説明

建設機械の油圧回路

【課題】安価な構成で、アクチュエータを操作していないときはパイロットポンプの吐出圧を低下させて動力損失を抑止する。
【解決手段】アクチュエータ制御用の操作レバー50の操作によりコントロール弁33を切り換えるためのパイロット圧を発生させる油圧回路であって、パイロットポンプ40の吐出回路41にリリーフ弁42を設けてパイロットポンプ40の吐出圧を一定圧に制御するように構成された油圧回路において、前記パイロットポンプ40の吐出回路41にはタンク55へ分岐する分岐回路60を設け、該分岐回路60に連通位置61aと閉止位置61bを有する電磁切換弁61を介装した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の油圧回路に関するものであり、特に、パイロットポンプの吐出回路にリリーフ弁を設けてパイロットポンプの吐出圧を一定圧に制御するように構成された油圧回路における吐出圧の低圧化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は従来の此種建設機械の一般的な油圧回路図であり、エンジン21の動力でメインポンプ30とパイロットポンプ40を駆動する。メインポンプ30の吐出回路31には、メインポンプ30から吐出される作動油を一定圧に制御するリリーフ弁32が設けられており、この作動油はコントロール弁33を介して、油圧シリンダや油圧モータなどのアクチュエータ34へ給排される。
【0003】
一方、パイロットポンプ40の吐出回路41には、パイロットポンプ40から吐出されるパイロット油を一定圧に制御するリリーフ弁42が設けられており、さらに、パイロット油を蓄圧するアキュムレータ43を設けるとともに、該アキュムレータ43とパイロットポンプ40との間にアキュムレータ43からの逆流を阻止するチェック弁44を介装する。
【0004】
また、前記コントロール弁33を切り換え操作する操作手段として、操作レバー50を備えたリモコン弁51を設け、該リモコン弁51に前記パイロットポンプ40の吐出油路41とタンク55を接続する。また、リモコン弁51の2次側ポートは、パイロット回路45aを介して前記コントロール弁33の一方のパイロットポート35aに接続されるとともに、パイロット回路45bを介して前記コントロール弁33の他方のパイロットポート35bに接続されている。
【0005】
次に、上記油圧回路の動作について説明する。図4に示すように、操作レバー50が未操作である場合は、パイロットポンプ40の吐出油はチェック弁44を通過してアキュムレータ43に蓄圧される。そして、操作レバー50を何れかの方向へ操作すると、パイロットポンプ40から吐出されたパイロット油あるいはアキュムレータ43に蓄圧されたパイロット油が、リモコン弁51からパイロット回路45aまたは45bを介して前記パイロットポート35aまたは35bへ導出されて、コントロール弁33が切り換わる。
【0006】
このほか、パイロットポンプの吐出回路にリリーフ弁を設けてパイロットポンプの吐出油を一定圧に制御する構成は、例えば特許文献1あるいは特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開平6−294148号公報
【特許文献2】特開平7−26589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4の構成ならびに特許文献1,2記載の発明は、何れも、パイロットポンプの吐出回路にリリーフ弁を設けてあるので、パイロットポンプの吐出圧が一定圧に制御されるのであるが、アクチュエータを操作していないときでもリリーフ弁から無駄な流量を流れているため、動力損失となっている。パイロットポンプの吐出回路にアンロード弁を設けておき、アクチュエータを操作していないときはパイロットポンプの吐出流量をアンロードすることにより、パイロットポンプを無負荷にすることも考えられるが、アンロード弁は比較的高価であるためコストアップとなる。
【0008】
そこで、安価な構成で、アクチュエータを操作していないときはパイロットポンプの吐出圧を低下させて動力損失を抑止するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、アクチュエータ制御用の操作レバーの操作によりコントロール弁を切り換えるためのパイロット圧を発生させる油圧回路であって、パイロットポンプの吐出回路にリリーフ弁を設けてパイロットポンプの吐出圧を一定圧に制御するように構成された油圧回路において、前記パイロットポンプの吐出回路にはタンクへ分岐する分岐回路を設け、該分岐回路に連通位置と閉止位置を有する電磁切換弁を介装したことを特徴とする建設機械の油圧回路を提供する。
【0010】
この構成によれば、分岐回路に介装された電磁切換弁が閉止位置にあるときは、パイロットポンプの吐出油はリリーフ弁によって一定圧を保持するように制御される。すなわち、操作レバーでアクチュエータを操作するときは、前記電磁切換弁を閉止位置にすることにより、通常通りパイロット油が一定圧に保持される。これに対して、前記電磁切換弁が連通位置にあるときは、パイロットポンプの吐出油は電磁切換弁の連通位置を通って分岐回路からタンクへ連通するため、リリーフ弁で設定する圧力以下の低圧となる。すなわち、操作レバーが非操作でコントロール弁の切換操作を行わないときは、パイロット油の圧力を低下させてもよいので、前記電磁切換弁を連通位置にすることにより、パイロットポンプの吐出油をタンクへ連通させて無負荷にする。
【0011】
請求項2記載の発明は、上記操作レバーの操作状態を検出する手段と、検出された操作状態に基づき上記電磁切換弁を切り換える制御手段を設け、操作レバーが非操作状態のときは電磁切換弁を連通位置にし、操作レバーが操作状態のときは電磁切換弁を閉止位置にするように構成したことを特徴とする請求項1記載の建設機械の油圧回路を提供する。
【0012】
この構成によれば、検出手段は操作レバーが操作状態であるか否かを検出し、この検出結果に基づき制御手段は電磁切換弁を連通位置または閉止位置の何れかに切り換える。操作レバーが非操作状態のときは制御手段が電磁切換弁を連通位置にし、パイロットポンプの吐出油を分岐回路からタンクへ戻すため、パイロットポンプの吐出圧はリリーフ弁で設定する圧力以下の低圧となる。
【0013】
請求項3記載の発明は、上記パイロットポンプの吐出回路には、上記分岐回路の分岐位置よりも下流に、パイロット油を蓄圧するアキュムレータと、該アキュムレータの圧力を検出する手段を設け、さらに、前記アキュムレータと前記分岐回路の分岐位置との間に、アキュムレータからの逆流を防止するチェック弁を介装し、アキュムレータ圧が所定圧以上のときは、上記電磁切換弁を連通位置にしてパイロットポンプの吐出油をタンクへ分岐するように構成したことを特徴とする請求項1または2記載の建設機械の油圧回路を提供する。
【0014】
この構成によれば、パイロットポンプの吐出回路に設けたアキュムレータにパイロットポンプの吐出油が所定圧まで蓄えられ、アキュムレータからの逆流はチェック弁によって阻止される。パイロット圧が低下したときは、アキュムレータからパイロット回路へパイロット油を補給する。一方、検出手段によりアキュムレータの圧力が所定圧以上であると検出されたときは、前記制御手段により電磁切換弁を連通位置にしてパイロットポンプの吐出油をタンクへ連通させるため、パイロットポンプの吐出圧はリリーフ弁で設定する圧力以下の低圧となる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、パイロットポンプの吐出回路にはタンクへ分岐する分岐回路を設け、該分岐回路に連通位置と閉止位置を有する電磁切換弁を介装したので、操作レバーによってアクチュエータを操作するときは、電磁切換弁を閉止位置にして、通常通りにパイロット吐出圧を一定圧に保持でき、これに対して、操作レバーが非操作でアクチュエータを操作しないときは、電磁切換弁を連通位置にして、パイロット吐出圧を低圧にできる。したがって、非操作時の動力損失を抑止して省エネを図ることができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、検出手段により操作レバーが非操作状態であると検出されたときは、制御手段により電磁切換弁を連通位置にしてパイロット吐出圧を低圧にするので、請求項1記載の発明の効果に加えて、非操作時には自動的に動力損失を抑止して省エネを図ることができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、アキュムレータの圧力を検出し、この圧力が所定値以上のときは電磁切換弁を連通位置にしてパイロット吐出圧を低圧にするので、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、アクチュエータが操作中であっても、パイロット吐出圧を低圧にして省エネを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る建設機械の油圧回路について、好適な実施例をあげて説明する。安価な構成で、アクチュエータを操作していないときはパイロットポンプの吐出圧を低下させて動力損失を抑止するという目的を達成するために、本発明は、アクチュエータ制御用の操作レバーの操作によりコントロール弁を切り換えるためのパイロット圧を発生させる油圧回路であって、パイロットポンプの吐出回路にリリーフ弁を設けてパイロットポンプの吐出圧を一定圧に制御するように構成された油圧回路において、前記パイロットポンプの吐出回路にはタンクへ分岐する分岐回路を設け、該分岐回路に連通位置と閉止位置を有する電磁切換弁を介装したことにより実現した。
【実施例1】
【0019】
図1は建設機械の一例として油圧ショベル10を示し、下部走行体11の上に旋回機構12を介して上部旋回体13が旋回自在に載置されている。上部旋回体13にはその前方一側部にキャブ14が設けられ、且つ、前方中央部にブーム15が俯仰可能に取り付けられている。更に、ブーム15の先端にアーム16が上下回動自在に取り付けられ、該アーム16の先端にバケット17が取り付けられている。
【0020】
前記ブーム15、アーム16、バケット17等のアタッチメントを駆動する油圧アクチュエータとして、ブームシリンダ18、アームシリンダ19、バケットシリンダ20が夫々設けられており、上部旋回体に設けられているエンジン21によりメインポンプ30やパイロットポンプ40を駆動して、各油圧シリンダや油圧モータへ作動油を給排する。
【0021】
図2は油圧回路図であり、説明の都合上、図4に示した構成と同一構成部分には同一符号を付して重複説明を省略する。図4と異なる構成部分は、先ず、パイロットポンプ40の吐出回路41には、リリーフ弁42とチェック弁44との間にタンク55へ分岐する分岐回路60を設け、該分岐回路60に電磁切換弁61を介装する。また、前記チェック弁44の下流でアキュムレータ43の近傍位置に、アキュムレータ43の圧力を検出する手段として、圧力スイッチPを設置してコントローラ70に接続する。
【0022】
前記電磁切換弁61は連通位置61aと閉止位置61bを有しており、コントローラ70からの指令信号によって切り換わる。該電磁切換弁61がノーマル状態では連通位置61aにあって、パイロットポンプ40の吐出回路41から分岐回路60に分岐したパイロット油が、該電磁切換弁の連通位置61aを通ってタンク55へ連通し、パイロットポンプ40は無負荷状態になる。
【0023】
また、操作レバー50の操作状態を検出する手段として、リモコン弁51のパイロット回路45aと45bとの間にシャトル弁56を介装し、該シャトル弁56の2次側ポートに圧力センサSを設けてコントローラ70に接続する。したがって、操作レバー50を何れかの方向へ操作すると、パイロット回路45aまたは45bのパイロット圧が、シャトル弁56により高圧選択されて圧力センサSで検出され、この検出信号によりコントローラ70は、操作レバー50が操作状態であることを検出することができる。
【0024】
なお、操作レバー50の操作状態を検出する手段としては、前記圧力センサSのほかに、シャトル弁56の2次側ポートに圧力スイッチを設けてコントローラ70でスイッチオンを検出してもよい。あるいは、操作レバー50の近傍位置にリミットスイッチを設置しておき、操作レバー50の傾倒動作をリミットスイッチにより検出することもできる。
【0025】
操作レバー50が操作されたことを検出したときは、コントローラ70から前記電磁切換弁61へ指令信号を出力し、電磁切換弁61を閉止位置61bに切り換える。しかるときは、前記分岐回路60が閉止されてパイロットポンプ40の吐出油がタンク70へ連通しなくなり、リリーフ弁42の働きによって、パイロットポンプ40の吐出圧がリリーフ弁42で設定された圧力まで上昇して一定圧に保持される。
【0026】
このように、コントローラ70は操作レバー50が操作状態であるか非操作状態であるかを検出し、操作レバー50が非操作状態すなわちコントロール弁の切換操作を行わないときは、パイロット油の圧力を低下させてもよいので、コントローラ70から電磁切換弁61へ指令信号を出力せず、電磁切換弁61を連通位置61aにすることにより、パイロットポンプ40の吐出油をタンク55へ連通させて無負荷にする。したがって、パイロットポンプ40の吐出圧がリリーフ弁42で設定する圧力以下の低圧となり、操作レバー50が非操作時の動力損失を抑止して省エネを図ることができる。
【0027】
これに対して、図3に示すように、操作レバー50が操作状態すなわちコントロール弁の切換操作が行われると、リモコン弁51が開いて、パイロット回路45aまたは45bにパイロット圧が発生し、このパイロット圧がシャトル弁56により高圧選択されて圧力センサSで検出される。この検出信号に基づいてコントローラ70から電磁切換弁61へ指令信号を出力し、電磁切換弁61を閉止位置61bにすることにより、パイロットポンプ40の吐出圧がリリーフ弁42で設定された圧力まで上昇する。
【0028】
したがって、パイロットポンプ40から吐出された一定圧のパイロット油が、リモコン弁51からパイロット回路45aまたは45bを介してコントロール弁33のパイロットポート35aまたは35bへ導出され、コントロール弁33の切換操作を円滑に行うことができる。また、パイロットポンプ40から吐出油が不足する場合は、アキュムレータ43に蓄圧されたパイロット油が自動的に補給される。
【0029】
ここで、前記圧力スイッチPにより、アキュムレータ43の圧力が所定圧以上であるとコントローラ70が検出したときは、パイロット圧が適正な圧力以上であるので、パイロットポンプ40の吐出圧を低下させてもコントロール弁33の切換操作に支障を与えることがない。
【0030】
したがって、コントローラ70の指令信号によって電磁切換弁61を連通位置61aにし、パイロットポンプ40の吐出油をタンク55へ連通させて、パイロットポンプ40の吐出圧をリリーフ弁42で設定する圧力以下の低圧とすれば、操作レバー50が操作状態であるときでも、パイロットポンプ40の動力損失を抑止して省エネを図ることができる。
【0031】
なお、操作レバー50が非操作状態のとき、あるいは、アキュムレータ43の圧力が所定圧以上であるとき、何れの場合であっても、電磁切換弁61を連通位置61aにしてパイロット圧をリリーフ圧以下に低下させるが、その圧力は少なくともコントロール弁33の復帰操作が可能な圧力以上であることとする。
【0032】
そして、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明が適用された油圧ショベルの側面図。
【図2】本発明に係る油圧回路図。
【図3】作動状態を示す油圧回路図。
【図4】従来の油圧回路図。
【符号の説明】
【0034】
10 油圧ショベル
40 パイロットポンプ
41 吐出回路
42 リリーフ弁
43 アキュムレータ
44 チェック弁
45a パイロット回路
45b パイロット回路
50 操作レバー
51 リモコン弁
55 タンク
56 シャトル弁
60 分岐回路
61 電磁切換弁
61a 連通位置
61b 閉止位置
70 コントローラ
S 圧力センサ
P 圧力スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ制御用の操作レバーの操作によりコントロール弁を切り換えるためのパイロット圧を発生させる油圧回路であって、パイロットポンプの吐出回路にリリーフ弁を設けてパイロットポンプの吐出圧を一定圧に制御するように構成された油圧回路において、
前記パイロットポンプの吐出回路にはタンクへ分岐する分岐回路を設け、該分岐回路に連通位置と閉止位置を有する電磁切換弁を介装したことを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項2】
上記操作レバーの操作状態を検出する手段と、検出された操作状態に基づき上記電磁切換弁を切り換える制御手段を設け、操作レバーが非操作状態のときは電磁切換弁を連通位置にし、操作レバーが操作状態のときは電磁切換弁を閉止位置にするように構成したことを特徴とする請求項1記載の建設機械の油圧回路。
【請求項3】
上記パイロットポンプの吐出回路には、上記分岐回路の分岐位置よりも下流に、パイロット油を蓄圧するアキュムレータと、該アキュムレータの圧力を検出する手段を設け、さらに、前記アキュムレータと前記分岐回路の分岐位置との間に、アキュムレータからの逆流を防止するチェック弁を介装し、
アキュムレータ圧が所定圧以上のときは、上記電磁切換弁を連通位置にしてパイロットポンプの吐出油をタンクへ分岐するように構成したことを特徴とする請求項1または2記載の建設機械の油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−150413(P2009−150413A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326318(P2007−326318)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】