説明

感熱印刷装置

【課題】印刷中にサーマルヘッドがオーバーヒートしても、印刷状況によっては装置を停止させずに印刷を続行し、印刷済みの部分を廃棄する無駄を極力省くことができるようにする。
【解決手段】この製版印刷装置1は、サーマルヘッド7と、サーマルヘッドの温度を検出する温度センサ11と、制御部20を有する。サーマルヘッドで孔版原紙3を製版している時に、温度センサがオーバーヒートを検出した場合には、まだ製版されていない画像データの残量が所定値以下であれば、サーマルヘッドのラインごとの加熱時間を短くして製版を続行する。同時に冷却ファンを駆動してサーマルヘッドを冷却してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドで感熱印刷を行なう感熱印刷装置に係り、特に印刷中にサーマルヘッドがオーバーヒートしてしまった場合においても、印刷を続行して製版を完了させることができるため、直ちに印刷を停止することにより先に印刷した部分が無駄になるという不都合が起きにくい感熱印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されている印刷装置は、印刷途中での印刷の中断を無くし、全体として印刷時間の短縮を図ることを目的としている。この印刷装置によれば、画像データのガンマ変換処理を行い、サーマルヘッドの発熱素子の通電時間データを生成し、生成した通電時間データによる発熱温度データに基づいて、印刷後のサーマルヘッドの温度を予測した予測温度データを生成する。この予測温度データが所定温度データより大きいとき、発熱素子の発熱エネルギを下げると共に印刷速度を下げるようにしたので、オーバーヒートによる印刷の中断が無くなり、全体として印刷時間の短縮を図ることができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−88406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の印刷装置によれば、印刷後の温度を予測し、印加エネルギーを下げることでオーバーヒートによる中断が起こらないようにしているが、印字後の温度予測を誤れば、結局オーバーヒートが発生して印刷が中断し、印刷済みの部分が無駄になってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、係る課題に鑑みてなされたものであり、感熱印刷中にサーマルヘッドにオーバーヒートが発生しても、印刷状況によっては装置を停止させずに印刷を続行することにより、印刷済みの部分を廃棄するという無駄を極力省くことができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された感熱印刷装置は、
複数の発熱素子を画像データに基づいて選択的に駆動することにより感熱印刷媒体に熱で画像の印刷を行うサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドの温度を検出する温度センサと、
前記サーマルヘッドによって感熱印刷媒体に画像を印刷している時に、前記温度センサが検出した前記サーマルヘッドの温度が所定の限界温度を越えた場合に、印刷されていない前記画像データの残量が所定値以下であることを条件として印刷を続行するように前記サーマルヘッドを制御する制御手段と、
を具備することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載された感熱印刷装置は、請求項1記載の感熱印刷装置において、
前記制御手段は、前記サーマルヘッドによって感熱印刷媒体に画像を印刷している時に、前記温度センサが検出した前記サーマルヘッドの温度が所定の限界温度を越えた場合に、印刷されていない前記画像データの残量が0でないことを条件として、前記サーマルヘッドの温度抑制制御を行うことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載された感熱印刷装置は、請求項2記載の感熱印刷装置において、
前記温度抑制制御が、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動信号の駆動時間を減少させる制御であることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載された感熱印刷装置は、請求項2記載の感熱印刷装置において、
前記温度抑制制御が、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動信号の駆動電圧を減少させる制御であることを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載された感熱印刷装置は、請求項2記載の感熱印刷装置において、
前記サーマルヘッドを冷却する冷却手段をさらに備えており、前記温度抑制制御が、前記サーマルヘッドを前記冷却手段によって冷却する制御であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された感熱印刷装置によれば、サーマルヘッドによって感熱印刷媒体に画像を印刷している時に、サーマルヘッドの温度が所定の限界温度を越えたことを温度センサが検出すると、まだ印刷されていない画像データの残量が所定値以下である場合には、サーマルヘッドによる印刷を続行して当該画像データによる印刷を完了する。例えば、サーマルヘッドがオーバーヒートした時点で印刷がほとんど終了している場合には、残った画像データに基づく印刷が完了するまで印刷を続行するので、すでに印刷された分の画像を無駄にすることがない。
【0012】
請求項2に記載された感熱印刷装置によれば、上記のようにサーマルヘッドがオーバーヒートしたが印刷は続行したような場合において、サーマルヘッドの温度抑制制御を行うことによってオーバーヒートしたサーマルヘッドの温度がさらに上昇しないようにすることができる。
【0013】
請求項3に記載された感熱印刷装置によれば、前記温度抑制制御を、サーマルヘッドの発熱素子を駆動する駆動信号の駆動時間を減少させることによって行なうことができる。
【0014】
請求項4に記載された感熱印刷装置によれば、前記温度抑制制御を、サーマルヘッドの発熱素子を駆動する駆動信号の駆動電圧を減少させることによって行なうことができる。
【0015】
請求項5に記載された感熱印刷装置によれば、サーマルヘッドを冷却する冷却手段をさらに備えており、温度抑制制御を、冷却手段によってサーマルヘッドを冷却することによって行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る感熱印刷装置の模式的構造図である。
【図2】本発明の実施形態に係る感熱印刷装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る感熱印刷装置による印刷結果を例示する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る感熱印刷装置において、操作部のパネルで行なう制御項目の設定例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る感熱印刷装置における印刷時の制御手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.本発明の実施形態について
本発明の実施形態を図1〜図5を参照して説明する。
本実施形態の感熱印刷装置は、感熱印刷手段であるサーマルヘッドによって、感熱印刷媒体である感熱孔版原紙を感熱穿孔により製版し、この孔版原紙を版としてインクを用いた印刷手段により用紙に孔版印刷を行う製版印刷装置1である。
【0018】
すなわち、本発明における「印刷」の語は、サーマルヘッドを用いて感熱印刷媒体に画像を形成する工程一般を広く意味しており、従って実施形態中には含まれないがサーマルヘッドで感熱紙に画像を直接形成することも本発明の「印刷」であるし、サーマルヘッドで孔版原紙に穿孔画像を形成する製版も本発明における「印刷」の範囲に入る。
【0019】
2.製版印刷装置1の製版部2について(図1)
図1に、本実施形態における製版部2の機械構造上の基本的構成を示す。図示しない供給部から供給される熱可塑性樹脂フィルム単体又は熱可塑性樹脂フィルムと薄葉紙、不織布、スクリーン紗等の多孔性の支持体とを貼り合わせてなる孔版原紙3は、発光手段4と受光手段5からなるセンサによって有無を確認できるようになっており、ガイドローラ6を経てサーマルヘッド7とプラテンローラ8の間に送り込まれる。サーマルヘッド7は、画像データに基づいて選択的に駆動される複数の発熱素子を備えている。プラテンローラ8は、孔版原紙3をサーマルヘッド7の発熱素子に押し付けつつ回動して孔版原紙3を先方に送り出す。孔版原紙3の搬送方向について、サーマルヘッド7とプラテンローラ8の下流側の隣部には、孔版原紙3を切断するカッター9が設けられている。孔版原紙3の搬送方向について、カッター9の下流側の隣部には、孔版原紙3を挟持して下流に向けて搬送する搬送ローラ10が設けられている。
【0020】
図1に示すように、サーマルヘッド7には温度センサ11が設けられている。製版時にサーマルヘッド7に通電すると、画像データに対応する発熱素子の駆動状態に応じて、サーマルヘッド7の温度は変動する。例えば、連続ベタ状の画像を製版する場合には、多くの発熱素子が連続して駆動されるために、サーマルヘッド7の温度は上昇する。サーマルヘッド7には、製品ごとに、安定した正常な製版動作が可能である限界温度が仕様で定められている。その温度は例えば65℃等とされており、サーマルヘッド7がこの限界温度を越えてオーバーヒートを起こすと正常な製版が行なえなくなる。そこで前記温度センサ11は、サーマルヘッド7の温度を常時監視し、後述する温度抑制制御のために、その温度信号を後述する制御部に送っている。
【0021】
図1に示すように、サーマルヘッド7の近傍には、冷却手段としての冷却ファン12が設けられており、オーバーヒートしたサーマルヘッド7に風を当てて冷却できるようになっている。後述するように、この冷却ファン12は、前記温度センサ11から送られた温度信号を用いて制御部が行なう温度抑制制御に伴って駆動される。
【0022】
3.製版印刷装置1の全体構成について(図2)
図2は、本実施形態に係る製版印刷装置1の機能ブロック図であり、ここには図1に基本的構成を示した製版部2以外の構成も記載されており、これら各部は制御部20の機能により統括的に制御される。
【0023】
画像読み取り部21は、製版しようとする画像をスキャナー等によって読み取り、画像データを生成して制御部20に送る。なお、製版・印刷に係る画像データは、画像読み取り部21で読み取ったものでなく、図示しない外部のPC等から送られ、入力されたものでもよい。給紙部22は、積載された多数枚の用紙から所定のタイミングで用紙を一枚ずつ印刷部23に送り出す。その印刷部23では、前述した製版部2で製版された孔版原紙3が図示しない印刷ドラムに巻装され、その印刷ドラム内に設けられた図示しないインク供給手段から供給されたインクを印刷ドラムを介して孔版原紙3から押し出して用紙に転移させ、インクによる画像形成を行なう。反転部24は、印刷部23で一方の面に印刷された用紙を再び印刷部23に送り込む搬送経路中に設けられ、用紙をスイッチバックさせることによって、印刷部23で用紙の他方の面が他の印刷ドラムで印刷されるように用紙を反転させる。排紙部25は、印刷部23で印刷された用紙を装置外に送り出して所定の排紙トレイ等の上に順次積載させる。
【0024】
RAM26は、画像読み取り部21が読み取った画像データを画像データ記憶部27に記憶する。ROM28は、本装置における制御に必要な各種制御用ソフトウェアや制御用データ等を格納し、必要に応じて制御部20に提供する。
【0025】
製版部2は、図1を参照して説明した通りであり、RAM26の画像データ記憶部27に記憶した画像データに基づき、孔版原紙3をサーマルヘッド7とプラテンローラ8で製版し、製版が済んだ孔版原紙3をカッター9で所定の一版分の長さに切断して印刷部23に送り出す。また、温度センサ11からの温度信号を制御部20に送り、制御部20からの制御信号によって駆動時間や駆動電圧を変化させてサーマルヘッドを駆動し、また必要に応じて冷却ファン12を駆動させる。排版部29は、印刷部23による印刷が完了した後に、印刷部23から使用済みの孔版原紙3を剥ぎ取って所定の廃棄位置に排出する。
【0026】
外部データ解析部30は、外部のPCから送られてくる圧縮された画像データと付属情報を製版可能なデータに解析、変換して制御部20に送る。
【0027】
制御部20は、以上説明した装置各部を制御する手段であり、操作部35からの操作入力によって与えられた操作者の設定・指示に基づいて各部を制御する。具体的には、制御部20は、画像データに基づいて孔版原紙3を製版するように前記製版部2を制御する製版制御部40と、製版された孔版原紙3を用いて用紙に画像を形成するように前記印刷部23を制御する印刷制御部41とを有している。
【0028】
また、制御部20は、サーマルヘッド7によって孔版原紙3に画像を感熱穿孔している時に、温度センサ11が検出したサーマルヘッド7の温度が所定の限界温度を越え、オーバーヒート状態であると判断した場合に、その時点で未だ製版されていない画像データの残量をチェックし、それが所定値以下であることを条件として、製版を続行するようにサーマルヘッド7を制御するようになっている。
【0029】
そのため、制御部20は、製版部2の温度センサ11からの温度情報によってサーマルヘッド7の温度を検知し、これが所定の限界温度を越えているか否か(すなわちオーバーヒートしたか否か)を判断することができる。またオーバーヒート状態であると判断した場合に、その時点で未だ製版されていない画像データの残量をチェックし、それが所定値以下であるか否かを判断する画像データ解析制御部42を備えている。従って、制御部20によれば、サーマルヘッド7がオーバーヒート状態であるか否かの判断と、さらに画像データ解析制御部42の解析結果とに基づき、製版部2の駆動を継続するか、中断するか、適切に制御することができる。また、制御部20は、サーマルヘッド7がオーバーヒート状態であるか否かの判断に応じて、製版部2の冷却ファン12を駆動する温度制御部43を備えている。
【0030】
制御部20が、以上のような構成を備えているのは、オーバーヒートが発生した場合に製版を直ちに中断すると、殆ど製版が完了しているような孔版原紙でも廃棄せざるを得ず、製版済みの部分が無駄になってしまうという問題があるからであり、本発明はこれを解決するために、オーバーヒートが発生しても製版残量が少なければ製版を続行して製版済みの部分を廃棄する無駄を極力省けるようにするためである。
【0031】
4.制御部20による制御の概要について(図3)
このような本実施形態での制御部20による制御の概要を図3を参照して説明する。
温度センサ11が検出したサーマルヘッド7の温度が限界温度を越えており、オーバーヒートであると判断される場合であっても、制御部20は製版部2の作動を直ちには停止せず、次のいずれかの条件(1)又は(2)に一致した場合には、製版を継続する。
【0032】
(1)図3(a),(b)に示すように、オーバーヒート検知時に、現在の製版位置以降に製版すべきラインが1ラインもない場合、そのまま孔版原紙3を搬送して所定長さにカットし、正常終了させる。なお、ここで「ライン」とは、孔版原紙3の製版において、主走査方向(同図中左右方向)に平行な一回の動作で製版可能なライン状の製版領域を意味する。
【0033】
(2)図3(c)に示すように、オーバーヒート検知時に、現在までに完了している製版量が所定量を越えている場合、すなわちほとんど製版が終わり、残り数ラインを残すのみであるような場合には、ライン当りの加熱時間又は加熱電圧を抑制する温度抑制制御を行なって製版を継続し、所定長さにカットして終了させる。但し、正常終了ではなく、製版条件が変わっているため画質が低下している可能性があるので、図示しない表示部に、製版中にオーバーヒートが発生したが製版を継続して最後まで終了した事実を表示させ、この孔版原紙3を実際に印刷に使用するか否かについては使用者が判断・決定できるようにする。
【0034】
なお、図3(d)に示すように、オーバーヒート検知時に、現在までに完了している製版量が所定量を越えておらず、製版が終わっていないラインが多い場合には、製版を中止する。
【0035】
5.制御部20における制御の条件設定について(図4)
図4は、上述した(2)のように、オーバーヒート検出時に未製版ラインが少し残っている場合に製版を続行する制御、すなわちサーマルヘッド7の温度抑制制御を行なう場合の諸条件を設定するため、操作部35の表示パネル45に表示される設定・入力画面を示している。「継続する残ライン数」の表示46にタッチしてから図示しないテンキーで所定位置に所望の数値を入力することにより、オーバーヒート検知後に製版を継続するか否かの基準となる未製版のライン数を設定できる。例えば、ここに「1」と設定すれば、オーバーヒート検知時に未製版のライン数が1以下であれば製版は継続される。
【0036】
「加熱時間低減割合」の表示47にタッチしてから図示しないテンキーで所定位置に所望の数値を入力することにより、オーバーヒート検知時に未製版ラインの製版を続行する場合に、サーマルヘッド7における発熱素子の駆動時間の低減率を設定できる。例えば、ここに「10」と設定すれば、オーバーヒート検知時に未製版ラインの製版を続行する場合にサーマルヘッド7の発熱素子の駆動時間は通常の10%減となる。
【0037】
「冷却ファン可変」の表示48においてONを選択した場合には、温度センサ11が検出したサーマルヘッド7の温度に応じて冷却ファン12の回転数が制御され、具体的にはサーマルヘッド7の温度が高くなるほど冷却ファン12を高速で駆動して冷却効果を高める。また、OFFを選択した場合には、冷却ファン12は常に一定速度で回転し、サーマルヘッド7に対する冷却効果は温度に関わらず一定となる。
【0038】
なお、「加熱時間低減割合」の設定による温度抑制制御と、「冷却ファン可変」をONにした場合の温度抑制制御は、両方同時に行なうようにしてもよいし、いずれか一方だけを行なうようにしてもよい。
【0039】
以上のようにサーマルヘッド7の温度抑制制御に関する諸条件を設定した後、画面最上部の「取消」又は「確定」の表示49にタッチすれば、上記設定内容が取消され、又は確定して制御部20に設定される。
【0040】
図4に示した設定・入力画面では、サーマルヘッド7の温度抑制制御に関する諸条件を手動で設定した。この場合、使用者は、オーバーヒートが検知されてからの時間経過によってサーマルヘッド7の温度が予熱でさらに上昇する分を見込んで、加熱時間低減割合と、これによって製版を継続できる限界となる未製版の残ライン数を設定する必要がある。
【0041】
このように手動で設定を行なうためには、使用者にはある程度の知識と経験が要求される。そこで、これを自動化し、制御部20が画像データ解析制御部42において画像データから画像率(印字率又は穿孔率)を算出し、予め実験等によって得られたデータを参照することにより、最適な加熱時間低減割合と未製版の残ライン数を設定するように構成することもできる。
【0042】
なお、上記の温度抑制制御では、サーマルヘッド7の駆動時間を低減したが、サーマルヘッド7の各発熱素子に加える電圧の低減率を設定することによりサーマルヘッド7のさらなる温度上昇を可及的に抑制することもできる。
【0043】
なお、上記の温度抑制制御は、サーマルヘッド7の駆動時間を低減し、又はサーマルヘッド7の各発熱素子に加える電圧を低減することにより行なったが、このような手法で発熱量を制御すると孔版原紙3に熱で形成される穿孔の径が小さくなってしまう。そこで、サーマルヘッド7の駆動時間の低減、又はサーマルヘッド7の各発熱素子の駆動電圧の低減に合せて、孔版原紙3の搬送速度を小さくすることにより、孔版原紙3に形成される穿孔の径が大きくなるようにし、製版の品位の低下を防止するようにしてもよい。
【0044】
6.製版時における制御の全体について(図5)
図5に示すように、製版動作が開始されると、制御部20は所定のサイクルで製版部2の温度センサ11からの温度情報をチェックし、サーマルヘッド7がオーバーヒート温度にあるか否かを判断する(S1)。サーマルヘッド7がオーバーヒート温度にはないと制御部20が判断した場合(S1、NO)には、製版動作を継続し(S2)、全ての製版すべき画像データの製版が終了と判断される(S3、YES)とともに、孔版原紙3が余白分に相当する所定量だけ搬送されたと判断された場合(S4、YES)には、製版動作(孔版原紙の切断も含む)は終了となる(S5)。
【0045】
サーマルヘッド7がオーバーヒート温度を越えたと制御部20が判断した場合(S1、YES)には、その後に製版すべきラインが予め設定した所定ライン数未満であるか否かが判断される(S6)。オーバーヒート後に残された未製版のラインが所定数未満である場合(S6、YES)においても、その残りライン数が0であれば(S7、YES)、製版は完了している場合と考えられるので、温度抑制制御は実行する必要がない。そこで、孔版原紙3が余白分に相当する所定長さだけ搬送されたと判断されれば(S4、YES)、画像データがすべて製版されたものとして製版動作は終了となる(S5)。
【0046】
オーバーヒート後に残された未製版のラインが所定数未満であり(S6、YES)、その残りライン数が0ではない場合(S7、NO)には、製版は完了していないと考えられるので、前述した温度抑制制御を実行し(S8)、製版動作を継続する(S2)。すなわち、サーマルヘッド7がオーバーヒートしており、未製版ラインが実際に存在しているが、その数が製版を継続してもかまわないものとして予め設定した基準値未満であるような場合には、ライン当りの加熱時間又は加熱電圧を抑制するとともに、冷却ファン12を適宜駆動する温度抑制制御を行ないつつ、製版を継続する。
【0047】
オーバーヒート検知時(S1、YES)、未製版のラインが予め設定した所定ライン数を越える場合(S6、NO)には、温度抑制制御を実行しながら製版動作を継続しても所期の品質の製版は得られないので、中途まで製版した孔版原紙3は廃棄処分するものとし、製版動作は終了とし(S9)、操作部35の表示パネル45にエラー表示を行なう(S10)。
【0048】
以上説明した実施形態は製版印刷装置1に係るものであったが、本発明はサーマルヘッド7で感熱印刷媒体に熱で画像の印刷を行う際の制御手法に特徴を有するものであり、実施形態中の製版部2とこれを制御する制御部20の温度抑制制御の手法が本発明に係る部分であった。従って、インクによる印刷部23がなく、サーマルヘッド7を利用した製版部2を有する製版装置に本発明を適用することもできるし、また製版には限らず、サーマルヘッドで感熱印刷媒体に画像を形成する画像形成装置も、本発明の感熱印刷装置に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1…感熱印刷装置としての製版印刷装置
2…製版部
3…感熱印刷媒体としての孔版原紙
7…サーマルヘッド
11…温度センサ
12…冷却手段としての冷却ファン
20…制御部
42…画像データ解析制御部
43…温度制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱素子を画像データに基づいて選択的に駆動することにより感熱印刷媒体に熱で画像の印刷を行うサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドの温度を検出する温度センサと、
前記サーマルヘッドによって感熱印刷媒体に画像を印刷している時に、前記温度センサが検出した前記サーマルヘッドの温度が所定の限界温度を越えた場合に、印刷されていない前記画像データの残量が所定値以下であることを条件として印刷を続行するように前記サーマルヘッドを制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする感熱印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記サーマルヘッドによって感熱印刷媒体に画像を印刷している時に、前記温度センサが検出した前記サーマルヘッドの温度が所定の限界温度を越えた場合に、印刷されていない前記画像データの残量が0でないことを条件として、前記サーマルヘッドの温度抑制制御を行うことを特徴とする請求項1記載の感熱印刷装置。
【請求項3】
前記温度抑制制御が、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動信号の駆動時間を減少させる制御であることを特徴とする請求項2記載の感熱印刷装置。
【請求項4】
前記温度抑制制御が、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動信号の駆動電圧を減少させる制御であることを特徴とする請求項2記載の感熱印刷装置。
【請求項5】
前記サーマルヘッドを冷却する冷却手段をさらに備えており、
前記温度抑制制御が、前記サーマルヘッドを前記冷却手段によって冷却する制御であることを特徴とする請求項2記載の感熱印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40840(P2012−40840A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186339(P2010−186339)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】