説明

投影露光装置及び分割露光方法

【課題】 アライメント精度の高い分割露光が可能な露光装置を提供する。
【解決手段】 マスクマーク20の位置と基板マーク30の位置が露光の際にオーバラップし、且つマスクマーク20は基板マーク30より大きく、露光光を遮光する。円形のマスクマーク20の直径φMと、円形の基板マーク30の直径φBは、φM>φBとなっている。またマスクマーク20には、遮光膜が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、投影露光装置及び分割露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストなどの感光材料を塗布した基板表面に所定のパターンを露光装置により感光焼き付けし、その後エッチング工程により基板上にパターンを形成するフォトリソグラフィ法が種々の分野で広く応用されており、プリント配線基板等も近年露光装置を用いて製造されている。
【0003】
従来プリント基板の露光装置は、コンタクト式露光装置による基板全面の一括露光が主流であったが、プリント基板の基材の性質である基板伸縮の影響によりコンタクト式露光装置の場合、位置合わせ精度の要求に応え難くなってきており、基板伸縮の影響を軽減できる投影露光による分割露光の必要性が高まっている。
また、生産効率を高めるために、1回の露光において得られる製品個数を多くするために、いわゆる多面付けの基板デザインが主流になりつつあり、この場合にも分割露光が行われる。
【0004】
分割露光を行う場合、被露光基板上の露光領域間(製品エリア間)のカッティングライン(カッティングエリア)は、例えばパッケージ基板の場合には0.5mm以下と非常に狭いものとなっている。分割露光の際に使用される基板アライメントマーク(以下基板マークとする)も当然この狭いカッティングエリアに配置される。
【0005】
このような場合、上記の狭いスペースに各分割露光エリアに対応した基板マークを配置することも考えられるが、現実的ではない。したがって、隣り合う分割露光エリアの基板マークを兼用するのが一般的である。
【0006】
【特許文献1】特開2004−12598
【特許文献2】特開2004−4215
【特許文献3】特開2006−072100
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、分割露光を行う場合、前の露光により前記カッティングエリアも露光してしまい、カッティングエリアにある基板マークとその周辺部が感光して変色し、基板マークの認識性が低下する問題がある。基板マークの認識性が劣化すると次の位置合わせ精度が低下する問題がある。
【0008】
分割式露光装置や投影露光装置には、特開2006−072100に代表されるようなマスクシャッタが設けられ、露光部のみを露出出来るようになっており、基板マークの配置されているカッティングエリアは露光せず、製品エリアのみを露光する構成になっている。しかし、カッティングエリアは非常に狭く、基板マークと露光部間のスペースが非常に小さく、またマスクシャッタの位置決め精度には限界があるため、露光部のみを露光させることは技術的に困難であり、基板マークを配したカッティングエリアも同時に露光せざるを得ないのが現状である。
そのため、上記した基板マークの表面を覆う感光性樹脂の露光により変色は避けられず、アライメント精度を悪化させる問題があった。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、露光光を照射する光源と、露光対象である基板に露光すべきパターンを描いたフォトマスクとを備え、該露光対象である基板の所定領域に前記フォトマスクのパターンを照射する投影露光装置において、フォトマスクに設けられた位置合わせ用のマスクマークと、基板に設けられた位置合わせ用の基板マークと、該マスクマークと基板マークを個別に撮像し、該撮像したマスクマークと基板マークに基づいて、フォトマスクと基板との位置あわせを行う位置合わせ装置と、を備え、前記マスクマークと前記基板マークが露光の際に重なる位置にあり、また、前記マスクマークは前記基板マークよりも大きく、更に、前記マスクマークは露光光に関して遮光性を有する、ことを特徴とする。
上記構成により、感光性樹脂の意図しない感光による、基板マークの認識精度低下およびアライメント精度悪化の影響を防ぐことができる。
なお、本発明は、マスクマークと基板マークを共通の撮像素子で観察・検出しないアライメント方式(特開2004−4215)、またはマスクマークと基板マークを順次切替えて同一の撮像素子で観察し検出してアライメントを行う方式(特開2004−12598)に有効となる。
ひとつの撮像素子で同時に基板マークとマスクマークを観測する方式の場合は、マスク側上方より照明し、基板面上にマスク側マークを結像させ、その反射光により観測するため、基板マークはマスクマークの影となり、観測不可能となる。そのため、この方式には採用できない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の投影露光装置及び分割露光方法は、マスクシャッタの非常に高い設定位置精度を要求する必要もなく、また製品間のカッティングエリアを拡げて、基板1枚あたりの製品個数を少なくすることもなく、高アライメント精度を維持した分割露光が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はプリント配線基板を製造するための投影露光装置であり、フォトレジストを施されたプリント配線基板3は基板ステージ35に載置され、移動装置36によりXYZ及びθ方向に移動可能になっている。
なお、移動装置36は演算制御装置11に制御される。
【0012】
露光すべき回路等のパターンが描かれたフォトマスク2は投影露光レンズ70を介してプリント配線基板3に対向して設けられており、マスクステージ25に支持されてその位置を調整することができるようになっている。また露光光源71からの紫外線の露光により回路等のパターンを、投影露光レンズ70により決定される所定の倍率で拡大或いは縮小或いは等倍にプリント配線基板3に焼き付けるようなっている。
【0013】
なお、図1ではフォトマスク2とプリント配線基板3は上下方向に配設されているが、これに限定されるものではなく、逆であっても良いし、或いはフォトマスク2とプリント配線基板3を垂直に立てて配設する構造も可能である。
また、プリント配線基板3を移動させるのではなくフォトマスク2を移動させることも可能であり、更に両者を移動させるように構成することも可能である。
【0014】
フォトマスク2にはマスクマーク20が設けられており、プリント配線基板3には基板マーク30が設けられている。このマスクマーク20と基板マーク30を用いて位置合わせを行うようになっている。
【0015】
撮像ユニット1は本体部分に後述するようにCCDカメラや照明装置等を備えており、画像処理装置10、演算制御装置11及び表示装置12に接続している。
撮像ユニット1は移動可能であり、駆動制御装置(図示せず)を介して演算制御装置11により移動制御されている。
撮像ユニット1は必要に応じて、複数個設けることが可能であり、2個或いは4個設けるのが普通である。
【0016】
フォトマスク2と露光光源71との間には、マスクシャッタ4が設けられており、図2に示すようにフォトマスク2に描かれた回路パターン21の周囲をマスキングして、回路パターン21部分のみを露光できるようになっている。マスクシャッタ4はマスクシャッタ移動装置40により移動可能であり、演算制御装置11に制御されて所定部分の露光を行わせるように構成されている。
【0017】
図2はフォトマスク2とプリント配線基板3の関係を説明する図であり、模式的にフォトマスク2とプリント配線基板3を並べて描いてある。この実施形態では、フォトマスク2の回路パターン21をプリント配線基板3の4カ所の分割露光部31に分割露光するようになっている。
前記基板マーク30は分割露光部31の周囲のカッティングエリアの4カ所に設けられており、マスクマーク20も回路パターン21の周囲の4カ所に分割露光部31に対応して設けられている。
分割露光部31と分割露光部31に挟まれた、中央位置にある基板マーク30cは、左右の分割露光部31の露光に兼用される基板マーク30cになっている。
【0018】
図2において、マスクシャッタ4は、4枚の長方形のシャッタ片41から形成され、このシャッタ片41をマスクシャッタ移動装置40により移動することにより、回路パターン21の周囲を遮光し、回路パターン21部分のみを露光できるように構成されているが、シャッタ片41の位置決め精度に限界があるため、回路パターン21の周囲には遮光されない空間Gができる。回路パターン21の周囲にはマスクマーク20とこれに対応する位置に基板マーク30が存在し、その一部或いは全部が遮光されない空間Gの領域に入る。
そのため、露光時にはこの空間G部分も露光され、基板マーク30部分も露光されることになる。
【0019】
共用する基板マーク30cの場合、先の分割露光部31の露光により、基板マーク30c部分も露光され、感光されるため、基板マーク30cの認識精度が悪くなり、次の分割露光部31の位置合わせの際に位置合わせ精度が悪化する問題がある。
【0020】
本発明の実施形態においては、図3と図4に示すように、マスクマーク20の位置と基板マーク30の位置が露光の際にオーバラップし、且つマスクマーク20は基板マーク30より大きく、露光光を遮光するように構成されている。図4において、円形のマスクマーク20の直径φMと、円形の基板マーク30の直径φBは、φM>φBとなっている。
なお、露光光の遮光性のためにマスクマーク20には、クロム等の金属薄膜から成る遮光膜を形成しておくのが望ましい。
【0021】
このようにφM>φBの条件でマスクマーク20を形成すれば、位置合わせ後の露光に際して、図3に示すようにマスクマーク20が基板マーク30部分とその周囲を遮光して遮光エリア32形成する。この遮光エリア32に含まれる基板マーク30及びその周囲のフォトレジスト部34部分が感光されることがなく、遮光エリア32は非感光エリアとなる。
そのため、基板マーク30の認識精度が悪化し、位置合わせの際に位置合わせ精度が悪くなる問題を防止できる。
なお、マスクマーク20と基板マーク30の形状は任意であり、円形のほか4角形や他の形であっても良い。露光の際にマスクマーク20が基板マーク30を遮光できればどのような形状も採用可能である。
【0022】
動作を説明する。
最初に、マスクシャッタ4をマスクマーク20の全体が見えるところまで開き、マスクマーク20と露光すべき分割露光部31の基板マーク30を別々に観察、検出して、それぞれ対応するマークの中心のズレ量が最小になるようにフォトマスク2又はプリント配線基板3をX、Y θ方向に移動し位置合わせする。
【0023】
撮像ユニット1は、この実施形態では特開2004−4215に開示したものを使用している。この構成と動作を図5により簡単に説明する。
撮像ユニット1には、基板マーク用CCD5とマスクマーク用CCD6が個別に設けられており、基板マーク30とマスクマーク20を個別に撮像するようになっている。
【0024】
マスクマーク20は露光光源71の紫外線を照射され、投影露光レンズ70及びハーフミラー61を通過し、紫外線反射ミラー60で反射され、レンズ62、ビームスプリッタ51を通過し、反射鏡63で反射され、結像レンズ64によりマスクマーク用CCD6に撮像されるように構成されている。65は結像面65である。
紫外線反射ミラー60により、位置合わせの際には紫外線は基板3には照射されず、紫外線による悪影響が及ばないように構成されている。
【0025】
一方、基板マーク30は赤外線或いは可視光を照射する照明装置50により照射されハーフミラー61とレンズ62を通過し、ビームスプリッタ51で反射して結像レンズ52を通って、基板マーク用CCD5で撮像される。
【0026】
この基板マーク用CCD5とマスクマーク用CCD6により得られた基板マーク30とマスクマーク20の像データは画像処理装置10に送られ、ここで所定の処理を受けて、演算制御装置11に記録され、且つ表示装置12において再度画像化されて表示される。
【0027】
該基板マーク30とマスクマーク20の位置誤差を求めて、この誤差がゼロになるように基板ステージ35を移動させて位置合わせを行う。
【0028】
以上の位置合わせが終わったら、撮像ユニット1を退避させ、マスクシャッタ4により回路パターン21部分のみを露出させて、露光光源71による分割露光部31の露光を実行する。
【0029】
所定の分割露光部31の露光が終了したら、次の分割露光部31の露光を行う。この際に、上記した位置合わせを再度行う。この時、例えば、兼用される基板マーク30cは前回の露光の際に、マスクマーク20により遮光されているため、図3に示すように遮光エリア32の中に入っており、基板マーク30cとその周囲は露光されることなく、フォトレジスト部34の感光はない。そのため、基板マーク30cの識別性は良好なまま維持されており、位置合わせ精度も高いものを維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略正面図。
【図2】本発明のマスクマークと基板マークの一実施形態を示す概略平面図。
【図3】本発明の一実施形態におけるマスクマークによる遮光状態の説明図。
【図4】本発明のマスクマークと基板マークの一実施形態を示す概略正断面図。
【図5】本発明の撮像ユニット1の一実施形態を示す概略正面図。
【符号の説明】
【0031】
1:撮像ユニット、2:フォトマスク、3:プリント配線基板、4:マスクシャッタ、5:基板マーク用CCD、6:マスクマーク用CCD、10:画像処理装置、11:演算制御装置、12:表示装置、21:回路パターン、25:マスクステージ、26:フォトマスク移動装置、30:基板マーク、31:分割露光部、32:遮光エリア、33:露光エリア、34:フォトレジスト部、35:基板ステージ、36:移動装置、40:マスクシャッタ移動装置、41:シャッタ片、50:照明装置、51:ビームスプリッタ、52:結像レンズ、60:紫外線反射ミラー、61:ハーフミラー、62:レンズ、63:反射鏡、64:結像レンズ、65:結像面、70:投影露光レンズ、71:露光光源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光を照射する光源と、露光対象である基板に露光すべきパターンを描いたフォトマスクとを備え、該露光対象である基板の所定領域に前記フォトマスクのパターンを照射する投影露光装置において、
フォトマスクに設けられた位置合わせ用のマスクマークと、
基板に設けられた位置合わせ用の基板マークと、
該マスクマークと基板マークを個別に撮像し、該撮像したマスクマークと基板マークに基づいて、フォトマスクと基板との位置あわせを行う位置合わせ装置と、を備え、
前記マスクマークと前記基板マークが露光の際に重なる位置にあり、
また、前記マスクマークは前記基板マークよりも大きく、
更に、前記マスクマークは露光光に関して遮光性を有する、
ことを特徴とする投影露光装置。
【請求項2】
露光光を照射する光源と、露光対象である基板に露光すべきパターンを描いたフォトマスクとを備え、該露光対象である基板の所定領域に前記フォトマスクのパターンを照射する分割露光方法において、
フォトマスクに設けられた位置合わせ用のマスクマークと、基板に設けられた位置合わせ用の基板マークと、を個別に撮像するステップと、
該撮像したマスクマークと基板マークに基づいて、フォトマスクと基板との位置あわせを行う位置合わせ行うステップと、を有し、
前記マスクマークと前記基板マークが露光の際に重なる位置にあり、
また、前記マスクマークは前記基板マークよりも大きく、
更に、前記マスクマークは露光光に関して遮光性を有する、
ことを特徴とする分割露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−31561(P2009−31561A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195879(P2007−195879)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(300091670)株式会社アドテックエンジニアリング (23)
【Fターム(参考)】