説明

強制換気靴

【課題】
給排気を短いサイクルで行うことができる強制換気靴を提供する。
【解決手段】
本発明に係る強制換気靴100は、靴底10の一部を構成する弾性体である第1靴底層20と、靴底10の一部を構成する弾性体である第2靴底層30と、を備えている。また、第1靴底層20と第2靴底層30との間に間隙空間11、12が形成され、間隙空間11、12は、靴本体の内部に連通し、歩行の際に強制換気用のポンプとして機能する。そして、第1靴底層20は、間隙空間11、12に対応する部分の表面に複数の突起片25を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行により靴本体の内部を強制的に換気する強制換気靴に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行により靴本体の内部を強制的に換気する強制換気靴は、従来から種々提案されており、これらの基本構成はおよそ次のとおりである。つまり、従来提案されている強制換気靴は、靴底に袋状のエアーポンプを備えているとともに、このエアーポンプが靴本体の内側に連通するように構成されている。そして、強制換気靴を履いた使用者が歩くことでエアーポンプが押し潰され、エアーポンプの内部の容積が小さくなることで、エアーポンプ内の空気が靴本体の内部へ供給されるのである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−290653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の強制換気靴では、靴本体の内部への給気(エアーポンプからの排気)は比較的速やかに行うことができるのに対し、靴本体の内部からの排気(エアーポンプへの給気)は必ずしも速やかに行うことはできなかった。なぜなら、靴本体の内部への給気(エアーポンプからの排気)は、使用者が靴底を踏み込むという比較的大きな力で行われるのに対し、靴本体の内部からの排気(エアーポンプへの給気)は、エアーポンプを構成する材料自体のもとに戻ろうとする力のみで行われるからである。
【0005】
換気の回数が多ければ靴本体の内部をより良い環境に維持できるのが当然であるが、エアーポンプへの給気に時間がかかる上記の強制換気靴では、換気のサイクルは決して短いとはいえず、換気の回数を多くするという要請には十分応えることができなかった。さらに、上記の強制換気靴では、使用者が比較的速いテンポで歩行する場合は、エアーポンプへ十分に給気が行われる前にエアーポンプから排気されるという状態に陥ってしまい、実質的に強制換気が行われないということも生じてしまう。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、靴本体の内部の換気を短いサイクルで行うことができる強制換気靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、本発明に係る強制換気靴は、靴本体の内部を強制的に換気する強制換気靴であって、靴底の一部を構成する弾性体である第1靴底層と、前記靴底の一部を構成する弾性体である第2靴底層と、を備え、前記第1靴底層と前記第2靴底層との間に間隙空間が形成され、前記間隙空間は、靴本体の内部に連通し、歩行の際に強制換気用のポンプとして機能し、前記第1靴底層は、前記間隙空間に対応する部分の表面に複数の突起片を有する。
【0008】
かかる構成によれば、強制換気靴の使用者が靴底を踏み込んで間隙空間が押し潰されることにより間隙空間の内部の空気が排出される。このとき第1靴底層の突起片が第2靴底層側に強く押し当てられて、突起片もまた押し潰されるようにして変形する。そうすると、使用者の踏み込みによる力が開放されると、突起片のもとに戻ろうとする反発力が間隙空間を広げるように作用する。これにより間隙空間が速やかにもとの形状に戻り、間隙空間へと空気が速やかに供給される。つまり、かかる構成によれば、間隙空間からの排気後、間隙空間への給気を短時間で行うことができる。
【0009】
また、上記の強制換気靴において、前記突起片は円筒状の形状を有するように構成してもよい。
【0010】
かかる構成によれば、突起片は筒状の形状を有していることから、上下方向の力がかかった場合であっても倒れにくく軸方向にまっすぐ潰れる。そのため、突起片はより大きなエネルギーを蓄積することができるため、大きな反発力を得ることができる。さらに、突起片の内部の空気は、閉じこめられた状態で圧縮されるため、圧縮された空気が膨張しようとする力も得られ、さらに大きな反発力を得ることができる。
【0011】
また、上記の強制換気靴において、前記第2靴底層のうち前記間隙空間に対応する部分の表面に貼り付けられた膜部材をさらに備え、該膜部材は繊維材料からなるように構成してもよい。
【0012】
かかる構成によれば、膜部材に突起片が押し当てられると、平面状であった膜部材が波形状に変形する。そうすると、膜部材には張力が発生して、膜部材は面方向に伸びることになる。ここで、膜部材は繊維材料からなるため、膜部材に大きなエネルギーが蓄積され、膜部材からも反発力が発生する。つまり、上記の構成によれば、膜部材による反発力も加わることにより、より勢いよく突起片が第1靴底層から離れ、速やかに間隙空間をもとの形状に戻すことができる。
【0013】
また、上記の強制換気靴において、前記間隙空間は、前記靴底の前方側及び後方側の少なくとも2箇所に形成されるように構成してもよい。
【0014】
通常、歩行を行う場合には、靴底の後方側の部分(かかとの部分)から接地して、その後順次前方へと接地部分が移動する。そのため、上記の構成によれば、はじめに後方側の間隙空間により換気を行い、その後、前方側の間隙空間により換気が行われる。つまり、上記の構成によれば、一歩踏み出すことにより2回の換気を行うことができる。
【0015】
また、上記の強制換気靴において、前記靴底の前方側に形成された間隙空間と前記靴底の後方側に形成された間隙空間が連通するように構成してもよい。
【0016】
かかる構成によれば、例えば後方側の間隙空間に十分空気が供給されていないときに前方側の間隙空間からの排気が始まった場合には、前方側の間隙空間の空気が後方側の間隙空間に供給される。これにより、間隙空間に空気がほとんど無い状態で靴本体の内部へ空気を供給するという事態を回避することができる。
【0017】
また、上記の強制換気靴において、前記靴底の一部を形成する剛性体である第3靴底層をさらに備え、前記第1靴底層は、前記靴底の前方側に形成された間隙空間に対応する前側部材と、前記靴底の後方側に形成された間隙空間に対応するとともに前記前側部材と離間する後側部材とから成り、前記第3靴底層は、前記前側部材と前記後側部材の間に位置するように構成してもよい。
【0018】
かかる構成によれば、剛性体である第3靴底層が前方側の間隙空間と後方側の間隙空間の間に位置するため、例えば前方側の間隙空間が押し潰されたときに後方側の間隙空間に影響を与えることもない。そのため、両間隙空間による給排気は独立して行われる。よって、上記の構成によれば、より効率よく靴本体の内部の換気を行うことができる。
【0019】
また、上記の強制換気靴において、前記靴底の前方側に形成された間隙空間の容積が前記靴底の後方側に形成された間隙空間の容積よりも大きくなるように構成してもよい。
【0020】
歩行の際、つま先の付け根付近には比較的大きな力がかかるため、前方側の間隙空間の容積を大きくしても、前方側の間隙空間内の空気を十分に排出することができる。そして、靴底のうち前方側の間隙空間に相当する部分を踏み込んだ後は、もう一方の足を踏み込むため(例えば、右足を踏み込んだ後は左足を踏み込むため)次に後方側の間隙空間に相当する部分を踏み込むまでには比較的時間があるため、前方側の間隙空間の容積を大きくしても前方側の間隙空間への給気は可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る強制換気靴によれば、靴本体の内部の換気を短いサイクルで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る強制換気靴の靴底の平面図である。
【図2】図1に示す靴底のII−II断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る第1靴底層の平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る第2靴底層の裏面図である。
【図5】図1に示す靴底のV−V断面図である。
【図6】図1に示す靴底のVI−VI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る強制換気靴の実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0024】
まず、図1〜図6を参照しながら、本発明の実施形態に係る強制換気靴100の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る強制換気靴100の靴底10の平面図である。また、図2は、図1に示す靴底10のII−II断面図である。図2に示すように、本実施形態に係る強制換気靴100の靴底10は、第1靴底層20と、第2靴底層30と、第3靴底層40と、膜部材50と、を備えており、これらが積層されて形成されている。以下、これらの各構成要素及びこれらの各構成要素が一体となって形成された靴底10について順に説明する。なお、本実施形態に係る強制換気靴100は、靴底10以外の構成は周知のものを採用する。そのため、靴底10以外の構成については説明を省略する。また、以下では、つま先側を前方とし、かかと側を後方として説明する。
【0025】
第1靴底層20は、靴底10の一部を構成する部材であって、いわゆるアウトソールである。図2に示すように、本実施形態に係る第1靴底層20は、靴底10の最も下方に位置しており、強制換気靴100のうちの接地する部分に相当する。また、第1靴底層20は、ゴム材料で形成される弾性体であり、力がかかって変形した場合にはもとの形状に戻ろうとする性質(弾性)を有している。
【0026】
ここで、図3は、本実施形態に係る第1靴底層20の平面図である。図3に示すように、第1靴底層20は2つの部材から構成されている。一つは前方に位置する前側部材21と、もう一つは後方に位置する後側部材22である。前側部材21は後側部材22よりも大きく、両者は離間している。前側部材21及び後側部材22は、いずれもその中央部分が下方に窪んだ窪み部23、24を有しており、窪み部23、24には複数の突起片25が形成されている。前側部材21の窪み部23は、後側部材22の窪み部24よりも大きく形成されている。また、突起片25は円筒状の形状を有しており、窪み部23、24の底面に対して突起片25の中心軸が垂直になるように延びている。そして、図2に示す断面図から理解できるように、各突起片25の上端は自由端であるとともに開口しており、下端は窪み部23、24の底面に固定されている。さらに、前側部材21の窪み部23からみて前方側及び後方側には、それぞれ3つの貫通孔(以下、「外部貫通孔」という)26が形成されている。この外部貫通孔26は、前側部材21を垂直に貫通している。
【0027】
第2靴底層30は、靴底10の一部を構成する部材であって、いわゆるミッドソールである。図2に示すように、本実施形態に係る第2靴底層30は、第1靴底層20の上方に位置しており、第1靴底層20に対向する面の大部分が第1靴底層20に接している。また、第2靴底層30は、EVA発泡材料で形成される弾性体であり、力がかかって変形した場合にはもとの形状に戻ろうとする性質(弾性)を有している。なお、第2靴底層30は、第1靴底層20を形成する材料(ゴム材料)に比べて弾性率が小さい材料(EVA発泡材料)によって形成されている。
【0028】
ここで、図4は、本実施形態に係る第2靴底層30の裏面図である。すなわち、図4で表れている第2靴底層30の面は、図3で表れている第1靴底層20の面と接することになる。なお、図4において、斜線部は膜部材50を表している。図4に示すように、第2靴底層30には、前方側と後方側の2箇所に窪み部31、32が形成されている。そして、図3と図4を対比すれば理解できるように、第2靴底層30の前方側の窪み部31は、第1靴底層20の前側部材21の窪み部23に対応する位置に、かつ、対応する形状で形成されている。同様に、第2靴底層30の後方側の窪み部32は、第1靴底層20の後側部材22の窪み部24に対応する位置に、かつ、対応する形状で形成されている。そして、図4に示すように、第2靴底層30の前方側の窪み部31には3箇所、後方側の窪み部32には1箇所それぞれ第2靴底層30を垂直に貫通する貫通孔(以下、「内部貫通孔」という)33が形成されている。
【0029】
また、第2靴底層30には溝状の空気通路34が形成されている。この空気通路34は、前方側の窪み部31のさらに前方に形成されている。また、前方側の窪み部31と後方側の窪み部32との間にも空気通路34が形成されている。そして、第2靴底層30の土踏まずの部分にも、前方側の窪み部31と後方側の窪み部32とをつなぐ空気通路34から分岐するようにして左右方向に延びる空気通路34が形成されている。なお、図1に示すように、第1靴底層20と第2靴底層30を積層した場合には、平面視において、第2靴底層30の空気通路34と第1靴底層20の外部貫通孔26が重なるように構成されている。
【0030】
第3靴底層40は、靴底10の一部を構成する部材であって、足裏の土踏まずに対応する部分である。図2に示すように、本実施形態に係る第3靴底層40は、第2靴底層30の下方であって、第1靴底層20を構成する前側部材21と後側部材22とを架け渡すようにして両者の間に位置している。この第3靴底層40は、プラスチック材料で形成される剛性体であって、歩行する際に加わる程度の力ではほとんど変形することはない。なお、第3靴底層40は図示しない貫通孔が形成されており、第2靴底層30の空気通路34のうち前方側の窪み部31と後方側の窪み部32との間で左右方向延びる部分の先端部分がこの貫通孔に対応している。
【0031】
膜部材50は、第2靴底層30の窪み部31、32に貼り付けされた部材である。図4に示すように、本実施形態に係る膜部材50は、第2靴底層30の前方側の窪み部23と後方側の窪み部24に位置し、接着剤によって第2靴底層30に貼り付けられている。そして、膜部材50の大きさ及び形状は、第2靴底層30の各窪み部23、24の大きさ及び形状にほぼ一致する。また、膜部材50は繊維材料により形成されており、面方向(繊維方向)には多少伸びるが、その場合、膜部材50にはもとに戻ろうとする力がはたらく。なお、本実施形態に係る膜部材50はいわゆるナイロンで形成されている。
【0032】
以上が、本実施形態に係る靴底10の構成要素であり、これらの構成要素を積層することにより靴底10が形成される。ここで、図5は、図1に示す靴底10のV−V断面図である。すなわち、各構成要素が積層された靴底10の前方側の断面図である。また、図6は、図1に示す靴底10のVI−VI断面図である。すなわち、各構成要素が積層された靴底10の後方側の断面図である。
【0033】
図5に示すように、第1靴底層20(前側部材21及び後側部材22)と第2靴底層30が積層された状態では、前側部材21の窪み部23と第2靴底層30の前方側の窪み部31の間に空間(以下、この空間を「第1間隙空間」という)11が形成される。第1間隙空間11は、第2靴底層30に形成された内部貫通孔33を介して靴本体の内部に連通している。また、図2に示すように、第1間隙空間11は、第2靴底層30の空気通路34及び第1靴底層20の外部貫通孔26を介して靴本体の外部にも連通している。
【0034】
同様に、図6に示すように、第1靴底層20(前側部材21及び後側部材22)と第2靴底層30が積層した状態では、後側部材22の窪み部24と第2靴底層30の後方の窪み部32の間に空間(以下、この空間を「第2間隙空間」という)12が形成される。第2間隙空間12は、第2靴底層30に形成された内部貫通孔33を介して靴本体の内部に連通している。また、図2に示すように、第2間隙空間12は、第2靴底層30の空気通路34及び第1靴底層20の外部貫通孔26を介して靴本体の外部にも連通している。
【0035】
なお、靴底10に力がかかっていない自然状態において、第1間隙空間11の容積は第2間隙空間12の容積よりも大きく形成されている。また、第1間隙空間11及び第2間隙空間12のいずれにおいても、突起片25の上方には膜部材50が位置している。そして、靴底10が力を受けていない自然状態にあるとき、突起片25の上端は膜部材50に接していない。ただし、靴底10が自然状態にあるか否かにかかわらず、突起片25の上端は膜部材50に接するように構成してもよい。また、複数の突起片25のうち、一部の突起片25が膜部材50に接し、それ以外の突起片25が膜部材50に接しないように構成してもよい。
【0036】
以上が、本実施形態に係る強制換気靴100の構成である。かかる構成によれば、強制換気用のエアーポンプを上記の各構成要素とは別に用意する必要がないため、強制換気靴100の製造過程を簡略化することもでき、また製造コストを抑えることもできる。
【0037】
次に、本実施形態に係る強制換気靴100の動作について説明する。はじめに、歩行の流れに沿って、靴底10のうちかかとの部分に力がかかった場合、靴底10全体に力がかかった場合、靴底10のうち足の指の付け根の部分(以下、「踏みつけ部分」と呼ぶ)に力がかかった場合、及び、靴底10が地面から離れた場合の各場合における強制換気靴100の作動について以下、順に説明する。
【0038】
まず、靴底10のうちかかとの部分に力かかった場合、靴底10のかかとの部分に位置する第2間隙空間12が押し潰されることになる。これにより第2間隙空間12の容積が小さくなり、第2間隙空間12内の空気が、第2靴底層30の内部貫通孔33を介して靴本体の内部に排気される(同時に、第2靴底層30の空気通路34及び第1靴底層20の外部貫通孔26を介して靴本体の外部にも排気される)。つまり、靴本体の内部を基準にすれば、靴本体の内部には第2間隙空間12内の空気が供給される。
【0039】
続いて、靴底10の全体に力がかかった場合、かかとの部分にかかっていた力が弱まるため、第2間隙空間12がもとの形状に戻り、第2間隙空間12の容積が増大する。これにより、第2間隙空間12から空気が排出された場合とは逆に、第2靴底層30の内部貫通孔33を介して靴本体の内部から第2間隙空間12へ給気される(同時に、第2靴底層30の空気通路34及び第1靴底層20の外部貫通孔26を介して靴本体の外部にも排気される)。つまり、靴本体の内部を基準にすれば、靴本体の内部の空気が第2間隙空間12へ排出される。ここまでが、第2間隙空間12による換気である。このように、第2間隙空間12は強制換気用のエアーポンプとして機能する。
【0040】
続いて、靴底10のうち踏みつけ部分に力がかかった場合、靴底10の踏みつけ部分に位置する第1間隙空間11が押し潰されることになる。これにより第1間隙空間11の容積が小さくなり、第1間隙空間11内の空気が、第2靴底層30の内部貫通孔33を介して靴本体の内部に排気される(同時に第2靴底層30の空気通路34及び第1靴底層20の外部貫通孔26を介して靴本体の外部にも排気される)。つまり、靴本体の内部を基準にすれば、靴本体の内部には第1間隙空間11内の空気が供給される。
【0041】
続いて、靴底10が地面から離れた場合、踏みつけ部分にかかっていた力が弱まるため、第1間隙空間11がもとの形状に戻り、第1間隙空間11の容積が増大する。これにより、第1間隙空間11から空気が排出された場合とは逆に、第2靴底層30の内部貫通孔33を介して靴本体の内部から第1間隙空間11へ給気される(同時に、第2靴底層30の空気通路34及び第1靴底層20の外部貫通孔26を介して靴本体の外部にも排気される)。つまり、靴本体の内部を基準にすれば、靴本体の内部の空気が第1間隙空間11へ排出される。ここまでが、第1間隙空間11による換気である。このように、第1間隙空間11は強制換気用のエアーポンプとして機能する。
【0042】
以上が、本実施形態に係る強制換気靴100の作動である。このように、本実施形態に係る強制換気靴100は、一歩進むごとに第2間隙空間12による換気と第1間隙空間11による換気の2回の換気が行われる。そのため、従来のように強制換気用のエアーポンプが1つの場合に比べ換気の回数が2倍に増えることになる。ただし、これを実現するには、換気のサイクルを短時間で行う必要がある。そして、本実施形態に係る強制換気靴100は、以下に説明する理由により第1間隙空間11及び第2間隙空間12への給気を短時間で行うことができ、ひいては換気のサイクルを短時間で行うことができる。
【0043】
第1の理由は、突起片25による反発力に起因する。第1間隙空間11又は第2間隙空間12が押し潰されたとき、第1靴底層20の突起片25が膜部材50に強く押し当てられて、突起片25は軸方向に潰れるように変形する。このとき変形した突起片25にはエネルギー(弾性エネルギー)が蓄積され、突起片25は元の形状に戻ろうとして大きな反発力を発生する。これにより、第1間隙空間11等を押し潰そうとする力が開放されたとき、第1靴底層20は第2靴底層30から速やかに離れ、第1間隙空間11等は短時間でもとの形状に戻ることができる。つまり、第1間隙空間11等への給気を短時間で行うことができる。また、本実施形態では、突起片25は円筒状に形成されているため、倒れにくく、軸方向にまっすぐに潰れるため、より大きな反発力を発生させることができる。
【0044】
第2の理由は、突起片25の内側に閉じこめられた空気による反発力に起因する。第1間隙空間11又は第2間隙空間12が押し潰されたとき、第1靴底層20の突起片25が膜部材50に強く押し当てられ、突起片25の内側の空気は膜部材50により蓋がかぶせられた状態のまま圧縮される。これにより、空気には圧縮エネルギーが蓄積されるため、圧縮された空気は反発力を発生する。これにより、第1間隙空間11等を押し潰そうとする力が開放されたとき、第1靴底層20は第2靴底層30から速やかに離れ、第1間隙空間11等への給気を短時間で行うことができる。
【0045】
第3の理由は、膜部材50の張力による反発力に起因する。第1間隙空間11又は第2間隙空間12が押し潰されたとき、第1靴底層20の突起片25が膜部材50に強く押し当てられて、平面状であった膜部材50が波形状に変形する。ここで、膜部材50は繊維材料で形成されていることから、波形状に変形した場合には膜部材50の表面には張力が発生して繊維方向(面方向)に伸び、その結果、膜部材50にエネルギーが蓄積される。そして、膜部材50が元の形状に戻ろうとして反発力を発生する。これにより、第1間隙空間11等を押し潰そうとする力が開放されたとき、第1靴底層20の突起片25が膜部材50に押し出されて、第1靴底層20は第2靴底層30から速やかに離れる。これは弓矢の原理と同じであり、膜部材50が弓に相当し、突起片25が矢に相当する。これにより、第1間隙空間11等への給気を短時間で行うことができる。
【0046】
以上の理由により、本実施形態によれば、第1間隙空間11等への給気を短時間で行うことができ、ひいては換気サイクルを短時間で行うことができる。なお、仮に、使用者の歩くテンポが一時的に速くなったとしても、本実施形態によれば、第1間隙空間11又は第2間隙空間12に空気がほとんど無い状態で排気を行うような事態は生じない。これは、第1間隙空間11と第2間隙空間12とが連通しているためである。つまり、第1間隙空間11内の空気が少ない状態では、第2間隙空間12から排気が行われたとき、その空気は第1間隙空間11へ供給され、逆に、第2間隙空間12内の空気が少ない状態では、第1間隙空間11から排気が行われたとき、その空気が第2間隙空間12へ供給されるからである。
【0047】
また、本実施形態では、剛性体である第3靴底層40が、前側部材21と後側部材22の間、すなわち第1間隙空間11と第2間隙空間12の間に位置するため、第1間隙空間11が変形したときに第2間隙空間12に影響を与えることもなく、また第2間隙空間12が変形したときに第1間隙空間11に影響を与えることもない。そのため、第1間隙空間11及び第2間隙空間12による給排気はそれぞれ独立して行われる。よって、本実施形態によれば、より効率よく靴本体の内部の換気を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態では、第1間隙空間11の容積が第2間隙空間12の容積よりも大きくなるように構成されている。歩行の際、強く踏み出すときには、踏みつけ部分に大きな力がかかるため、第1間隙空間11の容積を大きくしても、第2間隙空間12内の空気を十分に排出することができるからである。なお、靴底10のうち第1間隙空間11に相当する部分を踏み込んだ後は、もう一方の足を踏み込むため(例えば、右足を踏み込んだ後は左足を踏み込むため)次に第2間隙空間12に相当する部分を踏み込むまでには比較的時間があるため、第1間隙空間11の容積を大きくしても第1間隙空間11への給気は可能である。
【0049】
以上、本発明に係る実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る強制換気靴によれば、給排気を短いサイクルで行うことができる。よって、本発明は、強制換気靴の技術分野において有益である。
【符号の説明】
【0051】
10 靴底
11 第1間隙空間
12 第2間隙空間
20 第1靴底層
21 前側部材
22 後側部材
25 突起片
30 第2靴底層
40 第3靴底層
50 膜部材
100 強制換気靴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴本体の内部を強制的に換気する強制換気靴であって、
靴底の一部を構成する弾性体である第1靴底層と、
前記靴底の一部を構成する弾性体である第2靴底層と、を備え、
前記第1靴底層と前記第2靴底層との間に間隙空間が形成され、
前記間隙空間は、靴本体の内部に連通し、歩行の際に強制換気用のポンプとして機能し、
前記第1靴底層は、前記間隙空間に対応する部分の表面に複数の突起片を有する、強制換気靴。
【請求項2】
前記突起片は円筒状の形状を有している、請求項1に記載の強制換気靴。
【請求項3】
前記第2靴底層のうち前記間隙空間に対応する部分の表面に貼り付けられた膜部材をさらに備え、該膜部材は繊維材料からなる、請求項1又は2に記載の強制換気靴。
【請求項4】
前記間隙空間は、前記靴底の前方側と前記靴底の後方側の少なくとも2箇所に形成されている、請求項1乃至3のうちいずれか一の項に記載の強制換気靴。
【請求項5】
前記靴底の前方側に形成された間隙空間及び後方側に形成された間隙空間が連通するように構成されている、請求項4に記載の強制換気靴。
【請求項6】
前記靴底の一部を形成する剛性体である第3靴底層をさらに備え、
前記第1靴底層は、前記靴底の前方側に形成された間隙空間に対応する前側部材と、前記靴底の後方側に形成された間隙空間に対応するとともに前記前側部材と離間する後側部材とから成り、
前記第3靴底層は、前記前側部材と前記後側部材の間に位置する、請求項4又は5に記載の強制換気靴。
【請求項7】
前記靴底の前方側に形成された間隙空間の容積が前記靴底の後方側に形成された間隙空間の容積よりも大きくなるように構成されている、請求項4乃至6のうちいずれか一の項に記載の強制換気靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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