説明

床段差部の踏台構造

【課題】簡易な踏台を使用しながらも、昇降時の安全性に優れ、しかも清掃性や意匠性も良好に維持することができる床段差部の踏台構造を提供する。
【解決手段】この踏台構造は、上段面2と下段面3との間に段差面4を介在させた建物の床段差部1に、段差解消用の踏台5を設置してなる。踏台5としては、床段差部1の段差面4に対して縁切りされて、家具を置くように自立させた簡易なものが使用されている。この踏台5の支持脚31は、床段差部1の下段面3に対して固定具40を介して固定されている。固定具40は、支持脚31に埋め込まれて、外部から見えないように覆い隠されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば住宅の室内空間に設けた床段差部の踏台構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リビング等の床面を部分的又は全体的に一段下げるようにして、床段差部によって囲まれた凹み空間を演出した住宅が各種提案されている。この種の凹み空間としては、床段差部の段差寸法を例えば300mm以上に設定することで、落ち着き感を高めるとともに、床段差部を腰掛けや背もたれとして有効に利用可能として、様々な姿勢でくつろげるようにしたものもある。
【0003】
ところが、このように床段差部の段差寸法を大きくすると、特に子どもや老人にとっては、床段差部の昇降が負担となり、場合によっては転倒の危険性もあった。このため、床段差部の適所に段差解消用の踏台を設けて、床段差部の昇降を容易にすることが一般的になされている。
【0004】
段差解消用の踏台としては、床段差部に対して階段のように一体に造り付ける大掛かりなものから、床段差部に対して家具のように単に置くだけの簡易なものまで、色々なタイプのものがある。しかしながら、床段差部に対して一体に造り付ける踏台では、特に狭小な凹み空間においては圧迫感を与え易いといった問題があった。また、床段差部に対して単に置くだけの踏台では、昇降時にずれ動いたり、がたついたりすることがあり、安全性に問題があった。
【0005】
そこで、例えば特許文献1〜3にも開示されているように、簡易な踏台を使用しながらも、その踏台における踏板や支持脚を床段差部に固定具を介して固定することで、昇降時の安全性を高めるようにした踏台構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−264285号公報
【特許文献2】特開2002−45266号公報
【特許文献3】特開2005−120601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、簡易な踏台を床段差部に固定する場合、固定具の金具やビス等が外部に露出することになって、踏台自体及び踏台周りの清掃に際して邪魔になったり、見栄えが悪くなるといった不具合があった。
【0008】
この発明は、上記の不具合を解消して、簡易な踏台を使用しながらも、昇降時の安全性に優れ、しかも清掃性や意匠性も良好に維持することができる床段差部の踏台構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明の床段差部の踏台構造は、上段面2と下段面3との間に段差面4を介在させた建物の床段差部1に、段差解消用の踏台5を設置してなり、前記踏台5は、踏板30と支持脚31とを組み付けることによって構成され、前記踏板30は、前記段差面4に対して隙間をあけて縁切りされた状態で、前記上段面2よりも低い位置において前記下段面3に対して平行に配され、前記支持脚31は、前記段差面4に対して隙間をあけて縁切りされた状態で、前記下段面3に対して固定具40を介して固定され、前記固定具40は、前記支持脚31に埋め込まれて、外部から見えないように覆い隠されていることを特徴とする。
【0010】
具体的には、前記踏台5は、前記踏板30の下面に、前記支持脚31を構成する一対の板状部材32を対向配置させた状態で取り付けてなり、これら板状部材32が前記段差面4に対して直交する方向に沿って配され、前記踏板30と一対の板状部材32とによって囲まれた空間Sが前方に向けて開放された状態となっている。
【0011】
また、前記板状部材32には、その底面32aにおいて開放する縦方向のパイプ挿入孔36と、側面32bにおいて開放する横方向のボルト挿入孔37とが互いに連通状態で形成され、前記固定具40は、前記下段面3から立ち上がって、前記板状部材32のパイプ挿入孔36に挿入されたボルト穴41付きの固定パイプ42と、前記板状部材32のボルト挿入孔37に挿入されて、前記固定パイプ42のボルト穴41にねじ込まれた固定ボルト43とを備え、前記板状部材32のボルト挿入孔37の開放端に、前記ボルト挿入孔37に挿入された固定ボルト43を覆い隠す栓材38が嵌め込まれている。さらに、前記ボルト挿入孔37は、対向配置された前記板状部材32の互いに向かい合う側面32bに開放して形成されている。
【発明の効果】
【0012】
この発明の踏台構造においては、床段差部の段差面に対して縁切りして、家具を置くように自立させた簡易な踏台を使用するとともに、この踏台の支持脚を床段差部の下段面に対して固定していることから、圧迫感を感じさせない軽やかな印象を与えながらも、昇降時の安全性を高めることができる。しかも、固定具を、外部から見えないように支持脚に埋め込んでいることから、踏台自体及び踏台周りの清掃に際して固定具が邪魔にならず、見栄えも良好にすることができ、清掃性及び意匠性の向上を図ることができる。
【0013】
また、踏板下側の空間を、前方に向けて開放した状態とすることで、軽快感のあるすっきりとした印象を与えて、圧迫感をより一層なくすことができる。
【0014】
さらに、踏台の固定に際して、支持脚を構成する板状部材に形成した縦方向のパイプ挿入孔に、床段差部の下段面から立ち上がった固定パイプを挿入して、板状部材に形成した横方向のボルト挿入孔に挿入した固定ボルトを、固定パイプのボルト穴へねじ込むようにしているので、踏台をしっかりと安定した状態で固定することができ、昇降時の安全性をより一層高めることができる。さらにまた、板状部材の互いに向かい合う側面においてボルト挿入孔を開放させて、その開放端に固定ボルトを覆い隠す栓材を嵌め込むことで、栓材自体も外部から見え難くなって、見栄えをより一層良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態に係る床段差部の踏台構造を示す斜視図である。
【図2】同じくその縦断面図である。
【図3】踏台を示す図である。
【図4】固定具による支持脚の固定状態を示す縦断面図である。
【図5】踏台の設置手順を示す斜視図である。
【図6】踏台の設置手順を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る床段差部の踏台構造は、例えばリビングやダイニング等の床面を部分的又は全体的に一段下げるようにして、床段差部によって囲まれた凹み空間を演出した住宅において適用されている。
【0017】
この踏台構造は、図1及び図2に示すように、略水平な上段面2と略水平な下段面3との間に略垂直な段差面4を介在させた床段差部1に、その段差を解消するための木製の踏台5を設置してなる。
【0018】
なお、図2中、10は土間コンクリート、11、12は土間コンクリート10に立設した束材、13は束材11上に取り付けた鋼製大引、14は鋼製大引13上に取り付けた根太、15は根太14上に敷設した上部床材、16は束材12上に敷設した下部床材、17は鋼製下地材、18は鋼製下地材17の前面に取り付けた表面化粧板、19は下地材、20は上部床材15の前端部と表面化粧板18の上端部とに跨るようにして下地材19に固定した見切り材を示している。
【0019】
床段差部1における上段面2は、例えば上部床材15の上面によって構成され、下段面3は、例えば下部床材16の上面によって構成され、段差面4は、例えば表面化粧板18の前面によって構成されている。そして、上段面2から下段面3までの垂直方向の高さ寸法(段差寸法)が、例えば300〜400mm(好ましくは360mm)に設定されている。段差寸法をこのように設定することによって、凹み空間の落ち着き感を高め、床段差部1を腰掛けや背もたれとして有効に利用可能としている。
【0020】
踏台5は、図1乃至図3に示すように、踏板30と支持脚31とを一体に組み付けてなる簡易な構造とされている。すなわち、踏台5は、略長方形状の踏板30の下面に、支持脚31を構成する一対の略長方形状の板状部材32を、互いに平行に対向配置させた状態で取り付けることによって構成されている。なお、踏板30における長手方向の長さ寸法は約700mm、短手方向の長さ寸法は約300mmとされている。また、踏板30の上面から支持脚31の底面までの高さ寸法は、床段差部1の段差寸法の半分程度で約180mmとされている。さらに、一対の板状部材32の後端部上端間には、振れ止め材33が差し渡されている。
【0021】
この踏台5を床段差部1に設置した状態において、踏板30は、凹み空間の内壁面6や床段差部1の段差面4に対して隙間をあけて縁切りされた状態で、上段面2よりも低い位置において、その長手方向の後端部が段差面4に沿うようにして、下段面3に対して平行に配されている。また、支持脚31を構成する一対の板状部材32は、凹み空間の内壁面6や床段差部1の段差面4に対して隙間をあけて縁切りされた状態で、段差面4に対して直交する方向に沿って配され、下段面3に対して固定具40を介して固定されている。
【0022】
したがって、踏台5は、その周囲の仕上げ材に干渉することなく、家具を置くように自立状態で設置されて、下段面3にしっかりと固定された状態となっている。しかも、踏板30と一対の板状部材32とによって囲まれた空間Sが、前方(図1において白抜き矢印に示す方向)及び後方に向けて開放された状態となっている。すなわち、踏板30の下側において、前後方向に貫通する空間Sが形成されている。これらにより、圧迫感のない軽やかな印象を与えながらも、昇降時の安全性を良好に維持している。
【0023】
また、上記の踏台構造においては、踏台5を固定するための固定具40を、支持脚31を構成する一対の板状部材32に埋め込んだ状態として、外部から見えないように覆い隠すようにしている。
【0024】
すなわち、板状部材32には、図3及び図4に示すように、その前端部及び後端部において固定具40を収容する収容孔部35がそれぞれ形成されている。収容孔部35は、板状部材32の底面32aにおいて開放する縦方向のパイプ挿入孔36と、板状部材32の内側面32b(対向配置された板状部材32、32の互いに向かい合う側面)において開放する横方向のボルト挿入孔37とを備え、これらパイプ挿入孔36とボルト挿入孔37とは互いに連通状態となっている。なお、パイプ挿入孔36の開放端は、後述する固定盤44を収容するために拡径され、ボルト挿入孔37の開放端は、後述する栓材38を収容するために拡径されている。
【0025】
固定具40は、図4に示すように、床段差部1の下段面3から立ち上がって、板状部材32のパイプ挿入孔36に挿入されたボルト穴41付きの固定パイプ42と、板状部材32のボルト挿入孔37に挿入されて、固定パイプ42のボルト穴41にねじ込まれた固定ボルト43とを備えている。なお、固定パイプ42の下端部には、固定盤44が一体に固定されていて、この固定盤44を下段面3にビス45止めすることで、固定パイプ42が下段面3から立ち上がっている。
【0026】
そして、板状部材32のボルト挿入孔37の開放端には、ボルト挿入孔37に挿入された固定ボルト43を覆い隠す栓材38が取外し可能に嵌め込まれている。これにより、固定パイプ42及び固定ボルト43が、外部に全く露出することなく、板状部材32の収容孔部35に収容された状態となっている。
【0027】
なお、施工現場での踏台5の設置に際しては、図5に示すように、床段差部1の下段面3に合計4本の固定パイプ42を立設した後、一対の板状部材32における合計4つのパイプ挿入孔36へ固定パイプ42をそれぞれ差し入れるようにして、踏台5を下段面3上に載置する。続いて、図6に示すように、一対の板状部材32における合計4つのボルト挿入孔37へ固定ボルト43をそれぞれ挿入して、これら固定ボルト43を固定パイプ42のボルト穴41にねじ込む。最後に、ボルト挿入孔37の開放端に、木製の栓材38をそれぞれ嵌め込むことで、ボルト挿入孔37に挿入した固定ボルト43を覆い隠している。
【0028】
このように、踏台5を固定するための固定具40を、支持脚31に埋め込んで、外部からは全く見えないように覆い隠すことで、踏台5自体及び踏台5周りの清掃に際して固定具40が邪魔にならず、見栄えも良好にすることができる。
【0029】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、この発明の踏台構造は、リビングやダイニング等に設けた凹み空間周りの床段差部に適用するだけでなく、玄関や廊下等における床段差部に適用しても良い。
【符号の説明】
【0030】
1・・床段差部、2・・上段面、3・・下段面、4・・段差面、5・・踏台、30・・踏板、31・・支持脚、32・・板状部材、32a・・板状部材の底面、32b・・板状部材の側面、36・・パイプ挿入孔、37・・ボルト挿入孔、38・・栓材、40・・固定具、41・・ボルト穴、42・・固定パイプ、43・・固定ボルト、S・・空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上段面(2)と下段面(3)との間に段差面(4)を介在させた建物の床段差部(1)に、段差解消用の踏台(5)を設置してなる床段差部の踏台構造であって、前記踏台(5)は、踏板(30)と支持脚(31)とを組み付けることによって構成され、前記踏板(30)は、前記段差面(4)に対して隙間をあけて縁切りされた状態で、前記上段面(2)よりも低い位置において前記下段面(3)に対して平行に配され、前記支持脚(31)は、前記段差面(4)に対して隙間をあけて縁切りされた状態で、前記下段面(3)に対して固定具(40)を介して固定され、前記固定具(40)は、前記支持脚(31)に埋め込まれて、外部から見えないように覆い隠されていることを特徴とする床段差部の踏台構造。
【請求項2】
前記踏台(5)は、前記踏板(30)の下面に、前記支持脚(31)を構成する一対の板状部材(32)を対向配置させた状態で取り付けてなり、これら板状部材(32)が前記段差面(4)に対して直交する方向に沿って配され、前記踏板(30)と一対の板状部材(32)とによって囲まれた空間(S)が前方に向けて開放された状態となっている請求項1記載の床段差部の踏台構造。
【請求項3】
前記板状部材(32)には、その底面(32a)において開放する縦方向のパイプ挿入孔(36)と、側面(32b)において開放する横方向のボルト挿入孔(37)とが互いに連通状態で形成され、前記固定具(40)は、前記下段面(3)から立ち上がって、前記板状部材(32)のパイプ挿入孔(36)に挿入されたボルト穴(41)付きの固定パイプ(42)と、前記板状部材(32)のボルト挿入孔(37)に挿入されて、前記固定パイプ(42)のボルト穴(41)にねじ込まれた固定ボルト(43)とを備え、前記板状部材(32)のボルト挿入孔(37)の開放端に、前記ボルト挿入孔(37)に挿入された固定ボルト(43)を覆い隠す栓材(38)が嵌め込まれている請求項2記載の床段差部の踏台構造。
【請求項4】
前記ボルト挿入孔(37)は、対向配置された前記板状部材(32)の互いに向かい合う側面(32b)に開放して形成されている請求項3記載の床段差部の踏台構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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