成膜装置および成膜方法
【課題】基板に対して高品位に成膜を行なうことができる噴霧法を利用した連続式の成膜装置を提供する。
【解決手段】成膜装置は、成膜が行なわれる成膜室10と、成膜材料200を霧化させるスプレーノズル25と、成膜室10を横断するように設けられた搬送経路と、搬送経路上において基板100を移動させる搬送機構とを備える。成膜室10を規定する壁部には、スプレーノズル25にて霧化された成膜材料200を成膜室10に導入するとともに、導入した成膜材料200を成膜室10において搬送経路側に向けて噴霧するための噴霧口23aが設けられる。成膜室10を規定する壁部のうちの、搬送経路から見て噴霧口23a側に位置する部分には、第1排気口24aが設けられる。成膜室10を規定する壁部のうちの、搬送経路から見て噴霧口23a側とは反対側に位置する部分には、第2排気口8aが設けられる。
【解決手段】成膜装置は、成膜が行なわれる成膜室10と、成膜材料200を霧化させるスプレーノズル25と、成膜室10を横断するように設けられた搬送経路と、搬送経路上において基板100を移動させる搬送機構とを備える。成膜室10を規定する壁部には、スプレーノズル25にて霧化された成膜材料200を成膜室10に導入するとともに、導入した成膜材料200を成膜室10において搬送経路側に向けて噴霧するための噴霧口23aが設けられる。成膜室10を規定する壁部のうちの、搬送経路から見て噴霧口23a側に位置する部分には、第1排気口24aが設けられる。成膜室10を規定する壁部のうちの、搬送経路から見て噴霧口23a側とは反対側に位置する部分には、第2排気口8aが設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置および成膜方法に関し、より特定的には、霧化させた成膜材料を基板に向けて噴霧することで成膜を行なう成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、ディスプレイおよび太陽電池等の製造の分野においては、基板等の被成膜対象物に対して各種の薄膜を成膜することが行なわれている。かかる薄膜は、その種類に応じて、物理気相成長法としてのスパッタリング法や蒸着法等、化学気相成長法としてのプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法や熱CVD法等、液相成長法としての塗布法やゾル・ゲル法、メッキ法等の中から最適な成膜方法が選択されて成膜される。
【0003】
たとえば、ディスプレイや太陽電池等の製造に際しては、ガラス基板等の透明基板上に薄膜としての透明導電膜が成膜されることが一般的である。このような透明導電膜としては、STO(チタン酸ストロンチウム)およびITO(スズドープ酸化インジウム)等の金属酸化物からなるものが主流である。この種の透明導電膜は、一般に、スパッタリング法、蒸着法、有機金属化合物を用いた有機金属化学気相成長法等を利用してその成膜が行なわれる。
【0004】
スパッタリング法および蒸着法においては、真空プロセスにて成膜が行なわれるため、真空状態を作り出してこれを維持する設備が必要になる。有機金属化学気相成長法においては、原料として用いる有機金属化合物が爆発性および毒性を有しているため、気密性の高い設備を用いることが必要になるとともに、特殊な排ガス処理装置を付設すること等も必要になる。したがって、これら成膜方法を採用した場合には、高度な安全設計を行なうことが必要になるのみならず、成膜装置の設置コストおよびランニングコストが嵩んでしまうという問題があった。
【0005】
そこで、近年、これらに代替する成膜方法として、スプレーCVD法およびミストCVD法等の噴霧法が提案されている。スプレーCVD法およびミストCVD法は、いずれも原料金属を溶質として含む溶液を霧化機構を用いて霧化し、これを基板に向けて噴霧することによって成膜を行なう成膜方法である。
【0006】
噴霧法においては、大気雰囲気下で成膜を行なうことができるとともに、有機金属化合物のような危険性の高い物質を用いる必要もないため、成膜装置の設置コストやランニングコストを大幅に低減することができ、安価に成膜を行なうことができる。
【0007】
また、噴霧法を採用して成膜を行なう場合には、基板を搬送しつつ成膜を行なう連続式の処理が可能になる。したがって、このような連続式の処理を採用することとすれば、量産に適したものとすることができ、さらに生産性よく安価に成膜が行なえることになる。
【0008】
ここで、噴霧法を利用した連続式の成膜装置が開示された文献として、たとえば特開昭61−69962号公報(特許文献1)や特開平5−214543号公報(特許文献2)等がある。
【0009】
上記特許文献1には、成膜室を横断するように搬送経路を構成することにより、基板の被成膜面を下方に向けた状態で基板を搬送させながら当該基板に対して下方から霧化させた成膜材料を基板の被成膜面に向けて緩やかに噴霧することで成膜を行なう成膜装置が開示されている。当該成膜装置においては、成膜室を規定する壁面のうちの搬送経路の下方に位置する部分に、霧化させた成膜材料を成膜室に導入するための噴霧口と、成膜室に導入された霧化された成膜材料のうちの余剰分についてこれを排気するための排気口とが設けられている。
【0010】
また、上記特許文献2には、上記特許文献1に開示の成膜装置に近似の構成の成膜装置が開示されており、基板の表裏面のいずれにも同時に成膜を行なうために、成膜室を規定する壁面のうちの搬送経路の上方に位置する部分および下方に位置する部分の双方にそれぞれ噴霧口および排気口が一対ずつ設けられてなる成膜装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭61−69962号公報
【特許文献2】特開平5−214543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、上記特許文献1および2に開示の成膜装置にあっては、複数の基板の搬送方向に沿った端部同士が互いに接触した状態となるようにし、並べて配置されたこれら複数の基板の縁を支持枠によって支持しつつプッシャ等を用いて押し出すことにより、これら複数の基板が搬送されるように構成している。しかしながら、このような方法で基板の搬送を行なった場合には、基板同士が接触することになり、また基板の縁と支持枠とが擦れることにもなるため、基板が傷付いたり割れや欠けが発生したりするおそれがあり、歩留まりの悪化が懸念される。
【0013】
これを解決するためには、コンベヤ等の搬送機構を用いて複数の基板をそれぞれ所定の間隔をあけて搬送することが考えられる。しかしながら、このように複数の基板をそれぞれ所定の間隔をあけて搬送することとした場合であって、かつ基板の一方の主面のみに成膜を行なうこととした場合には、搬送される基板間に形成される隙間を介して霧化された成膜材料が基板の他方の主面側に回り込んでしまい、成膜すべきでない当該他方の主面にまで成膜が行なわれてしまうといった問題や、霧化された成膜材料が当該隙間部分においてコンベヤ等の搬送機構に付着してしまうといった問題が生じてしまう。
【0014】
そのため、この点について何ら対策を行なわなかった場合には、成膜後における基板の品位が低下し、結果として製品の性能低下を招いてしまうばかりでなく、成膜装置を頻繁に清掃する等、メンテナンスに多大のコストを要することとなってしまう。
【0015】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、基板に対して高品位に成膜を行なうことができる、噴霧法を利用した連続式の成膜装置および成膜方法を提供することを目的とする。また、本発明は、メンテナンス等の頻度が減少することによって安価に成膜を行なうことができる、噴霧法を利用した連続式の成膜装置および成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に基づく成膜装置は、霧化させた成膜材料を基板に向けて噴霧することで成膜を行なうものであって、成膜が行なわれる成膜室と、成膜材料を霧化させる霧化機構と、上記成膜室を横断するように設けられた搬送経路と、上記搬送経路上において基板を移動させる搬送機構とを備えている。上記成膜室を規定する壁部には、上記霧化機構にて霧化された成膜材料を上記成膜室に導入するとともに、導入した成膜材料を上記成膜室において上記搬送経路側に向けて噴霧するための噴霧口が設けられている。上記成膜室を規定する壁部のうちの、上記搬送経路から見て上記噴霧口側に位置する部分には、第1排気口が設けられている。上記成膜室を規定する壁部のうちの、上記搬送経路から見て上記噴霧口側とは反対側に位置する部分には、第2排気口が設けられている。
【0017】
上記本発明に基づく成膜装置にあっては、上記第2排気口が、上記搬送経路を挟んで上記噴霧口に正対する位置に設けられていることが好ましい。
【0018】
上記本発明に基づく成膜装置にあっては、上記第2排気口の開口面が、上記霧化機構によって霧化された成膜材料が基板によって遮られることなく上記第2排気口側の壁部にまで到達する場合において当該成膜材料が噴霧されることとなる範囲を包含する大きさおよび形状を有していることが好ましい。
【0019】
本発明に基づく成膜方法は、成膜室を横断するように設けられた搬送経路上において複数の基板を順次移動させつつ、霧化機構にて霧化させた成膜材料を上記成膜室を規定する壁部に設けられた噴霧口を介して上記成膜室に導入して上記搬送経路側に向けて噴霧することにより、上記成膜室を通過する上記複数の基板のそれぞれに対して順次成膜を行なうものであって、上記複数の基板のそれぞれに対して順次成膜を行なうに際して、上記成膜室を規定する壁部のうちの、上記搬送経路から見て上記噴霧口側に位置する部分に設けられた第1排気口を介して排気を行ないつつ、上記成膜室を規定する壁部のうちの、上記搬送経路から見て上記噴霧口側とは反対側に位置する部分に設けられた第2排気口を介して排気を行なうことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基板に対して高品位に成膜を行なうことができる、噴霧法を利用した連続式の成膜装置および成膜方法とすることができる。また、本発明によれば、メンテナンス等の頻度が減少することによって安価に成膜を行なうことができる、噴霧法を利用した連続式の成膜装置および成膜方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態における成膜装置の模式断面図である。
【図2】図1に示す噴霧ボックスに基板が投入された状態を示す、噴霧ボックス近傍の拡大模式断面図である。
【図3】図2に示すIII−III線に沿った模式断面図である。
【図4】図1に示す噴霧ボックスに基板が投入されていない状態を示す、噴霧ボックス近傍の拡大模式断面図である。
【図5】図4に示すV−V線に沿った模式断面図である。
【図6】実施例1に係る成膜装置において使用したスプレーノズルの噴霧領域の形状を示す図である。
【図7】実施例1に係る成膜装置において使用したスプレーノズルの噴霧領域の長手方向における相対噴付強度を示すグラフである。
【図8】実施例2ないし4に係る成膜装置において使用したスプレーノズルの噴霧領域の短手方向における相対噴付強度を示すグラフである。
【図9】実施例2に係る成膜装置における比較噴付強度を示すグラフである。
【図10】実施例3に係る成膜装置における比較噴付強度を示すグラフである。
【図11】実施例4に係る成膜装置における比較噴付強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、薄膜太陽電池の透明基板上に設けられる透明導電膜の成膜に本発明を適用した場合を例示するものであるが、当然に他の薄膜の成膜に本発明を適用することも可能である。なお、同一のまたは共通する部分には図中同一の符号を付すこととし、その説明は都度繰り返さないこととする。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態における成膜装置の模式断面図である。まず、この図1を参照して、本実施の形態における成膜装置1の構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、成膜装置1は、熱処理炉をベースとした連続式の成膜装置であり、搬送機構としてのメッシュベルト2およびベルト駆動部3と、加熱炉4を構成するマッフル5およびヒータブロック6と、噴霧ボックス20とを主として備えている。噴霧ボックス20は、加熱炉4の上部側の部分を一部を切り欠くことで形成された開口部を閉塞するように設置されている。
【0025】
被成膜対象物である基板100は、メッシュベルト2によって構成される搬送経路上に載置される。メッシュベルト2上に載置された基板100は、ベルト駆動部3がメッシュベルト2を駆動することによって図中に示す矢印A方向に移動する。なお、基板100は、搬送経路上において常時一定の速度で移動するように搬送されてもよいし、搬送経路上の所定の領域においてのみ速度を変えて移動されるように搬送されてもよいし、場合によって搬送経路上の所定の領域においてのみ一時的に静止するように搬送されてもよい。
【0026】
成膜装置1は、基板100の搬送方向に沿って上流側から順に、基板搬入部11、加熱部12、成膜部13、熱処理部14、冷却部15および基板搬出部16にて構成されている。加熱炉4は、このうちの加熱部12、成膜部13および熱処理部14に跨るように設置されており、噴霧ボックス20は、このうちの成膜部13に設置されている。
【0027】
基板100は、基板搬入部11において搬送経路上に搬入される。これにより、基板100は、上述した加熱部12、成膜部13、熱処理部14および冷却部15にこの順で順次投入されることになる。冷却部15を通過した後の基板100は、基板搬出部16において搬送経路上から搬出される。
【0028】
ここで、基板100に対しては、上述した加熱部12において加熱処理が施され、成膜部13において成膜処理が施され、熱処理部14においてさらに熱処理が施され、冷却部15において冷却処理が施される。これにより、基板100の被成膜面である上面上に透明導電膜が形成されることになる。
【0029】
より詳細には、加熱部12においては、マッフル5がヒータブロック6によって加熱されており、この高温に加熱されたマッフル5により基板100が加熱される。基板100は、当該加熱部12において所定の温度にまで加熱された状態となり、その後、成膜部13に投入される。
【0030】
ここで、成膜する透明導電膜が酸化スズ膜である場合には、加熱部12内における加熱炉4の内部の温度が450℃以上600℃以下程度であることが好ましく、より好適には、520℃以上580℃以下とされる。基板100の加熱温度が450℃未満である場合には、噴霧された原料溶液によって成膜温度が低下してしまい透明導電膜の結晶性が低下するおそれがあり好ましくない。その反面、基板100の加熱温度が600℃を超えた場合には、原料溶液のミストが基板100の被成膜面に到達し難くなり、成膜レートが低下するおそれがあり好ましくない。
【0031】
成膜部13においては、基板100が噴霧ボックス20の下方を通過するように移動され、その際に噴霧ボックス20から霧化された成膜材料が基板100の上面に向けて噴霧されることにより、基板100の上面上に透明導電膜が成膜される。なお、基板100を搬送しつつ成膜を行なうことにより、基板100が成膜部13の搬送方向における幅よりも長いものであっても、基板100の上面の全域に透明導電膜を成膜することができることになる。
【0032】
ここで、噴霧ボックス20の下面と下部側のマッフル5の上面との間の空間が、成膜処理を行なうための成膜室10(図2等参照)に相当し、上述した搬送経路は、この成膜室10を横断するように設けられることになる。当該成膜室10には、噴霧ボックス20側に設けられた噴霧口および第1排気口(図1においては不図示)と、マッフル5側に設けられた第2排気口8aとが設けられているが、これらの詳細については、後述することとする。
【0033】
成膜部13を通過した後の基板100は、熱処理部14に投入される。熱処理部14においては、マッフル5がヒータブロック6によって加熱されており、この高温に加熱されたマッフル5により基板100に成膜された透明導電膜の熱処理が行なわれる。当該熱処理は、透明導電膜のシート抵抗を低抵抗化するための処理である。
【0034】
熱処理部14を通過した後の基板100は、冷却部15に投入される。冷却部15においては、それまで高温に保持されていた基板100の冷却が行なわれる。
【0035】
以上において説明した成膜装置1を利用することにより、本実施の形態における成膜方法においては、成膜室10を横断するように設けられた搬送経路上において複数の基板100を順次移動させつつ、スプレーノズル25にて霧化させた成膜材料を成膜室10に導入して搬送経路側に向けて噴霧することにより、成膜室10を通過する複数の基板100のそれぞれに対して順次成膜が行なわれる。
【0036】
なお、以上において説明した成膜装置1は、基板100として無アルカリガラス基板を用いた場合を想定したものであるが、基板100としてアルカリ成分を含むたとえばソーダガラス基板等を用いる場合には、基板100に対する透明導電膜の成膜に先立って、アルカリ成分の流出を防止するためのアルカリバリア層を基板100に成膜することが必要になる。その場合には、上述した成膜装置の成膜部13の上流側にさらにアルカリバリア層を成膜するための成膜部を設置することとすればよい。また、基板100に色消し層を設ける場合等にも、同様に色消し層を成膜するための成膜部を上記搬送経路上に設置すればよい。なお、これら付加すべき成膜部は、上述した透明導電膜を成膜するための成膜部13に準じた構成とすればよく、ここではその詳細な説明は省略する。
【0037】
図2は、図1に示す噴霧ボックスに基板が投入された状態を示す、噴霧ボックス近傍の拡大模式断面図であり、図3は、図2に示すIII−III線に沿った模式断面図である。また、図4は、図1に示す噴霧ボックスに基板が投入された状態を示す、噴霧ボックス近傍の拡大模式断面図であり、図5は、図4に示すV−V線に沿った模式断面図である。次に、これら図2ないし図5を参照して、噴霧ボックス20とその近傍の具体的な構成および当該噴霧ボックス20が設置された成膜部13における成膜処理の詳細について説明する。
【0038】
図2ないし図5を参照して、上述したように、噴霧ボックス20は、加熱炉4の上部側のマッフル5の一部を切り欠くことで形成された開口部を閉塞するように設置されている。これにより、当該噴霧ボックス20の下面と当該噴霧ボックス20の下面に対向する部分の加熱炉4の下部側のマッフル5の壁面とにより、成膜室10が規定されている。
【0039】
当該噴霧ボックス20の下方には、メッシュベルト2が横断するように設置されており、これにより、基板100の搬送経路が、成膜室10を横断するように設けられることになる。なお、加熱炉4の内部には、メッシュベルト2を支持するための搬送機構としての搬送ローラ7が設置されている。
【0040】
噴霧ボックス20は、筐体21と、霧化機構としてのスプレーノズル25と、溶液導入管26と、圧縮ガス導入管27と、冷却ジャケット28とを主として備えている。噴霧ボックス20の近傍には、原料溶液200を貯留するための溶液貯留部30が設置されており、上述した溶液導入管26が当該溶液貯留部30に接続されている。
【0041】
スプレーノズル25は、成膜材料としての原料溶液200と圧縮ガスとを混合してこれを噴霧する二流体スプレーノズルからなり、原料溶液200が導入される上述した溶液導入管26と、圧縮ガスが導入される上述した圧縮ガス導入管27とにそれぞれ接続されている。スプレーノズル25は、導入された原料溶液200と圧縮ガスとを混合することにより、原料溶液200を0.1μm以上数十μm以下の平均粒子径のミストに霧化してこれを圧縮ガスに乗せて噴出するものである。
【0042】
原料溶液200は、亜鉛、スズ、インジウム、カドミウムおよびストロンチウムからなる群から選択される無機材料の塩化物または有機金属化合物を溶媒に溶解させてなる溶液を用いることができる。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ブタノール、またはこれらの混合物等を用いることができる。すなわち、原料溶液としては、たとえば酢酸亜鉛を含む水溶液や、塩化インジウムおよび塩化スズを含む水溶液、塩化スズを含む水溶液等が利用できる。
【0043】
かかる透明導電膜の原料溶液200としては、上記塩化物または有機金属化合物を0.1mol/L〜0.3mol/L程度の濃度で溶媒に溶解させたものを用いることが一般的であるが、この濃度に限定されるものではない。
【0044】
一方、圧縮ガスとしては、圧縮空気、窒素、水素、水蒸気、酸素、またはこれらの混合物等を用いることができる。
【0045】
図3および図5に示すように、スプレーノズル25は、基板100の搬送方向と直交する方向に沿って複数設けられており、当該複数のスプレーノズル25のそれぞれを囲うように、冷却ジャケット28が個別に設けられている。ここで、スプレーノズル25は、必ずしも複数設けられている必要はないが、基板100の幅が大きい場合等には、基板100の搬送方向と直交する方向に複数のスプレーノズル25を設けることにより、一度に基板100の幅方向の全域に対して成膜を行なうことが可能になる。なお、この点については、後述する実施例において詳細に言及する。
【0046】
冷却ジャケット28は、スプレーノズル25および当該スプレーノズル25に接続された溶液導入管26を冷却するためのものであり、当該冷却ジャケット28の内部には、図示しない水冷用の冷却配管および/または空冷用の冷却ファンが設けられている。当該冷却ジャケット28は、スプレーノズル25から噴出される前の原料溶液200を沸点以下の温度に冷却するためのものである。
【0047】
この冷却ジャケット28を設けることにより、スプレーノズル25の内部において原料溶液200の揮発を抑制することが可能になり、スプレーノズル25から噴霧される原料溶液200の濃度を一定に保つことができるとともに、スプレーノズル25および溶液導入管26の内部において原料溶液200が固化して目詰まりを起こすことを抑制することができる。
【0048】
図2ないし図5に示すように、筐体21の内部の空間は、図示する如くの仕切り壁によって仕切られており、キャリアガスが導入されるキャリアガス導入路22と、スプレーノズル25によって生成された原料溶液200のミストが当該キャリアガスによって搬送されるミスト搬送路23と、噴き付け後のキャリアガスおよび原料溶液200のミストの余剰分を排気するための第1排気路24とを含んでいる。
【0049】
キャリアガス導入路22は、筐体21の内部の空間のうちのスプレーノズル25よりも上方の空間に設けられ、筐体21の上部に設けられたキャリアガス導入口22aに連通するように設けられている。ミスト搬送路23は、筐体21の内部の空間のうちのスプレーノズル25よりも下方の空間に設けられ、上述したキャリアガス導入路22に連通するとともに、成膜室10を規定する壁部である筐体21の底壁に設けられた噴霧口23aに連通するように設けられている。
【0050】
これにより、噴霧ボックス20の外部からキャリアガス導入口22aを介してキャリアガス導入路22に導入されたキャリアガスは、スプレーノズル25が設けられた位置の近傍を経由してミスト搬送路23に流入することになり、スプレーノズル25にて生成されたミストがミスト搬送路23において当該キャリアガスに混入されて噴霧口23aから噴霧ボックス20の外部に向けて噴き出されることになる。すなわち、これにより、原料溶液200のミストを含むガスが、基板100の搬送経路側に向けて噴霧されることになる。
【0051】
なお、キャリアガスとしては、圧縮空気、窒素、水素、水蒸気、酸素、またはこれらの混合物等を用いることができる。
【0052】
一方、第1排気路24は、筐体21の内部の空間のうちの、上述したミスト搬送路23が設けられた位置よりも基板100の搬送経路に沿った下流側の位置に対応する空間に設けられており、成膜室10を規定する壁部である筐体21の底壁に設けられた第1排気口24aに連通するように設けられている。
【0053】
当該第1排気路24は、噴霧ボックス20の外部に設置された図示しない吸引ポンプおよび除害装置に接続されている。これにより、成膜室10内に残留する原料溶液200のミストを含むガスが、第1排気口24aを介して当該第1排気路24に吸引されることで除害装置に送られ、当該除害装置において無害化されて成膜装置1の外部に放出されることになる。
【0054】
他方、噴霧ボックス20の下方であって基板100の搬送経路を挟んで当該噴霧ボックス20に対向する部分の加熱炉4には、第2排気路8が位置している。当該第2排気路8は、成膜室10を規定する壁部である加熱炉4の下部側のマッフル5の底壁に設けられた第2排気口8aに連通するように設けられている。
【0055】
当該第2排気路8は、加熱炉4の外部に設置された図示しない吸引ポンプおよび除害装置に接続されている。これにより、成膜室10内に残留する原料溶液200のミストを含むガスが、第2排気口8aを介して当該第2排気路8に吸引されることで除害装置に送られ、当該除害装置において無害化されて成膜装置1の外部に放出されることになる。なお、第1排気路24と第2排気路8とが接続されることにより、吸引ポンプおよび除害装置が兼用とされていてもよい。
【0056】
ここで、本実施の形態における成膜方法にあっては、複数の基板100のそれぞれに対して順次成膜を行なうに際して、上述した第1排気口24aを介して排気を行ないつつ、上述した第2排気口8aを介して排気を行なう。
【0057】
なお、第1排気口24aおよび第2排気口8aにて吸引されるガスの流量としては、噴霧口23aにおいて噴霧されるガスの流量の数倍から十倍程度とされることが好ましい。これにより、成膜室10内に残留する原料溶液200のミストを含むガスが成膜室10から確実に排気されることになる。
【0058】
以上により、本実施の形態における成膜装置1および成膜方法にあっては、図2および図3に示すように、成膜室10の内部に基板100が位置する場合においては、噴霧口23aから噴出された原料溶液200のミストを含むガスが、基板100の被成膜面101である上面に対して略直交方向に噴き付けられることになる。したがって、基板100の被成膜面101に対して噴霧口23aから原料溶液200のミストが供給されることになり、当該被成膜面101上に透明導電膜が成膜されることになる。
【0059】
また、噴霧口23aを介して基板100の被成膜面101に噴き付けられた原料溶液200のミストを含むガスのうち、当該噴霧口23aと対面する部分において成膜に使用されなかった余剰のガスは、主として第1排気口24aを介して吸引されて外部に排気されることになる。これは、基板100が成膜室10の内部に位置することにより、基板100に噴き付けられたガスの流動が当該基板100によって遮られるためであり、その大部分が基板100の下面側に回り込むことなく第1排気口24aを介して排気されるためである。ただし、その間においても、一部のガスは、第2排気口8aを介して第2排気路8内に吸引されて外部に排気されることになる。
【0060】
ここで、第1排気口24aは、基板100の搬送経路に沿って上述した噴霧口23aと所定の距離をもって配置されていることが好ましい。このように構成すれば、噴霧口23aと第1排気口24aとの間に位置する部分の成膜室10において、図2中に示す如くの基板100の被成膜面101と略平行方向に進むガスの流れを形成することが可能になる。したがって、当該部分において基板100の被成膜面101に対して略平行方向にガスが噴き付けられることで透明導電膜の成膜が行なわれることになり、成膜をより効率的に行なうことが可能になる。
【0061】
一方、図4および図5に示すように、本実施の形態における成膜装置1および成膜方法にあっては、成膜室10に基板100が位置しない場合(すなわち、基板100が載置されていない部分のメッシュベルト2が成膜室10に差しかかった場合)にあっても、噴霧口23aから噴出された原料溶液200のミストを含むガスが、基板100の搬送経路側に向けて噴霧されることになるが、成膜室10の下方に第2排気口8aが設けられているため、成膜に使用されなかった余剰のガスが、主として当該第2排気口8aを介して吸引されて外部に排気されることになる。ただし、その間においても、一部のガスは、第1排気口24aを介して第1排気路24内に吸引されて外部に排気されることになる。
【0062】
そのため、成膜室10内に余剰のミストが滞留することが抑制され、当該余剰のミストがメッシュベルト2や搬送ローラ7等の搬送機構に付着してしまうことが防止でき、成膜室10内をより清浄な状態に維持できることになる。また、当該余剰のミストがメッシュベルト2や搬送ローラ7等の搬送機構に付着してしまった場合には、これが固化することによってパーティクルが発生してしまい、これが基板100に付着することで基板100の品位(たとえば透過率等)や当該基板100に成膜される透明導電膜の品位(たとえば膜厚やシート抵抗、ヘイズ率等)が低下してしまうことになるが、当該事象の発生も抑制できることになる。
【0063】
また、基板100の進行方向における先端部分や後端部分が成膜室10に差しかかった時点においては、噴霧口23aから噴出された原料溶液200のミストを含むガスが、基板100によって完全には遮られることなく、基板100の下面側に回り込んでしまうことになるが、その際にも原料溶液200のミストを含むガスが成膜室10内において残留することなく、直ちに上述した第2排気口8aを介して吸引されて外部に排気されることになる。したがって、成膜すべきでない基板100の下面にまで成膜が行なわれてしまうことが抑制され、この意味においても基板100に対して高品位に成膜を行なうことが可能になる。
【0064】
したがって、以上において説明した本実施の形態における成膜装置1および成膜方法とすることにより、基板100に対して高品位に成膜を行なうことが可能になるとともに、成膜室10を清掃する等のメンテナンスの頻度を低減させることができ、安価にかつ高品位に成膜を行なうことが可能になる。
【0065】
なお、成膜室10内に残留する原料溶液200のミストを含むガスを成膜室10からより確実に排気するためには、第2排気口8aを基板100の搬送経路を挟んで噴霧口23aに正対する位置に設けるばかりでなく、さらに、当該第2排気口8aの開口面が、噴霧口23aから噴き出される当該ガスが基板100に遮られることなく当該排気口8aが設けられた側の壁部(すなわち、下部側のマッフル5の壁部)にまで到達する場合において当該ガスが噴き付けられることとなる範囲を包含する大きさおよび形状を有するように形成されることが好ましい。
【0066】
また、図2および図3を参照して、スプレーノズル25と基板100の被成膜面101との間の距離L1としては、原料溶液200の濃度や噴霧量、基板100の搬送速度、成膜レート等を勘案して適宜調節することとすればよいが、一例として250mmとすることが想定される。その場合の噴霧ボックス20の下端面と基板100の被成膜面101との間の距離としては、好適には20mmとされ、スプレーノズル25と第2排気口8aとの間の距離L2としては、好適には300mmとされる。
【0067】
また、本実施の形態においては、霧化機構としてスプレーノズル25を用いたスプレー式の成膜装置1およびこれを利用した成膜方法に本発明を適用した場合を例示したが、この他にも霧化機構として超音波振動子等を用いたミスト式の成膜装置およびこれを利用した成膜方法に本発明を適用することも可能である。
【0068】
ここで、ミスト式の成膜装置は、たとえば超音波振動子を用いて原料溶液に超音波を印加することによりその液面からミストを発生させるものであるが、発生したミスト自体には運動エネルギーがないため、これをキャリアガスを用いて基板の被成膜面に噴き付けるようにするものである。かかるミスト方式を採用した場合には、微細でかつ比較的均一な粒子径のミストを発生させることが可能になるため、ミストの搬送中においてミスト同士が凝縮し難くなるというメリットが得られる。
【0069】
以下、上述した実施の形態において使用されるスプレーノズル25と基板100における噴霧強度との関係について実施例1ないし4に基づいて説明する。図6は、実施例1に係る成膜装置において使用したスプレーノズルの噴霧領域の形状を示す図である。
【0070】
実施例1においては、原料溶液として、0.9mol/LのSnCl4・5H2Oと、0.3mol/LのNH4Fと、30体積%のHClと、2.5体積%のメタノールとを含む水溶液を用いた。この水溶液の沸点は、約70℃程度であった。
【0071】
図6に示すように、スプレーノズル25の噴霧領域Mは、スプレーノズル25の噴出口からの距離がLhだけ離れた地点において、楕円形状の外形を有している。具体的には、スプレーノズル25の噴出口からの距離がLhだけ離れた地点における噴霧領域Mは、その長径の長さがLW、短径の長さがLTである楕円形状を有しており、長径に平行な長手方向と、短径に平行な短手方向とを有している。図6中の0点は、長径と短径との交点であって、スプレーノズル25の中心の直下の位置である。
【0072】
図7は、実施例1に係る成膜装置において使用したスプレーノズルの噴霧領域の長手方向における相対噴付強度を示すグラフである。また、図8は、実施例1に係る成膜装置において使用したスプレーノズルの噴霧領域の長手方向における相対噴付強度を示すグラフである。
【0073】
ここで、図7おいては、縦軸が相対噴付強度を、横軸が噴霧領域の長手方向における0点からの位置をそれぞれ表わしており、図8においては、縦軸が相対噴付強度を、横軸が噴霧領域の短手方向における0点からの位置をそれぞれ表わしている。なお、相対噴霧強度とは、0点における噴霧強度を1とした場合の噴霧強度の百分率である。
【0074】
図7に示すように、Lhが300mmの地点においては、スプレーノズル25の噴霧領域Mの長手方向における相対噴付強度が、0点から離れるに従って上昇して100%になった後、さらに0点から離れるに従って下降して0%になっている。一方、図8に示すように、Lhが300mmの地点においては、スプレーノズル25の噴霧領域Mの短手方向における相対噴付強度が、0点において100%であり、0点から離れるに従って下降して0%になっている。
【0075】
このように、噴霧領域M内においては、スプレーノズル25の中心の直下より端部の方がミストの噴付強度が弱くなる。この傾向は、複数のスプレーノズル25を設けた場合にも同様である。
【0076】
図9は、実施例2として、ピッチを100mmとして13個のスプレーノズルを各々の噴霧領域の長手方向が一列になるように配置した場合の噴霧領域の長手方向における比較噴付強度を示すグラフである。図10は、実施例3として、ピッチを120mmとして11個のスプレーノズルを各々の噴霧領域の長手方向が一列になるように配置した場合の噴霧領域の長手方向における比較噴付強度を示すグラフである。図11は、実施例4として、ピッチを150mmとして9個のスプレーノズルを各々の噴霧領域の長手方向が一列になるように配置した場合の噴霧領域の長手方向における比較噴付強度を示すグラフである。
【0077】
実施例2ないし4に係る成膜装置においては、上述した実施例1に係る成膜装置において使用したスプレーノズル25を長手方向に沿って複数配置することとし、原料溶液としては、上述した実施例1において使用した原料溶液と同様のものを使用した。
【0078】
ここで、図9ないし図11においては、縦軸が比較噴付強度を、横軸が噴霧領域の長手方向における0点からの位置をそれぞれ表わしている。ここで、比較噴霧強度とは、単一のスプレーノズルの0点における噴霧強度を1とした場合の噴霧強度の百分率である。
【0079】
図9および図11に示すように、ピッチLpを100mmおよび150mmとした実施例2および4の場合には、Lhが300mmの地点において、噴霧領域の長手方向における比較噴付強度にばらつきが生じていることが分かる。これに対し、図10に示すように、ピッチLpを120mmとした実施例3の場合には、Lhが300mmの地点において、噴霧領域の長手方向における比較噴付強度が比較的均一になっていることが分かる。
【0080】
当該結果より、複数のスプレーノズル25を基板100の幅方向に沿って配置した場合にも、そのピッチを最適化すること等により、基板100の幅方向において実質的に均等に原料溶液を噴霧することが可能になることが理解される。したがって、基板100として大型の基板を用いた場合にも、本発明を適用して噴霧条件等を適宜調整することにより、より均一な膜厚の透明導電膜の成膜が可能になると言える。
【0081】
以上において説明した本発明の実施の形態においては、第2排気口8aを噴霧口23aに正対する位置に設けた場合を例示して説明を行なったが、必ずしもそのように構成する必要はなく、成膜室10を規定する壁面であって搬送経路から見た場合に噴霧口23aが設けられた側とは反対側に位置する部分に第2排気口8aが設けられていれば、十分にその効果を得ることができる。
【0082】
また、上述した本発明の実施の形態においては、薄膜太陽電池の透明基板上に透明導電膜を製造するための成膜装置および製造方法に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、当然に他の種類の薄膜を製造するための成膜装置および成膜方法に本発明を適用することも可能である。
【0083】
このように、今回開示した上記実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0084】
1 成膜装置、2 メッシュベルト、3 ベルト駆動部、4 加熱炉、5 マッフル、6 ヒータブロック、7 搬送ローラ、8 第2排気路、8a 第2排気口、10 成膜室、11 基板搬入部、12 加熱部、13 成膜部、14 熱処理部、15 冷却部、16 基板搬出部、20 噴霧ボックス、21 筐体、22 キャリアガス導入路、22a キャリアガス導入口、23 ミスト搬送路、23a 噴霧口、24 第1排気路、24a 第1排気口、25 スプレーノズル、26 溶液導入管、27 圧縮ガス導入管、28 冷却ジャケット、30 溶液貯留部、100 基板、101 被成膜面、200 原料溶液。
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置および成膜方法に関し、より特定的には、霧化させた成膜材料を基板に向けて噴霧することで成膜を行なう成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、ディスプレイおよび太陽電池等の製造の分野においては、基板等の被成膜対象物に対して各種の薄膜を成膜することが行なわれている。かかる薄膜は、その種類に応じて、物理気相成長法としてのスパッタリング法や蒸着法等、化学気相成長法としてのプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法や熱CVD法等、液相成長法としての塗布法やゾル・ゲル法、メッキ法等の中から最適な成膜方法が選択されて成膜される。
【0003】
たとえば、ディスプレイや太陽電池等の製造に際しては、ガラス基板等の透明基板上に薄膜としての透明導電膜が成膜されることが一般的である。このような透明導電膜としては、STO(チタン酸ストロンチウム)およびITO(スズドープ酸化インジウム)等の金属酸化物からなるものが主流である。この種の透明導電膜は、一般に、スパッタリング法、蒸着法、有機金属化合物を用いた有機金属化学気相成長法等を利用してその成膜が行なわれる。
【0004】
スパッタリング法および蒸着法においては、真空プロセスにて成膜が行なわれるため、真空状態を作り出してこれを維持する設備が必要になる。有機金属化学気相成長法においては、原料として用いる有機金属化合物が爆発性および毒性を有しているため、気密性の高い設備を用いることが必要になるとともに、特殊な排ガス処理装置を付設すること等も必要になる。したがって、これら成膜方法を採用した場合には、高度な安全設計を行なうことが必要になるのみならず、成膜装置の設置コストおよびランニングコストが嵩んでしまうという問題があった。
【0005】
そこで、近年、これらに代替する成膜方法として、スプレーCVD法およびミストCVD法等の噴霧法が提案されている。スプレーCVD法およびミストCVD法は、いずれも原料金属を溶質として含む溶液を霧化機構を用いて霧化し、これを基板に向けて噴霧することによって成膜を行なう成膜方法である。
【0006】
噴霧法においては、大気雰囲気下で成膜を行なうことができるとともに、有機金属化合物のような危険性の高い物質を用いる必要もないため、成膜装置の設置コストやランニングコストを大幅に低減することができ、安価に成膜を行なうことができる。
【0007】
また、噴霧法を採用して成膜を行なう場合には、基板を搬送しつつ成膜を行なう連続式の処理が可能になる。したがって、このような連続式の処理を採用することとすれば、量産に適したものとすることができ、さらに生産性よく安価に成膜が行なえることになる。
【0008】
ここで、噴霧法を利用した連続式の成膜装置が開示された文献として、たとえば特開昭61−69962号公報(特許文献1)や特開平5−214543号公報(特許文献2)等がある。
【0009】
上記特許文献1には、成膜室を横断するように搬送経路を構成することにより、基板の被成膜面を下方に向けた状態で基板を搬送させながら当該基板に対して下方から霧化させた成膜材料を基板の被成膜面に向けて緩やかに噴霧することで成膜を行なう成膜装置が開示されている。当該成膜装置においては、成膜室を規定する壁面のうちの搬送経路の下方に位置する部分に、霧化させた成膜材料を成膜室に導入するための噴霧口と、成膜室に導入された霧化された成膜材料のうちの余剰分についてこれを排気するための排気口とが設けられている。
【0010】
また、上記特許文献2には、上記特許文献1に開示の成膜装置に近似の構成の成膜装置が開示されており、基板の表裏面のいずれにも同時に成膜を行なうために、成膜室を規定する壁面のうちの搬送経路の上方に位置する部分および下方に位置する部分の双方にそれぞれ噴霧口および排気口が一対ずつ設けられてなる成膜装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭61−69962号公報
【特許文献2】特開平5−214543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、上記特許文献1および2に開示の成膜装置にあっては、複数の基板の搬送方向に沿った端部同士が互いに接触した状態となるようにし、並べて配置されたこれら複数の基板の縁を支持枠によって支持しつつプッシャ等を用いて押し出すことにより、これら複数の基板が搬送されるように構成している。しかしながら、このような方法で基板の搬送を行なった場合には、基板同士が接触することになり、また基板の縁と支持枠とが擦れることにもなるため、基板が傷付いたり割れや欠けが発生したりするおそれがあり、歩留まりの悪化が懸念される。
【0013】
これを解決するためには、コンベヤ等の搬送機構を用いて複数の基板をそれぞれ所定の間隔をあけて搬送することが考えられる。しかしながら、このように複数の基板をそれぞれ所定の間隔をあけて搬送することとした場合であって、かつ基板の一方の主面のみに成膜を行なうこととした場合には、搬送される基板間に形成される隙間を介して霧化された成膜材料が基板の他方の主面側に回り込んでしまい、成膜すべきでない当該他方の主面にまで成膜が行なわれてしまうといった問題や、霧化された成膜材料が当該隙間部分においてコンベヤ等の搬送機構に付着してしまうといった問題が生じてしまう。
【0014】
そのため、この点について何ら対策を行なわなかった場合には、成膜後における基板の品位が低下し、結果として製品の性能低下を招いてしまうばかりでなく、成膜装置を頻繁に清掃する等、メンテナンスに多大のコストを要することとなってしまう。
【0015】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、基板に対して高品位に成膜を行なうことができる、噴霧法を利用した連続式の成膜装置および成膜方法を提供することを目的とする。また、本発明は、メンテナンス等の頻度が減少することによって安価に成膜を行なうことができる、噴霧法を利用した連続式の成膜装置および成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に基づく成膜装置は、霧化させた成膜材料を基板に向けて噴霧することで成膜を行なうものであって、成膜が行なわれる成膜室と、成膜材料を霧化させる霧化機構と、上記成膜室を横断するように設けられた搬送経路と、上記搬送経路上において基板を移動させる搬送機構とを備えている。上記成膜室を規定する壁部には、上記霧化機構にて霧化された成膜材料を上記成膜室に導入するとともに、導入した成膜材料を上記成膜室において上記搬送経路側に向けて噴霧するための噴霧口が設けられている。上記成膜室を規定する壁部のうちの、上記搬送経路から見て上記噴霧口側に位置する部分には、第1排気口が設けられている。上記成膜室を規定する壁部のうちの、上記搬送経路から見て上記噴霧口側とは反対側に位置する部分には、第2排気口が設けられている。
【0017】
上記本発明に基づく成膜装置にあっては、上記第2排気口が、上記搬送経路を挟んで上記噴霧口に正対する位置に設けられていることが好ましい。
【0018】
上記本発明に基づく成膜装置にあっては、上記第2排気口の開口面が、上記霧化機構によって霧化された成膜材料が基板によって遮られることなく上記第2排気口側の壁部にまで到達する場合において当該成膜材料が噴霧されることとなる範囲を包含する大きさおよび形状を有していることが好ましい。
【0019】
本発明に基づく成膜方法は、成膜室を横断するように設けられた搬送経路上において複数の基板を順次移動させつつ、霧化機構にて霧化させた成膜材料を上記成膜室を規定する壁部に設けられた噴霧口を介して上記成膜室に導入して上記搬送経路側に向けて噴霧することにより、上記成膜室を通過する上記複数の基板のそれぞれに対して順次成膜を行なうものであって、上記複数の基板のそれぞれに対して順次成膜を行なうに際して、上記成膜室を規定する壁部のうちの、上記搬送経路から見て上記噴霧口側に位置する部分に設けられた第1排気口を介して排気を行ないつつ、上記成膜室を規定する壁部のうちの、上記搬送経路から見て上記噴霧口側とは反対側に位置する部分に設けられた第2排気口を介して排気を行なうことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基板に対して高品位に成膜を行なうことができる、噴霧法を利用した連続式の成膜装置および成膜方法とすることができる。また、本発明によれば、メンテナンス等の頻度が減少することによって安価に成膜を行なうことができる、噴霧法を利用した連続式の成膜装置および成膜方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態における成膜装置の模式断面図である。
【図2】図1に示す噴霧ボックスに基板が投入された状態を示す、噴霧ボックス近傍の拡大模式断面図である。
【図3】図2に示すIII−III線に沿った模式断面図である。
【図4】図1に示す噴霧ボックスに基板が投入されていない状態を示す、噴霧ボックス近傍の拡大模式断面図である。
【図5】図4に示すV−V線に沿った模式断面図である。
【図6】実施例1に係る成膜装置において使用したスプレーノズルの噴霧領域の形状を示す図である。
【図7】実施例1に係る成膜装置において使用したスプレーノズルの噴霧領域の長手方向における相対噴付強度を示すグラフである。
【図8】実施例2ないし4に係る成膜装置において使用したスプレーノズルの噴霧領域の短手方向における相対噴付強度を示すグラフである。
【図9】実施例2に係る成膜装置における比較噴付強度を示すグラフである。
【図10】実施例3に係る成膜装置における比較噴付強度を示すグラフである。
【図11】実施例4に係る成膜装置における比較噴付強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、薄膜太陽電池の透明基板上に設けられる透明導電膜の成膜に本発明を適用した場合を例示するものであるが、当然に他の薄膜の成膜に本発明を適用することも可能である。なお、同一のまたは共通する部分には図中同一の符号を付すこととし、その説明は都度繰り返さないこととする。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態における成膜装置の模式断面図である。まず、この図1を参照して、本実施の形態における成膜装置1の構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、成膜装置1は、熱処理炉をベースとした連続式の成膜装置であり、搬送機構としてのメッシュベルト2およびベルト駆動部3と、加熱炉4を構成するマッフル5およびヒータブロック6と、噴霧ボックス20とを主として備えている。噴霧ボックス20は、加熱炉4の上部側の部分を一部を切り欠くことで形成された開口部を閉塞するように設置されている。
【0025】
被成膜対象物である基板100は、メッシュベルト2によって構成される搬送経路上に載置される。メッシュベルト2上に載置された基板100は、ベルト駆動部3がメッシュベルト2を駆動することによって図中に示す矢印A方向に移動する。なお、基板100は、搬送経路上において常時一定の速度で移動するように搬送されてもよいし、搬送経路上の所定の領域においてのみ速度を変えて移動されるように搬送されてもよいし、場合によって搬送経路上の所定の領域においてのみ一時的に静止するように搬送されてもよい。
【0026】
成膜装置1は、基板100の搬送方向に沿って上流側から順に、基板搬入部11、加熱部12、成膜部13、熱処理部14、冷却部15および基板搬出部16にて構成されている。加熱炉4は、このうちの加熱部12、成膜部13および熱処理部14に跨るように設置されており、噴霧ボックス20は、このうちの成膜部13に設置されている。
【0027】
基板100は、基板搬入部11において搬送経路上に搬入される。これにより、基板100は、上述した加熱部12、成膜部13、熱処理部14および冷却部15にこの順で順次投入されることになる。冷却部15を通過した後の基板100は、基板搬出部16において搬送経路上から搬出される。
【0028】
ここで、基板100に対しては、上述した加熱部12において加熱処理が施され、成膜部13において成膜処理が施され、熱処理部14においてさらに熱処理が施され、冷却部15において冷却処理が施される。これにより、基板100の被成膜面である上面上に透明導電膜が形成されることになる。
【0029】
より詳細には、加熱部12においては、マッフル5がヒータブロック6によって加熱されており、この高温に加熱されたマッフル5により基板100が加熱される。基板100は、当該加熱部12において所定の温度にまで加熱された状態となり、その後、成膜部13に投入される。
【0030】
ここで、成膜する透明導電膜が酸化スズ膜である場合には、加熱部12内における加熱炉4の内部の温度が450℃以上600℃以下程度であることが好ましく、より好適には、520℃以上580℃以下とされる。基板100の加熱温度が450℃未満である場合には、噴霧された原料溶液によって成膜温度が低下してしまい透明導電膜の結晶性が低下するおそれがあり好ましくない。その反面、基板100の加熱温度が600℃を超えた場合には、原料溶液のミストが基板100の被成膜面に到達し難くなり、成膜レートが低下するおそれがあり好ましくない。
【0031】
成膜部13においては、基板100が噴霧ボックス20の下方を通過するように移動され、その際に噴霧ボックス20から霧化された成膜材料が基板100の上面に向けて噴霧されることにより、基板100の上面上に透明導電膜が成膜される。なお、基板100を搬送しつつ成膜を行なうことにより、基板100が成膜部13の搬送方向における幅よりも長いものであっても、基板100の上面の全域に透明導電膜を成膜することができることになる。
【0032】
ここで、噴霧ボックス20の下面と下部側のマッフル5の上面との間の空間が、成膜処理を行なうための成膜室10(図2等参照)に相当し、上述した搬送経路は、この成膜室10を横断するように設けられることになる。当該成膜室10には、噴霧ボックス20側に設けられた噴霧口および第1排気口(図1においては不図示)と、マッフル5側に設けられた第2排気口8aとが設けられているが、これらの詳細については、後述することとする。
【0033】
成膜部13を通過した後の基板100は、熱処理部14に投入される。熱処理部14においては、マッフル5がヒータブロック6によって加熱されており、この高温に加熱されたマッフル5により基板100に成膜された透明導電膜の熱処理が行なわれる。当該熱処理は、透明導電膜のシート抵抗を低抵抗化するための処理である。
【0034】
熱処理部14を通過した後の基板100は、冷却部15に投入される。冷却部15においては、それまで高温に保持されていた基板100の冷却が行なわれる。
【0035】
以上において説明した成膜装置1を利用することにより、本実施の形態における成膜方法においては、成膜室10を横断するように設けられた搬送経路上において複数の基板100を順次移動させつつ、スプレーノズル25にて霧化させた成膜材料を成膜室10に導入して搬送経路側に向けて噴霧することにより、成膜室10を通過する複数の基板100のそれぞれに対して順次成膜が行なわれる。
【0036】
なお、以上において説明した成膜装置1は、基板100として無アルカリガラス基板を用いた場合を想定したものであるが、基板100としてアルカリ成分を含むたとえばソーダガラス基板等を用いる場合には、基板100に対する透明導電膜の成膜に先立って、アルカリ成分の流出を防止するためのアルカリバリア層を基板100に成膜することが必要になる。その場合には、上述した成膜装置の成膜部13の上流側にさらにアルカリバリア層を成膜するための成膜部を設置することとすればよい。また、基板100に色消し層を設ける場合等にも、同様に色消し層を成膜するための成膜部を上記搬送経路上に設置すればよい。なお、これら付加すべき成膜部は、上述した透明導電膜を成膜するための成膜部13に準じた構成とすればよく、ここではその詳細な説明は省略する。
【0037】
図2は、図1に示す噴霧ボックスに基板が投入された状態を示す、噴霧ボックス近傍の拡大模式断面図であり、図3は、図2に示すIII−III線に沿った模式断面図である。また、図4は、図1に示す噴霧ボックスに基板が投入された状態を示す、噴霧ボックス近傍の拡大模式断面図であり、図5は、図4に示すV−V線に沿った模式断面図である。次に、これら図2ないし図5を参照して、噴霧ボックス20とその近傍の具体的な構成および当該噴霧ボックス20が設置された成膜部13における成膜処理の詳細について説明する。
【0038】
図2ないし図5を参照して、上述したように、噴霧ボックス20は、加熱炉4の上部側のマッフル5の一部を切り欠くことで形成された開口部を閉塞するように設置されている。これにより、当該噴霧ボックス20の下面と当該噴霧ボックス20の下面に対向する部分の加熱炉4の下部側のマッフル5の壁面とにより、成膜室10が規定されている。
【0039】
当該噴霧ボックス20の下方には、メッシュベルト2が横断するように設置されており、これにより、基板100の搬送経路が、成膜室10を横断するように設けられることになる。なお、加熱炉4の内部には、メッシュベルト2を支持するための搬送機構としての搬送ローラ7が設置されている。
【0040】
噴霧ボックス20は、筐体21と、霧化機構としてのスプレーノズル25と、溶液導入管26と、圧縮ガス導入管27と、冷却ジャケット28とを主として備えている。噴霧ボックス20の近傍には、原料溶液200を貯留するための溶液貯留部30が設置されており、上述した溶液導入管26が当該溶液貯留部30に接続されている。
【0041】
スプレーノズル25は、成膜材料としての原料溶液200と圧縮ガスとを混合してこれを噴霧する二流体スプレーノズルからなり、原料溶液200が導入される上述した溶液導入管26と、圧縮ガスが導入される上述した圧縮ガス導入管27とにそれぞれ接続されている。スプレーノズル25は、導入された原料溶液200と圧縮ガスとを混合することにより、原料溶液200を0.1μm以上数十μm以下の平均粒子径のミストに霧化してこれを圧縮ガスに乗せて噴出するものである。
【0042】
原料溶液200は、亜鉛、スズ、インジウム、カドミウムおよびストロンチウムからなる群から選択される無機材料の塩化物または有機金属化合物を溶媒に溶解させてなる溶液を用いることができる。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ブタノール、またはこれらの混合物等を用いることができる。すなわち、原料溶液としては、たとえば酢酸亜鉛を含む水溶液や、塩化インジウムおよび塩化スズを含む水溶液、塩化スズを含む水溶液等が利用できる。
【0043】
かかる透明導電膜の原料溶液200としては、上記塩化物または有機金属化合物を0.1mol/L〜0.3mol/L程度の濃度で溶媒に溶解させたものを用いることが一般的であるが、この濃度に限定されるものではない。
【0044】
一方、圧縮ガスとしては、圧縮空気、窒素、水素、水蒸気、酸素、またはこれらの混合物等を用いることができる。
【0045】
図3および図5に示すように、スプレーノズル25は、基板100の搬送方向と直交する方向に沿って複数設けられており、当該複数のスプレーノズル25のそれぞれを囲うように、冷却ジャケット28が個別に設けられている。ここで、スプレーノズル25は、必ずしも複数設けられている必要はないが、基板100の幅が大きい場合等には、基板100の搬送方向と直交する方向に複数のスプレーノズル25を設けることにより、一度に基板100の幅方向の全域に対して成膜を行なうことが可能になる。なお、この点については、後述する実施例において詳細に言及する。
【0046】
冷却ジャケット28は、スプレーノズル25および当該スプレーノズル25に接続された溶液導入管26を冷却するためのものであり、当該冷却ジャケット28の内部には、図示しない水冷用の冷却配管および/または空冷用の冷却ファンが設けられている。当該冷却ジャケット28は、スプレーノズル25から噴出される前の原料溶液200を沸点以下の温度に冷却するためのものである。
【0047】
この冷却ジャケット28を設けることにより、スプレーノズル25の内部において原料溶液200の揮発を抑制することが可能になり、スプレーノズル25から噴霧される原料溶液200の濃度を一定に保つことができるとともに、スプレーノズル25および溶液導入管26の内部において原料溶液200が固化して目詰まりを起こすことを抑制することができる。
【0048】
図2ないし図5に示すように、筐体21の内部の空間は、図示する如くの仕切り壁によって仕切られており、キャリアガスが導入されるキャリアガス導入路22と、スプレーノズル25によって生成された原料溶液200のミストが当該キャリアガスによって搬送されるミスト搬送路23と、噴き付け後のキャリアガスおよび原料溶液200のミストの余剰分を排気するための第1排気路24とを含んでいる。
【0049】
キャリアガス導入路22は、筐体21の内部の空間のうちのスプレーノズル25よりも上方の空間に設けられ、筐体21の上部に設けられたキャリアガス導入口22aに連通するように設けられている。ミスト搬送路23は、筐体21の内部の空間のうちのスプレーノズル25よりも下方の空間に設けられ、上述したキャリアガス導入路22に連通するとともに、成膜室10を規定する壁部である筐体21の底壁に設けられた噴霧口23aに連通するように設けられている。
【0050】
これにより、噴霧ボックス20の外部からキャリアガス導入口22aを介してキャリアガス導入路22に導入されたキャリアガスは、スプレーノズル25が設けられた位置の近傍を経由してミスト搬送路23に流入することになり、スプレーノズル25にて生成されたミストがミスト搬送路23において当該キャリアガスに混入されて噴霧口23aから噴霧ボックス20の外部に向けて噴き出されることになる。すなわち、これにより、原料溶液200のミストを含むガスが、基板100の搬送経路側に向けて噴霧されることになる。
【0051】
なお、キャリアガスとしては、圧縮空気、窒素、水素、水蒸気、酸素、またはこれらの混合物等を用いることができる。
【0052】
一方、第1排気路24は、筐体21の内部の空間のうちの、上述したミスト搬送路23が設けられた位置よりも基板100の搬送経路に沿った下流側の位置に対応する空間に設けられており、成膜室10を規定する壁部である筐体21の底壁に設けられた第1排気口24aに連通するように設けられている。
【0053】
当該第1排気路24は、噴霧ボックス20の外部に設置された図示しない吸引ポンプおよび除害装置に接続されている。これにより、成膜室10内に残留する原料溶液200のミストを含むガスが、第1排気口24aを介して当該第1排気路24に吸引されることで除害装置に送られ、当該除害装置において無害化されて成膜装置1の外部に放出されることになる。
【0054】
他方、噴霧ボックス20の下方であって基板100の搬送経路を挟んで当該噴霧ボックス20に対向する部分の加熱炉4には、第2排気路8が位置している。当該第2排気路8は、成膜室10を規定する壁部である加熱炉4の下部側のマッフル5の底壁に設けられた第2排気口8aに連通するように設けられている。
【0055】
当該第2排気路8は、加熱炉4の外部に設置された図示しない吸引ポンプおよび除害装置に接続されている。これにより、成膜室10内に残留する原料溶液200のミストを含むガスが、第2排気口8aを介して当該第2排気路8に吸引されることで除害装置に送られ、当該除害装置において無害化されて成膜装置1の外部に放出されることになる。なお、第1排気路24と第2排気路8とが接続されることにより、吸引ポンプおよび除害装置が兼用とされていてもよい。
【0056】
ここで、本実施の形態における成膜方法にあっては、複数の基板100のそれぞれに対して順次成膜を行なうに際して、上述した第1排気口24aを介して排気を行ないつつ、上述した第2排気口8aを介して排気を行なう。
【0057】
なお、第1排気口24aおよび第2排気口8aにて吸引されるガスの流量としては、噴霧口23aにおいて噴霧されるガスの流量の数倍から十倍程度とされることが好ましい。これにより、成膜室10内に残留する原料溶液200のミストを含むガスが成膜室10から確実に排気されることになる。
【0058】
以上により、本実施の形態における成膜装置1および成膜方法にあっては、図2および図3に示すように、成膜室10の内部に基板100が位置する場合においては、噴霧口23aから噴出された原料溶液200のミストを含むガスが、基板100の被成膜面101である上面に対して略直交方向に噴き付けられることになる。したがって、基板100の被成膜面101に対して噴霧口23aから原料溶液200のミストが供給されることになり、当該被成膜面101上に透明導電膜が成膜されることになる。
【0059】
また、噴霧口23aを介して基板100の被成膜面101に噴き付けられた原料溶液200のミストを含むガスのうち、当該噴霧口23aと対面する部分において成膜に使用されなかった余剰のガスは、主として第1排気口24aを介して吸引されて外部に排気されることになる。これは、基板100が成膜室10の内部に位置することにより、基板100に噴き付けられたガスの流動が当該基板100によって遮られるためであり、その大部分が基板100の下面側に回り込むことなく第1排気口24aを介して排気されるためである。ただし、その間においても、一部のガスは、第2排気口8aを介して第2排気路8内に吸引されて外部に排気されることになる。
【0060】
ここで、第1排気口24aは、基板100の搬送経路に沿って上述した噴霧口23aと所定の距離をもって配置されていることが好ましい。このように構成すれば、噴霧口23aと第1排気口24aとの間に位置する部分の成膜室10において、図2中に示す如くの基板100の被成膜面101と略平行方向に進むガスの流れを形成することが可能になる。したがって、当該部分において基板100の被成膜面101に対して略平行方向にガスが噴き付けられることで透明導電膜の成膜が行なわれることになり、成膜をより効率的に行なうことが可能になる。
【0061】
一方、図4および図5に示すように、本実施の形態における成膜装置1および成膜方法にあっては、成膜室10に基板100が位置しない場合(すなわち、基板100が載置されていない部分のメッシュベルト2が成膜室10に差しかかった場合)にあっても、噴霧口23aから噴出された原料溶液200のミストを含むガスが、基板100の搬送経路側に向けて噴霧されることになるが、成膜室10の下方に第2排気口8aが設けられているため、成膜に使用されなかった余剰のガスが、主として当該第2排気口8aを介して吸引されて外部に排気されることになる。ただし、その間においても、一部のガスは、第1排気口24aを介して第1排気路24内に吸引されて外部に排気されることになる。
【0062】
そのため、成膜室10内に余剰のミストが滞留することが抑制され、当該余剰のミストがメッシュベルト2や搬送ローラ7等の搬送機構に付着してしまうことが防止でき、成膜室10内をより清浄な状態に維持できることになる。また、当該余剰のミストがメッシュベルト2や搬送ローラ7等の搬送機構に付着してしまった場合には、これが固化することによってパーティクルが発生してしまい、これが基板100に付着することで基板100の品位(たとえば透過率等)や当該基板100に成膜される透明導電膜の品位(たとえば膜厚やシート抵抗、ヘイズ率等)が低下してしまうことになるが、当該事象の発生も抑制できることになる。
【0063】
また、基板100の進行方向における先端部分や後端部分が成膜室10に差しかかった時点においては、噴霧口23aから噴出された原料溶液200のミストを含むガスが、基板100によって完全には遮られることなく、基板100の下面側に回り込んでしまうことになるが、その際にも原料溶液200のミストを含むガスが成膜室10内において残留することなく、直ちに上述した第2排気口8aを介して吸引されて外部に排気されることになる。したがって、成膜すべきでない基板100の下面にまで成膜が行なわれてしまうことが抑制され、この意味においても基板100に対して高品位に成膜を行なうことが可能になる。
【0064】
したがって、以上において説明した本実施の形態における成膜装置1および成膜方法とすることにより、基板100に対して高品位に成膜を行なうことが可能になるとともに、成膜室10を清掃する等のメンテナンスの頻度を低減させることができ、安価にかつ高品位に成膜を行なうことが可能になる。
【0065】
なお、成膜室10内に残留する原料溶液200のミストを含むガスを成膜室10からより確実に排気するためには、第2排気口8aを基板100の搬送経路を挟んで噴霧口23aに正対する位置に設けるばかりでなく、さらに、当該第2排気口8aの開口面が、噴霧口23aから噴き出される当該ガスが基板100に遮られることなく当該排気口8aが設けられた側の壁部(すなわち、下部側のマッフル5の壁部)にまで到達する場合において当該ガスが噴き付けられることとなる範囲を包含する大きさおよび形状を有するように形成されることが好ましい。
【0066】
また、図2および図3を参照して、スプレーノズル25と基板100の被成膜面101との間の距離L1としては、原料溶液200の濃度や噴霧量、基板100の搬送速度、成膜レート等を勘案して適宜調節することとすればよいが、一例として250mmとすることが想定される。その場合の噴霧ボックス20の下端面と基板100の被成膜面101との間の距離としては、好適には20mmとされ、スプレーノズル25と第2排気口8aとの間の距離L2としては、好適には300mmとされる。
【0067】
また、本実施の形態においては、霧化機構としてスプレーノズル25を用いたスプレー式の成膜装置1およびこれを利用した成膜方法に本発明を適用した場合を例示したが、この他にも霧化機構として超音波振動子等を用いたミスト式の成膜装置およびこれを利用した成膜方法に本発明を適用することも可能である。
【0068】
ここで、ミスト式の成膜装置は、たとえば超音波振動子を用いて原料溶液に超音波を印加することによりその液面からミストを発生させるものであるが、発生したミスト自体には運動エネルギーがないため、これをキャリアガスを用いて基板の被成膜面に噴き付けるようにするものである。かかるミスト方式を採用した場合には、微細でかつ比較的均一な粒子径のミストを発生させることが可能になるため、ミストの搬送中においてミスト同士が凝縮し難くなるというメリットが得られる。
【0069】
以下、上述した実施の形態において使用されるスプレーノズル25と基板100における噴霧強度との関係について実施例1ないし4に基づいて説明する。図6は、実施例1に係る成膜装置において使用したスプレーノズルの噴霧領域の形状を示す図である。
【0070】
実施例1においては、原料溶液として、0.9mol/LのSnCl4・5H2Oと、0.3mol/LのNH4Fと、30体積%のHClと、2.5体積%のメタノールとを含む水溶液を用いた。この水溶液の沸点は、約70℃程度であった。
【0071】
図6に示すように、スプレーノズル25の噴霧領域Mは、スプレーノズル25の噴出口からの距離がLhだけ離れた地点において、楕円形状の外形を有している。具体的には、スプレーノズル25の噴出口からの距離がLhだけ離れた地点における噴霧領域Mは、その長径の長さがLW、短径の長さがLTである楕円形状を有しており、長径に平行な長手方向と、短径に平行な短手方向とを有している。図6中の0点は、長径と短径との交点であって、スプレーノズル25の中心の直下の位置である。
【0072】
図7は、実施例1に係る成膜装置において使用したスプレーノズルの噴霧領域の長手方向における相対噴付強度を示すグラフである。また、図8は、実施例1に係る成膜装置において使用したスプレーノズルの噴霧領域の長手方向における相対噴付強度を示すグラフである。
【0073】
ここで、図7おいては、縦軸が相対噴付強度を、横軸が噴霧領域の長手方向における0点からの位置をそれぞれ表わしており、図8においては、縦軸が相対噴付強度を、横軸が噴霧領域の短手方向における0点からの位置をそれぞれ表わしている。なお、相対噴霧強度とは、0点における噴霧強度を1とした場合の噴霧強度の百分率である。
【0074】
図7に示すように、Lhが300mmの地点においては、スプレーノズル25の噴霧領域Mの長手方向における相対噴付強度が、0点から離れるに従って上昇して100%になった後、さらに0点から離れるに従って下降して0%になっている。一方、図8に示すように、Lhが300mmの地点においては、スプレーノズル25の噴霧領域Mの短手方向における相対噴付強度が、0点において100%であり、0点から離れるに従って下降して0%になっている。
【0075】
このように、噴霧領域M内においては、スプレーノズル25の中心の直下より端部の方がミストの噴付強度が弱くなる。この傾向は、複数のスプレーノズル25を設けた場合にも同様である。
【0076】
図9は、実施例2として、ピッチを100mmとして13個のスプレーノズルを各々の噴霧領域の長手方向が一列になるように配置した場合の噴霧領域の長手方向における比較噴付強度を示すグラフである。図10は、実施例3として、ピッチを120mmとして11個のスプレーノズルを各々の噴霧領域の長手方向が一列になるように配置した場合の噴霧領域の長手方向における比較噴付強度を示すグラフである。図11は、実施例4として、ピッチを150mmとして9個のスプレーノズルを各々の噴霧領域の長手方向が一列になるように配置した場合の噴霧領域の長手方向における比較噴付強度を示すグラフである。
【0077】
実施例2ないし4に係る成膜装置においては、上述した実施例1に係る成膜装置において使用したスプレーノズル25を長手方向に沿って複数配置することとし、原料溶液としては、上述した実施例1において使用した原料溶液と同様のものを使用した。
【0078】
ここで、図9ないし図11においては、縦軸が比較噴付強度を、横軸が噴霧領域の長手方向における0点からの位置をそれぞれ表わしている。ここで、比較噴霧強度とは、単一のスプレーノズルの0点における噴霧強度を1とした場合の噴霧強度の百分率である。
【0079】
図9および図11に示すように、ピッチLpを100mmおよび150mmとした実施例2および4の場合には、Lhが300mmの地点において、噴霧領域の長手方向における比較噴付強度にばらつきが生じていることが分かる。これに対し、図10に示すように、ピッチLpを120mmとした実施例3の場合には、Lhが300mmの地点において、噴霧領域の長手方向における比較噴付強度が比較的均一になっていることが分かる。
【0080】
当該結果より、複数のスプレーノズル25を基板100の幅方向に沿って配置した場合にも、そのピッチを最適化すること等により、基板100の幅方向において実質的に均等に原料溶液を噴霧することが可能になることが理解される。したがって、基板100として大型の基板を用いた場合にも、本発明を適用して噴霧条件等を適宜調整することにより、より均一な膜厚の透明導電膜の成膜が可能になると言える。
【0081】
以上において説明した本発明の実施の形態においては、第2排気口8aを噴霧口23aに正対する位置に設けた場合を例示して説明を行なったが、必ずしもそのように構成する必要はなく、成膜室10を規定する壁面であって搬送経路から見た場合に噴霧口23aが設けられた側とは反対側に位置する部分に第2排気口8aが設けられていれば、十分にその効果を得ることができる。
【0082】
また、上述した本発明の実施の形態においては、薄膜太陽電池の透明基板上に透明導電膜を製造するための成膜装置および製造方法に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、当然に他の種類の薄膜を製造するための成膜装置および成膜方法に本発明を適用することも可能である。
【0083】
このように、今回開示した上記実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0084】
1 成膜装置、2 メッシュベルト、3 ベルト駆動部、4 加熱炉、5 マッフル、6 ヒータブロック、7 搬送ローラ、8 第2排気路、8a 第2排気口、10 成膜室、11 基板搬入部、12 加熱部、13 成膜部、14 熱処理部、15 冷却部、16 基板搬出部、20 噴霧ボックス、21 筐体、22 キャリアガス導入路、22a キャリアガス導入口、23 ミスト搬送路、23a 噴霧口、24 第1排気路、24a 第1排気口、25 スプレーノズル、26 溶液導入管、27 圧縮ガス導入管、28 冷却ジャケット、30 溶液貯留部、100 基板、101 被成膜面、200 原料溶液。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧化させた成膜材料を基板に向けて噴霧することで成膜を行なう成膜装置であって、
成膜が行なわれる成膜室と、
成膜材料を霧化させる霧化機構と、
前記成膜室を横断するように設けられた搬送経路と、
前記搬送経路上において基板を移動させる搬送機構とを備え、
前記成膜室を規定する壁部に、前記霧化機構にて霧化された成膜材料を前記成膜室に導入するとともに、導入した成膜材料を前記成膜室において前記搬送経路側に向けて噴霧するための噴霧口が設けられ、
前記成膜室を規定する壁部のうちの、前記搬送経路から見て前記噴霧口側に位置する部分に、第1排気口が設けられ、
前記成膜室を規定する壁部のうちの、前記搬送経路から見て前記噴霧口側とは反対側に位置する部分に、第2排気口が設けられている、成膜装置。
【請求項2】
前記第2排気口が、前記搬送経路を挟んで前記噴霧口に正対する位置に設けられている、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第2排気口の開口面が、前記霧化機構によって霧化された成膜材料が基板によって遮られることなく前記第2排気口側の壁部にまで到達する場合において当該成膜材料が噴霧されることとなる範囲を包含する大きさおよび形状を有している、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
成膜室を横断するように設けられた搬送経路上において複数の基板を順次移動させつつ、霧化機構にて霧化させた成膜材料を前記成膜室を規定する壁部に設けられた噴霧口を介して前記成膜室に導入して前記搬送経路側に向けて噴霧することにより、前記成膜室を通過する前記複数の基板のそれぞれに対して順次成膜を行なう成膜方法であって、
前記複数の基板のそれぞれに対して順次成膜を行なうに際して、前記成膜室を規定する壁部のうちの、前記搬送経路から見て前記噴霧口側に位置する部分に設けられた第1排気口を介して排気を行ないつつ、前記成膜室を規定する壁部のうちの、前記搬送経路から見て前記噴霧口側とは反対側に位置する部分に設けられた第2排気口を介して排気を行なうことを特徴とする、成膜方法。
【請求項1】
霧化させた成膜材料を基板に向けて噴霧することで成膜を行なう成膜装置であって、
成膜が行なわれる成膜室と、
成膜材料を霧化させる霧化機構と、
前記成膜室を横断するように設けられた搬送経路と、
前記搬送経路上において基板を移動させる搬送機構とを備え、
前記成膜室を規定する壁部に、前記霧化機構にて霧化された成膜材料を前記成膜室に導入するとともに、導入した成膜材料を前記成膜室において前記搬送経路側に向けて噴霧するための噴霧口が設けられ、
前記成膜室を規定する壁部のうちの、前記搬送経路から見て前記噴霧口側に位置する部分に、第1排気口が設けられ、
前記成膜室を規定する壁部のうちの、前記搬送経路から見て前記噴霧口側とは反対側に位置する部分に、第2排気口が設けられている、成膜装置。
【請求項2】
前記第2排気口が、前記搬送経路を挟んで前記噴霧口に正対する位置に設けられている、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第2排気口の開口面が、前記霧化機構によって霧化された成膜材料が基板によって遮られることなく前記第2排気口側の壁部にまで到達する場合において当該成膜材料が噴霧されることとなる範囲を包含する大きさおよび形状を有している、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
成膜室を横断するように設けられた搬送経路上において複数の基板を順次移動させつつ、霧化機構にて霧化させた成膜材料を前記成膜室を規定する壁部に設けられた噴霧口を介して前記成膜室に導入して前記搬送経路側に向けて噴霧することにより、前記成膜室を通過する前記複数の基板のそれぞれに対して順次成膜を行なう成膜方法であって、
前記複数の基板のそれぞれに対して順次成膜を行なうに際して、前記成膜室を規定する壁部のうちの、前記搬送経路から見て前記噴霧口側に位置する部分に設けられた第1排気口を介して排気を行ないつつ、前記成膜室を規定する壁部のうちの、前記搬送経路から見て前記噴霧口側とは反対側に位置する部分に設けられた第2排気口を介して排気を行なうことを特徴とする、成膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−108155(P2013−108155A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256167(P2011−256167)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【特許番号】特許第5149437号(P5149437)
【特許公報発行日】平成25年2月20日(2013.2.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【特許番号】特許第5149437号(P5149437)
【特許公報発行日】平成25年2月20日(2013.2.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]