説明

扉鎖錠装置

【課題】 扉を開いた状態においても鎖錠棒の先端部で騒音が発生することがなく、しかも弾性材からなるサポータを挿入する必要もなく安価に製作できる扉鎖錠装置を提供する。
【解決手段】 扉2に設けられた操作ハンドル3に連動して昇降する鎖錠棒6の先端部に、扉2に向けて湾曲させた湾曲部17を形成し、その上下にストレート部18,16を形成する。また、鎖錠棒6の先端部を支持するために扉2の裏面に支持板のガイド部14を設け、ガイド部14の先端側の接触部14aを基端側の接触部14bよりも高い位置に形成する。鎖錠棒6を降下させて扉2を開いた状態においては、ストレート部18が支持板7の傾斜したガイド部14と係合するため両者間の隙間が小さくなり、扉2を開いたときにも鎖錠棒6がガタツクことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器収納用ボックス等の扉を鎖錠棒によって鎖錠する扉鎖錠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機器収納用ボックス等の扉の鎖錠装置としては、扉の表面に設けられた操作ハンドルを回転させると、扉の裏面に設けられた長尺の鎖錠棒が昇降してその上下の先端部がボックス本体と係合し、扉を開けないようにする構造のものが広く用いられている。その一例は特許文献1に示されるとおりであり、鎖錠棒の基端部は操作ハンドルのリンク板に枢着され、操作ハンドルの回転に連動して昇降する。また鎖錠棒の先端部は扉の裏面に設けられた支持板にガイドされ、確実にボックス本体と係合するようになっている。
【0003】
これらの支持板は扉の裏面に水平に設けられて鎖錠棒を上下方向にガイドするのであるが、鎖錠効果を高めるために鎖錠棒の先端を扉側に湾曲させ、鎖錠棒の先端をボックス本体に係合させた状態から更に操作ハンドルを回転させることにより、扉をボックス本体側に強く引き寄せる力を生じさせている。したがって、支持板には鎖錠棒の湾曲部分が通過することが可能なガイド孔が設けてあるが、その大きさは鎖錠棒の直径に対してかなり大きい(約1.5倍)ものである。
【0004】
ところが、このように支持板に鎖錠棒に対して大きいガイド孔を設けておくと、扉が鎖錠されているときには問題がないものの、扉を開いた状態では鎖錠棒の先端部がガイド孔の内部でガタガタと動き、騒音を発するという問題があった。なおこのような騒音をなくすために特許文献1に示されるように支持板のガイド部に弾性材からなるサポータを挿入することも行なわれているが、部品点数が増加してコストアップ要因となるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−159107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、扉を開いた状態においても鎖錠棒の先端部で騒音が発生することがなく、しかも弾性材からなるサポータを挿入する必要もなく安価に製作できる扉鎖錠装置を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の扉鎖錠装置は、扉に設けられた操作ハンドルに連動して昇降する鎖錠棒の先端部に、扉に向けて湾曲させた湾曲部を形成したうえ、その上下にストレート部を形成するとともに、鎖錠棒の先端部を支持するために扉の裏面に支持板のガイド部を設け、ガイド部の先端側の接触部を基端側の接触部よりも高い位置に形成したことを特徴とするものである。なお、ガイド部を扉側に向けて傾斜させた構造とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の扉鎖錠装置は、扉の裏面に設けられた支持板のガイド部の一方の接触部を他方の接触部よりも高い位置に形成したものであるから、鎖錠棒を昇降させる際には鎖錠棒の湾曲部が段差のある接触部間を通過するため、スムーズな昇降が可能である。しかし扉を開いたときには鎖錠棒のストレート部が段差のある接触部間に係合して両者間の隙間が狭くなるので、弾性材からなるサポータを挿入しなくても騒音が発生することがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1は本発明の扉鎖錠装置を示す断面図であり、1は電気機器収納用ボックスのボックス本体、2はその前面に枢着されている扉、3は扉2の上下方向中央部に設けられた操作ハンドルである。従来のものと同様、操作ハンドル3は扉2を貫通して裏面に延びる回転軸4を備えており、扉2の裏面側のリンク板5を回転できる構造となっている。
【0009】
このリンク板5には上下の鎖錠棒6,6の基端部が枢着されており、操作ハンドル3の回転操作に連動して鎖錠棒6,6を昇降させることができる。鎖錠の場合には上側の鎖錠棒6は上昇し、下側の鎖錠棒6は下降することとなるが、このような構造及び動作は業界において従来から周知であるので、以下の説明は上側の鎖錠棒6について行なう。下側の鎖錠棒6は上下が反対となっているだけで、構造及び動作は同様である。
【0010】
図1に示されるように、(上側の)鎖錠棒6の上端部は扉2の裏面に設けられた支持板7に支持されており、最上端部にはローラ8が設けられている。そして図1のように鎖錠棒6が上昇したとき、このローラ8がボックス本体1の枠部9の裏面と係合し、扉2を開くことができないように鎖錠する。以上の構成は従来品と同様である。しかし本発明では、図2以下に示すように支持板7を工夫し、鎖錠棒6をガイドするガイド部を扉2側に向けて傾斜させてある。
【0011】
図2は支持板7単体の斜視図であり、図3以下はその使用状態説明図である。この実施形態の支持板7は金属板を略コの字状に折り曲げ成形し、扉取付け面11、上部水平面12、下部水平面13を一体に形成したものである。上部水平面12の先端部は上面が扉2側に向かうように傾斜させてあるので、凹部周縁部のガイド部14の先端側の接触部14aは、基端側の接触部14bより高い位置となっている。この部分に後述する鎖錠棒6のストレート部分を上下方向に通過させることができる程度の大きさの凹部を設け、鎖錠棒6のガイド部14としてある。また下部水平面13にもこのガイド部14とは逆向きの凹部15を形成し、図3以下に示すように鎖錠棒6を支持している。
【0012】
なお鎖錠棒6も、昇降時に支持板7のガイド部14にガイドされる先端部を、湾曲させてある。すなわち、支持板7の下部水平面13に対応する部分はストレート部16であるが、その先端側をガイド部14と同様に扉2側に向けて湾曲させ、湾曲部17とし、さらにその先端をストレート部18としてある。なおこの実施形態では、ガイド部14の傾斜角度は水平面に対して30°、湾曲部17の傾斜角度も垂直面に対して30°である。しかしこれらの傾斜角度の大きさは、適宜変更できることはいうまでもない。
【0013】
このように構成された本発明の扉鎖錠装置は、操作ハンドル3の回転操作に連動して鎖錠棒6を昇降させ、その先端部のローラ8をボックス本体1の枠部9の裏面と係合させて扉を鎖錠することは従来と同様である。図6に示すように、従来は鎖錠棒は支持板が扉の裏面に水平に設けられているので、鎖錠棒の湾曲部分が通過するための間隙を設けておく必要があり、ガイド穴は鎖錠棒の直径の約1.5倍ほどの大きさとなるが、本発明では、ガイド部14の先端側の接触部14aは基端側の接触部14bより高い位置にあるので、両接触部間(凹部)が鎖錠棒6のストレート部が通過できる程度の大きさであっても、鎖錠棒6の湾曲部17とストレート部18の扉側の境界部分17aが接触部14bを通過した後は、鎖錠棒6をガイド部の凹部すなわち両接触部間(凹部)をすり抜けるように移動させることができ、スムーズに昇降させることができる。
【0014】
このようにして鎖錠棒6を上昇させると、図4に示すように鎖錠棒6の先端部のローラ8は扉2側に移動し、ボックス本体1の枠部9の裏面と強く係合して優れた鎖錠効果を発揮する。この状態では鎖錠棒6のストレート部16が支持板7の傾斜したガイド部14と係合している。
【0015】
また鎖錠棒6を降下させて扉2を開いた状態においては、図5に示すように鎖錠棒6の湾曲部17よりも先端側のストレート部18が支持板7の傾斜したガイド部14と係合する。すなわちガイド部14の両接触部間(凹部)は鎖錠棒6のストレート部が上下方向に通過できる程度の大きさであるため、両者間の隙間が小さくなり、扉2を開いたときにも鎖錠棒6がガタツクことがない。従って本発明においては、扉2を開いた状態においても鎖錠棒6の先端部で騒音が発生することがなくなり、しかも弾性材からなるサポータを挿入する必要もないので安価に製作できる利点がある。
【0016】
上記の説明ではガイド部14はその上面が扉2側に向かうように傾斜させることにより、接触部間に段差を形成したものであるが、ガイド部をクランク状に折り曲げることにより、段差を形成したものであっても良い。また、上側の鎖錠棒6について行なったが、下側については上下が反転するだけで同様である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の扉鎖錠装置を示す断面図である。
【図2】支持板単体の斜視図である。
【図3】鎖錠棒を昇降中の状態の説明図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【図4】扉を鎖錠した状態の説明図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【図5】扉を開いた状態の説明図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【図6】従来と本発明とを比較して説明する図であり、(A)は扉を開いた状態、(B)は鎖錠棒を昇降中の状態を示す。
【符号の説明】
【0018】
1 ボックス本体
2 扉
3 操作ハンドル
4 回転軸
5 リンク板
6 鎖錠棒
7 支持板
8 ローラ
9 枠部
11 扉取付け面
12 上部水平面
13 下部水平面
14 ガイド部
14a 先端側の接触部
14b 基端側の接触部
15 凹部
16 ストレート部
17 湾曲部
17a 扉側の境界部分
18 ストレート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉に設けられた操作ハンドルに連動して昇降する鎖錠棒の先端部に、扉に向けて湾曲させた湾曲部を形成したうえ、その上下にストレート部を形成するとともに、鎖錠棒の先端部を支持するために扉の裏面に支持板のガイド部を設け、ガイド部の先端側の接触部を基端側の接触部よりも高い位置に形成したことを特徴とする鎖錠装置。
【請求項2】
ガイド部を扉側に向けて傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載の鎖錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−59887(P2006−59887A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237822(P2004−237822)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【Fターム(参考)】