説明

【課題】樋を備える庇であって、樋の端部に土埃等が堆積し難い庇を提供することを課題とする。
【解決手段】傾斜面1aを有する庇本体10と、傾斜面1aの下端縁に設けられた樋30と、この樋30の下側に設けられた水切り部2aと、を備える庇1であって、水切り部2aの上面を樋30の底壁31の下面に当接させ、水切り部2aの端縁を、底壁31の端縁よりも外側に位置させたことを特徴とする。なお、底壁31の端部の上面に、円弧面を設けるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庇に関する。
【背景技術】
【0002】
建物に付設される庇であって、傾斜面を有する庇本体と、傾斜面に滴下した雨水の排水路になる樋とを備える庇が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2006−307425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の庇においては、樋が水平に配置されていることから、樋への雨水の流れ込みが止むと、樋内において水の流れが滞り、雨水に混入していた土埃やチリなどが堆積し易くなる。このような現象が樋の端部(開放端)で発生すると、水の流れが堰き止められ、樋の全長に亘って水の流れが滞ることになるので、腐食が発生し易くなるとともに、樋本来の機能が阻害される虞がある。
【0004】
このような観点から、本発明は、樋を備える庇であって、樋の端部に土埃等が堆積し難い庇を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは、鋭意研究を行った結果、樋の下側に水切り部を設けるとともに、水切り部の端縁を樋の底壁の端縁よりも外側に位置させると、樋の端部における水の流れがスムーズになることを見出し、本発明を創案するに至った。すなわち、本発明は、傾斜面を有する庇本体と、前記傾斜面の下端縁に沿って設けられた樋と、前記樋の下側に設けられた水切り部と、を備える庇であって、前記水切り部の上面を前記樋の底壁の下面に当接させ、前記水切り部の端縁を、前記底壁の端縁よりも外側に位置させたことを特徴とする。
【0006】
このようにすると、樋の端部における水の流れがスムーズになるので、樋への雨水の流れ込みが止んだ後においても、樋の端部に水が残留し難くなり、したがって、樋の端部に土埃等が堆積し難くなる。
【0007】
本発明においては、前記底壁の端部の上面を円弧面としてもよい。このようにすると、樋の端部における水の流れがより一層スムーズになるので、土埃等がより一層堆積し難くなる。
【0008】
前記庇本体の縁部に沿って断面L字状の框部材が配置されている場合には、前記框部材の水平部に前記樋を載置し、前記水平部を前記水切り部として機能させることが望ましい。このようにすると、樋や水切り部の存在が目立ち難くなるので、すっきりとした外観の庇を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る庇によると、樋の端部に土埃等が堆積し難くなり、ひいては、樋の機能を良好に保つことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
本実施形態に係る庇1は、図1に示すように、玄関や窓等の開口部の上方に付設されるものであって、傾斜面1aを有する庇本体10と、この庇本体10の縁部に沿って配置された框部材20と、傾斜面1aの下端縁(本実施形態では、庇本体10の前端縁)に沿って設けられた樋30と、を備えている。
【0012】
なお、本実施形態では、ブラケットT1,T2に支持された庇1を例示するが、庇1の支持形式等を限定する趣旨ではない。
【0013】
庇本体10は、骨組みとなる枠体11と、枠体11を挟んで上下に対向して配置された二枚の面材12(図1では上面側の面材12のみを図示)と、二枚の面材12,12の間に配置されたコア材13とを備えて構成されている。なお、本実施形態の庇本体10は、図1に示す白抜き矢印の方向が流れ方向となるように、その全体が建物側(後端側)から前端側に向って下向きに傾斜している。
【0014】
枠体11は、アルミニウム合金製の中空押出形材を組み合わせ形成されている。押出形材同士は、溶接等によって互いに接合されている。
【0015】
面材12は、アルミニウム合金製の圧延材からなり、ろう材あるいは接着剤を介して枠体11およびコア材13に接合されている。
【0016】
コア材13は、複数の筒状体13a,13a,…を蜂の巣状に集合させたものであり、隣接する筒状体13a,13aの側面同士がろう材あるいは接着剤を介して接合されている。なお、図1では、コア材13の一部のみを図示しているが、コア材13は、枠体11で囲まれた領域の全体に配置されている。
【0017】
なお、庇本体10は、取付部材14を利用して下側のブラケットT1に接続されるとともに、接続部材15およびロッド16を利用して上側のブラケットT2に接続されている。取付部材14は、横L字状を呈するアルミニウム合金製の押出形材からなり、庇本体10の後端部(建物側の端部)の上面に固着されている。接続部材15は、逆T字状を呈するアルミニウム合金製の押出形材からなり、庇本体10の前後方向の中央部の上面に固着されている。また、ロッド16は、接続部材15とブラケットT2との間に介設される長さ調節可能な棒状部材である。
【0018】
框部材20は、庇本体10の縁部のうち、側端部および前端部に配置されている。図2の(b)に示すように、本実施形態の框部材20は、断面横L字状を呈するアルミニウム合金製の押出形材からなり、縦部21と、この縦部21の下端縁から張り出す水平部22とを備えている。
【0019】
縦部21は、庇本体10の小口を覆い隠す部位であり、ビス止め等の手段により、庇本体10の小口に固着されている。庇本体10の前端部に位置する縦部21の上端は、庇本体10の傾斜面1aの下端縁へ流れてきた雨水がスムーズに樋30へ流れ込めるように、傾斜面1aと一致させているが(図2の(b)参照)、庇本体10の側端部に位置する縦部21の上端は、庇本体10の側端部から雨水が滴り落ちないように、傾斜面1aよりも上方に突出させている(図2の(c)参照)。なお、本実施形態では、庇本体10の前端部に位置する縦部21の上端を庇本体10の傾斜面1aと面一にしているが、傾斜面1aよりも下側に位置させても差し支えない。
【0020】
水平部22は、図2の(b)に示すように、庇本体10の傾斜面1aよりも下側に位置している。本実施形態では、水平部22の下面が、庇本体10の下面と面一になっている。水平部22のうち、庇本体10の前端部の角部に位置する部位は、後記する水切り部2a(図2の(a)および(c)参照)として機能する。
【0021】
樋30は、傾斜面1aを流下してきた雨水が框部材20の前端縁から滴り落ちないようにするために配置されたものであり、框部材20の水平部22に載置されていて、框部材20の縦部21を貫通する図示せぬビス等の固着具によって庇本体10に固着されている。樋30の形態に制限はないが、本実施形態のものは、上面が開口した断面溝形のアルミニウム合金製の押出形材からなり、底壁31と、底壁31の両側縁から立ち上がる一対の側壁32,32とを備えている。底壁31は、框部材20の水平部22の上面に密着しており、側壁32,32のうち、庇本体10側に位置する側壁32は、框部材20の縦部21に密着している。なお、本実施形態では、側壁32の上端は、框部材20の縦部21の上端よりも下側に位置させているが、縦部21の上端と一致させてもよい。
【0022】
図2の(c)および(d)を参照して、水切り部2aと樋30とにより形成される水切り構造をより詳細に説明する。
【0023】
水切り部2aは、前記したように、框部材20の水平部22からなる。すなわち、水切り部2aは、樋30の下側に設けられており、水切り部2aの上面は、樋30の底壁31の下面に当接している。また、水切り部2aの端縁は、樋30の底壁31の長手方向(押出方向)の端縁よりも外側に位置している。水切り部2aの突出量dの大きさに制限はないが、4mmを超えると、樋30の端部から流出した水が左右に広がってしまうおそれがあるので、1〜4mmとすることが望ましく、より好適には、3mmとすることが望ましい。
【0024】
図2の(d)に示すように、底壁31の端部の上面は、水切り部2aに向けて傾斜させている。すなわち、底壁31の長手方向の端部には、水きり部2aに向って傾斜する傾斜面31aが形成されている。傾斜面31aは、上に凸の円弧面である。円弧面の半径は、底壁31の肉厚tの0.8〜1.2倍、より好ましくは、0.9〜1.1倍とすることが望ましい。
【0025】
以上説明した庇1によれば、樋30の長手方向に勾配が設けられていない場合であっても、樋30の端部における水の流れがスムーズになるので、樋30への雨水の流れ込みが止んだ後においても、樋30の端部に水が残留し難くなり、したがって、樋30の端部に土埃等が堆積し難くなる。
【0026】
また、本実施形態の如く、樋30の底壁31の端部に傾斜面31aを設けると、樋30の端部における水の流れがより一層スムーズになるので、土埃等がより一層堆積し難くなる。
【0027】
また、本実施形態では、樋30の下側に框部材20の水平部22を位置させるとともに、水平部22の一部を水切り部2aとして機能させているので、樋30や水切り部2aの存在が目立ち難くなり、ひいては、庇1の外観がすっきりとしたものになる。
【0028】
なお、本実施形態では、傾斜面31aを上に凸の円弧面とした場合を例示したが、傾斜面31の形態を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、下に凸の円弧面としてもよいし、円弧面以外の曲面や平面としても差し支えない。また、傾斜面31aを形成せずに、底壁31の端部を垂直に切り落としてもよいし、階段状に成形してもよい。
【0029】
また、本実施形態では、樋30の端部の全体を水切り部2aの端縁から内側にオフセットさせているが、図3の(a)および(b)に示すように、底壁31の端縁を切り欠くことで、水切り部2aの端縁を底壁31の端縁よりも外側に位置させてもよい。すなわち、樋30のうち、側壁32,32については、その端縁を水切り部2aの端縁と一致させてもよい。
【0030】
また、本実施形態では、框部材20の水平部22の一部を水切り部2aとして機能させた場合を例示したが、図4に示すように、框部材20とは別の部材で水切り部2aを構成してもよい。このようにすると、框部材20の構成に関わらず、水切り部2aを形成することができるし、框部材20を省略することも可能である。
【実施例】
【0031】
本願発明の効果を確認すべく実験を行った。実験では、樋を水平に設置したうえで、樋の端部から水が流出するまで樋に水を供給し、水の供給を停止した後、樋の端部からの水の流出が止まった段階で、樋内に残留している水量を計測した。表1に残留水量(ml)を示す。
【0032】
なお、表1中、「実施例」は、水切り部の端縁を樋の底壁の端縁から突出させた場合(図2の(c)参照)の実験結果であり、比較例1は、樋の底壁の端縁を水切り部の端縁と一致させた場合の実験結果であり、比較例2は、樋の底壁の端縁を水切り部の端縁から突出させた場合の実験結果である。また、表1中、「垂直」とは、樋の底壁の端縁を垂直に切断した場合(傾斜面を形成しない場合)の実験結果であり、「傾斜」とは、樋の底壁の端縁に、45(deg)で傾斜する平面を形成した場合の実験結果であり、「R」とは、樋の底壁の端縁に、底壁の厚さ寸法(1.5mm)と同じ大きさの半径(=1.5mm)を有する上に凸の円弧面(図2の(d)に示すものと同等の円弧面)を形成した場合の実験結果である。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示すように、比較例1,2に係る庇では、残留水量が180.5〜259.0(ml)であるのに対し、実施例に係る庇では、樋の端部形状にかかわらず、残留水量が100(ml)以下となっており、水切り部の端縁を樋の底壁の端縁から突出させた場合の効果が実証された。特に、実施例の各ケースのうち、樋の底壁の端縁に円弧面(曲面)を形成したケースにおいては、水切り部の端縁を樋の底壁の端縁から突出させたことと相俟って、残留水量が50(ml)以下となった。
【0035】
なお、水切り部の突出量dを1〜4mmの間で変化させて実験を行ったが、残留水量の多少に優位な差は見られなかった。
【0036】
また、樋の内表面にアクリル塗料を塗布した場合と、親水性塗料を塗布した場合とを比較したところ、親水性塗料を塗布した場合の残留水量が、アクリル塗料を塗布した場合の3/5程度になることが確認された。樋に施す表面処理の種類を限定する趣旨ではないが、樋の表面には、親水性塗料を塗布することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る庇を建物に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1のA部を拡大した平面図、(b)は(a)のX−X線断面図、(c)は(a)のY−Y線断面図、(d)は(c)のD部を拡大した図である。
【図3】本発明の実施形態に係る庇の変形例を示す図であって、(a)は拡大平面図、(b)は(a)のY−Y線断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る庇の変形例を示す図であって、(a)は拡大平面図、(b)は(a)のY−Y線断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 庇
10 庇本体
1a 傾斜面
20 框部材
21 水平部
2a 水切り部
30 樋
31 底壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜面を有する庇本体と、
前記傾斜面の下端縁に沿って設けられた樋と、
前記樋の下側に設けられた水切り部と、を備える庇であって、
前記水切り部の上面を前記樋の底壁の下面に当接させ、
前記水切り部の端縁を、前記底壁の端縁よりも外側に位置させたことを特徴とする庇。
【請求項2】
前記底壁の端部の上面に円弧面を設けたことを特徴とする請求項1に記載の庇。
【請求項3】
前記庇本体の縁部に沿って断面L字状の框部材が配置されており、
前記樋が、前記框部材の水平部に載置されており、
当該水平部が前記水切り部として機能することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の庇。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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