説明

建材用シート

【課題】十分な耐火性と良好な作業性を備えながらも、人体や環境に対する安全性を高めた建材用シートを提供する。
【解決手段】本発明に係る建材用シートは、水ガラスと、パルプと、ウイスカと、を予め混合した原料組成物をシート状に形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築の分野で使用される建材用シートに関し、特に耐火性や遮音性を有する建材用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁や扉等の内側に貼り付けたり、配置したりすることで、壁や扉等に耐火性や遮音性等の機能を付与する建材用シートが広く使用されている(例えば、特許文献1または2参照)。このような建材用シートを用いることで、例えば壁や扉を木材から構成し、木の風合いを生かした暖かみのある高級なデザインとしながらも、壁や扉に耐火性を持たせることができる。
【0003】
特に、近年では、防災意識の高まりから建物の耐火性に対する要求が厳しくなっていることから、壁や扉等の内側に貼り付けることでデザイン性を損ねることなく耐火性を持たせることが可能な建材用シートに対する需要が増えてきている。
【0004】
このような建材用シートは、強度と共に適度な可撓性や柔軟性を有していることが施工時の作業性の点からは好ましい。また、近年では、耐火性や難燃性に加えて、シックハウス症候群や火災時の有毒ガスの発生、廃棄時の処理方法といった人体や環境に対する安全性も考慮したものが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−88204号公報
【特許文献2】特開2001−97755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および2に記載されているような従来の建材用シートは、ある程度の耐火性または難燃性を有してはいるものの、ゴムや合成樹脂等の有機系の材料を含むものがほとんどであり、人体や環境に対する安全性について十分に考慮されたものは少ないという問題があった。すなわち、従来の建材用シートは、シックハウス症候群の原因となる物質や火災時に有毒ガスを発生する物質等、人体や環境に有害となる物質を成分として含んでいるものが大半であり、人体や環境に対する高い安全性を備えたものはほとんどなかった。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、十分な耐火性と良好な作業性を備えながらも、人体や環境に対する安全性を高めた建材用シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、水ガラスと、パルプと、ウイスカと、を予め混合した原料組成物をシート状に形成してなることを特徴とする、建材用シートである。
【0009】
(2)本発明はまた、前記原料組成物は、前記水ガラス100重量部に対し、前記パルプを5乃至18重量部と、前記ウイスカを0.5乃至4重量部と、を予め混合してなることを特徴とする、上記(1)に記載の建材用シートである。
【0010】
(3)本発明はまた、前記ウイスカは、塩基性硫酸マグネシウムであることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の建材用シートである。
【0011】
(4)本発明はまた、前記原料組成物は、さらにジルコンフラワーを予め混合してなることを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の建材用シートである。
【0012】
(5)本発明はまた、前記原料組成物は、前記水ガラス100重量部に対し、前記ジルコンフラワーを3乃至13重量部予め混合してなることを特徴とする、上記(4)に記載の建材用シートである。
【0013】
(6)本発明はまた、前記原料組成物は、さらに金属酸化物を予め混合してなることを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の建材用シートである。
【0014】
(7)本発明はまた、前記原料組成物は、前記金属酸化物として酸化亜鉛を、前記水ガラス100重量部に対して1乃至11重量部予め混合してなることを特徴とする、上記(6)に記載の建材用シートである。
【0015】
(8)本発明はまた、前記原料組成物は、さらに無機充填剤を予め混合してなることを特徴とする、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の建材用シートである。
【0016】
(9)本発明はまた、前記原料組成物は、前記無機充填剤として炭酸カルシウムを、前記水ガラス100重量部に対して1乃至10重量部予め混合してなることを特徴とする、上記(8)に記載の建材用シートである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る建材用シートによれば、十分な耐火性と良好な作業性を備えながらも、人体や環境に対する安全性を高めることが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】製造した建材用シートを示した図である。
【図2】製造した耐火ボードの断面図である。
【図3】耐火性能試験を行った加熱炉の断面図である。
【図4】耐火ボードの加熱面の裏面における温度測定位置を示した図である。
【図5】耐火性能試験における温度測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態の例について詳細に説明する。
【0020】
本実施形態の建材用シートは、水ガラスと、パルプと、ウイスカとを混合して得られた原料組成物を乾燥、固化させて、シート状に形成したものである。
【0021】
このうち、主成分である水ガラスは、ケイ酸ナトリウムの濃水溶液であり、ケイ酸ナトリウムを水に溶かし、加熱することによって得られる。水ガラスの組成は、NaO・nSiOであり、水ガラス中にはNaO(酸化ナトリウム)およびSiO(二酸化ケイ素、シリカ)が混合して存在している。
【0022】
水ガラスは、耐熱性を有すると共に加熱された場合にガラス化して発泡し、断熱性の不燃層を生成する。このため、水ガラスを主成分とする本実施形態の建材用シートは、従来のものと比較して耐熱性および耐火性が高く、さらに火炎の広がりを防止する遮炎性を有するものとなっている。また、無機材料であるため、加熱時に有毒ガスを発生するようなことはなく、シックハウス症候群の原因物質ともならない。
【0023】
この水ガラスは、一般に流通している市販のものを使用することができるが、モル比nの値が小さい場合は原料組成物が固化しにくくなるため、建材用シートの形状保持性が悪化することとなり、モル比nの値が大きい場合は固化後の原料組成物が非常に硬質となるため、建材用シートの可撓性および柔軟性が悪化すると共にひび割れが発生しやすくなる。
【0024】
従って、水ガラスは、原料組成物の固化速度と建材用シートの可撓性および柔軟性のバランスの点から、例えばJIS K1408の1号(NaOが17〜19重量%、SiOが35〜38重量%)または2号(NaOが14〜15重量%、SiOが34〜36重量%)に規定されるものが好ましく、さらにモル比nの値が2〜2.3のものであればより好ましい。
【0025】
パルプは、木材等の天然素材を原料とする繊維であり、建材用シートに適度な可撓性および柔軟性を与えつつ強度を高めるために混入される。本実施形態の建材用シートに使用するパルプは、特に限定されるものではなく、製造する建材用シートに必要とされる特性や寸法等に応じて、木材パルプまたは非木材パルプのいずれも使用することができる。また、木材等から直接製造されたバージンパルプ、または古紙を再生した古紙パルプのいずれを使用してもよいが、森林資源の保護およびリサイクルの観点からは古紙パルプを使用することが好ましい。
【0026】
なお、古紙パルプを使用する場合、建材用シートの使用場所が壁の内側等の人目につかないところであることを考慮すると、不純物の除去工程や漂白工程の一部を省略し、製造コストを低減したものであっても使用することができる。
【0027】
このパルプは、可燃性の材料であるが、水ガラス中に混入することによって、難燃性にすることができる。従来、木材等に水ガラスを含浸させることによって耐火性を持たせる手法が知られているが、本実施形態の建材用シートにおいてもこれと同様の原理によりパルプを難燃化するようにしている。すなわち、水ガラス中にパルプを混入することにより、パルプ表面を水ガラスでコーティングすると共にパルプ内部に不燃性の水ガラス成分を含浸させることができるため、パルプを難燃性にすることが可能となる。
【0028】
但し、パルプの混入量が多い場合には、建材用シートの耐熱性および耐火性が悪化すると共に、加熱時にパルプが燃焼することによる発熱量が大きくなり、好ましくない結果となる。従って、パルプの混入量は、建材用シートの強度、柔軟性、可撓性および耐火性の総合的なバランスから、水ガラス100重量部に対し、5〜18重量部であることが好ましく、7〜16重量部であればより好ましく、8〜11重量部であることが最も好ましい。なお、ここで水ガラスに対するパルプの重量は、風乾重量(水分を約10〜12%含んだ状態での重量)である。
【0029】
ウイスカは、繊維状(ひげ状)の結晶であり、建材用シートの強度および寸法安定性を向上させると共に、ひび割れを防止するために混入される。本実施形態では、このように、パルプおよびウイスカという寸法の異なる2種類の繊維を水ガラスに混入することにより、適度な可撓性および柔軟性を有しながらも十分な強度および耐ひび割れ性を得ることを可能としている。
【0030】
ウイスカの種類は、特に限定されるものではなく、例えば塩基性硫酸マグネシウム、チタン酸カリウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ホウ酸マグネシウム、硫酸カルシウム、アルミナおよびジルコニア等、既知の繊維状結晶を使用することができる。但し、耐熱性を考慮すると無機材料のウイスカであることが好ましく、さらにアスベストのような人体に有害な物質ではないことが好ましい。
【0031】
従って、本実施形態の建材用シートでは、塩基性硫酸マグネシウム(MGSO・5MG(OH)・3HO)のウイスカを使用している。この塩基性硫酸マグネシウムウイスカは、体液に溶けやすい性質を有しているため、万一肺内に吸い込まれたとしても容易に溶解して残留しないため、他のウイスカと比較して非常に安全性の高いものとなっている。さらに、塩基性硫酸マグネシウムウイスカは、比較的アスペクト比が大きいため、建材用シートの強度および寸法安定性の向上に大きく貢献するものとなっている。
【0032】
ウイスカの混入量は、特に限定されるものではないが、可撓性および柔軟性と強度および耐ひび割れ性のバランスから、水ガラス100重量部に対し、0.5〜4重量部であることが好ましく、1〜3.5重量部であればより好ましく、2〜3重量部であることが最も好ましい。
【0033】
本実施形態の建材用シートでは、上述の成分に加えて、さらにジルコンフラワーと、金属酸化物とを混入している。
【0034】
ジルコンフラワーは、ジルコンサンドを機械的に粉砕分球生成した粉末ジルコン(ケイ酸ジルコニウム、ZrSiO)である。ジルコンフラワーは、溶融点が高く熱膨張が少ないため、建材用シートの耐熱性および耐火性を向上させるために混入される。さらに、ジルコンフラワーは非水溶性であることから、建材用シートの耐水性の向上にも貢献するようになっている。
【0035】
また、ジルコンフラワーは、混入されたガラスのガラス軟化点を下げる効果を有しているため、建材用シートが加熱されてガラス化した場合の柔軟性を増し、脆化を防ぐことができる。これにより、建材用シートの加熱時の形状保持性を高め、建材用シートを貼り付けた壁材等から容易に剥がれ落ちないようにすることができる。すなわち、建材用シートの耐火バリヤとしての機能を高めることができる。
【0036】
ジルコンフラワーは、水ガラスと同様に、一般に流通している市販のものを使用することができるが、十分に混和させて原料組成物内に均質に分散させるためには、粒子径が45μm以下(例えば1〜45μm)のものが好ましく、さらに、粒子径が30μm以下(例えば1〜30μm)であればより好ましい。
【0037】
粒子径が45μm以下または30μm以下のジルコンフラワーは、例えば45μmふるいまたは30μmふるいを使用して得ることができる。なお、ジルコンフラワーの粒子径は、全てが45μm(30μm)以下である必要はなく、45μm(30μm)以上のものが一部含まれていてもよいことは言うまでもない。
【0038】
ジルコンフラワーの混入量は、特に限定されるものではないが、適切な耐火性を得ると共に適切なガラス軟化点を設定する点から、水ガラス100重量部に対し、3〜13重量部であることが好ましく、5〜11重量部であればより好ましく、7〜9重量部であることが最も好ましい。
【0039】
金属酸化物は、原料組成物の粘度を調節すると共に建材用シートの柔軟性を調節するために混入するものであり、本実施形態では、酸化亜鉛(ZnO)を使用している。この酸化亜鉛は、微粉末状の酸化物であり、塗料の塗膜強化剤等として一般に使用されているものである。本実施形態では、酸化亜鉛を適宜に混入して原料組成物の粘度を調節することにより、型に入れてシート状に形成する際の作業性を向上させるようにしている。
【0040】
なお、建材用シートに使用する金属酸化物は、酸化亜鉛に限定されるものではなく、建材用シートに必要とされる特性等に応じて、例えばマグネシウム、カルシウム、鉄、ホウ素等、他の金属の酸化物を使用することができる。また、1種類の金属酸化物のみを使用してもよいし、複数種類の金属酸化物を使用してもよい。さらに、建材用シートの遮音性を向上させるためには、比重の高い金属酸化物を使用することが好ましい。
【0041】
金属酸化物は、市販のものを使用することができるが、十分に混和させて原料組成物内に均質に分散させるためには、粒子径が45μm以下(例えば1〜45μm)のものが好ましく、粒子径が30μm以下(例えば1〜30μm)のものであればより好ましい。粒子径が45μm(30μm)以下の金属酸化物は、例えばふるいを使用して得ることができ、45μm(30μm)以上のものが一部含まれていてもよいことは、上述のジルコンフラワーと同様である。
【0042】
金属酸化物の混入量は、特に限定されるものではなく、建材用シートに要求される特性や、使用する金属酸化物の種類等に応じて適宜に設定することができる。なお、酸化亜鉛を使用する場合の混入量は、適切な柔軟性を得ると共に製造時の作業性を向上させる点から、水ガラス100重量部に対し、1〜11重量部であることが好ましく、2〜10重量部であればより好ましく、4〜8重量部であることが最も好ましい。
【0043】
本実施形態の建材用シートでは、さらに、原料組成物の粘度を調節すると共に、建材用シートの柔軟性を調節するための無機充填剤として、軽質炭酸カルシウム(CaCO)を混入している。炭酸カルシウムは、安価であり、人体に対する安全性も高いことから、無機充填剤として好適である。また、軽質炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムと比較して粒径が小さいことから、十分に混和させて原料組成物内に均質に分散させることができる。
【0044】
なお、本実施形態の建材用シートは、水ガラスを主成分としていることから、シリカ(SiO)系の無機充填剤を混入すると、硬度が必要以上に増して柔軟性が損なわれる場合がある。このため、本実施形態では、無機充填剤として炭酸カルシウムを混入するようにしており、これにより、建材用シートを適度な柔軟性に調節するようにしている。
【0045】
軽質炭酸カルシウムの混入量は、特に限定されるものではないが、適切な柔軟性を得ると共に製造時の作業性を向上させる点から、水ガラス100重量部に対し、1〜10重量部であることが好ましく、2〜8重量部であればより好ましく、3〜6重量部であることが最も好ましい。
【0046】
なお、建材用シートに使用する無機充填剤は、軽質炭酸カルシウムに限定されるものではなく、重質炭酸カルシウムであってもよい。また、炭酸カルシウム以外にも、例えばタルク(滑石)や長石等、無機充填剤として一般的に使用されている無機物を使用することもできる。さらに、比重の高い物質を充填材として混入するようにすれば、建材用シートの遮音性を高めることが可能となる。
【0047】
次に、本実施形態の建材用シートの製造方法について説明する。
【0048】
本実施形態の建材用シートの製造では、まず容器内に、水ガラスおよびパルプと、適量の水を投入し、ミキサーで攪拌して混合する。ここで、投入する水の量は、特に限定されるものではなく、水ガラスの粘度やパルプの量等に応じて適宜に調節すればよい。
【0049】
水ガラスおよびパルプを十分に攪拌した後に、ウイスカ、ジルコンフラワー、金属酸化物および軽質炭酸カルシウムを投入し、さらにミキサーで攪拌して各成分を十分に混合することにより、原料組成物が生成される。
【0050】
次に、生成した原料組成物を所定の型に流し込んでヘラ等で成形し、そのまま常温で乾燥させて、シート状に固化させる。乾燥時間は寸法によるものの、例えば500×500×2mmの寸法のシートであれば、約2〜4日程度である。なお、温風を吹き付ける等して乾燥時間を早めるようにしてもよい。以上の手順によって、本実施形態の建材用シートは製造される。
【0051】
なお、本実施形態の建材用シートは、例えば水ガラス系の接着材等、既存の無機系接着剤を使用して、各種木材や合板、各種ボード等の建材に容易に貼り付けることができる。そして、適度な可撓性および柔軟性を有していることから、施工時に割れたり欠けたりするようなことがなく、様々な壁面に容易に沿わせて貼り付けることが可能となっている。また、余分な部分のカットが容易であり、釘等を打ち付けてもひび割れや欠け等が生じないため、非常に汎用性の高いものとなっている。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の建材用シートは、水ガラスと、パルプと、ウイスカと、を適宜の割合で予め混合した原料組成物をシート状に形成して構成されている。このような構成とすることで、パルプとウイスカの2種類の繊維による相乗効果により、耐火性および遮炎性を損なうことなく、可撓性および柔軟性と強度および耐ひび割れ性とを高次元でバランスさせることが可能となっている。さらに、本実施形態では、塩基性硫酸マグネシウムウイスカを使用することで、人体に対する安全性が損なわれないようにしている。
【0053】
また、建材用シートの原料組成物は、さらにジルコンフラワーと、金属酸化物と、無機充填剤と、を予め混合して構成されているため、高い耐火性、耐熱性および遮炎性と、適度な可撓性および柔軟性とを両立することが可能となっている。
【0054】
また、本実施形態の建材用シートは、天然素材であるパルプと無機材料のみから構成されているため、シックハウス症候群の原因となるような有害な物質を含んでおらず、人体および環境に対する安全性が非常に高いものとなっている。さらに、十分な可撓性と柔軟性を有していることから、施工時の作業性がよく、非常に汎用性の高いものとなっている。
【0055】
なお、本発明に係る建材用シートは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、本発明は、シートと称しているものの、その厚みは特に限定されるものではない。
【実施例1】
【0056】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0057】
2000gの水ガラスと、200gのパルプと、適量の水とを容器内に投入し、ミキサーで十分攪拌した後に、50gの塩基性硫酸マグネシウムウイスカと、160gのジルコンフラワーと、120gの酸化亜鉛と、80gの軽質炭酸カルシウムとをさらに容器内に投入し、ミキサーで十分に攪拌して原料組成物を生成した。次に、生成した原料組成物を型に流し込み、乾燥、固化させて500×500×2mmおよび500×500×4mmの建材用シートを製造した。
【0058】
水ガラスは、市販のセメント用急結剤を使用した。パルプは、廃棄段ボールを破砕したものを水中で攪拌することにより自製したものを使用した。塩基性硫酸マグネシウムウイスカはモスハイジ(登録商標)を使用した。また、ジルコンフラワーは98%以上が粒子径45μm以下のものを、酸化亜鉛はJIS規格1種のものを、軽質炭酸カルシウムは一般に市販されているものを使用した。
【0059】
図1は、製造した建材用シート1を示した図である。製造した建材用シート1は、灰色であり、乾燥後にもひび割れが発生することはなかった。また、適度な弾力性と共に可撓性および柔軟性を有することが確認された。
【0060】
次に、製造した建材用シート1を市販の合板およびパーティクルボードと組み合わせて耐火ボードを製造し、(財)建材試験センターの防耐火性能試験・評価業務方法書に準拠した内容で耐火性能試験を行った。
【0061】
図2は、製造した耐火ボード10の断面図である。耐火ボード10は、同図に示されるように、厚さ4mmの合板2と、厚さ4mmの建材用シート1aと、厚さ14mmのパーティクルボード3と、厚さ4mmの建材用シート1bと、厚さ20mmのパーティクルボード4と、を順に積層し、水ガラス系の接着剤により接着して製造した。製造した耐火ボード10の寸法は500×500×47mmであり、重量は約11kgであった。
【0062】
図3は、耐火性能試験を行った加熱炉20の断面図である。耐火性能試験は、同図に示されるように、試験体の片面を加熱可能な構造の加熱炉20に耐火ボード10をセットし、バーナ22で加熱することにより行った。耐火ボード10の加熱面は、合板2側の面とした。また、加熱は60分加熱とし、時間t(分)に対する加熱炉20内の温度T(℃)が、T=345log10(8t−1)+20で表される数値となるように加熱を制御した。
【0063】
図4は、耐火ボード10の加熱面の裏面(20mm厚のパーティクルボード4側の面)における温度測定位置を示した図である。耐火性能試験においては、同図に示す点A〜Dの4点において温度を測定すると共に、外観の変化を目視にて観察した。
【0064】
図5は、耐火性能試験における温度測定結果を示したグラフである。上述の内容で耐火ボード10について耐火性能試験を実施したところ、試験開始後約4分で合板2が発炎し、約6分後に合板2が略焼失した。その後、合板2側の1層目の建材用シート1aが膨張して断熱効果を高めるものの、約20分後に1層目の建材用シート1aの一部が崩壊して孔が生じ、これにより裏面の温度の上昇率が高くなった。
【0065】
1層目の建材用シート1aに孔が生じた後は、14mm厚のパーティクルボード3が発炎を開始するものの、その裏側の2層目の建材用シート1bによって遮熱および遮炎がなされるため、20mm厚のパーティクルボード4に変化はなかった。その後、14mm厚のパーティクルボード3の延焼によって50分経過後から急激に裏面の温度が上昇するものの、点A〜Dのいずれの点においても、60分の試験中に100℃を超えることはなかった。
【0066】
また、目視観察により、60分の試験中に、非加熱面(裏面)へ10秒を超えて継続する火炎の噴出がないこと、非加熱面へ10秒を超えて継続する発炎がないこと、火炎が通る亀裂等の損傷および隙間を生じないことが確認された。すなわち、耐火ボード10は、特定防火設備の遮炎性能判定基準を十分にクリア可能であることが確認された。
【0067】
従って、本発明の建材用シートによれば、合板やパーティクルボード等の一般的な建材と組み合わせて使用することにより、これらの建材に十分な耐火性および遮炎性を付与可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の建材用シートは、建築の分野以外にも、耐火性を要求される各種構造物の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 建材用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水ガラスと、パルプと、ウイスカと、を予め混合した原料組成物をシート状に形成してなることを特徴とする、
建材用シート。
【請求項2】
前記原料組成物は、前記水ガラス100重量部に対し、前記パルプを5乃至18重量部と、前記ウイスカを0.5乃至4重量部と、を予め混合してなることを特徴とする、
請求項1に記載の建材用シート。
【請求項3】
前記ウイスカは、塩基性硫酸マグネシウムであることを特徴とする、
請求項1または2に記載の建材用シート。
【請求項4】
前記原料組成物は、さらにジルコンフラワーを予め混合してなることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれかに記載の建材用シート。
【請求項5】
前記原料組成物は、前記水ガラス100重量部に対し、前記ジルコンフラワーを3乃至13重量部予め混合してなることを特徴とする、
請求項4に記載の建材用シート。
【請求項6】
前記原料組成物は、さらに金属酸化物を予め混合してなることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の建材用シート。
【請求項7】
前記原料組成物は、前記金属酸化物として酸化亜鉛を、前記水ガラス100重量部に対して1乃至11重量部予め混合してなることを特徴とする、
請求項6に記載の建材用シート。
【請求項8】
前記原料組成物は、さらに無機充填剤を予め混合してなることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載の建材用シート。
【請求項9】
前記原料組成物は、前記無機充填剤として炭酸カルシウムを、前記水ガラス100重量部に対して1乃至10重量部予め混合してなることを特徴とする、
請求項8に記載の建材用シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−102509(P2012−102509A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251035(P2010−251035)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(301079291)トリオ・セラミックス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】