−A断面図である。
【図12】図12は、本発明の平面アンテナのさらに別の実施例に係る構造を説明するための平面構成図である。
【図13】図13は、図12の部分拡大図である。
【図14】図14は、図12の平面アンテナのグランド板を構成する導体層の構成図である。
【図15】図15は、図12の平面アンテナの背面構成図である。
【図16】図16は、図15の部分拡大図である。
【図17】図17は、図12の平面アンテナの部分拡大A−A断面図である。
【図18】図18は、図12の平面アンテナの部分拡大B−B断面図である。
【図19】図19は、本発明の一実施形態における平面アンテナのVSWR特性を示すグラフである。
【図20】図20は、本発明の一実施形態における平面アンテナの軸比特性を示すグラフである。
【図21】図21は、本発明の一実施形態における平面アンテナのX−Y面(水平面)における放射指向性を示すグラフであり、図21(a)は、測定周波数952MHzにおける放射指向性を示すグラフ、図21(b)は、測定周波数953MHzにおける放射指向性を示すグラフ、図21(c)は、測定周波数954MHzにおける放射指向性を示すグラフである。
【図22】図22は、本発明の一実施形態における平面アンテナのX−Z面(鉛直面)における放射指向性を示すグラフであり、図22(a)は、測定周波数952MHzにおける放射指向性を示すグラフ、図22(b)は、測定周波数953MHzにおける放射指向性を示すグラフ、図22(c)は、測定周波数954MHzにおける放射指向性を示すグラフである。
【図23】図23は、従来のパッチアンテナの構成を説明するための構成図である。
【図24】図24は、従来のパッチアンテナの構成を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の平面アンテナの一実施例に係る構造を説明するための平面構成図、図2は、図1の部分拡大図、図3は、図1の平面アンテナの背面構成図、図4は、図3の部分拡大図、図5は、図1の平面アンテナの部分拡大A−A断面図である。
【0034】
図1〜5に示すように、本実施例における平面アンテナ10は、直線偏波用の平面アンテナであり、グランド板を構成する導体層12と、誘電体層14と、パッチ素子を構成する導体層16とを有している。
【0035】
また、平面アンテナ10には、グランド板(導体層12)からパッチ素子(導体層16)まで貫通する貫通孔26が設けられており、この貫通孔26を介して、グランド板(導体層12)側からパッチ素子(導体層16)側へ給電線(図示せず)を挿通させ、パッチ素子(導体層16)の給電点16aと接続されるように構成されている。なお、給電点16aと給電線を接続する場合には、例えば、はんだなどで接着することができる。
【0036】
また、グランド板(導体層12)には、接地点12aが設けられており、接地点12aとアース線(図示せず)とが接続されるように構成されている。このように構成することによって、平面アンテナ10を使用する際に、グランド板(導体層12)を電気的に接地された状態にすることができる。なお、接地点12aとアース線を接続する場合には、例えば、はんだなどで接着することができる。
【0037】
なお、符号12bは、貫通孔26に挿入された給電線がぐらついたり抜け落ちたりしないように、給電線と導体層12とを、例えば、はんだなどで接着するための接着点である。
【0038】
なお、接着点12bとグランド板12cとは電気的に接続されないように、図4に示すように、導体層12の一部が除去されている。(以下、単にグランド板12cという場合には、「導体層12のうち接着点12bを除いた箇所」のことを言う。)
導体層12及び導体層16の材料は、導電性材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば、銅や金など導電率の高い金属を用いることが好ましい。なお、後述するように、誘電体層14と積層して平面アンテナ10を形成するため、導体層12及び導体層16は、フィルム状の導電性材料、すなわち、銅箔(例:電解銅箔や圧延銅箔)や金箔などを用いることが好ましい。
【0039】
また、導体層12及び導体層16の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、5〜70μm、好ましくは、9〜35μm程度である。
【0040】
また、誘電体層14は、ポリオレフィン樹脂とグラスファイバーとが積層して形成されている。
【0041】
ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンテレフタレート(PEN)などを用いることができる。なお、ポリオレフィン樹脂の発泡材料は、寸法安定性に欠けるため好ましくない。
【0042】
なお、ポリオレフィン樹脂として、例えば、ポリメチルペンテン(PMP)など、比重の小さい材料を選択することによって、平面アンテナの比重を1以下とすることができ、例えば、水に浮かばせることなどを可能とし、平面アンテナの用途を広げることができる。
【0043】
また、グラスファイバーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、炭素繊維などから選択される繊維を含有する織布または不織布の繊維基材を用いることができる。
【0044】
なお、ポリオレフィン樹脂とグラスファイバーとを積層するために、ポリオレフィン樹脂及びグラスファイバーはフィルム状に形成したものを用いることが好ましい。
【0045】
フィルム状のポリオレフィン樹脂(以下、「ポリオレフィン樹脂フィルム」とも言う)の厚さは、特に限定されるものではないが、50μm程度のものが好ましい。このようなポリオレフィン樹脂フィルムとしては、例えば、PMPフィルムとして、市販の「オピュラン(登録商標)」(三井化学(株)製)などを用いることができる。
【0046】
また、フィルム状のグラスファイバー(以下、「グラスファイバーフィルム」とも言う)の厚さは、特に限定されるものではないが、30μm〜190μm程度のものが好ましい。このようなグラスファイバーフィルムとしては、例えば、「E14A 04(商品名)」(ユニチカ(株)製)、「WEA18T(商品名)」(日東紡(株)製)などを用いることができる。
【0047】
このような、導体層12、誘電体層14を構成するポリオレフィン樹脂フィルム14a、グラスファイバーフィルム14b、導体層16を積層し、後述するように、この積層体を加熱・加圧し熱融着させることによって、本実施例の平面アンテナ10が製造される。
【0048】
なお、平面アンテナ10の厚さとしては、通常、1.5mm〜10mm程度、好ましくは、2mm〜6mm程度である。平面アンテナ10の厚さが1.5mmよりも薄いと安定した所望の電波特性が得られず、10mmよりも厚くなると加工性が悪く、例えば、スルーホール加工ができないなどの問題が生じる。
【0049】
このため、平面アンテナ10の厚さが上記のようになるように、導体層12、ポリオレフィン樹脂フィルム14a、グラスファイバーフィルム14b、導体層16の厚さや、ポリオレフィン樹脂フィルム14a及びグラスファイバーフィルム14bの枚数を決定する必要がある。
【0050】
本実施例の平面アンテナ10は、上述したような、導体層12、誘電体層14、導体層16を積層するとともに、加熱・加圧し熱融着させることによって形成されている。
【0051】
具体的には、図6に示すように、導体層12、誘電体層14を構成するポリオレフィン樹脂フィルム14a及びグラスファイバーフィルム14b、導体層16が多層に積層された状態で、緩衝用金属層18,20を介して加熱・加圧用金型19,21によって挟持する。
【0052】
なお、符号14cは、導体層12,16との接着性を高めるためにエッチング処理や、プラズマ処理などの表面処理を施されたポリオレフィン樹脂フィルムである。
【0053】
この状態で、加熱・加圧用金型19,21をポリオレフィン樹脂フィルム14aの融点以上に加熱(本実施例においてはPMPの融点である240℃以上、好ましくは、240℃〜260℃に加熱)して、厚さ方向(図6に示す矢印Xの方向)に所定圧力で所定時間(本実施例においては8〜15kg/cm2で2〜10分程度)加圧する。
【0054】
このように、加熱・加圧し熱融着させることによって、導体層12と、誘電体層14と、導体層16とが接合一体化して、平面アンテナ10が製造される。
【0055】
なお、本実施例では、ポリオレフィン樹脂フィルム14aを19枚、グラスファイバーフィルム14bを20枚、表面処理を施されたポリオレフィン樹脂フィルム14cを2枚用いて誘電体層14を形成しているが、それぞれの枚数は特に限定されず、上述するような平面アンテナ10の厚さとなるように選択すれば、適宜変更が可能である。
【0056】
また、本実施例においては、導体層12及び導体層16の表面を保護するために、保護層28及び保護層30を設けている。なお、上述する接地点12a、接着点12b、給電点16aを形成するために、導体層12及び導体層16の一部には保護層28,30が設けられていない。
【0057】
このような保護層としては、特に限定されるものではないが、フォトレジストやスクリーン印刷レジストなどのレジストや保護フィルムなどを用いることができる。なお、本実施例では、保護層28及び保護層30を設けているが、保護層を設けなくても構わない。
【0058】
なお、図5においては、導体層12、誘電体層14、導体層16、保護層28、保護層30の厚さは、説明のため、実際のスケールとは異なって描かれている。また、図6では、導体層12、ポリオレフィン樹脂フィルム14a、グラスファイバーフィルム14b、表面処理を施されたポリオレフィン樹脂フィルム14c、導体層16、緩衝用金属層18,20、加熱・加圧用金型19,21の厚さ及び大きさは、説明のため、実際のスケールとは異なって描かれている。
【0059】
図7は、本発明の平面アンテナの別の実施例に係る構造を説明するための平面構成図、図8は、図7の部分拡大図、図9は、図7の平面アンテナの背面構成図、図10は、図9の部分拡大図、図11は、図7の平面アンテナの部分拡大A−A断面図である。
【0060】
この実施例の平面アンテナ10は、図1〜6に示す平面アンテナ10と基本的には同様な構成であり、また、原理も同様であるので、同一の構成部材には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0061】
なお、図11においては、導体層12、誘電体層14、導体層16、保護層28、保護層30の厚さは、説明のため、実際のスケールとは異なって描かれている。
【0062】
本実施例における平面アンテナ10は、円偏波用の平面アンテナであり、導体層12の一部が除去され、グランド板12cと電気的に接続されないように形成された部品実装部12dを有している。
【0063】
この部品実装部12dに、チップ抵抗などの電子部品(図示せず)を実装することによって、平面アンテナ10のインピーダンスをコントロールすることができる。
【0064】
図12は、本発明の平面アンテナのさらに別の実施例に係る構造を説明するための平面構成図、図13は、図12の部分拡大図、図14は、図12の平面アンテナのグランド板を構成する導体層を示す構成図、図15は、図12の平面アンテナの背面構成図、図16は、図15の部分拡大図、図17は、図12の平面アンテナの部分拡大A−A断面図、図18は、図12の平面アンテナの部分拡大B−B断面図である。
【0065】
この実施例の平面アンテナ10は、図1〜6に示す平面アンテナ10と基本的には同様な構成であり、また、原理も同様であるので、同一の構成部材には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0066】
本実施例における平面アンテナ10は、広帯域用の平面アンテナであり、第二誘電体層32及びストリップライン回路34が設けられている。
【0067】
なお、第二誘電体層32は、誘電体層14と同様に、ポリオレフィン樹脂フィルムとグラスファイバーフィルムとの積層体から形成することができる。
【0068】
また、ストリップライン回路34は、第二誘電体層32の表面に設けられたストリップライン回路であって、所望の帯域において安定して高いアンテナ特性が得られるように、ストリップライン回路を設計することができる。
【0069】
このように構成される本実施例における平面アンテナ10には、ストリップライン回路34からパッチ素子(導体層16)側まで貫通する貫通孔26a,26b,26cが設けられている。
【0070】
貫通孔26a,26b,26cはそれぞれ、スルーホール実装されており、貫通孔26a,26bはパッチ素子16と接続されており、貫通孔26cはグランド板12cと接続されている。
【0071】
なお、図14に示すように、導体層12の貫通孔26a,26bに対応する箇所には、ストリップライン回路34とグランド板12cとが導通しないように、スルーホール避け加工12eがなされている。
【0072】
このように構成された本実施例の平面アンテナ10では、給電線はストリップライン回路34の給電点34aと接続され、アース線はストリップライン回路34の接地点34bと接続されることになる。
【0073】
なお、符号34c,34dで示す部品実装部に、チップ抵抗などの電子部品(図示せず)を実装することによって、平面アンテナのインピーダンスをコントロールすることができる。
【0074】
このように、本実施例の平面アンテナ10では、電波放射機能を担うパッチ素子(導体層16)と、アンテナ特性の調整を担う第二誘電体層32及びストリップライン回路34とによって、グランド板12cを挟むように構成している。
【0075】
このように構成することによって、第二誘電体層32の厚みや、ストリップライン回路34の線幅を調整することによって、平面アンテナ10のアンテナ特性を調整することができ、所望の帯域に応じたアンテナ設計を容易に行うことができる。
【0076】
なお、図17及び図18においては、導体層12、誘電体層14、導体層16、第二誘電体層32、ストリップライン回路34、保護層28、保護層30の厚さは、説明のため、実際のスケールとは異なって描かれている。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例においては、積層したポリオレフィン樹脂フィルムやグラスファイバーフィルムなどを厚さ方向に対して上下から加熱・加圧して、平面アンテナを形成しているが、加熱・加圧用金型21のみを厚さ方向下向きに加圧することによって、平面アンテナを形成してもよく、平面アンテナの形成方法については特に限定されないなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0078】
以下、本発明の一実施形態における円偏波用の平面アンテナのVSWR特性、軸比特性、指向性の測定データと、比較例として寸法安定性に劣る材料を用いて製造された円偏波用の平面アンテナのVSWR特性、軸比特性、指向性の測定データを示す。
【0079】
なお、以下の実施例及び比較例においては、953MHzの周波数の電波に対してアンテナ特性が最も良好となるように設計された平面アンテナを用いており、VSWR特性であれば953MHzにおけるVSWRの値が最小になることが好ましく、また、軸比特性であれば953MHzにおける軸比(Axis Ratio)が最小になることが好ましい。
【0080】
VSWR特性を示すグラフにおいて、横軸は周波数を示しており、中心軸が953MHzである。また、縦軸は、VSWRの値を示しており、値が小さくなるほど良好なアンテナ特性が得られていることを意味する。
【0081】
また、軸比特性を示すグラフにおいて、横軸は周波数(単位:MHz)を示している。また、縦軸は、軸比(Axis Ratio)の値を示しており、953MHz付近における軸比の値が3以下であれば良好なアンテナ特性が得られているといえる。
【0082】
図19は、本発明の一実施形態における平面アンテナのVSWR特性を示すグラフ、図20は、本発明の一実施形態における平面アンテナの軸比特性を示すグラフ、図21は、本発明の一実施形態における平面アンテナのX−Y面(水平面)における放射指向性を示すグラフであり、図21(a)は、測定周波数952MHzにおける放射指向性を示すグラフ、図21(b)は、測定周波数953MHzにおける放射指向性を示すグラフ、図21(c)は、測定周波数954MHzにおける放射指向性を示すグラフである。
【0083】
また、図22は、本発明の一実施形態における平面アンテナのX−Z面(鉛直面)における放射指向性を示すグラフであり、図22(a)は、測定周波数952MHzにおける放射指向性を示すグラフ、図22(b)は、測定周波数953MHzにおける放射指向性を示すグラフ、図22(c)は、測定周波数954MHzにおける放射指向性を示すグラフである。
【0084】
このように本発明の一実施例に係る平面アンテナでは、従来と比べて、寸法安定性に優れるとともに、図19〜図22に示すように、安定して高いアンテナ特性を得ることができ、良好な結果が得られた。
【0085】
また、本発明の平面アンテナのように、誘電体基板に、ポリオレフィン樹脂とグラスファイバー樹脂とを積層し、熱融着することによって形成された積層体を用いることによって、製造安定性が向上し、アンテナ特性の悪い平面アンテナが出来ることがないため、全体として製造コストを抑制することもできる。
【符号の説明】
【0086】
10 平面アンテナ
12 導体層
12a 接地点
12b 接着点
12c グランド板
12d 部品実装部
12e スルーホール避け加工
14 誘電体層
14a ポリオレフィン樹脂フィルム
14b グラスファイバーフィルム
14c 表面処理を施されたポリオレフィン樹脂フィルム
16 導体層(パッチ素子)
16a 給電点
18 緩衝用金属層
19 加熱・加圧用金型
20 緩衝用金属層
21 加熱・加圧用金型
26 貫通孔
26a 貫通孔
26b 貫通孔
26c 貫通孔
28 保護層
30 保護層
32 第二誘電体層
34 ストリップライン回路
34a 給電点
34b 接地点
34c 部品実装部
34d 部品実装部
100 パッチアンテナ
110 グランド板
110a 開口
120 誘電体基板
120b 誘電体基板
130 パッチ素子
140 給電線路
150 導体ピン
200 パッチアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UHF帯の電波を送受信するための平面アンテナであって、
導体によって構成されるグランド板と、
誘電体によって構成される誘電体層と、
導体によって構成されるパッチ素子と、
を備え、
前記誘電体層が、ポリオレフィン樹脂とグラスファイバー樹脂とを積層し、熱融着することによって形成された積層体であることを特徴とする平面アンテナ。
【請求項2】
前記平面アンテナが、さらに、誘電体によって構成される第二誘電体層と、ストリップライン回路を構成するストリップライン層とを備え、
前記グランド板、前記誘電体層、前記パッチ素子、前記第二誘電体層、前記ストリップライン層の順に積層されて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の平面アンテナ。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレートのうちから選択される樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の平面アンテナ。
【請求項4】
前記グラスファイバーが、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、炭素繊維のうちから選択される繊維を含有する織布または不織布の繊維基材であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の平面アンテナ。
【請求項5】
前記平面アンテナの表面の一部に保護層が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の平面アンテナ。
【請求項6】
前記平面アンテナの厚みが、1.5mm〜10mmであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の平面アンテナ。
【請求項7】
前記UHF帯の電波が、860MHz〜960MHzの周波数の電波であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の平面アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−89995(P2013−89995A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225732(P2011−225732)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】