説明

成形天井板切断装置

【課題】 成形天井板の基材を切断する際に、成形天井板の側板部において切断角度を任意に調整することができる成形天井板切断装置を提供する。
【解決手段】 基材と表皮材とを有する成形天井板21を支持する支持台11に、成形天井板21の天板部を受けるための天板受け部11aと、天板部の左右両側に連続する側板部を受けるための側板受け部11bとを設ける。支持台11の上方には、支持台11上に支持された成形天井板21の基材の端部を左右方向に切断するための切断刃15を対応配置する。切断刃15による天板受け部11a上の切断域を中心軸線Aとして、支持台11の前後方向における角度を調整するための角度調整機構18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車等の車両の成形天井板のように、基材上に表皮材を重合させてなるワークにおいて、基材をその端縁に沿って所定幅にわたり切断して除去する場合等に使用する成形天井板切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両において車室内の天井に装着される成形天井板は、車両の前後長が長い場合、前後に2分割状態でそれぞれ成形して、それらの対向端を端面処理した状態で接合させることがある。この場合、図5に示すように成形天井板21は、ウレタン等の比較的硬質の材料よりなるシート状の基材22に、ポリエステル等のファブリックよりなる表皮材23を重合した状態で、所定形状に成形されている。そして、図6(a)及び(b)に示すように、この成形天井板21の基材22をその端縁に沿って所定幅にわたり切断除去して、表皮材23の端部に突出部23aを形成する。その後、図6(c)に示すように、表皮材23の突出部23aを基材22の端面が内包されるように折り返して、接着剤により基材22に接着固定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、図5に示すように、前記成形天井板21が、中央の天板部21aと、その左右両側に連続する傾斜状の側板部21bとから構成されている場合において、成形天井板21の基材22を切断する際に、その切断線L1の位置を変更する場合があった。すなわち、車両に対する組み付け上の問題等のために、成形天井板21の側板部21bにおいて、切断線L1の角度を例えば図5に斜線L1a,L1bで示すように角度変更する場合があった。
【0004】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、成形天井板の基材を切断する際に、その成形天井板の側板部において切断角度を任意に調整することができる成形天井板切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基材と表皮材とを有する成形天井板の天板部を受けるための天板受け部と、前記天板部の左右両側に連続する側板部を受けるための側板受け部とが設けられた支持台と、その支持台に対応配置され、支持台上に支持された成形天井板の基材の端部を左右方向に切断する切断刃とを備えた成形天井板切断装置において、前記支持台の前後方向における角度を調整するための角度調整手段を設けたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記角度調整手段は、前記支持台を前記切断刃による前記天板受け部上の切断域を中心にして角度を調整することを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記支持台が、その天板受け部及び側板受け部に、前記切断刃の刃先を逃がすための逃げ溝を有し、前記角度調整手段が、逃げ溝付近を中心にして支持台の角度を調整することを特徴とするものである。
【0008】
請求項4に記載の発明においては、請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の発明において、前記角度調整手段は、支持台を支持するためのジャッキよりなることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5に記載の発明においては、請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載の発明において、前記支持台は、その前後方向において分割されるとともに、分割された後端部分の前後位置が調節可能であることを特徴とするものである。
【0010】
(作用)
請求項1に記載の発明においては、成形天井板の基材を切断刃により切断線に沿って切断する際に、成形天井板を支持する支持台の前後方向の角度を回動調整する。これにより、成形天井板の側板部における切断角度を任意に設定変更することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明においては、支持台を切断刃による天板受け部上の切断域を中心にして回動調節すれば、切断位置がほとんど変更されることなく、切断角度を調節できる。
【0012】
請求項2に記載の発明においては、成形天井板の天板部及び両側板部と対応する凹状の刃先を備えた切断刃により、成形天井板の天板部及び両側板部を一度に切断することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明においては、角度調整手段をジャッキによって構成したことにより、構成が簡単である。
請求項4に記載の発明においては、支持台の分割された後端部分を前後に移動させることにより、長さの異なる成形天井板に対応できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、この発明によれば、成形天井板の基材を切断する際に、その成形天井板の側板部の切断角度を任意に調整することができて、組み付け時の要求等に対応でき、高精度組み付けを達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、この発明の一実施形態を、図1〜図4に基づいて説明する。なお、この実施形態においては、成形天井板及びその関連構成については、図5及び図6に示す構成符号と同一の符号を引用して、それらの詳細な説明は省略する。
【0016】
図1及び図2に示すように、この成形天井板切断装置には、基材22上に表皮材23を重合させてなる成形天井板21を支持するための支持台11が装備されている。この支持台11は、前端部分を形成する第1支持台11A、中間部分を形成する第2支持台11B及び後端部分を形成する第3支持台11Cの3つに分割して構成されている。第1支持台11A及び第2支持台11Bは、基台12の上面に併設して固定されている。第3支持台11Cは、基台12の上面に第1支持台11A及び第2支持台11Bと接離する方向へ移動可能に支持されている。基台12には移動用モータ13が配設され、この移動用モータ13により送りネジ13a及びナット13bを介して第3支持台11Cを前後方向の例えば2つの位置に移動させて、前後方向の長さが異なった2種類の成形天井板21に対応して、支持台11の全体の長さを調整するようになっている。なお、移動用モータ13は、第3支持台11Cの前後位置の微調整機能をも有している。
【0017】
前記支持台11の第1〜第3支持台11A〜11Cは、成形天井板21の天板部21aを受けるための天板受け部11aと、成形天井板21の側板部21bを受けるための側板受け部11bとをそれぞれ備えている。第1支持台11A及び第3支持台11Cの天板受け部11aの端部上面には複数の位置決め突起14が突設され、成形天井板21の両端に形成された複数の位置決め孔24をこれらの位置決め突起14に係合させることにより、成形天井板21が支持台11上の所定位置に位置決めされる。
【0018】
図1〜図3に示すように、前記第1支持台11Aの一端上方には切断刃15が昇降可能に配設され、その切断刃15の下端には成形天井板21の天板部21a及び両側板部21bに対応する凹状の刃先15aが形成されている。図1〜図3に示すように、前記第1支持台11Aの天板受け部11a及び側板受け部11bには、切断刃15の刃先15aを逃がすための断面ほぼV字状の逃げ溝17が形成されている。
【0019】
そして、支持台11上に成形天井板21を表皮材23が下側になるように支持した状態で、この切断刃15が上方の退避位置から下方の切断位置に下降移動されたとき、刃先15aにより成形天井板21の基材22がせん断にて同時に切断される。この場合、表皮材23は柔軟性があるため、切断刃15とともに逃げ溝17内に逃げて、そのせん断が避けられる。
【0020】
前記切断刃15の前後両側に位置するように、第1支持台11Aの一端上方には一対のワーク押え16が昇降可能に配設され、それらのワーク押え16の下端には成形天井板21の天板部21a及び両側板部21bに対応する凹状の押え部16aが形成されている。そして、切断刃15による切断動作に先立って、これらのワーク押え16が上方の待機位置から下方の押え位置に下降移動されたとき、押え部16aにより切断刃15の刃先15aと対応する成形天井板21の切断部分が両側近傍において第1支持台11A上に押圧される。
【0021】
前記基台12の下部には、支持台11の前後方向における角度を調整するための角度調整手段としての角度調整機構18が装設されている。この角度調整機構18は、基台12の下部に前後方向へ間隔をおいて配設され、基台12の脚を兼用する一対のジャッキ19から構成されている。従って、支持台11は基台12を介してジャッキ19により支持されている。そして、これらのジャッキ19にて基台12の前後2位置における高さが変更されることにより、支持台11の前後方向の傾き角度が天板受け部11a上の切断域の逃げ溝17付近の軸線Aを中心に回動調整される。これにより、図4に示すように、切断刃15による垂直方向の切断面に対する支持台11上の成形天井板21の対向角度が変更されて、切断刃15による基材22上の切断線L1の位置が、図5に斜線L1a,L1bで示すように、成形天井板21の側板部21bにおいて任意に変更される。
【0022】
次に、前記のように構成された成形天井板切断装置の動作を説明する。
さて、この切断装置の運転開始前には、ワークとしての成形天井板21の前後方向の長さに応じて、移動用モータ13により第3支持台11Cが前後方向に位置変更されて、支持台11の全体の長さが調整される。また、成形天井板21の側板部21bにおける切断線L1の位置が所望の角度状態となるように、ジャッキ19により基台12の前後2位置における高さが変更されて、支持台11の前後方向の傾き角度が天板受け部11a上の切断域の逃げ溝17付近の軸線Aを中心に回動調整される。
【0023】
この状態で、支持台11上に成形天井板21を支持して、位置決め孔24と位置決め突起14との係合により所定位置に位置決め配置する。その後、切断装置が起動されると、図3に示すように、両ワーク押え16が上方の待機位置から下方の押え位置に下降移動されて、切断刃15の刃先15aと対応する成形天井板21の切断部分が支持台11に対して押圧される。さらに、切断刃15が上方の退避位置から下方の切断位置に下降移動され、刃先15aにより成形天井板21の基材22がせん断にて切断されて、図6(b)に示すように、表皮材23に突出部23aが形成される。
【0024】
この場合、支持台11の前後方向の傾き角度が予め回動調整されているため、成形天井板21の側板部21bにおいては、図5に示すように、切断線L1が斜線L1a,L1bのように所望の角度状態となるように切断動作が行われる。従って、例えば、車両に対する組み付け上の要求に対応できる。
【0025】
以上のように、この実施形態においては、以下の効果を発揮する。
・ 成形天井板21の側板部21bを所望の角度に切断できるため、車両に対する組み付け上の要求に対応して、組み付け精度等を向上できる。
【0026】
・ 支持台11の角度を調整するための手段として、一対のジャッキ19を設けただけであるので、角度調整をモータ等によって行うように構成した場合等と異なり、構成が簡単である。
【0027】
・ 支持台11の第3支持台11Cの前後位置を調整できるため、長さの異なる複数種類の成形天井板21の切断に対応できる。
・ また、第3支持台11Cの前後位置を微調整できるため、成形天井板21の所要の位置に対して正確な切断加工を施すことができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0028】
・ 前記実施形態において、角度調整機構18としてのジャッキ19に代えて、基台12上にスペーサを介して第2支持台11B及び第3支持台11Cを配置し、スペーサを高さの異なったものと変更することにより、支持台11全体の前後方向の傾斜角度を調整するように構成すること。
【0029】
・ 前記実施形態において、第3支持台11Cを3つ以上の複数の位置に移動させて、前後方向の長さが異なった3種類以上の複数種の成形天井板21に適用できるように構成すること。
【0030】
・ 前記実施形態において、逃げ溝17を断面ほぼU字状等の異なった形状に形成すること。
・ 角度調整手段としての角度調整機構18が支持台11を切断刃15による天板受け部11a上の切断域を以外のところ、例えば支持台11の下端部の所要位置を中心にして角度を調整するように構成すること。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一実施形態の成形天井板切断装置を示す要部分解斜視図。
【図2】図1の成形天井板切断装置の側面図。
【図3】同じく成形天井板切断装置の部分拡大断面図。
【図4】成形天井板の異なった切断方法を説明するための側面図。
【図5】車両の成形天井板を示す斜視図。
【図6】(a)は図5の6−6線における部分拡大断面図。(b)は(a)の状態から基材の一部を切断除去した状態を示す部分断面図。(c)は(b)の状態から表皮材の突出部を折り返した状態を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0032】
11…支持台、11A…第1支持台、11B…第2支持台、11C…第3支持台、11a…天板受け部、11b…側板受け部、12…基台、13…移動用モータ、15…切断刃、15a…刃先、17…逃げ溝、18…角度調整手段としての角度調整機構、19…ジャッキ、21…成形天井板、21a…天板部、21b…側板部、22…基材、23…表皮材、L1…切断線、A…中心軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と表皮材とを有する成形天井板の天板部を受けるための天板受け部と、前記天板部の左右両側に連続する側板部を受けるための側板受け部とが設けられた支持台と、その支持台に対応配置され、支持台上に支持された成形天井板の基材の端部を左右方向に切断する切断刃とを備えた成形天井板切断装置において、
前記支持台の前後方向における角度を調整するための角度調整手段を設けたことを特徴とする成形天井板切断装置。
【請求項2】
前記角度調整手段は、前記支持台を前記切断刃による前記天板受け部上の切断域を中心にして角度を調整することを特徴とする請求項1に記載の成形天井板切断装置。
【請求項3】
前記支持台は、その天板受け部及び側板受け部に、前記切断刃の刃先を逃がすための逃げ溝を有し、前記角度調整手段は、逃げ溝付近を中心にして支持台の角度を調整することを特徴とする請求項2に記載の成形天井板切断装置。
【請求項4】
前記角度調整手段は、支持台を支持するためのジャッキよりなることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の成形天井板切断装置。
【請求項5】
前記支持台は、その前後方向において分割されるとともに、分割された後端の部分の前後位置が調節可能であることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載の成形天井板切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−123083(P2006−123083A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314649(P2004−314649)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】