説明

建具用表面材の製造方法

【課題】化粧シートを製造工程で不用意に伸張させることなく、防湿層を基材の表面と裏面に形成できる建具用表面材の製造方法を提供する。
【解決手段】木質基材1の裏面に防湿シート4を貼着させた後、防湿層3が形成された化粧シート2を、防湿層3を木質基材1との間に挟むようにして、木質基材1の表面に貼着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿層を有した建具用表面材の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフラッシュ構造などのドア、間仕切り等の建具に使用される表面材としては、合板、MDF(中密度繊維板)などを基材として、その表面に化粧シートが貼着されたものが知られており、反りを防止するために、基材の表面、裏面の一方あるいは両面に防湿層を形成することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平9−174767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、防湿層を両面に備えた表面材は、両面の2層の防湿層と、化粧シート層とを基材に付加した多層構造であるため、製造方法として、基材に対して1層ずつ形成する方法をとれば、連続的な複数の工程を必要とするため、製造に時間を要する。また、初期の段階で形成される層は、その後のラミネート工程によって複数回、ロールによってプレスされるため、想定外の伸張が起こるおそれがある。特に、化粧シートを複数回プレスすると、表面に傷がつく可能性も高くなり、工程の順序を考慮する必要があった。
【0004】
本発明は、このような問題を解決するために提案されたもので、その目的は、化粧シートを製造工程で不用意に伸張させることなく、防湿層を基材の表面と裏面に形成できる建具用表面材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の建具用表面材の製造方法は、木質基材の裏面に防湿シートを貼着させた後、防湿層が形成された化粧シートを、該防湿層を該木質基材との間に挟むようにして、該木質基材の表面に貼着させることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の建具用表面材の製造方法は、防湿シートと上防湿層が形成された化粧シートとは、ロール加工によって貼着されるようにしている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の建具用表面材の製造方法によれば、木質基材の裏面に防湿シートを貼着させた後、防湿層が形成された化粧シートを表面に貼着させるようにしているため、防湿層を形成した化粧シートをあらかじめ用意しておけば、化粧シートの基材への貼着を簡易で短時間に行える。また、これらの工程と、化粧シートへの防湿層の形成工程とは並行して行えるので、全体として効率のよい製造が行える。その結果、防湿性能が高く反りの少ない表面材の製造が効率的に行える。さらに、化粧シートへの防湿層の形成工程と、基材裏面への防湿シートの形成工程とは、連続的に実施する必要がないため、連続的な設備を設ける必要がなく、工場設備の設計がしやすい。
【0008】
さらに、化粧シートの貼着は、基材裏面へ防湿シートを貼着してから行っているため、ロール加工によっても、化粧シートが複数回プレスされることがなく、そのため想定外の伸張が起こるおそれはなく、表面に傷がつく可能性も低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明の建具用表面材の製造工程の一実施形態を示す概略断面図である。
【0011】
同製造方法によって製造される表面材10は、フラッシュ構造などのドア、間仕切り等の建具に使用されるものであって、その基材としては木質のものが使用される。木質基材1としては、例えば合板、MDF(中密度繊維板)、パーチクルボードなどを使用できる。また、化粧シート2としては、樹脂シートが使用されるが、突板、紙シートなどを使用してもよい。
【0012】
この表面材10の製造方法では、木質基材1の表裏面に対して2層の防湿層3,4を形成させるとともに、表面側に化粧シート2を形成させるようにしている。また製造設備としては、図1に示すように熱ロール設備が使用されるが、これには限定されない。
【0013】
この製造方法の工程は、次のシーケンスにて行う。すなわち、まず木質基材1の裏面へ防湿シート4を熱ロール20によって貼着させてから、木質基材1の表面へ、防湿層3が裏側に形成された化粧シート2をロール20によって貼着させることで、基材の表裏面への防湿層3,4を有した建具用表面材10を製造する。
【0014】
化粧シート2への防湿層3の形成は、あらかじめ他の工程で実施しておけばよく、例えばロール加工などによって化粧シート2の裏面に防湿シートを貼着するか、化粧シートの裏面に蒸着などによって防湿処理を施して形成すればよい。
【0015】
また、木質基材1への防湿シート4および化粧シート2のラミネートには、一般的な接着剤、例えば酢酸ビニル系樹脂、エチレン/ビニルアセテート樹脂系、尿素樹脂系、ウレタン樹脂系等のエマルジョン型接着剤が好ましく使用される。
【0016】
裏面側の防湿層4である防湿シートとしては、塩化ビニルシート、金属(アルミ)箔等が使用される。また、透明の合成樹脂フィルムの表面に珪素酸化物、酸化マグネシウム、アルミ酸化物などの蒸着薄膜層を形成した蒸着フィルムを使用してもよく、さらに紙層を付加してもよい。
【0017】
一方、表面側の化粧シート2の防湿層3も、真空蒸着法やスパッタリング、イオンプレーティング、プラズマ活性化化学反応蒸着法などで、珪素酸化物、酸化マグネシウム、アルミ酸化物などの材料を合成樹脂フィルムに薄膜形成して形成される。
【0018】
以上の製造方法によれば、木質基材1の裏面に防湿シート4を貼着させた後、防湿層3が形成された化粧シート2を表面に貼着させているため、表面用の防湿層3をあらかじめ形成した化粧シート2を用意しておけば、化粧シート2の基材1への貼着工程を短時間で行える。また、これらの工程と、化粧シート2への防湿層3の形成工程とは並行した設備で行えるので、効率のよい製造が行える。くわえて、化粧シート2への防湿層3の形成工程と、基材裏面への防湿シート4の形成工程とは、連続的に実施する必要がないため、連続的な設備を設ける必要がなく、工場設備の設計がしやすい。
【0019】
さらに、化粧シート2の貼着は、基材裏面へ防湿シート4を貼着してから行っているため、上記のようなロール加工によっても、化粧シートが複数回プレスされることがなく、想定外の伸張が起こるおそれはなく、表面に傷がつく可能性も低い。
【0020】
こうして製造された表面材は、表裏2層の防湿層を備えているため、表裏面とも吸湿しにくくなり、高い防湿効果が得られ、フラッシュドアなどの建具用の表面材として好適に使用できる。
【0021】
図2は、以上のようにして形成した建具用表面材10を、ドア構造体に貼り合せたものの概略断面図である。
【0022】
ドア構造体は枠体(不図示)に桟木11を押架し、枠体と桟木11との間にハニカム芯材などの補強材(不図示)を充填してなるもので、このようなドア構造体に、上記の製造方法で製造した表面材10が貼設される。枠体や桟木11としては、無垢材、LVL(単層積層材)、MDF、パーチクルボードが使用される。
【0023】
図2に示すように、表面材10は桟木11の表側および裏側(不図示)に対して貼り付けられ、さらに表裏面に鏡面塗装層(不図示)が形成されてフラッシュドアが完成する。
【0024】
この建具用表面材10は表裏2層の防湿層が形成されているため、防湿性能は高く、表面材10の伸縮は起こりにくい。そのため、フラッシュドア自体が反りやねじれを起こすことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の建具用表面材の製造工程の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】同製造方法によって製造された建具用表面材を取り付けた建具の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 表面材
1 木質基材
2 化粧シート
3 表面防湿層
4 裏面防湿層(防湿シート)
11 桟木
20 ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の裏面に防湿シートを貼着させた後、防湿層が形成された化粧シートを、該防湿層を該木質基材との間に挟むようにして、該木質基材の表面に貼着させることを特徴とする建具用表面材の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記防湿シートと上記防湿層が形成された化粧シートとは、ロール加工によって貼着されるようにしている建具用表面材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−1708(P2010−1708A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163614(P2008−163614)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】