説明

建設機械の油圧回路

【課題】安価な構成で、アクチュエータを一定時間継続して操作していないときは、油圧ポンプの吐出量を低下させて省エネを図る。
【解決手段】ネガコン圧と外部指令圧の何れかを高圧選択して油圧ポンプの吐出量を制御する油圧回路において、アクチュエータ制御用の操作レバー41の操作状態を検出する圧力センサSと、操作レバー41の非操作状態が一定時間継続したときに、ネガコン絞り37にて発生するネガコン圧よりも高圧の外部指令圧を電磁比例減圧弁52にて発生させるコントローラ50を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の油圧回路に関するものであり、特に、ネガコン回路を備えた建設機械においてネガコン圧と外部指令圧の何れかを高圧選択して油圧ポンプの吐出量を制御する油圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6はネガコン回路を備えた従来の此種建設機械の一般的な油圧回路図であり、エンジン30の動力で可変容量型のメインポンプ31を駆動し、該メインポンプ31の吐出回路32には、メインポンプ31から吐出される作動油を一定圧に制御するリリーフ弁33が設けられてタンク34に接続されている。前記吐出回路32の途中にはコントロール弁35が設けられ、該コントロール弁35を介して作動油が油圧シリンダや油圧モータなどのアクチュエータ36へ給排される。
【0003】
前記吐出回路32は、コントロール弁35のセンターバイパスを通り、ネガコン絞り37を介してタンク34に連通している。該ネガコン絞り37はネガコンリリーフ弁38と並列にタンク34に接続されており、該ネガコン絞り37の手前からネガコン回路39が分岐して設けられ、該ネガコン回路39はメインポンプ31の傾転角を調整するレギュレータ40に接続されている。
【0004】
また、前記コントロール弁35を切り換えてアクチュエータ36を制御する手段として、操作レバー41を備えたリモコン弁42を設け、該リモコン弁42の1次側ポートを油圧源43とタンク34に接続する。該リモコン弁42の2次側ポートは、一方のパイロット回路44を介して前記コントロール弁35の一方のパイロットポート45に接続されるとともに、他方のパイロット回路46を介して前記コントロール弁35の他方のパイロットポート47に接続されている。
【0005】
図7はネガコン特性を示すグラフであり、同図(a)はネガコン絞り37およびネガコンリリーフ弁38の流量とネガコン圧の関係を示し、同図(b)はネガコン圧とメインポンプの吐出量の関係を示している。
【0006】
図示は省略するが、操作レバー41が操作されてコントロール弁35が何れかの位置に切り換わっているときは、メインポンプ31から吐出される作動油はアクチュエータ36へ供給され、ネガコン回路39に作動油が導出されないため、図7(a)に示すように、ネガコン圧は最低圧Pn0となる。図7(b)に示すように、ネガコン圧が最低圧Pn0のときは、メインポンプ31の傾転角が大きくなって吐出量が最大流量Qhとなり、アクチュエータ36へ大量の作動油が供給される。
【0007】
操作レバー41が戻されてコントロール弁35が中立位置になると、メインポンプ31から吐出された作動油が、コントロール弁35のセンターバイパスを通ってネガコン回路39へ流れ、図7(a)に示すように、ネガコン絞り流量の増大に伴って、ネガコン圧が徐々に高くなる。そして、ネガコンリリーフ弁38が開くQ1付近でネガコン圧が最大Pn1となる。Q1点以降はネガコンリリーフ弁38が開いてタンク34に連通するので、ネガコン圧はPn1より大きくはならない。
【0008】
図7(b)に示すように、ネガコン圧の上昇に伴って、メインポンプ31の傾転角が小さくなって吐出量が減少し、ネガコン圧が最大Pn1になると、メインポンプ31の吐出量はコントロール弁35が応答性を有する最低流量であるスタンバイ流量Qsまで低下する。このように、操作レバー41が非操作状態のときは、メインポンプ31の吐出量をスタンバイ流量Qsまで低下させることにより省エネを図っている。
【0009】
このほか、外部からの指令にてネガコン最大圧Pn1よりも高圧の油圧を発生させ、ネガコン圧と外部指令圧の何れかを高圧選択してレギュレータに作用させることにより、メインポンプの吐出量を小流量に変更可能にした油圧回路も知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−021808号公報
【特許文献2】特開2005−060970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図6の構成では、コントロール弁35が中立位置になると、ネガコン圧が上昇してメインポンプ31の吐出量がスタンバイ流量まで低下するが、スタンバイ流量Qsはコントロール弁35の始動操作時の応答性を確保するために20cc/rev程度であり、エネルギーロスが大きい。
【0011】
特許文献1記載の発明は、コントロール弁の切換え時にネガコン圧が急変した場合、リモコン弁の操作量に応じた減圧弁圧力を選択して優先的にレギュレータに供給することにより、操作レバーのハンチングを防止するものであり、非操作時のポンプ吐出量を低減するものではない。
【0012】
特許文献2記載の発明は、ショベル仕様からクレーン仕様に切換えた状態では、旋回操作時のみポンプ吐出量を小流量として、安全な旋回速度を確保するものであり、非操作時のポンプ吐出量を低減するものではない。
【0013】
そこで、安価な構成で、アクチュエータを一定時間継続して操作していないときは、油圧ポンプの吐出量を低下させて省エネを図るために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ネガコン圧と外部指令圧の何れかを高圧選択して油圧ポンプの吐出量を制御する油圧回路において、アクチュエータ制御用の操作レバーの操作状態を検出する手段と、操作レバーの非操作状態が一定時間継続したときに、前記ネガコン圧よりも高圧の外部指令圧を発生させる外部指令圧発生手段を設けたことを特徴とする建設機械の油圧回路を提供する。
【0015】
この構成によれば、アクチュエータ制御用の操作レバーの操作状態を検出する手段により、アクチュエータを操作している状態か非操作状態かを検出し、操作レバーの非操作状態が一定時間継続したときに、ネガコン圧よりも高圧の外部指令圧を発生させる。したがって、外部指令圧が高圧選択されて、油圧ポンプの吐出量がネガコン圧で設定した吐出量よりもさらに小流量となる。
【0016】
請求項2記載の発明は、上記外部指令圧発生手段は、ネガコン圧よりも高い圧油を油圧源から導出する電磁弁と、操作レバーの非操作状態が一定時間継続したときに前記電磁弁を開いて油圧源の圧油をネガコン回路へ導出させるコントローラとからなることを特徴とする請求項1記載の建設機械の油圧回路を提供する。
【0017】
この構成によれば、操作レバーが非操作状態である検出信号をコントローラが受けて、非操作状態が一定時間継続したときは、コントローラから電磁弁に指令信号を出力し、ネガコン最大圧よりも高い圧油をネガコン回路へ導出させる。したがって、この外部指令圧が高圧選択されて、油圧ポンプの吐出量がネガコン圧で設定した吐出量よりも小流量となる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明は、操作レバーの非操作状態が一定時間継続したときは、ネガコン圧よりも高圧の外部指令圧が高圧選択されて、油圧ポンプの吐出量がネガコン圧で設定した吐出量よりも小流量となるので、アクチュエータが非操作時における油圧ポンプの吐出量を、スタンバイ流量よりもさらに低下させて、より一層省エネを図ることができる。
【0019】
請求項2記載の発明は、操作レバーの非操作状態が一定時間継続したときは、コントローラから電磁弁に指令信号を出力して、ネガコン圧よりも高い圧油をネガコン回路へ導出させるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、簡単かつ安価な構成にて、より一層省エネを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る建設機械の油圧回路について、好適な実施例をあげて説明する。安価な構成で、アクチュエータを操作していないときは、油圧ポンプの吐出量を低下させて省エネを図るという目的を達成するために、本発明は、ネガコン圧と外部指令圧の何れかを高圧選択して油圧ポンプの吐出量を制御する油圧回路において、アクチュエータ制御用の操作レバーの操作状態を検出する手段と、操作レバーの非操作状態が一定時間継続したときに、前記ネガコン圧よりも高圧の外部指令圧を発生させる外部指令圧発生手段を設けたことにより実現した。
【実施例1】
【0021】
図1は建設機械の一例として油圧ショベル10を示し、下部走行体11の上に旋回機構12を介して上部旋回体13が旋回自在に載置されている。上部旋回体13にはその前方一側部にキャブ14が設けられ、且つ、前方中央部にブーム15が俯仰可能に取り付けられている。更に、ブーム15の先端にアーム16が上下回動自在に取り付けられ、該アーム16の先端にバケット17が取り付けられている。
【0022】
前記ブーム15、アーム16、バケット17等のアタッチメントを駆動する油圧アクチュエータとして、ブームシリンダ18、アームシリンダ19、バケットシリンダ20が夫々設けられており、上部旋回体に設けられているエンジン30によりメインポンプ31を駆動して、各油圧シリンダや油圧モータへ作動油を給排する。
【0023】
図2は油圧回路図であり、説明の都合上、図6に示した従来の油圧回路と同一構成部分には同一符号を付して重複説明を省略する。図6と異なる構成部分は、先ず、ネガコン回路39の途中にシャトル弁51を介装し、該シャトル弁51の一方の入口ポートにネガコン絞り37側の回路を接続するとともに、他方の入口ポートに電磁比例減圧弁52を接続し、該シャトル弁51の出口ポートをメインポンプ31のレギュレータ40に接続する。
【0024】
前記電磁比例減圧弁52の1次側ポートにはタンク34と油圧源43が接続されており、コントローラ50からの指令信号が該電磁比例減圧弁52に入力されると、指令信号の大きさに応じて、油圧源43の圧油がネガコン回路39へ導出される。前記ネガコン絞り37によって発生するネガコン圧と、電磁比例減圧弁52によって発生する外部指令圧とがシャトル弁51で高圧選択され、何れか高圧の圧油がメインポンプ31のレギュレータ40に作用する。なお、本発明では、ネガコン圧よりも外部指令圧が高圧となるように設定されている。
【0025】
また、操作レバー41の操作状態を検出する手段として、リモコン弁42のパイロット回路44と46との間にシャトル弁48を介装し、該シャトル弁48の2次側ポートに圧力センサSを設けてコントローラ50に接続する。したがって、操作レバー41を何れかの方向へ操作すると、パイロット回路44または46のパイロット圧が、シャトル弁48により高圧選択されて圧力センサSで検出され、この検出信号によりコントローラ50は、操作レバー41が操作状態であるか、あるいは非操作状態であるかを検出することができる。
【0026】
なお、図示は省略するが、操作レバー41の操作状態を検出する手段としては、前記圧力センサSのほかに、シャトル弁48の2次側ポートに圧力スイッチを設けてコントローラ50でスイッチオンを検出してもよい。あるいは、操作レバー41の近傍位置にリミットスイッチを設置しておき、操作レバー41の傾倒動作をリミットスイッチにより検出することもできる。
【0027】
次に、本発明の油圧回路の動作について説明する。図2に示すように、操作レバー41が非操作状態すなわちコントロール弁36の切換操作を行わないときは、メインポンプ31から吐出された作動油が、コントロール弁35のセンターバイパスを通ってタンク34へ戻り、ネガコン絞り37の流量が増大してネガコン圧が徐々に高くなる。
【0028】
したがって、図7にて説明したように、レギュレータ40に作用するネガコン圧が上昇するのに伴いメインポンプ31の吐出量が減少し、ネガコン圧が最大Pn1になると、メインポンプ31の吐出量はコントロール弁35が応答性を有する最低流量であるスタンバイ流量Qsまで低下する。
【0029】
前述したように、圧力センサSの検出信号によりコントローラ50は操作レバー41の非操作状態を検出するが、操作レバー41の非操作状態がさらに一定時間継続したときは、コントローラ50から電磁比例減圧弁52へ指令信号を送る。
【0030】
図3に示すように、コントローラ50からの指令信号によって電磁比例減圧弁52が油圧源43に連通し、油圧源43の圧油がネガコン回路39へ導出される。前述したように、電磁比例減圧弁52によって発生する外部指令圧Pn2は、ネガコン絞り37によって発生するネガコン圧Pn1よりも高圧であるため、シャトル弁51により外部指令圧Pn2が高圧選択されてレギュレータ40に作用する。したがって、メインポンプ31の吐出量がネガコン圧Pn1で設定した吐出量Qsよりもさらに小流量の最小流量Qmとなる。
【0031】
図4はネガコン圧と外部指令圧の特性を示すグラフであり、同図(a)は、二点鎖線が従来のネガコン絞り37およびネガコンリリーフ弁38の流量とネガコン圧の関係を示し、実線が外部指令圧を示すグラフ、同図(b)は、ネガコン圧および外部指令圧とメインポンプの吐出量の関係を示すグラフである。従来と同様に、操作レバー41が操作状態のとき(ネガコン圧最低圧Pn0)は、メインポンプ31の吐出量が最大流量Qhとなり、操作レバーが非操作状態になると、ネガコン圧の上昇に伴ってメインポンプ31の吐出量が低下し、ネガコン圧最高圧Pn1で、メインポンプ31の吐出量がスタンバイ流量Qsまで低下する。
【0032】
本発明では、操作レバー41の非操作状態がさらに一定時間継続したときは、コントローラ50の指令により、ネガコン圧Pn1よりも高圧の外部指令圧Pn2を発生させるので、この高圧の外部指令圧Pn2がレギュレータ40に作用し、メインポンプ31の傾転角がさらに小さくなって最小流量Qmとなる。
【0033】
従来、メインポンプ31のスタンバイ流量Qsは、コントロール弁35の始動操作時の応答性を確保するために20cc/rev程度であったが、本発明では、操作レバー41の非操作状態が一定時間継続すると、メインポンプ31の吐出量をさらに低下させて、5cc/rev程度の最小流量Qmとするので、エネルギーロスが小さくなる。この最小流量Qmは小さいほど省エネになるが、機器の冷却性能を考慮して決定する。
【0034】
図5に示すように、操作レバー41がふたたび操作されたときは、圧力センサSの検出信号でコントローラ50は操作レバー41が操作状態となったことを検出できる。しかるときは、コントローラ50から電磁比例減圧弁52への指令信号を停止し、電磁比例減圧弁52がタンク34に連通するため、油圧源43の圧油がネガコン回路39へ導出されなくなり、外部指令圧Pn2が解消される。
【0035】
また、操作レバー41の操作によりコントロール弁47が切り換わるので、ネガコン回路39へ作動油が流れなくなり、ネガコン圧は最低圧Pn0となる。したがって、メインポンプ31の傾転角が大きくなり、吐出量が増大して最大流量Qhとなり、コントロール弁35を介してメインポンプ31からアクチュエータ36へ大量の作動油が供給される。
【0036】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明が適用された油圧ショベルの側面図。
【図2】本発明に係る油圧回路で操作レバーが非操作状態の説明図。
【図3】図2の非操作状態が一定時間継続したときの説明図。
【図4】本発明におけるネガコン圧と外部指令圧の特性を示すグラフ。
【図5】図3の状態から操作レバーが操作状態になったときの説明図。
【図6】従来の油圧回路で操作レバーが非操作状態の説明図。
【図7】従来の油圧回路におけるネガコン特性を示すグラフ
【符号の説明】
【0038】
10 油圧ショベル
31 メインポンプ
35 コントロール弁
37 ネガコン絞り
39 ネガコン回路
40 レギュレータ
41 操作レバー
42 リモコン弁
43 油圧源
48 シャトル弁
50 コントローラ
51 シャトル弁
52 電磁比例弁
S 圧力センサ
Qh 最大流量
Qs スタンバイ流量
Qm 最低流量
Pn0 ネガコン最低圧
Pn1 ネガコン最大圧
Pn2 外部指令圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネガコン圧と外部指令圧の何れかを高圧選択して油圧ポンプの吐出量を制御する油圧回路において、
アクチュエータ制御用の操作レバーの操作状態を検出する手段と、操作レバーの非操作状態が一定時間継続したときに、前記ネガコン圧よりも高圧の外部指令圧を発生させる外部指令圧発生手段を設けたことを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項2】
上記外部指令圧発生手段は、ネガコン圧よりも高い圧油を油圧源から導出する電磁弁と、操作レバーの非操作状態が一定時間継続したときに前記電磁弁を開いて油圧源の圧油をネガコン回路へ導出させるコントローラとからなることを特徴とする請求項1記載の建設機械の油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−97579(P2009−97579A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268257(P2007−268257)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】