説明

打重ね時間間隔算出装置、打重ね時間間隔算出方法および打重ね時間間隔算出プログラム

【課題】コンクリートのコールドジョイントを防止することを支援する。
【解決手段】複数ブロックのコンクリートを打ち重ねて形成する躯体の厚さが含まれる躯体寸法と、躯体の垂直方向におけるブロックの層数と、層毎の高さとの入力を受付け、躯体の水平方向における長さと、躯体の水平方向におけるブロックの区画数との入力を受付け、ポンプの打設速度の入力を受付け、ブロック毎のコンクリートの打設順序の入力を受付け、躯体の厚さと、層毎の高さと、躯体の水平方向における長さと、区画数とに基づいて、1ブロックあたりのコンクリート量を算出し、算出された1ブロックあたりのコンクリート量と、ポンプの打設速度とに基づいて、1ブロックあたりの打設所要時間を算出し、打設所要時間と、打設順序とに基づいて、ブロックと、ブロックに接する他ブロックとの打重ね時間間隔を算出して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートのコールドジョイントを防止することを支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を建設する際の、例えば同日におけるコンクリート打設では、複数層に分けてコンクリートを打ち重ねていく。このように複数層のコンクリートを打ち重ねて躯体を形成する際、適正な時間間隔を過ぎてコンクリートを打設すると、硬化しはじめたコンクリートと後から打ち重ねたコンクリートとが一体化せず、不連続な面が生じるコールドジョイントが発生する場合がある。このようなコールドジョイントは構造的弱部であり、また打ち重ね部分がコンクリート表面に浮き出て美観を損ねる。そこで、特許文献1、2には、コールドジョイントに対してコンクリートを補修することにより、躯体の強度低下を改善したり美観上の問題を低減したりする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−140595号公報
【特許文献2】特開2001−248280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コールドジョイントが発生したコンクリートの強度低下の完全な補修は困難であり、補修には相当のコストがかかることなどから、そもそもコールドジョイントの発生を防止することが望ましい。そのためには、各層毎の打重ね時間間隔を、コールドジョイントが発生しない程度の時間間隔に収めるように打設を行う必要がある。ここで、躯体の厚さやブロックの長さ、高さ、ポンプの移動時間などに応じた打重ね時間間隔がどの程度になるかは、施工者等により手計算で行われる。そして、手計算により算出された打重ね時間間隔が、コールドジョイントの発生しない程度の時間間隔であるかどうかが施工者により判断される。これでは、適正な打重ね時間間隔の算出に労力や時間を要するだけでなく、人為的な計算ミスが発生することも考えられる。このような打重ね時間間隔は、施工者等にとって分かりやすく、間違いなく、かつ素早く算出できることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、複数ブロックのコンクリートを打ち重ねて躯体を形成する際のブロック毎のコンクリートの打重ね時間間隔を算出し、コンクリートのコールドジョイントを防止することを支援する打重ね時間間隔算出装置、打重ね時間間隔算出方法および打重ね時間間隔算出プログラムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、複数ブロックのコンクリートを打ち重ねて形成する躯体の厚さが含まれる躯体寸法と、躯体の垂直方向におけるブロックの層数と、層毎の高さとの入力を受付ける躯体寸法入力部と、躯体の水平方向における長さと、躯体の水平方向におけるブロックの区画数との入力を受付ける区画寸法入力部と、コンクリートを打設するポンプの打設速度の入力を受付ける打設速度入力部と、ブロック毎のコンクリートの打設順序の入力を受付ける打設順序入力部と、躯体の厚さと、層毎の高さと、躯体の水平方向における長さと、区画数とに基づいて、1ブロックあたりのコンクリート量を算出するコンクリート量算出部と、算出された1ブロックあたりのコンクリート量と、ポンプの打設速度とに基づいて、1ブロックあたりの打設所要時間を算出する所要時間算出部と、打設所要時間と、打設順序とに基づいて、ブロックと、ブロックに接する他ブロックとの打重ね時間間隔を算出する打重ね時間間隔算出部と、打重ね時間間隔を出力する出力部と、を備えることを特徴とする打重ね時間間隔算出装置である。
【0007】
また、本発明は、上述の出力部が、複数のブロックを、躯体におけるブロックの位置に、打設順序に応じて順次表示させる画像を出力することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、躯体がトンネルであり、上述の打重ね時間間隔算出部が、区画数に関わらず、トンネルの天井部を1ブロックとして打重ね時間間隔を算出することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述の打重ね時間間隔算出装置が、ブロック同士のコールドジョイントが発生しない程度に定められた打重ね時間間隔の閾値と、打重ね時間間隔算出部によって算出された打重ね時間間隔とを比較して、時間間隔算出部によって算出された打重ね時間間隔が閾値を超える場合に、出力部に警告を出力させる判定部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、複数ブロックのコンクリートを打ち重ねて形成する躯体の厚さが含まれる躯体寸法と、躯体の垂直方向におけるブロックの層数と、層毎の高さとの入力を受付けて記憶するステップと、躯体の水平方向における長さと、躯体の水平方向におけるブロックの区画数との入力を受付けて記憶するステップと、コンクリートを打設するポンプの打設速度の入力を受付けて記憶するステップと、ブロック毎のコンクリートの打設順序の入力を受付けて記憶するステップと、躯体の厚さと、層毎の高さと、躯体の水平方向における長さと、区画数とに基づいて、1ブロックあたりのコンクリート量を算出するステップと、算出された1ブロックあたりのコンクリート量と、ポンプの打設速度とに基づいて、1ブロックあたりの打設所要時間を算出するステップと、打設所要時間と、打設順序とに基づいて、ブロックと、ブロックに接する他ブロックとの打重ね時間間隔を算出するステップと、打重ね時間間隔を出力するステップと、を備えることを特徴とする打重ね時間間隔算出方法である。
【0011】
また、本発明は、打重ね時間間隔算出装置のコンピュータに、複数ブロックのコンクリートを打ち重ねて形成する躯体の厚さが含まれる躯体寸法と、躯体の垂直方向におけるブロックの層数と、層毎の高さとの入力を受付けて記憶するステップと、躯体の水平方向における長さと、躯体の水平方向におけるブロックの区画数との入力を受付けて記憶するステップと、コンクリートを打設するポンプの打設速度の入力を受付けて記憶するステップと、ブロック毎のコンクリートの打設順序の入力を受付けて記憶するステップと、躯体の厚さと、層毎の高さと、躯体の水平方向における長さと、区画数とに基づいて、1ブロックあたりのコンクリート量を算出するステップと、算出された1ブロックあたりのコンクリート量と、ポンプの打設速度とに基づいて、1ブロックあたりの打設所要時間を算出するステップと、打設所要時間と、打設順序とに基づいて、ブロックと、ブロックに接する他ブロックとの打重ね時間間隔を算出するステップと、打重ね時間間隔を出力するステップと、を実行させる打重ね時間間隔算出プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、複数ブロックのコンクリートを打ち重ねて形成する躯体の厚さが含まれる躯体寸法と、躯体の垂直方向におけるブロックの層数と、層毎の高さとの入力を受付け、躯体の水平方向における長さと、躯体の水平方向におけるブロックの区画数との入力を受付け、ポンプの打設速度の入力を受付け、ブロック毎のコンクリートの打設順序の入力を受付け、躯体の厚さと、層毎の高さと、躯体の水平方向における長さと、区画数とに基づいて、1ブロックあたりのコンクリート量を算出し、算出された1ブロックあたりのコンクリート量と、ポンプの打設速度とに基づいて、1ブロックあたりの打設所要時間を算出し、打設所要時間と、打設順序とに基づいて、ブロックと、ブロックに接する他ブロックとの打重ね時間間隔を算出して出力するようにしたので、複数ブロックのコンクリートを打ち重ねて躯体を形成する際のブロック毎のコンクリートの打重ね時間間隔を算出することができる。これにより、例えば、施工者は、打設しようとするコンクリートの躯体寸法等に応じた適正な打重ね時間間隔を知ることができ、この打重ね時間間隔と、コンクリートの硬化時間などとを比較することで、コールドジョイントが発生しないような打重ね時間間隔を策定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による打重ね時間間隔算出装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による打重ね時間間隔算出装置に表示される画面例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による打重ね時間間隔算出装置が打重ね時間間隔の算出対象とする躯体の例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による打重ね時間間隔算出装置に算出されるブロックの断面積の例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による打重ね時間間隔算出装置に表示される画面例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による打重ね時間間隔算出装置に表示される画面例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による打重ね時間間隔算出装置が出力する結果ファイルのデータ例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態による打重ね時間間隔算出装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による打重ね時間間隔算出装置100の構成を示すブロック図である。打重ね時間間隔算出装置100は、複数ブロックのコンクリートを打ち重ねて躯体を形成する際のコンクリートの打重ね時間間隔を算出するコンピュータ装置である。打重ね時間間隔算出装置100には、いわゆるPC(パーソナルコンピュータ)などが適用できる。打重ね時間間隔算出装置100は、出力部101と、躯体寸法入力部102と、区画寸法入力部103と、打設速度入力部104と、打設順序入力部105と、コンクリート量算出部106と、所要時間算出部107と、打重ね時間間隔算出部108と、出力制御部109と、判定部110とを備えている。
【0015】
出力部101は、情報入力画面や情報出力画面を出力して表示するディスプレイである。例えば、図2は、出力部101に表示される画面の例を示す図である。符号a〜eに表示されるような項目に情報が入力されると、符号fに示す画面に入力情報が表示されるように制御される。ここで、打重ね時間間隔算出装置100は、例えば図3に示されるような躯体を高さ方向に複数層、水平方向に複数区画で区切ることにより複数ブロックに分割して打設する際の打重ね時間間隔を算出するものである。ここでは、躯体はトンネルであるとして説明する。図に示されるように、躯体の水平方向の奥行き(スパン)が、複数の区画に分割される(図では、3区画)。また、躯体の垂直方向の高さが、複数の層に分割される(図では、5層)。本実施形態では、このような区画および層によって分割されたブロック毎にコンクリートが打設されるものである。
【0016】
図1に戻り、躯体寸法入力部102は、複数ブロックのコンクリートを打ち重ねて形成する躯体の厚さが含まれる躯体寸法と、躯体の垂直方向におけるブロックの層数と、層毎の高さとの入力を受付ける。図2の符号a1には、躯体の厚さ(履工厚)や、躯体の各部の長さや角度、層の数(層数)などの入力項目が示されている。符号fには、形成する躯体の形状の断面図と、躯体において定められた各点等を示す図形が表示されている。躯体寸法入力部102は、符号fの画面に表示される図形に応じて、ユーザによって入力される各点の座標や長さ、角度等の値を受付ける。符号a2には、層毎の高さの入力項目が示されている。躯体寸法入力部102は、符号a2に示される項目に入力される層毎の高さの値を受付ける。躯体寸法入力部102は、入力された各情報を自身の記憶領域に記憶させる。
【0017】
図1に戻り、区画寸法入力部103は、形成する躯体の水平方向における長さ(スパン長)と、躯体の水平方向におけるブロックの区画数(スパン長(分割数))との入力を受付ける。図2の符号bには、スパン長(m)とスパン長(分割数)との入力項目が示されている。区画寸法入力部103は、入力された各情報を自身の記憶領域に記憶させる。
【0018】
図1に戻り、打設速度入力部104は、コンクリートを打設するポンプの打設速度の入力を受付ける。図2の符号cには、ポンプの1hr(時間)あたりの打設量(打設速度)や、打設開始時刻、ポンプ数などの入力項目が示されている。打設速度入力部104は、入力された情報を自身の記憶領域に記憶させる。
【0019】
図1に戻り、打設順序入力部105は、ブロック毎のコンクリートの打設順序の入力を受付ける。図2の符号dには、符号a1に入力された層数と、符号bに入力されたスパン長(分割数)とに応じた各ブロックの打設順序を入力する表が示されている。打設順序入力部105は、符号dの表に含まれるブロック毎に、打設順序を示す数字の入力を受付けるようにしても良いし、例えばブロック箇所がクリックされたことを検知し、検知した毎に、その箇所に打設順序を連番に入力するようにしても良い。打設順序入力部105は、入力された情報を自身の記憶領域に記憶させる。
【0020】
コンクリート量算出部106は、躯体の厚さと、層毎の高さと、躯体の水平方向における長さと、区画数とに基づいて、1ブロックあたりのコンクリート量を算出する。ここで、コンクリート量算出部106は、まず、多角形公式によりブロック毎の断面積を算出する。例えば、特定のブロックの断面の形状は、躯体寸法に基づいて図4(a)に示すように算出することができる。このような断面を、図4(b)に示すような多角形に近似し、この多角形の面積を算出することでコンクリートの断面積を算出することができる。ここでは、例えば1層あたりの分割数を高さ方向に20分割した多角形を用いて算出する。例えば多角形におけるn個の頂点の座標を(X、Y)とすると、多角形公式である以下式(1)によって面積Sが算出される。
【0021】
【数1】

【0022】
また、コンクリート量算出部106は、(スパン長)÷(区画数)により、ブロック毎のスパン方向距離を算出することができる。そして、コンクリート量算出部106は、(断面積)×(スパン方向距離)の値を、1ブロックあたりのコンクリート量(体積)として計算する。コンクリート量算出部106は、算出したブロック毎のコンクリート量を自身の記憶領域に記憶させる。
【0023】
所要時間算出部107は、コンクリート量算出部106によって算出された1ブロックあたりのコンクリート量と、打設速度入力部104に入力されたポンプの打設速度とに基づいて、1ブロックあたりの打設所要時間を算出する。所要時間算出部107は、(コンクリート量)÷(打設速度)の値を、打設所要時間として算出する。所要時間算出部107は、算出したブロック毎の打設所要時間を自身の記憶領域に記憶させる。
【0024】
打重ね時間間隔算出部108は、打設所要時間と、打設順序とに基づいて、躯体を形成するブロックと、ブロックに接する他ブロックとの打重ね時間間隔を算出する。ここで、打重ね時間間隔算出部108は、まず、(打ち込み開始時刻)+(打設所要時間)+(ポンプ移動時間)の値を、打ち込み終了時刻として算出する。そして、打ち込み終了時刻を開始時刻として、打設順序が次であるブロックの打ち込み終了時刻を同様に算出する。このようにして、打重ね時間間隔算出部108は、ブロック毎の打ち込み開始時刻と、打ち込み終了時刻とを算出する。そして、打重ね時間間隔算出部108は、特定のブロックの打ち込み終了時刻と、そのブロックに接する他のブロックの打ち込み開始時刻との差を、打重ね時間間隔として算出する。また、ここで、打重ね時間間隔算出部108は、スパン方向の区画数に関わらず、トンネルの天井部を1ブロックとして打重ね時間間隔を算出する。打重ね時間間隔算出部108は、算出したブロック毎の打重ね時間間隔を自身の記憶領域に記憶させる。
【0025】
出力制御部109は、打重ね時間間隔算出装置100に入力される各情報に基づいて演算を行い、出力部101に画像を出力させる。例えば、出力制御部109は、図5の符号fに示すように、複数のブロックを、躯体におけるそのブロックの位置に、打設順序に応じて順次表示させる画像を出力部101に出力させる。ここでは、打設順序が1であるブロックから、ブロックの図形が順に画面上に表示され、打設順序が20であるブロックまでが表示された時点での画面を示している。
【0026】
図6は、打重ね時間間隔算出部108によって算出された打重ね時間間隔や、打設開始時刻や打設終了時刻などに基づいて、出力制御部109によって作成された表が、出力部101に表示された画面例を示している。符号aは、区画毎、層毎の打重ね時間間隔が示された表である。符号bは、区画毎、層毎に、打設するコンクリート量、打設開始時刻、打設終了時刻が示された表である。
また、出力制御部109は、打重ね時間間隔算出部108によって算出された情報を、例えば表計算アプリケーションなどのファイルフォーマットにデータ加工し、結果ファイルを出力するようにしても良い。例えば、図7は、打重ね時間間隔算出部108によって生成される結果ファイルのデータ例を示す図である。ここでは、ブロック毎の区画および層と、打ち込み開始時刻と、打ち込み終了時刻と、同区画の同層境の打重ね時間間隔と、同層の同区画境の打重ね時間間隔との情報が示されている。
【0027】
判定部110は、ブロック同士のコールドジョイントが発生しない程度に定められた打重ね時間間隔の閾値と、打重ね時間間隔算出部108によって算出された打重ね時間間隔とを比較して、打重ね時間間隔算出部108によって算出された打重ね時間間隔が閾値を超える場合に、出力部101に警告を出力させる。警告は、例えば、打重ね時間間隔が閾値を超えている旨のメッセージを表示したり、図6に示した画面において、打重ね時間間隔が閾値を超えているブロック箇所や打重ね時間間隔の数字を赤字で表示したりすることで出力する。ここで、閾値は、例えば、予め定められた時間(例えば、2時間)を判定部110が自身の記憶領域に予め記憶させておくことができる。
【0028】
次に、図面を参照して、本実施形態による打重ね時間間隔算出装置100の動作例を説明する。図8は、打重ね時間間隔算出装置100が打重ね時間間隔を算出する動作例を示すフローチャートである。躯体寸法入力部102は、躯体の厚さ、長さ、角度等を含む躯体寸法と、層数と、層毎の高さとの入力を受付ける(ステップS1)。区画寸法入力部103は、スパン長とスパン長(分割数)との区画寸法の入力を受付ける(ステップS2)。打設速度入力部104は、ポンプの打設速度や、打ち込み開始時刻の入力を受付ける(ステップS3)。打設順序入力部105は、ポンプ移動時間と、ブロック毎の打設順序の入力を受付ける(ステップS4)。
【0029】
コンクリート量算出部106は、躯体寸法入力部102に入力された躯体の厚さと、層毎の高さと、躯体寸法とに基づいて、多角形公式を用いてブロック毎の断面積を算出する。また、コンクリート量算出部106は、算出したブロックの断面積と、区画に応じたスパン方向距離を乗じることにより、ブロック毎のコンクリート量を算出する(ステップS5)。所要時間算出部107は、ステップS5において算出されたコンクリート量と、ステップS3において入力された打設速度とに基づいて打設所要時間を算出する(ステップS6)。
【0030】
そして、打重ね時間間隔算出部108は、ステップS3において入力された打ち込み開始時刻と、ステップS6において算出された打設所要時間と、ステップS4において入力されたポンプ移動時間とに基づいて、打ち込み終了時刻を算出する(ステップS7)。また、打重ね時間間隔算出部108は、ブロック毎の打ち込み開始時刻と打ち込み終了時刻とに基づいて、ブロック毎の打設開始時間間隔を算出する(ステップS8)。出力制御部109は、打重ね時間間隔算出部108によって算出された打ち込み終了時刻や打設開始時間間隔を表形式のデータに加工し、図6に示したような画面を出力部101に出力させる(ステップS9)。判定部110は、予め定められた閾値と、打重ね時間間隔とを比較する(ステップS10)。判定部110は、打重ね時間間隔が閾値より大きいと判定すると(ステップS10:YES)、出力制御部109に警告を出力させる(ステップS11)。そして、ステップS2に戻り、ユーザは、例えばブロック数を増やすために区画数または層数を増やして再度の入力を行い、打重ね時間間隔がコールドジョイントの起きない程度の時間間隔となるまで、打重ね時間間隔算出装置100による打重ね時間間隔の算出を行う。一方、ステップS10において、判定部110が、打重ね時間間隔は閾値より小さいと判定すると(ステップS10:NO)、打重ね時間間隔算出装置100は処理を終了する。
【0031】
なお、本実施形態では、ブロック同士のコールドジョイントが発生しない程度に定められた打重ね時間間隔の閾値は、予め定められた値が判定部110の記憶領域に記憶されていることとしたが、ユーザからこのような閾値の入力を受け付けるようにしても良い。あるいは、例えば温度条件やコンクリート強度などと、これらに応じたコールドジョイントが発生しない許容時間間隔の閾値とを対応付けた情報を予め記憶しておき、入力される温度条件やコンクリート強度の値に応じた閾値を読み出し、打重ね時間間隔との比較値として用いるようにしても良い。
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、コンクリートの打重ね時間間隔を打設ブロック毎に算出し、分かりやすく表示することができる。例えば、本実施形態の打重ね時間間隔算出装置100により、施工者が想定しているコールドジョイントが発生しない所定の時間間隔より大きい値が表示された場合、コンクリート打設高さや、打設順序、コンクリートの打設速度等を適宜変更して入力すると、入力情報に応じた打重ね時間間隔が即座に表示される。このように試行錯誤的に行う場合でも、入力条件を替えても即座にその結果が出力されるので、適切なコンクリート打設計画を効率良く策定できる。
【0033】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより打重ね時間間隔の算出を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0034】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0035】
100 打重ね時間間隔算出装置
101 出力部
102 躯体寸法入力部
103 区画寸法入力部
104 打設速度入力部
105 打設順序入力部
106 コンクリート量算出部
107 所要時間算出部
108 打重ね時間間隔算出部
109 出力制御部
110 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数ブロックのコンクリートを打ち重ねて形成する躯体の厚さが含まれる躯体寸法と、前記躯体の垂直方向における前記ブロックの層数と、当該層毎の高さとの入力を受付ける躯体寸法入力部と、
前記躯体の水平方向における長さと、前記躯体の水平方向における前記ブロックの区画数との入力を受付ける区画寸法入力部と、
前記コンクリートを打設するポンプの打設速度の入力を受付ける打設速度入力部と、
前記ブロック毎のコンクリートの打設順序の入力を受付ける打設順序入力部と、
前記躯体の厚さと、前記層毎の高さと、前記躯体の水平方向における長さと、前記区画数とに基づいて、1ブロックあたりのコンクリート量を算出するコンクリート量算出部と、
算出された前記1ブロックあたりのコンクリート量と、前記ポンプの打設速度とに基づいて、1ブロックあたりの打設所要時間を算出する所要時間算出部と、
前記打設所要時間と、前記打設順序とに基づいて、前記ブロックと、当該ブロックに接する他ブロックとの打重ね時間間隔を算出する打重ね時間間隔算出部と、
前記打重ね時間間隔を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする打重ね時間間隔算出装置。
【請求項2】
前記出力部は、複数の前記ブロックを、前記躯体における当該ブロックの位置に、前記打設順序に応じて順次表示させる画像を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の打重ね時間間隔算出装置。
【請求項3】
前記躯体はトンネルであり、
前記打重ね時間間隔算出部は、前記区画数に関わらず、前記トンネルの天井部を1ブロックとして前記打重ね時間間隔を算出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の打重ね時間間隔算出装置。
【請求項4】
前記ブロック同士のコールドジョイントが発生しない程度に定められた打重ね時間間隔の閾値と、前記打重ね時間間隔算出部によって算出された前記打重ね時間間隔とを比較して、時間間隔算出部によって算出された前記打重ね時間間隔が前記閾値を超える場合に、前記出力部に警告を出力させる判定部
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の打重ね時間間隔算出装置。
【請求項5】
複数ブロックのコンクリートを打ち重ねて形成する躯体の厚さが含まれる躯体寸法と、前記躯体の垂直方向における前記ブロックの層数と、当該層毎の高さとの入力を受付けて記憶するステップと、
前記躯体の水平方向における長さと、前記躯体の水平方向における前記ブロックの区画数との入力を受付けて記憶するステップと、
前記コンクリートを打設するポンプの打設速度の入力を受付けて記憶するステップと、
前記ブロック毎のコンクリートの打設順序の入力を受付けて記憶するステップと、
前記躯体の厚さと、前記層毎の高さと、前記躯体の水平方向における長さと、前記区画数とに基づいて、1ブロックあたりのコンクリート量を算出するステップと、
算出された前記1ブロックあたりのコンクリート量と、前記ポンプの打設速度とに基づいて、1ブロックあたりの打設所要時間を算出するステップと、
前記打設所要時間と、前記打設順序とに基づいて、前記ブロックと、当該ブロックに接する他ブロックとの打重ね時間間隔を算出するステップと、
前記打重ね時間間隔を出力するステップと、
を備えることを特徴とする打重ね時間間隔算出方法。
【請求項6】
打重ね時間間隔算出装置のコンピュータに、
複数ブロックのコンクリートを打ち重ねて形成する躯体の厚さが含まれる躯体寸法と、前記躯体の垂直方向における前記ブロックの層数と、当該層毎の高さとの入力を受付けて記憶するステップと、
前記躯体の水平方向における長さと、前記躯体の水平方向における前記ブロックの区画数との入力を受付けて記憶するステップと、
前記コンクリートを打設するポンプの打設速度の入力を受付けて記憶するステップと、
前記ブロック毎のコンクリートの打設順序の入力を受付けて記憶するステップと、
前記躯体の厚さと、前記層毎の高さと、前記躯体の水平方向における長さと、前記区画数とに基づいて、1ブロックあたりのコンクリート量を算出するステップと、
算出された前記1ブロックあたりのコンクリート量と、前記ポンプの打設速度とに基づいて、1ブロックあたりの打設所要時間を算出するステップと、
前記打設所要時間と、前記打設順序とに基づいて、前記ブロックと、当該ブロックに接する他ブロックとの打重ね時間間隔を算出するステップと、
前記打重ね時間間隔を出力するステップと、
を実行させる打重ね時間間隔算出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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