説明

手摺の施工方法および手摺

【課題】 本発明は、外観意匠性を優先するものであっても施工を安全且つ容易に行える手摺の施工方法および手摺を提供することにある。
【解決手段】 足場10上に間隔をあけて複数の支柱1を立設し、各支柱1の足場外側の見付け面1a間に跨るかたちで、枠長手方向に延びるパネル呑込み溝12bを上面に有する下枠3を固定すると共に、各支柱1の足場外側の見付け面1aに、下端が下枠3に当接する状態で縦枠2を固定してパネル4を保持する枠体2,3を形成する第一の工程、枠体2,3の開放した上側からパネル4を差し入れてパネル4の両側端部を、隣り合う両縦枠2,2のそれぞれのパネル呑込み溝12a,12aに沿って摺動させると共に、パネル4の下端部を下枠3のパネル呑込み溝12bに落とし込む第二の工程、枠体2,3から露出するパネル4の上端部に、笠木8の下端部に有する下向きのパネル呑込み溝12cを差し入れると共に、笠木8を支柱1の上部に固定する第三の工程を経ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段やベランダ、フェンス、スロープ、廊下等に取り付ける手摺に関するものであり、特に支柱間にパネルを取り付ける態様の手摺とその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物外観の多様化から、バルコニーや階段手摺の柵として採用するものがあり、このような手摺は、施工手順の一例として、支柱から持ち出すブラケットを介して上下左右のフレームを枠組みする枠体を取り付けた後、その枠体内にパネルを挿入して施工されるものであった。
【特許文献1】特開平8−260563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した手摺の場合、パネルを枠体に嵌め込むときには、枠体上枠のパネル呑込み溝にパネルを下方から差し入れて倹鈍式に取り付けるものであった。また、近年、外観意匠性を考慮した手摺が求められており、その中でも縦枠の見付け幅をできるだけ狭くしてパネルが連続するような視覚的効果を奏するものがある。しかしながら、このような手摺を設置するとき、手摺支柱の見付け幅よりも持ち出し位置にある縦枠の見付け幅が狭いことから、支柱間の間隔よりも縦枠間の間隔が広くなる。このことから、足場側からパネルを取り付けようとすれば、支柱を避けるようにしてパネルを前後に傾けた状態で差し入れなければならず、このような状況ではパネルの取り付けが容易ではなく、例えば高層住宅のベランダ手摺等では、高所作業車やゴンドラ等を使用するケースもあったため、施工コストや工期に影響を及ぼす重大な問題点があった。
【0004】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、外観意匠性を優先するものであっても施工を安全且つ容易に行える手摺の施工方法および手摺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明は、足場上に間隔をあけて複数の支柱を立設し、各支柱の足場外側の見付け面間に跨るかたちで、枠長手方向に延びるパネル呑込み溝を上面に有する下枠を固定すると共に、各支柱の足場外側の見付け面に、下端が下枠に当接する状態で縦枠を固定してパネルを保持する枠体を形成する第一の工程、枠体の開放した上側からパネルを差し入れてパネルの両側端部を、隣り合う両縦枠のそれぞれのパネル呑込み溝に沿って摺動させると共に、パネルの下端部を下枠のパネル呑込み溝に落とし込む第二の工程、枠体から露出するパネルの上端部に、笠木の下端部に有する下向きのパネル呑込み溝を差し入れると共に、笠木を支柱の上部に固定する第三の工程を経ることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2記載の発明は、支柱と、下枠と、縦枠と、パネル部と、笠木とを備えており、支柱は、上部に笠木を取り付ける上部ブラケットを有しており、外側の見付け面には側部ブラケットを有すると共に、側部ブラケットの下側には下部ブラケットを有しており、側部ブラケットには枠長手方向に延びるパネル呑込み溝を有する縦枠を固定し、且つ下部ブラケットには枠長手方向に延びるパネル呑込み溝を有する下枠を固定して上側が開放した枠体を形成し、枠体は、その内周側に、各パネル呑込み溝に保持されるかたちでパネルが取り付けてあり、笠木は、長手方向に連続するパネル呑込み溝を有しており、笠木のパネル呑込み溝にパネル上端部を呑込ませると共に、笠木を支柱の上部ブラケットに固定し、枠体と笠木でパネルの四周により保持するものであり、笠木は、パネル呑込み溝よりも内側の位置で分割又は開閉し、上部ブラケットに固定した状態で枠体の上方位置を開放できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、パネル呑込み溝を有する両側縦枠と下枠とから、パネル呑込み溝を内周側に連続させる状態で三方に枠組みし、開放した三方枠体の上側からパネルを差し入れることにより、縦枠の見付け幅がどのような状態であっても、パネルを容易且つ安全に枠体に取り付けることができる。
【0008】
本発明のうち請求項2記載の発明によれば、枠体の上側位置で笠木が分割することから、笠木を支柱に取り付けた状態で笠木の一部を分割することにより、パネルを上方から枠体に差し入れることができるので、施工効率が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図3(a)〜(f)に示す、本実施による施工手順を経て形成される手摺の縦断面図である。
【図2】(a)は、図2(b)中Aを拡大して示す横断面図であり、(b)は、図1を横断面して示す手摺の全体図である。
【図3】(a)〜(f)は、本実施による手摺の施工手順を示す簡略化した正面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す縦断面図であり、(a)は、枠体にパネルを取り付ける段階の状態を示す縦断面図であり、(b)は、施工途中の状態を示す縦断面図であり、(c)は、施工完了時の縦断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す縦断面図であり、(a)は施工完了時の縦断面図であり、(b)は、施工途中の状態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す縦断面図であり、(a)は施工完了時の縦断面図であり、(b)は、施工途中の状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の手摺について、バルコニー手摺に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
本実施による手摺は、図1のように、コンクリート足場(足場)10上部の外側端部に設置するものであり、支柱1と、枠体2,3と、パネル4と、笠木8とからなっている。支柱1は、中空押出形材で形成されており、下端にはアンカーボルト9を垂直に取り付けてあるとともに、そのアンカーボルト9および、支柱1下端の一部をコンクリート足場10に埋設して支柱1を強固に支持し、さらに、コンクリート足場10の外側端部上面に沿って間隔をあけた複数箇所に起立させている。また、支柱1のコンクリート足場10外側の見付け面1aには、図2(a)(b)のように、支柱1に沿って長い横断面ほぼT字状の側部ブラケット5と、その側部ブラケット5の下位置に外側突出する水平片を有する下部ブラケット15とがネジ11で固定してある。さらに、枠体2,3は、両側の縦枠2,2と下枠3とから上向きコ字型に枠組みしたものであり、両側の縦枠2,2と下枠3のそれぞれの内周側には断面凹状をなすパネル呑込み溝12a,12bが設けてある。また、パネル呑込み溝12a,12bは、枠組みしたときに両側の縦枠2,2と下枠3の三方に連続しており、パネル4の両側端部と下端部の三方を連続して呑込むことができる(図3(a)〜(f)参照)。さらに、枠体2,3の両側の縦枠2,2は、図2(a)(b)のように、内側に向けて突出する持出し部2aを有し、その持出し部2aは、横断面ほぼU字状をなしており、各支柱1にT字の横片をネジ11で固定してある側部ブラケット5のT字の外側突出片5aに対し、U字の溝部を上方から差し込んで下向きにスライドしてネジ11で互いを固定してある。これにより、縦枠2が側部ブラケット5から左右方向の移動を規制された状態で固定する。また、下枠3は、図1のように、下部ブラケット15の上面に載置してあり、下枠3と下部ブラケット15との固定は支持材18を介してネジ11で固定してある。笠木8は、横長ほぼ矩形状をなす中空押出形材であり、下端面のやや外側寄りの位置には、下向きのパネル呑込み溝12cが設けてあり、そのパネル呑込み溝12cから内側部分については、ほぼ水平な支柱1との被取付面13を有している。
【0012】
次に、笠木8と支柱1およびパネル4との取付構造について説明する。
図1を参照すれば、まず支柱1側では、その支柱1の上端部に、ほぼ水平な板状の上部ブラケット6が外側に向けて張り出した状態でネジ11により取り付けてある。次にパネル4は、枠体2,3のパネル呑込み溝12a,12bに差し入れたときに、パネル4の上端部のみが枠体2,3から露出した状態となる。そして、パネル4の上端部を笠木8のパネル呑込み溝12cに差し入れるとともに、上部ブラケット6に沿わせ、その上部ブラケット6の下端面側から笠木8の被取付面13にネジ11で固定することにより、笠木8と支柱1およびパネル4とを固定する。また、パネル4と枠体2,3および笠木8と各々のパネル呑込み溝12a〜12cとの間にはシール材14を挟めて緩衝してあり、支柱1から枠体2,3を介して伝わる風圧や振動がパネル4に伝わるのを和らげる構造となっている。
【0013】
次に、本手摺の施工手順を以下に説明する。
第1の手順として、図3(a)にように、コンクリート足場10にアンカーボルト9を埋設して支柱1を起立し、支柱1の外側見付け面1a下位置に下部ブラケット15を介して下枠3を取り付ける。
第2の手順として、図3(b)のように、下部ブラケット15と下枠3の交差する位置に縦枠2,2を配置し、支柱1の外側見付け面1aに取り付けた側部ブラケット5で固定することにより、下枠3と両側の縦枠2,2とから上側が開放する上向きコ字型に三方枠組みする。
第3の手順として、図3(c)のように、支柱1の上端面に上部ブラケット6を固定する。
第4の手順として、図3(d)のように、上方が開放した枠体2,3の上側からパネル4を差し込み、両側の縦枠2,2内周側のパネル呑込み溝12b,12b上端の差入口に対してパネル4の下端側の両コーナー部をそれぞれ呑込ませる。
第5の手順として、図3(e)のように、パネル4の両側端部を両側の縦枠2,2のパネル呑込み溝12b,12bに沿って摺動させながら下枠3のパネル呑込み溝12bに下端部を落とし込み、下枠3と両側の縦枠2,2内周側にパネル4を取り付けて保持させる。そして、下枠3と両側の縦枠2,2のそれぞれのパネル呑込み溝12a,12b,12bにシール材14(図示省略)をそれぞれ挿入し、パネル4と枠体2,3とを緩衝させる。
第6の手順として、図3(f)のように、上部ブラケット6に笠木8を沿わせると共に、笠木8のパネル呑込み溝12cに枠体2,3から露出したパネル4の上端部を挿入し、さらに、パネル呑込み溝12cにシール材14(図示省略)を挿入してパネル4と笠木8を緩衝することにより、本実施による手摺の施工が完了する。
【0014】
上記の手順を経ることにより、枠体2,3の内周側に有するパネル呑込み溝12a,12bにパネル4が取り付けられた手摺が形成される。そして、パネル4を枠体2,3の上側から差し入れることで、パネル4を両側の縦枠2,2のパネル呑込み溝12b,12bに沿って摺動させることができる。これにより、縦枠2,2の見付け幅を狭くして外観意匠を重視するものであっても、支柱1間の間隔に影響されることなく、パネル4を枠体2,3のパネル呑込み溝12a,12b,12cに保持する状態で取り付けできる。しかも、パネル4を上方から枠体に差し入れることができるので、バルコニー外側(コンクリート足場10外側)からのパネル4の取り付けを想定した高所作業車やゴンドラ等の大掛かりな設備を要せず、また、コンクリート足場10内側からのパネル4の取り付けが可能となることで施工時の安全性を確保できる。
【0015】
図4に示すものは、本発明の手摺の他の実施形態である。
本実施のものでは、図4(a)(b)のように、笠木28が分割形成してあり、具体的には、笠木28が内外方向に分割しており、笠木外側パーツ28aと笠木内側パーツ28bの各々を形材長手方向にスライドさせて互いを係止している。具体的に、図4(b)のように、笠木内側パーツ28bの内側端部の上下に、上向きの一方係止片29a,29bをそれぞれ有しており、下側に位置する一方係止片29aの内側面中間部には切欠部26を有している。また、笠木内側パーツ28bの外側端部には、まず、上側に位置するものが下向きに突出し、且つ下側に位置するものが斜め外側上向きに突出する他方係止片27a,27bがそれぞれ設けてあり、笠木外側パーツ28aを笠木内側パーツ28bに笠木長手方向端からスライドさせたときに、下側の一方係止片29bの切欠部26に他方係止片27bが入り込んで互いが係止する。このように笠木28を形成すると、パネル24を縦枠22に取り付けるときに、笠木28の笠木外側パーツ28aを笠木内側パーツ28bから外すのみで、パネル24を縦枠22のパネル呑込み溝23に上側から差し入れることができ、手摺の施工をほぼ仕上げた状態で行えることから、手摺の施工が一層容易になる。また、本実施形態における施工手順については、上記実施形態の第3の手順で笠木内側パーツ28bを上部ブラケット25に固定し(図4(a)参照)、パネル24を支柱21の外側に配置する縦枠22のパネル呑込み溝23に差し入れた後に、笠木外側パーツ28aを笠木内側パーツ28bにスライドして係止される手順を経るものである。
【0016】
また、笠木8,28,38,48の分割箇所については、笠木8,28,38,48の分割箇所が離脱したときに、パネル4,24,34,44を差し入れるために枠体2,22,32,42上方が開放する位置であればよく、上記実施形態の他、図5(a)のように、笠木38が笠木上パーツ38aと笠木下パーツ38bとに分割形成してあり、上記の図4(a)(b)のものと同様に、笠木上パーツ38aが笠木長手方向にスライドして互いを係止するものであり、図5(b)のように、笠木上パーツ38aが笠木下パーツ38bから脱着されて、パネル34を枠体32のパネル呑込み溝33に差し入れるものであるが、図4(a)(b)と相違する点として、笠木上パーツ38aは、支柱31と枠体32に亘り形成してあることにより、両パーツ38a,38b間の継目を目立たなくしてある。また、図6(a)のように、笠木48が上下に分割形成してあると共に、内側に回転係合部49を有することで上下に開閉可能に形成してあり、図6(b)のように、その笠木48の笠木上パーツ48aが回転係合部49を基点に笠木下パーツ48bから上側に開くことにより縦枠42の上方を開放し、そこからパネル44を縦枠42のパネル呑込み溝43に差し込むことができるようしたものである。
【0017】
本発明では、笠木8,28,38,48の形状や大きさについて上記の各実施形態に限定されない。また、パネル4,24,34,44についても、上記各実施形態ではガラス製パネルを使用しているが、その他、樹脂性パネルや木製パネル等であってもよい。また、本発明による手摺は、上記実施形態ではバルコニーに適用したものについて説明しているが、通路やスロープ、階段、間仕切り等、その適用範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0018】
1 支柱
2 縦枠(枠体)
3 下枠(枠体)
4 パネル
8 笠木
10 コンクリート足場(足場)
12a〜12c パネル呑込み溝
1a 支柱の足場外側の見付け面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場上に間隔をあけて複数の支柱を立設し、各支柱の足場外側の見付け面間に跨るかたちで、枠長手方向に延びるパネル呑込み溝を上面に有する下枠を固定すると共に、各支柱の足場外側の見付け面に、下端が下枠に当接する状態で縦枠を固定してパネルを保持する枠体を形成する第一の工程、枠体の開放した上側からパネルを差し入れてパネルの両側端部を、隣り合う両縦枠のそれぞれのパネル呑込み溝に沿って摺動させると共に、パネルの下端部を下枠のパネル呑込み溝に落とし込む第二の工程、枠体から露出するパネルの上端部に、笠木の下端部に有する下向きのパネル呑込み溝を差し入れると共に、笠木を支柱の上部に固定する第三の工程を経ることを特徴とする手摺の施工方法。
【請求項2】
支柱と、下枠と、縦枠と、パネル部と、笠木とを備えており、
支柱は、上部に笠木を取り付ける上部ブラケットを有しており、外側の見付け面には側部ブラケットを有すると共に、側部ブラケットの下側には下部ブラケットを有しており、側部ブラケットには枠長手方向に延びるパネル呑込み溝を有する縦枠を固定し、且つ下部ブラケットには枠長手方向に延びるパネル呑込み溝を有する下枠を固定して上側が開放した枠体を形成し、
枠体は、その内周側に、各パネル呑込み溝に保持されるかたちでパネルが取り付けてあり、笠木は、長手方向に連続するパネル呑込み溝を有しており、笠木のパネル呑込み溝にパネル上端部を呑込ませると共に、笠木を支柱の上部ブラケットに固定し、枠体と笠木でパネルの四周により保持するものであり、
笠木は、パネル呑込み溝よりも内側の位置で分割又は開閉し、上部ブラケットに固定した状態で枠体の上方位置を開放できることを特徴とする手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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