説明

座屈拘束ブレース

【課題】安価に製造できるとともに、高い耐力を有する座屈拘束ブレースを提供する。
【解決手段】座屈拘束ブレース1は、棒鋼5を有する芯材3と、芯材3の周囲に設けられ、芯材3との間でアンボンド処理がなされる座屈拘束材としての鉄筋コンクリート(コンクリート9、主筋11、帯筋13等)と、を具備する。棒鋼5に断面欠損部5aを設け、鉄筋コンクリート9には、帯筋13が、断面欠損部5aに対応する位置において、それ以外の部分よりも密に配置されるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は座屈拘束ブレースに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨構造等では、耐震性能向上のためにブレースが使用される。その一つに座屈拘束ブレースがある。座屈拘束ブレースは、軸力を負担する中心鋼材(芯材)を鋼管とモルタルで拘束し、座屈せずに安定的に塑性化するブレースである。中心鋼材とモルタルの間にはアンボンド材(緩衝材)があるため、鋼管とモルタル(座屈拘束材)には軸力が作用しない。
【0003】
このため、座屈拘束ブレースでは、地震時には芯材のみが変形し、これにより地震の揺れを吸収する。また、この芯材を外側より拘束しているため、圧縮力が作用しても芯材が座屈することなく、安定した部材性能を示す。特許文献1、2には、このような座屈拘束ブレースの例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−256728号公報
【特許文献2】特開平7−3883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の座屈拘束ブレースは、軸力を負担する中心鋼材を鋼管とモルタル(又はコンクリート)で拘束し、中心鋼材を座屈させずに、安定的に塑性化させるブレースであるが、外周に鋼材を用いているため、使用する鋼材量が増え、コストアップの要因になっている。
【0006】
しかし、外周の鋼管は座屈拘束を行うのみであり、軸力を負担するものでなく、座屈拘束ブレースの高い耐力を保つため鋼管である必要があるとは限らない。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、安価に製造できるとともに、高い耐力を有する座屈拘束ブレースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達するために第1の発明は、棒鋼を有する芯材と、前記芯材の周囲に設けられ、前記芯材との間でアンボンド処理がなされる座屈拘束材としての鉄筋コンクリートと、を具備することを特徴とする座屈拘束ブレースである。
【0009】
また、前記棒鋼は、断面欠損部を有し、前記鉄筋コンクリートには、帯筋が、前記断面欠損部に対応する位置において、それ以外の部分よりも密に配置されることが望ましい。但し、帯筋は各部分で均等に配置されるようにしてもよい。
【0010】
また、前記棒鋼と前記鉄筋コンクリートの間に、前記棒鋼の変形時に前記棒鋼と前記コンクリートとの接触を緩衝するための接触緩衝材が設けられることも望ましい。前記接触緩衝材は、例えば鋼材で形成される。
【0011】
前記芯材は1本の棒鋼を有するものであってもよいが、複数の棒鋼を有するものであってもよい。この時、複数の前記棒鋼を接続するように補強材が設けられることも望ましい。
【0012】
上記構成により、芯材の周囲に鉄筋コンクリートを設け、これにより芯材の変形(座屈)を拘束するので、鋼材の使用量を抑えることができる。また、鉄筋を使用するので、その径や強度を選ぶことにより、設計の自由度が高まる。そして、予めPCa工場等で製造するものに限らず、一般の現場で製造することも可能な制振部材となる。現場で特別な工具や機械を用いる必要もなく、加えて、芯材として平鋼やH型鋼ではなく、異形鉄筋や丸鋼、PC鋼棒等の棒鋼を使用するので、更なるコストダウンにつながる。
【0013】
また、芯材の棒鋼に断面欠損部を設け、ブレース全体ではなく、この一部のみを塑性化させることができる。断面欠損部の棒鋼はある軸力(圧縮力)により、長手方向と直交する方向に変形(座屈)しようとして、コンクリートに接触する。この際、コンクリートには芯材にかかる軸力に応じた荷重(せん断力)が働き、亀裂発生等、座屈拘束ブレースの耐力低下の要因となるが、本発明の座屈拘束ブレースでは、周囲の鉄筋コンクリートについて、帯筋等によりこの断面欠損部に対応する位置を重点的にせん断補強する。これにより効果的にせん断補強を行い、鉄筋コンクリートのせん断強度を高め、芯材の拘束を維持し、座屈拘束ブレースの耐力を向上させることができる。なお、芯材は棒鋼の断面欠損部で必要な強度を確保できるように設計を行う。また、塑性化を考えている部分(断面欠損部)にひずみが集中し増大するため、地震時等の層間変形の早期の段階から降伏し、多くのエネルギーを吸収することが期待できる。
【0014】
また、棒鋼と鉄筋コンクリートとの間に、上記の変形時にコンクリートとの接触を緩衝するための接触緩衝材を設けることにより、地震時等の繰り返し荷重により棒鋼がコンクリートに繰り返し接触することによるコンクリートの劣化を抑制することができる。接触緩衝材は例えば鋼材で形成され、これにより局所的な接触を防いでコンクリートに広く荷重を分散させ、コンクリートのせん断応力を小さくすることができる。
【0015】
加えて、複数の棒鋼を接続するように補強材を設けることにより、棒鋼の変形を抑えることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、安価に製造できるとともに、高い耐力を有する座屈拘束ブレースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態の座屈拘束ブレースを示す図
【図2】第2の実施形態の座屈拘束ブレースを示す図
【図3】接触緩衝材について示す図
【図4】芯材の補強について示す図
【図5】プレートの例を示す図
【図6】第3の実施形態の座屈拘束ブレースを示す図
【図7】座屈拘束ブレースの例を示す図
【図8】第4の実施形態の座屈拘束ブレースを示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照しながら、本発明の座屈拘束ブレースの実施形態について説明する。まず、第1の実施形態の座屈拘束ブレースについて、図1を参照しながら説明する。
【0019】
図1(a)は第1の実施形態の座屈拘束ブレースの内部の様子を上面から示す図、図1(b)は座屈拘束ブレースの芯材を示す図、図1(c)は図1(a)の線A−A’に沿った断面図、図1(d)は図1(a)の線B−B’に沿った断面図、図1(e)は図1(a)の点線で囲った部分を矢印C方向にみた図、図1(f)は主筋の端部を示す図である。
【0020】
図1(a)等に示すように、本実施形態の座屈拘束ブレース1では、芯材3の周囲に鉄筋コンクリートが設けられる。即ち、芯材3の周囲にコンクリート9が設けられ、コンクリート9が主筋11と帯筋13で補強される。
【0021】
芯材3としては、異形鉄筋や丸鋼、PC鋼棒、ネジ鉄筋等の棒鋼5の両端部を溶接等によりプレート7に接続したものが用いられる。設計の際は、棒鋼5により必要な強度が得られるようにその断面積、形状、本数、材質等を定めておく。なお、後述するが、芯材としてプレートを省略し、棒鋼のみとする構成も可能である。本実施形態では、構造体に座屈拘束ブレース1を取り付ける際、芯材3の長手方向の両端部(プレート7)によりベースプレート等を介して取り付けるが、芯材としてプレートを省略する場合は、棒鋼の両端部を直接ガセットプレートに溶接するなどして取り付けることができる。
【0022】
図1(d)等に示すように、本実施形態では、棒鋼5は4本設けられる。プレート7は凹部を有する2本の溝型鋼により構成され、これらの溝型鋼の背部分が向かい合うように配置される。プレート7の各溝型鋼の凹部には、棒鋼5が2本ずつ溶接され接続される。なお、棒鋼5の本数はこれに限らず、上記したように必要な強度が得られるように定め、目的に応じて何本としてもよい。例えば1本でもよいし、6本としてもよい。また、後述するが、プレート7の形状もこれに限らず、適宜定めることができ、例えば平鋼などを用いることもできる。
【0023】
芯材3の長手方向の両端部を除く部分の周囲には、コンクリート9が打設される。コンクリート9の内部では、座屈拘束ブレース1の長手方向に主筋11が設けられる。また、主筋11を長手方向と直交する断面において囲むように、座屈拘束ブレース1の長手方向に間隔をあけて帯筋13が設けられる。帯筋13は、コンクリート9のせん断補強を目的として設けられる。なお、主筋11の端部は、図1(f)に示すように、これを折り曲げてフックとしてもよい。
【0024】
なお、本実施形態では、図1(d)、図1(e)に示すように、芯材3で、棒鋼5のみの部分の周囲のコンクリート9では、主筋11の外側への膨らみを防止するための補強筋15も別に設けられる。これにより、後述の変形が発生すると考えられる棒鋼5のみの部分で、コンクリート9のせん断補強を重点的に行っている。但し、補強筋15は必要に応じて設けられるものであり、なくても良い場合もある。
【0025】
また、芯材3は、周囲のコンクリート9に対するアンボンド処理がなされている。例えば芯材3とコンクリート9の間に微小な間隔が設けられ、コンクリート9の芯材3側の表面に油が塗布される等する。これにより、座屈拘束ブレース1に加わる軸力を芯材3のみで負担させる。
【0026】
この座屈拘束ブレース1では、芯材3がある軸力(圧縮力)を受けると、棒鋼5が長手方向と直交する方向に変形(座屈)しようとする。
【0027】
この際、棒鋼5はコンクリート9に接触しその変形が拘束される。コンクリート9は、芯材3に作用している軸力に応じて荷重(せん断力)を受ける。
【0028】
上記したように、座屈拘束ブレース1では、コンクリート9が帯筋13により補強されており、このせん断補強によりコンクリート9の亀裂発生が抑えられている。
【0029】
このように、本実施形態の座屈拘束ブレース1では、芯材3の周囲に鉄筋コンクリートを設け、これにより芯材3(棒鋼5)の上記の変形(座屈)を拘束するので、鋼材の使用量を抑えることができる。また、鉄筋を使用するので、その径や強度を選ぶことにより、設計の自由度が高まる。そして、予めPCa工場等で製造するものに限らず、一般の現場で製造することも可能な制振部材となる。また、現場で特別な工具や機械を用いる必要もなく、加えて、芯材3として平鋼やH型鋼を使用せず、異形鉄筋や丸鋼、PC鋼棒、ネジ鉄筋等の棒鋼を使用するので、更なるコストダウンにつながる。
【0030】
次に、図2を参照しながら、第2の実施形態の座屈拘束ブレースについて説明する。図2(a)は第2の実施形態の座屈拘束ブレースの内部の様子を上面から示す図、図2(b)は第2の実施形態の座屈拘束ブレースの芯材を示す図、図2(c)は図2(a)の線D−D’に沿った断面図、図2(d)は図2(a)の線E−E’に沿った断面図、図2(e)は図2(a)の点線で囲った部分を矢印F方向にみた図である。第1の実施形態において説明したものと同様の要素には、同じ番号を付し、説明を一部省略する。
【0031】
第2の実施形態の座屈拘束ブレース17は、第1の実施形態の座屈拘束ブレース1と同様の構成を有するが、芯材19の棒鋼5が長手方向の途中の断面欠損部5aで縮径され、断面が欠損される点で異なる。
【0032】
即ち、芯材19は、第1の実施形態と同様、棒鋼5の両端部がプレート7に接続されて形成されるが、図2(b)等に示すように、棒鋼5が断面欠損部5aにおいて縮径する。これについては、例えば、径の小さい棒鋼5の両端を径の大きい棒鋼5に圧接あるいは溶接することができる。またネジ継ぎ手や機械式継ぎ手によりこれらを接続することもできる。さらに、一本の棒鋼5を途中で縮径処理をしたものを用いることもできる。なお、設計の際は、この断面欠損部5aで必要な強度が得られるようにその形状、断面積、本数、材質等を定めておく。
【0033】
また、帯筋13を設ける間隔は各部分で均等であってもよいが、本実施形態では、コンクリート9において、棒鋼5の断面欠損部5aに対応する部分で、他の部分よりも短くする。即ち、断面欠損部5aに対応する部分で帯筋13を密に設け、せん断力に対してこの断面欠損部5aに対応する位置のコンクリート9をより重点的に補強する。また前述の補強筋15を設ける間隔もこれに応じて短くし、補強筋15を密に設ける。
【0034】
この座屈拘束ブレース17では、芯材19がある軸力(圧縮力)を受けると、棒鋼5の断面欠損部5aが長手方向と直交する方向に変形(座屈)しようとする。
【0035】
この際、棒鋼5はコンクリート9に接触しその変形が拘束される。コンクリート9は、芯材19に作用している軸力に応じて荷重(せん断力)をうける。
【0036】
上記したように、座屈拘束ブレース17では、この断面欠損部5aに対応するコンクリート9が帯筋13等でより重点的に補強されており、このせん断補強によりコンクリート9の亀裂発生が抑えられている。
【0037】
このように、第2の実施形態の座屈拘束ブレース17でも、第1の実施形態の座屈拘束ブレース1についての上記した効果が得られる。
【0038】
また、芯材19の棒鋼5に断面欠損部5aを設け、ブレース全体ではなく、この一部のみを塑性化させる。断面欠損部5aの棒鋼5はある軸力(圧縮力)により上記の方向に変形しようとして、コンクリート9に接触する。この際、コンクリート9には芯材19にかかる軸力に応じた荷重(せん断力)が働き、亀裂発生等、座屈拘束ブレースの耐力低下の要因となるが、本実施形態の座屈拘束ブレース17では、周囲の鉄筋コンクリートについて、帯筋13等によりこの断面欠損部5aに対応する位置をより重点的にせん断補強する。これにより効果的にせん断補強を行い、鉄筋コンクリートのせん断強度を高め、芯材19の拘束を維持し、座屈拘束ブレース17の耐力を向上させることができる。なお、芯材19は棒鋼5の断面欠損部5aで必要な強度を確保できるように設計を行う。また、塑性化を考えている部分(断面欠損部5a)にひずみが集中し増大するため、地震時等の層間変形の早期の段階から降伏し、多くのエネルギーを吸収することが期待できる。
【0039】
また、図3に示すように、第2の実施形態の芯材19の断面欠損部5aの棒鋼5の周囲で、コンクリート9との間に、前述の変形時に棒鋼5とコンクリート9の接触を緩衝するため、接触緩衝材23を設けてもよい。接触緩衝材23は例えば鋼材により形成される小径の鋼管であり、棒鋼5の断面欠損部5aを囲むように設けられる。接触緩衝材23は、前述の変形時、直接棒鋼5とコンクリート9が接触して局所的にコンクリート9に荷重(せん断力)が加わることを防ぎ、荷重をコンクリート9に広く分散させる。なお、接触緩衝材23は芯材19にかかる軸力を負担しないように、芯材19との間でアンボンド処理が施される。
【0040】
即ち、断面欠損部5aの棒鋼5が直接コンクリート9に触れる場合、地震時等の繰り返し荷重により棒鋼5がコンクリート9に繰り返し(局所的に)接触し、コンクリート9の劣化が促進される可能性がある。接触緩衝材23は、棒鋼5とコンクリート9が直接接触することを抑え、コンクリート9の劣化を抑制する。同様に、第1の実施形態の芯材3についても、棒鋼5を囲むように接触緩衝材23を設けてよく、この場合も上記と同様の効果が得られる。
【0041】
なお、接触緩衝材23は小径の鋼管に限らず、上記の目的を満たす範囲であればその強度は低くてもよく、ある程度柔らかい部材でも構わない。また、管状のものに限られることもない。さらに、接触緩衝材23を、前述の変形時の棒鋼5の変形量を吸収したり、変形速度を抑えてコンクリート9との接触を緩衝するために設けてもよく、この意味では上記の強度に限られることもない。
【0042】
また、図4に示すように、第2の実施形態の芯材19の断面欠損部5aの棒鋼5について、複数の棒鋼5どうしを接続するように鋼板等の補強材25を設けてもよく、これにより棒鋼5の変形を抑えることができる。なお、接続する方法は棒鋼5の変形を抑える目的に応じて様々に定めることができる。同様に、第1の実施形態の芯材3についても、棒鋼5どうしを接続するように補強材25を設けてよく、この場合も上記と同様の効果が得られる。
【0043】
また、プレート7は第1、第2の実施形態のように2本の溝型鋼を用いるものに限らない。例えば、これらにかえてH型鋼を用い、2つの凹部にそれぞれ棒鋼5を接続して芯材としてもよい。あるいは平鋼を用い、片面または両面に棒鋼5を接続してもよい。また、図5(a)に断面を示すように、十字金物をプレート7とし、各隅部に棒鋼5の端部を溶接等により接続して芯材としたり、また図5(b)に断面を示すように、4本の山形鋼を、その背部分どうしが接するようにして十字状としたものをプレート7とし、この隅部に棒鋼5の端部を溶接等により接続して芯材とすることもできる。
【0044】
次に、図6を参照しながら、第3の実施形態の座屈拘束ブレースについて説明する。図6(a)は第3の実施形態の座屈拘束ブレースの内部の様子を上面から示す図、図6(b)は第3の実施形態の座屈拘束ブレースの芯材を示す図、図6(c)は図6(a)の線G−G’に沿った断面図、図6(d)は図6(a)の線H−H’に沿った断面図、図6(e)は座屈拘束ブレースを構造体に取り付けた状態を示す図である。第1、第2の実施形態において説明したものと同様の要素には、同じ番号を付し、説明を一部省略する。
【0045】
図6(a)、(c)等で示す第3の実施形態の座屈拘束ブレース27は、図6(b)に示すように芯材29が棒鋼5のみで構成される点で第1の実施形態と異なる。前述したように、棒鋼5は、例えば異形鉄筋や丸鋼、PC鋼棒、ネジ鉄筋等である。
【0046】
座屈拘束ブレース27では、棒材5の両端部を構造体のガセットプレート30に溶接等で直接取り付ける。このようにして、図6(e)に示すように、ガセットプレート30を介して座屈拘束ブレース27が構造体に取り付けられる。なお、図6(a)等では、ガセットプレート30も併せて示している。
【0047】
本実施形態では、図6(d)等で示すように、芯材29を構成する棒鋼5を1本としたが、もちろん複数本の棒鋼を用いてもよい。例えば、図7に示す座屈拘束ブレース31では、3本の棒鋼5により芯材33が構成される。同様に棒鋼5の両端部をガセットプレート30に取り付ければよい。棒鋼5の本数をはじめ、その断面積、形状、材質等は、必要な強度等により適宜定めることができる。
【0048】
その他の構成については、前述したものと同様である。例えば、芯材29とコンクリート9との間では適宜アンボンド処理がなされる。本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。加えて、芯材を棒鋼のみで構成するので、製造が容易になり、更なるコストダウンが図れる。
【0049】
なお、第2の実施形態の座屈拘束ブレース17と同様、棒鋼5の途中に断面欠損部を設け、断面欠損部に対応する位置で帯筋13をより密に配置することもでき、これにより前述した効果が得られる。図3に示した接触緩衝材23や、図4に示した補強材25も、適宜設けてよい。
【0050】
次に、図8を参照しながら、第4の実施形態の座屈拘束ブレースについて説明する。図8(a)は第4の実施形態の座屈拘束ブレースの内部の様子を上面から示す図、図8(b)は第4の実施形態の座屈拘束ブレースの芯材を示す図、図8(c)は図8(a)の線I−I’に沿った断面図、図8(d)は図8(a)の線J−J’に沿った断面図、図8(e)は座屈拘束ブレースの取り付けを説明する図である。第1〜第3の実施形態において説明したものと同様の要素には、同じ番号を付し、説明を一部省略する。
【0051】
図8(a)、(c)等で示す第4の実施形態の座屈拘束ブレース35は、座屈拘束ブレース35の芯材37をナット42等を用いた締め付けによりガセットプレート40に直接取り付ける点で第3の実施形態と異なる。
【0052】
図8(d)等に示すように、芯材37は4本の棒鋼39で構成される。棒鋼39としてはネジ鉄筋を用いる。ネジ鉄筋を用いることで、芯材37の長さを現場で調整することが容易になる。さらに、コンクリート9は現場打ちによるものとすることもできるので、座屈拘束ブレース35の現場での製造が容易になる。なお、棒鋼39の本数等はこれに限ることはなく、その本数をはじめ、断面積、形状、材質等は、目的とする強度等により適宜定めることができる。
【0053】
一方、構造体のガセットプレート40には、ガセットプレート40と直交するように鋼板41を取り付ける。鋼板41には孔部が設けられる。
【0054】
座屈拘束ブレース35をガセットプレート40に取り付ける際は、図8(e)に示すように、棒鋼39の端部を鋼板41の孔部に挿入し貫通させる。そして、鋼板41の両側でナット42による締め付けを行う。ナット42は例えばロックナット等である。このように、本実施形態ではナット42による締め付けを行い座屈拘束ブレース35をガセットプレート40に取り付ける。但し、溶接等により取り付けることも可能である。
【0055】
座屈拘束ブレース35は、ガセットプレート40を介して構造体に取り付けられる。なお、座屈拘束ブレース35を示す図8(a)等では、ガセットプレート40も併せて示している。
【0056】
その他の構成については、前述したものと同様である。例えば、芯材37とコンクリート9との間でも適宜アンボンド処理がなされる。本実施形態によっても、第3の実施形態と同様の効果が得られる。加えて、芯材をナットで締め付けるなどしてガセットプレートに取り付けるので、施工管理等が容易になる。
【0057】
本実施形態では、棒鋼39をネジ鉄筋としたが、これに限ることはなく、例えばPC鋼棒等でもよい。当該PC鋼棒の端部をガセットプレート40の鋼板41の孔部に挿入し貫通させ、定着具等を用いて鋼板41の両側で定着させることができる。
【0058】
また、第2の実施形態の座屈拘束ブレース17と同様、棒鋼39の途中に断面欠損部を設け、断面欠損部に対応する位置で帯筋13をより密に配置することもでき、これにより前述した効果が得られる。図3に示した接触緩衝材23や、図4に示した補強材25も、適宜設けてよい。
【0059】
以上説明したように、本発明の座屈拘束ブレースの実施形態によれば、芯材の周囲に鉄筋コンクリートを設け、これにより芯材の変形(座屈)を拘束するので、鋼材の使用量を抑えることができる。また、鉄筋を使用するので、その径や強度を選ぶことにより、設計の自由度が高まる。そして、予めPCa工場等で製造するものに限らず、一般の現場で製造することも可能な制振部材となる。また、現場で特別な工具や機械を用いる必要もなく、コストダウンにつながる。加えて、芯材として平鋼やH型鋼ではなく、異形鉄筋や丸鋼、PC鋼棒、ネジ鉄筋等の棒鋼を使用するので、更なるコストダウンにつながる。
【0060】
また、芯材の棒鋼に断面欠損部を設け、ブレース全体ではなく、この一部のみを塑性化させることができる。断面欠損部の棒鋼はある軸力(圧縮力)により、長手方向と直交する方向に変形(座屈)しようとして、コンクリートに接触する。この際、コンクリートには芯材にかかる軸力に応じた荷重(せん断力)が働き、亀裂発生等、座屈拘束ブレースの耐力低下の要因となるが、本発明の座屈拘束ブレースでは、周囲の鉄筋コンクリートについて、帯筋等によりこの断面欠損部に対応する位置をより重点的にせん断補強する。これにより効果的にせん断補強を行い、鉄筋コンクリートのせん断強度を高め、芯材の拘束を維持し、座屈拘束ブレースの耐力を向上させることができる。なお、芯材は棒鋼の断面欠損部で必要な強度を確保できるように設計を行う。また、塑性化を考えている部分(断面欠損部)にひずみが集中し増大するため、地震時等の層間変形の早期の段階から降伏し、多くのエネルギーを吸収することが期待できる。
【0061】
また、棒鋼と鉄筋コンクリートとの間に、上記の変形時にコンクリートとの接触を緩衝するための接触緩衝材を設けることにより、地震時等の繰り返し荷重により棒鋼がコンクリートに繰り返し接触することによるコンクリートの劣化を抑制することができる。接触緩衝材は例えば鋼材で形成され、これにより局所的な接触を防いでコンクリートに広く荷重を分散させ、コンクリートのせん断応力を小さくすることができる。
【0062】
加えて、複数の棒鋼を接続するように補強材を設けることにより、棒鋼の変形を抑えることもできる。
【0063】
以上より、安価に製造できるとともに、高い耐力を有する座屈拘束ブレースが得られる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る座屈拘束ブレースの好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0065】
1、17、27、31、35………座屈拘束ブレース
3、19、29、33、37………芯材
5、39………棒鋼
5a………断面欠損部
7………プレート
9………コンクリート
11………主筋
13………帯筋
15………補強筋
23………接触緩衝材
25………補強材
30、40………ガセットプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒鋼を有する芯材と、
前記芯材の周囲に設けられ、前記芯材との間でアンボンド処理がなされる座屈拘束材としての鉄筋コンクリートと、
を具備することを特徴とする座屈拘束ブレース。
【請求項2】
前記棒鋼は、断面欠損部を有し、
前記鉄筋コンクリートには、帯筋が、前記断面欠損部に対応する位置において、それ以外の部分よりも密に配置されることを特徴とする請求項1記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記棒鋼と前記鉄筋コンクリートの間に、前記棒鋼の変形時に前記棒鋼と前記コンクリートとの接触を緩衝するための接触緩衝材が設けられることを特徴とする請求項1記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記接触緩衝材は、鋼材で形成されることを特徴とする請求項3記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記芯材は複数の棒鋼を有し、
複数の前記棒鋼を接続するように補強材が設けられることを特徴とする請求項1記載の座屈拘束ブレース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−256569(P2011−256569A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130864(P2010−130864)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】