説明

感光性印刷版の自動供給装置

【課題】感光性印刷版の束を装填する作業を行うための装填スペースを小さくし、暗室を小型化して設備費を廉価にし、感光性印刷版の束を装填する作業を容易にして作業性を向上し、装填作業時にゴミが付着することを防止して良好な画質の印刷版を製版可能とする。
【解決手段】ハウジングの内部に、感光性印刷版10の束を斜めに配置した支持台上に立て掛けて置くための保管棚を設置する。ハウジングの保管棚に対向した開口部分に開閉扉44を装着し、開閉扉44の内側面に取り付けた作業台46に、鉛直に対して所定角度をなす傾斜支持面部48を設け、この傾斜支持面部48に梱包されている感光性印刷版10の束を斜めに持たせ掛けて載せた状態で、梱包されている感光性印刷版10の束の開梱作業を行えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の感光性印刷版を束ねたものを簡便な作業で装填可能とした、感光性印刷版の自動供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オフセット印刷には、感光性印刷版(いわゆるPS版)が利用されている。また、この平版印刷の分野では、未露光の感光性印刷版の供給を受けて、この感光性印刷版に対しコンピュータ等のデジタルデータに基づいてレーザ露光処理をし、自動現像機で感光性印刷版上に形成された潜像を顕像に変換する現像処理をして直接印刷版を製版するCTP(Computer to Plate)システムが実用化されている。
【0003】
このCTPシステムには、感光性印刷版の自動供給装置を備えたものがある。この感光性印刷版の自動供給装置は、複数枚の感光性印刷版が積層されて束にされたものを遮光された自動供給装置のハウジング内に装填し、製版作業の開始と共に自動供給装置の枚葉供給装置によって感光性印刷版の束から感光性印刷版を1枚ずつ分離して、露光処理部側へ搬出する。
【0004】
このようなCTPシステムに用いられる感光性印刷版は、例えば、薄いアルミニウム板の表面上へ感光層を塗布して形成されており、僅かな光によっても露光されて感光層に変化が生じる。また、空気中の水分を吸収して感光層に変化を生じるという性質を持つ。
【0005】
このため、感光性印刷版は、工場等で製造してから、運搬し、保管する流通過程を経てCTPシステムの自動供給装置に装填するまでの間に、感光性印刷版の品質変化を生じることを防止するため、感光性印刷版を所定の枚数づつ束にし、その束の表面及び裏面にそれぞれ厚紙(段ボール製のいわゆる当てボール)を配置し、これらを粘着テープ等の固定手段で束ずれを抑制するよう固定している。
【0006】
さらに、表裏にそれぞれ厚紙を配置して粘着テープで一体に固定された感光性印刷版の束は、遮光性及び防湿性を有する内装紙によって梱包される。この内装紙としては、例えば、クラフト紙にポリエチレンを溶融塗布してアルミニウム箔を貼着したアルミクラフト紙や、クラフト紙にブラックカーボンを混合した溶融ポリエチレンを塗布した黒色ポリエチレンラミネートクラフト紙等の高い遮光性及び防湿性を有する紙を使用している。
【0007】
また、感光性印刷版は、これを製造してから自動製版機の感光性印刷版供給装置に装填するまでの運搬工程や保管工程で、感光性印刷版や内装紙が破損等してしまうことを防止するため、包装箱を別途製造し、この包装箱に、内装紙により包装された感光性印刷版を収納している。包装箱としては、例えば、軽量で高い強度を有する段ボール箱等を使用している。
【0008】
また、従来の感光性印刷版の包装では、包装された感光性印刷版の束を自動製版機の感光性印刷版供給装置に装填する際、明室中で容易に開梱の作業をできるようにするため、感光性印刷版の束を、2分割可能な包装材で包装しておき、自動製版機の感光性印刷版供給装置内に2分割可能な包装材で包装されている感光性印刷版の束を内部にセットし、蓋を閉じて遮光状態にしてから、閉じた蓋の隙間からはみ出させた2分割可能な包装材の一方を引き出すことにより、感光性印刷版供給装置内で遮光状態を保ったまま包装材の一部を取り去る手段が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
しかし、このような従来の、感光性印刷版供給装置内で遮光状態を保ったまま包装材の一部を取り去る手段では、感光性印刷版供給装置内で遮光状態を保ったまま包装材が取り去られた感光性印刷版の束の表面から厚紙(当てボール)を取り除いて廃棄場所にストックさせるようにする、構造が複雑で大型の自動装置が別途必要となるので、感光性印刷版供給装置を備えたCTPシステムが大型化し高価になるという問題がある。
【0010】
このため、従来のCTPシステムでは、感光性印刷版の自動供給装置の装填台に所定枚数の感光性印刷版の束を装填する作業を行うために、CTPシステム全体を暗室内に設置し、太陽光を遮断し、白色光(室内灯)を消灯し、感光性印刷版を露光させる波長の光を除いた暗室照明の環境下で感光性印刷版の束を装填する作業を行うようにしたものがある。
【0011】
この暗室内で行う感光性印刷版の供給装置の装填台に所定枚数の感光性印刷版の束を装填する作業では、まず、作業者が、暗室中に梱包された感光性印刷版の束を、感光性印刷版を梱包状態のまま感光性印刷版の自動供給装置の扉の開閉に邪魔にならない所まで運び込んで置く。
【0012】
次に、作業者は、感光性印刷版の供給装置の扉を開ける。次に、作業者は、供給装置の開けた扉の前方に当たる装填作業の邪魔にならない床の上に、梱包された感光性印刷版の束を平置きする。
【0013】
次に、作業者は、暗灯照明下で感光性印刷版の梱包を開梱して、感光性印刷版の束の表面と裏面からそれぞれ厚紙(当てボール)を取り除いてから感光性印刷版の束だけを取り出せるように包装を開ける。
【0014】
次に、作業者は、床に置かれた感光性印刷版の束を装填台に運ぶ為に水平状態から垂直状態に持ち上げて保持する。
【0015】
次に、作業者は、感光性印刷版の束を保持して開梱されて残された梱包用の空箱から後ずさりして離れてから、感光性印刷版の束を保持したまま回転して感光性印刷版の束を感光性印刷版の供給装置の装填台の方向に向ける。次に、作業者は、感光性印刷版の束を保持したまま前進して装填台に装填する。
【0016】
次に、作業者は、空箱を除去し、感光性印刷版の供給装置の扉を閉じ装置内部を遮光して装填作業を完了する。
【0017】
上述のような暗室内で感光性印刷版の供給装置の装填台上に感光性印刷版の束を装填する作業を行う場合には、第1に、例えば感光性印刷版の供給装置の扉の前の床上にB2サイズ(765x686mm)の感光性印刷版を平置きし、開梱、装填する作業を行うためには約2500mmx1600mm以上の作業スペースが必要となり、暗室を広くせねばならないため、暗室の設備費が高額となる。
【0018】
第2に、作業者は、暗室内の床上に平置きされた感光性印刷版の束を装填台に運ぶ為に、重量のかさむ感光性印刷版の束を水平状態から垂直状態に持ち上げる必要があり作業が大変である。
【0019】
第3に、梱包された感光性印刷版の束を床上に置いて開梱作業を実施する為、床に多く存在するゴミが感光性印刷版に付着し、感光性印刷版の感光面に付着したり、CTPシステムの露光装置部や現像装置部内に侵入して印刷上の画質を劣化させたりする虞がある。
【特許文献1】特開平11−314771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上述の問題に鑑み、感光性印刷版の束を装填する作業を行うための装填スペースを小さくし、暗室を小型化して設備費を廉価にし、感光性印刷版の束を装填する作業を容易にして作業性を向上し、感光性印刷版の束を装填する作業を行う際にゴミが付着することを防止して良好な画質の印刷版を製版できるようにするための、感光性印刷版の自動供給装置を新たに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の請求項1に記載の感光性印刷版の自動供給装置は、装置本体の遮光されたハウジング内に装填された感光性印刷版の束から、感光性印刷版を1枚づつ分離して供給する感光性印刷版の自動供給装置において、ハウジングの内部に配置され、複数枚重ねられた感光性印刷版の束を斜めに配置した支持台上に立て掛けて置けるように構成された保管棚と、ハウジングの保管棚に対向した開口部分に、開閉可能に装着された開閉扉と、開閉扉の内側面に対して鉛直に対して所定角度をなすように斜めに取り付けた傾斜支持面部に梱包されている感光性印刷版の束を斜めに持たせ掛けて載せた状態で、梱包されている感光性印刷版の束の開梱作業を行えるように構成した作業台と、を有することを特徴とする。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の感光性印刷版の自動供給装置において、傾斜支持面部の鉛直に対する角度θ2が、角3度≦角度θ2≦角13度の範囲内であることを特徴とする。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の感光性印刷版の自動供給装置において、傾斜支持面部の鉛直に対する角度θ2が、角5度≦角度θ2≦角10度の範囲内であることを特徴とする。
【0024】
前述のように構成することにより、作業台を利用して感光性印刷版の束を保管棚に装填する装填作業を行うのに必要な作業スペースを狭くして、暗室を小型で廉価なものとすることができる。
【0025】
さらに、感光性印刷版の束を作業台上に立て掛けて開梱し、装填する作業を行えるため、装填作業の能率を向上することができる。
【0026】
これと共に、感光性印刷版の束を作業台上に立て掛けて開梱し、装填する作業を行うため、床上にあるゴミが付着することに起因する印刷上の画質劣化を防止して、良好な画像が形成された印刷版を製版できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の感光性印刷版の自動供給装置によれば、感光性印刷版の束を装填する作業を行うための装填スペースを小さくして暗室を小型化することにより設備費を廉価にでき、さらに感光性印刷版の束を装填する作業を容易にして作業性を向上でき、また感光性印刷版の束を装填する作業を行う際にゴミが付着することを防止して良好な画質の印刷版を製版できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の感光性印刷版の自動供給装置に関する実施の形態について図1乃至図6により説明する。本実施の形態に係わる感光性印刷版の自動供給装置は、現在市販されている一般の感光性印刷版(PS版)と比較して、感光性印刷版の表面に感光剤を塗布して形成された感光面が外力に対し強く(20倍以上)、合紙の保護を必要としないフォトポリマPS版である、いわゆる合紙無し感光性印刷版(合紙無しPS版)を所定複数枚束にしたものを装置内に装填し、枚葉供給装置で各感光性印刷版を1枚づつ分離して搬出する送給作業を可能に構成する。
【0029】
すなわち、この感光性印刷版の自動供給装置に用いる合紙無し感光性印刷版は、所定サイズの長方形の板状に形成された薄いアルミニウム板である支持体上に、感光材料を含有する感光面(画像記録層である感光剤面)を塗布して形成された感光面が設けられている。
【0030】
この感光性印刷版の自動供給装置に用いる合紙無し感光性印刷版は、これを製造してから所定複数枚の感光性印刷版を、合紙を廃止して、感光性印刷版の表面に当たる感光面(感光剤面であるEm面)に感光性印刷版の裏面に当たる(PS版アルミ面であるBack面)を直接接触させる状態で積層して束にした状態で、運搬や保管を行い、さらに感光性印刷版の母材であるアルミ面で感光面を擦りながら感光性印刷版を1枚づつ分離して搬出しても、傷や圧力カブリ等を生じないという特性を持つ。
【0031】
図2及び図3に示すように、合紙無し感光性印刷版10は、合紙無しで所定複数枚積み重ねられることにより直方体の束にされた状態で、コンピュータ等のデジタルデータに基づいてレーザ露光処理をし、自動現像機で感光性印刷版10上に形成された潜像を顕像に変換する現像処理をして直接印刷版を製版するCTP(Computer to Plate)システムの内部へ遮光状態で供給するのに好適なものとなっている。
【0032】
図1及び図2に示すように、このCTPシステムは、合紙無しで所定複数枚積み重ねられた感光性印刷版10の束が供給される自動供給装置12と、この自動供給装置12に連続して感光性印刷版10の束から感光性印刷版10(PS版)を1枚づつ分離して供給する枚葉供給装置14と、インナードラム露光装置(モノゴンスキャナー)16と、バッファ装置18と、現象処理装置20とを備える。
【0033】
このCTPシステムにおける自動供給装置12は、装置本体のハウジング内部で枚葉供給装置14と連続するように構成されている。この枚葉供給装置14を構成するため、自動供給装置12のハウジング内部には、保管棚22を設置する。この保管棚22は、自動供給装置12の床面からインナードラム露光装置16側の上部へかけて斜めに配置した支持台24に、高さ位置を調整可能なように棚部材26を装着して構成する。
【0034】
このように構成した保管棚22には、合紙無しで所定複数枚積み重ねられた感光性印刷版10の束を、図2及び図3に示すように、束の下端部を棚部材26の上に載せて支持台24の表面に斜めに持たせ掛ける(斜めに配置した支持台24上に立て掛ける)ようにして載置する。
【0035】
また、この枚葉供給装置14には、保管棚22の上側の位置に、複数の合紙レス平版刷版である感光性印刷版10の束における最上部位置にある搬出される感光性印刷版10と、その直下の感光性印刷版10との間に隙間を開かせて捌くことにより隣接する感光性印刷版10との接着力を低減させる捌き手段を設ける。
【0036】
なお、ここで、「捌き」とは、複数の感光性印刷版10の束(スタック版)における最上部位置にある搬出される感光性印刷版10を持ち上げて、その下にある感光性印刷版10との間に空気を入れることを意味する。
【0037】
この枚葉供給装置14には、捌かれた感光性印刷版10を1枚づつ分離して搬出するための積層された感光性印刷版10の最上部の感光性印刷版10を押圧しつつ搬送方向へ力を作用させることにより、この感光性印刷版10を搬出する搬送手段としてのローラピック方式等に構成された搬出手段とを配置する。
【0038】
この枚葉供給装置14では、図示しないが、捌き手段とローラピック方式の搬出手段とを単一の操作部材上に一体的に構成したピックアップユニットを装着する。
【0039】
すなわち、このピックアップユニットでは、操作部材に、捌き手段としてサッカー(真空サッカー)28と、ローラピック方式の搬出手段としてのゴムローラ製の搬出用ローラ30とを装着する。
【0040】
この操作部材は、制御装置で駆動制御されて、サッカー28を、感光性印刷版10の表面に密着させる吸着位置から所定距離離間するよう持ち上げた捌き操作位置まで昇降操作可能に構成する。サッカー28は、真空吸着用の吸盤装置として構成する。
【0041】
また、操作部材には、搬出用ローラ30を装着する。この搬出用ローラ30は、制御装置で駆動制御される駆動モータによって回転駆動されるように構成する。
【0042】
サッカー28と搬出用ローラ30とを設けたピックアップユニットは、図示しない回動操作機によって、ピックアップ位置と、捌き操作位置と、退避位置との間を移動操作される。
【0043】
このピックアップユニットの退避位置は、感光性印刷版10の束から、搬出用ローラ30とサッカー28とを所定距離離間させて、感光性印刷版10の束を保管棚22へ補給する動作等の邪魔にならない位置に設定する。
【0044】
このピックアップユニットは、感光性印刷版10の搬出動作を開始するときに捌き動作を行うため、退避位置で待機している状態から感光性印刷版10の束上面に移動し、最も上に位置する第1の感光性印刷版10の表面に搬出用ローラ30を当接させると共に、サッカー28を感光性印刷版10の表面に吸着させ、感光性印刷版10の搬送方向先端側端部近くの部分を弾性変形させて空気が流入可能な隙間を開かせて密着が部分的に解除された状態とする。
【0045】
次に、ピックアップユニットが捌き操作位置へ移動されることにより、搬出される感光性印刷版10は、その下にある感光性印刷版10の表面に対して全幅に渡り離間するように引き上げられる。
【0046】
次に、サッカー28の感光性印刷版10に対する吸着力を解除することにより、引き上げられた感光性印刷版10は、その自重によりその下にある感光性印刷版10の表面側に倒れかかる動作を行う。
【0047】
この動作の際、搬出される感光性印刷版10とその下の感光性印刷版10との間にある空気が上側から下側へ向けて押し出されるため、搬出される感光性印刷版10は、その下の感光性印刷版10の表面との間に空気が流れて、これら両者が全面的に分離し接着力を低減させて隣接した状態となる。
【0048】
次に、この枚葉供給装置14では、ピックアップユニットをピックアップ位置へ移動し、搬出用ローラ30を感光性印刷版10の表面に圧接させて転動させることにより、保管棚22に載置された感光性印刷版10の束の1番上にある感光性印刷版10の1枚だけを分離し搬送ベルト巻き掛け機構へ送給する。
【0049】
この搬送ベルト巻き掛け機構には、感光性印刷版10を保管棚22からインナードラム露光装置16まで搬送するために、主搬送ベルト32を張架した主搬送ベルト巻き掛け機構34と、副搬送ベルト36を張架した副搬送ベルト巻き掛け機構38とを設置する。
【0050】
この主搬送ベルト巻き掛け機構34は、保管棚22上部に当たる感光性印刷版10の搬入位置から、インナードラム露光装置16への搬出位置との間に主搬送ベルト32を張架して搬送路を構成する。
【0051】
また、副搬送ベルト巻き掛け機構38は、主搬送ベルト巻き掛け機構34における主搬送ベルト32の下側に設定される搬送路の一部を共用して搬送中の感光性印刷版10が脱落することを防止するよう構成する。
【0052】
このため、副搬送ベルト巻き掛け機構38は、主搬送ベルト32における、保管棚22から搬出された各感光性印刷版10の先端が突き当てられるガイド範囲より搬送方向下流側の中間ローラ40から、主搬送ベルト32の下側に設定される搬送路の出口に近い中間ローラ42の区間で、主搬送ベルト32と副搬送ベルト36とが添うようになって走行するよう巻き掛けて構成する。
【0053】
図1に示すように、自動供給装置12には、感光性印刷版10の束を保管棚22へ補給する作業を行うため、保管棚22に対向した自動供給装置12における装置本体のハウジングの一部を開口し、この開口部分に一枚の開閉扉44を遮光可能に装着する。なお、自動供給装置12には、所定の大きさの開閉扉44と補助用の開閉扉とを観音開き状に装着して、補助用の開閉扉の端部が開閉扉44の端部に重なって遮光性能を向上するように構成してもよい。
【0054】
図2乃至図5に示すように、自動供給装置12のハウジングに設けた開閉扉44の内側には、保管棚22に感光性印刷版10の束を装填する作業を補助するための作業台46を設置する。
【0055】
この作業台46は、開閉扉44の縦側面に対して斜状に配置した傾斜支持面部48と、この傾斜支持面部48の下端部から横に突出した支持部50と、支持部50の端部から立ち上がるように突出した抜け落ち防止用の補助枠部52とを有する。
【0056】
この作業台46における傾斜支持面部48は、開閉扉44の内側面に対して上端部を隣接させ下端部を離間させるように設置し、傾斜支持面部48の表面が鉛直に対して所定の角度θ2の範囲内となるように斜めに構成し、複数枚重ねられた感光性印刷版10の束を斜めに持たせ掛けられた状態で支持する。
【0057】
作業台46における支持部50は、その上表面が略水平となるように設定する。
【0058】
作業台46における補助枠部52は、支持部50上に感光性印刷版10の束を置いたときに、感光性印刷版10の束の下端部が支持部50から外れて落ちないようにできる高さに構成する。
【0059】
さらに、補助枠部52は、支持部50の上表面に対して鈍角に開くような傾斜をもたせて構成しても良い。
【0060】
この開閉扉44の内側に配置する作業台46は、その下端部が保管棚22の棚部材26よりも所定高さ(例えば、80ミリメートル)高くなるように配置する。
【0061】
このように構成した場合には、開閉扉44を閉じたときに作業台46の下端部が、これと対向する保管棚22の棚部材26とぶつかることを避けることができる。
【0062】
さらにこのように構成した場合には、保管棚22上の感光性印刷版10を捌くための引き上げ動作を行うときに捌かれる感光性印刷版10が作業台46にぶつかることを避けるように構成してスペースを有効に活用し、自動供給装置12をコンパクトに構成できる。
【0063】
この作業台46を設けた開閉扉44は、その一方の縦側部をヒンジで自動供給装置12における装置本体のハウジングに開閉可能に装着する。
【0064】
さらに、開閉扉44の下端部の両側には、それぞれ脚部材54を下に向けて突出するように設ける。この脚部材54には、床上を転動するキャスタ56を取り付ける。
【0065】
このように構成することにより、開閉扉44は、その作業台46上に感光性印刷版10の束を置いたときの重量を脚部材54のキャスタ56が受けることによりヒンジ部分に無理な力が加わることを防止して、スムーズに開閉操作できる状態を維持可能である。
【0066】
図3に示すように、この自動供給装置12では、開閉扉44を閉じた状態に対して所定角度(ここでは、θ1=90度以上、好ましくはθ1=115度以内)に開いた状態で維持するための図示しないストッパを設けても良い。
【0067】
次に、上述のように構成した作業台46を備えた自動供給装置12に合紙無しで所定複数枚積み重ねられた感光性印刷版10の束を装填する場合について説明する。
【0068】
この自動供給装置12に感光性印刷版10の束を装填する作業は、自動供給装置12の開閉扉44の内側に設置した作業台46上に梱包状態の感光性印刷版10の束を載せ、この作業台46上で開梱してから、感光性印刷版10の束だけを抜き取って保管棚22にセットすることにより行う。
【0069】
この感光性印刷版の束の装填作業は、具体的にいうと、作業者が、包装材で梱包されている感光性印刷版10の束を暗室中へ運び入れて用意する。
【0070】
次に、作業者は、自動供給装置12の開閉扉44を開けてその内側にある斜めに配置した作業台46上に梱包されている感光性印刷版10の束を置く。
【0071】
次に、作業者は、暗室内を暗灯下の状態にして、感光性印刷版10の束の箱11を開梱し、さらに、感光性印刷版10の束だけを取り出せるように、感光性印刷版10の束の内装紙11A等を開く。なお、内装紙11A等は、感光性印刷版10の束の上部を覆っている包装の一部だけを取り除くようにして開いても良い。
【0072】
次に、作業者は、作業台46に立て掛けた状態において、包装箱11及び内装紙11A等から感光性印刷版10の束だけを持ち上げるようにして引き出し、図3に示すように作業台46が所定角度θ1で開いた状態にある場合に、その場で時計周りに90度回転して、感光性印刷版10の束を保管棚22側へ向ける。次に、作業者は、感光性印刷版10の束だけを保管棚22に装填する。
【0073】
次に、作業者は、作業台46上にある空箱11等を除去し、開閉扉44を閉じて装填作業を完了し、暗室内の照明を点灯する。
【0074】
次に、作業者が作業台46上で感光性印刷版10の束の箱11と内装紙11A等を開梱し保管棚22上へ装填する作業をやり易くするための、作業台46における傾斜支持面部48の具体的な傾斜角度θ2を決定するために行った実験について図6により説明する。
【0075】
この実験では、傾斜支持面部48の表面が鉛直に対してなす角度θ2を、角1度から角15度までの範囲で適宜設定して作業台46を構成し、身長が150cmから185cmの間の種々身長の10人の作業者が実際に感光性印刷版10の束の箱11と内装紙11A等を開梱し保管棚22上へ装填する作業を行って、各作業者が作業性を評価した。
【0076】
この実験における評価の結果、角度θ2=1度では、感光性印刷版10の束が作業者側に倒れてきて作業がやりにくいという評価がされた。
【0077】
角度θ2=3度では、感光性印刷版10の束が作業者側に倒れないように注意が必要という評価がされた。
【0078】
角度θ2=5度以上(角度θ2=13度以下)では、感光性印刷版10の束が作業者側に倒れることがなく作業がやり易いという評価がされた。
【0079】
また、角度θ2=15度では、感光性印刷版10の束を包装箱11及び内装紙11A等から持ち上げるようにして引き出す作業を行うために、作業者が重量物である感光性印刷版10の束を持った手首を返す動作がつらく感じられ、作業がやりにくいという評価がされた。
【0080】
角度θ2=13度では、感光性印刷版10の束を包装箱11及び内装紙11A等から持ち上げるようにして引き出すために感光性印刷版10の束を持った手首を返す動作に多少違和感が感じられるが作業を支障なくできるという評価がされた。
【0081】
角度θ2=10度以下(角度θ2=3度以上)では、感光性印刷版10の束をスムーズに持ち上げるようにして引き出すことができ作業がやり易いという評価がされた。
【0082】
上述の実験の結果より、角度θ2は、角3度≦角度θ2≦角13度の範囲内であることが必要であり、角5度≦角度θ2≦角10度の範囲内であることが好ましいことが確認された。
【0083】
また、上述のように作業台46を利用して感光性印刷版10の束を保管棚22に装填する場合には、例えば、B2サイズ(765x686mm)の感光性印刷版10の束の装填作業を行う場合に、従来の床上に感光性印刷版10の束を平置きして作業するときに約2500mmx1600mm以上の作業スペースが必要であったものを、作業スペースを1050mmx1500mmと小さくできることが確認された。
【0084】
さらに、感光性印刷版10の束を作業台46上に立て掛けて開梱、装填する作業が行えるため、作業の能率を向上できることが確認された。
【0085】
これと共に、感光性印刷版10の束を作業台46上に立て掛けて開梱、装填する作業を行うため、床上にあるゴミが付着することに起因する印刷上の画質劣化を防止して、良好な画像が形成された印刷版を製版できる。
【0086】
図2に示すように、合紙無しで所定複数枚積み重ねられた感光性印刷版10の束が保管棚22に装填された自動供給装置12内の枚葉供給装置14では、最上位に位置する感光性印刷版10をサッカー28によって捌いてから、搬出用ローラ30を転接させて1枚だけを分離し主搬送ベルト巻き掛け機構34へ送給する。
【0087】
この主搬送ベルト巻き掛け機構34では、搬出用ローラ30によって搬出された感光性印刷版10の先端が、主搬送ベルト32における先端の第1ローラ58と中間ローラ40との間に張架された部分に相当するガイド範囲32Aに当たり、主搬送ベルト32の走行動作に従って中間ローラ40側へ搬送される。
【0088】
そして、先端を主搬送ベルト32にガイドされた感光性印刷版10は、中間ローラ40の位置で、主搬送ベルト32と副搬送ベルト36との間に挟み込まれて挟持された状態で搬送路上を搬送され、出口に近い中間ローラ42の位置で挟持状態を開放され、インナードラム露光装置16へ搬入される。
【0089】
このCTPシステムにおけるインナードラム露光装置16は、図示しないが円弧内周面形状(円筒内周面の一部を構成する形状)の支持体を母体として構成されており、この支持体の内周面に沿って感光性印刷版10を支持するようになっている。
【0090】
このインナードラム露光装置16では、図示しない真空吸着手段によって、未記録の記録媒体である感光性印刷版10を支持体の円弧面に確実に密着させて沿わせた状態に保持してから露光処理を行う。
【0091】
このインナードラム露光装置16では、支持体の円弧中心位置に配置した光ビーム偏向器としてのスピナーミラー装置を用いて、光源側の光学系から投射され画像情報に応じて変調された光ビームを感光性印刷版10の感光面に照射して走査露光を行う。
【0092】
このCTPシステムに設けるバッファ装置18は、インナードラム露光装置16で露光処理された感光性印刷版10を、搬送速度を調整することによって所要のタイミングで現象処理装置20へ搬入する機能を有する。
【0093】
現象処理装置20は、搬入されて来た露光済の感光性印刷版10に対する現像処理を行って潜像を顕像化して印刷版を製版する。
【0094】
また、前述したCTPシステムでは、自動供給装置12や必要に応じて枚葉供給装置14の上部に、感光性印刷版10の束を平置きして開梱の作業を行えるようにする台又はカバーを設けても良い。
【0095】
CTPシステムに開梱作業用の台又はカバーを設ける場合には、感光性印刷版10の束を床の上に平置きしないですむので、感光性印刷版10の束にゴミが付着することを防止して良好な画質の印刷版を製版できる。
【0096】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、その他種々の構成を取り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態に係わる感光性印刷版の自動供給装置を備えたCTP(Computer to Plate)システムの全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる感光性印刷版の自動供給装置内部の部分を取り出して示す要部概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる感光性印刷版の自動供給装置で感光性印刷版の束を装填作業を行っている部分を取り出して示す要部概略平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わる感光性印刷版の自動供給装置の開閉扉に装着された作業台に係わる部分を取り出して示す要部概略斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わる感光性印刷版の自動供給装置の開閉扉に装着された作業台で感光性印刷版の束を開梱した部分を取り出して示す要部概略斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係わる感光性印刷版の自動供給装置に設けた作業台を利用して感光性印刷版の束を開梱し保管棚へ装填する作業に関わる実験結果を示す表である。
【符号の説明】
【0098】
10 感光性印刷版
12 自動供給装置
14 枚葉供給装置
22 保管棚
24 支持台
26 棚部材
28 サッカー
30 搬出用ローラ
44 開閉扉
46 作業台
48 傾斜支持面部
50 支持部
52 補助枠部
54 脚部材
56 キャスタ
58 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の遮光されたハウジング内に装填された感光性印刷版の束から、前記感光性印刷版を1枚づつ分離して供給する感光性印刷版の自動供給装置において、
前記ハウジングの内部に配置され、複数枚重ねられた感光性印刷版の束を斜めに配置した支持台上に立て掛けて置けるように構成された保管棚と、
前記ハウジングの保管棚に対向した開口部分に、開閉可能に装着された開閉扉と、
前記開閉扉の内側面に対して鉛直に対して所定角度をなすように斜めに取り付けた傾斜支持面部に梱包されている前記感光性印刷版の束を斜めに持たせ掛けて載せた状態で、梱包されている前記感光性印刷版の束の開梱作業を行えるように構成した作業台と、
を有することを特徴とする感光性印刷版の自動供給装置。
【請求項2】
前記傾斜支持面部の鉛直に対する角度θ2が、角3度≦角度θ2≦角13度の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の感光性印刷版の自動供給装置。
【請求項3】
前記傾斜支持面部の鉛直に対する角度θ2が、角5度≦角度θ2≦角10度の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の感光性印刷版の自動供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−334266(P2007−334266A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169361(P2006−169361)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】