説明

扉の施錠装置

【課題】強度的に低くて、幅寸法の大きなシャッタ扉においても、安定した施錠を強固にかつ確実に行うことができるようにする。
【解決手段】キャビネット等の箱体1の前面開口部をシャッタ扉2でもって閉扉/開扉させるようにするとともに、シャッタ扉2の先端部に取り付けられた施錠機構でもって閉錠/開錠するようにした扉の施錠装置において、前記施錠機構を、シャッタ扉2の前面4a側から施錠操作可能な鍵操作部6と、この鍵操作部6の施錠操作に応じてシャッタ扉2の摺動方向と直交する向きに可動する鍵可動部7と、この鍵可動部7の可動動作に連動してシャッタ扉2の先端部から突出するように回転動作し、閉扉時にシャッタ扉2の先端部が当接する対面側に設けた被係止部15,15に係止しうる鍵連動部11,11とを備え、この鍵連動部11,11を、複数の位置で前記被係止部15,15に係止させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等の執務空間で、物品を収納するために使用されるキャビネットにおける扉の施錠装置に係り、特に、キャビネットの開口部を閉扉/開扉するシャッタ扉等に取り付けられる扉の施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシャッタ扉付きキャビネットにおいては、図10に示すように、前向き開放された箱体(01)の開口部を、左右方向に摺動可能な左右1対のシャッタ扉(02)(02)でもって閉扉/開扉するようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、このような扉の施錠装置としては、シャッタ扉の先端部を形成する戸当りスラットの戸当り面に、係止部を突設しておき、この係止部に、シリンダ錠の施錠操作で可動するデッドボルトを係止させることにより、閉錠するようにしたものがある(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平06−173543号公報(図5b)
【特許文献2】特開平11−270209号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したような扉の施錠装置では、シャッタ扉に対して、一点のみで閉錠するようになっているため、施錠強度に不安があるばかりでなく、多数のスラットをフレキシブルに連珠した強度的に低いシャッタ扉や、幅寸法の大きなシャッタ扉の場合には、閉錠状態においても捩れやずれが生じ易く、図10に示すように、閉扉状態における左右のシャッタ扉(2)(2)間の一部が開いたりすることから、安定した施錠が行えないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、強度的に低くて、幅寸法の大きなシャッタ扉を初めとする、その他一枚の軟質樹脂製扉、布製扉、アコーディオンカーテン扉等においても、安定した施錠を強固にかつ確実に行うことができる扉の施錠装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)キャビネット等の箱体における前面開口部を、多数の閉塞板が互いにフレキシブルに連結された左右方向もしくは上下方向に摺動可能なシャッタ扉でもって閉扉/開扉させるようにするとともに、シャッタ扉の先端部に取り付けられた施錠機構でもって閉錠/開錠するようにした扉の施錠装置において、
前記施錠機構を、シャッタ扉の前面側から施錠操作可能な鍵操作部と、この鍵操作部の施錠操作に応じてシャッタ扉の摺動方向と直交する向きに可動する鍵可動部と、この鍵可動部の可動動作に連動してシャッタ扉の先端部から突出するように回転動作し、閉錠時に、シャッタ扉の先端部が当接する対面側に設けた被係止部に係止する鍵連動部とを備え、この鍵連動部を、複数の位置で前記被係止部に係止させるようにする。
【0008】
(2)上記(1)項において、シャッタ扉が、左右もしくは上下1対のシャッタ扉でもって構成され、一方のシャッタ扉に、前記施錠機構を取り付けるとともに、他方のシャッタ扉に被係止部を設ける。
【0009】
(3)上記(1)または(2)項において、鍵可動部が、デッドボルトからなるとともに、鍵連動部が、前記デッドボルトの可動動作に連動して軸回りに回動可能なフック状の係止爪からなる。
【0010】
(4)上記(3)項において、被係止部を、前記係止爪が係止される係合孔で形成する。
【0011】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、多数の閉塞板が互いにフレキシブルに連結された左右方向もしくは上下方向に摺動可能なシャッタ扉に代えて、その他の左右方向もしくは上下方向に摺動可能な扉を用いる。
【0012】
(6)上記(5)項において、扉が、軟質樹脂製扉、布製扉、アコーディオンカーテン扉のうちのいずれかであるものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(a)請求項1記載の発明によると、鍵可動部が、鍵操作部の施錠操作に応じてシャッタ扉の摺動方向と直交する向きに可動するようになっているので、シャッタ扉の摺動方向に外力が掛かっても、施錠機構自体に負荷が掛かることがなく、施錠機構の破壊を防止することができる。また、鍵連動部を、複数の位置で被係止部に係止させているので、強度的に低く、幅寸法の大きなシャッタ扉においても、安定した施錠を強固にかつ確実に行うことができるとともに、施錠強度を高めることができる。なお、上下1対の鍵連動部は、シャッタ扉の上下端近傍に設けた方が、より効果的であり、好ましい。
【0014】
(b)請求項2記載の発明によると、各シャッタ扉の摺動範囲が短くなるため、キャビネットとしての使い勝手も向上し、しかも、物品の収納/取出しの際、必要とするシャッタ扉側のみを操作するだけでよい。
【0015】
(c)請求項3記載の発明によると、複数の係止爪を、デッドボルトの可動動作に連動して軸回りに回動可能にしているので、鍵操作部の施錠操作に応じて可動するデッドボルトでもって、複数の係止爪を簡単な構成で作動させることができる。
【0016】
(d)請求項4記載の発明によると、被係止部が、係合孔で形成されているので、係止爪の係脱を容易にかつ簡単な構成で行うことができる。
【0017】
(e)請求項5記載の発明によると、請求項1〜4記載の発明と同様な効果が奏せられる。
【0018】
(f)請求項6記載の発明によると、同じく、請求項1〜4記載の発明と同様な効果が奏せられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る扉の施錠装置を左右1対のシャッタ扉に用いた一実施形態におけるキャビネットの閉扉状態を示す正面図、図2は、一方の扉側の係止爪と他方の扉側の係止孔との係止状態を分解して示す要部拡大斜視図、図3は、一方の扉側における係止爪の閉錠状態を示す裏面側から見た要部拡大裏面図、図4は、同じく図3の一方の扉側における係止爪の閉錠状態を示す要部拡大縦断側面図、図5は、一方の扉側における係止爪の開錠状態を示す裏面側から見た要部拡大側面図、図6は、シリンダ錠とそれに連動するデッドボルトの拡大正面図、図7は、同じく図6の側面図、図8は、係止爪を上側から見た拡大斜視図、図9は、同じく係止爪を下側から見た拡大斜視図である。
【0020】
本実施形態における扉の施錠装置は、図1に示すように、キャビネットを構成する箱体(1)の前面開口部を閉扉/開扉するように、左右方向に摺動可能な左右1対のシャッタ扉(2)(2)に取り付けられて、両シャッタ扉(2)(2)を閉錠/開錠するようになっている。
【0021】
前記各シャッタ扉(2)は、複数本の閉塞板としてのスラット(3)を、フレキシブルに連珠して連結することにより形成されており、その各前端は、図2に示すように、平面視矩形型中空構造を有する戸当りスラット(4)(4)によりそれぞれ形成されている。これら各戸当りスラット(4)(4)の上下方向におけるほぼ中央部の前面(4a)(4a)には、把手部(5)が、それぞれ形成されているとともに、紙面右側のシャッタ扉(2)における一方の戸当りスラット(4)の前面(4a)における把手部(5)の直下には、施錠機構(A)を構成するシリンダ錠(6)が、戸当りスラット(4)の内部に向けて取り付けられている。
【0022】
前記シリンダ錠(6)は、外部に臨ませた鍵穴(6a)へのキー(図示せず)の差込み回動により、シャッタ扉(2)の前面(4a)側から施錠操作可能な鍵操作部を構成している。この戸当りスラット(4)内には、鍵可動部としてのデッドボルト(7)が、シャッタ扉(2)の摺動方向(左右方向)と直交する上下方向に可動しうるように配置されている。このデッドボルト(7)は、図6及び図7に示すように、シリンダ錠(6)の裏側に組み付けられており、シリンダ錠(6) の施錠操作に応じて、シャッタ扉(2)の摺動方向(左右方向)と直交する上下方向に可動しうるようになっている。
【0023】
前記デッドボルト(7)の上下端(7a)(7a)近傍には、1対の上下方向を向く縦長孔(8)(8)と左右方向を向く横長孔(9)がそれぞれ設けられており、これら各縦長孔(8)及び横長孔(9)には、図3及び図4に示すように、鍵連動部としての上下1対のフック状をなす係止爪(10)(10)が組み付けられている。なお、鍵連動部としての上下1対の係止爪(10)(10)は、扉の上下端近傍に設ける方が効果が大きく好ましい。この係止爪(10)は、図8及び図9に示すように、先端部(10a)に、下方に向き開放する係止顎部(11)を有し、その後端部(10b)に、回動軸(12)と係合軸(13)とが前後方向に突設されており、前記回動軸(12)は、デッドボルト(7)の縦長孔(8)に挿入されて、図6及び図7に示すように、戸当りスラット(4)内の側面に回動自在に取り付けられるようになっているとともに、前記係合軸(13)は、デッドボルト(7)の横長孔(9)に係合されている。
【0024】
各係止爪(10)(10)は、両シャッタ扉(2)(2)の閉扉状態における閉錠時に、シリンダ錠(6) の閉錠操作に応じて可動するデッドボルト(7) の上方への可動動作に連動して、図2及び図3に示すように、シャッタ扉(2)における一方の戸当りスラット(4)の戸当り面(4b)に設けた上下の開口(14)(14)から外部に向け突出するように、回動軸(12)の軸回りに回転動作させて、紙面左側の他方のシャッタ扉(2)における戸当りスラット(4)の戸当り面(4b)に設けた上下の被係止部としての係止孔(15)(15)に、それぞれの係止顎部(11)(11)を係止させうるようになっている。
【0025】
一方、両シャッタ扉(2)(2)の開錠時には、シリンダ錠(6) の開錠操作で、図5に示すように、デッドボルト(7) を下方に可動させ、この可動動作に連動させて、前記各係止爪(10)(10)を反時計回りに回動させることにより、他方の戸当りスラット(4)の戸当り面(4b)に設けられた係止孔(15)(15)から、それぞれの係止顎部(11)(11)を開放させるようになっている。
【0026】
なお、上記した本実施形態において、箱体(1)の開口部を、左右方向に摺動可能な左右1対のシャッタ扉(2)(2)でもって閉扉/開扉するように構成したが、上下方向に摺動可能な上下1対の両シャッタ扉、または、一枚のシャッタ扉(2)でもって、左右または上下方向に摺動させることにより閉扉/開扉可能にしてもよい。また、上下2個の係止爪(10)(10)でもって閉錠/開錠するように構成したが、デッドボルト(7)に連動する係止爪(10)を、2個以上に増加させてもよく、さらに、デッドボルト(7)及び係止爪(10)(10) の動作方向も、上下方向とは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る扉の施錠装置を左右1対のシャッタ扉に用いた一実施形態におけるキャビネットの閉扉状態を示す正面図である。
【図2】一方の扉側の係止爪と他方の扉側の係止孔との係止状態を分解して示す要部拡大斜視図である。
【図3】一方の扉側における係止爪の閉錠状態を示す裏面側から見た要部拡大裏面図である。
【図4】同じく、図3の一方の扉側における係止爪の閉錠状態を示す要部拡大縦断側面図である。
【図5】一方の扉側における係止爪の開錠状態を示す要部拡大側面図である。
【図6】シリンダ錠とそれに連動するデッドボルトの拡大正面図である。
【図7】同じく、図6の側面図である。
【図8】係止爪を上側から見た拡大斜視図である。
【図9】同じく、係止爪を下側から見た拡大斜視図である。
【図10】従来の扉の施錠装置をシャッタ扉に用いたキャビネットの閉扉状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0028】
(A) 施錠機構
(1) 箱体
(2) シャッタ扉
(3) スラット(閉塞板)
(4) 戸当りスラット(閉塞板)
(4a) 前面
(4b) 戸当り面
(5) 把手部
(6) シリンダ錠(鍵操作部)
(6a) 鍵穴
(7) デッドボルト(鍵可動部)
(7a) 端部
(8) 縦長孔
(9) 横長孔
(10) 係止爪(鍵連動部)
(10a) 先端部
(10b) 後端部
(11) 係止顎部
(12) 回動軸
(13) 係合軸
(14) 開口
(15) 係止孔(被係止部)
(01) 箱体
(02) シャッタ扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット等の箱体における前面開口部を、多数の閉塞板が互いにフレキシブルに連結された左右方向もしくは上下方向に摺動可能なシャッタ扉でもって閉扉/開扉させるようにするとともに、シャッタ扉の先端部に取り付けられた施錠機構でもって閉錠/開錠するようにした扉の施錠装置において、
前記施錠機構を、シャッタ扉の前面側から施錠操作可能な鍵操作部と、この鍵操作部の施錠操作に応じてシャッタ扉の摺動方向と直交する向きに可動する鍵可動部と、この鍵可動部の可動動作に連動してシャッタ扉の先端部から突出するように回転動作し、閉錠時に、シャッタ扉の先端部が当接する対面側に設けた被係止部に係止する鍵連動部とを備え、この鍵連動部を、複数の位置で前記被係止部に係止させるようにしたことを特徴とする扉の施錠装置。
【請求項2】
シャッタ扉が、左右もしくは上下1対のシャッタ扉でもって構成され、一方のシャッタ扉に、前記施錠機構を取り付けるとともに、他方のシャッタ扉に被係止部を設けた請求項1記載の扉の施錠装置。
【請求項3】
鍵可動部が、デッドボルトからなるとともに、鍵連動部が、前記デッドボルトの可動動作に連動して軸回りに回動可能なフック状の係止爪からなる請求項1または2記載の扉の施錠装置。
【請求項4】
被係止部を、前記係止爪が係止される係合孔で形成した請求項3記載の扉の施錠装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、多数の閉塞板が互いにフレキシブルに連結された左右方向もしくは上下方向に摺動可能なシャッタ扉に代えて、その他の左右方向もしくは上下方向に摺動可能な扉を用いたことを特徴とする扉の施錠装置。
【請求項6】
扉が、軟質樹脂製扉、布製扉、アコーディオンカーテン扉のうちのいずれかであることを特徴とする請求項5記載の扉の施錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−186934(P2007−186934A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6677(P2006−6677)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)