説明

建具

【課題】 掲示プレートを簡単に取り付けでき、しかも表面の見栄えを損なうことのない建具を提供する。
【解決手段】 矩形状の建具本体と、この建具本体の中央に配置され、かつ建具本体よりも薄く縦長の鏡板とを具え、前記鏡板は、磁性体を含み形成され、また前記建具本体は、その中央に縦長矩形状の開口部が形成されるとともに、この開口部に向く内周面の、建具本体の厚さ方向の略中央位置に取付溝が形成され、前記鏡板は、その外周縁部が前記取付溝に嵌合して固定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掲示プレートなど掲示物を簡単に取り付けでき、しかも見栄えの優れた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
玄関ドアに表札を掲示したり、集合住宅、ホテルの部屋、オフィスなどの出入り口に設けられる扉に入居者、部屋番号、組織名(会社名、営業所名)その他表示プレートを固着するなど、建具に各種の表示板を取り付けることが多く、或いは連絡用の掲示板、更には装飾用のプレートなどを貼り付けることもある。このようなとき、前記各種の掲示物は画鋲、釘、ビス等の固着具を用いて建具に固定したり、或いは接着剤、両面テープなどにより貼り付けられている。
【0003】
しかし、賃貸住宅などでは住居者の入れ替わり頻度が高く、その都度、プレートを取り替えることから、建具表面に多くの釘穴が開き、或いは接着剤が残って建具表面が汚れ、更には取り外しの際に、建具の化粧層が剥がれたりして、見栄えを低下させることが多い。また取り付け、取り外し作業に手間がかかり、しかも一旦取り付けてから、より好適な位置にずらせる場合などには、一度取り外した後、新たに取り付け直す必要があり、面倒な作業が必要であった。
【0004】
このような問題解決のため、建具全体を鉄で形成して、マグネット付きの表示プレートを建具表面に取り付けることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−239645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、鉄により形成された建具は、重量が過大となり、開閉操作に大きな力を必要とする上、開閉時の衝撃が激しいため、大きな開閉音、振動などを発生して居住性を損ねるという問題がある。さらにドアの場合は、断面を大きくした堅牢な開口枠に大型蝶番を用いて取り付けられるため、特に住宅などにおいては見栄えを損ねがちであり、コストが嵩むという問題もある。
【0007】
本発明は、鏡板を磁性体を含み形成することを基本とし、掲示物を簡単に取り付け取り外しでき、かつ外観が優れた建具の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、矩形状の建具本体と、この建具本体の中央に配置され、かつ建具本体よりも薄くて縦長の鏡板とを具え、前記鏡板は、磁性体を含み形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記建具本体は、その中央に縦長矩形状の開口部が形成されるとともに、この開口部に向く内周面の、建具本体の厚さ方向の略中央位置に取付溝が形成され、前記鏡板は、その外周縁部が前記取付溝に嵌合して固定されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、前記鏡板は、基板に磁性体を用いた薄膜層を被覆して形成され、また請求項4に係る発明においては、前記鏡板は、磁性体からなる磁性基板に化粧層を被覆して形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記鏡板は、横巾が100〜450mm、かつ縦寸法が建具本体の縦寸法の40%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明は、鏡板が磁性体を含み形成されるため、表札、部屋番号、装飾プレートなどの掲示物を、磁石を用いて鏡板に着脱可能に取リ付けでき、その取り付け取り外し作業は容易な上、位置調整も簡単になしえるため、最適な位置に掲示できる。しかも取り付けの跡形が残らないため、見栄えを損ねることがなく、全体が磁性体で形成された建具に比べ、軽量化でき、開閉操作を容易に行える。
【0013】
請求項2に係る発明は、鏡板が取付溝に嵌合して安定した状態で固定されるため、建具の開閉動作時にも、掲示物がガタつくことなく、安定して取り付けでき、また請求項3に係る発明のように、基板に磁性体を用いた薄膜層を被覆した鏡板を用いると、更に軽量化されて取り扱い性に優れ、鏡板の表面に磁性体が配されるため、磁着力が強くなり、建具開閉動作時に掲示物の脱落、位置ズレが生じにくい。
【0014】
請求項4に係る発明では、曲げ強度に優れた磁性体を用いた磁性基板により、建具の曲げ強度を補強されるため、建具の反りなどの変形を防止でき、また請求項5に係る発明のように構成すると、掲示プレートを取り付けるために充分な大きさの鏡板が形成されるため、各種サイズ、形状の掲示物を容易に取り付けできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1に示すように、建具1は、矩形状の建具本体2と、この建具本体2の中央に配される鏡板3とを具える。なお建具1は、本形態ではドアの場合が例示されている。
【0016】
前記建具本体2は、矩形に枠組みされた外周枠21及びこの外周枠21の内側に架け渡された縦横の補強桟22V、22Hからなるフレーム体23と、このフレーム体23の表裏両面に貼付けられた化粧板24、24と、この化粧板24、24の間に充填された充填体25とからなる。また本形態の建具本体2は、中央に縦長矩形状の開口部4が形成され、この開口部4に臨む内周部に、前記化粧板24、24に挟着され、かつ前記補強桟22V、22Hに沿って配された矩形枠状の額縁材26が設けられる。さらにこの額縁材26の内周面には、内方に向き、かつ建具本体2の厚さ方向の略中央位置に配されて、環状に連続する取付溝5が形成される。
【0017】
本形態の建具本体2は、図1、3に示すように、前記開口部4の上下に、この開口部4と同巾で、かつ化粧板24の表面と段違いに配置された中央化粧板27が設けられ、これにより開口部4の上下に連続した縦方向のアクセントが強調され、意匠性に優れる点で好ましい。
【0018】
前記建具本体2は、高さが例えば1800〜2300mm程度、横巾が例えば600〜1200mm程度の大きさに形成され、その厚さは例えば25〜45mm程度に形成される。
【0019】
前記フレーム体23を構成する外周枠21、補強桟22及び額縁材26は、杉、松、樅、栂などの針葉樹、及びナラ、チーク、ラワンなどの広葉樹を含む木材、集成材、LVL(単板積層材)などのエンジニアリングウッドのほか、プラスチック、アルミニウムの押し出し型材、薄鋼板の折り曲げ材などを用いて形成される。また化粧板24、中央化粧板27は、合板など基板上に、ナラ、サクラ、チーク、ケヤキなどを厚さ0.2〜0.6mm程度にスライスした突き板、又はポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢ビ樹脂(EVA)などオレフィン系樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂などを用いた化粧シートを貼り付けたものが用いられる。なお中央化粧板27は、化粧板24と同一材料で形成されるが、その仕上げの色調を変化させるなどして外観のアクセントを強調することもできる。或いは、中央化粧板27を化粧板24と異なる材料で形成して、材質感のアクセントを強調することも良い。
【0020】
なお、前記充填体25は、パーティクルボード、インシュレーションボード、木毛セメント板、オリエンテッドストランドボード(OSB)などの木質材のほか、ハニカムコア、発泡ポリスチレンを用いることもできる。更には充填体25を充填することなく、中空のフラッシュパネル状に形成することもでき、この時は、建具の重さが軽量化できる点で好ましい。
【0021】
前記鏡板3は、前記建具本体2よりも薄くて縦長の矩形板状をなし、開口部4よりも少し大きく形成される。そしてこの鏡板3は、その全周縁部が額縁材26の取付溝5に嵌合され、これにより建具本体2中央に形成された開口部4に取り付けられる。
【0022】
また該鏡板3は、本形態では、図5(A)に示すように、磁力により磁石と引き合い吸着する鉄、マルテンサイト系或いはフェライト系ステンレス、ニッケル、コバルトなど磁性体で形成された薄膜層7を、合板、プラスチック板などの基板6に被覆して構成される。このように、磁性体を含む鏡板3が建具本体2の中央に配されるので、図6に示すように、例えば裏面四隅に磁石29を設けた掲示プレート28Aからなる掲示物28を磁力を利用して鏡板に取リ付けできる。そのため、掲示プレート28Aの取り付けを簡単に行えるとともに、取り外しも自在であり、また位置替えも簡単に行えるため調整を繰り返して最善の位置に掲示できる。磁石による取り付けは釘穴などのキズ、接着剤などの跡形が残らないため、見栄えを損ねることがない。全体が磁性体で形成された建具に比べ、建具全体が軽量化できるため、開閉操作を重くすることがない。しかも、鏡板3は取付溝5に嵌合して固定されるため、建具の開閉動作に伴う衝撃が作用しても、掲示プレート28Aは、落下したりガタつきのない安定した状態で取り付けられる。
【0023】
更に前記の如く本形態の鏡板3は、基板6に磁性体で形成された薄膜層7を被覆して形成するため、鏡板3が更に軽量化され、建具の取リ扱い性を高めることができる。しかも、磁性体を鏡板3の表面に配するため、掲示プレート28Aを保持する磁着力が強くなり、建具を激しく開閉したときでも、掲示プレート28Aが落下したり位置ズレすることがない。
【0024】
前記鏡板3は、横巾が例えば、100〜450mm程度、好ましくは180〜330mm、本形態では250mmとしている。100mm未満では、取り付けできる掲示プレート28Aの大きさが制限され、逆に450mmを超えると、掲示プレート28Aの取り付けの為には過大となる上、建具1の重量を増加させる。また前記鏡板3は、縦寸法が建具本体2の縦寸法の、例えば40%以上、好ましくは60%以上、本形態では84%としている。40%未満では、掲示プレート28Aの取り付け高さが制限されて不便が生じる。
【0025】
前記掲示プレート28Aは、図1に示すように、表札、住所表示札、部屋番号表示札、空室・在室などを表示する掲示板の他、各種の模様、絵柄、写真等が配された装飾板としても利用できる。また掲示プレート28Aは、前記の如く磁石29を裏面に添着して形成するほか、プレート内部に磁石を埋設したり、裏面にマグネットテープを貼り付けて形成することもできる。更に図1に示すように、前記鏡板3の巾と略同巾に形成した掲示プレート28Aを用いると、鏡板3に取り付けた際の見栄えが向上する点で好ましい。しかも複数種類の掲示プレート28Aを、縦に並べて取り付けて使用すると、多機能で統一された外観が得られる点で好ましい。
【0026】
また掲示物28として、前記の如く掲示プレート28Aを用いるほか、紙、プラスチックフィルム等薄膜状の掲示シートを使用し、固定用に市販されるマグネット片、マグネットバー、マグネットシートなどを用いて前記鏡板3に取り付けることもできる。
【0027】
また、前記鏡板3は、図5(B)に示すように、磁力により磁石と引き合い吸着する鉄、マルテンサイト系或いはフェライト系ステンレス、ニッケル、コバルトなど磁性体である金属製の磁性基板8に、化粧層9を被覆したものを使用することもできる。この場合には、鏡板3に掲示プレート28Aなどの掲示物28を磁力で取り付けできる上、金属製の磁性基板8の全周縁が前記開口部4の取付溝5に嵌合して、建具本体2の曲げ強度を補強するため、建具1で仕切られる両側空間の温度差、湿度差に起因して生じがちな、建具1の反りなどの変形を抑制しうる。なお前記化粧層9は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢ビ樹脂(EVA)などのオレフィン系樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂その他を用いた化粧シートを貼り付けて形成され、或いはアクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、フェノール樹脂塗料などの塗膜により形成することもできる。
【0028】
尚、本発明は、前記例示されたドアのほか、引き戸、折れ戸、回転扉その他あらゆる種類の建具に採用することができる。また叙上の説明は、本発明の実施の形態を例示したものであり、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態を例示する正面図である。
【図2】そのA−A断面図である。
【図3】そのB−B断面図である。
【図4】そのC−C断面図である。
【図5】(A)(B)は、鏡板の各々異なる形態を例示する部分拡大断面図である。
【図6】掲示プレートを例示する斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 建具
2 建具本体
3 鏡板
4 開口部
5 取付溝
6 基板
7 薄膜層
8 磁性基板
9 化粧層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の建具本体と、この建具本体の中央に配置され、かつ建具本体よりも薄くて縦長の鏡板とを具え、 前記鏡板は、磁性体を含み形成されることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記建具本体は、その中央に縦長矩形状の開口部が形成されるとともに、この開口部に向く内周面の、建具本体の厚さ方向の略中央位置に取付溝が形成され、
前記鏡板は、その外周縁部が前記取付溝に嵌合して固定されることを特徴とする請求項1記載の建具。
【請求項3】
前記鏡板は、基板に磁性体を用いた薄膜層を被覆して形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の建具。
【請求項4】
前記鏡板は、磁性体からなる磁性基板に化粧層を被覆して形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の建具。
【請求項5】
前記鏡板は、横巾が100〜450mm、かつ縦寸法が建具本体の縦寸法の40%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−177056(P2006−177056A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371701(P2004−371701)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】