説明

悪臭処理方法、悪臭処理システムおよび飼育システム

【課題】経済的に悪臭を処理できる悪臭処理方法、悪臭処理システムおよび飼育システムを提供する。
【解決手段】洗浄水槽5に貯留した洗浄水に窒素ガスのナノバブルを導入し、ナノバブルと、ナノバブルの窒素ガスが酸化して生成された硝酸イオンとを含む洗浄水を悪臭発生源に散水して悪臭発生源を洗い流し、悪臭発生源に散水した洗浄水を洗浄水槽5に回収して、悪臭物質および有機物を分解すると共に、悪臭発生源から発した臭気を水膜24およびスクラバー4で除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪臭処理方法、悪臭処理システムおよび飼育システムに関する。
【背景技術】
【0002】
屎尿処理場のアンモニア臭、半導体工場の有機溶剤、食品・ビール工場の発酵臭、硫化水素などの悪臭を処理する方法としては、燃焼処理、次亜塩素酸ソーダ等による薬品洗浄、活性炭吸着、微生物による分解などの方法がある。医薬研究のための実験動物舎など、低いランニングコストで悪臭物質を十分に除去できる方法がなく、その処理に苦慮する場合は珍しくない。
【0003】
特許文献1には、廃液中のアンモニアをナノバブルによって活性化した微生物によって硝酸性窒素に酸化して無臭化できることが記載されているが、直接、悪臭を処理できる技術ではない。
【特許文献1】特開2006−305555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記問題点に鑑みて、経済的に悪臭を処理できる悪臭処理方法、悪臭処理システムおよび飼育システムを提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明による悪臭処理方法は、悪臭発生源を、硝酸イオンおよびナノバブルを含む洗浄水で洗浄する方法とする。
【0006】
この方法によれば、ナノバブルによって生成されるフリーラジカルによって、臭気物質を酸化して無臭化することができる。また、硝酸によって悪臭発生源を溶解して容易に洗い流すことができ、新たな臭気物質の発生を防止できる。
【0007】
また、本発明の悪臭処理方法において、前記硝酸イオンは、前記洗浄水中に窒素ガスを微細化したナノバブル導入し、前記ナノバブルの酸化により生成してもよい。
【0008】
この方法によれば、硝酸イオンとナノバブルとを同時に生成でき、薬剤を使用する必要がないので取り扱いが容易である。
【0009】
また、本発明の悪臭処理方法において、前記ナノバブルは、前記洗浄水を貯留し、前記洗浄水内に活性炭を保持する洗浄水槽において導入し、さらに、前記悪臭発生源を洗浄した後の洗浄水を回収して、前記洗浄水槽に環流してもよい。
【0010】
この方法によれば、洗浄槽の活性炭が洗浄水中の有機物を吸着するので、洗浄水を再利用できる。
【0011】
また、本発明の悪臭処理方法において、前記活性炭に微生物を繁殖させてもよい。
【0012】
この方法によれば、微生物が活性炭に吸着した有機物を分解して活性炭を再生するので、活性炭を交換しなくてよい。
【0013】
また、本発明の悪臭処理方法において、前記悪臭発生源のある空間に連通する空間に、膜水で形成した水膜を配置し、空気中の悪臭物質を前記膜水に吸収させ、前記水膜を配置した空間から吸引した空気を、スクラバー水を散水するスクラバーに導入し、前記スクラバー水に悪臭物質を吸収させてもよい。
【0014】
この方法によれば、悪臭発生源を洗い流す前に空気中に放出された悪臭物質を、膜水およびスクラバー水で吸収して除去するので、悪臭を外部に漏出させない。
【0015】
また、本発明の悪臭処理方法において、前記スクラバーを通過した空気を、前記悪臭発生源のある空間に環流させてもよい。
【0016】
この方法によれば、空気を循環することで、万が一、スクラバーで悪臭物質を完全に除去できなくても、悪臭物質が外部に放出されない。
【0017】
また、本発明の悪臭処理方法において、前記膜水および前記スクラバー水は、ナノバブルを含んでもよい。
【0018】
この方法によれば、ナノバブルが有するマイナスの電荷によって、悪臭物質が洗浄水に吸収されやすくなる。また、ナノバブルによって生成されるフリーラジカルが酸化力を有するので、悪臭物質を酸化して無臭化できる。また、フリーラジカルの酸化力によって水膜やスクラバーにスライムや藻類が発生することも防止できる。
【0019】
また、本発明の悪臭処理方法において、前記水膜は、前記膜水による膜の形成を補助する水膜形成材、好ましくは立体網状整形ポーラス材により形成してもよい。
【0020】
この方法によれば、空気に接触する水膜の面積を大きくして、悪臭物質を効率よく除去できる。
【0021】
また、本発明の悪臭処理方法において、前記スクラバーは、プラスチック充填材が充填されてもよい。
【0022】
この方法によれば、スクラバー水と空気との接触を増やし、確実に悪臭物質を除去することができる。
【0023】
また、本発明の悪臭処理方法において、前記膜水および前記スクラバー水は、活性炭を保持する処理水槽から供給し、前記水膜および前記スクラバーで回収した前記膜水および前記スクラバー水を前記処理水槽に環流させてもよい。
【0024】
この方法によれば、膜水およびスクラバー水を循環再利用できる。
【0025】
また、本発明の悪臭処理方法において、前記処理水槽にナノバブルを導入してもよい。
【0026】
この方法によれば、ナノバブルによって生成されるフリーラジカルの酸化力により、膜水およびスクラバー水に吸収した悪臭物質を酸化して無臭化できる。
【0027】
また、本発明よる悪臭処理システムは、硝酸イオンを含む洗浄水を貯留する洗浄水槽と、前記洗浄水槽内の前記洗浄水にナノバブルを導入するナノバブル発生装置と、前記洗浄水槽の洗浄水を、悪臭発生源に散水する散水手段と、前記悪臭発生源に散水した前記洗浄水を回収して、前記洗浄水槽に環流させる回収手段とを有するものとする。
【0028】
この構成によれば、ナノバブルによって生成されたフリーラジカルによって、臭気物質を酸化して無臭化することができる。また、硝酸によって悪臭発生源を溶解して容易に洗い流すことができ、新たな臭気物質の発生を防止できる。
【0029】
また、本発明による飼育システムは、内部で飼育する動物の糞尿が通過する網状の底板を備える飼育ケージを、床の上に空間を空けて配置可能な飼育室と、前記飼育室内に、硝酸イオンおよびナノバブルを含む洗浄水を散水する散水手段とを備えるものとする。
【0030】
この構成によれば、ナノバブルによって生じたフリーラジカルによって、糞尿中のアンモニアや有機物を酸化して無臭化することができる。また、硝酸によって糞尿を溶解して洗い流し、悪臭の発生を防止できる。
【0031】
また、本発明の飼育システムは、前記処理水を貯留し、貯留する前記洗浄水にナノバブルを導入するナノバブル発生装置を備え、前記飼育室に散水した洗浄水が環流される洗浄水槽を有してもよい。
【0032】
この構成によれば、洗浄水を循環利用できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、硝酸イオンおよびナノバブルを含む洗浄水で悪臭発生源を洗浄するので、ナノバブルによって生じたフリーラジカルによって、臭気物質を酸化して無臭化することができ、硝酸イオンによって悪臭発生源を溶解してきれいに洗い流すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に、本発明による悪臭処理システムの第1実施形態を適用した飼育システム1の構成を示す。飼育システム1は、実験動物を飼育する飼育室(作業室)2と、飼育室2と連通する水膜脱臭室3と、スクラバー4と、洗浄水を貯留する洗浄水槽5とを有する。
【0035】
飼育室2は、床6が洗浄容易なコンクリートピットからなる部屋であり、網やパンチングメタルなどからなる棚板7が床6との間に空間を空けて配置されている。棚板7の上には、マウス、ラット、ウサギ、猿、猫などの実験動物を飼育する複数の飼育ケージ8が配置できる。飼育ケージ8は、網状の底板9を有し、飼育する動物の糞尿が底板9および棚板7を貫通して床6の上に落下するようになっているが、上部および側面は例えば樹脂からなり、上の棚板7に配置した飼育ケージ8内の動物の糞尿が、下の飼育ケージ8の中に侵入しないようになっている。
【0036】
飼育システム1は、洗浄水槽5に貯留した洗浄水を洗浄ポンプ10で汲み上げて、散水バルブ11を介して、飼育室2の内壁面や床面、および、棚板7や飼育ケージ8の上に散水する散水ライン(散水手段)12を有する。散水ライン12の散水は、例えば、タイマによって定期的に行われる。飼育ケージ8の位置などに応じて、必要な散水バルブ11だけを空けておけば、洗浄ポンプ10の運転に伴って、必要な場所だけに洗浄水を散水できる。洗浄水は、シャワー状に散水され、床に落下している動物の糞尿だけでなく、棚板7や飼育ケージ8の上部に付着している動物の糞尿も、洗い流すことができる。床6のドレン口には、目皿13が設置され、洗浄水中のゴミを取り除く。糞尿を溶解した洗浄水は、配水管14を介して洗浄水槽5に回収される(回収手段)。
【0037】
洗浄水槽5は、貯留する洗浄水にナノバブルを導入するナノバブル発生装置15を備える。ナノバブル発生装置15は、洗浄水槽5から洗浄水を汲み出し、自吸した気体を剪断して洗浄水に混合する第1剪断部16を備える気液混合循環ポンプ17と、洗浄水を高速旋回させて包含する気体をさらに微細化する第2剪断部18および第3剪断部19と、気液混合循環ポンプ17に窒素ガスを供給する窒素ガスボンベ(窒素供給源)20と、窒素ガスの流量を調節するニードルバルブ21とを有する。
【0038】
気液混合循環ポンプ17は、揚程40m(吐出圧4kg/cm)以上の高揚程ポンプである。気液混合循環ポンプ17は、トルクが安定している2ポールのモータで駆動するものが好ましく、吐出圧力を所定の圧力に安定させるためにインバータ制御することが好ましい。
【0039】
気液混合循環ポンプ17は、第1剪断部16が有する高速回転するインペラによって洗浄水を高速旋回させ、この旋回流を竜巻状に細く絞り込むことで、より高速に回転する剪断流を発生させる。第1剪断部16は、洗浄水を高速に旋回させることにより生じる負圧によって、窒素ガスボンベ20から窒素ガスを自吸する。吸引された窒素ガスは、500〜600回転/秒程度の高速回転する剪断流によって切断・粉砕されながら、洗浄水に分散されてゆく。第1剪断部16では、窒素ガスは、マイクロメートルオーダーの気泡(マイクロバブル)に分断される。第1剪断部16の内部形状は、楕円形、最大効果を得るには真円形である。また、第1剪断部の内面は、内部摩擦を低減するために鏡面仕上げされている。
【0040】
第2剪断部18および第3剪断部19は、例えばステンレスからなり、楕円形、好ましくは真円形の内部形状を有し、吐出口径は、4mmから9mmが最適である。第2剪断部18および第3剪断部19は、洗浄水の流れをさらに細い竜巻状にして、より高速で旋回する剪断流を形成し、第1剪断部16で導入されたマイクロバブルを、さらに微細化して、ナノメートルオーダーのナノバブルに分割する。この行程は、第2剪断部18および第3剪断部19の2段階で行うことにより、気泡サイズをより均一にすることができる。
【0041】
このナノバブルの生成過程において、マイクロサイズの気泡(マイクロバブル)をナノサイズに剪断するとき、局部的に超高温の極限反応場が形成され、ナノバブルはマイナスの電荷を帯びる。また、この極限反応場において洗浄水が分解され、不安定なフリーラジカルを生成する。
【0042】
気液混合循環ポンプ17は、キャビテーションを防止するために、シーケンサなどを用いて、ニードルバルブ21を閉塞した状態で起動し、約60秒後、回転が安定してからニードルバルブ21を開いて窒素ガスの供給を開始する必要がある。また、窒素ガスの供給量が多いと、ガスの分断が不十分になり、ナノメートルオーダーにまで微細化できない。本実施形態では、ニードルバルブ21によって、窒素ガスの供給量を0.6リットル/分に調節すると、ナノバブルの直径は約120nmとなるが、窒素ガスの供給量を0.75リットル/分にすると、ナノバブルの直径は約300〜600nm、窒素ガスの供給量を1.2リットル/分にすると、ナノバブルの直径は約600〜900nm、窒素ガスの供給量を1.5リットル/分にすると、ナノバブルの直径は約900〜1500nmになる。よって、本実施形態では、ナノバブルを得るために、窒素ガスの供給量を1.2リットル/分以下にする必要がある。
【0043】
窒素ガスのナノバブルは、フリーラジカルの酸化力によって、窒素(N)ガスが酸化され、硝酸イオン(NO)を生じる。よって、洗浄水槽5内の洗浄水は、硝酸イオンおよびナノバブルを含んだものとなる。
【0044】
飼育室2に散水された洗浄水は、硝酸イオンの作用によって、動物の糞尿を溶解して洗い落とすことができる。また、動物の糞尿に含まれるアンモニア(NH)は、洗浄水に溶け込み、ナノバブルによって生じたフリーラジカルが有する強力な酸化力によって、一酸化窒素(NO)から2酸化窒素(NO)、そして、硝酸(NO)へと酸化される。また、糞尿中の有機物も、ナノバブルによって生成されるフリーラジカルの酸化力によって酸化分解される。洗浄水が糞尿中のアンモニアを十分に酸化できるだけのフリーラジカルを生成するためには、洗浄水1ccあたり50万個以上のナノバブルを含むようにすることが望ましい。
【0045】
このようにして、本飼育システム1では、飼育室2の悪臭発生源である糞尿を酸性の洗浄水によって残さず洗い流し、糞尿中の悪臭物質であるアンモニアを酸化して無臭の硝酸にする。
【0046】
また、洗浄水槽5は、側面が封止され、上部が解放、下部が穴の開いた板で封止された収容かご22を有し、収容かご22の中に活性炭23を保持して、貯留する洗浄水の中に浸漬している。
【0047】
飼育室2で糞尿を溶解した洗浄水が配水管14を介して洗浄水槽5に導入されると、活性炭23は洗浄水中に溶け込んだ有機物を吸着する。活性炭23には、微生物が繁殖するので、これらの微生物が活性炭に吸着した有機物を分解し、活性炭23を再生する。ただし、飼育室2に飼育する動物が多くなると、活性炭23の再生が追いつかないので、活性炭23を適宜交換する必要がある。
【0048】
さらに、本実施形態では、洗浄水で洗い流す前に、糞尿から空気中に放散したアンモニアを除去するために、水膜脱臭室3に、水膜24を配置している。水膜は、立体網状成型ポーラス材からなる水膜形成材(例えば、日大工業社製「ヘチマロン」)25に、ノズル26から膜水を供給して形成している。水膜形成材25から溢れた膜水は、受け皿27で回収される。なお、受け皿27の両端は、異物混入時などに容易に清掃できるように、取り外し可能なフランジ28で封止されている。
【0049】
本実施形態において、膜水は、スクラバー4に散水されるスクラバー水と同じものであって、スクラバー4の下部に設けた処理水槽29に貯留され、マイクロナノバブル発生装置30によってナノバブルが導入された処理水である。
【0050】
ナノバブル発生装置30の構成は、ナノバブル発生装置15とほぼ同様であり、同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。ナノバブル発生装置30は、窒素ガスボンベ20を有しておらず、外気を自給して、空気のナノバブルを処理水中に導入する点だけが、ナノバブル発生装置15との違いである。
【0051】
スクラバー4には、水膜脱臭室3から、ファン31で吸引した空気が導入される。スクラバー4は、処理水槽29に貯留した処理水を、膜水と同様にポンプ32によって汲み上げて、スクラバー水として導入された空気に散水ノズル33から散布する。スクラバー4には、空気とスクラバー水との接触を促進するために、プラスチック充填材(例えば、月島環境エンジニアリング社製「テラレット」)34が充填されている。
【0052】
散水ライン12による飼育室2の洗浄は定期的に行われるが、ファン31およびポンプ32は常時運転され、水膜24およびスクラバー4により空気中のアンモニアや揮発性の有機物を連続して吸収し続ける。スクラバー4を通過した空気は、環流ダクト35を介して、飼育室2に環流され、飼育室2から水膜脱臭室3へ、さらに、スクラバー4を介して飼育室2へと循環する空気の流れを形成する。水膜脱臭室3において、空気が水膜24に沿って流れることで、水膜と空気との接触の機会を増やすことができる。さらに、空気を循環して外部に出さないクローズドのシステムにしたことで、臭気が外部に漏れず、飼育室2の温度調節などの空調の効率もよい。
【0053】
水膜24を形成する膜水およびスクラバー4で散水されるスクラバー水は、マイナスの電荷を帯びたナノバブル含んでいるので、その静電気力によって空気中のアンモニアを吸引して効率よく除去できる。また、膜水およびスクラバー水は、ナノバブルによって生成された強い酸化力を有するフリーラジカルを含むので、吸収したアンモニアや有機物を分解すると共に、水膜形成材25や充填材34にスライムや藻類が発生すること防止できる。
【0054】
また、処理水槽29は、洗浄水槽5と同様に、収容かご22の中に活性炭23を保持している。この活性炭23には、微生物が繁殖し、水膜24およびスクラバー4において処理水が吸収した有機物を分解する。処理水槽29における有機物負荷は比較的小さいので、通常、活性炭23の交換は必要ない。
【0055】
以上の飼育システム1では、悪臭発生源である動物の糞尿を、硝酸イオンおよびナノバブルを含む洗浄水で洗い流して処理し、空気中に放散した悪臭物質を水膜24およびスクラバー4で除去するので、悪臭物質を高度に処理することができる。また、飼育システム1では、スクラバー4から飼育室2に空気を環流して外部に放出しないので、外部に臭気を漏らすことがない。
【0056】
図2に、本発明の第2実施形態の悪臭処理システム1を示す。以降の説明において、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態の悪臭処理システム1は、例えば、有機溶剤を使用する作業室2aの臭気を処理するものである。本実施形態では、作業台36などが配置された作業室2aの床6を洗浄可能な散水ライン12を有する。洗浄ライン12は、作業終了時など、随時、オペレータが散水でききるようになっている。
【0057】
また、本実施形態では、洗浄水槽5に空気を導入して撹拌するためのブロワ37を有している。ブロワ37で導入された空気は、散気管38によって、分散して、効果的に洗浄水を撹拌するようになっている。
【0058】
本実施形態でも、床6に溢れた有機溶剤を硝酸を含んだ洗浄水で洗い流して臭気の発生源を除去し、ナノバブルによって生成されるフリーラジカルの酸化力によって悪臭物質を酸化処理することで無臭化できる。また、水膜24およびスクラバー4によって、作業室2aの空気中に放散した臭気を除去することができる。そして、本実施形態では、ブロワ37で曝気することで、洗浄水槽5内の微生物を活性化し、洗浄水に溶け込んだ有機溶剤の分解を促進する。
【0059】
本実施形態の作業室2aは、有機溶剤を使用する部屋の他、食品工場やビール工場の発酵槽を設置した部屋、し尿処理場や下水処理場の脱水機室であってもよい。また、本実施形態の悪臭処理システム1では、アンモニアや有機溶剤の他にも、硫化水素などの悪臭を処理することもできる。
【0060】
図3に、本発明の第3実施形態の悪臭処理システム1を示す。本実施形態は、洗浄水槽5の洗浄水のpHを検出するpHセンサ39と、pHセンサ39の検出値に基づいてナノバブル発生装置15のニードルバルブ21の開度を調節するpH調節計40とを備える。
【0061】
pH調節計40は、pHセンサ39の検出値が所定の設定値より高いときは、ニードルバルブ21の開度を大きくし、pHセンサ39の検出値が所定の設定値より低いときは、ニードルバルブ21の開度を小さくする。pH調節計40により、洗浄水に導入される窒素ガスのナノバブルの量を変更して、窒素ガスが酸化して生ずる硝酸イオンの量をコントロールし、洗浄水の酸性度を適切な範囲に維持できる。
【0062】
図4に、本発明の第4実施形態の悪臭処理システム1を示す。本実施形態は、処理水槽29のTOC(全有機炭素)を検出するTOCセンサ41と、TOCセンサ41の測定値に基づいて、ナノバブル発生装置30のニードルバルブ21の開度を調節するTOC調節計42とを備える。
【0063】
TOC調節計42は、TOCセンサ41の検出値が所定の設定値より高いときは、ニードルバルブ21の開度を大きくし、TOCセンサ41の検出値が所定の設定値より低いときは、ニードルバルブ21の開度を小さくする。これにより、処理水に導入される酸素を含む空気のナノバブルの量を変更し、活性炭23の微生物の活性をコントロールして、処理水のTOCを一定の値以下に維持するものである。これにより、処理水が臭気を発しないように制御できる。
【0064】
図5に、本発明の第5実施形態の悪臭処理システム1を示す。本実施形態は、ナノバブル発生装置15が図1に示すような窒素ガスボンベ20を有していない。このナノバブル発生装置15は、洗浄水に空気のナノバブルを導入するので、直接、硝酸イオンを発生させることはできないが、空気のナノバブルであってもフリーラジカルを生じて、アンモニアや有機物を酸化する強力な酸化力を有していることには変わりない。ナノバブルとともに生じたフリーラジカルによってアンモニアを酸化して硝酸イオンを生じさせることができるが、アンモニアを酸化した硝酸イオンだけでは、十分な洗浄力を発揮できない。このため、散水ライン12によって散水する前に、洗浄水槽5に硝酸を投入して、悪臭発生源の状態に応じて洗浄水を適切な酸性度に調節する必要がある。本実施形態は、窒素ガスを使用しないのでランニングコストが低く、悪臭の発生源が酸性度の低い洗浄水でも洗浄可能な場合には有効である。
【0065】
(実験例)
図2の悪臭処理システム1の実験装置を制作し、その性能を確認する実験を行った。実験装置は、作業室2aの容積が4m、水膜脱臭室3の容積が0.7m,スクラバーの容積が1m、洗浄水槽5の容量が0.8m、処理水槽29の容量が1mであり、洗浄水槽5および処理水槽29には、それぞれの容量の60%の容積のヤシガラ活性炭23を充填した。洗浄ポンプ10の流量は40リットル/分、水膜24を形成する膜水の供給量は30リットル/分、スクラバー水の散布量は60リットル/分に設定した。また、ナノバブル発生装置15,30は、共に、2.2kWの気液混合循環ポンプ17を用いた協和機設社製のHYK−32型を使用した。
【0066】
本実験では、悪臭発生源として、作業室にアンモニア水の入った容器を開放して配置した。このとき、アンモニア容器から0.5mの位置における空気中のアンモニア濃度は、82.6ppmであった。そして悪臭処理システム1を稼働し、洗浄水によって容器内のアンモニアを全て洗い流すと共に、空気中のアンモニアを水膜24およびスクラバー4で吸収除去した。2時間の運転の後、スクラバー4の出口においてアンモニア濃度を測定したところ、その濃度は0.4ppmであった。この実験結果は、悪臭防止法における敷地境界線における上限値1ppmを下回り、十分に満足できるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態の飼育システムの概略構成図。
【図2】本発明の第2実施形態の悪臭処理システムの概略構成図。
【図3】本発明の第3実施形態の悪臭処理システムの概略構成図。
【図4】本発明の第4実施形態の悪臭処理システムの概略構成図。
【図5】本発明の第5実施形態の悪臭処理システムの概略構成図。
【符号の説明】
【0068】
1 悪臭処理システム(飼育システム)
2 飼育室
2a 作業室
3 水膜脱臭室
4 スクラバー
5 洗浄水槽
8 飼育ケージ
15 ナノバブル発生装置
20 窒素ガスボンベ(窒素供給源)
23 活性炭
24 水膜
25 水膜形成材
29 処理水槽
30 ナノバブル発生装置
34 充填材
35 環流ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪臭発生源を、硝酸イオンおよびナノバブルを含む洗浄水で洗浄することを特徴とする悪臭処理方法。
【請求項2】
前記硝酸イオンは、前記洗浄水中に窒素ガスを微細化したナノバブル導入し、前記ナノバブルの酸化により生成することを特徴とする請求項1に記載の悪臭処理方法。
【請求項3】
前記ナノバブルは、前記洗浄水を貯留し、前記洗浄水内に活性炭を保持する洗浄水槽において導入し、
さらに、前記悪臭発生源を洗浄した後の洗浄水を回収して、前記洗浄水槽に環流することを特徴とする請求項1または2に記載の悪臭処理方法。
【請求項4】
前記活性炭に微生物を繁殖させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の悪臭処理方法。
【請求項5】
前記悪臭発生源のある空間に連通する空間に、膜水で形成した水膜を配置し、空気中の悪臭物質を前記膜水に吸収させ、
前記水膜を配置した空間から吸引した空気を、スクラバー水を散水するスクラバーに導入し、前記スクラバー水に悪臭物質を吸収させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の悪臭処理方法。
【請求項6】
前記スクラバーを通過した空気を、前記悪臭発生源のある空間に環流させることを特徴とする請求項5に記載の悪臭処理方法。
【請求項7】
前記膜水および前記スクラバー水は、ナノバブルを含むことを特徴とする請求項5または6に記載の悪臭処理方法。
【請求項8】
前記水膜は、前記膜水による膜の形成を補助する水膜形成材により形成することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の悪臭処理方法。
【請求項9】
前記水膜形成材は、立体網状成型ポーラス材であることを特徴とする請求項8に記載の悪臭処理方法。
【請求項10】
前記スクラバーは、プラスチック充填材が充填されていることを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の悪臭処理方法。
【請求項11】
前記膜水および前記スクラバー水は、活性炭を保持する処理水槽から供給し、前記水膜および前記スクラバーで回収した前記膜水および前記スクラバー水を前記処理水槽に環流させることを特徴とする請求項5から10のいずれかに記載の悪臭処理方法。
【請求項12】
前記処理水槽にナノバブルを導入することを特徴とする請求項11に記載の悪臭処理方法。
【請求項13】
硝酸イオンを含む洗浄水を貯留する洗浄水槽と、
前記洗浄水槽内の前記洗浄水にナノバブルを導入するナノバブル発生装置と、
前記洗浄水槽の洗浄水を、悪臭発生源に散水する散水手段と、
前記悪臭発生源に散水した前記洗浄水を回収して、前記洗浄水槽に環流させる回収手段とを有することを特徴とする悪臭処理システム。
【請求項14】
さらに、前記ナノバブル発生装置に窒素ガスを供給する窒素供給源を有することを特徴とする請求項13に記載の悪臭処理システム。
【請求項15】
前記洗浄水槽は、貯留する前記洗浄水中に、活性炭を保持することを特徴とする請求項13または14に記載の悪臭処理システム。
【請求項16】
前記活性炭に微生物を繁殖させたことを特徴とする請求項15に記載の悪臭処理システム。
【請求項17】
前記悪臭発生源を外部から隔離する作業室と、
前記作業室と連通し、膜水で水膜を形成する水膜形成手段を配置した水膜脱臭室と、
前記水膜脱臭室から吸引した空気が導入され、前記導入された空気にスクラバー水を散水するスクラバーとを有することを特徴とする請求項13から16のいずれかに記載の悪臭処理システム。
【請求項18】
前記スクラバーを通過した空気を、前記作業室に環流させる環流ダクトを有することを特徴とする請求項17に記載の悪臭処理システム。
【請求項19】
処理水を貯留し、貯留する前記処理水にナノバブルを導入するナノバブル発生装置を備え、前記膜水および前記スクラバー水が回収されて導入される処理水槽を有し、
前記膜水および前記スクラバー水は、前記処理水槽から汲み上げられた前記処理水であることを特徴とする請求項17または18に記載の悪臭処理システム。
【請求項20】
前記処理水槽は、前記処理水中に活性炭を保持することを特徴とする請求項17から19のいずれかに記載の悪臭処理システム。
【請求項21】
前記水膜形成手段は、膜水による膜の形成を補助する水膜形成材を備えることを特徴とする請求項17から20のいずれかに記載の悪臭処理システム。
【請求項22】
前記水膜形成材は、立体網状成型ポーラス材であることを特徴とする請求項21に記載の悪臭処理システム。
【請求項23】
前記スクラバーは、プラスチック充填材が充填されていることを特徴とする請求項17から22のいずれかに記載の悪臭処理システム。
【請求項24】
内部で飼育する動物の糞尿が通過する網状の底板を備える飼育ケージを、床の上に空間を空けて配置可能な飼育室と、
前記飼育室内に、硝酸イオンおよびナノバブルを含む洗浄水を散水する散水手段とを備えることを特徴とする飼育システム。
【請求項25】
前記処理水を貯留し、貯留する前記洗浄水にナノバブルを導入するナノバブル発生装置を備え、前記飼育室に散水した洗浄水が環流される洗浄水槽を有することを特徴とする請求項24に記載の飼育システム。
【請求項26】
前記ナノバブル発生装置に窒素ガスを供給する窒素供給源を有することを特徴とする請求項25に記載の飼育システム。
【請求項27】
前記飼育室に連通し、処理水の水膜を形成する水膜形成手段が配置された水膜処理室と、
前記水膜処理室から吸引した空気が導入され、導入された空気に前記処理水を散布するスクラバーとをさらに有することを特徴とする請求項26に記載の飼育システム。
【請求項28】
前記スクラバーを通過した空気を、前記飼育室に導く環流ダクトを有することを特徴とする請求項27に記載の飼育システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−101269(P2009−101269A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273730(P2007−273730)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】