説明

打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法

【課題】 表面にあばたが形成されることがない、品質、外観の優れた構造物に仕上げる。
【解決手段】 打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法であって、型枠12の内部にコンクリート13を打設した後に、前記コンリート13の内部に、複数の孔3を有する有孔管2の内部にバイブレータ4を収容した脱水・脱気装置1を挿入して引き抜く。バイブレータ4の振動でコンクリート13中から余剰水や空気等を孔3を通じて有孔管2の内部に排出させることができるので、打設したコンクリート13中の余剰水や空気等が硬化したコンクリート13の表面に露出して、あばたが形成されることがなく、品質、外観の優れたコンクリート構造物を構築することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法に関し、特に、硬化後のコンクリートの表面にあばたが形成されるのを防止するのに好適な打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜地等をコンクリートで被覆する工事においては、被覆対象の傾斜地等の全面に対応するように型枠を設置し、型枠の内部にコンクリートを打設して硬化させることにより、傾斜地等の全面を被覆する所定厚さのコンクリート構造物を構築している。
【0003】
また、このようなコンクリート被覆工事においては、硬化後のコンクリートの表面にあばたが形成され、構築後のコンクリート構造物の品質、外観が低下するのを防止するため、打設したコンクリートの内部にバイブレータを挿入して直接振動を与えたり、型枠の表面を木槌で叩いて振動を与えたりすることにより、コンクリート中から余剰水、空気、ノロ等を抜き、それらをコンクリートの上面に排出させて取り除いている。
【0004】
しかし、被覆対象が、1:0.5〜1:2.5程度の緩い勾配の法面の場合には、コンクリート内を上昇した余剰水や空気等の多くは型枠の内面に到達して排出される。このため、コンクリートの上面に排出された余剰水や空気等は取り除くことはできても、傾斜面に排出された余剰水や空気等は型枠を外さなければ取り除くことができないため、型枠を外した後の傾斜面の表面にあばたが形成され、構築後のコンクリート構造物の品質や外観を損ねるおそれがある。
【0005】
また、型枠の内部に複数層に分けてコンクリートを打設する場合には、上記のようなあばたが打継目に形成されることによって打継目の強度が低下するため、それらを打継目から取り除いて補修する作業が必要になり、その作業に多大な労力、時間、及び費用がかかる。
【0006】
一方、上記のような問題に対処するため、型枠の内面に有孔シートや吸水性シートを配置し、この有孔シートや吸水性シートによって打設したコンクリート中から余剰水や空気等を排出させることにより、硬化したコンクリートの表面にあばたが形成されるのを防止するように構成した工法が知られている(特許文献1等)。
【0007】
しかし、有孔シートや吸水性シートによる余剰水や空気等の排出効果は十分でないため、被覆対象が緩い勾配の法面の場合には、余剰水や空気等が傾斜面の表面に露出してあばたが形成され、構築後のコンクリート構造物の品質、外観を損ねるおそれがある。また、複数層に分けてコンクリートを打設する場合には、打継目に形成されたあばたを取り除いて補修する作業が必要になり、その作業に多大な労力、時間、及び費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2600727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、打設したコンクリート中から余剰水や空気等を十分に排出させることができ、これにより、硬化したコンクリートの表面にあばたが形成されるのを防止することができて、構築後のコンクリート構造物の品質、外観を高めることができる、打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法であって、型枠の内部にコンクリートを打設した後に、前記コンリートの内部に、複数の孔を有する有孔管の内部にバイブレータを収容した脱水・脱気装置を挿入して引き抜くことを特徴とする。
【0011】
本発明の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法によれば、有孔管の内部にバイブレータを収容した脱水・脱気装置を打設したコンクリート中に挿入して引き抜き、この際に、バイブレータの振動を有孔管を介して周囲のコンクリートに伝達せることにより、周囲のコンクリート中の余剰水や空気等を孔を通じて有孔管の内部に排出させることができる。そして、有孔管の内部に排出させた余剰水や空気等を、有孔管をコンクリートから引き抜くことにより、有孔管の上端の開口、及び各孔を通じて有孔管の外部に排出させ、或いは大気中に放出させることができる。
従って、余剰水や空気等が硬化したコンクリートの表面に露出してあばたが形成されるようなことはなく、構築後のコンクリート構造物の品質、外観を高めることができる。
【0012】
また、本発明において、型枠の内部にコンクリートを複数層に分けて打設し、各層のコンクリートの打設が完了した後に、各層のコンクリートに前記脱水・脱気装置を挿入して引き抜くこととしてもよい。
【0013】
本発明の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法によれば、コンクリートを複数層に分けて打設する場合に、各層の打設したコンクリート中から余剰水や空気等を有孔管の内部に排出させることができるので、それらが硬化したコンクリートの表面に露出してあばたが形成されるのを防止できる。
【0014】
さらに、本発明において、型枠の内部にコンクリートを複数層に分けて打設し、2層以上のコンクリートの打設が完了した後に、該2層以上のコンクリートに前記脱水・脱気装置を挿入して引き抜くこととしてもよい。
【0015】
本発明の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法によれば、コンクリートを複数層に分けて打設する場合に、2層以上の打設したコンクリート中から余剰水や空気等を有孔管の内部に排出させることができる。この場合、上層の打設したコンクリートの重量が下層の打設したコンクリートに作用することになるので、打設したコンクリート中から余剰水や空気等を効率よく有孔管の内部に排出させることができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記有孔管は、両端が開口され、又は先端が閉塞されていることとしてもよい。
【0017】
本発明の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法によれば、両端が開口した有孔管を打設したコンクリート中に挿入する場合には、バイブレータを振動させた状態で挿入することにより、有孔管の内部にコンクリートが流入するのを防止できる。また、先端が閉塞された有孔管を打設したコンクリート中に挿入する場合には、有孔管の内部にコンクリートが流入することがないので、有孔管の挿入と同時にバイブレータを作動させてもよいし、有孔管を挿入した後にバイブレータを作動させてもよい。
【0018】
さらに、本発明において、前記孔の直径の最大寸法は、前記有孔管と前記バイブレータとの間の隙間の最大寸法に合わせたものであり、前記孔の直径の最適な寸法は、使用する粗骨材の最大寸法の60〜75%に設定したものであることとしてもよい。
【0019】
本発明の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法によれば、使用する骨材のうち、粗骨材の最大寸法の60〜75%以下の大きさのものの有孔管2の内部への流入を許容することができるので、この大きさの骨材と一緒にコンクリート中の余剰水や空気等を有孔管2の内部へ流入させることができる。また、有孔管をコンクリートから引き抜くことにより、有孔管の内部に流入した骨材をコンクリート中に戻すことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上、説明したように、本発明の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法によれば、打設したコンクリート中から余剰水や空気等を十分に排出させることができるので、それらが硬化したコンクリートの表面に露出してあばたが形成されるようなことはなく、品質、外観の優れたコンクリート構造物を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法に使用する脱水・脱気装置を示した概略図である。
【図2】型枠の内部に複数層に分けてコンクリートを打設した状態を示した説明図であって、打設したコンクリート中から余剰水や空気等を抜く前の状態を示した説明図である。
【図3】図2の打設したコンクリート中から余剰水や空気等を抜いている状態を示した説明図である。
【図4】本発明による打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法を適用したコンクリート構造物の表面の状態を示した概略図である。
【図5】従来の工法によるコンクリート構造物の表面の状態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図3には、本発明による打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法の一実施の形態が示されている。本実施の形態の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法は、例えば、傾斜地11の表面をコンクリート13で被覆して所定厚さのコンクリート構造物を構築する際に適用することができるものである。
なお、本実施の形態では、法面の勾配が1:0.5〜1:2.5程度の緩い勾配の傾斜地11を対象とし、この傾斜地11にコンクリート13を打設する場合に本発明を適用している。
【0023】
傾斜地11の表面をコンクリート13で被覆するには、図2に示すように、被覆対象の傾斜地11に鉄筋(図示せず)を所定の間隔で配筋するとともに、傾斜地11の全面に対応するように型枠12を設置し、型枠12の内部にコンクリート13を複数層に分けて打設する。
【0024】
具体的には、まず、傾斜地11の表面に鉄筋を配筋し、型枠12を設置した後に、型枠12の内部に1層目のコンクリート13aを打設し、1層目のコンクリート13a中に棒状のバイブレータ(図示せず)を挿入し、バイブレータを作動させて振動を与えることにより、1層目のコンクリート13aの締め固めを行う。
【0025】
次に、1層目のコンクリート13aの打設、締め固めが完了した後に、1層目のコンクリート13aの上部に2層目のコンクリート13bを打設し、同様に、バイブレータを用いて2層目のコンクリート13bの締め固めを行う。
【0026】
そして、2層目のコンクリート13bの打設、締め固めが完了した後に、同様に、2層目のコンクリート13bの上部に3層目のコンクリートの打設、締め固めを行い、同様に、順次、上層のコンクリートの打設、締め固めを行い、型枠12の内部の全体に複数層に分けてコンクリート13の打設、締め固めを行う(なお、図2においては、1層目のコンクリート13a、2層目のコンクリート13bのみを示している)。
【0027】
また、上記のような各層のコンクリート13の打設、締め固めの作業後に、図1に示す脱水・脱気装置1を用い、各層の打設したコンクリート13中から余剰水、空気、ノロ等を抜く作業を行い、それらが各層のコンクリート13の表面(型枠13との接触面、上層のコンクリート13との打継目)に露出して、各層のコンクリート13の表面にあばたが形成されるのを防止する。
【0028】
脱水・脱気装置1は、例えば、図1に示すように、内外を貫通する脱水・脱気孔3が複数箇所に設けられる有孔管3と、有孔管3の内部に振動可能に収容される棒状のバイブレータ4と、バイブレータ4の電源(図示せず)と、バイブレータ4を電源に接続する電源ケーブル5とから構成されている。
【0029】
有孔管2は、例えば、塩化ビニル管や鋼管等を材料として、長手方向及び周方向に所定の間隔ごとに、或いはランダムに複数箇所に所定の大きさの脱水・脱気孔3を設けたものである。
【0030】
本実施の形態においては、内径が50mm、長さが2000mmのVP管(硬質ポリ塩化ビニル管)を用い、このVP管の長手方向及び周方向に100mm間隔ごとに複数箇所に直径が12mmの脱水・脱気孔3を設け、この有孔管2の内部に、外径が30mm、実振動長さが1800mmの棒状のバイブレータ4を挿入している。
【0031】
例えば、内径が50mmの有孔管2の内部に外径が30mmのバイブレータ4を挿入することにより、バイブレータ4の外面と有孔管2の内面との間に20mmの隙間6が形成され、この隙間6によって有孔管2の内部でバイブレータ4を十分に振動させることができる。
【0032】
脱水・脱脂装置1の有孔管2の内径を50mm、バイブレータ4の外径を30mmとした場合、有孔管2の脱水・脱気孔3の直径は、10mm〜20mmが好ましく、12mm〜15mmが更に好ましい。
【0033】
ここで、脱水・脱気孔3の直径の最大寸法の20mmは、バイブレータ4と有孔管2との間の隙間6の最大寸法に合わせたものである。また、最適な直径の12mm〜15mmは、使用する粗骨材の最大寸法の60〜75%に設定したものである。さらに、直径の最小寸法の10mmは、バイブレータ4と有孔管2との間の隙間6の最小寸法に合わせたものである。
【0034】
このような寸法に脱水・脱気孔3の直径を設定することにより、使用する骨材のうち、粗骨材の最大寸法の60〜75%以下の大きさのものの有孔管2の内部への流入を許容することができるので、この大きさの骨材と一緒にコンクリート13中の余剰水や空気等を有孔管2の内部へ流入させることができる。
なお、有孔管2の内部へ流入した骨材は、有孔管2をコンクリート13から引き抜くことにより、先端の開口及び各脱水・脱気孔3から有孔管2外に排出され、コンクリート13中に戻されることになる。
【0035】
本実施の形態では、有孔管2の両端を開口させているので、脱水・脱気装置1を打設したコンクリート13中に挿入する場合に、有孔管2の先端の開口から有孔管2の内部に打設したコンクリート13が流入するのを防止するために、バイブレータ4を作動させた状態で挿入する。
【0036】
なお、有孔管2の先端を閉塞させてもよい。有孔管2の先端を閉塞させた場合には、有孔管2の先端から有孔管2の内部に打設したコンクリート13が流入することがないので、有孔管2を打設したコンクリート13中に挿入するのと同時にバイブレータ4を作動させてもよいし、挿入後にバイブレータ4を作動させてもよい。
【0037】
上記のような構成の脱水・脱気装置1を用いて、打設したコンクリート13中から余剰水、空気、ノロ等を抜くには、例えば、図2に示すように、型枠12の内部に1層目のコンクリート13aを打設して、1層目のコンクリート13a締め固めが完了し、1層目のコンクリート13aの上部に2層目のコンクリート13bを打設し、2層目のコンクリート13bの締め固めが完了した後に、型枠12の内面から内方に約100mm離れた位置に脱水・脱気装置1を配置する。
【0038】
そして、図3に示すように、脱水・脱気装置1のバイブレータ4を作動させ(例えば周波数190ヘルツで作動)、この状態で脱水・脱気装置1を型枠12の内面とほぼ一定の距離(例えば、約100mm)を保った状態で、かつゆっくりと2層目のコンクリート13b及び1層目のコンクリート13a中に挿入し、脱水・脱気装置1の先端を1層目のコンクリート13aの下端に到達させる。この場合、脱水・脱気装置1は、作業者が有孔管2の内部にバイブレータ4を挿入した状態に人力で支えるものとする。
【0039】
そして、脱水・脱気装置1の先端が1層目のコンクリート13aの下端に達した後に、型枠12の内面とほぼ一定の距離を保った状態で脱水・脱気装置1をゆっくりと引き抜き、脱水・脱気装置1の全体を2層目のコンクリート13bの上端から上方に引き抜く。
【0040】
この際、バイブレータ4の振動が有孔管2を介して周囲のコンリート13に伝達されることにより、2層目のコンクリート13b及び1層目のコンクリート13a中の余剰水、空気、ノロ等が脱水・脱気孔3を通じて有孔管2の内部に流入し、有孔管2の内部に貯留される。
ここで、余剰水、空気、ノロ等は、コンクリート13に比較して比重が軽いため、一旦、有孔管2の内部に流入すると、外に逃げられないので、有孔管2の内部に閉じ込められる。
【0041】
そして、有孔管2の内部に貯留された水、空気、ノロ等は、有孔管2を2層目のコンクリート13bの上端から上方に引き抜いて大気に開放させることにより、有孔管2の上端の開口、及び各脱水・脱気3孔を通じて有孔管2の外部に排出され、或いは大気中に放出される。また、有孔管2の内部へ流入した骨材は、有孔管2をコンクリート13bから引き抜くことにより、先端の開口及び各脱水・脱気孔3から有孔管2外に排出され、コンクリート13b中に戻される。これにより、有孔管2内部が空の状態になるので、場所を変えて有孔管2をコンクリート13bに挿入することができる。
【0042】
さらに、上記の場合、2層目のコンクリート13bの重量が1層目のコンクリート13aに作用することにより、バイブレータ4の振動と相俟って1層目のコンクリート13a中、及び1層目のコンクリート13aと2層目のコンクリート13bとの打継目付近の余剰水、空気、ノロ等を効率よく有孔管2の内部に流入させることができる。
【0043】
そして、上記した脱水・脱気装置1を挿入し、引き抜く作業を、コンクリート13a、13bの全体に亘って位置を変えて繰り返すことにより、コンクリート13a、13bの全体から余剰水、空気、ノロ等を排出させる。
【0044】
こうして、2層目のコンクリート13b及び1層目のコンクリート13a中から余剰水、空気、ノロ等を排出させた後に、2層目のコンクリート13bの上部に3層目のコンクリートの打設、締め固め、4層目のコンクリートの打設、締め固めを順次行い、4層目のコンクリートの打設、締め固めが完了した後に、4層目のコンクリートの上方に脱水・脱気装置1を配置し、上記と同様の手順により、4層目のコンクリート及び3層目のコンクリートの全体から余剰水、空気、ノロ等を排出させる。
【0045】
以後、上記と同様の手順により、脱水・脱気装置1による余剰水、空気、ノロ等の排出作業を最上層のコンクリート13まで順次繰り返し行うことにより、型枠12の内部に打設された複数層のコンクリート13の全体から余剰水、空気、ノロ等を排出させる。
【0046】
このようにして、型枠12の内部に打設した複数層のコンクリート13中から余剰水、空気、ノロ等を抜くことにより、各層のコンクリート13の表面(打継面、傾斜面)にあばたが形成されるのを防止でき、品質、外観の優れたコンクリート構造物を構築することができる。
【0047】
上記のように構成した本実施の形態の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法にあっては、型枠12の内部に打設したコンクリート13中から余剰水、空気、ノロ等を十分に抜くことができるので、硬化後のコンクリート13の表面(上面、傾斜面)に余剰水、空気、ノロ等が露出して、コンクリート13の表面にあばたが形成されるようなことはない。
【0048】
従って、硬化後のコンクリート13の表面に形成されたあばたを取り除いて補修する作業が不要となるので、コンクリート構造物の構築に要する労力、時間、及び費用を大幅に削減することができる。
【0049】
また、型枠12の内部にコンクリート13を複数層に分けて打設する場合においても、コンクリート13中の余剰水、空気、ノロ等が打継目に露出して、打継目にあばたが形成されるようなことがないので、品質を向上させることができる。
【0050】
図4に、本発明の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法を適用したコンクリート構造物の表面の状態を示し、図5に、特許文献1に記載の工法により構築されたコンクリート構造物の表面の状態を示す。図4及び図5から明らかなように、従来の工法では、構築されたコンクリート構造物の表面に多少のあばたが形成されているが、本発明の方法では、構築されたコンクリート構造物の表面にあばたが形成されていないことが分かる。
【0051】
なお、前記の説明においては、型枠の内部に2層分のコンクリートの打設、締め固めが完了した後に、2層分のコンクリート中の余剰水、空気、ノロ等を脱水・脱気装置1によって排出させたが、1層ごとにコンクリート中の余剰水、空気、ノロ等を脱水・脱気装置1で排出させてもよいし、3層分以上のコンクリート中の余剰水、空気、ノロ等を脱水・脱気装置1によって排出させてもよい。
【0052】
さらに、前記の説明においては、複数層に分けて打設したコンクリート13中から余剰水、空気、ノロ等を排出させるのに本発明を適用したが、複数層に分けずに打設したコンクリート中から余剰水、空気、ノロ等を排出させるのに本発明を適用してもよい。
【0053】
さらに、前記の説明においては、本発明の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法を、傾斜面11の表面をコンクリート13で被覆する工事に適用したが、直壁を構築する場合に本発明を適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0054】
1 脱水・脱気装置
2 有孔管
3 脱水・脱気孔
4 バイブレータ
5 電源ケーブル
6 隙間
11 傾斜面
12 型枠
13 コンクリート
13a コンクリート(1層目)
13b コンクリート(2層目)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法であって、
型枠の内部にコンクリートを打設した後に、前記コンリートの内部に、複数の孔を有する有孔管の内部にバイブレータを収容した脱水・脱気装置を挿入して引き抜くことを特徴とする打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法。
【請求項2】
型枠の内部にコンクリートを複数層に分けて打設し、各層のコンクリートの打設が完了した後に、各層のコンクリートに前記脱水・脱気装置を挿入して引き抜くことを特徴とする請求項1に記載の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法。
【請求項3】
型枠の内部にコンクリートを複数層に分けて打設し、2層以上のコンクリートの打設が完了した後に、該2層以上のコンクリートに前記脱水・脱気装置を挿入して引き抜くことを特徴とする請求項1に記載の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法。
【請求項4】
前記有孔管は、両端が開口され、又は先端が閉塞されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法。
【請求項5】
前記孔の直径の最大寸法は、前記有孔管と前記バイブレータとの間の隙間の最大寸法に合わせたものであり、前記孔の直径の最適な寸法は、使用する粗骨材の最大寸法の60〜75%に設定したものであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の打設したコンクリートから余剰水及び空気を抜く方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−237157(P2012−237157A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107442(P2011−107442)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】