説明

成形品製造装置

【課題】薄膜成形物を製造するための金型において、極めて精度の高い組み付けを行なうものである。特に、成形時に雄型が雌型に対して傾くことを高い精度で防止する成形品製造装置を提供するものである。さらに、成形時に雄型と雌型との組み付け位置のずれを、成形過程において防止する成形品製造装置を提供するものである。
【解決手段】雄型10と雌型30とを組み合わせて構成される空間内にシリコーンゴム2を導入して、該空間形状に成形を行なう成形品製造装置1であって、前記雄型10に、該雄型10と雌型30の組み付け方向に対して直交方向に延出された支持部材16を有し、該支持部材16の移動を規制する転がり軸受17・17を有し、該転がり軸受17・17が、前記支持部材16の前記組み付け方向に対して平行な方向への移動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄型と雌型とを組み合わせて構成される空間内に成形材料を導入して、該空間形状に成形を行なう成形品製造装置、特に薄肉成形品製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂やゴムを用いた薄肉成形品の代表的なものとしてコンドーム、手術用手袋等が知られている。例えば、コンドームの製造方法として、元型を天然ゴム・ラテックス原液への浸漬と乾燥を繰り返し、元型表面のゴム皮膜を所定の厚さとした後に、加硫を行なって製造する浸漬法等が広く知られている。
しかし、天然ゴム製品の原料となるフィールドラテックス中にはゴム成分以外にたんぱく質等の成分が混在しており、最終製品を使用した者に対して接触アレルギー反応を引き起こすことが知られている。そのため、原料に脱たんぱく処理を施したものが用いられているが、原料の原産地が異なると含有成分等も異なるため、適切な脱たんぱく処理に必要な工程が異なり、最終製品の品質に影響を与えることも知られている。
【0003】
近年、係る天然ゴム製品の代替物として、ポリウレタンエラストマー、シリコーンゴム等の製品が知られている。特にシリコーンゴムは、アレルギー反応を誘発せず、耐熱性、耐薬品性等の化学的安定性に優れ、さらには無色無臭であるため利用価値は高い。
例えば、シリコーンゴムを原料とする薄肉成形品の成形方法としては、シリコーンゴム組成物を金型キャビティに射出充填して薄肉成形品をプリフォームした後に、該プリフォーム品に加圧ガスを吹き込む、いわゆるブロー成形によって薄肉成形品を作成することにより、超薄肉(0.04mm程度)の成形品を得る技術が公知となっている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載のようなブロー成形による製造方法においては、設備が大掛かりになってしまう等の点で不利である。また、ブローガスの成分調整や、調圧に関しても複雑な管理が必要であり製品品質の安定性や生産性に欠ける。
さらに、成形品の前段階の状態を成形した後に、成形を行なう2段階の成形方法であるため、製造にかかる時間が多くなる。そして、長い袋状のものを成形する場合において、膜の厚みを均一にして、表面と裏面における平滑性を、人の触覚により平滑と感じられる程度にすることが困難である。
【特許文献1】特開2002−254499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、薄膜成形物を製造するための金型において、極めて精度の高い組み付けを行なうものである。特に、成形時に雄型が雌型に対して傾くことを高い精度で防止する成形品製造装置を提供するものである。さらに、成形時に雄型と雌型との組み付け位置のずれを、成形過程において防止する成形品製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、雄型と雌型とを組み合わせて構成される空間内に成形材料を導入して、該空間形状に成形を行なう成形品製造装置であって、前記雄型及び雌型はともに、組み付け方向に対して直行する平面に軸心を有する形状であり、前記雄型もしくは雌型のいずれか一方に、前記組み付け方向に対して直交する平面方向に付勢力を加えることにより、前記雄型と雌型との組み付け過程において、該雄型の軸心と雌型の軸心とを自動的に合わせる。
【0008】
請求項2においては、さらに、前記雄型の土台部分に前記付勢力を加える。
【0009】
請求項3においては、雄型と雌型とを組み合わせて構成される空間内に成形材料を導入して、該空間形状に成形を行なう成形品製造装置であって、前記雄型もしくは雄型のいずれか一方に、該雄型と雌型の組み付け方向に対して直交方向に延出された延出部を有し、該延出部の移動を規制する保持機構を有し、該保持機構が、前記延出部の前記組み付け方向に対して平行な方向への移動を規制する。
【0010】
請求項4においては、さらに、前記延出部材の移動を規制する部材が、規制方向と直交する方向への移動に対しての抵抗力の小さいものにより構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1の如く構成したので、成形時における型のずれを修正できる。
【0013】
請求項2の如く構成したので、組み付け過程に雄型及び雌型に発生するモーメントを低減できる。
【0014】
請求項3の如く構成したので、成形時に雄型が雌型に対して傾くことを防止することができ、成形時における型のずれを修正できる。
【0015】
請求項4の如く構成したので、成形時に雄型と雌型とを組み付ける位置のずれを防止でき、構成される空間形状の精度を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る成形品製造装置の実施の一形態である成形品製造装置1について、図面を参照して説明する。
なお、以下において、図1における矢印Aの指す方向(鉛直下方向)を組み付け方向と規定する。
【実施例1】
【0017】
成形品製造装置1は、雄型10と雌型30とを組み合わせて構成される空間内にシリコーンゴム2を導入して、該空間形状に成形を行なうものである。また、本実施例における成形方法においては、雄型10と雌型30とを組み付ける前にシリコーンゴム2を雄型10の凹部に導入し、組み付ける圧力により成形材料を前記空間形状に成形する、いわゆる「コンプレッション成形」を用いて説明する。
シリコーンゴム2は本発明に係る成形材料の実施の一形態であり、加熱することにより硬化する熱硬化性樹脂の一種である。シリコーンゴム2は硬化前の状態で成形品製造装置1内に供給される。
なお、本発明に係る成形材料は本実施例のシリコーンゴム2に限定されず、例えば、ポリウレタン、天然ゴム、等を広く含む。また、冷却により固化する熱可塑性樹脂を成形材料として利用する場合には、加熱処理を冷却処理に適宜変更することにより適用できる。
【0018】
また、本発明に係る成形品製造装置により成形される成形品は本実施例の薄肉、かつ、袋状物であるコンドームに限定されるものではない。
【0019】
成形品製造装置1は主として組み付け機構3、雄型10、雌型30、等を具備する。
【0020】
組み付け機構3は、雌型30を雄型10に組み付けるものであり、雄型10を雌型30の下方に固定する下部機構3bと、該雌型30を上方側より雄型10に組み付ける上部機構3aと、該上部機構3aを上下に移動させる移動機構(不図示)等からなる。
なお、本発明に係る雄型と雌型とを組み付ける、組み付け機構は、本実施例に係る上下方向を組み付け方向とする組み付け機構3に限らず、水平方向を組み付け方向とする組み付け機構でも構わない。本実施例においては、成形物への重力の影響等を鑑みて上下方向に組み付ける構成が好ましい。
【0021】
以下では、図1乃至図5を参照して雄型10について説明する。
雄型10は、雌型30との間に空間を形成し、該空間内にシリコーンゴム2を導入して、該空間形状に成形するものである。図1及び図3に示す如く、雄型10は主として雄部11、係合部12、支持部13等を具備する。
【0022】
図1に示す如く、雄部11は、該雄部11を支持する支持部13より係合部12を介して鉛直上方に突設されるものであり、平面視において(上方から見て)円形状であって、上下方向に延びる略円柱形状を有する部材である。雄部11の上端部には凹部14が形成され、該凹部14においてシリコーンゴム2を保持可能である。また、雄部11は、雌型30に具備される雌部31に沿う形状を有し、雄部11と雌部31との間に構成される空間形状が成形品の形状となる。
なお、本発明に係る実施の一形態である雄部11は、平面視において円形状を有し、全体において略円柱形状を有するものである。しかし、雄部の形状はこれに限定されるものではなく、例えば平面視において対称点又は線対称軸を有する形状、すなわち手袋形状や、直方体形状等とすることができる。
【0023】
図1及び図3に示す如く、係合部12の上端部は前記雄部11の下端部に固定され、該係合部12の下端部は、例えばボルト等の締結具によって支持部13の支持部材16に固定される。係合部12の外径は、雄部11の外径よりも大きく構成されており、雄部11にかかる負荷を受け止めやすくなっている。そして、雌型30との接触面積を大きくとり、係合部12により、雌型30と接触する軸受けを配置しやすくするとともに、安定した位置決めを行なうものである。係合部12の周囲にはガイド15・15・15・15が等間隔をおいて設けられ、雌型30に具備される爪部33と係合可能に構成される。ガイド15は、樹脂製のフレームを具備するリニアローラからなり、爪部33に形成される面と滑らかに係合する部材である。ガイド15を金型である雄型10及び雌型30より耐荷重性の低い樹脂製のフレームを具備するリニアローラにより構成することにより、雄型10と雌型30との組み付け位置が水平方向に大きくずれている時に、ガイド15から破損されることによって金型の損傷を防止することが可能である点で優れている。
また、図3及び図5に示す如く、係合部12の底面視中心部にはヒータ用穴12aが下端面より上方に向けて設けられ、該ヒータ用穴12aの近傍に温度センサ用穴12bが同じく下端面より上方に向けて設けられ、ヒータ用穴12aにはヒータ41が、温度センサ用穴12bには温度センサ42がそれぞれ固定可能に構成される。
【0024】
なお、本発明に係る実施の一形態である樹脂製のフレームを具備するリニアローラ等により構成されるガイド15は、係合部12の周囲に等間隔をおいて四つ設けられるが、その数・形態等は限定されるものではなく、例えば係合部12の周囲において、上方側から下方側へ徐々に向けて爪部33に形成される面の内径と同一になるような傾きを持たせた複数の面を形成する等、爪部33と係合可能な面を適宜形成する構成でもよい。
【0025】
支持部13は、係合部12、ひいては係合部12に固定される雄部11を支持する部材である。図2及び図3に示す如く、支持部13は主として支持部材16、転がり軸受17・17、上固定部材18、下固定部材19等を具備する。
【0026】
支持部材16は、雄型10と雌型30の組み付け方向に対して直交する水平方向に延出された延出部を構成する。
支持部材16は係合部材12を介して雄部11を支持する部材である。そして、支持部材16と係合部材12は、雄部11に一体的に固定されている。
図2及び図3に示す如く、支持部材16は平面視において(上方から見て)略ドーナツ状であり、係合部材12よりも外側に張り出した形状となっている。その外周部には等間隔をおいて平面部16a・16a・16a・16aが設けられている。平面部16a・16a・16a・16aは、支持部材16の外周部の上端から下端まで延びる面である。
支持部材16の上面中途部には中空円筒状の上凸部16bが上方に突設され、同じく下面中途部には中空円筒状の下凸部16cが下方に突設される。上凸部16bの内径は係合部12の下端部の外径と同一であり、係合部12の下端部が嵌合され、係合部12と支持部材16とがボルト等の締結具によって固定される。また、支持部材16の平面視中心部には、前記ヒータ用穴12a及び温度センサ用穴12bにそれぞれヒータ41及び温度センサ42を取り付け可能な大きさの孔が適宜開口される。下凸部16cの内径は上凸部16bの内径と同一である。
また、上凸部16bの周囲は段付き構造になっており、上凸部16bの外径より大きな外径、かつ、下凸部16cの外径と同一の外径を有する段部16dが設けられる。そして、該段部16d及び下凸部16cの外周部には転がり軸受17・17がそれぞれ外嵌される。
【0027】
転がり軸受17・17は、上下方向を軸として支持部材16を回転自在に支持するスラストベアリングであり、前述のように該支持部材16上下にそれぞれ外嵌される。転がり軸受17・17は、例えばスラストニードルベアリング等からなる。
なお、本発明に係る実施の一形態である転がり軸受17・17は、前記スラストニードルベアリングに限定されず、ボールベアリング、流体軸受、無給油軸受、オイル、潤滑パウダー又は、下方より上方に向けてエアを吹き付けて支持部13を上方へ押圧して該支持部13の水平状態を保持する構成等でもよい。すなわち、雄部11の姿勢を維持しながら、微少な水平方向の位置調整可能なものであればよく、支持部材16の上下方向の移動を規制するものであればよい。
支持部材16の水平方向に延出された部位において、上下方向の動きを規制し、水平方向への移動を可能とするので、雄部11の姿勢維持に必要となる力を支持部材16の延出部において分散でき、耐荷重性を向上できる。
【0028】
図2及び図3に示す如く、上固定部材18は平面視において(上方から見て)ドーナツ状の部材であり、中央部に形成される孔の内径は前記転がり軸受17の内径と同一であり、支持部材16の上凸部16bの外径より大きく構成される。すなわち図3及び図4に示す如く支持部13を組み立てたときには、該孔の内径は前記上凸部16bの外径より大きく、該上凸部16bの外郭と上固定部材18との間には間隙が設けられる。
【0029】
図2及び図3に示す如く、下固定部材19は平面視においてドーナツ状の部材であり、その上面外周部には中空円筒状の上凸部19aが上方に突設され、その下端面には組み付け機構の下部機構3bに固定可能な下凸部19bが下方に突設される。上凸部19aの内径は転がり軸受17の外径より大きく構成される。すなわち図3及び図4に示す如く支持部13を組み立てたときには、該下固定部材19と転がり軸受17等との間には間隙が設けられる。また、上凸部19aの上下中途部であって、前記支持部材16の平面部16a・16a・16a・16aと対向する部分に略直方体形状の孔19c・19c・19c・19cが設けられ、該孔19c・19c・19c・19cには位置決め機構20・20・20・20がそれぞれ具備される。
以上の如く構成される支持部13は、図2に示す如く、上固定部材18と下固定部材19とをボルト40・40・40・40によって挟み込むことによって、転がり軸受17・17、及び該転がり軸受17・17によって挟持される支持部材16を上固定部材18及び下固定部材19に対して回転自在に支持されるものである。
【0030】
以下では、図2及び図4を参照して位置決め機構20について説明する。
図2及び図4に示す如く、位置決め機構20はプッシャー21、ブロック22、スプリング23・23、段付きボルト24・24からなる。プッシャー21は直方体形状であり、その一面において前記孔19cと同一形状を有する。ブロック22は直方体形状であり、その一面において前記孔19cと同一形状を有し、該一面の反対面の上下方向中途部にボルト孔22a・22aが設けられ、平面視において該一面の中途部に上面より下面まで貫通する孔22bが設けられる。
プッシャー21とブロック22とは前記孔19cと同一形状を有する一面において互いに当接し、該プッシャー21の前記一面と反対側の一面おいて前記平面部16aと当接する。
【0031】
前記ボルト孔22a・22aのそれぞれにスプリング23・23が挿入され、プッシャー21と当接する一面の反対側の面よりボルト24・24が螺合される。
ボルト24・24を螺合することによって、ボルト孔22a・22a内においてボルト24・24とプッシャー21との間にスプリング23・23が押し縮められた状態で収められる。すなわち、スプリング23・23はプッシャー21を平面部16a側に向けて付勢するものである。
【0032】
以下では、図1乃至図5を参照して雌型30について説明する。
雌型30は、雄型10との間に空間を形成し、該空間内にシリコーンゴム2を導入して、該空間形状に成形するものである。図1及び図3に示す如く雌型30は、主として雌部31、爪部33、等を具備する。
【0033】
図1及び図3に示す如く、雌部31は雌型30を上部機構3aに固定するための部材であり、その上端部において、該上部機構3aに固定するための略円柱状の凸部が上方に向けて突設される。
また、図3に示す如く、雌部31の上端部の前記凸部の平面視中心部にはヒータ用穴31bが上端面より下方に向けて設けられ、該ヒータ用穴31bの近傍に温度センサ用穴31cが同じく上端面より下方に向けて設けられ、ヒータ用穴31bにはヒータ43が、温度センサ用穴31cには温度センサ44がそれぞれ固定可能に構成される。
図3に示す如く、雌部31の内方側においては、前記雄部11の形状に沿う形状に形成され、雌部31はその下端面において前記係合部12の上端面と当接される。そして、雌部31の下端部より爪部33が下方に延設される。
【0034】
図3及び図5に示す如く、爪部33は、その内方側において前記係合部12に具備されるガイド15・15・15・15と係合する面であるガイド面35・35・35・35を具備する。ガイド面35・35・35・35は爪部33の上下中途部より下方において内側に突設されて設けられる上下方向に延びる平面であり、ガイド面35・35・35・35の上下方向の長さは、前記ガイド15・15・15・15の上下方向の長さと略同一である。
また、爪部33においてガイド面35・35・35・35の上方に空間36が形成され、該空間36は雄型10と雌型30とが組み付けられる際に、シリコーンゴム2の量が多い場合に、該シリコーンゴム2が逃げる空間とされることにより、金型の損傷、装置の故障等を防止するものである。
【0035】
また、本実施例に係る成形品製造装置1の温度管理については、図3に示す如く、ヒータ41、及びヒータ43の近傍には雄型10内の温度を検出する手段である温度センサ42、及び雌型30内の温度を検出する手段である温度センサ44がそれぞれ配置されて、該温度センサ42・44により検出される温度に基づいて前記ヒータ41、及びヒータ43の出力を適宜変更することによって、シリコーンゴム2への最適な加熱を行なうものである。これにより、熱膨張などによる影響を軽減して、成形品を安定して製造可能である。
なお、本発明に係る成形品製造装置への加熱の実施形態は、上述のものに限らず、雄型10及び雌型30の温度を略均一に保ち熱膨張による影響を軽減する構成であれば適用可能である。
【0036】
以上の如く構成される雄型10の支持部13において、転がり軸受17・17を具備するので、雄型10に対して組み付け方向と傾く方向の外力が加えられた際に、転がり軸受17・17により滑らかに支持部13を回転させて前記外力を前記組み付け方向と水平に直行する方向の力に変えることができるので、雄型10の姿勢を直立に保持できる、すなわち雄型10を上下方向(雌型30との組み付け方向)に対して平行に保持することが可能である。
【0037】
また、以上の如く構成される雄型10及び雌型30において、該雄型10と雌型30とを組み付ける際に、図4に示す如く、雄型10の支持部13において支持部材16の周囲に位置決め機構20・20・20・20を具備するとともに、図5に示す如く、雌型30の前記ガイド面35・35・35・35を雄型10の前記ガイド15・15・15・15に沿わせて組み付けることによって、支持部13の水平位置に対して前記位置決め調節機構20・20・20・20において微調整が行なわれるので、該雄型10と雌型30との水平方向における相対位置を調節可能にしている。
【0038】
以下では、以上の如く構成される成形品製造装置1により成形品を成形する製造工程について説明する。本実施例の製造工程は下記の(1)から(6)の如くである。
(1)シリコーンゴム2(成形材料)を凹部14に供給する。
(2)組み付け機構3を作動させて上部機構3a、すなわち雌型30を下降させ、該雌型30を雄型10に組み付ける。
(3)爪部33が係合部12に当接する、すなわちガイド面35・35・35・35がガイド15・15・15・15とそれぞれ当接し、雌型30に対して雄型10がずれている場合は位置決め機構20により組み付け位置が補正される。
(4)凸部34が凹部14に組み付けられ、シリコーンゴム2が雄部11と雌部31の内方側との間の空間に流れ込み、該空間形状に成形される。
(5)ヒータ41及びヒータ43によりシリコーンゴム2を加熱して、該シリコーンゴム2を前記空間形状に硬化させる。
(6)組み付け機構3を作動させて上部機構3a、すなわち雌型30を上昇させ、組み付けを解除し、成形品を取り出す。
【0039】
以上の如く、本発明に係る成形品製造装置の実施の一形態である成形品製造装置1は、
雄型10と雌型30とを組み合わせて構成される空間内にシリコーンゴム2を導入して、該空間形状に成形を行なう成形品製造装置1であって、
前記雄型10及び雌型30はともに、平面視において略円形状、つまり、組み付け方向に対して直行する平面に軸心を有する形状であり、
前記雄型10に、前記組み付け方向に対して直交する平面方向に付勢力を加える位置決め機構20を具備することにより、
前記雄型10と雌型30との組み付け過程において、該雄型10の軸心と雌型30の軸心とを自動的に合わせるものである。
このように構成することにより、成形時における型のずれを修正できる。
【0040】
また、本発明に係る雄型10の土台部分である支持部13において、前記付勢力を加える位置決め機構20により、支持部材16を平面方向に付勢するものである。
このように構成することにより、組み付け過程に雄型10及び雌型30に発生するモーメントを低減できる。
【0041】
また、以上の如く、本発明に係る成形品製造装置の実施の一形態である成形品製造装置1は、
雄型10と雌型30とを組み合わせて構成される空間内にシリコーンゴム2を導入して、該空間形状に成形を行なう成形品製造装置1であって、
前記雄型10に、該雄型10と雌型30の組み付け方向に対して直交方向に延出された延出部である支持部材16を有し、該支持部材16の移動を規制する保持機構である転がり軸受17・17を有し、該転がり軸受17・17が、前記支持部材16の前記組み付け方向に対して平行な方向への移動を規制するものである。
このように構成することにより、成形時に雄型10が雌型30に対して傾くことを防止することができ、成形時における型のずれを修正できる。
【0042】
また、本発明に係る延出部の移動を規制する保持機構の実施の一形態である転がり軸受17・17は、
規制方向と直交する方向への移動に対しての抵抗力の小さいスラストニードルベアリング等により構成されるものである。
このように構成することにより、成形時に雄型10と雌型30とを組み付ける位置のずれを防止でき、構成される空間形状の精度を保つことができる。
【実施例2】
【0043】
以下に、本発明に係る成形品製造装置の別実施例として、成形方法を「インジェクション成形」とした場合における成形品製造装置1について、図面を参照して説明する。
「インジェクション成形」とは、雄型10と雌型30とを組み付けた後に、該雄型10と雌型30との間に構成される空間内にシリコーンゴム2(成形材料)を導入して、該空間形状に成形を行なうものである。
【0044】
「インジェクション成形」に係る成形品製造装置と、前記「コンプレッション成形」に係る成形品製造装置との相違点は、成形材料の導入方法、及び、成形材料の導入タイミングであり、本実施例においては、係る相違点に着目して説明する。
すなわち、図6に示す如く、雌型30に具備される雌部31の凹部31aにおいては、凹部34aが上方に向けて設けられ、雄型10に具備される雄部11の上端部においては、該凹部34aに沿う形状を有する凸部14aが上方に向けて設けられる。さらに、雌部31において、該雌部31を側方より貫通する成形材料導入管50と、前記凹部34aの中央部に射出口51と、が設けられ、シリコーンゴム2が該成形材料導入管50を通って射出口51より射出される構成である。
そして、雄型10と雌型30とを組み付けた後に、該射出口51よりシリコーンゴム2を射出し、ヒータ41・43により加熱してシリコーンゴム2を硬化させる構成である。
【0045】
以上の如く構成される凹部34a及び凸部14aにより、雄型10と雌型30とを組み付けた際に、該雄型10と雌型30との間に、上方に向かって凸形状の空間形状を構成するので、射出口51(空間形状の上端側)より導入されるシリコーンゴム2の該空間形状に対する流れ込みが良くなり、成形品の厚さを均一に保ちやすくなる。
【0046】
以下では、以上の如く構成される成形品製造装置1により成形品を成形する製造工程について説明する。本実施例の製造工程は下記の(1)から(5)の如くである。
(1)組み付け機構3を作動させて雌型30を下降させ、該雌型30を雄型10に組み付ける。
(2)シリコーンゴム2(成形材料)を射出口51より射出する。
(3)シリコーンゴム2が雄部11と雌部31の内方側との間の空間に流れ込み、該空間形状に成形される。
(4)ヒータ41及びヒータ43によりシリコーンゴム2を加熱して、該シリコーンゴム2を前記空間形状に硬化させる。
(5)組み付け機構3を作動させて雌型30を上昇させ、組み付けを解除し、成形品を取り出す。
このように、成形型の位置を高い精度であわせることができるので、インジェクション成形においても、薄い袋状であって長い成形物を成形することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る成形品製造装置の実施の一形態を示す側面図。
【図2】本発明に係る成形品製造装置に具備される支持部の実施の一形態を示す分解斜視図。
【図3】本発明に係る成形品製造装置の実施の一形態を示す側面断面図。
【図4】図1におけるB−B’線断面図。
【図5】図3におけるC−C’線断面図。
【図6】本発明に係る成形品製造装置の別実施例を示す側面図。
【符号の説明】
【0048】
1 成形品製造装置
2 シリコーンゴム(成形材料)
10 雄型
12 係合部
16 支持部材(延出部)
17 転がり軸受(保持機構)
20 位置決め機構
30 雌型
33 爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型と雌型とを組み合わせて構成される空間内に成形材料を導入して、該空間形状に成形を行なう成形品製造装置であって、
前記雄型及び雌型はともに、組み付け方向に対して直行する平面に軸心を有する形状であり、
前記雄型もしくは雌型のいずれか一方に、前記組み付け方向に対して直交する平面方向に付勢力を加えることにより、
前記雄型と雌型との組み付け過程において、該雄型の軸心と雌型の軸心とを自動的に合わせる、
ことを特徴とする成形品製造装置。
【請求項2】
前記雄型の土台部分に前記付勢力を加える、
ことを特徴とする請求項1に記載の成形品製造装置。
【請求項3】
雄型と雌型とを組み合わせて構成される空間内に成形材料を導入して、該空間形状に成形を行なう成形品製造装置であって、
前記雄型もしくは雄型のいずれか一方に、該雄型と雌型の組み付け方向に対して直交方向に延出された延出部を有し、
該延出部の移動を規制する保持機構を有し、
該保持機構が、前記延出部の前記組み付け方向に対して平行な方向への移動を規制する、
ことを特徴とする成形品製造装置。
【請求項4】
前記延出部材の移動を規制する部材が、規制方向と直交する方向への移動に対しての抵抗力の小さいものにより構成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の成形品製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−284857(P2008−284857A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134699(P2007−134699)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000107284)ジェクス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】