説明

微生物増殖用構造体

【課題】
水浄化用に袋体として使用する場合には、袋体自体が微生物増殖体となり、水浄化の効率を向上するものであり、生簀用の微生物増殖では、微生物増殖用構造体のネットを設置するだけで、設置の手間が大幅に軽減することを目的とする。
【解決手段】。
本発明に係る微生物増殖用構造体1は、タテ編糸1cがヨリ糸で、ヨコ編糸1bがループ糸状を有する網糸で編成された網地1aにより形成された、蛙又編からなる有結節網よりなり、ヨコ編糸ループ糸状のループ長が10mmから50mmで、有結節網を形成する1辺が20mmから200mmである。そして前記微生物増殖用構造体を袋体又は簾状体として使用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の繁殖、増殖に好適な微生物増殖用構造体であって、袋状またはスダレ状の構造体とし、水浄化や魚養殖を目的とした構造体に使用される。
【背景技術】
【0002】
従来、排水浄化用の微生物増殖用としては、例えば特許文献1、特許文献2に記載の技術がある。これらの技術は特にし尿処理等に使用される技術であるが、通常のヨリ糸を網地にして袋状となし、その袋の中に微生物担持体を入れた袋体を使用して、主に微生物担持体により微生物の増殖が行われる。
また魚類養殖をするための生簀では、特許文献3に記載の技術がある。この技術では立体状のネット構成として、表面と裏面の網目をずらして配置していることを特徴とするものである。またこの特許文献3の記載で、ループを有する棒状の金属捕集材を並べて使用されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−131196号公報
【特許文献2】特開平5−68991号公報
【特許文献3】特開2001−207359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1および2に記載の水浄化の為の構造体は、袋体が積極的にそれ自身で微生物の増殖に多大に関与するするものではなく、袋詰めする構造体の種類や大きさ、入れる量を工夫しないと、微生物(バクテリア)の増殖が十分におこなわれないという欠点があった。
また、上記特許文献3に記載の技術によれば、構造体自体が微生物の増殖に関与するものの立体式ネットの制作に手間がかかる。また、特許文献3の記載中、ループを有する棒状の金属捕集材は、本来水中の金属を捕集するものであるが、嫌気性微生物の増殖させることも出来ると記載されている。しかし、係る構成ではループ上の紐を1本1本取り付けるのに手間がかかりすぎ、そのまま微生物増殖用としては使用できないのが現状である。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み提案されたもので、水浄化用に袋体として使用する場合には、袋体自体が微生物増殖体となり、水浄化の効率を向上するものである。また、生簀用の微生物増殖では、微生物増殖用構造体のネットを設置するだけで、設置の手間が大幅に軽減できる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る微生物増殖用構造体は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を備えている。
即ち、本発明に係る微生物増殖用構造体は、タテ編糸がヨリ糸で、ヨコ編糸がループ糸状を有する網糸で編成された網地により形成された、蛙又編からなる有結節網よりなることを特徴とする。
また、ヨコ編糸ループ糸状のループ長が10mmから50mmで、有結節網を形成する1辺が20mmから200mmである。
そして前記微生物増殖用構造体を袋体又は簾状体として使用すること、或いは、袋体内部にろ過材、または微生物担持体となる充填材を充填して用いること、又は簾状体となした微生物増殖用構造体を多数配置し、生簀状としてなることを特徴とする。
【0006】
本発明の微生物増殖用構造体は、タテ編糸がヨリ糸で、ヨコ編糸がループ糸状を有する網糸で編成された網地により形成された、蛙又編からなる有結節網よりなることより、網立て時に、ヨコ編糸をループ状に形成することにより簡易に製作することが出来、作業性が極めて良く、出来上がったループ糸状を有する網状の微生物増殖用構造体はバクテリア増殖に優れたものとなる。
有結網の網地として、10mmから50mm長のループを有するヨコ編糸と、通常のヨリ糸をタテ編糸として編網している。ここで、ヨコ糸のループ長が10mm以下では、微生物が付着しにくく、内部へ入りにくくなり、水流などにより脱落し易いことより、10mm以上としている。また、50mm以上では、有結節網を編網するとき、ループ糸が編み針などに引っかかり編網効率がわるくなる。
また50mm以下としていることにより、有結節網を編網するとき、ループ糸が編み針などに引っかかり編網効率がわるくなることを防止している。
また、有結網の網目の大きさは20mmから200mmとしている。これは、このような網目を有する有結網は水の流れを妨げることなく、バクテリアの増殖に有効に作用する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る微生物増殖用構造体は、それ自体で微生物の増殖に直接関与できるものであることにより、微生物増殖用構造体を直接袋体に形成し、それ自体としてまた、内部に微生物担持体となる充填材を充填して用いても効率的な微生物増殖用構造体となる。また、網目の大きさを調節することにより、袋体となし、内部に微生物を担持する微生物担持体を自由に選択することが可能であり、微生物(バクテリア)の増殖効率を向上することが可能である。
そして、微生物増殖用構造体を簾状体として使用することも出来、それ自体で汚染源に使用することも出来るが、生簀の大きさのネットをスダレ状となし、生簀の微生物増殖用に使用することが出来、ネットの耳部にロープを配置することで、施工を効率よくおこなうことが出来る他、養殖等に際して水質の浄化を伴った使用を出来るため、広範囲の用途に対応することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明に係る微生物増殖用構造体の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る微生物増殖用構造体1を示す模式図、図2は図1に示す有結節網地を折りたたんで袋状となした状態の模式図、図3は図2の袋中に充填材を充填して曝気槽に投入した模式図である。図4は微生物増殖用構造体を生簀に並べた模式図である。
【0009】
本発明の実施形態に係る微生物増殖用構造体1は、図1に示すように、有結節網地1aであって、タテ編糸1cに通常のヨリ糸を使用し、ヨコ編糸1bにループを有する通常の蛙又編網機等の図示しない製網機械で製網を行う。
ここで、ネットは具体的には、ヨコ編糸1bのループ状糸のループ長は10mmから50mmとすることが好ましい。このループ長とすることにより、バクテリアの増殖性が良好に行われるものである。即ち、ヨコ編糸1bのループ長が10mm以下では、微生物の増殖性が十分ではなく、また、50mm以上では、有結節網を編網するとき、ループ糸が編み針などに引っかかり編網効率がわるくなる。また、ヨコ編糸1bはループを有していることが大切で、ひげ状の糸状では糸上に微生物が増殖しても、水の流れなどによる衝撃で剥がれ落ち十分な増殖ができにくい。
【0010】
有結節網地の網糸は、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、ポリビニリデン繊維等を使用することが出来るが、特にヨコ編糸1bは、微生物保持性の点より、ポリ塩化ビニリデン繊維、ビニロン繊維が好ましい。
また、網糸は、美観の点から原着化された網糸が好ましく、さらに、環境保護の点からリサイクル糸(エコ糸)を使用することが好ましい。
この様にして編網した有結節網地を袋状に形成し、微生物増殖構造体として使用する場合は、袋に投入する微生物担持体の大きさによって、網目の大きさを調整できるが、通常は20mmから200mm程度が好ましい。このような網目とすると、網目を有する有結網は水の流れを妨げることなく、バクテリアの増殖に有効である。
【0011】
図2は上記微生物増殖用構造体を袋状とした実施の形態である。
微生物増殖用構造体を袋状とし、袋体Aの内部に微生物担持体2を内包する構成としている。そして、微生物担持体2の材質は、微生物が担持出来るものであれば良く、珪藻土、活性炭、木炭、天然鉱物類、炭酸カルシウム、土壌焼成物等の多孔質物質が好ましいが、プラスチック、不織布、或いは他の微生物増殖用構造体を丸めて袋体に内包する等広範囲の材料を使用できる。また、袋体の比重は発砲スチロール等で調節すれば良い。
図中3は、袋体の口結びと運搬や設置を兼ねたロープである。袋体の大きさは、使用する場所や設備の規模によって決定され通常10リットルから1000リットル程度の袋体として使用される。
【0012】
図3、図4は、微生物増殖用構造体を使用した具体的な実施の形態を示すものであり、図3は図2の微生物増殖用構造体よりなる袋体Aを、水浄化装置の曝気槽に投入したときの使用例の模式図である。
水浄化装置は、通常の構成の浄化装置構成であり、図中4,5は排水流入口、排水流出口であり、図中6は空気の曝気口であり、図中7は汚泥等の廃棄口である。
そして、曝気口6からの空気を投入し、微生物増殖用構造体のヨコ編糸bにループ内の微生物により水の浄化をより高めるものである。
【0013】
図4は、生簀Bに適用した微生物増殖用構造体の模式図である。
微生物増殖用構造体を平面的な微生物増殖ネット10として使用する。微生物増殖ネット10をスダレ状に多数配置し、各微生物増殖ネット10の四隅を枠体11内に固定して生簀Bを形成している。そして、この生簀Bを浮沈するために、四隅にロープ12を介して浮玉13を設けている。図中14は生簀を固定する固定ロープである。
ここで、生簀に使用する場合は、有結節に編網されたネットを、生簀の大きさにカットし、カットしたスダレ状のネットの端にロープを取り付け加工して、生簀に間隔を空けて多数設置すれば良い。通常は20cmから30cm間隔で設置すればよい。
なお、生簀状の構造体を河川、湖、池等に設置すれば水の浄化用としても使用できるものである。
本発明によれば、微生物の増殖が効率よくでき、しかも、設置の手間が掛からなく、設計した通りの施工が可能となる。
【0014】
[実施例]
次に、具体的な実施例に基づいて、本発明に係る微生物増殖用構造体を説明する。
<実施例1>
タテ編糸にポリエチレン1000デシテックス糸25本をヨリ糸とし、ヨコ編糸にポリプロピレン1000デシテックス糸を20本使用し30mm長のループ状としたループ糸をそれぞれ使用し、網目50mmの有結節網を編網した。編網した網地を約10リットル程度の袋体とし、微生物担持体として、不織布を樹脂加工した物や、プラスチック成型体を投入した。担持体を投入した袋体を50個を約10m3の小型曝気槽に投入した。
【0015】
<比較例1>
実施例1で使用したタテ編糸をヨコ編糸にも使用して、実施例1と同様の有結網とした以外は実施例1と同様の袋体とした。
<比較結果>
実施例1と比較例1の排水の結果を表―1に示した。
【0016】
【表1】

【0017】
<実施例2>
実施例1の有結網をヨコ1.5m、タテ1mにカットし、上下に9mmのポリエステルロープを網目に通し、網地とロープを紐で固定し簾状とした。これを約20cm間隔に10個生簀枠に取り付け、これを約9003の池のほぼ中央に投入した。
その結果、初め緑色で不透明な池の水が約1ヶ月経過後から、少しずつ透明度が増し、約3ヶ月後には、水はほぼ透明に変わった。
【0018】
表1に示すように、実施例では、排水のBODが低下し、本発明の有結網を使用することによって、排水浄化効率を15%〜20%向上することが判明した。また、生簀の例のように、本発明のネットを使用することによって、ループ部分に微生物を担持し、これによって水の浄化を可能とする事ができた。このように、実施例に係る微生物増殖ネットは、効率よくしかも簡便にコストのかからない実用性のあるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の構成を示す正面図である。
【図2】本発明の拡大断面である。
【図3】本発明の具体的な使用の形態を示すを示す説明図である。
【図4】本発明の具体的な使用の形態を示すを示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 微生物増殖用構造体
1a 有結節網地
1b ヨコ編糸
1c タテ編糸
2 微生物担持体
3 ロープ
4 排水流入口
5 排水流出口
6 曝気口
7 廃棄口
10 微生物増殖ネット
11 枠体
12 ロープ
13 浮玉
14 固定ロープ
A 袋体
B 生簀

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タテ編糸がヨリ糸で、ヨコ編糸がループ糸状を有する網糸で編成された網地により形成された、蛙又編からなる有結節網よりなることを特徴とする微生物増殖用構造体。
【請求項2】
ヨコ編糸ループ糸状のループ長が10mmから50mmで、有結節網を形成する1辺が20mmから200mmであることを特徴とする請求項1記載の微生物増殖用構造体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の微生物増殖用構造体を使用し、袋体又は簾状体としたことを特徴とする微生物増殖用構造体。
【請求項4】
請求項1又は2記載の微生物増殖用構造体を袋体に形成すると共に、袋体内部にろ過材、または微生物担持体となる充填材を充填してなることを特徴とする微生物増殖用構造体。
【請求項5】
簾状体となした微生物増殖用構造体を多数配置し、生簀状にしてなることを特徴とする請求項1又は2記載の微生物増殖用構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−283901(P2008−283901A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131966(P2007−131966)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(591151255)市川漁網製造株式会社 (4)
【出願人】(000109369)ティビーアール株式会社 (3)
【Fターム(参考)】