抗微生物組成物とその使用方法
【課題】多様な病原体に関連した感染、罹患率、および死亡率を減少させるための組成物および方法を提供する。
【解決手段】水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤を含む組成物。病原性生物の感染、罹患率、および死亡率の減少は、病原性生物を、水相に分散させた油、有機溶媒、および界面活性剤を含む水中油型ナノ乳剤に接触させることによって得られる。
【解決手段】水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤を含む組成物。病原性生物の感染、罹患率、および死亡率の減少は、病原性生物を、水相に分散させた油、有機溶媒、および界面活性剤を含む水中油型ナノ乳剤に接触させることによって得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の出願は、そのそれぞれが、1999年4月28日に提出された米国特許仮出願第60/131,638号に対する優先権を主張する、1999年12月30日に提出された米国特許出願第09/474,866号の一部継続出願である2000年4月28日に提出された米国特許出願第09/561,111号の一部継続出願である。これらの出願はそれぞれの全文が参照として本明細書に組み入れられる。本発明は、DARPA助成金番号MDA972-97-1-0007によって米国政府の支援を一部受けた研究を行っているあいだになされた。政府は本発明において一定の権利を保有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、多様な病原体に関連した感染、罹患率、および死亡率を減少させるための組成物および方法に関する。本発明はまた、病原体および微生物がコロニーを形成したまたはそうでなければ感染した領域、試料、溶液、および食品の汚染を除去するための方法および組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
細菌、真菌、ウイルス、および細菌胞子のような病原体は、ヒトおよび動物の病気の多血症と共に、食品ならびに生物および環境試料の汚染の原因である。動物の微生物感染症の第一段階は一般的に、皮膚または粘膜の接着またはコロニー形成であり、この後感染性微生物の浸潤および播種が起こる。病原性細菌の流入口は、主として皮膚および粘膜である。
【0004】
特に、バシラス(Bacillus)属の細菌は、過酷な条件および極端な温度に耐える安定な胞子を形成する。炭疽菌(B.anthracis)によって農地が汚染されると、家畜、農業用、および野生動物に致命的な疾患が起こる(例えば、ドラゴンおよびレニー(Dragon and Rennie)、Can. Vet. J. 36:295[1995](非特許文献1)を参照のこと)。この生物によるヒトの感染は、通常感染動物または感染動物産物との接触が原因である(例えば、ウェルコス(Welkos)ら、Infect. Immun. 51:795[1986](非特許文献2)を参照のこと)。ヒトの臨床症状には、急激に発症してしばしば致死的となる肺炎型が含まれる。炭疽病の胃腸管および皮膚型はそれほど急激ではないが、積極的な治療を行わなければ致死となりうる(例えば、フランツ(Franz)ら、JAMA 278:399[1997](非特許文献3);およびパイル(Pile)ら、Arch. Intem. Med. 158:429[1998](非特許文献4)を参照のこと)。ヒトにおける炭疽菌(Bacillus anthracis)感染症は、ワクチン、抗体、および感染した家畜の適当な廃棄を含む有効な動物制御により、あまり一般的ではない。しかし、動物の炭疽菌感染症は、農地および農場の汚染除去が難しいことから依然として重要な問題である。さらに、戦争および/またはテロリストの活動によって持ち込まれるヒト感染症が懸念されている。
【0005】
炭疽病ワクチンは入手可能であり(例えば、アイビンス(Ivins)ら、Vaccine 13:1779[1995](非特許文献5)を参照のこと)、古典的な炭疽病を予防するために用いることができるが、異なる株の生物の遺伝的混合によってワクチンは無効となりうる(例えば、モブレー(Mobley)、Military Med. 160:547[1995](非特許文献6)を参照のこと)。生物兵器としての炭疽菌胞子を使用した場合に考えられる結末は、先のソビエト連邦における軍の微生物研究所からの炭疽菌(Bacillus anthracis)の偶発的な放出によって証明された。この事故により、死亡66例を含むヒト炭疽病症例77例を認めた。何例かの炭疽菌感染症は研究所から4キロメートル離れたところでも起こった(例えば、メセルソン(Meselson)ら、Science 266:1202[1994](非特許文献7)を参照のこと)。感染した犠牲者の遺伝子分析から、多数の株または遺伝的に変化した炭疽菌(B. anthracis)のいずれかが存在することが明らかとなった(例えば、ジャクソン(Jackson)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:1224[1998](非特許文献8)を参照のこと)。
【0006】
さらに、バシラス(Bacillus)属の他のメンバーもまた、多くのヒト疾患の病因物質であると報告されている。セレウス菌(Bacillus cereus)は一般的な病原体である。これは、胞子が調理しても生き残ることができるために、食品媒介疾患に関係する。これはまた、局所敗血症ならびに創傷および全身感染症にも関連している(例えば、ドロブニュースキ(Drobniewski)、Clin. Micro. Rev. 6:324[1993](非特許文献9)を参照のこと)。多くの細菌は、抗生物質に対する耐性を容易に作り出す。細菌の抗生物質耐性株に感染した生物は、重篤でおそらく生命に危険がある結末に直面する。
【0007】
耐性を作り出す細菌の例には、しばしば致死的感染症を引き起こすブドウ球菌(Staphylococcus)、肺炎および髄膜炎を引き起こす肺炎球菌(Pneumococci);下痢を引き起こすサルモネラ(Salmonella)および大腸菌(E. coli);血流、手術創傷および尿路感染症を引き起こす腸球菌(Enterococci)が含まれる(例えば、ベルケルマン(Berkelman)ら、J. Infect. Dis. 170(2):272[1994](非特許文献10)を参照のこと)。
【0008】
非常に貴重に進歩したものの、抗生物質および抗菌剤治療は、特に抗生物質に耐性の様々な細菌株が出現する場合には、いくつかの問題を有する。さらに、バシラス(Bacillus)胞子に対して非常に有効な消毒剤/殺虫剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム、ホルムアルデヒドおよびフェノール)は、環境、機器、および災害の汚染除去にはあまり適していない。これは、揮発性の煙の吸入後に組織壊死および重度の肺損傷が起こる毒性のためである。これらの化合物の腐食性の特性により、それらは感度のよい機器の汚染除去には適さない(例えば、アラスリ(Alasri)ら、Can. J. Micro. 39:52[1993](非特許文献11);ビューチャンプ(Beauchamp)ら、Crit. Rev. Tox. 22:143[1992](非特許文献12);ヘス(Hess)ら、Amer. J. dent. 4:51[1991](非特許文献13);リニアウィーバー(Lineaweaver)ら、Arch. Surg. 120:267[1985](非特許文献14);モルガン(Morgan)、Tox. Path. 25:291[1997](非特許文献15);およびラッセル(Russell)、Clin. Micro. 3:99[1990](非特許文献16)を参照のこと)。
【0009】
インフルエンザA型ウイルスは、インビトロ(例えば、カライバノバおよびスパイロ(Karaivanova and Spiro)、Biochem. J. 329:511[1998](非特許文献17);マメン(Mammen)ら、J. Med. Chem. 38:4179[1995](非特許文献18);およびヒュアン(Huang)ら、FEBS Letters 291:199[1991](非特許文献19)を参照のこと)およびインビボ(例えば、ワゴーンおよびゴア(Waghorn and Goa)、Drugs 55:721[1998](非特許文献20);メンデル(Mendel)ら、Antimicrob. Agents Chemother. 42:640[1998](非特許文献21);およびスミス(Smith)ら、J. Med. Chem. 41:787[1998](非特許文献22)を参照のこと)で抗ウイルス剤を調べるためのモデル系として広く用いられている一般的な呼吸器病原菌である。ウイルスサブタイプの抗原特異性を決定するエンベロープの糖蛋白質であるヘムアグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)は、容易に変異することができ、それによってウイルスは中和抗体から逃れることができる。現在の抗ウイルス化合物およびノイラミニダーゼ阻害剤は有効性が弱く、ウイルス耐性が一般的である。
【0010】
明らかに、病原体の曝露に関連した感染、罹患率、および死亡率を減少させる抗病原体組成物および方法が必要である。そのような組成物および方法は、好ましくは、微生物耐性を促進するまたはレシピエントに対して毒性となる望ましくない特性を有してはならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Dragon and Rennie、Can. Vet. J. 36:295[1995]
【非特許文献2】Welkosら、Infect. Immun. 51:795[1986]
【非特許文献3】Franzら、JAMA 278:399[1997]
【非特許文献4】Pileら、Arch. Intem. Med. 158:429[1998]
【非特許文献5】Ivinsら、Vaccine 13:1779[1995]
【非特許文献6】Mobley、Military Med. 160:547[1995]
【非特許文献7】Meselsonら、Science 266:1202[1994]
【非特許文献8】Jacksonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:1224[1998]
【非特許文献9】Drobniewski、Clin. Micro. Rev. 6:324[1993]
【非特許文献10】Berkelmanら、J. Infect. Dis. 170(2):272[1994]
【非特許文献11】Alasriら、Can. J. Micro. 39:52[1993]
【非特許文献12】Beauchampら、Crit. Rev. Tox. 22:143[1992]
【非特許文献13】Hessら、Amer. J. dent. 4:51[1991]
【非特許文献14】Lineaweaverら、Arch. Surg. 120:267[1985]
【非特許文献15】Morgan、Tox. Path. 25:291[1997]
【非特許文献16】Russell、Clin. Micro. 3:99[1990]
【非特許文献17】Karaivanova and Spiro、Biochem. J. 329:511[1998]
【非特許文献18】Mammen、J. Med. Chem. 38:4179[1995]
【非特許文献19】Huangら、FEBS Letters 291:199[1991]
【非特許文献20】Waghorn and Goa、Drugs 55:721[1998]
【非特許文献21】Mendelら、Antimicrob. Agents Chemother. 42:640[1998]
【非特許文献22】Smithら、J. Med. Chem. 41:787[1998]
【発明の概要】
【0012】
本発明は、多様な病原体に関連した感染、罹患率、および死亡率を減少させる組成物および方法に関する。本発明はまた、病原体および微生物がコロニーを形成したまたはそうでなければ感染した領域、試料、溶液、および食品の汚染を除去するための方法および組成物にも関する。本発明の組成物の特定の態様は非毒性であり、ヒトおよび他の動物によって安全に摂取してもよい。さらに、本発明の特定の態様は、化学的に安定で非染色性である。
【0013】
いくつかの態様において、本発明は、病原体に曝露されたまたは病原体に脅かされたヒトを含む動物を治療するために適した組成物および方法を提供する。いくつかの態様において、動物を、病原性生物に曝露される前に組成物の有効量に接触させる。他の態様において、動物を、病原性生物に曝露された後に組成物の有効量に接触させる。このように、本発明は、微生物感染症の予防および治療の双方を考慮する。
【0014】
他の態様において、本発明は、病原体に曝露されたまたは病原体を含むことが疑われる有機および無機試料を含む溶液および表面の汚染を除去するために適した組成物および方法を提供する。本発明のなお他の態様において、組成物は、生物および環境試料において有害または望ましくない微生物の増殖を予防するための添加剤として用いられる。
【0015】
好ましい態様において、病原性生物の感染、罹患率、および死亡率の減少は、油相、水相、および少なくとも一つの他の成分を含む水中油型ナノ乳剤に病原性生物を接触させることによって得られる。いくつかの好ましい態様において、乳剤はさらに溶媒を含む。いくつかの好ましい態様において、溶媒は有機リン酸溶媒を含む。なお他の態様において、有機リン酸塩に基づく溶媒は、ジアルキルホスフェートまたはトリアルキルホスフェート(例えば、トリブチルホスフェート)を含む。なお他の好ましい態様において、乳剤はさらにアルコールを含む。溶媒を用いる好ましい態様において、溶媒は組成物の油相において提供される。
【0016】
いくつかの態様において、本発明の組成物はさらに、一つまたはそれ以上の界面活性剤または洗剤を含む。いくつかの態様において、界面活性剤は非陰イオン性洗剤であると予想される。好ましい態様において、非陰イオン性洗剤はポリソルベート界面活性剤である。他の態様において、非陰イオン性洗剤は、ポリオキシエチレンエーテルである。本発明において用いられる界面活性剤には、ツイーン、トライトン、およびチロキサポールファミリーの化合物のような界面活性剤が含まれるがこれらに限定されない。
【0017】
特定の他の態様において、本発明の組成物はさらに、塩化セチルピリジニウムを含むがこれに限定されない化合物を含む、一つまたはそれ以上の陽イオンハロゲン含有化合物を含む。なお他の態様において、本発明の組成物は、特定の微生物、特に特定の細菌の胞子型の発芽を促進または増強する一つまたはそれ以上の化合物(「発芽増強物質」)をさらに含む。本発明の組成物を製剤化するために考慮される発芽促進物質には、L-アラニン、イノシン、CaCl2、およびNH4Cl等が含まれるがこれらに限定されない。なおさらなる態様において、本発明の組成物は組成物と微生物との相互作用を増加させる一つまたはそれ以上の化合物(「相互作用増強物質」)をさらに含む(例えば、エチレンジアミン四酢酸、またはエチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸のようなキレート化物質の緩衝液溶液)。さらに、本発明のさらに他の態様において、製剤はさらに、着色剤または着香料(例えば、色素およびペパーミント油)を含む。
【0018】
いくつかの態様において、組成物はさらに、乳剤の形成を助けるために乳化剤を含む。乳化剤には、油/水界面で凝集して2つの隣接する小滴の直接接触を防止するある種の連続的な膜を形成する化合物が含まれる。本発明の特定の態様は、その抗病原体特性を損ねることなく、水によって所望の濃度に容易に希釈される水中油型乳剤組成物を特徴とする。
【0019】
水相に分散された不連続な油滴の他に、水中油型乳剤はまた、小さい脂質小胞(例えば、しばしば互いに水相の層で分かれているいくつかの実質的に同心円の脂質二重層からなる脂質球体、ミセル(例えば、水相に対して極性の頭部が外側に面し、非極性の尾部が水相から離れて内側に隔離されるように並んだ分子50〜200個の小さい集合体中の両親媒性分子)、またはラメラ層(各粒子が水の薄膜によって分離された平行な両親媒性の二重層からなる脂質分散剤)のような、他の脂質構造を含みうる。
【0020】
これらの脂質構造は、非極性残基(例えば、長い炭化水素鎖)を水から離れさせる疎水力の結果形成される。上記の脂質調製物は、界面活性剤脂質調製物(SLP)として一般的に記述することができる。SLPは、粘膜に対する毒性が弱く、小腸内で代謝されると考えられる(例えば、ハモウダ(Hamouda)ら、J. Infect. Disease 180:1939[1998]を参照のこと)。SLPは、漂白剤のような消毒剤とは対照的にプラスチックおよび金属に対して非腐食性である。このため、SLPに基づく本発明の製剤は、細菌、真菌、ウイルスおよび他の病原性実体に対して特に有用であると思われる。
【0021】
本発明の特定の態様は、水中油型乳剤を含む組成物に病原体を接触させることを含む、微生物(例えば、病原性生物)の感染性を減少させる方法を考慮する。いくつかの好ましい態様において、乳剤は界面活性剤によって水相に分布した油相の形であり、油相には、有機リン酸塩に基づく溶媒と担体の油とが含まれる。いくつかの態様において、二つまたはそれ以上の異なる乳剤を病原体に曝露する。好ましい態様において、乳剤は融合原性および/または溶原性である。好ましい態様において、方法において用いられる油相は、リン酸塩に基づかない溶媒(例えば、アルコール)を含む。
【0022】
特定の態様において、接触は、病原体を殺すためまたは病原体の増殖を阻害するために十分な時間行う。他の態様において、本発明は、有害または望ましくない病原体を有する環境表面の汚染を除去する方法を提供する。そのような一つの態様において、病原体は環境表面に会合し、方法は、表面の汚染を除去するために十分な組成物の量を環境表面に接触させることを含む。汚染の除去によって病原体の完全な消失が起こることが望ましいかも知れないが、病原体が完全に消失する必要はない。いくつかの態様において、組成物および方法は、処置される表面が本発明の組成物によって十分に確実に処置されるように、さらに色素、塗料、ならびにその他の標識および同定化合物を含む。
【0023】
特定の態様において、動物は、本発明の組成物によって内科的に処置する。いくつかの好ましい態様において、接触は、皮内、皮下、筋肉内、または腹腔内注射によって行う。他の態様において、接触は、経口、鼻腔、頬、直腸、膣内、または局所投与によって行う。本発明の組成物を薬剤として投与する場合、組成物はさらに薬学的に許容されるアジュバント、賦形剤、安定化剤、希釈剤等を含むと考慮される。なおさらなる態様において、本発明は、さらなる薬学的に許容される生物活性分子(例えば、抗体、抗生物質、核酸トランスフェクション手段、ビタミン、無機質、補助因子等)をさらに含む組成物を考慮する。
【0024】
いくつかの好ましい態様において、本発明は、水中油型乳剤が、水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤を含む組成物を提供する。水相は水(例えば、脱イオン水、蒸留水、水道水)および溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩液)を含むがこれらに限定されない任意の種類の水相を含みうる。油相は、植物油(例えば、大豆油、アボガド油、亜麻仁油、ココナツ油、綿実油、スクアレン油、オリーブ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、菜種油、サフラワー油、およびヒマワリ油)、動物油(例えば、魚油)、香味油、水不溶性ビタミン、鉱油、およびモーター油を含むがこれらに限定されない任意の種類の油を含みうる。いくつかの好ましい態様において、油相は水中油型乳剤の30〜90容積%(すなわち、最終乳剤の総容積の30〜90%を占める)、より好ましくは50〜80%を含む。本発明は、アルコール成分の特性によって制限されないが、いくつかの好ましい態様において、アルコールはエタノールまたはメタノールである。さらに、本発明は界面活性剤の性質によって制限されないが、いくつかの好ましい態様において、界面活性剤はポリソルベート系界面活性剤(ツイーン20、ツイーン40、ツイーン60、およびツイーン80)、フェノキシポリエトキシエタノール(例えば、トライトンX-100、X-301、X-165、X-102、およびX-200、およびチロキサポール)、またはドデシル硫酸ナトリウムである。同様に、本発明はハロゲン含有化合物の特性によって制限されないが、いくつかの好ましい態様において、ハロゲン含有化合物は、ハロゲン化セチルピリジニウム、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルエチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化セチルトリブチルホスホニウム、ハロゲン化ドデシルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルベンジルジメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、臭化セチルトリブチルホスホニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、または臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムを含む。
【0025】
乳剤はさらに、第三、第四、第五等の成分を含んでもよい。いくつかの好ましい態様において、さらなる成分は、界面活性剤(例えば、第二の界面活性剤)、発芽増強剤、リン酸塩に基づく溶媒(例えば、トリブチルホスフェート)、ニュートラミンゲン、L-アラニン、塩化アンモニウム、トリプチカーゼ大豆ブロス、酵母抽出物、L-アスコルビン酸、レシチン、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、イノシン、水酸化ナトリウム、デキストロース、およびポリエチレングリコール(例えば、PEG200、PEG2000等)である。
【0026】
本発明はまた、本明細書に開示の乳剤のそれぞれを作製する方法を提供する。例えば、本発明は、混合物が油、水溶液、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、混合物を乳化することを含む水中油型乳剤を作製する方法を提供する。
【0027】
本発明はさらに、水中油型乳剤(例えば、本明細書に記載の水中油型乳剤のいずれか)を含む組成物に領域を曝露することを含む、領域を保護する(例えば、微生物の汚染から保護する)、または領域の汚染を除去する(例えば、領域における微生物を除去または数を減少させることによって領域の汚染を除去する)方法を提供する。方法は、任意の種類の領域に適用してもよい。例えば、いくつかの態様において、領域は固相表面(例えば、医療用装置)、溶液、生物の表面(例えば、ヒトの外側もしくは内側部分)、または食品を含む。
【0028】
本発明はまた、乳剤を提供する段階、および改変された乳剤を作製するために乳剤に成分を加えるまたは成分を除去する段階を含む、本明細書に記載の乳剤の任意のものを改変する方法を提供する。いくつかの態様において、方法はさらに、生物定量法において改変された乳剤を試験する段階を含む(例えば、処置領域に関連した微生物の量を減少させる乳剤の有効性を決定するための抗微生物アッセイ法)。本発明はまた、そのような改変された乳剤を商業的に用いる方法も考慮する。例えば、いくつかの態様において、方法はさらに、改変された乳剤の販売を宣伝するおよび/または改変された乳剤を販売する段階を含む。
【0029】
本発明はまた、本明細書に記載の水中油型乳剤のいずれかを含む輸送系(例えば、容器、ディスペンサー、包装等)を含むシステムを提供する。本発明は、さらに、本明細書に記載の水中油型乳剤のいずれかと接触する材料を含む系を含む。本発明は、乳剤に接する材料の性質によって制限されない。例えば、材料には、医療用装置、溶液、食品、洗剤、モーター油、クリーム、および生物材料(例えば、ヒト組織)が含まれるがこれらに限定されない。
【0030】
定義
本発明の理解を容易にするために、多くの用語および句を下記に定義する:
【0031】
本明細書において用いられるように、「微生物」という用語は、藻類、細菌、真菌(地衣類を含む)、原虫、ウイルス、およびウイルスより小さい物質の分類に入る、顕微鏡生物および分類上関連する肉眼的生物を意味する。微生物という用語は、他の生物(例えば、ヒトを含む動物、および植物)に対してそれ自身病原性である生物と、他の生物に対して病原性である物質を産生するが、生物自身は他の生物に対して直接病原性ではなく、または感染性でない生物の双方を含む。本明細書において用いられるように、「病原体」という用語およびその文法的に同等の用語は、他の生物に直接感染することによって、またはもう一つの生物に疾患を引き起こす物質を産生することによって(例えば、病原性毒素等を産生する細菌)、もう一つの生物(例えば、動物および植物)に疾患を引き起こす、微生物を含む生物を意味する。
【0032】
本明細書において用いられるように、「疾患」という用語は、種のメンバーの正常または平均として見なされる状態からの逸脱であり、その種の個体の大多数に対して有害でない条件で罹患個体に対して有害である逸脱を意味する(例えば、下痢、悪心、発熱、疼痛、および炎症等)。疾患は、微生物および/または病原体によって引き起こされてもよく、またはそれらとの接触に起因してもよい。
【0033】
「宿主」または「被験者」という用語は、本明細書において、本発明の組成物によって処置されるべき生物を意味する。そのような生物には、一つまたはそれ以上の病原体に曝露されている、または曝露されたことが疑われる生物が含まれる。そのような生物にはまた、病原体に対する望ましくない曝露を予防するために処置される生物が含まれる。生物には、動物(例えば、ヒト、家畜動物種、野生動物)、および植物が含まれるがこれらに限定されない。
【0034】
本明細書において用いられるように、「不活化する」という用語およびその文法的に同等の用語は、病原体の宿主感染能および/または病的な反応の誘発能を抑制、消失または減少させる能力を有することを意味する。
【0035】
本明細書において用いられるように、「融合原性」という用語は、微生物(例えば、細菌または細菌胞子)の膜に融合することができる乳剤を意味すると解釈される。融合原性乳剤の特定の例には、そのそれぞれの全文が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,618,840号、第5,547,677号、および第5,549,901号に記載されるW808Pおよび、米国特許第5,700,679号に記載されるNP9が含まれるが、これらに限定されない。NP9は、分岐ポリ(オキシ-1,2-エタネオリル),α-(4-ノニルフェナル)-ω-ヒドロキシ-界面活性剤である。以下に制限されないが、本発明において有用となる可能性があるNP9および他の界面活性剤は、その全文が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,662,957号の表1に記載されている。
【0036】
本明細書において用いられているように、「溶原性」という用語は、微生物(例えば細菌または細菌胞子)の膜を破壊することができる乳剤を意味する。例示的な溶原性組成物はBCTPである。本発明の好ましい態様において、同じ組成物に溶原性物質と融合原性物質との双方が存在すれば、いずれかの物質単独より増強された不活化効果が得られる。この改善された抗微生物組成物を用いる方法および組成物を本明細書において詳しく記載する。
【0037】
本明細書において用いられる「乳剤」という用語には、古典的な水中油型分散剤または小滴と共に、水不混和性の油相を水相と混合する場合に、無極性残基(例えば、長い炭化水素鎖)を水から離れさせ、極性の頭部基を水に向けさせる疎水力の結果として形成することができるその他の脂質構造が含まれる。これらの他の脂質構造には、単層、少ない層、および多層の脂質小胞、ミセル、および層状相が含まれるがこれらに限定されない。同様に、本明細書において用いられる「ナノ乳剤」という用語は、小さい脂質構造を含む水中油型分散剤を意味する。例えば、好ましい態様において、ナノ分散剤は、平均粒子径が約0.5〜5μmである小滴を有する油相を含む。「乳剤」および「ナノ乳剤」という用語は、本明細書において、本発明のナノ乳剤を意味するためにしばしば互換的に用いられる。
【0038】
本明細書において用いられるように、「接触した」および「曝露した」という用語は、本発明の組成物が、存在すれば微生物または病原体を不活化するように、本発明の一つまたはそれ以上の組成物を、病原体または病原体に対して保護されるべき試料に接触させることを意味する。本発明は、開示の組成物が病原体または微生物を不活化するために十分な容量および/または濃度で、病原体または微生物と接触することを意図する。
【0039】
「界面活性剤」という用語は、エネルギー的に水による溶媒和を好む極性頭部基と、水によって十分に溶媒和されない疎水性尾部とを含む任意の分子を意味する。「陽イオン性界面活性剤」という用語は、陽イオン頭部基を有する界面活性剤を意味する。「陰イオン性界面活性剤」という用語は、陰イオン頭部基を有する界面活性剤を意味する。
【0040】
「親水性-親油性バランス指数」および「HLB指数」という用語は、界面活性剤分子の化学構造をその表面活性に相関させる指数を意味する。HLB指数は、参照として本明細書に組み入れられる、メイヤース(Meyers、「界面活性剤の科学と技術(Surfactant Science and Technology)」、VCHパブリッシャーズインク、ニューヨーク、pp.231〜245[1992])によって記載されるように多様な経験的な式によって計算してもよい。本明細書において用いられるように、界面活性剤のHLB指数は、マックチェオン(McCutcheon)の第1巻:「乳化剤と洗剤(Emulsifiers and Detergents)」、北アメリカ版、1996年(参照として本明細書に組み入れられる)においてその界面活性剤に割付されたHLB指数である。HLB指数の範囲は、市販の界面活性剤に関して0〜約70またはそれ以上である。水に対する溶解度が高く、可溶化特性が高い親水性界面活性剤は、尺度の高い末端に存在し、油中の水の良好な溶解剤である水に対する溶解度が低い界面活性剤は、尺度の低い末端である。
【0041】
本明細書において用いられるように、「発芽増強剤」という用語は、細菌の特定の株の発芽を増強するように作用する化合物を記述する(例えば、L-アミノ酸[L-アラニン]、CaCl2、イノシン等)。
【0042】
本明細書において用いられるように、「相互作用増強剤」という用語は、乳剤と細菌(例えば、グラム陰性菌)の細胞壁との相互作用を増強するように作用する化合物を記述する。考慮される相互作用増強剤には、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸[EDTA]、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸[EGTA]等)および特定の生体物質(例えば、ウシ血清アルブミン[BSA]等)が含まれるがこれらに限定されない。
【0043】
「緩衝液」または「緩衝剤」という用語は、これを溶液に加えると、溶液がpHの変化に耐えるようになる材料を意味する。
【0044】
「還元剤」および「電子供与体」という用語は、一つまたはそれ以上の第二の材料の原子の酸化状態を還元するために第二の材料に電子を供与する材料を意味する。
【0045】
「一価塩」という用語は、金属(例えば、Na、K、またはLi)が溶液中で正味1+の荷電を有する(すなわち、電子より陽子が一つ多い)任意の塩を意味する。
【0046】
「二価塩」という用語は、金属(例えば、Mg、Ca、またはSr)が溶液中で正味2+の荷電を有する任意の塩を意味する。
【0047】
「キレート剤」または「キレート化剤」という用語は、金属イオンに結合するために利用できる孤立電子対を有する原子二つ以上を有する任意の材料を意味する。
【0048】
「溶液」という用語は、水性または非水性混合物を意味する。
【0049】
本明細書において用いられるように、「治療物質」という用語は、病原性微生物に接触した宿主における感染、罹患率、もしくは死亡の開始を減少させる、または病原性微生物に接触した宿主における感染、罹患率、もしくは死亡の開始を予防する組成物を意味する。そのような物質はさらに、薬学的に許容される化合物(例えば、アジュバント、賦形剤、安定化剤、希釈剤等)を含んでもよい。いくつかの態様において、本発明の治療物質は局所乳剤、注射用組成物、摂取用溶液等の形で投与される。投与経路が経口である場合、製剤は例えば、クリーム、軟膏、外用薬、またはスプレーであってもよい。
【0050】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、宿主(例えば、動物またはヒト)に投与した場合に有害なアレルギー反応または免疫応答を実質的に生じない組成物を意味する。その上、特定の態様において、本発明の組成物は、園芸または農業で用いられるために製剤化してもよい。そのような製剤には、浸液、スプレー、種子のコーティング、幹の注射液、スプレー、および霧が含まれる。本明細書において用いられるように、「薬学的に許容される担体」という用語には、任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、等張剤、および吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン、またはデンプングリコール酸ナトリウム)等が含まれる。
【0051】
本明細書において用いられるように、「局所」という用語は、皮膚および粘膜細胞ならびに組織(例えば、肺胞、頬、舌、咀嚼筋、または鼻粘膜、ならびに他の組織および中空の臓器または体腔の内側に沿って並ぶ細胞)の表面に本発明の組成物を適用することを意味する。
【0052】
本明細書において用いられるように、「局所活性物質」という用語は、宿主に対する適用(接触)部位で薬理学的反応を誘発する本発明の組成物を意味する。
【0053】
本明細書において用いられるように、「全身活性薬」という用語は、適用点または被験者への流入点から離れた部位で薬理学的反応を生じる物質または組成物を示すために広い意味で用いられる。
【0054】
本明細書において用いられるように、「医療用装置」という用語には、医療の過程において患者の体に対して、体において、体を通して用いられる任意の材料または装置が含まれる。医療用装置には、医療用インプラント、創傷手当装置、薬物輸送装置、および体腔および個体保護装置のような品目が含まれるがこれらに限定されない。医療用インプラントには、尿路カテーテル、血管内カテーテル、透析用短絡、創傷排液管、皮膚縫合糸、血管移植片、埋め込み型メッシュ、眼内装置、心臓弁等が含まれるがこれらに限定されない。創傷手当装置には、全身創傷包帯、生体移植片材料、テープ閉鎖および包帯、ならびに外科用切開布が含まれるがこれらに限定されない。薬物輸送装置には、針、薬物輸送皮膚小片、薬物輸送粘膜小片、および医療用スポンジが含まれるがこれらに限定されない。体腔および個体保護装置には、タンポン、スポンジ、手術用および検査用手袋、および歯ブラシが含まれるがこれらに限定されない。産児制限装置には、子宮内装置(IUDs)、隔膜、およびコンドームが含まれるがこれらに限定されない。
【0055】
本明細書において用いられるように、「精製された」または「精製する」という用語は、試料または組成物から汚染物質または望まない化合物を除去することを意味する。本明細書において用いられるように、「実質的に精製された」という用語は、試料または組成物から混入物質または望まない化合物を約70〜90%、100%までを除去することを意味する。
【0056】
本明細書において用いられるように、「表面」という用語はその最も広い意味において用いられる。一つの意味において、この用語は、本発明の組成物を接触させることができる生物または無生物物体(例えば、小胞、建物、および食品処理機器等)の最も外側の境界を意味する(例えば、動物に関しては、皮膚、毛髪、および毛皮等、かつ植物に関しては、葉、茎、開花部分、果実部分等)。別の意味において、この用語はまた、多くの経皮輸送経路(例えば、注射、摂取、経皮輸送、吸入等)によって組成物を接触させることができる動物および植物の内側の膜および表面を意味する(例えば、動物に関して:消化管、血管組織等、かつ植物に関して導管組織等)。
【0057】
本明細書において用いられるように、「試料」という用語はその最も広い意味において用いられる。一つの意味において、これは動物細胞または組織を意味しうる。もう一つの意味において、これは、生体および環境試料のような、任意の起源から得られる標本または培養を含むことを意味する。生体試料は、植物または動物(ヒトを含む)から得てもよく、液体、固体、組織、および気体を含む。環境試料には、表面物質、土壌、水、および産業試料のような環境材料が含まれる。これらの例は、本発明に適用可能な試料の種類を制限すると解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
以下の図は、本明細書の一部であり、本発明の特定の局面および態様をさらに証明するために含まれる。本発明は、本明細書に示した特定の態様の説明と共に、これらの図の一つまたはそれ以上を参照することによってよりよく理解される可能性がある。
【図1】セレウス菌(B. cereus)胞子に及ぼす本発明の乳剤の殺菌有効性を示す。
【図2】セレウス菌(B. cereus)胞子に及ぼす本発明の乳剤の殺菌有効性を示す細菌スメアを示す。
【図3】異なる炭疽菌(B. anthracis)胞子に及ぼす乳剤の異なる希釈液の殺胞子活性を示す。
【図4】本発明の乳剤と漂白剤の経時的な殺胞子活性の比較を示す。
【図5】本発明の乳剤と漂白剤の経時的な殺胞子活性の比較を示す。
【図6】培地によって希釈した本発明の乳剤の異なる希釈液の異なる炭疽菌(B. anthracis)胞子に対する殺胞子活性を示す。
【図7】テキサス州デルリオから得られた炭疽菌(B. anthracis)に対する本発明の乳剤の殺胞子活性の経時的変化を示す。
【図8】大腸菌の電子顕微鏡写真(10,000倍)を示す。
【図9】BCTPを処置した大腸菌の電子顕微鏡写真(10,000倍)を示す。
【図10】W808Pを処置した大腸菌の電子顕微鏡写真(10,000倍)を示す。
【図11】ビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)の電子顕微鏡写真(25,000倍)を示す。
【図12】W808Pを処置したビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)の電子顕微鏡写真(25,000倍)を示す。
【図13】BCTPを処置したビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)の電子顕微鏡写真(25,000倍)を示す。
【図14】X8W60PCを処置したビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)の電子顕微鏡写真(25,000倍)を示す。
【図15】インフルエンザA型ウイルス活性に及ぼすBCTP、W808P、およびX8W60PCの影響を示す。
【図16】異なるバシラス(Bacillus)種4種に対するBCTPの殺胞子活性を、バシラス種2種に対するX8W60PCと比較して示す。BCTPは、セレウス菌(Bacillus cereus)、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)、および巨大菌(Bacillus megaterium)胞子に対して、処置の4時間後に有意な殺胞子活性を示したが、枯草菌(Bacillus subtilis)胞子に対しては殺胞子活性を示さなかった。X8W60PCは、4時間でセレウス菌(Bacillus cereus)に対してより有効な殺作用を示し、BCTPに対して耐性である枯草菌(B. subtilis)に対しても殺胞子活性を有した。
【図17】セレウス菌(Bacillus cereus)に対するナノ乳剤の殺胞子活性の経時的変化を示す。100倍希釈したBCTPと共にインキュベートすると、4時間で95%の殺菌作用が得られた。1000倍希釈したX8W60PCと共にインキュベートすると、わずか30分で95%の殺菌作用が得られた。
【図18】BCTPによって処置および後処置したセレウス菌(Bacillus cereus)胞子の電子顕微鏡写真を示す。BCTPによる処置前では、皮質の均一な密度と明確な胞子外皮が存在することに注目すること。4時間のBCTP処置後の胞子は、胞子外皮と皮質の双方に破壊を示し、コア成分が失われている。
【図19】100倍希釈したBCTPの殺胞子活性に及ぼす発芽の阻害および刺激の効果を示す。BCTPの殺胞子活性は、10 mM D-アラニン(発芽阻害)の存在下で遅延し、50 μM L-アラニンと50 μMイノシン(発芽刺激)の存在下で促進された。
【図20】BCTPとセレウス菌(B. cereus)胞子の異なる組み合わせを皮下注射した動物の肉眼および組織学写真を示す。図20Aおよび図20Bは、10倍希釈したBCTPのみを注射した動物を示す。肉眼的な組織の損傷を認めず、組織学検査は炎症を示さなかった。図20Cおよび20Dは、セレウス菌(Bacillus cereus)胞子4×107個のみを皮下注射した動物を示す。大きい壊死領域の平均面積は1.68 cm2である。この領域の組織学検査から、皮下脂肪および筋肉を含む表皮および真皮の本質的に完全な組織壊死が示された。図20Eおよび図20Fは、最終希釈が10倍となるようにBCTPナノ乳剤と直前に混合したバシラス(Bacillus)胞子4×107個を注入したマウスを示す。これらの動物は、最小の皮膚病変を示し、平均面積は0.02 cm2であった(胞子による無処置感染症に起因するそれらの病変の約98%減少)。しかし、図20Fにおける組織学検査は、何らかの炎症を示しているが、表皮および真皮における細胞構造のほとんどが無傷であったことを示している。全ての組織病理学は4倍で示す。
【図21】セレウス菌(Bacillus cereus)胞子に感染させた実験的創傷を有する動物の肉眼的および組織学写真を示す。図21Aおよび図21Bは、セレウス菌(Bacillus cereus)胞子2.5×107個に感染させた実験的創傷を有するが処置しなかったマウスを示す。これらの組織学検査から、広い壊死と著しい炎症反応が示された。図21Cおよび図21Dは、セレウス菌(Bacillus cereus)胞子2.5×107個に感染させて生理食塩液によって1時間後に潅注した創傷を有するマウスを示す。48時間までに、創傷周囲に大きい壊死領域を認め、平均面積は4.86 cm2であった。さらに、この群の動物の80%が感染のために死亡した。これらの病変の組織学検査から、真皮および真皮下の全体的な壊死と、多数の栄養型バシラス(Bacillus)菌が示された。図21Eおよび図21Fは、セレウス菌(Bacillus cereus)胞子2.5×107個に感染させて、BCTPの10倍希釈液によって1時間後に潅注した創傷を有するマウスを示す。創傷に隣接して小さい壊死領域(0.06 cm2)を認めたが、これは胞子を接種して生理食塩液を潅注した動物と比較して98%減少した。さらに、これらの創傷のために死亡した動物は20%に過ぎなかった。栄養型バシラスが存在しなかったことを示したこれらの病変の組織学検査は、本発明の様々な乳剤のいくつかの特定の態様を説明している。
【図22A】界面活性剤脂質調製物によるインフルエンザA型感染症の阻害を示す。図22Aは、BCTP、W808P、SS、およびNNを示す。ウイルスをSLPと共に30分間インキュベートした後、希釈して、細胞に上層した。インフルエンザA型感染症の阻害は、細胞ELISAを用いて測定した。それぞれのデータ点は、繰り返し実験3回の平均値±標準誤差を表す。
【図22B】界面活性剤脂質調製物によるインフルエンザA型感染症の阻害を示す。図22Bは、BCTPとSSを示す。ウイルスをSLPと共に30分間インキュベートした後、希釈して、細胞に上層した。インフルエンザA型感染症の阻害は、細胞ELISAを用いて測定した。それぞれのデータ点は、繰り返し実験3回の平均値±標準誤差を表す。
【図23】抗インフルエンザ物質としてのBCTPの有効性をトライトンX-100と比較して示す。インフルエンザA型ウイルスをBCTP、トリ(n-ブチル)ホスフェート/トライトンX-100/大豆油(TTO)、トライトンX-100/大豆油(TO)、およびトライトンX-100単独(T)によって30分間処理した。トライトンX-100の濃度は、処置のために用いた全ての調製物において同じであった。インフルエンザA型感染症の阻害は、細胞ELISAを用いて測定した。それぞれのデータ点は、繰り返し実験3回の平均値±標準誤差を表す。
【図24】BCTPがアデノウイルスの感染性に影響を及ぼさないことを示す。アデノウイルスベクター(AD.RSV ntlacZ)にBCTPの3倍希釈液を30分間処置した後、293細胞のトランスフェクションに用いた。5日後、β-ガラクトシダーゼアッセイ法を行った。それぞれのデータ点は、繰り返し実験8回の平均値±標準誤差を表す。
【図25】電子顕微鏡で見たインフルエンザA型ウイルスとアデノウイルスの構造を示す。ウイルスは、無処置であるか、またはBCTPの100倍希釈液と共に室温で15分および60分間インキュベートし、実施例に記載のように、電子顕微鏡用の固定法を行った。図25Aは、無処置のインフルエンザA型ウイルスを示す;図25BはBCTPと共に15分間インキュベートしたインフルエンザA型ウイルスを示す;図25Cは無処置のアデノウイルスを示し;かつ図25Dは、BCTPと共に60分間インキュベートしたアデノウイルスを示す。全ての像に関して倍率は200,000倍である。バーは200 nmを表す。
【図26】1%および10%BCTPの抗菌特性を示す。殺菌作用(%殺菌)は、以下のように計算した:
【数3】
【図27】プラーク減少アッセイ法によって評価した10%および1%BCTPの抗ウイルス特性を示す。
【図28】本発明の乳剤の標的である例示的な生物を示す。
【図29−1】本発明の様々な乳剤組成物のいくつかの特定の態様および乳剤の特定の用途を示す。
【図29−2】図29-1の続きを示す図である。
【図29−3】図29-2の続きを示す図である。
【図29−4】図29-3の続きを示す図である。
【図29−5】図29-4の続きを示す図である。
【図30】本発明の様々な乳剤組成物のいくつかの特定の態様および乳剤の特定の用途を示す。
【図31A】様々な一般的製剤および本発明の特定の態様の用途を系統的に示す。図31Aは、ナノ乳剤10%、1%および0.10%希釈液に関する本発明の様々なナノ乳剤による大腸菌の対数的減少を示す。
【図31B】様々な一般的製剤および本発明の特定の態様の用途を系統的に示す。図31Bは、ナノ乳剤10%、1%および0.10%希釈液に関する本発明の様々なナノ乳剤によるB. グロビギイ(B. globigii)胞子の対数的減少を示す。
【図31C】様々な一般的製剤および本発明の特定の態様の用途を系統的に示す。図31Cは、ナノ乳剤10%、1%および0.10%希釈液に関する本発明の様々なナノ乳剤によるインフルエンザA型ウイルスの対数的減少を示す(pfu/ml)。
【図32】EDTAの存在下で40℃で本発明の乳剤によって処置したネズミチフス菌(S. typhimurium)の対数的減少を示すグラフである。
【図33】EDTAの存在下で50℃で本発明の乳剤によって処置したネズミチフス菌(S. typhimurium)の対数的減少を示すグラフである。
【図34】その乳化していない成分の溶解作用と比較した本発明の乳剤の溶解作用を示す。
【図35】室温および37℃で本発明の乳剤によるマイコバクテリア・フォーツイタム(Mycobacteria fortuitum)の対数的減少を示す。
【図36】本発明の乳剤を用いて表面の汚染を除去するためのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
発明の詳細な説明
本発明は、多様な微生物および病原性生物に関連した感染、罹患率、および死亡率を減少させるための組成物および方法を含む。本発明はまた、病原性生物がコロニーを形成したまたはそうでなければ感染した領域の汚染を除去する方法および組成物にも関する。その上、本発明は食品における病原性生物の感染を減少させる方法および組成物に関する。好ましい態様において、病原性生物の感染、罹患率、および死亡率の減少は、水相、油相、少なくとも一つの他の化合物を含む水中油型組成物に病原性生物を接触させることによって得られる。本発明の特定の説明となる態様を下記に記載する。本発明は、これらの特定の態様に限定されない。説明は以下の章に分けて提供する:I)例示的な組成物;II)例示的な製剤技術;III)特性と活性;IV)用途;およびV)特異的な例。
【0060】
I.例示的な組成物
好ましい態様において、本発明の乳剤は、(i)水相;(ii)油相;および少なくとも一つのさらなる化合物を含む。本発明のいくつかの態様において、これらのさらなる化合物は、組成物の水相または油相のいずれかに混合される。他の態様において、これらのさらなる化合物は、予め乳化した油と水相との組成物に混合される。これらの態様の特定のものにおいて、一つまたはそれ以上のさらなる化合物を、使用直前に既存の乳剤組成物と混合する。他の態様において、一つまたはそれ以上のさらなる化合物を組成物の使用直前に既存の乳剤組成物に混合する。
【0061】
本発明の組成物において用いるために適しているさらなる化合物には、一つまたはそれ以上の、有機溶媒、より詳しくは有機リン酸塩に基づく溶媒、界面活性剤および洗剤、陽イオンハロゲン含有化合物、発芽増強剤、相互作用増強剤、食品添加剤(例えば、着香料、甘味料、充填剤等)、および薬学的に許容される化合物が含まれるがこれらに限定されない。本発明の組成物において用いられることが予想される様々な化合物の特定の一例としての態様を下記に示す。
【0062】
A.水相
特定の好ましい態様において、乳剤は、乳剤の総容量に基づいて水相約5〜60%、好ましくは10〜40%、より好ましくは15〜30容量%を含む。好ましい態様において、水相は、pHが約4〜10、好ましくは約6〜8の水を含む。本発明の乳剤が発芽増強物質を含む場合、pHは好ましくは6〜8である。水は、好ましくは脱イオンされる(以降、「DiH2O」と呼ぶ)。いくつかの態様において、水相はリン酸緩衝生理食塩液(PBS)を含む。宿主による摂取または宿主との接触を意図した本発明のそれらの態様において、水相および水相において提供されるさらなる化合物は、さらに滅菌して発熱物質不含であってもよい。
【0063】
B.油相および溶媒
特定の好ましい態様において、本発明の乳剤の油相(例えば担体油)は、乳剤の総容量に基づいて油を30〜90、好ましくは60〜80、およびより好ましくは60〜70容量%含む。適した油には、大豆油、アボガド油、亜麻仁油、ココナツ油、綿実油、スクアレン油、オリーブ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、菜種油、サフラワー油、およびヒマワリ油、魚油、香味油、水不溶性ビタミン、およびその混合物が含まれるがこれらに限定されない。特に好ましい態様において、大豆油を用いる。さらに考慮される油には、モーター油、鉱油およびバターが含まれる。本発明の好ましい態様において、油相は好ましくは平均粒子径の範囲が約1〜2μm、より好ましくは0.2〜0.8μm、および最も好ましくは約0.8μmである小滴として水相全体に分布している。他の態様において、水相は油相に分布しうる。
【0064】
いくつかの態様において、油相は、乳剤の総容量に基づいて有機溶媒を3〜15、好ましくは5〜10容量%を含む。本発明は特定の作用機序に制限されないが、乳剤において用いられる有機リン酸塩に基づく溶媒は、病原体の膜において脂質を除去または破壊するように役立つと考慮される。このように、微生物の膜におけるステロールまたは燐脂質を除去する任意の溶媒が、本発明の乳剤において用いられる。適した有機溶媒には、有機リン酸塩に基づく溶媒またはアルコールが含まれるがこれらに限定されない。好ましい態様において、有機リン酸塩に基づく溶媒には、ジアルキルおよびトリアルキルホスフェート(例えば、トリ-n-ブチルホスフェート[TBP])の任意の組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。特定の態様において特に好ましいトリアルキルホスフェートは、可塑剤であるトリ-n-ブチルホスフェートを含む。その上、好ましい態様において、ジアルキルホスフェートまたはトリアルキルホスフェートのそれぞれのアルキル基は、炭素原子1〜10個またはそれ以上を有し、より好ましくは炭素原子2〜8個を有する。本発明はまた、ジアルキルホスフェートまたはトリアルキルホスフェートの各アルキル基は互いに同一であってもよく、または同一でなくともよいと考えている。特定の態様において、異なるジアルキルホスフェートおよびトリアルキルホスフェートの混合物を用いることができる。溶媒として一つまたはそれ以上のアルコールを含むそれらの態様において、そのような溶媒には、メタノール、エタノール、プロパノールおよびオクタノールが含まれるがこれらに限定されない。特定の好ましい態様において、アルコールはエタノールである。宿主による摂取、または宿主との接触を意図する本発明の態様において、油相および油相において提供される任意のさらなる化合物を、さらに滅菌して発熱物質不含としてもよい。
【0065】
C.界面活性剤と洗剤
いくつかの態様において、本発明の組成物はさらに、一つまたはそれ以上の界面活性剤または洗剤を含む(例えば、約3〜15%、好ましくは約10%)。本発明は、如何なる特定の作用機序にも限定されないが、組成物に存在する界面活性剤は、組成物を安定化するために役立つと予想される。非イオン性(非陰イオン性)およびイオン性界面活性剤の双方が考慮される。さらに、BRIJファミリーの界面活性剤が、本発明の組成物において用いられる。界面活性剤は水相または油相のいずれかにおいて提供されうる。乳剤と共に用いることが適している界面活性剤には、水中油型乳剤の形成を促進することができる他の乳化化合物と共に、様々な陰イオンおよび非イオン性界面活性剤が含まれる。一般的に、乳化化合物は比較的親水性であり、乳化化合物の混和を用いて必要な品質を得ることができる。いくつかの製剤において、非イオン性界面活性剤は、それらが広いpH範囲に対して実質的により適合性であり、イオン性(例えば、石鹸型)乳化剤より安定な乳剤をしばしば形成するという点において、イオン性乳化剤より長所を有する。このように、特定の好ましい態様において、本発明の組成物は、ポリソルベート系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンエーテル)、ポリソルベート系洗剤、フェオキシポリエトキシエタノール等のような一つまたはそれ以上の非イオン性界面活性剤を含む。本発明において有用なポリソルベート系洗剤の例には、ツイーン20、ツイーン40、ツイーン60、ツイーン80等が含まれるがこれらに限定されない。
【0066】
ツイーン60(モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)は、ツイーン20、ツイーン40、およびツイーン80と共に、多くの薬学的組成物において乳化剤として用いられるポリソルベートを含む。本発明のいくつかの態様において、これらの化合物はまた、アジュバントとの補助成分として用いられる。ツイーン系界面活性剤はまた、脂質のエンベロープ型ウイルスに対して殺ウイルス作用を有するように思われる(例えば、エリクソン(Eriksson)ら、「血液凝固と繊維素溶解(Blood Coagulation and Fibrinolysis)」 5(補則3):S37〜S44[1994]を参照のこと)。
【0067】
本発明において有用なフェオキシポリエトキシエタノールおよびそのポリマーの例には、トライトン(例えば、X-100、X-301、X-165、X-102、X-200)、およびチロキサポールが含まれるがこれらに限定しない。トライトンX-100は、生物構造からの脂質および蛋白質を抽出するために広く用いられる強い非イオン性洗剤および分散剤である。これは同様に、エンベロープ型ウイルスの広いスペクトルに対して殺ウイルス作用を有する(例えば、マハおよびイガラシ(Maha and Igarashi)、Southern Asian J. Trop. Med. Pub. Health 28:718[1997];およびポルトカラ(Portocala)ら、Virologie 27:261[1976]を参照のこと)。この抗ウイルス活性のために、これは、新しく凍結したヒト血漿におけるウイルス病原体を不活化するために用いられる(例えば、ホロウィッツ(Horowitz)ら、Blood 79:826[1992]を参照のこと)。
【0068】
特に好ましい態様において、界面活性剤トライトンX-100(t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、および/またはチロキサポールを用いる。いくつかの他の態様は、殺虫剤(例えば、ノノキシノール-9)を用いる。本発明の組成物において有用なさらなる界面活性剤および洗剤は、参考となる研究から確認してもよい(例えば、マックテオン(McCutheon)の第1巻:「乳剤と洗剤(Emulsions and Detergents)」北米版、2000年を参照のこと)。
【0069】
いくつかの態様において、図28に示すように、界面活性剤と有機溶媒とを含む組成物は、エンベロープ型ウイルスおよびグラム陽性菌を不活化するために有用である。
【0070】
D.陽イオンハロゲン含有化合物
いくつかの態様において、本発明の組成物は陽イオンハロゲン含有化合物をさらに含む(例えば、乳剤の総重量に基づいて重量で約0.5〜1.0重量%)。好ましい態様において、陽イオンハロゲン含有化合物は好ましくは、油相と予め混合する;しかし、陽イオンハロゲン含有化合物は異なる製剤において乳剤組成物と組み合わせて提供してもよい。適したハロゲン含有化合物は、例えば塩素、フッ素、臭素およびヨウ素イオンを含む化合物から選択してもよい。好ましい態様において、適した陽イオンハロゲン含有化合物には、ハロゲン化セチルピリジニウム、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルエチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化セチルトリブチルホスホニウム、ハロゲン化ドデシルトリメチルアンモニウム、またはハロゲン化テトラデシルトリメチルアンモニウムが含まれるがこれらに限定されない。いくつかの特定の態様において、適した陽イオンハロゲン含有化合物は、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルベンジルジメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム(CPB)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、臭化セチルトリブチルホスホニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、または臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムを含むがこれらに限定されない。特に好ましい態様において、陽イオンハロゲン含有化合物はCPCであるが、本発明の組成物は特定の陽イオン含有化合物との製剤に限定されない。
【0071】
いくつかの態様において、陽イオン含有化合物1.0重量%またはそれ以上を本発明の乳剤組成物に加えると、エンベロープ型ウイルス、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および真菌を不活化するために有用である組成物が提供される。
【0072】
E.発芽増強剤
本発明の他の態様において、組成物はさらに、一つまたはそれ以上の発芽増強化合物を含む(例えば、約1mM〜15 mM、およびより好ましくは約5mM〜10 mM)。好ましい態様において、発芽増強化合物は乳剤の形成前に水相に提供される。本発明は、発芽増強剤を開示の組成物に加えると、組成物の殺胞子特性画像供されると予想する。本発明はさらに、そのような発芽増強剤が、中性pH付近(6〜8のあいだ、好ましくは7)で殺胞子活性を開始することをさらに予想する。そのような中性pH乳剤は、例えば、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)によって希釈することによって、または中性乳剤を調製することによって得ることができる。組成物の殺胞子活性は、胞子が発芽を開始する際に選択的に起こる。
【0073】
特定の態様において、本発明の乳剤は殺胞子活性を有することが証明された。本発明は如何なる特定の作用機序にも制限されないが、乳剤の融合原性成分は発芽を開始するように作用し、栄養型への変換が完了する前に、乳剤の溶原性成分は新たに発芽する胞子を溶解するように作用すると考えられる。このように、乳剤のこれらの成分は協調して作用し、胞子は乳剤による破壊を受けやすくする。発芽増強剤を加えると、例えば殺胞子活性が起こる速度まで速度を上げることによって、本発明の乳剤の抗殺胞子活性をさらに促進する。
【0074】
細菌の内生胞子および真菌胞子の発芽は、代謝の増加ならびに熱および化学反応物質に対する抵抗性の減少に関連している。発芽が起こるためには、胞子は、環境が増殖および生殖を支持するために適切であることを感知しなければならない。アミノ酸L-アラニンは、細菌胞子の発芽を刺激する(例えば、ヒルズ(Hills)ら、J. Gen. Micro. 4:38[1950];およびハルボーソンおよびチャーチ(Halvorson and Church)、Bacteriol. Rev. 21:112[1957]を参照のこと)。L-アラニンおよびL-プロリンもまた、真菌の胞子発芽を開始させると報告されている(ヤナギタ(Yanagita)、Arch Mikrobiol. 26:329[1957])。グリシンおよびL-アラニンのような単純なα-アミノ酸は、代謝において中心的な位置を占める。α-アミノ酸のトランスアミノ化または脱アミノ化は、代謝および増殖にとって必要な糖原性またはケト原性炭化水素と窒素とを生じる。例えば、L-アラニンのトランスアミノ化または脱アミノ化は、糖分解代謝の最終産物であるピルビン酸を生じる(エムデン-マイエルホーフ-パルナス経路)。ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体によるピルビン酸塩の酸化は、アセチル-CoA、NADH、H+、およびCO2を生じる。アセチルCoAは、トリカルボン酸回路(クレブス回路)の開始基質であり、今度はミトコンドリアの電子輸送鎖に供給する。アセチル-CoAはまた、ステロール合成と共に脂肪酸合成の最終的な炭素源である。単純なα-アミノ酸は、発芽および後に続く代謝活性にとって必要な窒素、CO2、糖原性および/またはケト原性同等物を提供しうる。
【0075】
特定の態様において、本発明の適した発芽増強物質には、グリシン、およびアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、リジン、フェニルアラニン、チロシンのL-鏡像異性体を含むα-アミノ酸、ならびにそのアルキルエステルが含まれるがこれらに限定されない。発芽に及ぼすアミノ酸の効果に関するさらなる情報は、その全文が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,510,104号に認められる。いくつかの態様において、ブドウ糖、果糖、アスパラギン、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、塩化カルシウム(CaCl2)、および塩化カリウム(KCl)の混合物も同様に用いてもよい。本発明の特に好ましい態様において、製剤は、発芽増強物質L-アラニン、CaCl2、イノシンおよびNH4Clを含む。いくつかの態様において、組成物はさらに、一つまたはそれ以上の一般的な形の増殖培地をさらに含み(例えば、トリプチカーゼ大豆ブロス等)、これは発芽増強剤および緩衝剤をさらに含んでもよく、含まなくてもよい。
【0076】
上記の化合物は単なる一例としての発芽増強物質であり、他の既知の発芽増強物質が本発明の組成物において用いられると理解される。候補となる発芽増強剤は本発明の組成物に含めるためには2つの基準を満たさなければならない:これは本発明の乳剤に会合できなければならず、これは本発明の乳剤に組み入れた場合に標的胞子の発芽速度を増加させなければならない。当業者はそのような物質を本発明の組成物と組み合わせて標的に適用することによって、かつ混合物と接触させた際の標的の不活化を、物質を加えない場合の本発明の組成物による同様の標的の不活化と比較することによって、特定の物質が発芽増強剤として作用する所望の機能を有するか否かを決定することができる。発芽を増強し、それによって生物の増殖を減少または阻害する如何なる物質も、本発明において用いられる適した増強物質であると見なされる。
【0077】
なお他の態様において、発芽増強物質(または増殖培地)を中性乳剤組成物に加えると、エンベロープ型ウイルス、グラム陰性菌、およびグラム陽性菌の他に細菌胞子を治療するために有用である組成物が生成される。
【0078】
F.相互作用増強剤
なお他の態様において、本発明の組成物は、標的病原体(例えば、ビブリオ菌(Vibrio)、サルモネラ菌(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、およびシュードモナス(Pseudomonas)のようなグラム陰性菌の細胞壁)と組成物(すなわち「相互作用増強剤」)との相互作用を増加させることができる一つまたはそれ以上の化合物を含む。好ましい態様において、相互作用増強剤は好ましくは油相と予め混合する;しかし、他の態様において、相互作用増強剤は、乳化後の組成物との組み合わせて提供される。特定の好ましい態様において、相互作用増強剤はキレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸[EDTA]、またはエチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸[EGTA]の緩衝液[例えば、トリス緩衝液]溶液)である。キレート化剤は、単なる一例としての相互作用増強化合物であると理解される。実際に、本発明の組成物と微生物および/または病原体との相互作用を増加させる他の物質も考慮される。特に好ましい態様において、相互作用増強剤の濃度は約50〜約250 μMである。当業者は、そのような物質を本発明の組成物と組み合わせて標的に適用することによって、かつ混合物と接触させた際の標的の不活化を、物質を加えない場合の本発明の組成物による同様の標的の不活化と比較することによって、特定の物質が相互作用増強剤として作用する所望の機能を有するか否かを決定することができると考えられる。相互作用を増加させ、それによってその非存在下でのそのパラメータと比較して細菌の増殖を減少または阻害する任意の物質が、相互作用増強剤であると見なされる。
【0079】
いくつかの態様において、相互作用増強剤を本発明の組成物に加えることは、エンベロープ型ウイルス、いくつかのグラム陽性菌、およびいくつかのグラム陰性菌を治療するために有用な組成物を生じる。
【0080】
II.例示的な製剤
以下のA)章において、開示の組成物の一般的製剤を作製するための例示的な技術を説明する。さらに、本発明は、下記のB)において一例ではあるが、多くの特定の製剤レシピを引用する。
【0081】
A.製剤化技術
本発明の水中油型乳剤を不活化する病原体は、古典的な乳剤生成法を用いて形成することができる。簡単に説明すると、油相を比較的高い剪断力の下で(例えば、高い水圧および機械力を用いて)水相と混合し、約0.5μm、好ましくは直径が1〜2μmである油滴を含む水中油型乳剤を得る。乳剤は、油相対水相が約1:9〜5:1の容積比、好ましくは約5:1〜3:1、最も好ましくは4:1で油相を水相と混和することによって形成される。油相と水相は、フレンチプレスまたは高剪断ミキサー(例えば、FDAが承認した高剪断ミキサーは、例えばアドミックスインク、マンチェスター、ニューハンプシャー州から入手できる)のような、乳剤を形成するために十分な剪断力を産生することができる任意の装置を用いて混和することができる。。そのような乳剤を作製する方法は、その全文が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,103,497号および第4,895,452号に開示されている。
【0082】
好ましい態様において、本発明の方法において用いられる組成物は、水のような連続水相に分散させた不連続な油相の小滴を含む。好ましい態様において、本発明の組成物は、安定であり、長い貯蔵期間(例えば、1年またはそれ以上)の後でも分解しない。本発明の特定の組成物は、燕下、吸入、または宿主の皮膚に接触させても非毒性であって安全である。これは、既知の刺激剤である多くの化学殺微生物剤とは対照的である。さらに、いくつかの態様において、組成物はまた、植物に対しても非毒性である。
【0083】
本発明の組成物は、大量に産生することができ、広い範囲の温度で何ヶ月も安定である。希釈しなければ、それらは半固体クリームのきめを有する傾向があり、手で局所に適用する、または水と混合することができる。希釈すると、それらは、スキムミルクと類似の硬度および外観を有する傾向があり、表面の汚染を除去する、または吸入する前にエアロゾル化した胞子とおそらく相互作用するように、噴霧することができる。これらの特性は、広い範囲の抗微生物剤適用にとって有用である柔軟性を提供する。さらに、これらの特性は、汚染除去応用に特に十分に適した本発明の組成物を作製する。
【0084】
上記のように、乳剤の少なくとも一部は、単層、多層および少ない層の脂質小胞、ミセル、および層状の相を含むがこれらに限定されない脂質構造の形であってもよい。
【0085】
本発明のいくつかの態様は、エタノールを含む油相を用いる。例えば、いくつかの態様において、本発明の乳剤は、(i)水相、および(ii)有機溶媒としてエタノールと選択的に発芽増強剤とを含む油相、および(iii)界面活性剤としてのチロキサポール(好ましくは2〜5%、より好ましくは3%)を含む。この製剤は、微生物に対して非常に有効であり、同様に哺乳類が使用する場合にも非刺激性で非毒性である(かつこのように、粘膜と接触することができる)。
【0086】
他のいくつかの態様において、本発明の乳剤は、(a)第一の乳剤が(i)水相;および(ii)油と有機溶媒とを含む油相;および(iii)界面活性剤を含み、ならびに(b)第二の乳剤が(i)水相;(ii)油と陽イオン含有化合物とを含む油相;および(iii)界面活性剤を含む、第二の乳剤において乳化された第一の乳剤を含む。
【0087】
B.例示的な製剤
以下の説明は、組成物BCTPおよびX8W60PCの製剤を含む例示的な多くの乳剤を提供する。BCTPは、その中で油相が大豆油、トリ-n-ブチルホスフェート、およびトライトンX-100の80%水溶液から調製された油中水型ナノ乳剤を含む。X8W60PCは、BCTPとW808Pとの等量の混合物を含む。W808Pは、モノステアリン酸グリセロール、精製大豆ステロール(例えば、ジェネロールステロール)、ツイーン60、大豆油、陽イオンハロゲン含有CPCおよびペパーミント油で構成されるリポソーム様化合物である。ジェネロールファミリーはポリエトキシ化大豆ステロール(ヘンケルコーポレーション、アンブラー、ペンシルバニア州)のグループである。本発明の特定の態様に関する乳剤製剤を表1に示す。これらの特定の製剤は、その全文が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,700,679号(NN);第5,618,840号;第5,549,901号(W808P);および第5,547,677号に認められる。他の特定の乳剤製剤を図29に示す。その上、図30は、一般製剤と本発明の特定の態様の用途とを系統的に表す。
【0088】
X8W60PC乳剤は、W808P乳剤とBCTP乳剤とをまず個別に作製することによって製造される。次に、これらの二つの乳剤の混合物を再度乳化して、X8W60PCと呼ばれる新しい乳剤組成物を生成する。そのような乳剤を生成する方法は、米国特許第5,103,497号および第4,895,452号(その全文が参照として本明細書に組み入れられる)に開示されている。これらの化合物は、広いスペクトルの抗菌活性を有し、膜の破壊を通じて栄養型細菌を不活化することができる。
【0089】
(表1)
【0090】
上記の組成物はほんの一例であり、当業者は、本発明の目的に適したナノ組成物に達するために成分の量を変更することができると考えられる。当業者は、個々の油性担体、界面活性剤CPC、および有機リン酸緩衝液、各組成物の成分と共に油相対水の比を変化させてもよいことを理解すると考えられる。
【0091】
BCTPを含む特定の組成物は水対油の比が4:1であるが、BCTPは多少水相を有するように処方してもよい。例えば、いくつかの態様において、油相1に対して水相は3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上である。同じことがW808P製剤にも当てはまる。同様に、トリ(N-ブチル)ホスフェート:トライトンX-100:大豆油の比も同様に変更してもよい。
【0092】
表1は、W808Pに関してモノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート60、ジェネロール122、塩化セチルピリジニウム、および担体油の特定の量を記載するが、これらは単なる一例である。これらの成分のそれぞれの異なる濃度または同じ機能を示す実際に異なる成分を有するW808Pの特性を有する乳剤を処方してもよい。例えば、乳剤は初回の油相においてモノステアリン酸グリセロール約80〜約100 gのあいだであってもよい。他の態様において、乳剤は最初の油相中にポリソルベート60約15〜約30 gを有してもよい。なおもう一つの態様において、組成物は、最初の油相中にジェネロールステロール約20〜約30 gを含んでもよい。
【0093】
本発明の乳剤の特定の態様のナノ乳剤構造は、これらの乳剤の非毒性に関与すると共にその殺生物作用において役割を有する可能性がある。例えば、BCTPにおける活性成分、トライトンX-100は、11%BCTPと同等の濃度ではウイルスに対する殺生物活性が弱い。洗剤と溶媒とに油相を加えると、同じ濃度での組織培養におけるこれらの物質の毒性が著しく減少する。如何なる理論にも拘束されないが(作用機序を理解することは、本発明を実践するために必要ではなく、本発明は如何なる特定の作用機序にも制限されない)、ナノ乳剤は、病原体とその成分の相互作用を増強し、それによって病原体の不活化を促進して、個々の成分の毒性を減少させると示唆される。BCTPの全ての成分を一つの組成物に組み合わせるがナノ乳剤の構造になっていない場合、混合物は成分がナノ乳剤の構造になっている場合ほど抗微生物剤として有効ではないことに注意すること。
【0094】
類似の組成物との製剤のクラスにおいて紹介した様々なさらなる態様を下記に示す。これらの多くの組成物の抗病原性材料としての作用を図31に示す。以下の組成物は、活性成分の様々な比および混合物を列挙する。当業者は、下記に列挙した製剤が一例であり、列挙した成分の類似のパーセント範囲を含むさらなる製剤は、本発明の範囲内であることを認識すると考えられる。
【0095】
本発明の特定の態様において、本発明の製剤は、チロキサポール約3〜8容量%、エタノール約8容量%、塩化セチルピリジニウム(CPC)約1容量%、油約60〜70容量%(例えば、大豆油)、水相約15〜25容量%(例えば脱イオン水またはPBS)、およびいくつかの製剤において1N NaOH約1容量%未満を含む。これらの態様のいくつかはPBSを含む。1N NaOHおよび/またはPBSをこれらの態様のいくつかに加えると、使用者はpH範囲が約7.0〜約9.0となるように、より好ましくは約7.1〜8.5が得られるように、製剤のpHを都合よく制御することができると予想される。例えば、本発明の一つの態様は、チロキサポール約3容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約24容量%を含む(本明細書においてY3ECと呼ぶ)。もう一つの類似の態様は、チロキサポール約3.5容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約23.5容量%を含む(本明細書においてY3.5ECと呼ぶ)。さらにもう一つの態様は、チロキサポール約3容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、製剤のpHが約7.1となるように1N NaOH約0.067容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約23.93容量%を含む(本明細書においてY3EC pH 7.1と呼ぶ)。なおもう一つの態様は、チロキサポール約3容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、製剤のpHが約8.5となるように1N NaOH約0.67容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約23.33容量%を含む(本明細書においてY3EC pH 8.5と呼ぶ)。もう一つの類似の態様は、チロキサポール約4容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約23容量%を含む(本明細書においてY4ECと呼ぶ)。なおもう一つの態様において、製剤は、チロキサポール約8容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約19容量%を含む(本明細書においてY8ECと呼ぶ)。さらなる態様は、チロキサポール約8容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および1×PBS約19容量%を含む(本明細書においてY8EC PBSと呼ぶ)。
【0096】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、油約64容量%(例えば大豆油)、および水相約27容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む(本明細書においてECと呼ぶ)。
【0097】
本発明において、いくつかの態様は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)約8容量%、トリブチルホスフェート(TBP)約8容量%、および油約64容量%(例えば、大豆油)、および水相約20容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む(本明細書においてS8Pと呼ぶ)。
【0098】
本発明の特定の態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約1〜2容量%、チロキサポール約1〜2容量%、エタノール約7〜8容量%、塩化セチルピリジニウム(CPC)約1容量%、油約64〜57.6容量%(例えば、大豆油)、および水相約23容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。さらに、これらの製剤のいくつかは、約5mM L-アラニン/イノシン、および約10 mM塩化アンモニウムをさらに含む。これらの製剤のいくつかはPBSを含む。これらの態様のいくつかにおいてPBSを加えれば、使用者は製剤のpHを都合よく制御することができると予想される。例えば、本発明の一つの態様は、トライトンX-100約2容量%、チロキサポール約2容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および水相脱イオン水約23容量%を含む。もう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約1.8容量%、チロキサポール約1.8容量%、エタノール約7.2容量%、CPC約0.9容量%、約5mM L-アラニン/イノシン、および約10 mM塩化アンモニウム、大豆油約57.6容量%、および残りは1×PBSを含む(以降、90%X2Y2EC/GEと呼ぶ)。
【0099】
本発明のもう一つの態様において、製剤は、ツイーン80約5容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、油約64容積%(例えば、大豆油)、および脱イオン水約22容量%を含む(本明細書においてW805ECと呼ぶ)。
【0100】
本発明のさらに他の一つの態様において、製剤は、ツイーン20約5容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、油約64容積%(例えば、大豆油)、および脱イオン水約22容量%を含む(本明細書においてW205ECと呼ぶ)。
【0101】
本発明のなお他の態様において、製剤は、トライトンX-100約2〜8容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、油約60〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約15〜25容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。例えば、本発明は、トライトンX-100約2容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約26容量%を含む(本明細書において、X2Eと呼ぶ)。他の類似の態様において、製剤は、トライトンX-100約3容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約25容量%を含む(本明細書において、X3Eと呼ぶ)。なおさらなる態様において、製剤は、トライトンX-100約4容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約24容量%を含む(本明細書において、X4Eと呼ぶ)。なお他の態様において、製剤は、トライトンX-100約5容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約23容量%を含む(本明細書において、X5Eと呼ぶ)。本発明のもう一つの態様は、トライトンX-100約6容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約22容量%を含む(本明細書において、X6Eと呼ぶ)。本発明のなおさらなる態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書において、X8Eと呼ぶ)。本発明のなおさらなる態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、エタノール約8容量%、オリーブ油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書において、X8E Oと呼ぶ)。なおもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約19容量%を含む(本明細書において、X8ECと呼ぶ)。
【0102】
本発明のもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約1〜2容量%、チロキサポール約1〜2容量%、TBP約6〜8容量%、CPC約0.5〜1.0容量%、油約60〜70容量%(例えば、大豆油)、および水相約1〜35容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。さらに、これらの製剤の特定のものは、トリプチカーゼ大豆ブロス約1〜5容量%、酵母抽出物約0.5〜1.5容量%、約5mM L-アラニン/イノシン、約10 mM塩化アンモニウム、および乳児用液体製剤約20〜40容量%を含んでもよい。乳児用液体製剤を含む態様のいくつかにおいて、製剤は、カゼイン加水分解物(例えば、ニュートラミンゲン、プロゲスチミル等)を含む。これらの態様のいくつかにおいて、本発明の製剤はさらに、チオ硫酸ナトリウム約0.1〜1.0容量%、およびクエン酸ナトリウム約0.1〜1.0容量%を含む。これらの基本成分を含む他の類似の態様は、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)を水相として用いる。例えば、一つの態様は、トライトンX-100約2容量%、チロキサポール約2容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約23容量%を含む(本明細書においてX2Y2ECと呼ぶ)。なお他の態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約2容量%、チロキサポール約2容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、チオ硫酸ナトリウム約0.9容量%、およびクエン酸ナトリウム約0.1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約22容量%を含む(本明細書においてX2Y2PC STS1と呼ぶ)。もう一つの類似の態様において、製剤は、トライトンX-100約1.7容量%、チロキサポール約1.7容量%、TBP約6.8容量%、CPC約0.85容量%、ニュートラミンゲン約29.2%、大豆油約54.4容量%、および脱イオン水約4.9容量%を含む(本明細書において85%X2Y2PC/乳児と呼ぶ)。本発明のさらにもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約1.8容量%、チロキサポール約1.8容量%、TBP約7.2容量%、CPC約0.9容量%、約5mM L-アラニン/イノシン、約10 mM塩化アンモニウム、大豆油約57.6容量%、および残りの容量%の0.1×PBSを含む(本明細書において90%X2Y2 PC/GEと呼ぶ)。なおもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約1.8容量%、チロキサポール約1.8容量%、TBP約7.2容量%、CPC約0.9容量%、トリプチカーゼ大豆ブロス約3容量%、大豆油約57.6容量%、および脱イオン水約27.7容量%を含む(本明細書において90%X2Y2PC/TSBと呼ぶ)。本発明のもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約1.8容量%、チロキサポール約1.8容量%、TBP約7.2容量%、CPC約0.9容量%、酵母抽出物約1容量%、大豆油約57.6容量%、および脱イオン水約29.7容量%を含む(本明細書において90%X2Y2PC/YEと呼ぶ)。
【0103】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、チロキサポール約3容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、油約60〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約15〜30容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。本発明の特定の態様において、本発明の製剤は、チロキサポール約3容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約24容量%を含む(本明細書においてY3PCと呼ぶ)。
【0104】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約4〜8容量%、TBP約5〜8容量%、油約30〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約0〜30容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。さらに、これらの態様の特定のものは、CPC約1容量%、塩化ベンザルコニウム約1容量%、臭化セチルピリジニウム約1容量%、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム約1容量%、500 μM EDTA、約10 mM塩化アンモニウム、約5mMイノシン、および約5mM L-アラニンをさらに含む。例えば、これらの態様の特定のものにおいて、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書においてX8Pと呼ぶ)。本発明のもう一つの態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約19容量%を含む(本明細書においてX8PCと呼ぶ)。なおもう一つの態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約50容量%、および脱イオン水約33容量%を含む(本明細書においてATB-X1001と呼ぶ)。なおもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約2容量%、大豆油約50容量%、および脱イオン水約32容量%を含む(本明細書においてATB-X002と呼ぶ)。本発明のもう一つの態様は、トライトンX-100約4容量%、TBP約4容量%、CPC約0.5容量%、大豆油約32容量%、および脱イオン水約59.5容量%を含む(本明細書において50%X8PCと呼ぶ)。なおもう一つの関連する態様は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約0.5容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約19.5容量%を含む(本明細書においてX8PC1/2と呼ぶ)。本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約2容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約18容量%を含む(本明細書においてX8PC2と呼ぶ)。他の態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、塩化ベンザルコニウム約1%、大豆油約50容量%、および脱イオン水約33容量%を含む(本明細書においてX8PBCと呼ぶ)。本発明のもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、臭化セチルピリジニウム約1容量%、大豆油約50容量%、および脱イオン水約33容量%を含む(本明細書においてX8PCPBと呼ぶ)。本発明のもう一つの例としての態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム約1容量%、大豆油約50容量%、および脱イオン水約33容量%を含む(本明細書においてX8P CTABと呼ぶ)。なおさらなる態様において、本発明は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、約500 μM EDTA、大豆油約64容量%、および脱イオン水約15.8容量%を含む(本明細書においてX8PC EDTAと呼ぶ)。さらに類似の態様は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、約10 mM塩化アンモニウム、約5mMイノシン、約5mM L-アラニン、大豆油約64容量%、および脱イオン水またはPBS約19容量%を含む(本明細書においてX8PC GE1xと呼ぶ)。本発明のもう一つの態様において、本発明の製剤はさらに、トライトンX-100約5容量%、TBP約5%、CPC約1容量%、大豆油約40容量%、および脱イオン水約49容量%を含む(本明細書においてX5P5Cと呼ぶ)。
【0105】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約2容量%、チロキサポール約6容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書においてX2Y6Eと呼ぶ)。
【0106】
本発明のさらなる態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、グリセロール約8容量%、油約60〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約15〜25容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。特定の関連する態様はさらに、L-アスコルビン酸約1容量%を含む。例えば、一つの特定の態様は、トライトンX-100約8容量%、グリセロール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書においてX8Gと呼ぶ)。なおもう一つの態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、グリセロール約8容量%、L-アスコルビン酸約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約19容量%を含む(本明細書においてX8GVcと呼ぶ)。
【0107】
なおさらなる態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、ツイーン60約0.5〜0.8容量%、CPC約0.5〜2.0容量%、TBP約8容量%、油約60〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約15〜25容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。例えば、一つの特定の態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、ツイーン60約0.70容量%、CPC約1容量%、TBP約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約18.3容量%を含む(本明細書においてX8W60PC1と呼ぶ)。他の関連する態様は、トライトンX-100約8容量%、ツイーン60約0.71容量%、CPC約1容量%、TBP約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約18.29容量%を含む(本明細書においてW600.7X8PCと呼ぶ)。なお他の態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、ツイーン60約0.7容量%、CPC約0.5容量%、TBP約8容量%、大豆油約64〜70容量%、および脱イオン水約18.8容量%を含む(本明細書においてX8W60PC2と呼ぶ)。なお他の態様において、本発明は、トライトンX-100約8容量%、ツイーン60約0.71容量%、CPC約2容量%、TBP約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約17.3容量%を含む。本発明のもう一つの態様において、製剤は、ツイーン60約0.71容量%、CPC約1容量%、TBP約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約25.29容量%を含む(本明細書においてW600.7PCと呼ぶ)。
【0108】
本発明のもう一つの態様において、本発明の製剤は、ジオクチルスルホスクシネート約2容量%、グリセロール約8容量%またはTBP約8容量%、さらに油約60〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約20〜30容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。例えば、本発明の一つの態様は、ジオクチルスルホスクシネート約2容量%、グリセロール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約26容量%を含む(本明細書においてD2Gと呼ぶ)。もう一つの関連する態様において、本発明の製剤は、ジオクチルスルホスクシネート約2容量%、TBP約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約26容量%を含む(本明細書においてD2Pと呼ぶ)。
【0109】
本発明のなお他の態様において、本発明の製剤は、グリセロール約8〜10容量%、CPC約1〜10容量%、油約50〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約15〜30容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。さらに、これらの態様の特定のものにおいて、組成物はさらに、L-アスコルビン酸約1容量%を含む。例えば、一つの特定の態様は、グリセロール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約27容量%を含む(本明細書においてGCと呼ぶ)。さらに関連する態様は、グリセロール約10容量%、CPC約10容量%、大豆油約60容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書においてGC10と呼ぶ)。本発明のなおもう一つの態様において、本発明の製剤は、グリセロール約10容量%、CPC約1容量%、L-アスコルビン酸約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約24容量%を含む(本明細書においてGCVcと呼ぶ)。
【0110】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、グリセロール約8〜10容量%、SDS約8〜10容量%、油約50〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約15〜30容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。さらに、これらの態様の特定のものにおいて、組成物はさらに、レシチン約1容量%、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル約1容量%を含む。そのような製剤の例示的な態様は、SDS約8容量%、グリセロール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書においてS8Gと呼ぶ)。関連する製剤は、グリセロール約8容量%、SDS約8容量%、レシチン約1容量%、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約18容量%を含む(本明細書においてS8GL1B1と呼ぶ)。
【0111】
本発明のさらにもう一つの態様において、本発明の製剤は、ツイーン80約4容量%、チロキサポール約4容量%、CPC約1容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、脱イオン水約19容量%を含む(本明細書においてW804YECと呼ぶ)。
【0112】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、CPC約0.01容量%、チロキサポール約0.08容量%、エタノール約10容量%、大豆油約70容量%、脱イオン水約19.91容量%を含む(本明細書においてY.08EC.01と呼ぶ)。
【0113】
本発明のなおもう一つの態様において、本発明の製剤は、ラウリル硫酸ナトリウム約8容量%、グリセロール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書においてSLS8Gと呼ぶ)。
【0114】
C.さらなる製剤
上記の特定の製剤は、本発明において用いられる多様な組成物を説明するための単なる例である。本発明は、上記の製剤の多くの変法がさらなるナノ乳剤と共に、本発明の方法において用いられることを考慮する。候補となる乳剤が本発明において用いるために適しているか否かを決定するために、3つの基準を分析する。本明細書に記載の方法および標準物質を用いて、候補となる乳剤は、それらが適しているか否かを容易に試験することができる。第一に、乳剤を形成できるかか否かを決定するために、本明細書に記載の方法を用いて所望の成分を調製する。乳剤を形成できなければ、候補物質は拒絶される。例えば、4.5%チオ硫酸ナトリウム、0.5%クエン酸ナトリウム、10%n-ブタノール、64%大豆油、および21%脱イオン水で構成される候補組成物は乳剤を形成しなかった。
【0115】
第二に、候補乳剤は、安定な乳剤を形成しなければならない。乳剤は、その意図する用途を可能にするために十分な期間乳剤の剤形で維持されれば、安定である。例えば、保存、輸送等される乳剤に関して、組成物は数ヶ月から数年間乳剤の形状で維持されることが望ましい。比較的不安定な典型的な乳剤は、1日以内にその剤形を失うと考えられる。例えば、8%1-ブタノール、5%ツイーン10、1%CPC、64%大豆油、および22%脱イオン水で構成される候補組成物は、安定な乳剤を形成しなかった。以下の候補乳剤は、本明細書に記載の方法を用いて安定であることが示された:0.08%トライトンX-100、0.08%グリセロール、0.01%塩化セチルピリジニウム、99%バター、および0.83%脱イオン水(本明細書において1%X8GCバターと呼ぶ):0.8%トライトンX-100、0.8%グリセロール、0.1%塩化セチルピリジニウム、6.4%大豆油、1.9%脱イオン水、および90%バター(本明細書において10%X8GCバターと呼ぶ):2%W205EC、1%ナトロソル250L NF、および97%脱イオン水(本明細書において2%W205EC L GELと呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64% 70粘度鉱油、および22%脱イオン水(本明細書において、W205EC 70鉱油と呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%350粘度鉱油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205EC 350鉱油と呼ぶ)。
【0116】
第三に、候補乳剤は、その意図する使用に関して有効性を有しなければならない。例えば、抗菌乳剤は、細菌を検出可能なレベルに殺すか、または無能にしなければならない。本明細書において示すように、本発明の特定の態様は、特異的微生物に対して有効性を有するが、他の微生物に対しては示さない。本明細書に記載の方法を用いて、所望の微生物に対する特定の候補乳剤の適切性を決定することができる。一般的に、これは、適当な対照試料(例えば、水のような陰性対照)との並列実験において一つまたはそれ以上の期間、乳剤に微生物を曝露すること、および乳剤が微生物を殺すまたは無能にするか否か、またはどの程度まで殺すまたは無能にするかを決定することを含む。例えば、1%塩化アンモニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%大豆油、および22%脱イオン水で構成される候補組成物は、有効な乳剤ではないことが示された。以下の候補乳剤は、本明細書に記載の方法を用いて有効であることが示された:5%ツイーン20、5%塩化セチルピリジニウム、10%グリセロール、60%大豆油、および20%脱イオン水(本明細書においてW205GC5と呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、10%グリセロール、64%大豆油、および20%脱イオン水(本明細書においてW205GCと呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%オリーブ油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205ECオリーブ油);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%亜麻仁油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205EC亜麻仁油と呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%トウモロコシ油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205ECトウモロコシ油と呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%ココナツ油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205ECココナツ油と呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%綿実油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205EC綿実油と呼ぶ);8%デキストロース、5%ツイーン10、1%塩化セチルピリジニウム、64%大豆油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205Cデキストロースと呼ぶ);8%PEG200、5%ツイーン10、1%塩化セチルピリジニウム、64%大豆油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205C PEG200と呼ぶ);8%メタノール、5%ツイーン10、1%塩化セチルピリジニウム、64%大豆油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205Cメタノールと呼ぶ):8%PEG1000、5%ツイーン10、1%塩化セチルピリジニウム、64%大豆油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205C PEG 1000と呼ぶ);2%W205EC、2%ナトロソル250H NF、および96%脱イオン水(本明細書において2%W205ECナトロソル2と呼ぶ、2%W205EC GELとも呼ばれる);2%W205EC、1%ナトロソル250H NF、および97%脱イオン水(本明細書において2%W205ECナトロソル1と呼ぶ);2%W205EC、3%ナトロソル250H NF、および95%脱イオン水(本明細書において2%W205ECナトロソル3と呼ぶ);2%W205EC、0.5%ナトロソル250H NF、および97.5%脱イオン水(本明細書において2%W205ECナトロソル0.5と呼ぶ);2%W205EC、2%メトセルA、および96%脱イオン水(本明細書において2%W205ECメトセルAと呼ぶ);2%W205EC、2%メトセルK、および96%脱イオン水(本明細書において2%W205ECメトセルKと呼ぶ);2%ナトロソル、0.1%X8PC、0.1×PBS、5mM L-アラニン、5mMイノシン、10 mM塩化アンモニウム、および脱イオン水(本明細書において0.1%X8PC/GE+2%ナトロソル);2%ナトロソル、0.8%トライトンX-100、0.8%トリブチルホスフェート、6.4%大豆油、0.1%塩化セチルピリジニウム、0.1×PBS、5mM L-アラニン、5mMイノシン、10 mM塩化アンモニウム、および脱イオン水(本明細書において10%X8PC/GE+2%ナトロソル);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%ラード、および22%脱イオン水(本最初においてW205ECラードと呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%鉱油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205EC鉱油と呼ぶ);0.1%塩化セチルピリジニウム、2%ネロリドール、5%ツイーン20、10%エタノール、64%大豆油、および18.9%脱イオン水(本明細書においてW205EC0.1N);0.1%塩化セチルピリジニウム、2%ファルネソール、5%ツイーン20、10%エタノール、64%大豆油、および18.9%脱イオン水(本明細書においてW205EC0.1F);0.1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、10%エタノール、64%大豆油、および20.9%脱イオン水(本明細書においてW205EC0.1と呼ぶ);10%塩化セチルピリジニウム、8%トリブチルホスフェート、8%トライトンX-100、54%大豆油、および20%脱イオン水(本明細書においてX8PC10と呼ぶ);5%塩化セチルピリジニウム、8%トライトンX-100、8%トリブチルホスフェート、59%大豆油、および20%脱イオン水(本明細書においてX8PC5と呼ぶ);0.02%塩化セチルピリジニウム、0.1%ツイーン20、10%エタノール、70%大豆油、および19.88%脱イオン水(本明細書においてW200.1EC0.02と呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%グリセロール、64%モービル1、および22%脱イオン水(本明細書においてW205GCモービル1と呼ぶ);7.2%トライトンX-100、7.2%トリブチルホスフェート、0.9%塩化セチルピリジニウム、57.6%大豆油、0.1×PBS、5mM L-アラニン、5mMイノシン、10 mM塩化アンモニウム、および25.87%脱イオン水(本明細書において90%X8PC/GEと呼ぶ);7.2%トライトンX-100、7.2%トリブチルホスフェート、0.9%塩化セチルピリジニウム、57.6%大豆油、1%EDTA、5mM L-アラニン、5mMイノシン、10 mM塩化アンモニウム、0.1×PBS、および脱イオン水(本明細書において、90%X8PC/GE EDTAと呼ぶ);ならびに7.2%トライトンX-100、7.2%トリブチルホスフェート、0.9%塩化セチルピリジニウム、57.6%大豆油、1%チオ硫酸ナトリウム、5mM L-アラニン、5mMイノシン、10 mM塩化アンモニウム、0.1×PBS、および脱イオン水(本明細書において90%X8PC/GE STSと呼ぶ)。
【0117】
III.特性と活性
本発明の特定の組成物は、有用な活性および特性の範囲を有する。例示的な多くの有用な特性および活性を下記に示す:A)殺微生物活性および微生物抑制活性;B)殺胞子および胞子抑制活性;C)殺ウイルスおよびウイルス抑制活性;D)殺真菌および真菌抑制活性;ならびにE)インビボ作用。さらに、図31A〜Cは、本発明の特定の例示的な製剤の特性を提供する。
【0118】
A.殺微生物および微生物抑制活性
本発明の方法を用いて細菌を急速に不活化することができる。特定の態様において、組成物は、グラム陽性菌を不活化するために特に有効である。好ましい態様において、細菌の不活化は約5〜10分後に起こる。このように、細菌は、本発明に従って乳剤に接触させてもよく、迅速かつ有効に不活化されると考えられる。接触と不活化のあいだの期間は、細菌を乳剤に直接曝露する場合、5〜10分またはそれ未満であると予想される。しかし、本発明の乳剤を治療目的で用いて、全身投与する場合、不活化は、適用後5分、10分、15分、20分、25分、30分、60分を含むがこれらに限定されない長期間にわたって起こる可能性がある。さらに、さらなる態様において、不活化が起こるには2時間、3時間、4時間、5時間または6時間を要する可能性がある。
【0119】
他の態様において、本発明の組成物および方法はまた、特定のグラム陰性菌を迅速に不活化することができる。いくつかの態様において、細菌を不活化する乳剤を、細胞壁による乳剤との相互作用を増加させる化合物と予め混合する。これらの増強剤を本発明の組成物において用いることを、本明細書において下記に考察する。特定の乳剤、特に増強物質を含む乳剤は、特定のグラム陽性および陰性菌に対して有効であり、必要な腸細菌と接触するように経口投与してもよいことに注目すべきである。
【0120】
特定の態様において、本発明は、本発明の乳剤が、栄養型細菌に対する毒性はほとんどなく、強力な選択的殺生物活性を有することを示した。BCTPは、セレウス菌(B. cereus)、B.サーキュランス(B. circulans)、および巨大菌(B. megaterium)、ウェルシュ菌(C. perfringens)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、淋菌(N. gonorrhoeae)、S.アガラクティエ(S. agalactiae)、肺炎球菌(S. pneumonia)、化膿連鎖球菌(S. pyogenes)、ならびにアジア型およびエルトール型コレラ菌(V. cholerae classical and Eltor)に対して非常に有効であった(図26)。この不活化は、接触すると直ちに始まり、感受性がある微生物のほとんどに関して15〜30分以内に完了する。
【0121】
図31Aは大腸菌に対する本発明の例示的な多くのナノ乳剤の有効性を示す。
【0122】
B.殺胞子および胞子抑制活性
特定の特異的態様において、本発明は、本発明の乳剤が殺胞子活性を有することを証明した。如何なる理論にも拘束されないが(作用機序の理解は、本発明を実践するために必要ではなく、本発明は、如何なる特定の作用機序にも制限されない)、これらの乳剤の殺胞子能は、胞子を乳剤による破壊に対して感受性にする栄養型に完全に変換させずに、発芽の開始を通して起こる。発芽の開始は、乳剤またはその成分の作用によって媒介できる。
【0123】
電子顕微鏡研究の結果は、BCTP処置後にコア内容物の崩壊を伴って胞子の外皮および皮質が破壊されることを示す。殺胞子活性は、いずれかの成分を欠損するナノ乳剤はインビボで不活性であることから、トライトンX-100およびトリn-ブチルホスフェート成分の双方によって媒介されるように思われる。有効性が1%漂白剤と類似である乳剤のこの独自の作用は、バシラス(Bacillus)胞子が一般的に、多くの一般的に用いられる洗剤を含むほとんどの消毒剤に対して抵抗性であるために興味深い(ラッセル(Russell)、Clin. Micro. 3;99[1990])。
【0124】
本発明は、マウスに注入する前にBCTPをセレウス菌(B. cereus)胞子と混合すると、セレウス菌(B. cereus)の病的な作用を予防したことを証明する。さらに、本発明は、セレウス菌(B. cereus)胞子に汚染された刺激された創傷にBCTP処置を行うと、マウスにおける感染および死亡のリスクが顕著に減少したことを示す。10倍希釈したBCTPのみを注射した対照動物は如何なる炎症作用も示さず、このことは、BCTPがマウスにおいて皮膚毒性を有しないことを証明する。これらの結果は、曝露の前または後直ちに胞子を処置すると、実験的皮膚感染症の組織損傷の重症度を有効に減少させうることを示唆している。
【0125】
本発明の開発の際に行った他の実験は、異なるバシラス(Bacillus)胞子を不活化するために、BCTPおよびBCTPに由来する他の乳剤の作用を比較した。1000倍(v/v)まで希釈したBCTPは、4時間で炭疽菌(B. anthracis)胞子の90%超を不活化し、同様に、胞子外皮の明らかな破壊によって他の3つのバシラス(Bacillus)種に対しても殺胞子活性を示した。1000倍希釈したX8W60PCは、炭疽菌(B. anthracis)、セレウス菌(B. cereus)、枯草菌(B. subtilis)に対してより強い殺胞子活性を有し、30分未満で作用を発現した。マウスにおいて、胞子の接種後にBCTPによって皮下注射または創傷を1時間潅注する前に、BCTPをセレウス菌(B. cereus)と混合すると、皮膚の病変の大きさが98%以上減少した。死亡率は後者の実験において4倍減少した。本発明の組成物は、他の利用できる殺胞子物質と比較すると、安定で、容易に分散され、非刺激性で、非毒性である。
【0126】
本発明の方法において用いられる細菌を不活化する水中油型乳剤を用いて、接触時に多様な細菌または細菌胞子を不活化することができる。例えば、現在開示の乳剤を用いて、セレウス菌(B. cereus)、B.サーキュランス(B. circulans)、および巨大菌(B. megaterium)を含むバシラス(Bacillus)、同様にクロストリジウム(Clostridium)(例えば、ボツリヌス菌(C. botulinum)、および破傷風菌(C. tetani))を不活化することができる。本発明の方法は、特定の生物兵器物質(例えば炭疽菌(B. anthracis))を不活化するために特に有用となる可能性がある。さらに、本発明の製剤は、ウェルシュ菌(C. perfringens)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、淋菌(N. gonorrhoeae)、S.アガラクティエ(S. agalactiae)、肺炎球菌(S. pneumonia)、化膿連鎖球菌(S. pyogenes)、ならびにアジア型およびエルトール型コレラ菌(V. cholerae classical and Eltor)と闘うためにも用いられる(図26)。
【0127】
BCTPはトライトンX-100を含むが、SSおよびW808Pはツイーン60を含み、NNはノノキシノール-9界面活性剤を含む。それぞれは非イオン性の界面活性剤であるが、その化学および生物学的特徴が異なる。ノノキシノール-9は、強い殺精子活性を有し、膣輸送される避妊物質の成分として広く用いられる(リー(Lee)、1996)。これは、エンベロープ型ウイルスに対して殺ウイルス作用を有すると主張されている(ハーモナト(Hermonat)ら、1992;ザイトリン(Zeitlin)ら、1997)。しかし、ノノキシノール-9は非エンベロープ型ウイルスに対して有効でないことが示されている(ハーモナト(Hermonat)ら、1992)。
【0128】
図31Bは、B.グロビギイ(B. globigii)胞子に対する本発明の例示的な多くのナノ乳剤の有効性を示す。
【0129】
C.殺ウイルスおよびウイルス抑制活性
さらなる態様において、本発明のナノ乳液組成物は抗ウイルス特性を有することが証明された。これらの乳剤がウイルス物質に及ぼす作用は、プラーク減少アッセイ法(PRA)、細胞酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、P-ガラクトシダーゼアッセイ法、および電子顕微鏡(EM)を用いてモニターし、脂質調製物の細胞毒性は、(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム(MTT)染色アッセイ法(モスマン(Mosmann)、1983)を用いて評価した。
【0130】
細胞ELISAによって測定すると、MDCK細胞のインフルエンザA型感染性に著しい減少を認め、これをその後PRAによって確認した。BCTPおよびSSの10倍希釈液は、ウイルス感染性を95%超減少させた。他の2つの乳剤は、ウイルスに対してごく中間的な作用を示したに過ぎす、10倍希釈での感染性の減少は約40%であった。BCTPは最も強力な調製物であり、100倍希釈液でも減弱しない殺ウイルス作用を示した。動力学試験は、BCTPの10倍希釈液と共にウイルスを5分間インキュベートすると、その感染性が完全に消失することを示した。BCTPの活性化合物であるトライトンX-100は、5000倍希釈でBCTPと比較してウイルスの感染性をごく部分的に阻害したに過ぎず、このことはナノ乳剤そのものが抗ウイルス有効性に関与することを示している。BCTPの抗ウイルス特性をさらに調べるために、非エンベロープ型ウイルスに対するその作用を調べた。BCTP処置は、β-ガラクトシダーゼ活性を用いて測定すると、293細胞におけるlacZアデノウイルス構築物の複製に影響を及ぼさなかった。EMについて調べると、インフルエンザA型ウイルスは、BCTPと共にインキュベートした後、完全に破壊されたが、アデノウイルスは無傷のままであった。
【0131】
さらに、ウイルスをBCTPの10%および1%PBS溶液と共にプレインキュベートして、プラーク減少アッセイ法によって評価すると、ヘルペス、センダイ、シンドビス、およびワクシニアウイルスは完全に消失する(図27)。経時的変化の分析は、10%BCTPではインキュベーション5分以内に、1%BCTPでは30分以内で迅速かつ完全であることを示した。異なる希釈のBCTPを処置したアデノウイルスは、感染性の減少を示さなかった。
【0132】
特定のBCTPに基づく組成物が様々なウイルスの攻撃に対して有効であることと粘膜に対するその毒性が弱いことは、有効な消毒剤として、およびエンベロープ型ウイルスによる感染に起因する疾患の予防薬としてのその可能性を証明する。
【0133】
図31Cは、インフルエンザA型に対する本発明の例示的な多くのナノ乳剤のさらにもう一つの特性を示す。
【0134】
D.殺真菌および真菌抑制活性
本発明のナノ乳剤のさらにもう一つの特性は、それらが抗真菌活性を有する点である。真菌感染症の一般的な起因菌には、カンジダ(Candida)属およびアスペルギルス(Aspergillus)属の様々な種と共に他の種が含まれる。外部真菌感染症は比較的に軽度であるが、全身性真菌感染症は重度の医学的結末を生じうる。ヒトにおける真菌感染症の発生率は増加しているが、これは免疫系の障害を有する患者の数が増加していることに一部帰することができる。真菌疾患、特に全身性の疾患は、免疫系の障害を有する患者に対して生命を脅かしうる。
【0135】
本発明の開発中に実施された実験から、1%BCTPが、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に適用すると92%を超える真菌抑制活性を有することが示された。カンジダ(Candida)は、37℃で一晩増殖した。次に、細胞を洗浄して、血球計算盤を用いて計数した。既知量の細胞を異なる濃度のBCTPと共に混合して24時間インキュベートした。次に、カンジダ(Candida)をデキストロース寒天上で増殖させ、一晩インキュベートして、コロニーを計数した。BCTPの真菌抑制作用は、以下のように決定した:
【数1】
【0136】
当業者は、本発明の製剤を真菌疾患を治療するための適当な製剤に加えることができると考えられる。本発明のナノ乳剤は、水虫、カンジダ症、またはその他の急性または全身性真菌感染症のような感染症と闘うために用いられる。
【0137】
E.インビボ作用
動物試験は、本発明の組成物および方法の保護および治療作用を証明した。実験動物におけるセレウス菌(Bacillus cereus)感染症は、これまでに炭疽病を研究するためのモデル系として用いられている(例えば、バードンおよびウェンデ(Burdon and Wende)、J. Infect. Diseas. 170(2):272[1960];ラマナおよびジョーンズ(Lamanna and Jones)、J. Bact. 85:532[1963];およびバードン(Burdon)ら、J. Infect. Diseas. 117:307[1967]を参照のこと)。セレウス菌(B. cereus)に実験的に感染させた動物において誘導された疾患症候群は炭疽病と類似である(ドロブニュースキ(Drobniewski)、Clin. microbio. Rev. 6:324[1993];およびフリッツ(Fritz)ら、Lab. Invest. 73:691[1995])。本発明の開発時に行われた実験は、マウスに注入する前にBCTPをセレウス菌(Bacillus cereus)胞子と混合すると、セレウス菌(B. cereus)の病的な作用を防止することを証明した。さらに、セレウス菌(B. cereus)胞子に汚染された刺激された創傷のBCTP処置は、マウスにおける感染および死亡のリスクを著しく減少させた。10倍希釈したBCTPのみを注入した対照動物は、如何なる炎症作用も示さず、このことは、BCTPがマウスにおいて皮膚毒性を有しないことを証明している。これらの結果は、曝露の直前または直後に胞子を処置すると、実験的皮膚感染症の組織損傷の重症度を有効に減少させうることを示唆している。
【0138】
特定の例において、ウェルシュ菌(C. perfringens)感染症を調べるために、モルモットを実験動物として用いた。1.5 cmの皮膚創傷を作製し、下に存在する筋肉を圧挫させて、ウェルシュ菌(C. perfringens)5×107 cfuを感染させ、さらなる処置を行わなかった。もう一つの群に同数の細菌を感染させ、1時間後に生理食塩液またはBCTPのいずれかを潅注し、曝露後の汚染除去を刺激した。実験的に感染させた創傷を生理食塩液で還流しても、如何なる明らかな利益も生じなかった。しかし、ウェルシュ菌(C. perfingens)に感染した創傷をBCTPによって潅注すると、浮腫、炎症反応、および壊死の著しい減少を示した。そのため、本発明の特定の製剤を用いて細菌感染症と闘うことができることが証明された。
【0139】
さらに、10%BCTPを皮下注射しても、実験動物に苦痛を与えず、肉眼的な組織学的組織変化を生じなかった。経口毒性試験における全てのラットは、試験期間中に体重の増加を示した。有害な臨床兆候を認めず、肉眼で調べると全ての組織が正常範囲内であるように思われた。処置した動物の便からの細菌培養は、無処置動物の便と有意差を示さなかった。
【0140】
IV.例示的な用途
本明細書に開示の組成物の多くの例示的な用途を下記に示す:A)薬剤および治療物質;B)汚染除去および滅菌;C)食品製造;ならびにD)キットと共にE)本発明の組成物の改変、調製、および輸送のための方法および系の説明書。
【0141】
A.薬剤および治療物質
本発明は、微生物感染症と闘うおよび/または治療するために適した薬学的および治療組成物および適用において用いてもよい製剤を考慮する。そのような組成物は、感染症を減少させ、微生物を殺し、微生物の増殖を阻害し、またはそうでなければ微生物感染症の有害な作用を消失させるために用いてもよい。
【0142】
インビボで適用する場合、組成物は、ヒトおよび動物被験者を含む温血動物に対して任意の有効な薬学的に許容される製剤として投与することができる。一般的に、これは、ヒトまたは動物に対して有害となりうる他の不純物のみならず本質的に発熱物質を含まない組成物を調製することを含む。
【0143】
薬学的に許容される製剤の特定の例には、経口、鼻腔、頬、直腸、経膣、局所、もしくは鼻腔内スプレー、または本発明の活性組成物を微生物感染症部位に輸送するために有効な他の製剤が含まれるがこれらに限定されない。好ましい態様において、投与経路は、感染する微生物と組成物とが直接接触するようにデザインされる。他の態様において、投与は、正所性、皮内、皮下、筋肉内、または腹腔内注射によって行ってもよい。組成物はまた、非経口投与または腹腔内投与によって被験者に投与してもよい。そのような組成物は通常、薬学的に許容される組成物として投与されると考えられる。従来の薬学的に許容される任意の媒体または物質が本発明の乳剤と不適合性である場合を除いて、これらの特定の態様において、既知の薬学的に許容される媒体および物質を用いることが考慮される。さらなる態様において、補助的に活性な成分もまた、組成物に組み入れることができる。
【0144】
局所投与に関して、薬学的に許容される担体は、液体、クリーム、フォーム、ローション、またはゲルの形であってもよく、さらに、有機溶媒、乳化剤、ゲル化剤、保湿剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、保存剤、定時放出剤、および少量の湿潤剤、金属イオン封鎖剤、色素、香料、および局所投与のための薬学的組成物において一般的に用いられるその他の成分を含んでもよい。
【0145】
乳剤が経口および局所投与のために製剤化される場合の錠剤および投与剤形には、液体カプセルおよび坐剤が含まれる。経口投与のための固体投与剤形において、組成物は一つまたはそれ以上の実質的に不活性な希釈剤(例えば、蔗糖、乳糖、またはデンプン等)と混合してもよく、さらに、潤滑剤、緩衝剤、腸溶コーティング、および当技術分野で周知のその他の成分を含んでもよい。
【0146】
本発明のもう一つの態様において、本発明の組成物は、特に、装置またはレンズが患者または装着者と接触するように用いることが意図されている場合、医療器具および装置、コンタクトレンズ等の消毒または滅菌のようなインビトロ応用のために特にデザインしてもよい。例えば、組成物は、被験者と接触する前に、医療用および外科用器具および補給用品を洗浄および汚染除去するために用いてもよい。さらに、組成物は、術後の感染症の発生を最小限にするために役立つように、術後または侵襲的方法の後に用いてもよい。特に好ましい態様において、組成物は、免疫防御が無防備または無効である被験者(例えば、高齢者および幼年者、火傷および外傷を負った人、HIV等の感染者)に投与される。この種類の応用に関して、組成物は、液体、フォーム、ペースト、またはゲルの形で提供すると都合がよく、乳化剤、界面活性剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、金属イオン、抗生物質、およびこの種類の組成物において一般的に認められるその他の成分と共に提供してもよい。
【0147】
他の態様において、組成物は、微生物感染症を予防するために組成物を部位に輸送するために、縫合糸、包帯、およびガーゼのような吸収性の材料に含侵してもよく、または手術用ステープル、ジッパー、およびカテーテルのような固相材料の表面にコーティングしてもよい。この種類の他の輸送系は、当業者によって容易に明らかとなると考えられる。
【0148】
さらにもう一つの態様において、組成物は、脱臭剤、石鹸、アクネ/皮膚糸状菌治療物質、口臭の治療、膣酵母感染症の治療等のために、個人用ヘルスケア産業において用いることができる。組成物はまた、その他の体内および体外微生物感染症を治療するために用いることができる(例えば、インフルエンザ、単純ヘルペス等)。これらの応用において、乳剤は上記のように治療担体と共に製剤化することができる。
【0149】
特定の態様において、本発明の抗微生物組成物および方法にはまた、多様な併用治療が含まれる。例えば、しばしば単一の抗菌剤は、互いに組み合わせて用いるいくつかの薬剤より微生物の阻害に関してより有効性が低い。このアプローチは、多剤耐性の結果として遭遇する問題を回避するためにしばしば有利である。これは、生物からの薬剤の流出を媒介する薬物輸送体を有する細菌において特に流行している。本発明はさらに、そのような併用治療において本発明の方法および組成物を用いることを考慮する。
【0150】
細菌、真菌、およびウイルス感染症を治療するために用いられる現在利用可能な抗菌剤は膨大な量にのぼる。そのような薬剤およびその作用機序の一般的なクラスに関する包括的な論文に関しては、当業者は、グッドマンおよびギルマン(Goodman & Gilman)の「治療物質の薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」、ハードマン(Hardman)ら編、第9版、マグローヒル出版、第43章から第50章、1996年(その全文が参照として本明細書に組み入れられる)を参照のこと。一般的にこれらの物質には、細胞壁合成阻害剤(例えば、ペニシリン類、セファロスポリン類、シクロセリン、バンコマイシン、バシトラシン);およびイミダゾール系抗真菌剤(例えば、ミコナゾール、ケトコナゾール、およびクロトリマゾール);微生物の細胞膜を破壊するように直接作用する物質(例えば、ポリミキシンおよびコリスチメテートのような洗剤、ナイスタチンおよびアンフォテリシンBのような抗真菌剤);蛋白質合成を阻害するためにリボソームサブユニットに影響を及ぼす物質(例えば、クロラムフェニコール、テトラサイクリン類、エリスロマイシン、およびクリンダマイシン);蛋白質合成を変化させて、細胞死に至らせる物質(例えば、アミノグリコシド類);核酸代謝に影響を及ぼす物質(例えば、リファンピシン類およびキノロン類);抗代謝剤(例えば、トリメトプリムおよびスルホンアミド類);ならびにDNA合成にとって必須であるウイルス酵素を阻害するように作用するジドブジン、ガンシクロビル、ビダラビン、およびアシクロビルのような核酸類似体が含まれる。抗微生物剤の様々な組み合わせを用いてもよい。
【0151】
組成物および組成物中の任意の増強物質の実際の量は、治療部位で、栄養型と共に胞子型の微生物を殺すために、およびその毒性産物を中和するために有効である乳剤および増強剤の量が得られるように変更してもよい。したがって、選択された量は、治療の性質および部位、所望の反応、殺生物作用の所望の期間およびその他の要因に依存すると考えられる。一般的に、本発明の乳剤組成物は、液体組成物1mlあたり乳剤を少なくとも0.001%〜100%、好ましくは0.01〜90%を含む。ウイルス感染症は、液体組成物1mlあたり乳剤約0.01%〜100%のあいだを用いて治療してもよいと想像される。細菌感染症は、液体組成物1mlあたり乳剤約0.001%〜約100%を含む組成物によって治療してもよい。胞子は、液体組成物1mlあたり乳剤約0.001%〜約100%を含む乳剤によって殺すことができる。これらは単なる例示的な範囲に過ぎない。製剤は、液体組成物1mlあたり乳剤を約0.001%、約0.0025%、約0.005%、約0.0075%、約0.01%、約0.025%、約0.05%、約0.075%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約1.0%、約2.5%、約5%、約7.5%、約10%、約12.5%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%を含んでもよいと想像される。上記の記載の如何なる2つの数値のあいだの範囲も、本発明の範囲内に含まれると特に考慮されると理解すべきである。用量の何らかの変更は、治療すべき被験者の状態に応じて必要に応じて行われると考えられる。
【0152】
当業者は、いずれにせよ個々の被験者に関して適当な用量を決定すると考えられる。その上、ヒトの投与に関して、調製物はFDA生物製剤標準局によって必要とされる滅菌性、発熱性、一般的安全性、および純度標準を満たさなければならない。
【0153】
B.汚染除去と滅菌
一般的に、本発明は、環境の汚染除去物質として、ならびに軍およびテロリストの攻撃の双方における災害を治療するために用いられる組成物および方法を考慮する。栄養型細菌およびエンベロープ型ウイルス(例えば、チャトリン(Chatlyyne)ら、「HIV-1およびその他の一般的ウイルスに対して有効な殺ウイルス活性を有する脂質乳剤(A Lipid emulsion with effective virucidal activity against HIV-1 and other common viruses)」、レトロウイルスとヒト健康財団、第3回レトロウイルスと日和見感染症会議、ワシントンDC、アメリカ[1996]を参照のこと)、ならびに細菌胞子を含む広範囲の病原体を不活化することと、実験動物における毒性が低いことから、本発明の乳剤は、特定の病原体が同定される前に一般的な汚染除去物質として用いるために適している。本発明の好ましい組成物は、迅速に大量に産生することができ、広範囲の温度で何ヶ月も安定である。これらの特性は、広範囲の汚染除去適用にとって有用である柔軟性を提供する。
【0154】
例えば、本発明の特定の製剤は、生物兵器戦争において用いられる多くの細菌胞子および物質を破壊するために特に有効である。この点において、本発明の組成物および方法は、生物戦争兵器によって汚染された人および材料の汚染を除去するために有用である。本発明の組成物の溶液は、地上または空中噴霧システムによって汚染された材料および人に直接噴霧してもよい。これらの応用の特定のものにおいて、本発明は、汚染の除去が起こるように、汚染された材料または人に組成物の有効量を接触させることを考慮する。または、生体物質に汚染される可能性がある軍人または市民に、個人用汚染除去キットを供給することができる。
【0155】
栄養型細菌およびエンベロープ型ウイルス(例えば、チャトリン(Chatlyyne)ら、「HIV-1およびその他の一般的ウイルスに対して有効な殺ウイルス活性を有する脂質乳剤(A Lipid emulsion with effective virucidal activity against HIV-1 and other common viruses)」、レトロウイルスとヒト健康財団、第3回レトロウイルスと日和見感染症会議、ワシントンDC、アメリカ[1996]を参照のこと)、ならびに細菌胞子(ハモウダ(Hamouda)ら、J. Infect. Disease 180:1939[1999])を含む広範囲の病原体を不活化することと、実験動物における毒性が低いことから、本発明の乳剤は、特定の病原体が同定される前に一般的な汚染除去物質として用いるために特に十分に適している。
【0156】
このように、本発明の特定の態様は、本発明の組成物を、土壌、機械、溶媒、およびその他の装置、ならびに望ましくない病原体に曝される可能性がある水路の汚染を除去するための消毒剤および洗剤において用いることを特に考慮する。そのような汚染除去法は、液体スプレーの形で製剤を単に適用することを含んでもよく、またはより厳密なレジメを必要としてもよい。同様に、本発明の乳剤は、様々な植物ウイルスに関して作物を処理するために用いることができる(従来の抗生物質を用いる代わりに)。
【0157】
農地および装置の汚染を除去するためにそれらを用いることの他に、製剤はまた、一般的な消毒目的のために家庭での洗剤において用いられる。その上、本発明のいくつかの態様は、細菌または真菌による食品の汚染を防止するために用いることができる(例えば、非毒性組成物)。これは、食品の調製過程において、または添加剤、消毒剤、もしくは保存剤として食品に添加することによって行うことができる。
【0158】
本発明の乳剤は、好ましくは液体の形で硬い表面に用いられる。したがって、上記の成分を、一つまたはそれ以上の水性担体液体と混合する。水性担体の選択は重要ではない。しかし、これは安全で、本発明の乳剤と化学的に適合性でなければならない。いくつかの態様において、水性担体液体は、硬い表面の洗浄組成物において一般的に用いられる溶媒を含む。そのような溶媒は、本発明の乳剤と適合性でなければならず、乳剤のpHで化学的に安定でなければならない。それらはまた、良好な被膜形成/残留特性を有しなければならない。硬い表面の洗剤において用いられる溶媒は、例えば、その全文が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,108,660号に記載されている。
【0159】
好ましい態様において、水性担体は、水、またはアルコールと水の混和性の混合物である。アルコールは組成物の粘度を調節するために用いることができる。いくつかの態様において、アルコールは好ましくはC2〜C4アルコールである。特に好ましい態様において、エタノールを用いる。例えば、一つの好ましい態様において、水性担体液体は水または約0〜約50%エタノールを含む水-エタノール混合物である。本発明はまた、非液体組成物を体現する。これらの非液体組成物は、顆粒、粉末、またはゲル型、好ましくは顆粒型となりうる。
【0160】
選択的に、いくつかの組成物は、本発明の乳剤の活性を干渉しない限り、洗浄および美を増強する補助材料を含む。組成物は、選択的に非干渉性の補助界面活性剤を含みうる。幅広い有機、水溶性界面活性剤を選択的に用いることができる。補助界面活性剤の選択は、組成物の意図する目的および界面活性剤の利用し易さに関する使用者の希望に依存する。香料、光沢剤、酵素、着色剤等のようなその他の選択的な添加剤は、美および/または洗浄性能を増強するために組成物において用いることができる。洗剤のビルダーもまた、本発明の組成物において用いることができる。洗剤のビルダーはカルシウムおよびマグネシウム硬度イオンを封鎖するが、ビルダーがなければこれらのイオンが結合して、補助界面活性剤または共界面活性剤をより無効にする。洗剤のビルダーは、補助界面活性剤または共界面活性剤を用いる場合に特に有用であり、組成物を例外的に硬い水道水、例えば約12グレーン/ガロン以上の水で使用前に希釈する場合にさらにより有用である。
【0161】
他の態様において、組成物はさらに石鹸泡抑制剤を含む。これらの態様において、組成物は好ましくは、硬い表面に組成物を接触させる場合に、過剰な石鹸泡を防止するために石鹸泡抑制剤の十分量を含む。石鹸泡抑制剤は、本発明の組成物をすすぎなしで適用するための製剤において特に有用である。石鹸泡抑制剤は、既知および従来の手段によって提供することができる。石鹸泡抑制剤の選択は、組成物におけるその処方能、ならびに組成物の残基および洗浄プロフィールに依存する。石鹸泡抑制剤は組成物中の成分と化学的に適合性でなければならず、本明細書に記載のpH範囲で機能的でなければならず、洗浄した表面上に目に見える残留物を残してはならない。組成物における石鹸泡のプロフィールを媒介するために、泡立ちの低い共界面活性剤を石鹸泡抑制剤として用いることができる。約1容量から約3%までの共界面活性剤濃度で通常十分である。
【0162】
本明細書において用いるために適した共界面活性剤の例には、ブロックコポリマー(例えば、プルロニックおよびテトロニックゲル[ポリ(エチレンオキサイド)-b-ポリ(プロピレンオキサイド)-b-ポリ(エチレンオキサイド)ポリマーゲル、BASF社、パリスパニー、ニュージャージー州])、ならびにアルキル化(例えば、エトキシル化/プロポキシル化)一級および二級アルコール(例えば、テリグトール[ユニオンカーバイド社、ダンバリー、コネチカット州]);ポリタージェント[オーリンコーポレーション、ノーウォーク、コネチカット州])が含まれる。選択的な石鹸泡抑制剤は好ましくはシリコン基剤材料を含む。これらの材料は、非常に低濃度で石鹸泡抑制剤として有効である。低い濃度では、シリコン基剤の石鹸泡抑制剤は、組成物の洗浄性能を妨害する可能性が低い。組成物において用いるために適したシリコン基剤の石鹸泡抑制剤は、ダウコーニング社のDSEである。これらの選択的な、しかし好ましいシリコン基剤の石鹸泡抑制剤は、既知および従来の手段によって組成物に組み入れることができる。
【0163】
なお他の態様において、医療従事者、または微生物感染症を有する人もしくは部位と接触する如何なる人も、その個人的な健康上の安全性および汚染除去の必要性から組成物を用いてもよい。さらに、本発明の乳剤は、医療用装置および患者の部屋、家庭電気器具、台所および浴槽表面等の洗浄および消毒のような、病院および家庭で用いるための噴霧剤に処方することができる。類似の態様において、組成物は、衛生および環境サービス従事者、食品加工および農業従事者、研究所員が感染性の生物物質に接触する可能性がある場合にはこれらの人が用いてもよい。さらに、組成物は、感染および病的物質を有する可能性がある地域に接する旅行者および人が用いてもよい。
【0164】
C.食品の調製
本発明はまた、食品媒介細菌、真菌、および毒素に汚染された食品を予防および処置するために食品加工および調製産業において用いてもよい。このように、そのような組成物は、微生物の増殖を減少もしくは阻害、またはそうでなければ食品の微生物汚染の有害な作用を排除するために用いてもよい。これらの応用の場合、乳剤は、添加剤、保存剤または調味料のような食品産業に許容される形で提供される。
【0165】
「食品産業において許容される」という句は、人または動物によって口から摂取された場合に有害なまたはアレルギー反応を実質的に生じない組成物を意味する。本明細書において用いられるように、「食品産業媒体において許容される」という句には、任意のおよび全ての溶媒、分散物質、任意のおよび全てのスパイスおよびハーブならびにその抽出物が含まれる。従来の如何なる添加剤、保存剤、および調味料も本発明の乳剤と不適合性でない限り、食品媒介微生物およびその毒性産物を予防または治療するためにそれらを用いることが考慮される。補助活性成分も同様に組成物に組み入れてもよい。そのような応用に関して、許容される担体は、脂質、クリーム、フォーム、ゲルの形であってもよく、さらに、溶媒、乳化剤、ゲル化剤、保湿剤、安定化剤、湿潤剤、保存剤、金属イオン封鎖剤、色素、香料および食品加工産業において一般的に用いられるその他の成分を含んでもよい。
【0166】
本発明のもう一つの態様において、組成物は、食品が加工、包装および保存される食品産業装置、機器、および区域を消毒または滅菌するような応用のために特にデザインしてもよい。この種類の応用に関して、組成物は、液体またはフォームの形で都合よく提供してもよく、乳化剤、界面活性剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、およびこの種類の組成物において一般的に認められる他の成分と共に提供してもよい。いくつかの態様において、組成物は、それらの商品の輸送前、または輸送時に、それらの商品または農産物に提供される。本発明の組成物は、輸送および保存の際に食品の汚染を防止するための包装材料において一般的に用いられる吸収性の材料に含浸させてもよい(例えば、厚紙または紙の包装)。この種類のその他の輸送系は、当業者に容易に明らかとなると考えられる。
【0167】
本発明の組成物中の乳剤および増強剤の実際の量は、食品媒介微生物およびその毒性産物によって引き起こされる食品の汚染を有効に予防または阻害するために適当な濃度の乳剤および増強剤が得られるように変更してもよい。したがって、選択される濃度は、食品、包装、保存法、およびその他の要因の特性に依存すると考えられる。一般的に、本発明の乳剤組成物は、液体組成物において少なくとも0.001%〜約90%の乳剤を含んでいると考えられる。製剤が液体組成物1mlあたり乳剤を約0.001%、約0.0025%、約0.005%、約0.0075%、約0.01%、約0.025%、約0.05%、約0.075%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約1.0%、約2.5%、約5%、約7.5%、約10%、約12.5%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%を含んでもよいと想像される。上記の記載の如何なる2つの数値のあいだの範囲も、本発明の範囲内に含まれると特に考慮される。
【0168】
特定の態様において、乳剤は、食品、土壌および水、機械およびその他の装置、ならびに動物の微生物感染症の汚染を除去および予防するための消毒剤および洗剤として用いることができる。
【0169】
本発明の乳剤は、汚染を防止するために食品産業によって用いることができる。例えば、乳剤を食品そのものに含めることは、食肉または家禽に偶発的に汚染している細菌を殺すために有効となると考えられる。これによってまた、食品産業はおそらくより広い範囲の食品を用いることができるようになり、費用を減少させることができると考えられる。
【0170】
本発明の特定の態様はまた、飲料産業においても用いることができる。例えば、本発明の乳剤は、汚染を引き起こして、消費者にとって危険であるマイコトキシンを産生する可能性がある特定の真菌の増殖を予防するためにジュース製品に含めることができる。本発明の乳剤を少量加えることによって、フルーツジュースにおける最も一般的な真菌汚染が予防された。この効果は、乳剤の10,000倍もの薄い希釈液によって得ることができた(ジュース製品の香りまたは組成に影響を及ぼさない量)。
【0171】
本発明の乳剤は、機械およびその他の装置に対する感染物質を本質的に除去するために用いることができる。例えば、乳剤は、屠殺場または食品包装施設を乳剤によって継続的に洗浄することによって、特にリステリア菌(Listeria monocytogenes)のような生物による食肉加工プラントの汚染を除去するために用いることができる。
【0172】
投与を担当する人は、いずれにせよ、個々の適用のために適当な容量を決定すると考えられる。その上、上記の適用は、FDA局が必要とする一般的な安全性および純度標準を満たさなければならない。
【0173】
D.キット
本発明の他の態様において、方法および組成物、または方法および組成物の成分は、単一の製剤に処方してもよく、または特定の応用に関して望ましいように、使用時に後に混合するために異なる製剤に分離してもよい。そのような成分は微生物感染症に対して用いるためのキット、汚染除去装置等に含めると都合がよいかも知れない。いくつかの態様において、そのようなキットは、本発明の製剤をその意図する作用部位に輸送するために必要な本質的な材料および試薬を全て含む。
【0174】
いくつかの態様において、インビボでの使用を意図する場合、本発明の方法および組成物は、単一または異なる薬学的に許容されるシリンジに入れることが組成物に処方してもよい。この場合、容器手段は、そこから製剤が、肺のような体の感染領域に適用される、動物に注入される、またはキットの他の成分に適用もしくは混合される、それ自身が吸入剤、シリンジ、ピペット、点眼器、またはその他の類似の装置であってもよい。
【0175】
本発明のキットにはまた、典型的に販売のためにバイアルを固定して含む手段が含まれる(例えば、その中に所望のバイアルが保持される注入または吹き込み成形プラスチック容器)。容器の数または種類にかかわらず、本発明のキットはまた、動物の体内で最終的な複合組成物の注入/投与、または留置を補助する装置を含んでもよく、またはこれと共に包装してもよい。そのような装置は、吸入剤、シリンジ、および消毒用タオル、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼器またはそのような医学的に承認された任意の輸送装置であってもよい。
【0176】
E.改変、調製および輸送
本発明はさらに、本発明のナノ乳剤の改変、ナノ乳剤の他の製品への組み入れ、本発明の組成物の包装および輸送のための多様な方法および系、ならびに微生物に汚染される可能性がある材料または試料の使用または取り扱いに関連した費用の削減方法を提供する。以下の説明は、本発明の組成物の改変、調製、および輸送のいくつかの例を単に提供することを意図している。当業者はそのような方法の改変を認識すると考えられる。
【0177】
いくつかの態様において、本発明は、本明細書に記載のナノ乳剤を改善または変化させる方法を提供する。そのような方法には、例えば、本明細書に記載のナノ乳剤を用いて、ナノ乳剤の一つまたはそれ以上の成分を変化させることが含まれる。そのような変化には、一つまたはそれ以上の成分を加えるまたは除去することが含まれるがこれらに限定されない。次に、変化したナノ乳剤が、望ましいまたは有用な特性を有するか否かを決定するために試験することができる。本発明のいくつかの態様において、本発明のナノ乳剤、または本発明のナノ乳剤に由来するものを希釈する。次に、希釈した試料を、それらが所望の機能を維持するか否かを決定するために試験することができる。本発明のなお他の態様において、本発明のナノ乳剤または本発明のナノ乳剤に由来するものは、使用者または小売業者に販売または輸送するためにナノ乳剤の適当性を確認するために品質管理(QC)および/または品質保証(QA)法に合格する。
【0178】
本発明のいくつかの態様において、製品の抗微生物能を加えるもしくは改善するために、または製品に対する抗微生物能の改善が疑われる場合に調べるために、もしくは認められた改善された抗微生物能を提供するために、本発明のナノ乳剤を別の製品に加える(すなわち、本発明のナノ乳剤を製品に加えることは、それらが検出可能なまたは抗微生物能を有するか否かにかかわらず、本発明の範囲に含まれると考慮される)。例えば、いくつかの態様において、本発明のナノ乳剤を洗浄または消毒材料(例えば、家庭用洗剤)に加える。その他の態様においてナノ乳剤を医療用または救急箱材料に加える。例えば、ナノ乳剤を滅菌剤および傷の手当製品に加えてもよい(または直接それらとして用いてもよい)。なお他の態様において、ナノ乳剤を工業製品に加える。例えば、いくつかの態様において、ナノ乳剤を例えば真菌の混入を予防または減少させるためにモーター油に加える。上記のように、有効で安定な乳剤は、油成分としてモーター油を用いて合成することさえ可能である(例えば、W205GCモービル1)。なお他の態様において、ナノ乳剤を食品に加える。例えば、飲料における望ましくない生物の増殖を予防するためにナノ乳剤を飲料に加えることができる。
【0179】
本発明のナノ乳剤は、単独または他の材料と組み合わせて、多くの異なる種類の容器および輸送系に提供することができる。例えば、本発明のいくつかの態様において、ナノ乳剤はクリームまたはその他の固体または半固体形で提供される。本発明の開発の際に、本発明の乳剤を、ヒドロゲル製剤に組み入れてもよく、抗菌能が維持されることが決定された。乳剤をヒドロゲルにおいて用いることは、多くの有用な特徴を提供する。例えば、ヒドロゲルは所望の大きさおよび形状の半固体構造に調製することができる。これによって、例えば、抗菌フィルターを作製するためにヒドロゲル材料を試験管またはその他の経路に挿入することが可能となる(すなわち、ヒドロゲルを通過した材料は、本発明の乳剤によって汚染が除去される)。
【0180】
ナノ乳剤は、任意の適した容器において(例えば、使用者または消費者に)輸送することができる。所望の適用のためにナノ乳剤の一回またはそれ以上の単回使用、または多数回使用用量を提供する容器を用いることができる。本発明のいくつかの態様において、ナノ乳剤は、懸濁液または液体型として提供される。そのようなナノ乳剤は、スプレー瓶(例えば、加圧式スプレー瓶)を含む任意の適した容器において輸送することができる。工業用またはその他の大規模使用の場合、大量(例えば、10〜1000 L)のナノ乳剤を、ナノ乳剤の分配または使用を可能にするために適当に成形された単一の容器において提供してもよい。
【0181】
本発明のいくつかの好ましい態様において、本発明のナノ乳剤は、事業の実施操作に関連する費用を削減するため、または実施操作の安全性を改善するために、既存の事業実施に関連して用いられる。例えば、本発明のナノ乳剤を用いれば、微生物に汚染した可能性がある材料または試料の使用または取り扱いに関連した費用を削減することができる。いくつかの態様において、本発明のナノ乳剤は、安全性を改善するため、または医療に関連する費用を削減するために用いられる。例えば、ナノ乳剤は医療用材料(例えば、動物、人、または生体試料に接触する表面)に、または患者に(例えば、内用または外用)用いるために安価でかつ有効な滅菌剤として用いられる。ナノ乳剤はまた、食品加工および取り扱いならびに工業応用のための安価でかつ有効な滅菌物質として用いられる。いくつかのそのような態様において、本発明は、非毒性ナノ乳剤を提供する。例えば、本明細書において、医学、農業、および食品応用において用いるために、適当な規制当局(例えば、FDA、USDA等)によって現在承認されている成分を含むナノ乳剤が本明細書において提供される。さらに、非毒性の承認された物質のみで構成することができ、所望の機能を有するさらなるナノ乳剤を作製するための方法が本明細書において提供される。そのため、本発明のナノ乳剤は、規制当局の承認を得るという時間と費用のかかるプロセスを経る必要なく、申請に用いることができる。実際に、乳剤は、その個々の成分の総和より毒性が低くなりうる。例えば、X8PCを試験して血液寒天プレート上で調べたヒツジ赤血球細胞に及ぼす乳剤の溶解作用を非乳化成分の混合物の溶解作用と比較した。データを図34に示す。図34における2本の黒いバーは、全ての成分の非乳化混合物の溶解作用と比較したX8PCナノ乳剤の溶解作用を示す。
【0182】
V.特定の例
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい態様および局面を説明するために示されるのであって、その範囲を制限すると解釈してはならない。
【0183】
以下の実験の開示において、以下の省略後を用いる:eq(等量);μ(μm);M(モル濃度);μM(マイクロモル濃度);mM(ミリモル濃度);N(規定);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nM(ナノモル濃度);℃(セ氏);およびPBS(リン酸緩衝生理食塩液)。
【実施例】
【0184】
実施例1
乳剤の製剤化方法
乳剤は以下のように生成する:油相は、有機溶媒、油、および界面活性剤を混和することによって生成し、次に、得られた混合物を37〜90℃で1時間まで加熱する。乳剤は、シリンジ往復装置またはシルバーソン高剪断ミキサーのいずれかによって作製する。水相を油相に加えて、1〜30分間、好ましくは5分間混合する。揮発性の成分を含む乳剤に関しては、揮発性成分を水相と共に加える。
【0185】
特定の態様において、乳剤は以下のように生成した:油相は、トリブチルホスフェート、大豆油、および界面活性剤(例えば、トライトンX-100)を混和することによって生成した後、得られた混合物を86℃で1時間加熱した。次に、水を油相に、容積比が油相1に対して水相4の割合で注入することによって乳剤を作製した。乳剤は、反復シリンジ装置またはバッチもしくは連続流装置によって手動で作製することができる。これらの乳剤を作製する方法は、当業者に周知であり、例えば、米国特許第5,103,497号および第4,895,452号(その全文が参照として本明細書に組み入れられる)に記載されている。表2は、循環水浴を備えたコールターLS 130レーザーサイジング装置によって測定した乳剤の各成分の比率、pH、および大きさを示す。
【0186】
(表2)
* この乳剤は、BCTP乳剤を水で1:9の割合で希釈することによって得た。
【0187】
本発明の乳剤は非常に安定である。実際に、乳剤は、上記のように作製して、密封した50 ml〜1000 mlのポリプロピレンチューブにおいて室温で一晩放置させた。次に、乳剤の分離の兆候をモニターした。分離の兆候を示さなかった乳剤を「安定」であると見なした。次に、安定な乳剤を1年以上モニターしたところ、安定性を維持することが判明した。
【0188】
乳剤を再度上記のように作製して、密封した50 mlポリプロピレンチューブにおいて−20℃で一晩放置した。次に、乳剤を分離の兆候に関してモニターした。分離の兆候を示さなかった乳剤を「安定」と見なした。BCTPおよびBCTP 0.1乳剤は少なくとも24ヶ月間室温で保存した後実質的に不変であることが判明した。
【0189】
実施例2
油滴において形成された乳化したリポソームとしての本発明の一例としての細菌不活化乳剤の特徴付け
X8W60PCと呼ばれる本発明の細菌不活化乳剤は、脂質を含む水中油型乳剤をBCTPと混合することによって作製した。特に、主な脂質としてモノオレイン酸グリセロール(GMO)と、陽性荷電産生剤として塩化セチルピリジニウム(CPC)とを有する脂質含有水中油型乳剤(本明細書において、GMO/CPC脂質乳剤または「W808P」と呼ぶ)と、BCTPとを1:1の比(容積:容積)で混合した。米国特許第5,547,677号(その全文が参照として本明細書に組み入れられる)は、本発明の細菌不活化水中油型乳剤を提供するために、BCTPと組み合わせてもよいGMO/CPC脂質乳剤およびその他の関連する脂質乳剤を記載している。
【0190】
実施例3
インビトロ殺菌有効性試験I−グラム陽性菌
本発明の乳剤の殺菌有効性を調べるために、乳剤を様々な細菌と10分間混合した後、様々な希釈度で標準的な微生物培地に播種した。次に、コロニー数を無処置培養と比較して、処置によって殺された細菌の割合を決定した。表3は、実験結果を要約する。
【0191】
(表3)
【0192】
バシラス(Bacillus)種の様々な栄養型に及ぼす本発明の乳剤の殺菌作用を調べるために、3回希釈した乳剤をバシラス種と10分間混合した後、微生物培地に播種した。次に、コロニー数を無処置培養と比較して、処置によって殺された細菌の百分率を決定した。表4は、いくつかの実験からの殺菌結果の要約を示し、括弧内に殺菌の平均百分率を示す。
【0193】
(表4)
【0194】
実施例4
インビトロ殺菌有効性試験II−グラム陰性菌
グラム陰性菌の細胞壁による細菌不活化乳剤の取り込みを増加させ、それによって耐性のグラム陰性菌に及ぼす乳剤の殺微生物作用を増強するために、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を乳剤と予め混合した。EDTAを低濃度(50〜25 μM)で用いて、混合物を様々なグラム陰性菌と共に15分間インキュベートした。次に、混合物の殺菌作用をトリプチカーゼ大豆ブロスにおいて測定した。結果を下記の表5に示す。BCTPの100倍希釈を用いると細菌数が99%超減少した。この数の減少は、250 μM EDTA単独では15分間で細菌数を減少できなかった対照群から示されるように、EDTA単独の殺菌作用によるものではなかった。
【0195】
(表5)
【0196】
実施例5
インビトロ殺菌有効性試験III−栄養型と胞子型
セレウス菌(B. cereus、ATCC#14579)を炭疽菌(Bacillus anthracis)のモデル系として利用した。セレウス菌(B. cereus)の栄養型(活発に増殖する)に及ぼす本発明の化合物の殺菌作用を調べるために、BCTP希釈調製物による実験を行った。培地における37℃で10分間の処置を評価した。表6に要約するように、BCTP乳剤は、セレウス菌(B. cereus)の栄養型に対して有効である。この調製物との10分間の曝露は、100倍もの高い希釈度を含む調べた全ての濃度においてセレウス菌(B. cereus)の栄養型を実質的に完全に殺すために十分である。
【0197】
(表6)
実験数=4
【0198】
炭疽菌(B. anthracis)の胞子は、生物兵器として用いられる最も可能性が高い生物の一つである。胞子は、ほとんどの消毒剤に対して非常に抵抗性であることが周知である。上記のように、胞子を有効に殺すためには、通常、ホルムアルデヒドまたは次亜塩素酸ナトリウム(すなわち漂白剤)のような毒性で刺激性の化学物質を用いる必要がある。したがって、セレウス菌(B. cereus)の胞子について同じ実験を行った。表7に示すように、双方の培地において37℃で10分間処置しても、セレウス菌(B. cereus)胞子を殺すために十分ではなかった。
【0199】
(表7)
実験数=2
【0200】
セレウス菌(B. cereus)の胞子型に及ぼす本発明の化合物の有効性を一定期間で評価するために、BCTPを固体寒天培地に100倍希釈で組み入れて、表面に胞子を均一に散在させ、37℃で96時間インキュベートした。BCTPが組み入れられた固体寒天培地には96時間まで増殖を認めなかった(すなわち、>99%殺菌、平均値>99%殺菌、3回の実験)。
【0201】
BCTPによる胞子の殺菌が起こる時間をより厳密に定義しようとする試みで、以下の実験を行った。簡単に説明すると、胞子調製物を100倍希釈のBCTPによって処置して無処置対照と比較した。1ミリリットルあたりのコロニー形成単位数(CFU/ml)を0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間および8時間後に定量した。図1に示すように、無処置対照におけるCFU/mlは、最初の4時間のインキュベーションのあいだに増加してその後平衡に達した。ゼロ時間、1時間、2時間、4時間および6時間で調製して、胞子の構造に関して染色した細菌スメアにより、2時間では胞子の構造が残っていないことが判明した(図2A〜2C)。このように、無処置対照では2時間までに胞子の100%発芽が起こった。BCTPによって処置した胞子調製物では、CFU/mlは最初の2時間で増加を示さず、その後2〜4時間のあいだに急速に減少した。2〜4時間のあいだの初期値CFU/mlからの減少は約1000倍であった。同じ時点で調製して、胞子構造に関して染色した細菌スメアにより、胞子構造が8時間の実験終了時まで残っていることが判明した。したがって、胞子の発芽は、BCTP処置培養では発芽プロセスの阻害のために、または胞子が損傷を受けて発芽できないためのいずれかにより起こらなかった。乳剤がセレウス菌(B. cereus)の他にも他のバシラス種(Bacillus)を殺すために有効であるか否かを決定するために、上記のように類似の実験を行い、胞子調製物を乳剤と共に処置して、4時間インキュベーションした後に無処置対照と比較した。以下の表8は結果を示し、数値はいくつかの実験からの殺胞子活性の平均値を表す。
【0202】
(表8)
【0203】
実施例6
インビボ殺菌有効性試験
本発明の乳剤のインビボでの保護および治療効果を証明するために動物試験を行った。実験動物におけるセレウス菌(Bacillus cereus)感染症は炭疽病研究のモデル系としてこれまで用いられている(バードンおよびウェンデ(Burdon and Wende)、1960;バードン(Burdon)ら、1967;ラマナおよびジョーンズ(Lamanna and Jones)、1963)。セレウス菌(B. cereus)を実験的に感染させた動物において誘導された疾患症候群は、いくつかの点で炭疽病に類似していた(ドロブニュースキ(Drobniewski)、1993;フリッツ(Fritz)ら、1995)。本発明の乳剤は、マウスに注入する前にセレウス菌(B. cereus)胞子と混合した。
【0204】
皮膚創傷の刺激
1cm皮膚創傷にセレウス菌(B. cereus)胞子2.5×107個を感染させた後、さらなる処置を行わずに閉じた。他の群には同数の胞子を感染させた。1時間後、創傷に本発明の乳剤または生理食塩液のいずれかを潅注して、曝露後の汚染除去を刺激した。48時間までに、創傷周囲に平均面積4.86 cm2の大きい壊死領域を認めた。さらに、この群の動物の60%が感染のために死亡した。これらの病変の組織学検から、真皮と真皮下の全体的な壊死と多数の栄養型バシラス(Bacillus)菌が存在することが示された。実験的に感染させた創傷を生理食塩液で潅注しても、如何なる明白な利益も生じなかった。
【0205】
セレウス菌(B. cereus)胞子を感染させた創傷に本発明の乳剤を還流すると、実質的な利益を示し、病変の大きさの4.86 cm2から0.06 cm2へと一貫して98%減少を示した。この病変の大きさの減少は、無処置または生理食塩液潅注のいずれかを行った実験動物と比較して死亡率の1/3倍減少を伴った(60%から20%)。これらの病変の組織学試験では、栄養型のバシラス菌(Bacillus)の証拠を示さず、表皮の破壊をほとんど示さなかった(ハモウダ(Hamouda)ら、1999)。
【0206】
皮下注射
CD-1マウスに、対照として生理食塩液で10倍希釈した本発明の乳剤を注入したが、肉眼または組織学的分析のいずれにおいても苦痛または炎症反応の兆候を示さなかった。インビボでのセレウス菌(B. cereus)胞子の病原性作用および本発明の乳剤の殺胞子作用を調べるために、セレウス菌(B. cereus)胞子4×107個の懸濁液を生理食塩液または最終希釈10倍の本発明の乳剤と共に混合した後、直ちにCD-1マウスの背部皮下に注射した。
【0207】
本発明の乳剤を混合せずにセレウス菌(B. cereus)胞子を皮下に感染させたマウスは、6〜8時間で重度の浮腫を発症した。この後、18〜24時間で灰色の壊死領域が注射部位周辺に起こり、48時間までに皮膚に重度のかさぶたが形成され、乾燥した赤色の病変が残った。
【0208】
胞子と本発明の乳剤との同時注射は、胞子を本発明の乳剤と予め混合する場合、壊死病変の大きさが1.68 cm2から0.02 cm2へと98%超減少した。これは、最小の浮腫または炎症に関連した(ハモウダ(Hamouda)ら、1999)。
【0209】
ウサギ角膜
ウサギの角膜に様々な濃度の本発明の乳剤を還流して、24時間および48時間モニターした。組成物を治療的な量で用いても、刺激または異常を認めなかった。
【0210】
粘膜
鼻孔あたり4%ナノ乳剤25 μlを注入することによって、鼻腔内毒性をマウスにおいて行った。臨床または組織病理学的変化をこれらのマウスにおいて認めなかった。
【0211】
ラットにおける経口毒性試験は、25%ナノ乳剤8ml/kgまでを与えることによって行った。ラットは体重が減少せず、臨床的または組織病理学的な毒性の兆候を示さなかった。乳剤の経口投与の結果として腸の細菌叢に変化を認めなかった。
【0212】
特定の態様において、セレウス菌(Bacillus cereus)を血液寒天上で3回継代した(5%ヒツジ血液を含むTSA、REMEL)。セレウス菌(B. cereus)を3回目の継代プレートから擦り取ってトリプチカーゼ大豆ブロス(TSB)に再懸濁させた(BBLから市販されている)。セレウス菌(B. cereus)懸濁液を2本の試験管に分けた。等量の滅菌生理食塩液を1本の試験管に加えて、混合したセレウス菌(B. cereus)懸濁液/生理食塩液0.1 ccをCD-1マウス5匹に皮下注射した。等量のBCTP(滅菌生理食塩液で5倍希釈)を1本の試験管に加えて混合し、BCTPの10倍最終希釈液を得た。セレウス菌(B. cereus)懸濁液/BCTP 0.1 ccを混合しながら37℃で10分間インキュベートして、セレウス菌(B. cereus)懸濁液/BCTPをCD-1マウス5匹に皮下注射した。等量のBCTP(滅菌生理食塩液において5倍希釈)およびTSBを混合して、BCTPの10倍最終希釈液を得た。BCTP/TSB 0.1 ccをCD-1マウス5匹に皮下注射した。
【0213】
接種物におけるセレウス菌(B. cereus)のコロニー形成単位(cfu)数は以下のように定量した:セレウス菌(B. cereus)とセレウス菌(B. cereus)/BCTP懸濁液の10倍連続希釈液を、蒸留水において作製した。各希釈液(10 μl/プレート)をTSAプレート2枚に接種した。TSAプレートを37℃で一晩インキュベートした。コロニーを計数して、cfu/cc数を計算した。壊死病変はBCTPで前処置したセレウス菌(B. cereus)を接種したマウスではより小さいように思われる。以下の表9は、実験の結果を示す。
【0214】
(表9)
【0215】
セレウス菌(Bacillus cereus)を、胞子形成を誘導するために、0.1%酵母抽出物(ディフコ社)および50 μg/ml MnSO4を含む栄養寒天(ディフコ社)において増殖させた。プレートから菌を掻き取って、滅菌50%エタノール中に懸濁させ、残っている栄養型細菌を溶解するために、室温で攪拌しながら2時間インキュベートした。懸濁液を2,500×gで20分間遠心して、上清を捨てた。ペレットを脱イオン水に再懸濁させて、2,500×gで20分間遠心して、上清を捨てた。胞子懸濁液を分けた。ペレットをTSBに再懸濁させた。生理食塩液によって2倍希釈したセレウス菌(B. cereus)胞子0.1 ccをCD-1マウス3匹に皮下注射した。等量のBCTP(滅菌生理食塩液で5倍希釈)とセレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液を混合し、BCTPの10倍最終希釈液を得た(プレインキュベーション時間)。BCTP/セレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液0.1 ccをCD-1マウス3匹に皮下注射した。接種物中のセレウス菌(B. cereus)のコロニー形成単位(cfu)数は、以下のように定量した。セレウス菌(B. cereus)とセレウス菌(B. cereus)/BCTP懸濁液の10倍連続希釈液を蒸留水によって作製した。各希釈液をTSAのプレート2枚に播種した(10 μl/プレート)。TSAプレートを37℃で一晩インキュベートした。コロニーを計数して、cfu/cc数を計算した。壊死病変は、BCTPによって前処置したセレウス菌(B. cereus)胞子を接種したマウスではより小さいように思われた。これらの試験の観察結果を表10に示す。
【0216】
(表10)
【0217】
セレウス菌(Bacillus cereus)を、胞子形成を誘導するために0.1%酵母抽出物(ディフコ社)および50 μg/ml MnSO4を含む栄養寒天(ディフコ社)において増殖させた。プレートから菌を掻き取って、滅菌50%エタノール中に懸濁させ、残っている栄養型細菌を溶解するために、室温で攪拌しながら2時間インキュベートした。懸濁液を2,500×gで20分間遠心して、上清を捨てた。ペレットを蒸留水に再懸濁させて、2,500×gで20分間遠心して、上清を捨てた。ペレットをTSBに再懸濁させた。セレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液を試験管3本に分けた。等量の生理食塩液を試験管1本に加えて混合した。セレウス菌(B. cereus)懸濁液/生理食塩液0.1 ccをCD-1マウス10匹に皮下注射した。等量のBCTP(滅菌生理食塩液で5倍希釈)を第二の試験管に加えて混合し、BCTPの10倍最終希釈液を得た。セレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液/BCTP(10倍希釈)を、混合しながら37℃で4時間インキュベートした。セレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液/BCTP(10倍希釈)0.1 ccをCD-1マウス10匹に皮下注射した。等量のBCTP(生理食塩液で50倍希釈)を第三の試験管に加えて混合し、BCTPの100倍最終希釈液を得た。セレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液/BCTP(100倍希釈)を、混合しながら37℃で4時間インキュベートした。セレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液/BCTP(100倍希釈)0.1 ccをCD-1マウス10匹に皮下注射した。等量のBCTP(滅菌生理食塩液で5倍希釈)とTSBを混合して、BCTPの10倍最終希釈液を得た。BCT/PTSB 0.1ccをCD-1マウス10匹に皮下注射した。等量のBCTP(滅菌生理食塩液で50倍希釈)とTSBを混合して、BCTPの100倍最終希釈液を得た。BCTP/TSB 0.1ccをCD-1マウス10匹に皮下注射した。これらの試験から得られた知見を表11および表12に示す。
【0218】
(表11)
注意:皮膚病変は浮腫を伴う灰色、壊死領域は乾燥した赤色である
【0219】
(表12)
【0220】
セレウス菌(B. cereus)を皮膚病変、血液、肝臓、および脾臓から再度単離することを試みた(表13)。皮膚病変をベタジンによって清浄した後70%滅菌イソプロピルアルコールによって清浄した。病変の辺縁部に切開を作製して、綿棒で拭いた。胸部をベタジンで清浄した後70%滅菌イソプロピルアルコールによって清浄した。心穿刺によって血液を採取した。腹部をベタジンで清浄した後、70%滅菌イソプロピルアルコールによって清浄した。皮膚および腹部の筋肉を異なる滅菌器具を用いて開いた。肝臓と脾臓の試料を炎の中に軽く通過させて、滅菌器具を用いて切断した。新しく曝露した表面を培養のために用いた。BHI寒天(ディフコ社)に接種して、37℃で好気的に一晩インキュベートした。
【0221】
(表13)
* これらのマウスには病変は存在しなかったが、生物を注射部位から採取した。
【0222】
栄養型セレウス菌(B. cereus)とセレウス菌(B. cereus)胞子の双方を前処置すると、実験動物に導入した場合の疾患症状の誘発能は減少する。これは、皮膚病変のより小さい大きさに反映され、一般的に病変から回収されたセレウス菌(B. cereus)の数は一般的により少ない。さらに、血液、肝臓、および脾臓からの再単離はあまり頻繁でなく、このことは敗血症が予防可能である可能性があることを示唆している。
【0223】
実施例7
インビボ毒性試験I
CD-1マウスに本発明の化合物0.1 ccを皮下注射して、炎症および/または壊死の兆候を4日間観察した。化合物の希釈は滅菌生理食塩液において行った。マウスからの組織試料を、組織病理検査のために10%中性緩衝ホルマリン中で保存した。組織学診査のために送付した皮膚および筋肉試料(未希釈の化合物を注射したマウスから)は、組織壊死の兆候を示すことが報告された。希釈した化合物を注射したマウスからの組織試料は組織学検査を行わなかった。表14および15は2回の個々の実験結果を示す。
【0224】
(表14)
【0225】
(表15)
【0226】
モルモット(双方の後肢)に一部位あたり本発明の化合物1.0ccを筋肉内注射して、炎症および/または壊死の兆候を4日間観察した。化合物の希釈は滅菌生理食塩液において行った。
【0227】
モルモットからの組織試料を10%中性緩衝ホルマリンにおいて保存した。組織試料は組織学的に調べなかった。
【0228】
(表16)
【0229】
インビボ毒性試験Iの結果は、調べた化合物の皮下および筋肉内注射は、肉眼で観察可能な組織損傷を引き起こさず、実験動物において苦痛を引き起こさないように思われたことを示している(表16)。
【0230】
実施例8
インビボ毒性試験II
それぞれ雄性動物5匹および雌性動物5匹からなるスプレージ-ドーリー系ラット1群を個別ケージに入れて、投与前5日間馴化させた。ラットには14日間毎日投与した。0〜13日に、14日間連続してI群の各ラットにBCTPの100倍希釈液3mlをそれぞれ経口投与した。ラットの最大許容可能な経口容量として容量3mlを決定した。0日目および7日目に、投与前に、各ラットの体重を測定した。その後、ラットの体重を試験期間中毎週測定した。動物を疾患または死亡に関して毎日観察した。動物は14日間安静にした。28日目にラットの体重を測定して安楽死させた。経口毒性試験の平均体重の結果を表17に示す。経口毒性試験の平均体重の結果を表17に示す。0日、7日、および14日、21日および28日目での雄性および雌性動物の平均体重および0日〜28日までの体重増加の平均値も同様に表17に示す。ラット1匹は、14日に投与の際に経口投与の操作による機械的外傷のために死亡した。生存しているラットは全て、試験の28日のあいだに体重が増加し、疾患は報告されなかった。このように、トリブチルホスフェート単独は、粘膜に対して毒性で刺激性であることが知られているが、本発明の乳剤に組み入れるとこれらの特徴は示されない。BCTP乳剤の100倍希釈液も同様に、16 CFR §1500.3に提供されるプロトコールに従ってウサギにおける皮膚毒性に関して調べた。乳剤は調べた動物の皮膚に対して刺激性ではなかった。
【0231】
(表17)
【0232】
毒性試験の一般的な方法には、皮膚刺激試験、眼刺激試験、皮下試験、筋肉内試験、開口創傷刺激、鼻腔内試験、および経口試験が含まれる。皮膚試験はウサギについて行い、10%乳剤0.5 mlをウサギの皮膚に4時間適用する。皮膚反応を72時間まで記録する。ドレイズ尺度を用いて刺激を採点する。眼の刺激試験に関しては、10%乳剤0.1 mlをウサギの眼に適用して、眼の反応を72時間まで記録する。ドレイズ尺度を用いて刺激を採点する。皮下および筋肉内試験はマウスに10%乳剤0.1 mlを注射する。開口創傷刺激試験ではマウスを用いて10%乳剤2mlを適用する。鼻腔内試験では、鼻孔あたり2〜4%乳剤0.25 mlをマウスに適用する。経口試験に関しては、10%乳剤4ml/kg/日を1週間経口投与するか、または100%乳剤8ml/kgを1回用量として投与する。
【0233】
実施例9
炭疽菌(Bacillus anthracis)を用いたインビトロ試験
本発明の化合物の炭疽菌(B. anthracis)の胞子型に及ぼす殺菌作用を調べるために、X8W60PC調製物による実験を行った。炭疽菌(B. anthracis)の異なる6つの株に対するX8W60PCの異なる希釈液(水溶液)の殺胞子活性を図3に示す。図4および5に示すように、X8W60PCは炭疽病の異なる7種類の株の98%超を4時間以内に殺し(図3の株およびエームス、USAMRID)、これは1〜10%漂白剤と同程度に有効である。X8W60PCの異なる培地希釈液についても類似の殺胞子活性を認める(図6)。図7は、室温で0時間と比較した炭疽菌(B. anthracis)のデルリオ、テキサス株に対するX8W60PCの殺胞子活性の経時的変化を示す。示されるように、X8W60PCは、30分もの短いあいだに炭疽胞子を殺すことができる。
【0234】
実施例10
作用機序
以下の実施例は、本発明の乳剤について提唱される作用機序に洞察を与え、その殺細胞活性を示すために提供する。この作用機序は本発明の範囲を制限すると解釈してはならず、作用機序を理解することは本発明を実践するために必要ではなく、本発明は任意の特定の作用機序に限定されない。GMO/CPC脂質乳剤(「W808P」)およびBCTPの大腸菌に及ぼす作用を調べた。W808Pは、大腸菌を殺すが(脱イオン水において)、BCTPはこの生物に対して無効であった。図8は、対照を、図9はBCTPを処置した大腸菌を示す。図9に示すように、BCTP処置大腸菌は正常であるように思われ、明確な構造と無傷の脂質膜を示す。図10は、P10処置大腸菌を示し、この場合細菌は内部に空胞を有し、内容物は腫脹して生物の明確な構造は失われていた。特定の理論に拘束されることなく(作用機序の理解は本発明を実践するために必要ではなく、本発明は如何なる特定の作用機序にも限定されない)、この知見は、W808Pが細菌を溶解することなく殺し、その代わりに空胞形成および腫脹によって示されるように内部構造の変化を引き起こすことを示唆している。第二の研究はビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)について実施した。ビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)は大腸菌の近縁であるにもかかわらず、BCTP、W808PおよびX8W60PCはこの生物を殺した。対照の電子顕微鏡写真(図11)と比較すると、W808P処置ビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)(図12)は再度、生物内部構造の腫脹および変化を示すが、細胞は無傷のままである。対照的に、BCTP処置ビブリオコレラ(Vibrio cholerae)(図13)は、細胞の屑が残っているのみで完全に溶解する。X8W60PC(図14)は作用の組み合わせを示し、この場合生物のいくつかは腫脹するが無傷でありいくつかは溶解される。このことは、BCTP、W808PおよびX8W60PCが異なる作用機序によって作用することを示唆している。
【0235】
様々な濃度の乳剤の有効性を評価するために第三の比較試験を実施した。表18に示すように、X8W60PCはW808PまたはBCTPのいずれかに対して感受性がある細菌において、より低い濃度(高い希釈度)で殺生物剤としてより有効である。さらに、W808PおよびBCTPに対して抵抗性である他の6つの細菌は全て、X8W60PCに対して感受性を示す。このような活性の差は、W808P、BCTP、およびX8W60PCをインフルエンザ感染性アッセイ法において比較する場合にも認められる。図15に示すように、BCTPおよびX8W60PCはいずれも10倍および100倍希釈で有効であり、さらに、X8W60PCは最も低い濃度、すなわち1000倍希釈でも有効である。対照的に、W808Pは、10倍希釈でもほとんど活性を示さず、このことは、このエンベロープ型生物に対する有効な治療ではないことを示唆している。さらに、X8W60PCはW808PまたはBCTPのいずれによっても殺されない酵母種を殺す。
【0236】
(表18) 選択した微生物の90%以上の殺作用を得るために必要なナノ乳剤の最低濃度
* これより低い濃度のデータは得られていない
# 脱イオン水以外は殺作用なし
10 ND=決定していない
【0237】
実施例11
バシラス(Bacillus)に対するナノ乳剤の殺胞子活性のさらなる証拠
本実施例は、本発明の乳剤の特定の態様が異なるバシラス(Bacillus)種胞子を不活化できるか否かをさらに調べた結果を提供する。これらの試験の方法および結果を下記に概要する。
【0238】
界面活性剤脂質調製物:BCTP
油中水型ナノ乳剤、これは油相が大豆油、トリ-n-ブチルホスフェート、およびトライトンX-100の80%水溶液で構成される。X8W60PCは、モノステアリン酸グリセロール、精製大豆ステロール、ツイーン60、大豆油、陽イオンハロゲン含有CPCおよびペパーミント油で構成されるリポソーム様の化合物であるW808PとBCTPとの等量を混合することによって調製した。
【0239】
胞子調製物:
セレウス菌(Bacillus cereus)(ATCC 14579)、B.サーキュランス(B. circulans)(ATC 4513)、巨大菌(B. megaterium)(ATCC 14581)、および枯草菌(B. subtilis)(ATCC 11774)をNAYEMn寒天(0.1%酵母抽出物および5mg/ml MnSO4を含む栄養寒天)上で37℃で1週間増殖させた。プレートから菌を擦り取って細菌/胞子を滅菌50%エタノールに懸濁して、残っている栄養型細菌を溶解するために室温(27℃)で攪拌しながら2時間インキュベートした。懸濁液を2,500×gで20分間遠心して、ペレットを冷脱イオン水によって2回洗浄した。胞子ペレットをトリプチカーゼ大豆ブロス(TSB)に再懸濁させて、実験に直ちに用いた。炭疽菌(B. anthracis)胞子、エームスおよびボルム1B株は、ブルース・アイビンス博士(Dr. Bruce Ivins)(USAMRIID、フォートデトリック、フレデリック、メリーランド州)の好意により提供され、これまでに記述されているように調製した(アイビンス(Ivins)ら、1995)。他の炭疽菌株は、マーチン・ヒュージジョーンズ博士(Dr. Martin Huge-Jones)(LSU、バトンルージュ、ルイジアナ州)の好意により提供された。これらの株は、南アフリカ;モザンビーク;カナダのバイソン;およびテキサス州のデルリオからの高対立遺伝子不同性を有する単離菌を表す。
【0240】
インビトロ殺胞子アッセイ法:
固体培地の殺胞子活性を評価するために、トリプチカーゼ大豆寒天(TSA)をオートクレーヴして、55℃に冷却した。BCTPをTSAに最終希釈が100倍となるように加え、プレートに注ぐ際に絶えず攪拌した。胞子調製物を連続希釈して(10倍)、アリコット10 μlを1試料あたり2枚ずつ播種した(最高接種量は胞子105個/プレートであった)。プレートを37℃で好気的に48時間インキュベートして、増殖を評価した。
【0241】
液体培地における殺胞子活性を評価するために、胞子をTSBに再懸濁した。胞子2×106個を含む胞子懸濁液(最終濃度は胞子106個/ml)1mlを、試験管においてBCTPまたはX8W60PC(脱イオン水での最終濃度の2倍)1mlと混合した。試験管を試験管回旋器において37℃で4時間インキュベートした。処置後、懸濁液を脱イオン水で10倍希釈した。各希釈液のアリコット(25 μl)2本をTSA上に線条様に播種して、37℃で一晩インキュベートした後、コロニーを計数した。殺菌百分率として表記する殺胞子活性を計算した:
【数2】
【0242】
実験は少なくとも3回繰り返し、殺菌百分率の平均値を計算した。
【0243】
電子顕微鏡:
セレウス菌(B. cereus)胞子を、37℃の振盪インキュベータ内で、エルレンマイヤーフラスコを用いて、BCTPのTSBによる最終希釈100倍液によって処置した。試料50 mlを一定間隔で採取して、2,500×gで20分間遠心して、上清を捨てた。ペレットを4%グルタルアルデヒドの0.1 Mカコジレート溶液(pH 7.3)で固定した。胞子ペレットを透過性電子顕微鏡のために処理して、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛によって染色後に薄切片を調べた。
【0244】
発芽阻害剤/刺激剤:
セレウス菌(B. cereus)胞子(最終濃度は胞子106個/ml)を発芽阻害剤D-アラニン(最終濃度1μM)または発芽刺激剤L-アラニン+イノシン(最終濃度各50 μM)のいずれかと共にTSBに懸濁し(ティトバル(Titball)およびマンキー(Manchee)、1987;フォスター(Foster)およびジョンストン(Johnston)、1990;シバタ(Shibata)ら、1976)、その後BCTP(最終希釈100倍)と直ちに混合して、多様な間隔でインキュベートした。次に、混合物を連続希釈して播種し、一晩インキュベートした。翌日、プレートを計数して殺胞子活性の百分率を計算した。
【0245】
インビボ殺胞子活性:
2つの動物モデルを作製した;最初のモデルでは、セレウス菌(B. cereus)胞子(滅菌生理食塩液に懸濁させる)を最終希釈10倍のBCTPの等量と混合した。対照として、同じセレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液を等量の滅菌生理食塩液と混合した。次に、胞子4×107個を含む懸濁液100 μlをCD-1マウスに直ちに皮下注射した。
【0246】
第二のモデルにおいて、マウスの背部の皮膚を切開して刺激された創傷を作製した。先の丸いはさみで皮膚を下の筋肉から離した。この「ポケット」に胞子2.5×107個(生理食塩液)を含む200 μlを接種して、創傷クリップを用いて閉じた。1時間後、クリップを除去して、創傷を滅菌生理食塩液2mlまたはBCTP(滅菌生理食塩液で10倍希釈)2mlのいずれかによって潅注した。動物の臨床兆候を観察した。動物を5日後に安楽死させて、肉眼的および組織病理学的検査を行った。創傷部位は、以下の式によって計算した:1/2a×1/2b×π、式中aおよびbは創傷の2つの垂直方向の直径である。
【0247】
インビトロ殺胞子活性:
BCTPの殺胞子活性を評価するために、バシラス(Bacillus)属の4種、セレウス菌(B. cereus)、B.サーキュランス(B. circulans)、巨大菌(B. megaterium)、および枯草菌(B. subtilis)の胞子を調べた。100倍希釈したBCTPは、セレウス菌(B. cereus)と巨大菌(B. megaterium)に対して4時間で91%以上の殺胞子活性を示した(図16)。B.サーキュランス(B. circulans)はBCTPに対する感受性がより低く、胞子数の80%の減少を示したが、枯草菌(B. subtilis)はBCTPに対して4時間では抵抗性であるように思われた。BCTPのセレウス菌(B. cereus)に対する殺胞子作用(10倍希釈および100倍希釈)を、漂白剤の100倍希釈液(すなわち、0.0525%次亜塩素酸ナトリウム)に対して比較したところ、殺胞子作用の速度または程度のいずれにも有意差を認めなかった。他のナノ乳剤、X8W60PCは、細菌胞子を殺すためにより有効であった。1000倍希釈では、これは、4時間でセレウス菌(B. cereus)胞子の98%殺菌を示した(BCTPの1000倍希釈液での47%と比較して)。1000倍希釈したX8W60PCはBCTPに対するその抵抗性とは対照的に4時間で枯草菌(B. subtilis)胞子の97.6%殺菌を示した。
【0248】
セレウス菌(B. cereus)殺胞子の時間経過:
100倍希釈したBCTPと1000倍希釈したX8W60PCのセレウス菌(B. cereus)に対する殺胞子活性を分析するために8時間での経時的変化を調べた。100倍希釈したBCTPをセレウス菌(B. cereus)胞子と共にインキュベートすると、生存胞子数が1時間で77%減少し、4時間後には95%減少した。この場合も、1000倍希釈したX8W60PCは、100倍希釈したBCTPより有効であり、30分後に胞子数の約95%減少を認めた(図17)。
【0249】
BCTPの炭疽菌(B. anthracis)殺胞子活性:
最初のインビトロ実験の後、BCTP殺胞子活性を、炭疽菌(B. anthracis)の2つの毒性の強い株(エームスとボルム1B)に対して調べた。増殖培地に100倍希釈で組み入れたBCTPは炭疽菌(B. anthracis)胞子1×105個の増殖を完全に阻害することが判明した。同様に、1000倍希釈したBCTPをエームスまたはボルム1B胞子のいずれかと共に4時間インキュベートすると、混合物を室温でインキュベートした場合には91%以上の殺胞子活性が得られ、混合物を37℃でインキュベートした場合には96%以上の殺胞子活性が得られた(表19)。
【0250】
表19:
コロニー減少アッセイ法によって決定した炭疽菌(Bacillus anthracis)胞子の異なる2つの株に対するBCTP殺胞子活性(%殺菌)。BCTPの1000倍希釈液は27℃または37℃のいずれにおいても4時間で双方の胞子を>91%有効に殺した;これらの温度は胞子発芽の程度が著しく異なる条件である。殺胞子活性は1×106個/mlまでの胞子濃度で一貫していた。
【0251】
(表19)
【0252】
X8W60PCの炭疽菌(B. anthracis)殺胞子活性:
X8W60PCはより高い希釈においても、BCTPよりバシラス(Bacillus)胞子の多くの種に対して有効であるため、発芽を防止するために室温で、炭疽菌(B. anthracis)の異なる4つの株に対して10,000倍までの希釈液で調べた。X8W60PCは、1000倍希釈で86%〜99.9%の最大殺菌を示した(表20)。
【0253】
表20:
異なる臨床単離体を表す炭疽菌(B. anthracis)の異なる4つの株に対するX8W60PCの殺胞子活性。胞子を、発芽を防止するために室温でX8W60PCの異なる希釈液によって処理した。低い希釈では有意な殺菌を認めなかった。最大殺胞子作用は1000倍希釈で認めた。
【0254】
(表20)
【0255】
胞子の電子顕微鏡検査:
セレウス菌(B. cereus)は炭疽菌(B. anthracis)に最も近縁であることから、セレウス菌(B. cereus)を用いて試験を行った。BCTPのTSBによる100倍希釈液によって4時間処理したセレウス菌(B. cereus)胞子の透過性電子顕微鏡試験によって、胞子の外皮の広範囲の破壊と、歪んだ皮質、そして中心部の密度喪失を含むセレウス菌(B. cereus)胞子に対する物理的損傷が認められた(図18)。
【0256】
発芽の刺激と阻害:
バシラス(Bacillus)胞子に対するBCTPの殺胞子作用に及ぼす発芽の開始の影響を調べるために、発芽阻害剤であるD-アラニン(ティトバル(Titball)およびマンキー(Manchee)、1987;フォスター(Foster )およびジョンストン(Johnston)、1990)、および発芽刺激剤であるL-アラニンとイノシン(シバタ(Shibata)ら、1976)を胞子およびBCTPと共に1時間インキュベートした。BCTPの殺胞子作用は、10 mM D-アラニンの存在下で遅延し、50 μM L-アラニンおよび50 μMイノシンの存在下では加速した(図19)。
【0257】
インビボ殺胞子活性:
実験動物におけるセレウス菌(Bacillus cereus)感染症は、これまでに、炭疽病を調べるためのモデル系として用いられており、実験的炭疽病感染症と類似の疾患を引き起こす(ウェルコス(Welkos)ら、1986;ドロブニュースキ(Drobniewski)、1993;バードン(Burdon)およびウェンデ(Wende)、1960;バードン(Burdon)ら、1967;フリッツ(Frits)ら、1995;ウェルコス(Welkos)およびフリードランダー(Friedlander)、1988)。BCTPのインビボ有効性を評価するために、皮膚セレウス菌(B. cereus)疾患に関する2つの動物モデルを作製した。これらのモデルはナノ乳剤の皮下投与を含むため、これを適用する前にBCTPのインビボ毒性試験を行った。対照としてBCTPの生理食塩液による10倍希釈液を注入したCD-1マウスは、肉眼的または組織学的分析のいずれにおいても苦痛または炎症反応の兆候を示さなかった(図20A、図20B)。インビボでのセレウス菌(B. cereus)胞子の病原性作用およびBCTPの殺胞子作用を調べるために、セレウス菌(B. cereus)胞子4×107個の懸濁液を生理食塩液またはBCTPの最終10倍希釈液と共に混合した後、CD-1マウスの背部に直ちに皮下注射した。BCTPを含まないセレウス菌(B. cereus)胞子を皮下に感染させたマウスは、6〜8時間で重度の浮腫を発症した。これに続いて18〜24時間で灰色の壊死領域が注射部位周囲に現れ、48時間までに重度のかさぶたが皮膚に形成され、乾燥した赤色の病変が残された(図20C、図20D)。胞子とBCTPとの同時注入によって、胞子をBCTPと予め混合すると、壊死病変の1.68 cm2から0.02 cm2という98%以上の減少を認めた。これは、最小の浮腫または炎症に関連した(図20E、図20F)。
【0258】
さらなる試験において、1cmの皮膚創傷にセレウス菌(B. cereus)胞子2.5×107個を感染させた後、さらなる治療を行わずに閉じた(図21A、図21B)。他の群には、同数の胞子を感染させ、1時間後に創傷にBCTPまたは生理食塩液のいずれかを潅注して、曝露後の汚染除去を刺激した。実験的に感染させた創傷に生理食塩液を還流しても如何なる明白な利益も得られなかった(図21C、図21D)。セレウス菌(B. cereus)胞子に感染させた創傷をBCTPで還流すると、実質的な利益を示し、病変の大きさは4.86 cm2から0.06 cm2へと一貫して98%減少した(図21E、図21F)。病変の大きさのこの減少は、処置を受けていない、または生理食塩液を還流した実験動物と比較して、死亡率の4倍減少(80%から20%へ)を伴った。
【0259】
実施例12
インビトロでインフルエンザA型ウイルス感染症に及ぼす界面活性剤脂質調製物(SLP)の効果
エンベロープ型ウイルスは病原体として非常に懸念されている。それらは迅速に伝幡し、宿主がなくとも長期間にわたって生存することができる。インフルエンザA型ウイルスは、抗ウイルス剤を調べるための良好な容認されたモデルであることからこのウイルスを選択した(カライバノバ(Karaivanova)およびスパイロ(Spiro)、1998;マメン(Mammen)ら、1995;ヒュアン(Huang)ら、1991)。インフルエンザは、非常に接触感染性であり、重度の汎流行性疾患の原因となる臨床的に重要な呼吸器病原体である(マルダー(Mulder)およびハース(Hers)、1972)。
【0260】
エンベロープの糖蛋白質であるヘムアグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)は、インフルエンザのサブタイプの抗原特異性を決定するのみならず(シュルツェ(Shulze)、1997)、それらは容易に変異し、その結果、ウイルスが宿主防御系に浸潤することができる。これによって、近縁の株に対して免疫を有する人において疾患の開始が起こる可能性がある。以下は、インフルエンザA型ウイルス感染を予防するためにSLPの有効性を決定するために用いられる方法および組成物に関する説明である。
【0261】
界面活性剤脂質調製物(SLP):
SLPは2段階方法で合成した。大豆油を表1に記載の試薬と混和して、86℃で1時間加熱することによって油相を調製した(フローレンス(Florence)、1993)。次に、水または1%ビスマス水溶液(SS)を油相に容量/容量比で反復シリンジポンプを用いて注入することによってSLPを形成した。
【0262】
ウイルス:
インフルエンザウイルスA/AA/6/60型(ヘドチャー(Hedocher)ら、1996)は、ヒュネインF. マーサブ博士(Dr. Hunein F. Maassab)(ミシガン大学公衆衛生学)から提供された。インフルエンザA型ウイルスは、標準的な方法(バレット(Barrett)およびイングリス(Inglis)、1985)を用いて、受精した病原体不含鶏卵の尿膜腔(SPAFAS、ノルウィッチ、コネチカット州)において増殖させた。ウイルス保存液は−80℃で感染性の尿膜液の少量(108 cfu/ml)において維持した。アデノウイルスベクター(AD.RSV ntlacZ)は、ベクターコア施設(ミシガン大学医療センター、アナーバー、ミシガン州)によって提供され、一定量ずつ(−80℃で1012 pfu/ml)保存した。ベクターは、E1A〜E1Bに及ぶヌクレオチド配列とE3領域の一部とを欠失するヒトアデノウイルス(血清型5)ゲノム骨格に基づいた。これによって、ウイルスの複製能または非許容細胞の形質転換能が障害される。これは、ラウス肉腫ウイルス長末端反復(RSV-LTR)からのプロモーターの制御下で、β-ガラクトシダーゼをコードする大腸菌のLacZ遺伝子を有する。これは、蛋白質発現の検出を容易にするためにLacZ遺伝子の5'末端に結合した核ターゲティング(ntと呼ばれる)エピトープを含む(バラギ(Baragi)ら、1995)。
【0263】
細胞:
メイディンダービーイヌ腎(MDCK)細胞は米国微生物系統保存機関(ATCC;ロックビル、メリーランド州)から購入し、293細胞(CRL 1573;形質転換した初代培養胎児ヒト腎臓)は、ベクターコア施設(ミシガン大学メディカルセンター、アナーバー、ミシガン州)から得た。293細胞は、アデノウイルス5型の形質転換遺伝子を発現し、したって、宿主細胞においてAd.RSV ntlacZベクターの複製能を回復する(グラハム(Graham)ら、1977)。
【0264】
細胞維持培地:
MDCK細胞は、アール塩、2mM L-グルタミン、および1.5 g/L重炭酸ナトリウム(メディアテック社、ハーンドン、バージニア州)を添加し、10%ウシ胎児血清(FBS;ハイクローンラボラトリーズ、ローガン、ユタ州)を含むイーグル最小基本培地において維持した。培地には、0.1 mM非必須アミノ酸、1.0 mMピルビン酸ナトリウム、100 Uペニシリン/mlおよび100 μg/mlストレプトマイシン(ライフテクノロジーズ、ガイサースバーグ、メリーランド州)を添加した。293細胞は、2mM L-グルタミン、0.1 mM非必須アミノ酸、および1.0 mMピルビン酸ナトリウムを含むダルベッコ改変イーグル培地(メディアテック社、ハーンドン、バージニア州)において維持した。この培地はまた、100 U/mlペニシリンおよび100 μg/mlストレプトマイシン(ライフテクノロジーズ、ガイサースバーグ、メリーランド州)を含み、10%FBS(ハイクローンラボラトリーズ、ローガン、ユタ州)を添加した。
【0265】
ウイルス感染培地:
インフルエンザA型感染培地は、3.0 μg/mlトリルスルホニルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)処置トリプシン(ワーシントンバイオケミカル社、レークウッド、ニュージャージー州)を添加したMDCK細胞維持培地(FBS不含)であった。アデノウイルス感染培地は、低濃度の血清(2%FBS)を含む293細胞維持培地であった。
【0266】
インフルエンザA型重層培地:
重層培地は等量の2×感染培地および1.6%シーケムMEアガロース(FMCバイオプロダクツ社、ロックランド、メリーランド州)で構成された。染色アガロース重層培地は、アガロース重層培地+TPCK処置トリプシンを含まない0.01%ニュートラルレッド溶液(ライフテクノロジーズ、ガイサースバーグ、メリーランド州)で構成された。
【0267】
プラーク減少アッセイ(PRA)法:
プラーク減少アッセイ法は、どこにでも記載されている方法を改変して行った(ヘイデン(Hayden)ら、1980)。MDCK細胞を12ウェルファルコンプレートにおいて細胞1×105個/ウェルで播種し、37℃/5%CO2で3日間インキュベートした。インフルエンザA型ウイルス約1×108 pfuを、下記のように界面活性剤脂質調製物と共にインキュベートした。インフルエンザA型ウイルス-SLP処置および対照は、30〜100 pfu/250 μlを含むように感染培地において希釈した。コンフルエント細胞単層をプレート3枚に1試料あたり3ウェルずつ播種し、37℃/5%CO2で1時間インキュベートした。接種物/培地を吸引し、アガロース重層培地1ml/ウェルを加えて、プレートを37℃/5%CO2でプラークが現れるまでインキュベートした。単層をアガロース重層培地によって染色して、インキュベーションを37℃/5%CO2で継続した。プラークは染色の6〜12時間後に計数した。脂質調製物濃度を含むウェル9個の平均プラーク数を、無処置ウイルスウェルの平均プラーク数と比較した。
【0268】
インサイチュー細胞酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法:
インフルエンザA型ウイルスに感染したMDCK細胞におけるウイルス蛋白質を検出および定量するために、インサイチュー細胞ELISAを最適にした。簡単に説明すると、完全培地100 μl中にMDCK細胞2×104個を平底96ウェルマイクロタイタープレートに加えて、一晩インキュベートした。翌日、培養培地を除去して、細胞を血清不含維持培地によって洗浄した。ウイルス接種物100 μlをウェルに加えて、1時間インキュベートした。ウイルス接種物を除去して、MDCK細胞維持培地+2%FBS 100 μlと交換した。感染したMDCK細胞をさらに24時間インキュベートした。次に、細胞をPBSによって1回洗浄し、氷冷エタノール:アセトン混合液(1:1)によって固定して、−20℃で保存した。アッセイ当日、固定した細胞のウェルをPBSによって洗浄して、1%粉乳のPBS溶液によって37℃で30分間ブロッキングした。1000倍希釈したフェレット抗インフルエンザA型ウイルスポリクローナル抗体100 μl(ミシガン大学公衆衛生学部のヒュネインF. マーサブ博士(Dr. Hunein F. Maassab)の好意により提供された)を37℃で1時間ウェルに加えた。細胞を洗浄緩衝液(PBSおよび0.05%ツイーン20)によって4回洗浄し、ヤギ抗フェレットペルオキシダーゼ結合抗体(カークガード&ペリーラボラトリーズ、ガイサースバーグ、メリーランド州)の1000倍希釈液100 μlと共に37℃で30分間インキュベートした。細胞を4回洗浄して、発色するまで1-段階ターボTMB-ELISA基質(ピアス社、ロックフォード、イリノイ州)100 μlと共にインキュベートした。反応は1N硫酸によって停止させ、ELISAマイクロタイターリーダーにおいて波長450 nmでプレートを読みとった。
【0269】
β-ガラクトシダーゼアッセイ法:
β-ガラクトシダーゼアッセイ法は、既に記述されているように、細胞抽出物について行った(リム(Lim)1989)。簡単に説明すると、293細胞を96ウェル「U」底組織培養プレートに細胞約4×104個/ウェルで播種して、37℃/5%CO2で維持培地において一晩インキュベートした。翌日、培地を除去して、細胞をダルベッコリン酸緩衝生理食塩液(DPBS)100 μlによって洗浄した。アデノウイルス保存液を5×107 pfu/mlとなるように感染培地で希釈して、下記のようにBCTPの異なる濃度と混合した。BCTPによる処置後、ウイルスを感染培地によって濃度1×104 pfu/mlとなるように希釈して、293細胞に上層した。細胞を37℃/5%CO2で5日間インキュベートした後、プレートを遠心して、培地を除去し、Ca++およびMg++を含まないPBSによって細胞を3回洗浄した。3回目の洗浄後、PBSを吸引して、1×レポーター溶解緩衝液(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)100 μlを各ウェルに加えた。細胞溶解を増強するために、プレートを3回凍結融解し、β-ガラクトシダーゼの販売元(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)によって提供された説明書に多少の改変を加えてβ-ガラクトシダーゼアッセイ法を行った。細胞抽出物5μlを96ウェル平底プレートに移して、1×レポーター溶解緩衝液(1:10)45 μlと混合した。その後、2×アッセイ緩衝液50 μl(120 mM Na2HPO4、80 mM NaH2PO4、2mM MgCl2、100 mM β-メルカプトエタノール、1.33 mg/ml ONPG(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州))を加えて細胞抽出物と混合した。かすかな黄色を認めるまでプレートを室温でインキュベートした。黄色を認めれば、1M重炭酸ナトリウム100 μlを加えて反応を停止させた。プレートをELISAマイクロプレートリーダーにおいて波長420 nmで読みとった。全てのアッセイ法について、μu/μlβ-ガラクトシダーゼ(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)を加えた50 mMビシン緩衝液(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)、pH 7.5および1×レポーター溶解緩衝液によって希釈した100 μg/ml BSAからなる標準物質を流した。各細胞抽出物におけるβ-ガラクトシダーゼ単位は、標準物質におけるレベルを参照することによって回帰分析によって計算し、細胞抽出物試料中の蛋白質のミリグラムで除した。
【0270】
脂質調製物による細胞毒性とウイルス処置:
ウイルス感受性試験の前に、MDCKおよび293細胞に及ぼすSLPの細胞障害性を顕微鏡試験およびMTTアッセイ法によって評価した。ウイルスとSLPの混合物の希釈液を、評価したSLPの安全な濃度より少なくとも1次数高くなるように作製した。インフルエンザA型またはアデノウイルスのいずれか約1×108 pfuを最終濃度10倍、100倍、および1000倍希釈の脂質調製物と共に振盪機上で結果に示す異なる期間インキュベートした。インキュベーション後、SLP/ウイルス混合物の連続希釈液を適切な感染培地において作製し、MDCK(インフルエンザA型ウイルス)、または293(アデノウイルス)細胞に上層して、上記のようにPRA、細胞ELISA、またはβ-ガラクトシダーゼアッセイ法を行った。
【0271】
電子顕微鏡:
インフルエンザA型ウイルスは、超遠心を用いて(ベックマンローター、SW 28Ti、20,000 rpmで16時間)、GTNE(グリシン200 mM、トリス塩酸10 mM(pH 8.8)、NaCl 100 mM、およびEDTA1mM)によって調製した30%蔗糖クッションを通過させることによって尿膜液から半精製した。沈降したウイルスをGTNEによって再構築した。各試料(アデノウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス+BCTP、インフルエンザウイルス+BCTP)10 μlを15分間および60分間インキュベートした後、パーロディアン(parlodian)コーティングした200メッシュ銅グリッドに載せた。次に、2%カコジル酸緩衝グルタルアルデヒド5μlを加えた。3分後に液体を濾紙によって除去した。7%酢酸ウラニル10 μlをグリッドに加えて30秒後に濾紙によって除去した。グリッドを10分間乾燥させ、フィリップスEM400T透過型電子顕微鏡上で調べた。顕微鏡写真は、倍率200,000倍でフジFGフィルムに記録した。
【0272】
インフルエンザA型のSLPに対する感受性試験:
4つの界面活性剤脂質調製物(BCTP、NN、W808P、およびSS)のMDCL細胞のインフルエンザA型感染症に及ぼす影響を調べた。試験した調製物は全て、図22に示すように様々な程度にインフルエンザA型ウイルス感染症を阻害した。BCTPおよびSSは、10倍希釈でインフルエンザA型感染症を95%以上阻害した。NNおよびW80SPはインフルエンザA型ウイルスに対してごく中間的な作用を示したに過ぎず、感染症を約40%減少させた。BCTPの殺ウイルス作用は、100倍希釈液でも減弱しなかった。SSは、100倍希釈液ではより弱い作用を示し、インフルエンザA型感染症の阻害は55%であった。1000倍希釈でのこれらの2つの脂質調製物は、22〜29%の範囲でウイルス感染性に及ぼすごく弱い阻害作用を示したに過ぎなかった(図23B)。
【0273】
BCTPおよびSSはいずれも、ウイルス感染性に対して強い阻害作用を示したため、PRAを用いて細胞ELISAから得たデータを確認した。PRAはBCTPおよびSSの有効性を確認した。BCTPは、10倍希釈液でプラーク数を平均で50.88から0に減少させた(表21)。100倍希釈では、BCTPは、殺ウイルス有効性を維持した。100倍希釈では、SSは無処置ウイルスと比較してプラーク数を約7%減少させたに過ぎなかった。
【0274】
(表21)
a ウイルスはSLPと共に30分間インキュベートした。
b プラーク数
【0275】
インフルエンザA型ウイルスに及ぼすBCTPの作用の動力学:
BCTPがインフルエンザA感染性に対して作用を及ぼすために必要な時間を調べるために、ウイルスをBCTPの2つの希釈液(10倍、100倍)と共に4つの異なる時間間隔(5、10、15、30分)でインキュベートした。その後、プラーク減少アッセイ法を行った。表22に示すように、いずれかの希釈のBCTPと共に5分間インキュベートした後、MDCK細胞のインフルエンザA型ウイルス感染性は完全に消失した。濃度または時間に関係なくインフルエンザA型ウイルスとBCTPとの相互作用には有意差を認めなかった。
【0276】
(表22)
【0277】
BCTPの抗インフルエンザA型ウイルス有効性:
トライトンX-100洗剤は抗ウイルス活性を有するため(マハ(Maha)およびイガラシ(Igarashi)、1997;ポートカラ(Portcala)ら、1976)、トライトンX-100は、単独または個々のBCTP成分と組み合わせると、BCTPと同程度にインフルエンザA型感染症を阻害するか否かを調べた。インフルエンザA型ウイルスを、1)BCTP、2)トリ(n-ブチル)ホスフェート、トライトンX-100、および大豆油の組み合わせ(TTO)、3)トライトンX-100および大豆油(TO)、または4)トライトンX-100単独(T)によって処置した。BCTPは、トライトンX-100単独または調べた他の成分と混合した場合より10倍および100倍希釈液(トライトンX-100の500倍希釈、5000倍希釈)でインフルエンザA型ウイルスに対して有意に有効であった(図23)。1000倍希釈では、BCTP(トライトンX-100の50,000倍希釈)は、MDCK細胞のインフルエンザA型感染症を約50%減少させたのに対し、同じ濃度でトライトンX-100単独は完全に無効であった。
【0278】
BCTPは非エンベロープ型ウイルスの感染性に影響を及ぼさない:
BCTPが、非エンベロープ型ウイルスの感染に影響を及ぼすか否かを調べるために、β-ガラクトシダーゼをコードするLacZ遺伝子を含む遺伝子操作したアデノウイルスを用いた。このアデノウイルス構築物は、形質転換遺伝子を欠損し、したがって複製可能で、アデノウイルス5型の形質転換遺伝子を含む許容細胞のみを形質転換することができる。形質転換遺伝子を構成的に発現する293細胞は、アデノウイルス複製およびβ-ガラクトシダーゼ酵素の産生を促進するために用いた。図24に示すように、BCTP処置は、293細胞におけるアデノウイルスの複製能およびβ-ガラクトシダーゼ活性の発現能に影響を及ぼさなかった。BCTP処置および無処置アデノウイルスはいずれも、β-ガラクトシダーゼ酵素約0.11単位を産生した。
【0279】
エンベロープ型ウイルスに及ぼすBCTPの作用:
BCTPのみがエンベロープ型ウイルスの感染を変化させたため、エンベロープ型ウイルスの完全性に及ぼすこのナノ乳剤の作用を、電子顕微鏡を用いてさらに調べた。図25Dに示すように、BCTPの100倍希釈液と60分間インキュベートした後、アデノウイルスの構造は不変である。いくつかの認識可能なインフルエンザA型ビリオンが、BCTPと共に15分インキュベートした後に存在したが(図25B)、認識可能なインフルエンザA型ビリオンは1時間のインキュベーション後には認めなかった。インフルエンザA型ウイルスに対するBCTPの有効性と粘膜に対するその最小の毒性は、エンベロープ型ウイルスによる感染が原因で起こる疾患を予防するための有効な消毒剤および物質としての可能性を示す。
【0280】
実施例13
ネズミチフス菌(S. typhimurium)菌のW205EC処置に及ぼす温度とEDTAの影響
図31および32は、0.1%EDTAを加えた場合の本発明の異なる乳剤によるサルモネラ(Salmonella)菌の処置を示す。EDTAは、40℃(図32)および50℃(図33)の双方において乳剤の殺菌活性を改善した。乳剤は10.0%、1.0%、および0.1%希釈で調べた。
【0281】
実施例14
X8PCおよびW205ECの抗菌剤特性
上記のように、乳剤X8PCは、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約1%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約19容量%からなり、乳剤W205ECは、ツイーン20約5容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、油約64容量%(例えば、大豆油)、および脱イオン水約22容量%からなる。X8PCおよびW205ECは、様々な条件で多くの微生物の増殖を減少させるか否かを調べた。図35は、室温および37℃でX8PCの10%、1%、および0.1%によるマイコバクテリア・フォーツイタム(Mycobacteria fortuitum)の対数的減少を示す。
【0282】
W205ECの2%乳剤(1%、2%、および3%ナトロソルを含むおよび含まない)はそれぞれ、室温で15分インキュベートした後、大腸菌の乾燥および湿潤細菌の双方に対して約2対数の減少を示した。W205ECの2%乳剤(1%、2%、および3%ナトロソルを含むおよび含まない)はそれぞれ、室温で15分インキュベートした後、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の乾燥および湿潤細菌の双方に対して約4対数の減少を示した。W205ECの2%乳剤(1%、2%、および3%ナトロソルを含むおよび含まない)はそれぞれ、室温で15分インキュベートした後、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)の乾燥および湿潤細菌の双方に対して約3対数の減少を示した。
【0283】
多数の温度および異なる種類の水で希釈した場合の1%W205ECの殺菌活性を調べるために、ゴム表面実験を行った。1フィートの表面に帯状擦過物(belt scrapings)20 gを塗沫した。ネズミチフス菌(S. typhimurium)菌を手動で表面に噴霧して20分間乾燥させた。処置を1分間、それぞれのあいだを1分間空けて3回行った。室温で10分間インキュベートした。結果を図36に示す。データはW205ECが調べた各温度で脱イオン水、蒸留水、および水道水を用いて有効であることを示している。
【0284】
上記の明細書において言及した全ての出版物および特許は参照として本明細書に組み入れられる。本発明の記述した方法および系に関する様々な改変および変更は、本発明の範囲および精神の範囲内であることは当業者に明らかとなると考えられる。本発明は、特定の好ましい態様と結びつけて記載してきたが、請求の本発明は、そのような特定の態様に不当に制限されないと理解すべきである。実際に、本発明を実施するために記載した様式の様々な改変が関連する分野の当業者には明白であるが、これらも添付の特許請求の範囲内であると解釈すべきである。
【技術分野】
【0001】
以下の出願は、そのそれぞれが、1999年4月28日に提出された米国特許仮出願第60/131,638号に対する優先権を主張する、1999年12月30日に提出された米国特許出願第09/474,866号の一部継続出願である2000年4月28日に提出された米国特許出願第09/561,111号の一部継続出願である。これらの出願はそれぞれの全文が参照として本明細書に組み入れられる。本発明は、DARPA助成金番号MDA972-97-1-0007によって米国政府の支援を一部受けた研究を行っているあいだになされた。政府は本発明において一定の権利を保有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、多様な病原体に関連した感染、罹患率、および死亡率を減少させるための組成物および方法に関する。本発明はまた、病原体および微生物がコロニーを形成したまたはそうでなければ感染した領域、試料、溶液、および食品の汚染を除去するための方法および組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
細菌、真菌、ウイルス、および細菌胞子のような病原体は、ヒトおよび動物の病気の多血症と共に、食品ならびに生物および環境試料の汚染の原因である。動物の微生物感染症の第一段階は一般的に、皮膚または粘膜の接着またはコロニー形成であり、この後感染性微生物の浸潤および播種が起こる。病原性細菌の流入口は、主として皮膚および粘膜である。
【0004】
特に、バシラス(Bacillus)属の細菌は、過酷な条件および極端な温度に耐える安定な胞子を形成する。炭疽菌(B.anthracis)によって農地が汚染されると、家畜、農業用、および野生動物に致命的な疾患が起こる(例えば、ドラゴンおよびレニー(Dragon and Rennie)、Can. Vet. J. 36:295[1995](非特許文献1)を参照のこと)。この生物によるヒトの感染は、通常感染動物または感染動物産物との接触が原因である(例えば、ウェルコス(Welkos)ら、Infect. Immun. 51:795[1986](非特許文献2)を参照のこと)。ヒトの臨床症状には、急激に発症してしばしば致死的となる肺炎型が含まれる。炭疽病の胃腸管および皮膚型はそれほど急激ではないが、積極的な治療を行わなければ致死となりうる(例えば、フランツ(Franz)ら、JAMA 278:399[1997](非特許文献3);およびパイル(Pile)ら、Arch. Intem. Med. 158:429[1998](非特許文献4)を参照のこと)。ヒトにおける炭疽菌(Bacillus anthracis)感染症は、ワクチン、抗体、および感染した家畜の適当な廃棄を含む有効な動物制御により、あまり一般的ではない。しかし、動物の炭疽菌感染症は、農地および農場の汚染除去が難しいことから依然として重要な問題である。さらに、戦争および/またはテロリストの活動によって持ち込まれるヒト感染症が懸念されている。
【0005】
炭疽病ワクチンは入手可能であり(例えば、アイビンス(Ivins)ら、Vaccine 13:1779[1995](非特許文献5)を参照のこと)、古典的な炭疽病を予防するために用いることができるが、異なる株の生物の遺伝的混合によってワクチンは無効となりうる(例えば、モブレー(Mobley)、Military Med. 160:547[1995](非特許文献6)を参照のこと)。生物兵器としての炭疽菌胞子を使用した場合に考えられる結末は、先のソビエト連邦における軍の微生物研究所からの炭疽菌(Bacillus anthracis)の偶発的な放出によって証明された。この事故により、死亡66例を含むヒト炭疽病症例77例を認めた。何例かの炭疽菌感染症は研究所から4キロメートル離れたところでも起こった(例えば、メセルソン(Meselson)ら、Science 266:1202[1994](非特許文献7)を参照のこと)。感染した犠牲者の遺伝子分析から、多数の株または遺伝的に変化した炭疽菌(B. anthracis)のいずれかが存在することが明らかとなった(例えば、ジャクソン(Jackson)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:1224[1998](非特許文献8)を参照のこと)。
【0006】
さらに、バシラス(Bacillus)属の他のメンバーもまた、多くのヒト疾患の病因物質であると報告されている。セレウス菌(Bacillus cereus)は一般的な病原体である。これは、胞子が調理しても生き残ることができるために、食品媒介疾患に関係する。これはまた、局所敗血症ならびに創傷および全身感染症にも関連している(例えば、ドロブニュースキ(Drobniewski)、Clin. Micro. Rev. 6:324[1993](非特許文献9)を参照のこと)。多くの細菌は、抗生物質に対する耐性を容易に作り出す。細菌の抗生物質耐性株に感染した生物は、重篤でおそらく生命に危険がある結末に直面する。
【0007】
耐性を作り出す細菌の例には、しばしば致死的感染症を引き起こすブドウ球菌(Staphylococcus)、肺炎および髄膜炎を引き起こす肺炎球菌(Pneumococci);下痢を引き起こすサルモネラ(Salmonella)および大腸菌(E. coli);血流、手術創傷および尿路感染症を引き起こす腸球菌(Enterococci)が含まれる(例えば、ベルケルマン(Berkelman)ら、J. Infect. Dis. 170(2):272[1994](非特許文献10)を参照のこと)。
【0008】
非常に貴重に進歩したものの、抗生物質および抗菌剤治療は、特に抗生物質に耐性の様々な細菌株が出現する場合には、いくつかの問題を有する。さらに、バシラス(Bacillus)胞子に対して非常に有効な消毒剤/殺虫剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム、ホルムアルデヒドおよびフェノール)は、環境、機器、および災害の汚染除去にはあまり適していない。これは、揮発性の煙の吸入後に組織壊死および重度の肺損傷が起こる毒性のためである。これらの化合物の腐食性の特性により、それらは感度のよい機器の汚染除去には適さない(例えば、アラスリ(Alasri)ら、Can. J. Micro. 39:52[1993](非特許文献11);ビューチャンプ(Beauchamp)ら、Crit. Rev. Tox. 22:143[1992](非特許文献12);ヘス(Hess)ら、Amer. J. dent. 4:51[1991](非特許文献13);リニアウィーバー(Lineaweaver)ら、Arch. Surg. 120:267[1985](非特許文献14);モルガン(Morgan)、Tox. Path. 25:291[1997](非特許文献15);およびラッセル(Russell)、Clin. Micro. 3:99[1990](非特許文献16)を参照のこと)。
【0009】
インフルエンザA型ウイルスは、インビトロ(例えば、カライバノバおよびスパイロ(Karaivanova and Spiro)、Biochem. J. 329:511[1998](非特許文献17);マメン(Mammen)ら、J. Med. Chem. 38:4179[1995](非特許文献18);およびヒュアン(Huang)ら、FEBS Letters 291:199[1991](非特許文献19)を参照のこと)およびインビボ(例えば、ワゴーンおよびゴア(Waghorn and Goa)、Drugs 55:721[1998](非特許文献20);メンデル(Mendel)ら、Antimicrob. Agents Chemother. 42:640[1998](非特許文献21);およびスミス(Smith)ら、J. Med. Chem. 41:787[1998](非特許文献22)を参照のこと)で抗ウイルス剤を調べるためのモデル系として広く用いられている一般的な呼吸器病原菌である。ウイルスサブタイプの抗原特異性を決定するエンベロープの糖蛋白質であるヘムアグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)は、容易に変異することができ、それによってウイルスは中和抗体から逃れることができる。現在の抗ウイルス化合物およびノイラミニダーゼ阻害剤は有効性が弱く、ウイルス耐性が一般的である。
【0010】
明らかに、病原体の曝露に関連した感染、罹患率、および死亡率を減少させる抗病原体組成物および方法が必要である。そのような組成物および方法は、好ましくは、微生物耐性を促進するまたはレシピエントに対して毒性となる望ましくない特性を有してはならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Dragon and Rennie、Can. Vet. J. 36:295[1995]
【非特許文献2】Welkosら、Infect. Immun. 51:795[1986]
【非特許文献3】Franzら、JAMA 278:399[1997]
【非特許文献4】Pileら、Arch. Intem. Med. 158:429[1998]
【非特許文献5】Ivinsら、Vaccine 13:1779[1995]
【非特許文献6】Mobley、Military Med. 160:547[1995]
【非特許文献7】Meselsonら、Science 266:1202[1994]
【非特許文献8】Jacksonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:1224[1998]
【非特許文献9】Drobniewski、Clin. Micro. Rev. 6:324[1993]
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【非特許文献21】Mendelら、Antimicrob. Agents Chemother. 42:640[1998]
【非特許文献22】Smithら、J. Med. Chem. 41:787[1998]
【発明の概要】
【0012】
本発明は、多様な病原体に関連した感染、罹患率、および死亡率を減少させる組成物および方法に関する。本発明はまた、病原体および微生物がコロニーを形成したまたはそうでなければ感染した領域、試料、溶液、および食品の汚染を除去するための方法および組成物にも関する。本発明の組成物の特定の態様は非毒性であり、ヒトおよび他の動物によって安全に摂取してもよい。さらに、本発明の特定の態様は、化学的に安定で非染色性である。
【0013】
いくつかの態様において、本発明は、病原体に曝露されたまたは病原体に脅かされたヒトを含む動物を治療するために適した組成物および方法を提供する。いくつかの態様において、動物を、病原性生物に曝露される前に組成物の有効量に接触させる。他の態様において、動物を、病原性生物に曝露された後に組成物の有効量に接触させる。このように、本発明は、微生物感染症の予防および治療の双方を考慮する。
【0014】
他の態様において、本発明は、病原体に曝露されたまたは病原体を含むことが疑われる有機および無機試料を含む溶液および表面の汚染を除去するために適した組成物および方法を提供する。本発明のなお他の態様において、組成物は、生物および環境試料において有害または望ましくない微生物の増殖を予防するための添加剤として用いられる。
【0015】
好ましい態様において、病原性生物の感染、罹患率、および死亡率の減少は、油相、水相、および少なくとも一つの他の成分を含む水中油型ナノ乳剤に病原性生物を接触させることによって得られる。いくつかの好ましい態様において、乳剤はさらに溶媒を含む。いくつかの好ましい態様において、溶媒は有機リン酸溶媒を含む。なお他の態様において、有機リン酸塩に基づく溶媒は、ジアルキルホスフェートまたはトリアルキルホスフェート(例えば、トリブチルホスフェート)を含む。なお他の好ましい態様において、乳剤はさらにアルコールを含む。溶媒を用いる好ましい態様において、溶媒は組成物の油相において提供される。
【0016】
いくつかの態様において、本発明の組成物はさらに、一つまたはそれ以上の界面活性剤または洗剤を含む。いくつかの態様において、界面活性剤は非陰イオン性洗剤であると予想される。好ましい態様において、非陰イオン性洗剤はポリソルベート界面活性剤である。他の態様において、非陰イオン性洗剤は、ポリオキシエチレンエーテルである。本発明において用いられる界面活性剤には、ツイーン、トライトン、およびチロキサポールファミリーの化合物のような界面活性剤が含まれるがこれらに限定されない。
【0017】
特定の他の態様において、本発明の組成物はさらに、塩化セチルピリジニウムを含むがこれに限定されない化合物を含む、一つまたはそれ以上の陽イオンハロゲン含有化合物を含む。なお他の態様において、本発明の組成物は、特定の微生物、特に特定の細菌の胞子型の発芽を促進または増強する一つまたはそれ以上の化合物(「発芽増強物質」)をさらに含む。本発明の組成物を製剤化するために考慮される発芽促進物質には、L-アラニン、イノシン、CaCl2、およびNH4Cl等が含まれるがこれらに限定されない。なおさらなる態様において、本発明の組成物は組成物と微生物との相互作用を増加させる一つまたはそれ以上の化合物(「相互作用増強物質」)をさらに含む(例えば、エチレンジアミン四酢酸、またはエチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸のようなキレート化物質の緩衝液溶液)。さらに、本発明のさらに他の態様において、製剤はさらに、着色剤または着香料(例えば、色素およびペパーミント油)を含む。
【0018】
いくつかの態様において、組成物はさらに、乳剤の形成を助けるために乳化剤を含む。乳化剤には、油/水界面で凝集して2つの隣接する小滴の直接接触を防止するある種の連続的な膜を形成する化合物が含まれる。本発明の特定の態様は、その抗病原体特性を損ねることなく、水によって所望の濃度に容易に希釈される水中油型乳剤組成物を特徴とする。
【0019】
水相に分散された不連続な油滴の他に、水中油型乳剤はまた、小さい脂質小胞(例えば、しばしば互いに水相の層で分かれているいくつかの実質的に同心円の脂質二重層からなる脂質球体、ミセル(例えば、水相に対して極性の頭部が外側に面し、非極性の尾部が水相から離れて内側に隔離されるように並んだ分子50〜200個の小さい集合体中の両親媒性分子)、またはラメラ層(各粒子が水の薄膜によって分離された平行な両親媒性の二重層からなる脂質分散剤)のような、他の脂質構造を含みうる。
【0020】
これらの脂質構造は、非極性残基(例えば、長い炭化水素鎖)を水から離れさせる疎水力の結果形成される。上記の脂質調製物は、界面活性剤脂質調製物(SLP)として一般的に記述することができる。SLPは、粘膜に対する毒性が弱く、小腸内で代謝されると考えられる(例えば、ハモウダ(Hamouda)ら、J. Infect. Disease 180:1939[1998]を参照のこと)。SLPは、漂白剤のような消毒剤とは対照的にプラスチックおよび金属に対して非腐食性である。このため、SLPに基づく本発明の製剤は、細菌、真菌、ウイルスおよび他の病原性実体に対して特に有用であると思われる。
【0021】
本発明の特定の態様は、水中油型乳剤を含む組成物に病原体を接触させることを含む、微生物(例えば、病原性生物)の感染性を減少させる方法を考慮する。いくつかの好ましい態様において、乳剤は界面活性剤によって水相に分布した油相の形であり、油相には、有機リン酸塩に基づく溶媒と担体の油とが含まれる。いくつかの態様において、二つまたはそれ以上の異なる乳剤を病原体に曝露する。好ましい態様において、乳剤は融合原性および/または溶原性である。好ましい態様において、方法において用いられる油相は、リン酸塩に基づかない溶媒(例えば、アルコール)を含む。
【0022】
特定の態様において、接触は、病原体を殺すためまたは病原体の増殖を阻害するために十分な時間行う。他の態様において、本発明は、有害または望ましくない病原体を有する環境表面の汚染を除去する方法を提供する。そのような一つの態様において、病原体は環境表面に会合し、方法は、表面の汚染を除去するために十分な組成物の量を環境表面に接触させることを含む。汚染の除去によって病原体の完全な消失が起こることが望ましいかも知れないが、病原体が完全に消失する必要はない。いくつかの態様において、組成物および方法は、処置される表面が本発明の組成物によって十分に確実に処置されるように、さらに色素、塗料、ならびにその他の標識および同定化合物を含む。
【0023】
特定の態様において、動物は、本発明の組成物によって内科的に処置する。いくつかの好ましい態様において、接触は、皮内、皮下、筋肉内、または腹腔内注射によって行う。他の態様において、接触は、経口、鼻腔、頬、直腸、膣内、または局所投与によって行う。本発明の組成物を薬剤として投与する場合、組成物はさらに薬学的に許容されるアジュバント、賦形剤、安定化剤、希釈剤等を含むと考慮される。なおさらなる態様において、本発明は、さらなる薬学的に許容される生物活性分子(例えば、抗体、抗生物質、核酸トランスフェクション手段、ビタミン、無機質、補助因子等)をさらに含む組成物を考慮する。
【0024】
いくつかの好ましい態様において、本発明は、水中油型乳剤が、水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤を含む組成物を提供する。水相は水(例えば、脱イオン水、蒸留水、水道水)および溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩液)を含むがこれらに限定されない任意の種類の水相を含みうる。油相は、植物油(例えば、大豆油、アボガド油、亜麻仁油、ココナツ油、綿実油、スクアレン油、オリーブ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、菜種油、サフラワー油、およびヒマワリ油)、動物油(例えば、魚油)、香味油、水不溶性ビタミン、鉱油、およびモーター油を含むがこれらに限定されない任意の種類の油を含みうる。いくつかの好ましい態様において、油相は水中油型乳剤の30〜90容積%(すなわち、最終乳剤の総容積の30〜90%を占める)、より好ましくは50〜80%を含む。本発明は、アルコール成分の特性によって制限されないが、いくつかの好ましい態様において、アルコールはエタノールまたはメタノールである。さらに、本発明は界面活性剤の性質によって制限されないが、いくつかの好ましい態様において、界面活性剤はポリソルベート系界面活性剤(ツイーン20、ツイーン40、ツイーン60、およびツイーン80)、フェノキシポリエトキシエタノール(例えば、トライトンX-100、X-301、X-165、X-102、およびX-200、およびチロキサポール)、またはドデシル硫酸ナトリウムである。同様に、本発明はハロゲン含有化合物の特性によって制限されないが、いくつかの好ましい態様において、ハロゲン含有化合物は、ハロゲン化セチルピリジニウム、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルエチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化セチルトリブチルホスホニウム、ハロゲン化ドデシルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルベンジルジメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、臭化セチルトリブチルホスホニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、または臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムを含む。
【0025】
乳剤はさらに、第三、第四、第五等の成分を含んでもよい。いくつかの好ましい態様において、さらなる成分は、界面活性剤(例えば、第二の界面活性剤)、発芽増強剤、リン酸塩に基づく溶媒(例えば、トリブチルホスフェート)、ニュートラミンゲン、L-アラニン、塩化アンモニウム、トリプチカーゼ大豆ブロス、酵母抽出物、L-アスコルビン酸、レシチン、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、イノシン、水酸化ナトリウム、デキストロース、およびポリエチレングリコール(例えば、PEG200、PEG2000等)である。
【0026】
本発明はまた、本明細書に開示の乳剤のそれぞれを作製する方法を提供する。例えば、本発明は、混合物が油、水溶液、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、混合物を乳化することを含む水中油型乳剤を作製する方法を提供する。
【0027】
本発明はさらに、水中油型乳剤(例えば、本明細書に記載の水中油型乳剤のいずれか)を含む組成物に領域を曝露することを含む、領域を保護する(例えば、微生物の汚染から保護する)、または領域の汚染を除去する(例えば、領域における微生物を除去または数を減少させることによって領域の汚染を除去する)方法を提供する。方法は、任意の種類の領域に適用してもよい。例えば、いくつかの態様において、領域は固相表面(例えば、医療用装置)、溶液、生物の表面(例えば、ヒトの外側もしくは内側部分)、または食品を含む。
【0028】
本発明はまた、乳剤を提供する段階、および改変された乳剤を作製するために乳剤に成分を加えるまたは成分を除去する段階を含む、本明細書に記載の乳剤の任意のものを改変する方法を提供する。いくつかの態様において、方法はさらに、生物定量法において改変された乳剤を試験する段階を含む(例えば、処置領域に関連した微生物の量を減少させる乳剤の有効性を決定するための抗微生物アッセイ法)。本発明はまた、そのような改変された乳剤を商業的に用いる方法も考慮する。例えば、いくつかの態様において、方法はさらに、改変された乳剤の販売を宣伝するおよび/または改変された乳剤を販売する段階を含む。
【0029】
本発明はまた、本明細書に記載の水中油型乳剤のいずれかを含む輸送系(例えば、容器、ディスペンサー、包装等)を含むシステムを提供する。本発明は、さらに、本明細書に記載の水中油型乳剤のいずれかと接触する材料を含む系を含む。本発明は、乳剤に接する材料の性質によって制限されない。例えば、材料には、医療用装置、溶液、食品、洗剤、モーター油、クリーム、および生物材料(例えば、ヒト組織)が含まれるがこれらに限定されない。
【0030】
定義
本発明の理解を容易にするために、多くの用語および句を下記に定義する:
【0031】
本明細書において用いられるように、「微生物」という用語は、藻類、細菌、真菌(地衣類を含む)、原虫、ウイルス、およびウイルスより小さい物質の分類に入る、顕微鏡生物および分類上関連する肉眼的生物を意味する。微生物という用語は、他の生物(例えば、ヒトを含む動物、および植物)に対してそれ自身病原性である生物と、他の生物に対して病原性である物質を産生するが、生物自身は他の生物に対して直接病原性ではなく、または感染性でない生物の双方を含む。本明細書において用いられるように、「病原体」という用語およびその文法的に同等の用語は、他の生物に直接感染することによって、またはもう一つの生物に疾患を引き起こす物質を産生することによって(例えば、病原性毒素等を産生する細菌)、もう一つの生物(例えば、動物および植物)に疾患を引き起こす、微生物を含む生物を意味する。
【0032】
本明細書において用いられるように、「疾患」という用語は、種のメンバーの正常または平均として見なされる状態からの逸脱であり、その種の個体の大多数に対して有害でない条件で罹患個体に対して有害である逸脱を意味する(例えば、下痢、悪心、発熱、疼痛、および炎症等)。疾患は、微生物および/または病原体によって引き起こされてもよく、またはそれらとの接触に起因してもよい。
【0033】
「宿主」または「被験者」という用語は、本明細書において、本発明の組成物によって処置されるべき生物を意味する。そのような生物には、一つまたはそれ以上の病原体に曝露されている、または曝露されたことが疑われる生物が含まれる。そのような生物にはまた、病原体に対する望ましくない曝露を予防するために処置される生物が含まれる。生物には、動物(例えば、ヒト、家畜動物種、野生動物)、および植物が含まれるがこれらに限定されない。
【0034】
本明細書において用いられるように、「不活化する」という用語およびその文法的に同等の用語は、病原体の宿主感染能および/または病的な反応の誘発能を抑制、消失または減少させる能力を有することを意味する。
【0035】
本明細書において用いられるように、「融合原性」という用語は、微生物(例えば、細菌または細菌胞子)の膜に融合することができる乳剤を意味すると解釈される。融合原性乳剤の特定の例には、そのそれぞれの全文が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,618,840号、第5,547,677号、および第5,549,901号に記載されるW808Pおよび、米国特許第5,700,679号に記載されるNP9が含まれるが、これらに限定されない。NP9は、分岐ポリ(オキシ-1,2-エタネオリル),α-(4-ノニルフェナル)-ω-ヒドロキシ-界面活性剤である。以下に制限されないが、本発明において有用となる可能性があるNP9および他の界面活性剤は、その全文が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,662,957号の表1に記載されている。
【0036】
本明細書において用いられているように、「溶原性」という用語は、微生物(例えば細菌または細菌胞子)の膜を破壊することができる乳剤を意味する。例示的な溶原性組成物はBCTPである。本発明の好ましい態様において、同じ組成物に溶原性物質と融合原性物質との双方が存在すれば、いずれかの物質単独より増強された不活化効果が得られる。この改善された抗微生物組成物を用いる方法および組成物を本明細書において詳しく記載する。
【0037】
本明細書において用いられる「乳剤」という用語には、古典的な水中油型分散剤または小滴と共に、水不混和性の油相を水相と混合する場合に、無極性残基(例えば、長い炭化水素鎖)を水から離れさせ、極性の頭部基を水に向けさせる疎水力の結果として形成することができるその他の脂質構造が含まれる。これらの他の脂質構造には、単層、少ない層、および多層の脂質小胞、ミセル、および層状相が含まれるがこれらに限定されない。同様に、本明細書において用いられる「ナノ乳剤」という用語は、小さい脂質構造を含む水中油型分散剤を意味する。例えば、好ましい態様において、ナノ分散剤は、平均粒子径が約0.5〜5μmである小滴を有する油相を含む。「乳剤」および「ナノ乳剤」という用語は、本明細書において、本発明のナノ乳剤を意味するためにしばしば互換的に用いられる。
【0038】
本明細書において用いられるように、「接触した」および「曝露した」という用語は、本発明の組成物が、存在すれば微生物または病原体を不活化するように、本発明の一つまたはそれ以上の組成物を、病原体または病原体に対して保護されるべき試料に接触させることを意味する。本発明は、開示の組成物が病原体または微生物を不活化するために十分な容量および/または濃度で、病原体または微生物と接触することを意図する。
【0039】
「界面活性剤」という用語は、エネルギー的に水による溶媒和を好む極性頭部基と、水によって十分に溶媒和されない疎水性尾部とを含む任意の分子を意味する。「陽イオン性界面活性剤」という用語は、陽イオン頭部基を有する界面活性剤を意味する。「陰イオン性界面活性剤」という用語は、陰イオン頭部基を有する界面活性剤を意味する。
【0040】
「親水性-親油性バランス指数」および「HLB指数」という用語は、界面活性剤分子の化学構造をその表面活性に相関させる指数を意味する。HLB指数は、参照として本明細書に組み入れられる、メイヤース(Meyers、「界面活性剤の科学と技術(Surfactant Science and Technology)」、VCHパブリッシャーズインク、ニューヨーク、pp.231〜245[1992])によって記載されるように多様な経験的な式によって計算してもよい。本明細書において用いられるように、界面活性剤のHLB指数は、マックチェオン(McCutcheon)の第1巻:「乳化剤と洗剤(Emulsifiers and Detergents)」、北アメリカ版、1996年(参照として本明細書に組み入れられる)においてその界面活性剤に割付されたHLB指数である。HLB指数の範囲は、市販の界面活性剤に関して0〜約70またはそれ以上である。水に対する溶解度が高く、可溶化特性が高い親水性界面活性剤は、尺度の高い末端に存在し、油中の水の良好な溶解剤である水に対する溶解度が低い界面活性剤は、尺度の低い末端である。
【0041】
本明細書において用いられるように、「発芽増強剤」という用語は、細菌の特定の株の発芽を増強するように作用する化合物を記述する(例えば、L-アミノ酸[L-アラニン]、CaCl2、イノシン等)。
【0042】
本明細書において用いられるように、「相互作用増強剤」という用語は、乳剤と細菌(例えば、グラム陰性菌)の細胞壁との相互作用を増強するように作用する化合物を記述する。考慮される相互作用増強剤には、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸[EDTA]、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸[EGTA]等)および特定の生体物質(例えば、ウシ血清アルブミン[BSA]等)が含まれるがこれらに限定されない。
【0043】
「緩衝液」または「緩衝剤」という用語は、これを溶液に加えると、溶液がpHの変化に耐えるようになる材料を意味する。
【0044】
「還元剤」および「電子供与体」という用語は、一つまたはそれ以上の第二の材料の原子の酸化状態を還元するために第二の材料に電子を供与する材料を意味する。
【0045】
「一価塩」という用語は、金属(例えば、Na、K、またはLi)が溶液中で正味1+の荷電を有する(すなわち、電子より陽子が一つ多い)任意の塩を意味する。
【0046】
「二価塩」という用語は、金属(例えば、Mg、Ca、またはSr)が溶液中で正味2+の荷電を有する任意の塩を意味する。
【0047】
「キレート剤」または「キレート化剤」という用語は、金属イオンに結合するために利用できる孤立電子対を有する原子二つ以上を有する任意の材料を意味する。
【0048】
「溶液」という用語は、水性または非水性混合物を意味する。
【0049】
本明細書において用いられるように、「治療物質」という用語は、病原性微生物に接触した宿主における感染、罹患率、もしくは死亡の開始を減少させる、または病原性微生物に接触した宿主における感染、罹患率、もしくは死亡の開始を予防する組成物を意味する。そのような物質はさらに、薬学的に許容される化合物(例えば、アジュバント、賦形剤、安定化剤、希釈剤等)を含んでもよい。いくつかの態様において、本発明の治療物質は局所乳剤、注射用組成物、摂取用溶液等の形で投与される。投与経路が経口である場合、製剤は例えば、クリーム、軟膏、外用薬、またはスプレーであってもよい。
【0050】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、宿主(例えば、動物またはヒト)に投与した場合に有害なアレルギー反応または免疫応答を実質的に生じない組成物を意味する。その上、特定の態様において、本発明の組成物は、園芸または農業で用いられるために製剤化してもよい。そのような製剤には、浸液、スプレー、種子のコーティング、幹の注射液、スプレー、および霧が含まれる。本明細書において用いられるように、「薬学的に許容される担体」という用語には、任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、等張剤、および吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン、またはデンプングリコール酸ナトリウム)等が含まれる。
【0051】
本明細書において用いられるように、「局所」という用語は、皮膚および粘膜細胞ならびに組織(例えば、肺胞、頬、舌、咀嚼筋、または鼻粘膜、ならびに他の組織および中空の臓器または体腔の内側に沿って並ぶ細胞)の表面に本発明の組成物を適用することを意味する。
【0052】
本明細書において用いられるように、「局所活性物質」という用語は、宿主に対する適用(接触)部位で薬理学的反応を誘発する本発明の組成物を意味する。
【0053】
本明細書において用いられるように、「全身活性薬」という用語は、適用点または被験者への流入点から離れた部位で薬理学的反応を生じる物質または組成物を示すために広い意味で用いられる。
【0054】
本明細書において用いられるように、「医療用装置」という用語には、医療の過程において患者の体に対して、体において、体を通して用いられる任意の材料または装置が含まれる。医療用装置には、医療用インプラント、創傷手当装置、薬物輸送装置、および体腔および個体保護装置のような品目が含まれるがこれらに限定されない。医療用インプラントには、尿路カテーテル、血管内カテーテル、透析用短絡、創傷排液管、皮膚縫合糸、血管移植片、埋め込み型メッシュ、眼内装置、心臓弁等が含まれるがこれらに限定されない。創傷手当装置には、全身創傷包帯、生体移植片材料、テープ閉鎖および包帯、ならびに外科用切開布が含まれるがこれらに限定されない。薬物輸送装置には、針、薬物輸送皮膚小片、薬物輸送粘膜小片、および医療用スポンジが含まれるがこれらに限定されない。体腔および個体保護装置には、タンポン、スポンジ、手術用および検査用手袋、および歯ブラシが含まれるがこれらに限定されない。産児制限装置には、子宮内装置(IUDs)、隔膜、およびコンドームが含まれるがこれらに限定されない。
【0055】
本明細書において用いられるように、「精製された」または「精製する」という用語は、試料または組成物から汚染物質または望まない化合物を除去することを意味する。本明細書において用いられるように、「実質的に精製された」という用語は、試料または組成物から混入物質または望まない化合物を約70〜90%、100%までを除去することを意味する。
【0056】
本明細書において用いられるように、「表面」という用語はその最も広い意味において用いられる。一つの意味において、この用語は、本発明の組成物を接触させることができる生物または無生物物体(例えば、小胞、建物、および食品処理機器等)の最も外側の境界を意味する(例えば、動物に関しては、皮膚、毛髪、および毛皮等、かつ植物に関しては、葉、茎、開花部分、果実部分等)。別の意味において、この用語はまた、多くの経皮輸送経路(例えば、注射、摂取、経皮輸送、吸入等)によって組成物を接触させることができる動物および植物の内側の膜および表面を意味する(例えば、動物に関して:消化管、血管組織等、かつ植物に関して導管組織等)。
【0057】
本明細書において用いられるように、「試料」という用語はその最も広い意味において用いられる。一つの意味において、これは動物細胞または組織を意味しうる。もう一つの意味において、これは、生体および環境試料のような、任意の起源から得られる標本または培養を含むことを意味する。生体試料は、植物または動物(ヒトを含む)から得てもよく、液体、固体、組織、および気体を含む。環境試料には、表面物質、土壌、水、および産業試料のような環境材料が含まれる。これらの例は、本発明に適用可能な試料の種類を制限すると解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
以下の図は、本明細書の一部であり、本発明の特定の局面および態様をさらに証明するために含まれる。本発明は、本明細書に示した特定の態様の説明と共に、これらの図の一つまたはそれ以上を参照することによってよりよく理解される可能性がある。
【図1】セレウス菌(B. cereus)胞子に及ぼす本発明の乳剤の殺菌有効性を示す。
【図2】セレウス菌(B. cereus)胞子に及ぼす本発明の乳剤の殺菌有効性を示す細菌スメアを示す。
【図3】異なる炭疽菌(B. anthracis)胞子に及ぼす乳剤の異なる希釈液の殺胞子活性を示す。
【図4】本発明の乳剤と漂白剤の経時的な殺胞子活性の比較を示す。
【図5】本発明の乳剤と漂白剤の経時的な殺胞子活性の比較を示す。
【図6】培地によって希釈した本発明の乳剤の異なる希釈液の異なる炭疽菌(B. anthracis)胞子に対する殺胞子活性を示す。
【図7】テキサス州デルリオから得られた炭疽菌(B. anthracis)に対する本発明の乳剤の殺胞子活性の経時的変化を示す。
【図8】大腸菌の電子顕微鏡写真(10,000倍)を示す。
【図9】BCTPを処置した大腸菌の電子顕微鏡写真(10,000倍)を示す。
【図10】W808Pを処置した大腸菌の電子顕微鏡写真(10,000倍)を示す。
【図11】ビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)の電子顕微鏡写真(25,000倍)を示す。
【図12】W808Pを処置したビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)の電子顕微鏡写真(25,000倍)を示す。
【図13】BCTPを処置したビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)の電子顕微鏡写真(25,000倍)を示す。
【図14】X8W60PCを処置したビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)の電子顕微鏡写真(25,000倍)を示す。
【図15】インフルエンザA型ウイルス活性に及ぼすBCTP、W808P、およびX8W60PCの影響を示す。
【図16】異なるバシラス(Bacillus)種4種に対するBCTPの殺胞子活性を、バシラス種2種に対するX8W60PCと比較して示す。BCTPは、セレウス菌(Bacillus cereus)、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)、および巨大菌(Bacillus megaterium)胞子に対して、処置の4時間後に有意な殺胞子活性を示したが、枯草菌(Bacillus subtilis)胞子に対しては殺胞子活性を示さなかった。X8W60PCは、4時間でセレウス菌(Bacillus cereus)に対してより有効な殺作用を示し、BCTPに対して耐性である枯草菌(B. subtilis)に対しても殺胞子活性を有した。
【図17】セレウス菌(Bacillus cereus)に対するナノ乳剤の殺胞子活性の経時的変化を示す。100倍希釈したBCTPと共にインキュベートすると、4時間で95%の殺菌作用が得られた。1000倍希釈したX8W60PCと共にインキュベートすると、わずか30分で95%の殺菌作用が得られた。
【図18】BCTPによって処置および後処置したセレウス菌(Bacillus cereus)胞子の電子顕微鏡写真を示す。BCTPによる処置前では、皮質の均一な密度と明確な胞子外皮が存在することに注目すること。4時間のBCTP処置後の胞子は、胞子外皮と皮質の双方に破壊を示し、コア成分が失われている。
【図19】100倍希釈したBCTPの殺胞子活性に及ぼす発芽の阻害および刺激の効果を示す。BCTPの殺胞子活性は、10 mM D-アラニン(発芽阻害)の存在下で遅延し、50 μM L-アラニンと50 μMイノシン(発芽刺激)の存在下で促進された。
【図20】BCTPとセレウス菌(B. cereus)胞子の異なる組み合わせを皮下注射した動物の肉眼および組織学写真を示す。図20Aおよび図20Bは、10倍希釈したBCTPのみを注射した動物を示す。肉眼的な組織の損傷を認めず、組織学検査は炎症を示さなかった。図20Cおよび20Dは、セレウス菌(Bacillus cereus)胞子4×107個のみを皮下注射した動物を示す。大きい壊死領域の平均面積は1.68 cm2である。この領域の組織学検査から、皮下脂肪および筋肉を含む表皮および真皮の本質的に完全な組織壊死が示された。図20Eおよび図20Fは、最終希釈が10倍となるようにBCTPナノ乳剤と直前に混合したバシラス(Bacillus)胞子4×107個を注入したマウスを示す。これらの動物は、最小の皮膚病変を示し、平均面積は0.02 cm2であった(胞子による無処置感染症に起因するそれらの病変の約98%減少)。しかし、図20Fにおける組織学検査は、何らかの炎症を示しているが、表皮および真皮における細胞構造のほとんどが無傷であったことを示している。全ての組織病理学は4倍で示す。
【図21】セレウス菌(Bacillus cereus)胞子に感染させた実験的創傷を有する動物の肉眼的および組織学写真を示す。図21Aおよび図21Bは、セレウス菌(Bacillus cereus)胞子2.5×107個に感染させた実験的創傷を有するが処置しなかったマウスを示す。これらの組織学検査から、広い壊死と著しい炎症反応が示された。図21Cおよび図21Dは、セレウス菌(Bacillus cereus)胞子2.5×107個に感染させて生理食塩液によって1時間後に潅注した創傷を有するマウスを示す。48時間までに、創傷周囲に大きい壊死領域を認め、平均面積は4.86 cm2であった。さらに、この群の動物の80%が感染のために死亡した。これらの病変の組織学検査から、真皮および真皮下の全体的な壊死と、多数の栄養型バシラス(Bacillus)菌が示された。図21Eおよび図21Fは、セレウス菌(Bacillus cereus)胞子2.5×107個に感染させて、BCTPの10倍希釈液によって1時間後に潅注した創傷を有するマウスを示す。創傷に隣接して小さい壊死領域(0.06 cm2)を認めたが、これは胞子を接種して生理食塩液を潅注した動物と比較して98%減少した。さらに、これらの創傷のために死亡した動物は20%に過ぎなかった。栄養型バシラスが存在しなかったことを示したこれらの病変の組織学検査は、本発明の様々な乳剤のいくつかの特定の態様を説明している。
【図22A】界面活性剤脂質調製物によるインフルエンザA型感染症の阻害を示す。図22Aは、BCTP、W808P、SS、およびNNを示す。ウイルスをSLPと共に30分間インキュベートした後、希釈して、細胞に上層した。インフルエンザA型感染症の阻害は、細胞ELISAを用いて測定した。それぞれのデータ点は、繰り返し実験3回の平均値±標準誤差を表す。
【図22B】界面活性剤脂質調製物によるインフルエンザA型感染症の阻害を示す。図22Bは、BCTPとSSを示す。ウイルスをSLPと共に30分間インキュベートした後、希釈して、細胞に上層した。インフルエンザA型感染症の阻害は、細胞ELISAを用いて測定した。それぞれのデータ点は、繰り返し実験3回の平均値±標準誤差を表す。
【図23】抗インフルエンザ物質としてのBCTPの有効性をトライトンX-100と比較して示す。インフルエンザA型ウイルスをBCTP、トリ(n-ブチル)ホスフェート/トライトンX-100/大豆油(TTO)、トライトンX-100/大豆油(TO)、およびトライトンX-100単独(T)によって30分間処理した。トライトンX-100の濃度は、処置のために用いた全ての調製物において同じであった。インフルエンザA型感染症の阻害は、細胞ELISAを用いて測定した。それぞれのデータ点は、繰り返し実験3回の平均値±標準誤差を表す。
【図24】BCTPがアデノウイルスの感染性に影響を及ぼさないことを示す。アデノウイルスベクター(AD.RSV ntlacZ)にBCTPの3倍希釈液を30分間処置した後、293細胞のトランスフェクションに用いた。5日後、β-ガラクトシダーゼアッセイ法を行った。それぞれのデータ点は、繰り返し実験8回の平均値±標準誤差を表す。
【図25】電子顕微鏡で見たインフルエンザA型ウイルスとアデノウイルスの構造を示す。ウイルスは、無処置であるか、またはBCTPの100倍希釈液と共に室温で15分および60分間インキュベートし、実施例に記載のように、電子顕微鏡用の固定法を行った。図25Aは、無処置のインフルエンザA型ウイルスを示す;図25BはBCTPと共に15分間インキュベートしたインフルエンザA型ウイルスを示す;図25Cは無処置のアデノウイルスを示し;かつ図25Dは、BCTPと共に60分間インキュベートしたアデノウイルスを示す。全ての像に関して倍率は200,000倍である。バーは200 nmを表す。
【図26】1%および10%BCTPの抗菌特性を示す。殺菌作用(%殺菌)は、以下のように計算した:
【数3】
【図27】プラーク減少アッセイ法によって評価した10%および1%BCTPの抗ウイルス特性を示す。
【図28】本発明の乳剤の標的である例示的な生物を示す。
【図29−1】本発明の様々な乳剤組成物のいくつかの特定の態様および乳剤の特定の用途を示す。
【図29−2】図29-1の続きを示す図である。
【図29−3】図29-2の続きを示す図である。
【図29−4】図29-3の続きを示す図である。
【図29−5】図29-4の続きを示す図である。
【図30】本発明の様々な乳剤組成物のいくつかの特定の態様および乳剤の特定の用途を示す。
【図31A】様々な一般的製剤および本発明の特定の態様の用途を系統的に示す。図31Aは、ナノ乳剤10%、1%および0.10%希釈液に関する本発明の様々なナノ乳剤による大腸菌の対数的減少を示す。
【図31B】様々な一般的製剤および本発明の特定の態様の用途を系統的に示す。図31Bは、ナノ乳剤10%、1%および0.10%希釈液に関する本発明の様々なナノ乳剤によるB. グロビギイ(B. globigii)胞子の対数的減少を示す。
【図31C】様々な一般的製剤および本発明の特定の態様の用途を系統的に示す。図31Cは、ナノ乳剤10%、1%および0.10%希釈液に関する本発明の様々なナノ乳剤によるインフルエンザA型ウイルスの対数的減少を示す(pfu/ml)。
【図32】EDTAの存在下で40℃で本発明の乳剤によって処置したネズミチフス菌(S. typhimurium)の対数的減少を示すグラフである。
【図33】EDTAの存在下で50℃で本発明の乳剤によって処置したネズミチフス菌(S. typhimurium)の対数的減少を示すグラフである。
【図34】その乳化していない成分の溶解作用と比較した本発明の乳剤の溶解作用を示す。
【図35】室温および37℃で本発明の乳剤によるマイコバクテリア・フォーツイタム(Mycobacteria fortuitum)の対数的減少を示す。
【図36】本発明の乳剤を用いて表面の汚染を除去するためのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
発明の詳細な説明
本発明は、多様な微生物および病原性生物に関連した感染、罹患率、および死亡率を減少させるための組成物および方法を含む。本発明はまた、病原性生物がコロニーを形成したまたはそうでなければ感染した領域の汚染を除去する方法および組成物にも関する。その上、本発明は食品における病原性生物の感染を減少させる方法および組成物に関する。好ましい態様において、病原性生物の感染、罹患率、および死亡率の減少は、水相、油相、少なくとも一つの他の化合物を含む水中油型組成物に病原性生物を接触させることによって得られる。本発明の特定の説明となる態様を下記に記載する。本発明は、これらの特定の態様に限定されない。説明は以下の章に分けて提供する:I)例示的な組成物;II)例示的な製剤技術;III)特性と活性;IV)用途;およびV)特異的な例。
【0060】
I.例示的な組成物
好ましい態様において、本発明の乳剤は、(i)水相;(ii)油相;および少なくとも一つのさらなる化合物を含む。本発明のいくつかの態様において、これらのさらなる化合物は、組成物の水相または油相のいずれかに混合される。他の態様において、これらのさらなる化合物は、予め乳化した油と水相との組成物に混合される。これらの態様の特定のものにおいて、一つまたはそれ以上のさらなる化合物を、使用直前に既存の乳剤組成物と混合する。他の態様において、一つまたはそれ以上のさらなる化合物を組成物の使用直前に既存の乳剤組成物に混合する。
【0061】
本発明の組成物において用いるために適しているさらなる化合物には、一つまたはそれ以上の、有機溶媒、より詳しくは有機リン酸塩に基づく溶媒、界面活性剤および洗剤、陽イオンハロゲン含有化合物、発芽増強剤、相互作用増強剤、食品添加剤(例えば、着香料、甘味料、充填剤等)、および薬学的に許容される化合物が含まれるがこれらに限定されない。本発明の組成物において用いられることが予想される様々な化合物の特定の一例としての態様を下記に示す。
【0062】
A.水相
特定の好ましい態様において、乳剤は、乳剤の総容量に基づいて水相約5〜60%、好ましくは10〜40%、より好ましくは15〜30容量%を含む。好ましい態様において、水相は、pHが約4〜10、好ましくは約6〜8の水を含む。本発明の乳剤が発芽増強物質を含む場合、pHは好ましくは6〜8である。水は、好ましくは脱イオンされる(以降、「DiH2O」と呼ぶ)。いくつかの態様において、水相はリン酸緩衝生理食塩液(PBS)を含む。宿主による摂取または宿主との接触を意図した本発明のそれらの態様において、水相および水相において提供されるさらなる化合物は、さらに滅菌して発熱物質不含であってもよい。
【0063】
B.油相および溶媒
特定の好ましい態様において、本発明の乳剤の油相(例えば担体油)は、乳剤の総容量に基づいて油を30〜90、好ましくは60〜80、およびより好ましくは60〜70容量%含む。適した油には、大豆油、アボガド油、亜麻仁油、ココナツ油、綿実油、スクアレン油、オリーブ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、菜種油、サフラワー油、およびヒマワリ油、魚油、香味油、水不溶性ビタミン、およびその混合物が含まれるがこれらに限定されない。特に好ましい態様において、大豆油を用いる。さらに考慮される油には、モーター油、鉱油およびバターが含まれる。本発明の好ましい態様において、油相は好ましくは平均粒子径の範囲が約1〜2μm、より好ましくは0.2〜0.8μm、および最も好ましくは約0.8μmである小滴として水相全体に分布している。他の態様において、水相は油相に分布しうる。
【0064】
いくつかの態様において、油相は、乳剤の総容量に基づいて有機溶媒を3〜15、好ましくは5〜10容量%を含む。本発明は特定の作用機序に制限されないが、乳剤において用いられる有機リン酸塩に基づく溶媒は、病原体の膜において脂質を除去または破壊するように役立つと考慮される。このように、微生物の膜におけるステロールまたは燐脂質を除去する任意の溶媒が、本発明の乳剤において用いられる。適した有機溶媒には、有機リン酸塩に基づく溶媒またはアルコールが含まれるがこれらに限定されない。好ましい態様において、有機リン酸塩に基づく溶媒には、ジアルキルおよびトリアルキルホスフェート(例えば、トリ-n-ブチルホスフェート[TBP])の任意の組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。特定の態様において特に好ましいトリアルキルホスフェートは、可塑剤であるトリ-n-ブチルホスフェートを含む。その上、好ましい態様において、ジアルキルホスフェートまたはトリアルキルホスフェートのそれぞれのアルキル基は、炭素原子1〜10個またはそれ以上を有し、より好ましくは炭素原子2〜8個を有する。本発明はまた、ジアルキルホスフェートまたはトリアルキルホスフェートの各アルキル基は互いに同一であってもよく、または同一でなくともよいと考えている。特定の態様において、異なるジアルキルホスフェートおよびトリアルキルホスフェートの混合物を用いることができる。溶媒として一つまたはそれ以上のアルコールを含むそれらの態様において、そのような溶媒には、メタノール、エタノール、プロパノールおよびオクタノールが含まれるがこれらに限定されない。特定の好ましい態様において、アルコールはエタノールである。宿主による摂取、または宿主との接触を意図する本発明の態様において、油相および油相において提供される任意のさらなる化合物を、さらに滅菌して発熱物質不含としてもよい。
【0065】
C.界面活性剤と洗剤
いくつかの態様において、本発明の組成物はさらに、一つまたはそれ以上の界面活性剤または洗剤を含む(例えば、約3〜15%、好ましくは約10%)。本発明は、如何なる特定の作用機序にも限定されないが、組成物に存在する界面活性剤は、組成物を安定化するために役立つと予想される。非イオン性(非陰イオン性)およびイオン性界面活性剤の双方が考慮される。さらに、BRIJファミリーの界面活性剤が、本発明の組成物において用いられる。界面活性剤は水相または油相のいずれかにおいて提供されうる。乳剤と共に用いることが適している界面活性剤には、水中油型乳剤の形成を促進することができる他の乳化化合物と共に、様々な陰イオンおよび非イオン性界面活性剤が含まれる。一般的に、乳化化合物は比較的親水性であり、乳化化合物の混和を用いて必要な品質を得ることができる。いくつかの製剤において、非イオン性界面活性剤は、それらが広いpH範囲に対して実質的により適合性であり、イオン性(例えば、石鹸型)乳化剤より安定な乳剤をしばしば形成するという点において、イオン性乳化剤より長所を有する。このように、特定の好ましい態様において、本発明の組成物は、ポリソルベート系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンエーテル)、ポリソルベート系洗剤、フェオキシポリエトキシエタノール等のような一つまたはそれ以上の非イオン性界面活性剤を含む。本発明において有用なポリソルベート系洗剤の例には、ツイーン20、ツイーン40、ツイーン60、ツイーン80等が含まれるがこれらに限定されない。
【0066】
ツイーン60(モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)は、ツイーン20、ツイーン40、およびツイーン80と共に、多くの薬学的組成物において乳化剤として用いられるポリソルベートを含む。本発明のいくつかの態様において、これらの化合物はまた、アジュバントとの補助成分として用いられる。ツイーン系界面活性剤はまた、脂質のエンベロープ型ウイルスに対して殺ウイルス作用を有するように思われる(例えば、エリクソン(Eriksson)ら、「血液凝固と繊維素溶解(Blood Coagulation and Fibrinolysis)」 5(補則3):S37〜S44[1994]を参照のこと)。
【0067】
本発明において有用なフェオキシポリエトキシエタノールおよびそのポリマーの例には、トライトン(例えば、X-100、X-301、X-165、X-102、X-200)、およびチロキサポールが含まれるがこれらに限定しない。トライトンX-100は、生物構造からの脂質および蛋白質を抽出するために広く用いられる強い非イオン性洗剤および分散剤である。これは同様に、エンベロープ型ウイルスの広いスペクトルに対して殺ウイルス作用を有する(例えば、マハおよびイガラシ(Maha and Igarashi)、Southern Asian J. Trop. Med. Pub. Health 28:718[1997];およびポルトカラ(Portocala)ら、Virologie 27:261[1976]を参照のこと)。この抗ウイルス活性のために、これは、新しく凍結したヒト血漿におけるウイルス病原体を不活化するために用いられる(例えば、ホロウィッツ(Horowitz)ら、Blood 79:826[1992]を参照のこと)。
【0068】
特に好ましい態様において、界面活性剤トライトンX-100(t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、および/またはチロキサポールを用いる。いくつかの他の態様は、殺虫剤(例えば、ノノキシノール-9)を用いる。本発明の組成物において有用なさらなる界面活性剤および洗剤は、参考となる研究から確認してもよい(例えば、マックテオン(McCutheon)の第1巻:「乳剤と洗剤(Emulsions and Detergents)」北米版、2000年を参照のこと)。
【0069】
いくつかの態様において、図28に示すように、界面活性剤と有機溶媒とを含む組成物は、エンベロープ型ウイルスおよびグラム陽性菌を不活化するために有用である。
【0070】
D.陽イオンハロゲン含有化合物
いくつかの態様において、本発明の組成物は陽イオンハロゲン含有化合物をさらに含む(例えば、乳剤の総重量に基づいて重量で約0.5〜1.0重量%)。好ましい態様において、陽イオンハロゲン含有化合物は好ましくは、油相と予め混合する;しかし、陽イオンハロゲン含有化合物は異なる製剤において乳剤組成物と組み合わせて提供してもよい。適したハロゲン含有化合物は、例えば塩素、フッ素、臭素およびヨウ素イオンを含む化合物から選択してもよい。好ましい態様において、適した陽イオンハロゲン含有化合物には、ハロゲン化セチルピリジニウム、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルエチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化セチルトリブチルホスホニウム、ハロゲン化ドデシルトリメチルアンモニウム、またはハロゲン化テトラデシルトリメチルアンモニウムが含まれるがこれらに限定されない。いくつかの特定の態様において、適した陽イオンハロゲン含有化合物は、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルベンジルジメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム(CPB)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、臭化セチルトリブチルホスホニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、または臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムを含むがこれらに限定されない。特に好ましい態様において、陽イオンハロゲン含有化合物はCPCであるが、本発明の組成物は特定の陽イオン含有化合物との製剤に限定されない。
【0071】
いくつかの態様において、陽イオン含有化合物1.0重量%またはそれ以上を本発明の乳剤組成物に加えると、エンベロープ型ウイルス、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および真菌を不活化するために有用である組成物が提供される。
【0072】
E.発芽増強剤
本発明の他の態様において、組成物はさらに、一つまたはそれ以上の発芽増強化合物を含む(例えば、約1mM〜15 mM、およびより好ましくは約5mM〜10 mM)。好ましい態様において、発芽増強化合物は乳剤の形成前に水相に提供される。本発明は、発芽増強剤を開示の組成物に加えると、組成物の殺胞子特性画像供されると予想する。本発明はさらに、そのような発芽増強剤が、中性pH付近(6〜8のあいだ、好ましくは7)で殺胞子活性を開始することをさらに予想する。そのような中性pH乳剤は、例えば、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)によって希釈することによって、または中性乳剤を調製することによって得ることができる。組成物の殺胞子活性は、胞子が発芽を開始する際に選択的に起こる。
【0073】
特定の態様において、本発明の乳剤は殺胞子活性を有することが証明された。本発明は如何なる特定の作用機序にも制限されないが、乳剤の融合原性成分は発芽を開始するように作用し、栄養型への変換が完了する前に、乳剤の溶原性成分は新たに発芽する胞子を溶解するように作用すると考えられる。このように、乳剤のこれらの成分は協調して作用し、胞子は乳剤による破壊を受けやすくする。発芽増強剤を加えると、例えば殺胞子活性が起こる速度まで速度を上げることによって、本発明の乳剤の抗殺胞子活性をさらに促進する。
【0074】
細菌の内生胞子および真菌胞子の発芽は、代謝の増加ならびに熱および化学反応物質に対する抵抗性の減少に関連している。発芽が起こるためには、胞子は、環境が増殖および生殖を支持するために適切であることを感知しなければならない。アミノ酸L-アラニンは、細菌胞子の発芽を刺激する(例えば、ヒルズ(Hills)ら、J. Gen. Micro. 4:38[1950];およびハルボーソンおよびチャーチ(Halvorson and Church)、Bacteriol. Rev. 21:112[1957]を参照のこと)。L-アラニンおよびL-プロリンもまた、真菌の胞子発芽を開始させると報告されている(ヤナギタ(Yanagita)、Arch Mikrobiol. 26:329[1957])。グリシンおよびL-アラニンのような単純なα-アミノ酸は、代謝において中心的な位置を占める。α-アミノ酸のトランスアミノ化または脱アミノ化は、代謝および増殖にとって必要な糖原性またはケト原性炭化水素と窒素とを生じる。例えば、L-アラニンのトランスアミノ化または脱アミノ化は、糖分解代謝の最終産物であるピルビン酸を生じる(エムデン-マイエルホーフ-パルナス経路)。ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体によるピルビン酸塩の酸化は、アセチル-CoA、NADH、H+、およびCO2を生じる。アセチルCoAは、トリカルボン酸回路(クレブス回路)の開始基質であり、今度はミトコンドリアの電子輸送鎖に供給する。アセチル-CoAはまた、ステロール合成と共に脂肪酸合成の最終的な炭素源である。単純なα-アミノ酸は、発芽および後に続く代謝活性にとって必要な窒素、CO2、糖原性および/またはケト原性同等物を提供しうる。
【0075】
特定の態様において、本発明の適した発芽増強物質には、グリシン、およびアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、リジン、フェニルアラニン、チロシンのL-鏡像異性体を含むα-アミノ酸、ならびにそのアルキルエステルが含まれるがこれらに限定されない。発芽に及ぼすアミノ酸の効果に関するさらなる情報は、その全文が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,510,104号に認められる。いくつかの態様において、ブドウ糖、果糖、アスパラギン、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、塩化カルシウム(CaCl2)、および塩化カリウム(KCl)の混合物も同様に用いてもよい。本発明の特に好ましい態様において、製剤は、発芽増強物質L-アラニン、CaCl2、イノシンおよびNH4Clを含む。いくつかの態様において、組成物はさらに、一つまたはそれ以上の一般的な形の増殖培地をさらに含み(例えば、トリプチカーゼ大豆ブロス等)、これは発芽増強剤および緩衝剤をさらに含んでもよく、含まなくてもよい。
【0076】
上記の化合物は単なる一例としての発芽増強物質であり、他の既知の発芽増強物質が本発明の組成物において用いられると理解される。候補となる発芽増強剤は本発明の組成物に含めるためには2つの基準を満たさなければならない:これは本発明の乳剤に会合できなければならず、これは本発明の乳剤に組み入れた場合に標的胞子の発芽速度を増加させなければならない。当業者はそのような物質を本発明の組成物と組み合わせて標的に適用することによって、かつ混合物と接触させた際の標的の不活化を、物質を加えない場合の本発明の組成物による同様の標的の不活化と比較することによって、特定の物質が発芽増強剤として作用する所望の機能を有するか否かを決定することができる。発芽を増強し、それによって生物の増殖を減少または阻害する如何なる物質も、本発明において用いられる適した増強物質であると見なされる。
【0077】
なお他の態様において、発芽増強物質(または増殖培地)を中性乳剤組成物に加えると、エンベロープ型ウイルス、グラム陰性菌、およびグラム陽性菌の他に細菌胞子を治療するために有用である組成物が生成される。
【0078】
F.相互作用増強剤
なお他の態様において、本発明の組成物は、標的病原体(例えば、ビブリオ菌(Vibrio)、サルモネラ菌(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、およびシュードモナス(Pseudomonas)のようなグラム陰性菌の細胞壁)と組成物(すなわち「相互作用増強剤」)との相互作用を増加させることができる一つまたはそれ以上の化合物を含む。好ましい態様において、相互作用増強剤は好ましくは油相と予め混合する;しかし、他の態様において、相互作用増強剤は、乳化後の組成物との組み合わせて提供される。特定の好ましい態様において、相互作用増強剤はキレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸[EDTA]、またはエチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸[EGTA]の緩衝液[例えば、トリス緩衝液]溶液)である。キレート化剤は、単なる一例としての相互作用増強化合物であると理解される。実際に、本発明の組成物と微生物および/または病原体との相互作用を増加させる他の物質も考慮される。特に好ましい態様において、相互作用増強剤の濃度は約50〜約250 μMである。当業者は、そのような物質を本発明の組成物と組み合わせて標的に適用することによって、かつ混合物と接触させた際の標的の不活化を、物質を加えない場合の本発明の組成物による同様の標的の不活化と比較することによって、特定の物質が相互作用増強剤として作用する所望の機能を有するか否かを決定することができると考えられる。相互作用を増加させ、それによってその非存在下でのそのパラメータと比較して細菌の増殖を減少または阻害する任意の物質が、相互作用増強剤であると見なされる。
【0079】
いくつかの態様において、相互作用増強剤を本発明の組成物に加えることは、エンベロープ型ウイルス、いくつかのグラム陽性菌、およびいくつかのグラム陰性菌を治療するために有用な組成物を生じる。
【0080】
II.例示的な製剤
以下のA)章において、開示の組成物の一般的製剤を作製するための例示的な技術を説明する。さらに、本発明は、下記のB)において一例ではあるが、多くの特定の製剤レシピを引用する。
【0081】
A.製剤化技術
本発明の水中油型乳剤を不活化する病原体は、古典的な乳剤生成法を用いて形成することができる。簡単に説明すると、油相を比較的高い剪断力の下で(例えば、高い水圧および機械力を用いて)水相と混合し、約0.5μm、好ましくは直径が1〜2μmである油滴を含む水中油型乳剤を得る。乳剤は、油相対水相が約1:9〜5:1の容積比、好ましくは約5:1〜3:1、最も好ましくは4:1で油相を水相と混和することによって形成される。油相と水相は、フレンチプレスまたは高剪断ミキサー(例えば、FDAが承認した高剪断ミキサーは、例えばアドミックスインク、マンチェスター、ニューハンプシャー州から入手できる)のような、乳剤を形成するために十分な剪断力を産生することができる任意の装置を用いて混和することができる。。そのような乳剤を作製する方法は、その全文が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,103,497号および第4,895,452号に開示されている。
【0082】
好ましい態様において、本発明の方法において用いられる組成物は、水のような連続水相に分散させた不連続な油相の小滴を含む。好ましい態様において、本発明の組成物は、安定であり、長い貯蔵期間(例えば、1年またはそれ以上)の後でも分解しない。本発明の特定の組成物は、燕下、吸入、または宿主の皮膚に接触させても非毒性であって安全である。これは、既知の刺激剤である多くの化学殺微生物剤とは対照的である。さらに、いくつかの態様において、組成物はまた、植物に対しても非毒性である。
【0083】
本発明の組成物は、大量に産生することができ、広い範囲の温度で何ヶ月も安定である。希釈しなければ、それらは半固体クリームのきめを有する傾向があり、手で局所に適用する、または水と混合することができる。希釈すると、それらは、スキムミルクと類似の硬度および外観を有する傾向があり、表面の汚染を除去する、または吸入する前にエアロゾル化した胞子とおそらく相互作用するように、噴霧することができる。これらの特性は、広い範囲の抗微生物剤適用にとって有用である柔軟性を提供する。さらに、これらの特性は、汚染除去応用に特に十分に適した本発明の組成物を作製する。
【0084】
上記のように、乳剤の少なくとも一部は、単層、多層および少ない層の脂質小胞、ミセル、および層状の相を含むがこれらに限定されない脂質構造の形であってもよい。
【0085】
本発明のいくつかの態様は、エタノールを含む油相を用いる。例えば、いくつかの態様において、本発明の乳剤は、(i)水相、および(ii)有機溶媒としてエタノールと選択的に発芽増強剤とを含む油相、および(iii)界面活性剤としてのチロキサポール(好ましくは2〜5%、より好ましくは3%)を含む。この製剤は、微生物に対して非常に有効であり、同様に哺乳類が使用する場合にも非刺激性で非毒性である(かつこのように、粘膜と接触することができる)。
【0086】
他のいくつかの態様において、本発明の乳剤は、(a)第一の乳剤が(i)水相;および(ii)油と有機溶媒とを含む油相;および(iii)界面活性剤を含み、ならびに(b)第二の乳剤が(i)水相;(ii)油と陽イオン含有化合物とを含む油相;および(iii)界面活性剤を含む、第二の乳剤において乳化された第一の乳剤を含む。
【0087】
B.例示的な製剤
以下の説明は、組成物BCTPおよびX8W60PCの製剤を含む例示的な多くの乳剤を提供する。BCTPは、その中で油相が大豆油、トリ-n-ブチルホスフェート、およびトライトンX-100の80%水溶液から調製された油中水型ナノ乳剤を含む。X8W60PCは、BCTPとW808Pとの等量の混合物を含む。W808Pは、モノステアリン酸グリセロール、精製大豆ステロール(例えば、ジェネロールステロール)、ツイーン60、大豆油、陽イオンハロゲン含有CPCおよびペパーミント油で構成されるリポソーム様化合物である。ジェネロールファミリーはポリエトキシ化大豆ステロール(ヘンケルコーポレーション、アンブラー、ペンシルバニア州)のグループである。本発明の特定の態様に関する乳剤製剤を表1に示す。これらの特定の製剤は、その全文が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,700,679号(NN);第5,618,840号;第5,549,901号(W808P);および第5,547,677号に認められる。他の特定の乳剤製剤を図29に示す。その上、図30は、一般製剤と本発明の特定の態様の用途とを系統的に表す。
【0088】
X8W60PC乳剤は、W808P乳剤とBCTP乳剤とをまず個別に作製することによって製造される。次に、これらの二つの乳剤の混合物を再度乳化して、X8W60PCと呼ばれる新しい乳剤組成物を生成する。そのような乳剤を生成する方法は、米国特許第5,103,497号および第4,895,452号(その全文が参照として本明細書に組み入れられる)に開示されている。これらの化合物は、広いスペクトルの抗菌活性を有し、膜の破壊を通じて栄養型細菌を不活化することができる。
【0089】
(表1)
【0090】
上記の組成物はほんの一例であり、当業者は、本発明の目的に適したナノ組成物に達するために成分の量を変更することができると考えられる。当業者は、個々の油性担体、界面活性剤CPC、および有機リン酸緩衝液、各組成物の成分と共に油相対水の比を変化させてもよいことを理解すると考えられる。
【0091】
BCTPを含む特定の組成物は水対油の比が4:1であるが、BCTPは多少水相を有するように処方してもよい。例えば、いくつかの態様において、油相1に対して水相は3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上である。同じことがW808P製剤にも当てはまる。同様に、トリ(N-ブチル)ホスフェート:トライトンX-100:大豆油の比も同様に変更してもよい。
【0092】
表1は、W808Pに関してモノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート60、ジェネロール122、塩化セチルピリジニウム、および担体油の特定の量を記載するが、これらは単なる一例である。これらの成分のそれぞれの異なる濃度または同じ機能を示す実際に異なる成分を有するW808Pの特性を有する乳剤を処方してもよい。例えば、乳剤は初回の油相においてモノステアリン酸グリセロール約80〜約100 gのあいだであってもよい。他の態様において、乳剤は最初の油相中にポリソルベート60約15〜約30 gを有してもよい。なおもう一つの態様において、組成物は、最初の油相中にジェネロールステロール約20〜約30 gを含んでもよい。
【0093】
本発明の乳剤の特定の態様のナノ乳剤構造は、これらの乳剤の非毒性に関与すると共にその殺生物作用において役割を有する可能性がある。例えば、BCTPにおける活性成分、トライトンX-100は、11%BCTPと同等の濃度ではウイルスに対する殺生物活性が弱い。洗剤と溶媒とに油相を加えると、同じ濃度での組織培養におけるこれらの物質の毒性が著しく減少する。如何なる理論にも拘束されないが(作用機序を理解することは、本発明を実践するために必要ではなく、本発明は如何なる特定の作用機序にも制限されない)、ナノ乳剤は、病原体とその成分の相互作用を増強し、それによって病原体の不活化を促進して、個々の成分の毒性を減少させると示唆される。BCTPの全ての成分を一つの組成物に組み合わせるがナノ乳剤の構造になっていない場合、混合物は成分がナノ乳剤の構造になっている場合ほど抗微生物剤として有効ではないことに注意すること。
【0094】
類似の組成物との製剤のクラスにおいて紹介した様々なさらなる態様を下記に示す。これらの多くの組成物の抗病原性材料としての作用を図31に示す。以下の組成物は、活性成分の様々な比および混合物を列挙する。当業者は、下記に列挙した製剤が一例であり、列挙した成分の類似のパーセント範囲を含むさらなる製剤は、本発明の範囲内であることを認識すると考えられる。
【0095】
本発明の特定の態様において、本発明の製剤は、チロキサポール約3〜8容量%、エタノール約8容量%、塩化セチルピリジニウム(CPC)約1容量%、油約60〜70容量%(例えば、大豆油)、水相約15〜25容量%(例えば脱イオン水またはPBS)、およびいくつかの製剤において1N NaOH約1容量%未満を含む。これらの態様のいくつかはPBSを含む。1N NaOHおよび/またはPBSをこれらの態様のいくつかに加えると、使用者はpH範囲が約7.0〜約9.0となるように、より好ましくは約7.1〜8.5が得られるように、製剤のpHを都合よく制御することができると予想される。例えば、本発明の一つの態様は、チロキサポール約3容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約24容量%を含む(本明細書においてY3ECと呼ぶ)。もう一つの類似の態様は、チロキサポール約3.5容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約23.5容量%を含む(本明細書においてY3.5ECと呼ぶ)。さらにもう一つの態様は、チロキサポール約3容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、製剤のpHが約7.1となるように1N NaOH約0.067容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約23.93容量%を含む(本明細書においてY3EC pH 7.1と呼ぶ)。なおもう一つの態様は、チロキサポール約3容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、製剤のpHが約8.5となるように1N NaOH約0.67容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約23.33容量%を含む(本明細書においてY3EC pH 8.5と呼ぶ)。もう一つの類似の態様は、チロキサポール約4容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約23容量%を含む(本明細書においてY4ECと呼ぶ)。なおもう一つの態様において、製剤は、チロキサポール約8容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約19容量%を含む(本明細書においてY8ECと呼ぶ)。さらなる態様は、チロキサポール約8容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および1×PBS約19容量%を含む(本明細書においてY8EC PBSと呼ぶ)。
【0096】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、油約64容量%(例えば大豆油)、および水相約27容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む(本明細書においてECと呼ぶ)。
【0097】
本発明において、いくつかの態様は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)約8容量%、トリブチルホスフェート(TBP)約8容量%、および油約64容量%(例えば、大豆油)、および水相約20容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む(本明細書においてS8Pと呼ぶ)。
【0098】
本発明の特定の態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約1〜2容量%、チロキサポール約1〜2容量%、エタノール約7〜8容量%、塩化セチルピリジニウム(CPC)約1容量%、油約64〜57.6容量%(例えば、大豆油)、および水相約23容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。さらに、これらの製剤のいくつかは、約5mM L-アラニン/イノシン、および約10 mM塩化アンモニウムをさらに含む。これらの製剤のいくつかはPBSを含む。これらの態様のいくつかにおいてPBSを加えれば、使用者は製剤のpHを都合よく制御することができると予想される。例えば、本発明の一つの態様は、トライトンX-100約2容量%、チロキサポール約2容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および水相脱イオン水約23容量%を含む。もう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約1.8容量%、チロキサポール約1.8容量%、エタノール約7.2容量%、CPC約0.9容量%、約5mM L-アラニン/イノシン、および約10 mM塩化アンモニウム、大豆油約57.6容量%、および残りは1×PBSを含む(以降、90%X2Y2EC/GEと呼ぶ)。
【0099】
本発明のもう一つの態様において、製剤は、ツイーン80約5容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、油約64容積%(例えば、大豆油)、および脱イオン水約22容量%を含む(本明細書においてW805ECと呼ぶ)。
【0100】
本発明のさらに他の一つの態様において、製剤は、ツイーン20約5容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、油約64容積%(例えば、大豆油)、および脱イオン水約22容量%を含む(本明細書においてW205ECと呼ぶ)。
【0101】
本発明のなお他の態様において、製剤は、トライトンX-100約2〜8容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、油約60〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約15〜25容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。例えば、本発明は、トライトンX-100約2容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約26容量%を含む(本明細書において、X2Eと呼ぶ)。他の類似の態様において、製剤は、トライトンX-100約3容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約25容量%を含む(本明細書において、X3Eと呼ぶ)。なおさらなる態様において、製剤は、トライトンX-100約4容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約24容量%を含む(本明細書において、X4Eと呼ぶ)。なお他の態様において、製剤は、トライトンX-100約5容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約23容量%を含む(本明細書において、X5Eと呼ぶ)。本発明のもう一つの態様は、トライトンX-100約6容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約22容量%を含む(本明細書において、X6Eと呼ぶ)。本発明のなおさらなる態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書において、X8Eと呼ぶ)。本発明のなおさらなる態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、エタノール約8容量%、オリーブ油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書において、X8E Oと呼ぶ)。なおもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約19容量%を含む(本明細書において、X8ECと呼ぶ)。
【0102】
本発明のもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約1〜2容量%、チロキサポール約1〜2容量%、TBP約6〜8容量%、CPC約0.5〜1.0容量%、油約60〜70容量%(例えば、大豆油)、および水相約1〜35容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。さらに、これらの製剤の特定のものは、トリプチカーゼ大豆ブロス約1〜5容量%、酵母抽出物約0.5〜1.5容量%、約5mM L-アラニン/イノシン、約10 mM塩化アンモニウム、および乳児用液体製剤約20〜40容量%を含んでもよい。乳児用液体製剤を含む態様のいくつかにおいて、製剤は、カゼイン加水分解物(例えば、ニュートラミンゲン、プロゲスチミル等)を含む。これらの態様のいくつかにおいて、本発明の製剤はさらに、チオ硫酸ナトリウム約0.1〜1.0容量%、およびクエン酸ナトリウム約0.1〜1.0容量%を含む。これらの基本成分を含む他の類似の態様は、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)を水相として用いる。例えば、一つの態様は、トライトンX-100約2容量%、チロキサポール約2容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約23容量%を含む(本明細書においてX2Y2ECと呼ぶ)。なお他の態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約2容量%、チロキサポール約2容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、チオ硫酸ナトリウム約0.9容量%、およびクエン酸ナトリウム約0.1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約22容量%を含む(本明細書においてX2Y2PC STS1と呼ぶ)。もう一つの類似の態様において、製剤は、トライトンX-100約1.7容量%、チロキサポール約1.7容量%、TBP約6.8容量%、CPC約0.85容量%、ニュートラミンゲン約29.2%、大豆油約54.4容量%、および脱イオン水約4.9容量%を含む(本明細書において85%X2Y2PC/乳児と呼ぶ)。本発明のさらにもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約1.8容量%、チロキサポール約1.8容量%、TBP約7.2容量%、CPC約0.9容量%、約5mM L-アラニン/イノシン、約10 mM塩化アンモニウム、大豆油約57.6容量%、および残りの容量%の0.1×PBSを含む(本明細書において90%X2Y2 PC/GEと呼ぶ)。なおもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約1.8容量%、チロキサポール約1.8容量%、TBP約7.2容量%、CPC約0.9容量%、トリプチカーゼ大豆ブロス約3容量%、大豆油約57.6容量%、および脱イオン水約27.7容量%を含む(本明細書において90%X2Y2PC/TSBと呼ぶ)。本発明のもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約1.8容量%、チロキサポール約1.8容量%、TBP約7.2容量%、CPC約0.9容量%、酵母抽出物約1容量%、大豆油約57.6容量%、および脱イオン水約29.7容量%を含む(本明細書において90%X2Y2PC/YEと呼ぶ)。
【0103】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、チロキサポール約3容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、油約60〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約15〜30容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。本発明の特定の態様において、本発明の製剤は、チロキサポール約3容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約24容量%を含む(本明細書においてY3PCと呼ぶ)。
【0104】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約4〜8容量%、TBP約5〜8容量%、油約30〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約0〜30容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。さらに、これらの態様の特定のものは、CPC約1容量%、塩化ベンザルコニウム約1容量%、臭化セチルピリジニウム約1容量%、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム約1容量%、500 μM EDTA、約10 mM塩化アンモニウム、約5mMイノシン、および約5mM L-アラニンをさらに含む。例えば、これらの態様の特定のものにおいて、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書においてX8Pと呼ぶ)。本発明のもう一つの態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約19容量%を含む(本明細書においてX8PCと呼ぶ)。なおもう一つの態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約50容量%、および脱イオン水約33容量%を含む(本明細書においてATB-X1001と呼ぶ)。なおもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約2容量%、大豆油約50容量%、および脱イオン水約32容量%を含む(本明細書においてATB-X002と呼ぶ)。本発明のもう一つの態様は、トライトンX-100約4容量%、TBP約4容量%、CPC約0.5容量%、大豆油約32容量%、および脱イオン水約59.5容量%を含む(本明細書において50%X8PCと呼ぶ)。なおもう一つの関連する態様は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約0.5容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約19.5容量%を含む(本明細書においてX8PC1/2と呼ぶ)。本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約2容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約18容量%を含む(本明細書においてX8PC2と呼ぶ)。他の態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、塩化ベンザルコニウム約1%、大豆油約50容量%、および脱イオン水約33容量%を含む(本明細書においてX8PBCと呼ぶ)。本発明のもう一つの態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、臭化セチルピリジニウム約1容量%、大豆油約50容量%、および脱イオン水約33容量%を含む(本明細書においてX8PCPBと呼ぶ)。本発明のもう一つの例としての態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム約1容量%、大豆油約50容量%、および脱イオン水約33容量%を含む(本明細書においてX8P CTABと呼ぶ)。なおさらなる態様において、本発明は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、約500 μM EDTA、大豆油約64容量%、および脱イオン水約15.8容量%を含む(本明細書においてX8PC EDTAと呼ぶ)。さらに類似の態様は、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約1容量%、約10 mM塩化アンモニウム、約5mMイノシン、約5mM L-アラニン、大豆油約64容量%、および脱イオン水またはPBS約19容量%を含む(本明細書においてX8PC GE1xと呼ぶ)。本発明のもう一つの態様において、本発明の製剤はさらに、トライトンX-100約5容量%、TBP約5%、CPC約1容量%、大豆油約40容量%、および脱イオン水約49容量%を含む(本明細書においてX5P5Cと呼ぶ)。
【0105】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約2容量%、チロキサポール約6容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書においてX2Y6Eと呼ぶ)。
【0106】
本発明のさらなる態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、グリセロール約8容量%、油約60〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約15〜25容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。特定の関連する態様はさらに、L-アスコルビン酸約1容量%を含む。例えば、一つの特定の態様は、トライトンX-100約8容量%、グリセロール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書においてX8Gと呼ぶ)。なおもう一つの態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、グリセロール約8容量%、L-アスコルビン酸約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約19容量%を含む(本明細書においてX8GVcと呼ぶ)。
【0107】
なおさらなる態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、ツイーン60約0.5〜0.8容量%、CPC約0.5〜2.0容量%、TBP約8容量%、油約60〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約15〜25容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。例えば、一つの特定の態様において、製剤は、トライトンX-100約8容量%、ツイーン60約0.70容量%、CPC約1容量%、TBP約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約18.3容量%を含む(本明細書においてX8W60PC1と呼ぶ)。他の関連する態様は、トライトンX-100約8容量%、ツイーン60約0.71容量%、CPC約1容量%、TBP約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約18.29容量%を含む(本明細書においてW600.7X8PCと呼ぶ)。なお他の態様において、本発明の製剤は、トライトンX-100約8容量%、ツイーン60約0.7容量%、CPC約0.5容量%、TBP約8容量%、大豆油約64〜70容量%、および脱イオン水約18.8容量%を含む(本明細書においてX8W60PC2と呼ぶ)。なお他の態様において、本発明は、トライトンX-100約8容量%、ツイーン60約0.71容量%、CPC約2容量%、TBP約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約17.3容量%を含む。本発明のもう一つの態様において、製剤は、ツイーン60約0.71容量%、CPC約1容量%、TBP約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約25.29容量%を含む(本明細書においてW600.7PCと呼ぶ)。
【0108】
本発明のもう一つの態様において、本発明の製剤は、ジオクチルスルホスクシネート約2容量%、グリセロール約8容量%またはTBP約8容量%、さらに油約60〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約20〜30容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。例えば、本発明の一つの態様は、ジオクチルスルホスクシネート約2容量%、グリセロール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約26容量%を含む(本明細書においてD2Gと呼ぶ)。もう一つの関連する態様において、本発明の製剤は、ジオクチルスルホスクシネート約2容量%、TBP約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約26容量%を含む(本明細書においてD2Pと呼ぶ)。
【0109】
本発明のなお他の態様において、本発明の製剤は、グリセロール約8〜10容量%、CPC約1〜10容量%、油約50〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約15〜30容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。さらに、これらの態様の特定のものにおいて、組成物はさらに、L-アスコルビン酸約1容量%を含む。例えば、一つの特定の態様は、グリセロール約8容量%、CPC約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約27容量%を含む(本明細書においてGCと呼ぶ)。さらに関連する態様は、グリセロール約10容量%、CPC約10容量%、大豆油約60容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書においてGC10と呼ぶ)。本発明のなおもう一つの態様において、本発明の製剤は、グリセロール約10容量%、CPC約1容量%、L-アスコルビン酸約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約24容量%を含む(本明細書においてGCVcと呼ぶ)。
【0110】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、グリセロール約8〜10容量%、SDS約8〜10容量%、油約50〜70容量%(例えば、大豆油またはオリーブ油)、および水相約15〜30容量%(例えば、脱イオン水またはPBS)を含む。さらに、これらの態様の特定のものにおいて、組成物はさらに、レシチン約1容量%、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル約1容量%を含む。そのような製剤の例示的な態様は、SDS約8容量%、グリセロール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書においてS8Gと呼ぶ)。関連する製剤は、グリセロール約8容量%、SDS約8容量%、レシチン約1容量%、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル約1容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約18容量%を含む(本明細書においてS8GL1B1と呼ぶ)。
【0111】
本発明のさらにもう一つの態様において、本発明の製剤は、ツイーン80約4容量%、チロキサポール約4容量%、CPC約1容量%、エタノール約8容量%、大豆油約64容量%、脱イオン水約19容量%を含む(本明細書においてW804YECと呼ぶ)。
【0112】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、CPC約0.01容量%、チロキサポール約0.08容量%、エタノール約10容量%、大豆油約70容量%、脱イオン水約19.91容量%を含む(本明細書においてY.08EC.01と呼ぶ)。
【0113】
本発明のなおもう一つの態様において、本発明の製剤は、ラウリル硫酸ナトリウム約8容量%、グリセロール約8容量%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約20容量%を含む(本明細書においてSLS8Gと呼ぶ)。
【0114】
C.さらなる製剤
上記の特定の製剤は、本発明において用いられる多様な組成物を説明するための単なる例である。本発明は、上記の製剤の多くの変法がさらなるナノ乳剤と共に、本発明の方法において用いられることを考慮する。候補となる乳剤が本発明において用いるために適しているか否かを決定するために、3つの基準を分析する。本明細書に記載の方法および標準物質を用いて、候補となる乳剤は、それらが適しているか否かを容易に試験することができる。第一に、乳剤を形成できるかか否かを決定するために、本明細書に記載の方法を用いて所望の成分を調製する。乳剤を形成できなければ、候補物質は拒絶される。例えば、4.5%チオ硫酸ナトリウム、0.5%クエン酸ナトリウム、10%n-ブタノール、64%大豆油、および21%脱イオン水で構成される候補組成物は乳剤を形成しなかった。
【0115】
第二に、候補乳剤は、安定な乳剤を形成しなければならない。乳剤は、その意図する用途を可能にするために十分な期間乳剤の剤形で維持されれば、安定である。例えば、保存、輸送等される乳剤に関して、組成物は数ヶ月から数年間乳剤の形状で維持されることが望ましい。比較的不安定な典型的な乳剤は、1日以内にその剤形を失うと考えられる。例えば、8%1-ブタノール、5%ツイーン10、1%CPC、64%大豆油、および22%脱イオン水で構成される候補組成物は、安定な乳剤を形成しなかった。以下の候補乳剤は、本明細書に記載の方法を用いて安定であることが示された:0.08%トライトンX-100、0.08%グリセロール、0.01%塩化セチルピリジニウム、99%バター、および0.83%脱イオン水(本明細書において1%X8GCバターと呼ぶ):0.8%トライトンX-100、0.8%グリセロール、0.1%塩化セチルピリジニウム、6.4%大豆油、1.9%脱イオン水、および90%バター(本明細書において10%X8GCバターと呼ぶ):2%W205EC、1%ナトロソル250L NF、および97%脱イオン水(本明細書において2%W205EC L GELと呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64% 70粘度鉱油、および22%脱イオン水(本明細書において、W205EC 70鉱油と呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%350粘度鉱油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205EC 350鉱油と呼ぶ)。
【0116】
第三に、候補乳剤は、その意図する使用に関して有効性を有しなければならない。例えば、抗菌乳剤は、細菌を検出可能なレベルに殺すか、または無能にしなければならない。本明細書において示すように、本発明の特定の態様は、特異的微生物に対して有効性を有するが、他の微生物に対しては示さない。本明細書に記載の方法を用いて、所望の微生物に対する特定の候補乳剤の適切性を決定することができる。一般的に、これは、適当な対照試料(例えば、水のような陰性対照)との並列実験において一つまたはそれ以上の期間、乳剤に微生物を曝露すること、および乳剤が微生物を殺すまたは無能にするか否か、またはどの程度まで殺すまたは無能にするかを決定することを含む。例えば、1%塩化アンモニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%大豆油、および22%脱イオン水で構成される候補組成物は、有効な乳剤ではないことが示された。以下の候補乳剤は、本明細書に記載の方法を用いて有効であることが示された:5%ツイーン20、5%塩化セチルピリジニウム、10%グリセロール、60%大豆油、および20%脱イオン水(本明細書においてW205GC5と呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、10%グリセロール、64%大豆油、および20%脱イオン水(本明細書においてW205GCと呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%オリーブ油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205ECオリーブ油);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%亜麻仁油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205EC亜麻仁油と呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%トウモロコシ油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205ECトウモロコシ油と呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%ココナツ油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205ECココナツ油と呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%綿実油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205EC綿実油と呼ぶ);8%デキストロース、5%ツイーン10、1%塩化セチルピリジニウム、64%大豆油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205Cデキストロースと呼ぶ);8%PEG200、5%ツイーン10、1%塩化セチルピリジニウム、64%大豆油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205C PEG200と呼ぶ);8%メタノール、5%ツイーン10、1%塩化セチルピリジニウム、64%大豆油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205Cメタノールと呼ぶ):8%PEG1000、5%ツイーン10、1%塩化セチルピリジニウム、64%大豆油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205C PEG 1000と呼ぶ);2%W205EC、2%ナトロソル250H NF、および96%脱イオン水(本明細書において2%W205ECナトロソル2と呼ぶ、2%W205EC GELとも呼ばれる);2%W205EC、1%ナトロソル250H NF、および97%脱イオン水(本明細書において2%W205ECナトロソル1と呼ぶ);2%W205EC、3%ナトロソル250H NF、および95%脱イオン水(本明細書において2%W205ECナトロソル3と呼ぶ);2%W205EC、0.5%ナトロソル250H NF、および97.5%脱イオン水(本明細書において2%W205ECナトロソル0.5と呼ぶ);2%W205EC、2%メトセルA、および96%脱イオン水(本明細書において2%W205ECメトセルAと呼ぶ);2%W205EC、2%メトセルK、および96%脱イオン水(本明細書において2%W205ECメトセルKと呼ぶ);2%ナトロソル、0.1%X8PC、0.1×PBS、5mM L-アラニン、5mMイノシン、10 mM塩化アンモニウム、および脱イオン水(本明細書において0.1%X8PC/GE+2%ナトロソル);2%ナトロソル、0.8%トライトンX-100、0.8%トリブチルホスフェート、6.4%大豆油、0.1%塩化セチルピリジニウム、0.1×PBS、5mM L-アラニン、5mMイノシン、10 mM塩化アンモニウム、および脱イオン水(本明細書において10%X8PC/GE+2%ナトロソル);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%ラード、および22%脱イオン水(本最初においてW205ECラードと呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%エタノール、64%鉱油、および22%脱イオン水(本明細書においてW205EC鉱油と呼ぶ);0.1%塩化セチルピリジニウム、2%ネロリドール、5%ツイーン20、10%エタノール、64%大豆油、および18.9%脱イオン水(本明細書においてW205EC0.1N);0.1%塩化セチルピリジニウム、2%ファルネソール、5%ツイーン20、10%エタノール、64%大豆油、および18.9%脱イオン水(本明細書においてW205EC0.1F);0.1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、10%エタノール、64%大豆油、および20.9%脱イオン水(本明細書においてW205EC0.1と呼ぶ);10%塩化セチルピリジニウム、8%トリブチルホスフェート、8%トライトンX-100、54%大豆油、および20%脱イオン水(本明細書においてX8PC10と呼ぶ);5%塩化セチルピリジニウム、8%トライトンX-100、8%トリブチルホスフェート、59%大豆油、および20%脱イオン水(本明細書においてX8PC5と呼ぶ);0.02%塩化セチルピリジニウム、0.1%ツイーン20、10%エタノール、70%大豆油、および19.88%脱イオン水(本明細書においてW200.1EC0.02と呼ぶ);1%塩化セチルピリジニウム、5%ツイーン20、8%グリセロール、64%モービル1、および22%脱イオン水(本明細書においてW205GCモービル1と呼ぶ);7.2%トライトンX-100、7.2%トリブチルホスフェート、0.9%塩化セチルピリジニウム、57.6%大豆油、0.1×PBS、5mM L-アラニン、5mMイノシン、10 mM塩化アンモニウム、および25.87%脱イオン水(本明細書において90%X8PC/GEと呼ぶ);7.2%トライトンX-100、7.2%トリブチルホスフェート、0.9%塩化セチルピリジニウム、57.6%大豆油、1%EDTA、5mM L-アラニン、5mMイノシン、10 mM塩化アンモニウム、0.1×PBS、および脱イオン水(本明細書において、90%X8PC/GE EDTAと呼ぶ);ならびに7.2%トライトンX-100、7.2%トリブチルホスフェート、0.9%塩化セチルピリジニウム、57.6%大豆油、1%チオ硫酸ナトリウム、5mM L-アラニン、5mMイノシン、10 mM塩化アンモニウム、0.1×PBS、および脱イオン水(本明細書において90%X8PC/GE STSと呼ぶ)。
【0117】
III.特性と活性
本発明の特定の組成物は、有用な活性および特性の範囲を有する。例示的な多くの有用な特性および活性を下記に示す:A)殺微生物活性および微生物抑制活性;B)殺胞子および胞子抑制活性;C)殺ウイルスおよびウイルス抑制活性;D)殺真菌および真菌抑制活性;ならびにE)インビボ作用。さらに、図31A〜Cは、本発明の特定の例示的な製剤の特性を提供する。
【0118】
A.殺微生物および微生物抑制活性
本発明の方法を用いて細菌を急速に不活化することができる。特定の態様において、組成物は、グラム陽性菌を不活化するために特に有効である。好ましい態様において、細菌の不活化は約5〜10分後に起こる。このように、細菌は、本発明に従って乳剤に接触させてもよく、迅速かつ有効に不活化されると考えられる。接触と不活化のあいだの期間は、細菌を乳剤に直接曝露する場合、5〜10分またはそれ未満であると予想される。しかし、本発明の乳剤を治療目的で用いて、全身投与する場合、不活化は、適用後5分、10分、15分、20分、25分、30分、60分を含むがこれらに限定されない長期間にわたって起こる可能性がある。さらに、さらなる態様において、不活化が起こるには2時間、3時間、4時間、5時間または6時間を要する可能性がある。
【0119】
他の態様において、本発明の組成物および方法はまた、特定のグラム陰性菌を迅速に不活化することができる。いくつかの態様において、細菌を不活化する乳剤を、細胞壁による乳剤との相互作用を増加させる化合物と予め混合する。これらの増強剤を本発明の組成物において用いることを、本明細書において下記に考察する。特定の乳剤、特に増強物質を含む乳剤は、特定のグラム陽性および陰性菌に対して有効であり、必要な腸細菌と接触するように経口投与してもよいことに注目すべきである。
【0120】
特定の態様において、本発明は、本発明の乳剤が、栄養型細菌に対する毒性はほとんどなく、強力な選択的殺生物活性を有することを示した。BCTPは、セレウス菌(B. cereus)、B.サーキュランス(B. circulans)、および巨大菌(B. megaterium)、ウェルシュ菌(C. perfringens)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、淋菌(N. gonorrhoeae)、S.アガラクティエ(S. agalactiae)、肺炎球菌(S. pneumonia)、化膿連鎖球菌(S. pyogenes)、ならびにアジア型およびエルトール型コレラ菌(V. cholerae classical and Eltor)に対して非常に有効であった(図26)。この不活化は、接触すると直ちに始まり、感受性がある微生物のほとんどに関して15〜30分以内に完了する。
【0121】
図31Aは大腸菌に対する本発明の例示的な多くのナノ乳剤の有効性を示す。
【0122】
B.殺胞子および胞子抑制活性
特定の特異的態様において、本発明は、本発明の乳剤が殺胞子活性を有することを証明した。如何なる理論にも拘束されないが(作用機序の理解は、本発明を実践するために必要ではなく、本発明は、如何なる特定の作用機序にも制限されない)、これらの乳剤の殺胞子能は、胞子を乳剤による破壊に対して感受性にする栄養型に完全に変換させずに、発芽の開始を通して起こる。発芽の開始は、乳剤またはその成分の作用によって媒介できる。
【0123】
電子顕微鏡研究の結果は、BCTP処置後にコア内容物の崩壊を伴って胞子の外皮および皮質が破壊されることを示す。殺胞子活性は、いずれかの成分を欠損するナノ乳剤はインビボで不活性であることから、トライトンX-100およびトリn-ブチルホスフェート成分の双方によって媒介されるように思われる。有効性が1%漂白剤と類似である乳剤のこの独自の作用は、バシラス(Bacillus)胞子が一般的に、多くの一般的に用いられる洗剤を含むほとんどの消毒剤に対して抵抗性であるために興味深い(ラッセル(Russell)、Clin. Micro. 3;99[1990])。
【0124】
本発明は、マウスに注入する前にBCTPをセレウス菌(B. cereus)胞子と混合すると、セレウス菌(B. cereus)の病的な作用を予防したことを証明する。さらに、本発明は、セレウス菌(B. cereus)胞子に汚染された刺激された創傷にBCTP処置を行うと、マウスにおける感染および死亡のリスクが顕著に減少したことを示す。10倍希釈したBCTPのみを注射した対照動物は如何なる炎症作用も示さず、このことは、BCTPがマウスにおいて皮膚毒性を有しないことを証明する。これらの結果は、曝露の前または後直ちに胞子を処置すると、実験的皮膚感染症の組織損傷の重症度を有効に減少させうることを示唆している。
【0125】
本発明の開発の際に行った他の実験は、異なるバシラス(Bacillus)胞子を不活化するために、BCTPおよびBCTPに由来する他の乳剤の作用を比較した。1000倍(v/v)まで希釈したBCTPは、4時間で炭疽菌(B. anthracis)胞子の90%超を不活化し、同様に、胞子外皮の明らかな破壊によって他の3つのバシラス(Bacillus)種に対しても殺胞子活性を示した。1000倍希釈したX8W60PCは、炭疽菌(B. anthracis)、セレウス菌(B. cereus)、枯草菌(B. subtilis)に対してより強い殺胞子活性を有し、30分未満で作用を発現した。マウスにおいて、胞子の接種後にBCTPによって皮下注射または創傷を1時間潅注する前に、BCTPをセレウス菌(B. cereus)と混合すると、皮膚の病変の大きさが98%以上減少した。死亡率は後者の実験において4倍減少した。本発明の組成物は、他の利用できる殺胞子物質と比較すると、安定で、容易に分散され、非刺激性で、非毒性である。
【0126】
本発明の方法において用いられる細菌を不活化する水中油型乳剤を用いて、接触時に多様な細菌または細菌胞子を不活化することができる。例えば、現在開示の乳剤を用いて、セレウス菌(B. cereus)、B.サーキュランス(B. circulans)、および巨大菌(B. megaterium)を含むバシラス(Bacillus)、同様にクロストリジウム(Clostridium)(例えば、ボツリヌス菌(C. botulinum)、および破傷風菌(C. tetani))を不活化することができる。本発明の方法は、特定の生物兵器物質(例えば炭疽菌(B. anthracis))を不活化するために特に有用となる可能性がある。さらに、本発明の製剤は、ウェルシュ菌(C. perfringens)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、淋菌(N. gonorrhoeae)、S.アガラクティエ(S. agalactiae)、肺炎球菌(S. pneumonia)、化膿連鎖球菌(S. pyogenes)、ならびにアジア型およびエルトール型コレラ菌(V. cholerae classical and Eltor)と闘うためにも用いられる(図26)。
【0127】
BCTPはトライトンX-100を含むが、SSおよびW808Pはツイーン60を含み、NNはノノキシノール-9界面活性剤を含む。それぞれは非イオン性の界面活性剤であるが、その化学および生物学的特徴が異なる。ノノキシノール-9は、強い殺精子活性を有し、膣輸送される避妊物質の成分として広く用いられる(リー(Lee)、1996)。これは、エンベロープ型ウイルスに対して殺ウイルス作用を有すると主張されている(ハーモナト(Hermonat)ら、1992;ザイトリン(Zeitlin)ら、1997)。しかし、ノノキシノール-9は非エンベロープ型ウイルスに対して有効でないことが示されている(ハーモナト(Hermonat)ら、1992)。
【0128】
図31Bは、B.グロビギイ(B. globigii)胞子に対する本発明の例示的な多くのナノ乳剤の有効性を示す。
【0129】
C.殺ウイルスおよびウイルス抑制活性
さらなる態様において、本発明のナノ乳液組成物は抗ウイルス特性を有することが証明された。これらの乳剤がウイルス物質に及ぼす作用は、プラーク減少アッセイ法(PRA)、細胞酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、P-ガラクトシダーゼアッセイ法、および電子顕微鏡(EM)を用いてモニターし、脂質調製物の細胞毒性は、(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム(MTT)染色アッセイ法(モスマン(Mosmann)、1983)を用いて評価した。
【0130】
細胞ELISAによって測定すると、MDCK細胞のインフルエンザA型感染性に著しい減少を認め、これをその後PRAによって確認した。BCTPおよびSSの10倍希釈液は、ウイルス感染性を95%超減少させた。他の2つの乳剤は、ウイルスに対してごく中間的な作用を示したに過ぎす、10倍希釈での感染性の減少は約40%であった。BCTPは最も強力な調製物であり、100倍希釈液でも減弱しない殺ウイルス作用を示した。動力学試験は、BCTPの10倍希釈液と共にウイルスを5分間インキュベートすると、その感染性が完全に消失することを示した。BCTPの活性化合物であるトライトンX-100は、5000倍希釈でBCTPと比較してウイルスの感染性をごく部分的に阻害したに過ぎず、このことはナノ乳剤そのものが抗ウイルス有効性に関与することを示している。BCTPの抗ウイルス特性をさらに調べるために、非エンベロープ型ウイルスに対するその作用を調べた。BCTP処置は、β-ガラクトシダーゼ活性を用いて測定すると、293細胞におけるlacZアデノウイルス構築物の複製に影響を及ぼさなかった。EMについて調べると、インフルエンザA型ウイルスは、BCTPと共にインキュベートした後、完全に破壊されたが、アデノウイルスは無傷のままであった。
【0131】
さらに、ウイルスをBCTPの10%および1%PBS溶液と共にプレインキュベートして、プラーク減少アッセイ法によって評価すると、ヘルペス、センダイ、シンドビス、およびワクシニアウイルスは完全に消失する(図27)。経時的変化の分析は、10%BCTPではインキュベーション5分以内に、1%BCTPでは30分以内で迅速かつ完全であることを示した。異なる希釈のBCTPを処置したアデノウイルスは、感染性の減少を示さなかった。
【0132】
特定のBCTPに基づく組成物が様々なウイルスの攻撃に対して有効であることと粘膜に対するその毒性が弱いことは、有効な消毒剤として、およびエンベロープ型ウイルスによる感染に起因する疾患の予防薬としてのその可能性を証明する。
【0133】
図31Cは、インフルエンザA型に対する本発明の例示的な多くのナノ乳剤のさらにもう一つの特性を示す。
【0134】
D.殺真菌および真菌抑制活性
本発明のナノ乳剤のさらにもう一つの特性は、それらが抗真菌活性を有する点である。真菌感染症の一般的な起因菌には、カンジダ(Candida)属およびアスペルギルス(Aspergillus)属の様々な種と共に他の種が含まれる。外部真菌感染症は比較的に軽度であるが、全身性真菌感染症は重度の医学的結末を生じうる。ヒトにおける真菌感染症の発生率は増加しているが、これは免疫系の障害を有する患者の数が増加していることに一部帰することができる。真菌疾患、特に全身性の疾患は、免疫系の障害を有する患者に対して生命を脅かしうる。
【0135】
本発明の開発中に実施された実験から、1%BCTPが、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に適用すると92%を超える真菌抑制活性を有することが示された。カンジダ(Candida)は、37℃で一晩増殖した。次に、細胞を洗浄して、血球計算盤を用いて計数した。既知量の細胞を異なる濃度のBCTPと共に混合して24時間インキュベートした。次に、カンジダ(Candida)をデキストロース寒天上で増殖させ、一晩インキュベートして、コロニーを計数した。BCTPの真菌抑制作用は、以下のように決定した:
【数1】
【0136】
当業者は、本発明の製剤を真菌疾患を治療するための適当な製剤に加えることができると考えられる。本発明のナノ乳剤は、水虫、カンジダ症、またはその他の急性または全身性真菌感染症のような感染症と闘うために用いられる。
【0137】
E.インビボ作用
動物試験は、本発明の組成物および方法の保護および治療作用を証明した。実験動物におけるセレウス菌(Bacillus cereus)感染症は、これまでに炭疽病を研究するためのモデル系として用いられている(例えば、バードンおよびウェンデ(Burdon and Wende)、J. Infect. Diseas. 170(2):272[1960];ラマナおよびジョーンズ(Lamanna and Jones)、J. Bact. 85:532[1963];およびバードン(Burdon)ら、J. Infect. Diseas. 117:307[1967]を参照のこと)。セレウス菌(B. cereus)に実験的に感染させた動物において誘導された疾患症候群は炭疽病と類似である(ドロブニュースキ(Drobniewski)、Clin. microbio. Rev. 6:324[1993];およびフリッツ(Fritz)ら、Lab. Invest. 73:691[1995])。本発明の開発時に行われた実験は、マウスに注入する前にBCTPをセレウス菌(Bacillus cereus)胞子と混合すると、セレウス菌(B. cereus)の病的な作用を防止することを証明した。さらに、セレウス菌(B. cereus)胞子に汚染された刺激された創傷のBCTP処置は、マウスにおける感染および死亡のリスクを著しく減少させた。10倍希釈したBCTPのみを注入した対照動物は、如何なる炎症作用も示さず、このことは、BCTPがマウスにおいて皮膚毒性を有しないことを証明している。これらの結果は、曝露の直前または直後に胞子を処置すると、実験的皮膚感染症の組織損傷の重症度を有効に減少させうることを示唆している。
【0138】
特定の例において、ウェルシュ菌(C. perfringens)感染症を調べるために、モルモットを実験動物として用いた。1.5 cmの皮膚創傷を作製し、下に存在する筋肉を圧挫させて、ウェルシュ菌(C. perfringens)5×107 cfuを感染させ、さらなる処置を行わなかった。もう一つの群に同数の細菌を感染させ、1時間後に生理食塩液またはBCTPのいずれかを潅注し、曝露後の汚染除去を刺激した。実験的に感染させた創傷を生理食塩液で還流しても、如何なる明らかな利益も生じなかった。しかし、ウェルシュ菌(C. perfingens)に感染した創傷をBCTPによって潅注すると、浮腫、炎症反応、および壊死の著しい減少を示した。そのため、本発明の特定の製剤を用いて細菌感染症と闘うことができることが証明された。
【0139】
さらに、10%BCTPを皮下注射しても、実験動物に苦痛を与えず、肉眼的な組織学的組織変化を生じなかった。経口毒性試験における全てのラットは、試験期間中に体重の増加を示した。有害な臨床兆候を認めず、肉眼で調べると全ての組織が正常範囲内であるように思われた。処置した動物の便からの細菌培養は、無処置動物の便と有意差を示さなかった。
【0140】
IV.例示的な用途
本明細書に開示の組成物の多くの例示的な用途を下記に示す:A)薬剤および治療物質;B)汚染除去および滅菌;C)食品製造;ならびにD)キットと共にE)本発明の組成物の改変、調製、および輸送のための方法および系の説明書。
【0141】
A.薬剤および治療物質
本発明は、微生物感染症と闘うおよび/または治療するために適した薬学的および治療組成物および適用において用いてもよい製剤を考慮する。そのような組成物は、感染症を減少させ、微生物を殺し、微生物の増殖を阻害し、またはそうでなければ微生物感染症の有害な作用を消失させるために用いてもよい。
【0142】
インビボで適用する場合、組成物は、ヒトおよび動物被験者を含む温血動物に対して任意の有効な薬学的に許容される製剤として投与することができる。一般的に、これは、ヒトまたは動物に対して有害となりうる他の不純物のみならず本質的に発熱物質を含まない組成物を調製することを含む。
【0143】
薬学的に許容される製剤の特定の例には、経口、鼻腔、頬、直腸、経膣、局所、もしくは鼻腔内スプレー、または本発明の活性組成物を微生物感染症部位に輸送するために有効な他の製剤が含まれるがこれらに限定されない。好ましい態様において、投与経路は、感染する微生物と組成物とが直接接触するようにデザインされる。他の態様において、投与は、正所性、皮内、皮下、筋肉内、または腹腔内注射によって行ってもよい。組成物はまた、非経口投与または腹腔内投与によって被験者に投与してもよい。そのような組成物は通常、薬学的に許容される組成物として投与されると考えられる。従来の薬学的に許容される任意の媒体または物質が本発明の乳剤と不適合性である場合を除いて、これらの特定の態様において、既知の薬学的に許容される媒体および物質を用いることが考慮される。さらなる態様において、補助的に活性な成分もまた、組成物に組み入れることができる。
【0144】
局所投与に関して、薬学的に許容される担体は、液体、クリーム、フォーム、ローション、またはゲルの形であってもよく、さらに、有機溶媒、乳化剤、ゲル化剤、保湿剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、保存剤、定時放出剤、および少量の湿潤剤、金属イオン封鎖剤、色素、香料、および局所投与のための薬学的組成物において一般的に用いられるその他の成分を含んでもよい。
【0145】
乳剤が経口および局所投与のために製剤化される場合の錠剤および投与剤形には、液体カプセルおよび坐剤が含まれる。経口投与のための固体投与剤形において、組成物は一つまたはそれ以上の実質的に不活性な希釈剤(例えば、蔗糖、乳糖、またはデンプン等)と混合してもよく、さらに、潤滑剤、緩衝剤、腸溶コーティング、および当技術分野で周知のその他の成分を含んでもよい。
【0146】
本発明のもう一つの態様において、本発明の組成物は、特に、装置またはレンズが患者または装着者と接触するように用いることが意図されている場合、医療器具および装置、コンタクトレンズ等の消毒または滅菌のようなインビトロ応用のために特にデザインしてもよい。例えば、組成物は、被験者と接触する前に、医療用および外科用器具および補給用品を洗浄および汚染除去するために用いてもよい。さらに、組成物は、術後の感染症の発生を最小限にするために役立つように、術後または侵襲的方法の後に用いてもよい。特に好ましい態様において、組成物は、免疫防御が無防備または無効である被験者(例えば、高齢者および幼年者、火傷および外傷を負った人、HIV等の感染者)に投与される。この種類の応用に関して、組成物は、液体、フォーム、ペースト、またはゲルの形で提供すると都合がよく、乳化剤、界面活性剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、金属イオン、抗生物質、およびこの種類の組成物において一般的に認められるその他の成分と共に提供してもよい。
【0147】
他の態様において、組成物は、微生物感染症を予防するために組成物を部位に輸送するために、縫合糸、包帯、およびガーゼのような吸収性の材料に含侵してもよく、または手術用ステープル、ジッパー、およびカテーテルのような固相材料の表面にコーティングしてもよい。この種類の他の輸送系は、当業者によって容易に明らかとなると考えられる。
【0148】
さらにもう一つの態様において、組成物は、脱臭剤、石鹸、アクネ/皮膚糸状菌治療物質、口臭の治療、膣酵母感染症の治療等のために、個人用ヘルスケア産業において用いることができる。組成物はまた、その他の体内および体外微生物感染症を治療するために用いることができる(例えば、インフルエンザ、単純ヘルペス等)。これらの応用において、乳剤は上記のように治療担体と共に製剤化することができる。
【0149】
特定の態様において、本発明の抗微生物組成物および方法にはまた、多様な併用治療が含まれる。例えば、しばしば単一の抗菌剤は、互いに組み合わせて用いるいくつかの薬剤より微生物の阻害に関してより有効性が低い。このアプローチは、多剤耐性の結果として遭遇する問題を回避するためにしばしば有利である。これは、生物からの薬剤の流出を媒介する薬物輸送体を有する細菌において特に流行している。本発明はさらに、そのような併用治療において本発明の方法および組成物を用いることを考慮する。
【0150】
細菌、真菌、およびウイルス感染症を治療するために用いられる現在利用可能な抗菌剤は膨大な量にのぼる。そのような薬剤およびその作用機序の一般的なクラスに関する包括的な論文に関しては、当業者は、グッドマンおよびギルマン(Goodman & Gilman)の「治療物質の薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」、ハードマン(Hardman)ら編、第9版、マグローヒル出版、第43章から第50章、1996年(その全文が参照として本明細書に組み入れられる)を参照のこと。一般的にこれらの物質には、細胞壁合成阻害剤(例えば、ペニシリン類、セファロスポリン類、シクロセリン、バンコマイシン、バシトラシン);およびイミダゾール系抗真菌剤(例えば、ミコナゾール、ケトコナゾール、およびクロトリマゾール);微生物の細胞膜を破壊するように直接作用する物質(例えば、ポリミキシンおよびコリスチメテートのような洗剤、ナイスタチンおよびアンフォテリシンBのような抗真菌剤);蛋白質合成を阻害するためにリボソームサブユニットに影響を及ぼす物質(例えば、クロラムフェニコール、テトラサイクリン類、エリスロマイシン、およびクリンダマイシン);蛋白質合成を変化させて、細胞死に至らせる物質(例えば、アミノグリコシド類);核酸代謝に影響を及ぼす物質(例えば、リファンピシン類およびキノロン類);抗代謝剤(例えば、トリメトプリムおよびスルホンアミド類);ならびにDNA合成にとって必須であるウイルス酵素を阻害するように作用するジドブジン、ガンシクロビル、ビダラビン、およびアシクロビルのような核酸類似体が含まれる。抗微生物剤の様々な組み合わせを用いてもよい。
【0151】
組成物および組成物中の任意の増強物質の実際の量は、治療部位で、栄養型と共に胞子型の微生物を殺すために、およびその毒性産物を中和するために有効である乳剤および増強剤の量が得られるように変更してもよい。したがって、選択された量は、治療の性質および部位、所望の反応、殺生物作用の所望の期間およびその他の要因に依存すると考えられる。一般的に、本発明の乳剤組成物は、液体組成物1mlあたり乳剤を少なくとも0.001%〜100%、好ましくは0.01〜90%を含む。ウイルス感染症は、液体組成物1mlあたり乳剤約0.01%〜100%のあいだを用いて治療してもよいと想像される。細菌感染症は、液体組成物1mlあたり乳剤約0.001%〜約100%を含む組成物によって治療してもよい。胞子は、液体組成物1mlあたり乳剤約0.001%〜約100%を含む乳剤によって殺すことができる。これらは単なる例示的な範囲に過ぎない。製剤は、液体組成物1mlあたり乳剤を約0.001%、約0.0025%、約0.005%、約0.0075%、約0.01%、約0.025%、約0.05%、約0.075%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約1.0%、約2.5%、約5%、約7.5%、約10%、約12.5%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%を含んでもよいと想像される。上記の記載の如何なる2つの数値のあいだの範囲も、本発明の範囲内に含まれると特に考慮されると理解すべきである。用量の何らかの変更は、治療すべき被験者の状態に応じて必要に応じて行われると考えられる。
【0152】
当業者は、いずれにせよ個々の被験者に関して適当な用量を決定すると考えられる。その上、ヒトの投与に関して、調製物はFDA生物製剤標準局によって必要とされる滅菌性、発熱性、一般的安全性、および純度標準を満たさなければならない。
【0153】
B.汚染除去と滅菌
一般的に、本発明は、環境の汚染除去物質として、ならびに軍およびテロリストの攻撃の双方における災害を治療するために用いられる組成物および方法を考慮する。栄養型細菌およびエンベロープ型ウイルス(例えば、チャトリン(Chatlyyne)ら、「HIV-1およびその他の一般的ウイルスに対して有効な殺ウイルス活性を有する脂質乳剤(A Lipid emulsion with effective virucidal activity against HIV-1 and other common viruses)」、レトロウイルスとヒト健康財団、第3回レトロウイルスと日和見感染症会議、ワシントンDC、アメリカ[1996]を参照のこと)、ならびに細菌胞子を含む広範囲の病原体を不活化することと、実験動物における毒性が低いことから、本発明の乳剤は、特定の病原体が同定される前に一般的な汚染除去物質として用いるために適している。本発明の好ましい組成物は、迅速に大量に産生することができ、広範囲の温度で何ヶ月も安定である。これらの特性は、広範囲の汚染除去適用にとって有用である柔軟性を提供する。
【0154】
例えば、本発明の特定の製剤は、生物兵器戦争において用いられる多くの細菌胞子および物質を破壊するために特に有効である。この点において、本発明の組成物および方法は、生物戦争兵器によって汚染された人および材料の汚染を除去するために有用である。本発明の組成物の溶液は、地上または空中噴霧システムによって汚染された材料および人に直接噴霧してもよい。これらの応用の特定のものにおいて、本発明は、汚染の除去が起こるように、汚染された材料または人に組成物の有効量を接触させることを考慮する。または、生体物質に汚染される可能性がある軍人または市民に、個人用汚染除去キットを供給することができる。
【0155】
栄養型細菌およびエンベロープ型ウイルス(例えば、チャトリン(Chatlyyne)ら、「HIV-1およびその他の一般的ウイルスに対して有効な殺ウイルス活性を有する脂質乳剤(A Lipid emulsion with effective virucidal activity against HIV-1 and other common viruses)」、レトロウイルスとヒト健康財団、第3回レトロウイルスと日和見感染症会議、ワシントンDC、アメリカ[1996]を参照のこと)、ならびに細菌胞子(ハモウダ(Hamouda)ら、J. Infect. Disease 180:1939[1999])を含む広範囲の病原体を不活化することと、実験動物における毒性が低いことから、本発明の乳剤は、特定の病原体が同定される前に一般的な汚染除去物質として用いるために特に十分に適している。
【0156】
このように、本発明の特定の態様は、本発明の組成物を、土壌、機械、溶媒、およびその他の装置、ならびに望ましくない病原体に曝される可能性がある水路の汚染を除去するための消毒剤および洗剤において用いることを特に考慮する。そのような汚染除去法は、液体スプレーの形で製剤を単に適用することを含んでもよく、またはより厳密なレジメを必要としてもよい。同様に、本発明の乳剤は、様々な植物ウイルスに関して作物を処理するために用いることができる(従来の抗生物質を用いる代わりに)。
【0157】
農地および装置の汚染を除去するためにそれらを用いることの他に、製剤はまた、一般的な消毒目的のために家庭での洗剤において用いられる。その上、本発明のいくつかの態様は、細菌または真菌による食品の汚染を防止するために用いることができる(例えば、非毒性組成物)。これは、食品の調製過程において、または添加剤、消毒剤、もしくは保存剤として食品に添加することによって行うことができる。
【0158】
本発明の乳剤は、好ましくは液体の形で硬い表面に用いられる。したがって、上記の成分を、一つまたはそれ以上の水性担体液体と混合する。水性担体の選択は重要ではない。しかし、これは安全で、本発明の乳剤と化学的に適合性でなければならない。いくつかの態様において、水性担体液体は、硬い表面の洗浄組成物において一般的に用いられる溶媒を含む。そのような溶媒は、本発明の乳剤と適合性でなければならず、乳剤のpHで化学的に安定でなければならない。それらはまた、良好な被膜形成/残留特性を有しなければならない。硬い表面の洗剤において用いられる溶媒は、例えば、その全文が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,108,660号に記載されている。
【0159】
好ましい態様において、水性担体は、水、またはアルコールと水の混和性の混合物である。アルコールは組成物の粘度を調節するために用いることができる。いくつかの態様において、アルコールは好ましくはC2〜C4アルコールである。特に好ましい態様において、エタノールを用いる。例えば、一つの好ましい態様において、水性担体液体は水または約0〜約50%エタノールを含む水-エタノール混合物である。本発明はまた、非液体組成物を体現する。これらの非液体組成物は、顆粒、粉末、またはゲル型、好ましくは顆粒型となりうる。
【0160】
選択的に、いくつかの組成物は、本発明の乳剤の活性を干渉しない限り、洗浄および美を増強する補助材料を含む。組成物は、選択的に非干渉性の補助界面活性剤を含みうる。幅広い有機、水溶性界面活性剤を選択的に用いることができる。補助界面活性剤の選択は、組成物の意図する目的および界面活性剤の利用し易さに関する使用者の希望に依存する。香料、光沢剤、酵素、着色剤等のようなその他の選択的な添加剤は、美および/または洗浄性能を増強するために組成物において用いることができる。洗剤のビルダーもまた、本発明の組成物において用いることができる。洗剤のビルダーはカルシウムおよびマグネシウム硬度イオンを封鎖するが、ビルダーがなければこれらのイオンが結合して、補助界面活性剤または共界面活性剤をより無効にする。洗剤のビルダーは、補助界面活性剤または共界面活性剤を用いる場合に特に有用であり、組成物を例外的に硬い水道水、例えば約12グレーン/ガロン以上の水で使用前に希釈する場合にさらにより有用である。
【0161】
他の態様において、組成物はさらに石鹸泡抑制剤を含む。これらの態様において、組成物は好ましくは、硬い表面に組成物を接触させる場合に、過剰な石鹸泡を防止するために石鹸泡抑制剤の十分量を含む。石鹸泡抑制剤は、本発明の組成物をすすぎなしで適用するための製剤において特に有用である。石鹸泡抑制剤は、既知および従来の手段によって提供することができる。石鹸泡抑制剤の選択は、組成物におけるその処方能、ならびに組成物の残基および洗浄プロフィールに依存する。石鹸泡抑制剤は組成物中の成分と化学的に適合性でなければならず、本明細書に記載のpH範囲で機能的でなければならず、洗浄した表面上に目に見える残留物を残してはならない。組成物における石鹸泡のプロフィールを媒介するために、泡立ちの低い共界面活性剤を石鹸泡抑制剤として用いることができる。約1容量から約3%までの共界面活性剤濃度で通常十分である。
【0162】
本明細書において用いるために適した共界面活性剤の例には、ブロックコポリマー(例えば、プルロニックおよびテトロニックゲル[ポリ(エチレンオキサイド)-b-ポリ(プロピレンオキサイド)-b-ポリ(エチレンオキサイド)ポリマーゲル、BASF社、パリスパニー、ニュージャージー州])、ならびにアルキル化(例えば、エトキシル化/プロポキシル化)一級および二級アルコール(例えば、テリグトール[ユニオンカーバイド社、ダンバリー、コネチカット州]);ポリタージェント[オーリンコーポレーション、ノーウォーク、コネチカット州])が含まれる。選択的な石鹸泡抑制剤は好ましくはシリコン基剤材料を含む。これらの材料は、非常に低濃度で石鹸泡抑制剤として有効である。低い濃度では、シリコン基剤の石鹸泡抑制剤は、組成物の洗浄性能を妨害する可能性が低い。組成物において用いるために適したシリコン基剤の石鹸泡抑制剤は、ダウコーニング社のDSEである。これらの選択的な、しかし好ましいシリコン基剤の石鹸泡抑制剤は、既知および従来の手段によって組成物に組み入れることができる。
【0163】
なお他の態様において、医療従事者、または微生物感染症を有する人もしくは部位と接触する如何なる人も、その個人的な健康上の安全性および汚染除去の必要性から組成物を用いてもよい。さらに、本発明の乳剤は、医療用装置および患者の部屋、家庭電気器具、台所および浴槽表面等の洗浄および消毒のような、病院および家庭で用いるための噴霧剤に処方することができる。類似の態様において、組成物は、衛生および環境サービス従事者、食品加工および農業従事者、研究所員が感染性の生物物質に接触する可能性がある場合にはこれらの人が用いてもよい。さらに、組成物は、感染および病的物質を有する可能性がある地域に接する旅行者および人が用いてもよい。
【0164】
C.食品の調製
本発明はまた、食品媒介細菌、真菌、および毒素に汚染された食品を予防および処置するために食品加工および調製産業において用いてもよい。このように、そのような組成物は、微生物の増殖を減少もしくは阻害、またはそうでなければ食品の微生物汚染の有害な作用を排除するために用いてもよい。これらの応用の場合、乳剤は、添加剤、保存剤または調味料のような食品産業に許容される形で提供される。
【0165】
「食品産業において許容される」という句は、人または動物によって口から摂取された場合に有害なまたはアレルギー反応を実質的に生じない組成物を意味する。本明細書において用いられるように、「食品産業媒体において許容される」という句には、任意のおよび全ての溶媒、分散物質、任意のおよび全てのスパイスおよびハーブならびにその抽出物が含まれる。従来の如何なる添加剤、保存剤、および調味料も本発明の乳剤と不適合性でない限り、食品媒介微生物およびその毒性産物を予防または治療するためにそれらを用いることが考慮される。補助活性成分も同様に組成物に組み入れてもよい。そのような応用に関して、許容される担体は、脂質、クリーム、フォーム、ゲルの形であってもよく、さらに、溶媒、乳化剤、ゲル化剤、保湿剤、安定化剤、湿潤剤、保存剤、金属イオン封鎖剤、色素、香料および食品加工産業において一般的に用いられるその他の成分を含んでもよい。
【0166】
本発明のもう一つの態様において、組成物は、食品が加工、包装および保存される食品産業装置、機器、および区域を消毒または滅菌するような応用のために特にデザインしてもよい。この種類の応用に関して、組成物は、液体またはフォームの形で都合よく提供してもよく、乳化剤、界面活性剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、およびこの種類の組成物において一般的に認められる他の成分と共に提供してもよい。いくつかの態様において、組成物は、それらの商品の輸送前、または輸送時に、それらの商品または農産物に提供される。本発明の組成物は、輸送および保存の際に食品の汚染を防止するための包装材料において一般的に用いられる吸収性の材料に含浸させてもよい(例えば、厚紙または紙の包装)。この種類のその他の輸送系は、当業者に容易に明らかとなると考えられる。
【0167】
本発明の組成物中の乳剤および増強剤の実際の量は、食品媒介微生物およびその毒性産物によって引き起こされる食品の汚染を有効に予防または阻害するために適当な濃度の乳剤および増強剤が得られるように変更してもよい。したがって、選択される濃度は、食品、包装、保存法、およびその他の要因の特性に依存すると考えられる。一般的に、本発明の乳剤組成物は、液体組成物において少なくとも0.001%〜約90%の乳剤を含んでいると考えられる。製剤が液体組成物1mlあたり乳剤を約0.001%、約0.0025%、約0.005%、約0.0075%、約0.01%、約0.025%、約0.05%、約0.075%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約1.0%、約2.5%、約5%、約7.5%、約10%、約12.5%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%を含んでもよいと想像される。上記の記載の如何なる2つの数値のあいだの範囲も、本発明の範囲内に含まれると特に考慮される。
【0168】
特定の態様において、乳剤は、食品、土壌および水、機械およびその他の装置、ならびに動物の微生物感染症の汚染を除去および予防するための消毒剤および洗剤として用いることができる。
【0169】
本発明の乳剤は、汚染を防止するために食品産業によって用いることができる。例えば、乳剤を食品そのものに含めることは、食肉または家禽に偶発的に汚染している細菌を殺すために有効となると考えられる。これによってまた、食品産業はおそらくより広い範囲の食品を用いることができるようになり、費用を減少させることができると考えられる。
【0170】
本発明の特定の態様はまた、飲料産業においても用いることができる。例えば、本発明の乳剤は、汚染を引き起こして、消費者にとって危険であるマイコトキシンを産生する可能性がある特定の真菌の増殖を予防するためにジュース製品に含めることができる。本発明の乳剤を少量加えることによって、フルーツジュースにおける最も一般的な真菌汚染が予防された。この効果は、乳剤の10,000倍もの薄い希釈液によって得ることができた(ジュース製品の香りまたは組成に影響を及ぼさない量)。
【0171】
本発明の乳剤は、機械およびその他の装置に対する感染物質を本質的に除去するために用いることができる。例えば、乳剤は、屠殺場または食品包装施設を乳剤によって継続的に洗浄することによって、特にリステリア菌(Listeria monocytogenes)のような生物による食肉加工プラントの汚染を除去するために用いることができる。
【0172】
投与を担当する人は、いずれにせよ、個々の適用のために適当な容量を決定すると考えられる。その上、上記の適用は、FDA局が必要とする一般的な安全性および純度標準を満たさなければならない。
【0173】
D.キット
本発明の他の態様において、方法および組成物、または方法および組成物の成分は、単一の製剤に処方してもよく、または特定の応用に関して望ましいように、使用時に後に混合するために異なる製剤に分離してもよい。そのような成分は微生物感染症に対して用いるためのキット、汚染除去装置等に含めると都合がよいかも知れない。いくつかの態様において、そのようなキットは、本発明の製剤をその意図する作用部位に輸送するために必要な本質的な材料および試薬を全て含む。
【0174】
いくつかの態様において、インビボでの使用を意図する場合、本発明の方法および組成物は、単一または異なる薬学的に許容されるシリンジに入れることが組成物に処方してもよい。この場合、容器手段は、そこから製剤が、肺のような体の感染領域に適用される、動物に注入される、またはキットの他の成分に適用もしくは混合される、それ自身が吸入剤、シリンジ、ピペット、点眼器、またはその他の類似の装置であってもよい。
【0175】
本発明のキットにはまた、典型的に販売のためにバイアルを固定して含む手段が含まれる(例えば、その中に所望のバイアルが保持される注入または吹き込み成形プラスチック容器)。容器の数または種類にかかわらず、本発明のキットはまた、動物の体内で最終的な複合組成物の注入/投与、または留置を補助する装置を含んでもよく、またはこれと共に包装してもよい。そのような装置は、吸入剤、シリンジ、および消毒用タオル、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼器またはそのような医学的に承認された任意の輸送装置であってもよい。
【0176】
E.改変、調製および輸送
本発明はさらに、本発明のナノ乳剤の改変、ナノ乳剤の他の製品への組み入れ、本発明の組成物の包装および輸送のための多様な方法および系、ならびに微生物に汚染される可能性がある材料または試料の使用または取り扱いに関連した費用の削減方法を提供する。以下の説明は、本発明の組成物の改変、調製、および輸送のいくつかの例を単に提供することを意図している。当業者はそのような方法の改変を認識すると考えられる。
【0177】
いくつかの態様において、本発明は、本明細書に記載のナノ乳剤を改善または変化させる方法を提供する。そのような方法には、例えば、本明細書に記載のナノ乳剤を用いて、ナノ乳剤の一つまたはそれ以上の成分を変化させることが含まれる。そのような変化には、一つまたはそれ以上の成分を加えるまたは除去することが含まれるがこれらに限定されない。次に、変化したナノ乳剤が、望ましいまたは有用な特性を有するか否かを決定するために試験することができる。本発明のいくつかの態様において、本発明のナノ乳剤、または本発明のナノ乳剤に由来するものを希釈する。次に、希釈した試料を、それらが所望の機能を維持するか否かを決定するために試験することができる。本発明のなお他の態様において、本発明のナノ乳剤または本発明のナノ乳剤に由来するものは、使用者または小売業者に販売または輸送するためにナノ乳剤の適当性を確認するために品質管理(QC)および/または品質保証(QA)法に合格する。
【0178】
本発明のいくつかの態様において、製品の抗微生物能を加えるもしくは改善するために、または製品に対する抗微生物能の改善が疑われる場合に調べるために、もしくは認められた改善された抗微生物能を提供するために、本発明のナノ乳剤を別の製品に加える(すなわち、本発明のナノ乳剤を製品に加えることは、それらが検出可能なまたは抗微生物能を有するか否かにかかわらず、本発明の範囲に含まれると考慮される)。例えば、いくつかの態様において、本発明のナノ乳剤を洗浄または消毒材料(例えば、家庭用洗剤)に加える。その他の態様においてナノ乳剤を医療用または救急箱材料に加える。例えば、ナノ乳剤を滅菌剤および傷の手当製品に加えてもよい(または直接それらとして用いてもよい)。なお他の態様において、ナノ乳剤を工業製品に加える。例えば、いくつかの態様において、ナノ乳剤を例えば真菌の混入を予防または減少させるためにモーター油に加える。上記のように、有効で安定な乳剤は、油成分としてモーター油を用いて合成することさえ可能である(例えば、W205GCモービル1)。なお他の態様において、ナノ乳剤を食品に加える。例えば、飲料における望ましくない生物の増殖を予防するためにナノ乳剤を飲料に加えることができる。
【0179】
本発明のナノ乳剤は、単独または他の材料と組み合わせて、多くの異なる種類の容器および輸送系に提供することができる。例えば、本発明のいくつかの態様において、ナノ乳剤はクリームまたはその他の固体または半固体形で提供される。本発明の開発の際に、本発明の乳剤を、ヒドロゲル製剤に組み入れてもよく、抗菌能が維持されることが決定された。乳剤をヒドロゲルにおいて用いることは、多くの有用な特徴を提供する。例えば、ヒドロゲルは所望の大きさおよび形状の半固体構造に調製することができる。これによって、例えば、抗菌フィルターを作製するためにヒドロゲル材料を試験管またはその他の経路に挿入することが可能となる(すなわち、ヒドロゲルを通過した材料は、本発明の乳剤によって汚染が除去される)。
【0180】
ナノ乳剤は、任意の適した容器において(例えば、使用者または消費者に)輸送することができる。所望の適用のためにナノ乳剤の一回またはそれ以上の単回使用、または多数回使用用量を提供する容器を用いることができる。本発明のいくつかの態様において、ナノ乳剤は、懸濁液または液体型として提供される。そのようなナノ乳剤は、スプレー瓶(例えば、加圧式スプレー瓶)を含む任意の適した容器において輸送することができる。工業用またはその他の大規模使用の場合、大量(例えば、10〜1000 L)のナノ乳剤を、ナノ乳剤の分配または使用を可能にするために適当に成形された単一の容器において提供してもよい。
【0181】
本発明のいくつかの好ましい態様において、本発明のナノ乳剤は、事業の実施操作に関連する費用を削減するため、または実施操作の安全性を改善するために、既存の事業実施に関連して用いられる。例えば、本発明のナノ乳剤を用いれば、微生物に汚染した可能性がある材料または試料の使用または取り扱いに関連した費用を削減することができる。いくつかの態様において、本発明のナノ乳剤は、安全性を改善するため、または医療に関連する費用を削減するために用いられる。例えば、ナノ乳剤は医療用材料(例えば、動物、人、または生体試料に接触する表面)に、または患者に(例えば、内用または外用)用いるために安価でかつ有効な滅菌剤として用いられる。ナノ乳剤はまた、食品加工および取り扱いならびに工業応用のための安価でかつ有効な滅菌物質として用いられる。いくつかのそのような態様において、本発明は、非毒性ナノ乳剤を提供する。例えば、本明細書において、医学、農業、および食品応用において用いるために、適当な規制当局(例えば、FDA、USDA等)によって現在承認されている成分を含むナノ乳剤が本明細書において提供される。さらに、非毒性の承認された物質のみで構成することができ、所望の機能を有するさらなるナノ乳剤を作製するための方法が本明細書において提供される。そのため、本発明のナノ乳剤は、規制当局の承認を得るという時間と費用のかかるプロセスを経る必要なく、申請に用いることができる。実際に、乳剤は、その個々の成分の総和より毒性が低くなりうる。例えば、X8PCを試験して血液寒天プレート上で調べたヒツジ赤血球細胞に及ぼす乳剤の溶解作用を非乳化成分の混合物の溶解作用と比較した。データを図34に示す。図34における2本の黒いバーは、全ての成分の非乳化混合物の溶解作用と比較したX8PCナノ乳剤の溶解作用を示す。
【0182】
V.特定の例
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい態様および局面を説明するために示されるのであって、その範囲を制限すると解釈してはならない。
【0183】
以下の実験の開示において、以下の省略後を用いる:eq(等量);μ(μm);M(モル濃度);μM(マイクロモル濃度);mM(ミリモル濃度);N(規定);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nM(ナノモル濃度);℃(セ氏);およびPBS(リン酸緩衝生理食塩液)。
【実施例】
【0184】
実施例1
乳剤の製剤化方法
乳剤は以下のように生成する:油相は、有機溶媒、油、および界面活性剤を混和することによって生成し、次に、得られた混合物を37〜90℃で1時間まで加熱する。乳剤は、シリンジ往復装置またはシルバーソン高剪断ミキサーのいずれかによって作製する。水相を油相に加えて、1〜30分間、好ましくは5分間混合する。揮発性の成分を含む乳剤に関しては、揮発性成分を水相と共に加える。
【0185】
特定の態様において、乳剤は以下のように生成した:油相は、トリブチルホスフェート、大豆油、および界面活性剤(例えば、トライトンX-100)を混和することによって生成した後、得られた混合物を86℃で1時間加熱した。次に、水を油相に、容積比が油相1に対して水相4の割合で注入することによって乳剤を作製した。乳剤は、反復シリンジ装置またはバッチもしくは連続流装置によって手動で作製することができる。これらの乳剤を作製する方法は、当業者に周知であり、例えば、米国特許第5,103,497号および第4,895,452号(その全文が参照として本明細書に組み入れられる)に記載されている。表2は、循環水浴を備えたコールターLS 130レーザーサイジング装置によって測定した乳剤の各成分の比率、pH、および大きさを示す。
【0186】
(表2)
* この乳剤は、BCTP乳剤を水で1:9の割合で希釈することによって得た。
【0187】
本発明の乳剤は非常に安定である。実際に、乳剤は、上記のように作製して、密封した50 ml〜1000 mlのポリプロピレンチューブにおいて室温で一晩放置させた。次に、乳剤の分離の兆候をモニターした。分離の兆候を示さなかった乳剤を「安定」であると見なした。次に、安定な乳剤を1年以上モニターしたところ、安定性を維持することが判明した。
【0188】
乳剤を再度上記のように作製して、密封した50 mlポリプロピレンチューブにおいて−20℃で一晩放置した。次に、乳剤を分離の兆候に関してモニターした。分離の兆候を示さなかった乳剤を「安定」と見なした。BCTPおよびBCTP 0.1乳剤は少なくとも24ヶ月間室温で保存した後実質的に不変であることが判明した。
【0189】
実施例2
油滴において形成された乳化したリポソームとしての本発明の一例としての細菌不活化乳剤の特徴付け
X8W60PCと呼ばれる本発明の細菌不活化乳剤は、脂質を含む水中油型乳剤をBCTPと混合することによって作製した。特に、主な脂質としてモノオレイン酸グリセロール(GMO)と、陽性荷電産生剤として塩化セチルピリジニウム(CPC)とを有する脂質含有水中油型乳剤(本明細書において、GMO/CPC脂質乳剤または「W808P」と呼ぶ)と、BCTPとを1:1の比(容積:容積)で混合した。米国特許第5,547,677号(その全文が参照として本明細書に組み入れられる)は、本発明の細菌不活化水中油型乳剤を提供するために、BCTPと組み合わせてもよいGMO/CPC脂質乳剤およびその他の関連する脂質乳剤を記載している。
【0190】
実施例3
インビトロ殺菌有効性試験I−グラム陽性菌
本発明の乳剤の殺菌有効性を調べるために、乳剤を様々な細菌と10分間混合した後、様々な希釈度で標準的な微生物培地に播種した。次に、コロニー数を無処置培養と比較して、処置によって殺された細菌の割合を決定した。表3は、実験結果を要約する。
【0191】
(表3)
【0192】
バシラス(Bacillus)種の様々な栄養型に及ぼす本発明の乳剤の殺菌作用を調べるために、3回希釈した乳剤をバシラス種と10分間混合した後、微生物培地に播種した。次に、コロニー数を無処置培養と比較して、処置によって殺された細菌の百分率を決定した。表4は、いくつかの実験からの殺菌結果の要約を示し、括弧内に殺菌の平均百分率を示す。
【0193】
(表4)
【0194】
実施例4
インビトロ殺菌有効性試験II−グラム陰性菌
グラム陰性菌の細胞壁による細菌不活化乳剤の取り込みを増加させ、それによって耐性のグラム陰性菌に及ぼす乳剤の殺微生物作用を増強するために、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を乳剤と予め混合した。EDTAを低濃度(50〜25 μM)で用いて、混合物を様々なグラム陰性菌と共に15分間インキュベートした。次に、混合物の殺菌作用をトリプチカーゼ大豆ブロスにおいて測定した。結果を下記の表5に示す。BCTPの100倍希釈を用いると細菌数が99%超減少した。この数の減少は、250 μM EDTA単独では15分間で細菌数を減少できなかった対照群から示されるように、EDTA単独の殺菌作用によるものではなかった。
【0195】
(表5)
【0196】
実施例5
インビトロ殺菌有効性試験III−栄養型と胞子型
セレウス菌(B. cereus、ATCC#14579)を炭疽菌(Bacillus anthracis)のモデル系として利用した。セレウス菌(B. cereus)の栄養型(活発に増殖する)に及ぼす本発明の化合物の殺菌作用を調べるために、BCTP希釈調製物による実験を行った。培地における37℃で10分間の処置を評価した。表6に要約するように、BCTP乳剤は、セレウス菌(B. cereus)の栄養型に対して有効である。この調製物との10分間の曝露は、100倍もの高い希釈度を含む調べた全ての濃度においてセレウス菌(B. cereus)の栄養型を実質的に完全に殺すために十分である。
【0197】
(表6)
実験数=4
【0198】
炭疽菌(B. anthracis)の胞子は、生物兵器として用いられる最も可能性が高い生物の一つである。胞子は、ほとんどの消毒剤に対して非常に抵抗性であることが周知である。上記のように、胞子を有効に殺すためには、通常、ホルムアルデヒドまたは次亜塩素酸ナトリウム(すなわち漂白剤)のような毒性で刺激性の化学物質を用いる必要がある。したがって、セレウス菌(B. cereus)の胞子について同じ実験を行った。表7に示すように、双方の培地において37℃で10分間処置しても、セレウス菌(B. cereus)胞子を殺すために十分ではなかった。
【0199】
(表7)
実験数=2
【0200】
セレウス菌(B. cereus)の胞子型に及ぼす本発明の化合物の有効性を一定期間で評価するために、BCTPを固体寒天培地に100倍希釈で組み入れて、表面に胞子を均一に散在させ、37℃で96時間インキュベートした。BCTPが組み入れられた固体寒天培地には96時間まで増殖を認めなかった(すなわち、>99%殺菌、平均値>99%殺菌、3回の実験)。
【0201】
BCTPによる胞子の殺菌が起こる時間をより厳密に定義しようとする試みで、以下の実験を行った。簡単に説明すると、胞子調製物を100倍希釈のBCTPによって処置して無処置対照と比較した。1ミリリットルあたりのコロニー形成単位数(CFU/ml)を0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間および8時間後に定量した。図1に示すように、無処置対照におけるCFU/mlは、最初の4時間のインキュベーションのあいだに増加してその後平衡に達した。ゼロ時間、1時間、2時間、4時間および6時間で調製して、胞子の構造に関して染色した細菌スメアにより、2時間では胞子の構造が残っていないことが判明した(図2A〜2C)。このように、無処置対照では2時間までに胞子の100%発芽が起こった。BCTPによって処置した胞子調製物では、CFU/mlは最初の2時間で増加を示さず、その後2〜4時間のあいだに急速に減少した。2〜4時間のあいだの初期値CFU/mlからの減少は約1000倍であった。同じ時点で調製して、胞子構造に関して染色した細菌スメアにより、胞子構造が8時間の実験終了時まで残っていることが判明した。したがって、胞子の発芽は、BCTP処置培養では発芽プロセスの阻害のために、または胞子が損傷を受けて発芽できないためのいずれかにより起こらなかった。乳剤がセレウス菌(B. cereus)の他にも他のバシラス種(Bacillus)を殺すために有効であるか否かを決定するために、上記のように類似の実験を行い、胞子調製物を乳剤と共に処置して、4時間インキュベーションした後に無処置対照と比較した。以下の表8は結果を示し、数値はいくつかの実験からの殺胞子活性の平均値を表す。
【0202】
(表8)
【0203】
実施例6
インビボ殺菌有効性試験
本発明の乳剤のインビボでの保護および治療効果を証明するために動物試験を行った。実験動物におけるセレウス菌(Bacillus cereus)感染症は炭疽病研究のモデル系としてこれまで用いられている(バードンおよびウェンデ(Burdon and Wende)、1960;バードン(Burdon)ら、1967;ラマナおよびジョーンズ(Lamanna and Jones)、1963)。セレウス菌(B. cereus)を実験的に感染させた動物において誘導された疾患症候群は、いくつかの点で炭疽病に類似していた(ドロブニュースキ(Drobniewski)、1993;フリッツ(Fritz)ら、1995)。本発明の乳剤は、マウスに注入する前にセレウス菌(B. cereus)胞子と混合した。
【0204】
皮膚創傷の刺激
1cm皮膚創傷にセレウス菌(B. cereus)胞子2.5×107個を感染させた後、さらなる処置を行わずに閉じた。他の群には同数の胞子を感染させた。1時間後、創傷に本発明の乳剤または生理食塩液のいずれかを潅注して、曝露後の汚染除去を刺激した。48時間までに、創傷周囲に平均面積4.86 cm2の大きい壊死領域を認めた。さらに、この群の動物の60%が感染のために死亡した。これらの病変の組織学検から、真皮と真皮下の全体的な壊死と多数の栄養型バシラス(Bacillus)菌が存在することが示された。実験的に感染させた創傷を生理食塩液で潅注しても、如何なる明白な利益も生じなかった。
【0205】
セレウス菌(B. cereus)胞子を感染させた創傷に本発明の乳剤を還流すると、実質的な利益を示し、病変の大きさの4.86 cm2から0.06 cm2へと一貫して98%減少を示した。この病変の大きさの減少は、無処置または生理食塩液潅注のいずれかを行った実験動物と比較して死亡率の1/3倍減少を伴った(60%から20%)。これらの病変の組織学試験では、栄養型のバシラス菌(Bacillus)の証拠を示さず、表皮の破壊をほとんど示さなかった(ハモウダ(Hamouda)ら、1999)。
【0206】
皮下注射
CD-1マウスに、対照として生理食塩液で10倍希釈した本発明の乳剤を注入したが、肉眼または組織学的分析のいずれにおいても苦痛または炎症反応の兆候を示さなかった。インビボでのセレウス菌(B. cereus)胞子の病原性作用および本発明の乳剤の殺胞子作用を調べるために、セレウス菌(B. cereus)胞子4×107個の懸濁液を生理食塩液または最終希釈10倍の本発明の乳剤と共に混合した後、直ちにCD-1マウスの背部皮下に注射した。
【0207】
本発明の乳剤を混合せずにセレウス菌(B. cereus)胞子を皮下に感染させたマウスは、6〜8時間で重度の浮腫を発症した。この後、18〜24時間で灰色の壊死領域が注射部位周辺に起こり、48時間までに皮膚に重度のかさぶたが形成され、乾燥した赤色の病変が残った。
【0208】
胞子と本発明の乳剤との同時注射は、胞子を本発明の乳剤と予め混合する場合、壊死病変の大きさが1.68 cm2から0.02 cm2へと98%超減少した。これは、最小の浮腫または炎症に関連した(ハモウダ(Hamouda)ら、1999)。
【0209】
ウサギ角膜
ウサギの角膜に様々な濃度の本発明の乳剤を還流して、24時間および48時間モニターした。組成物を治療的な量で用いても、刺激または異常を認めなかった。
【0210】
粘膜
鼻孔あたり4%ナノ乳剤25 μlを注入することによって、鼻腔内毒性をマウスにおいて行った。臨床または組織病理学的変化をこれらのマウスにおいて認めなかった。
【0211】
ラットにおける経口毒性試験は、25%ナノ乳剤8ml/kgまでを与えることによって行った。ラットは体重が減少せず、臨床的または組織病理学的な毒性の兆候を示さなかった。乳剤の経口投与の結果として腸の細菌叢に変化を認めなかった。
【0212】
特定の態様において、セレウス菌(Bacillus cereus)を血液寒天上で3回継代した(5%ヒツジ血液を含むTSA、REMEL)。セレウス菌(B. cereus)を3回目の継代プレートから擦り取ってトリプチカーゼ大豆ブロス(TSB)に再懸濁させた(BBLから市販されている)。セレウス菌(B. cereus)懸濁液を2本の試験管に分けた。等量の滅菌生理食塩液を1本の試験管に加えて、混合したセレウス菌(B. cereus)懸濁液/生理食塩液0.1 ccをCD-1マウス5匹に皮下注射した。等量のBCTP(滅菌生理食塩液で5倍希釈)を1本の試験管に加えて混合し、BCTPの10倍最終希釈液を得た。セレウス菌(B. cereus)懸濁液/BCTP 0.1 ccを混合しながら37℃で10分間インキュベートして、セレウス菌(B. cereus)懸濁液/BCTPをCD-1マウス5匹に皮下注射した。等量のBCTP(滅菌生理食塩液において5倍希釈)およびTSBを混合して、BCTPの10倍最終希釈液を得た。BCTP/TSB 0.1 ccをCD-1マウス5匹に皮下注射した。
【0213】
接種物におけるセレウス菌(B. cereus)のコロニー形成単位(cfu)数は以下のように定量した:セレウス菌(B. cereus)とセレウス菌(B. cereus)/BCTP懸濁液の10倍連続希釈液を、蒸留水において作製した。各希釈液(10 μl/プレート)をTSAプレート2枚に接種した。TSAプレートを37℃で一晩インキュベートした。コロニーを計数して、cfu/cc数を計算した。壊死病変はBCTPで前処置したセレウス菌(B. cereus)を接種したマウスではより小さいように思われる。以下の表9は、実験の結果を示す。
【0214】
(表9)
【0215】
セレウス菌(Bacillus cereus)を、胞子形成を誘導するために、0.1%酵母抽出物(ディフコ社)および50 μg/ml MnSO4を含む栄養寒天(ディフコ社)において増殖させた。プレートから菌を掻き取って、滅菌50%エタノール中に懸濁させ、残っている栄養型細菌を溶解するために、室温で攪拌しながら2時間インキュベートした。懸濁液を2,500×gで20分間遠心して、上清を捨てた。ペレットを脱イオン水に再懸濁させて、2,500×gで20分間遠心して、上清を捨てた。胞子懸濁液を分けた。ペレットをTSBに再懸濁させた。生理食塩液によって2倍希釈したセレウス菌(B. cereus)胞子0.1 ccをCD-1マウス3匹に皮下注射した。等量のBCTP(滅菌生理食塩液で5倍希釈)とセレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液を混合し、BCTPの10倍最終希釈液を得た(プレインキュベーション時間)。BCTP/セレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液0.1 ccをCD-1マウス3匹に皮下注射した。接種物中のセレウス菌(B. cereus)のコロニー形成単位(cfu)数は、以下のように定量した。セレウス菌(B. cereus)とセレウス菌(B. cereus)/BCTP懸濁液の10倍連続希釈液を蒸留水によって作製した。各希釈液をTSAのプレート2枚に播種した(10 μl/プレート)。TSAプレートを37℃で一晩インキュベートした。コロニーを計数して、cfu/cc数を計算した。壊死病変は、BCTPによって前処置したセレウス菌(B. cereus)胞子を接種したマウスではより小さいように思われた。これらの試験の観察結果を表10に示す。
【0216】
(表10)
【0217】
セレウス菌(Bacillus cereus)を、胞子形成を誘導するために0.1%酵母抽出物(ディフコ社)および50 μg/ml MnSO4を含む栄養寒天(ディフコ社)において増殖させた。プレートから菌を掻き取って、滅菌50%エタノール中に懸濁させ、残っている栄養型細菌を溶解するために、室温で攪拌しながら2時間インキュベートした。懸濁液を2,500×gで20分間遠心して、上清を捨てた。ペレットを蒸留水に再懸濁させて、2,500×gで20分間遠心して、上清を捨てた。ペレットをTSBに再懸濁させた。セレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液を試験管3本に分けた。等量の生理食塩液を試験管1本に加えて混合した。セレウス菌(B. cereus)懸濁液/生理食塩液0.1 ccをCD-1マウス10匹に皮下注射した。等量のBCTP(滅菌生理食塩液で5倍希釈)を第二の試験管に加えて混合し、BCTPの10倍最終希釈液を得た。セレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液/BCTP(10倍希釈)を、混合しながら37℃で4時間インキュベートした。セレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液/BCTP(10倍希釈)0.1 ccをCD-1マウス10匹に皮下注射した。等量のBCTP(生理食塩液で50倍希釈)を第三の試験管に加えて混合し、BCTPの100倍最終希釈液を得た。セレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液/BCTP(100倍希釈)を、混合しながら37℃で4時間インキュベートした。セレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液/BCTP(100倍希釈)0.1 ccをCD-1マウス10匹に皮下注射した。等量のBCTP(滅菌生理食塩液で5倍希釈)とTSBを混合して、BCTPの10倍最終希釈液を得た。BCT/PTSB 0.1ccをCD-1マウス10匹に皮下注射した。等量のBCTP(滅菌生理食塩液で50倍希釈)とTSBを混合して、BCTPの100倍最終希釈液を得た。BCTP/TSB 0.1ccをCD-1マウス10匹に皮下注射した。これらの試験から得られた知見を表11および表12に示す。
【0218】
(表11)
注意:皮膚病変は浮腫を伴う灰色、壊死領域は乾燥した赤色である
【0219】
(表12)
【0220】
セレウス菌(B. cereus)を皮膚病変、血液、肝臓、および脾臓から再度単離することを試みた(表13)。皮膚病変をベタジンによって清浄した後70%滅菌イソプロピルアルコールによって清浄した。病変の辺縁部に切開を作製して、綿棒で拭いた。胸部をベタジンで清浄した後70%滅菌イソプロピルアルコールによって清浄した。心穿刺によって血液を採取した。腹部をベタジンで清浄した後、70%滅菌イソプロピルアルコールによって清浄した。皮膚および腹部の筋肉を異なる滅菌器具を用いて開いた。肝臓と脾臓の試料を炎の中に軽く通過させて、滅菌器具を用いて切断した。新しく曝露した表面を培養のために用いた。BHI寒天(ディフコ社)に接種して、37℃で好気的に一晩インキュベートした。
【0221】
(表13)
* これらのマウスには病変は存在しなかったが、生物を注射部位から採取した。
【0222】
栄養型セレウス菌(B. cereus)とセレウス菌(B. cereus)胞子の双方を前処置すると、実験動物に導入した場合の疾患症状の誘発能は減少する。これは、皮膚病変のより小さい大きさに反映され、一般的に病変から回収されたセレウス菌(B. cereus)の数は一般的により少ない。さらに、血液、肝臓、および脾臓からの再単離はあまり頻繁でなく、このことは敗血症が予防可能である可能性があることを示唆している。
【0223】
実施例7
インビボ毒性試験I
CD-1マウスに本発明の化合物0.1 ccを皮下注射して、炎症および/または壊死の兆候を4日間観察した。化合物の希釈は滅菌生理食塩液において行った。マウスからの組織試料を、組織病理検査のために10%中性緩衝ホルマリン中で保存した。組織学診査のために送付した皮膚および筋肉試料(未希釈の化合物を注射したマウスから)は、組織壊死の兆候を示すことが報告された。希釈した化合物を注射したマウスからの組織試料は組織学検査を行わなかった。表14および15は2回の個々の実験結果を示す。
【0224】
(表14)
【0225】
(表15)
【0226】
モルモット(双方の後肢)に一部位あたり本発明の化合物1.0ccを筋肉内注射して、炎症および/または壊死の兆候を4日間観察した。化合物の希釈は滅菌生理食塩液において行った。
【0227】
モルモットからの組織試料を10%中性緩衝ホルマリンにおいて保存した。組織試料は組織学的に調べなかった。
【0228】
(表16)
【0229】
インビボ毒性試験Iの結果は、調べた化合物の皮下および筋肉内注射は、肉眼で観察可能な組織損傷を引き起こさず、実験動物において苦痛を引き起こさないように思われたことを示している(表16)。
【0230】
実施例8
インビボ毒性試験II
それぞれ雄性動物5匹および雌性動物5匹からなるスプレージ-ドーリー系ラット1群を個別ケージに入れて、投与前5日間馴化させた。ラットには14日間毎日投与した。0〜13日に、14日間連続してI群の各ラットにBCTPの100倍希釈液3mlをそれぞれ経口投与した。ラットの最大許容可能な経口容量として容量3mlを決定した。0日目および7日目に、投与前に、各ラットの体重を測定した。その後、ラットの体重を試験期間中毎週測定した。動物を疾患または死亡に関して毎日観察した。動物は14日間安静にした。28日目にラットの体重を測定して安楽死させた。経口毒性試験の平均体重の結果を表17に示す。経口毒性試験の平均体重の結果を表17に示す。0日、7日、および14日、21日および28日目での雄性および雌性動物の平均体重および0日〜28日までの体重増加の平均値も同様に表17に示す。ラット1匹は、14日に投与の際に経口投与の操作による機械的外傷のために死亡した。生存しているラットは全て、試験の28日のあいだに体重が増加し、疾患は報告されなかった。このように、トリブチルホスフェート単独は、粘膜に対して毒性で刺激性であることが知られているが、本発明の乳剤に組み入れるとこれらの特徴は示されない。BCTP乳剤の100倍希釈液も同様に、16 CFR §1500.3に提供されるプロトコールに従ってウサギにおける皮膚毒性に関して調べた。乳剤は調べた動物の皮膚に対して刺激性ではなかった。
【0231】
(表17)
【0232】
毒性試験の一般的な方法には、皮膚刺激試験、眼刺激試験、皮下試験、筋肉内試験、開口創傷刺激、鼻腔内試験、および経口試験が含まれる。皮膚試験はウサギについて行い、10%乳剤0.5 mlをウサギの皮膚に4時間適用する。皮膚反応を72時間まで記録する。ドレイズ尺度を用いて刺激を採点する。眼の刺激試験に関しては、10%乳剤0.1 mlをウサギの眼に適用して、眼の反応を72時間まで記録する。ドレイズ尺度を用いて刺激を採点する。皮下および筋肉内試験はマウスに10%乳剤0.1 mlを注射する。開口創傷刺激試験ではマウスを用いて10%乳剤2mlを適用する。鼻腔内試験では、鼻孔あたり2〜4%乳剤0.25 mlをマウスに適用する。経口試験に関しては、10%乳剤4ml/kg/日を1週間経口投与するか、または100%乳剤8ml/kgを1回用量として投与する。
【0233】
実施例9
炭疽菌(Bacillus anthracis)を用いたインビトロ試験
本発明の化合物の炭疽菌(B. anthracis)の胞子型に及ぼす殺菌作用を調べるために、X8W60PC調製物による実験を行った。炭疽菌(B. anthracis)の異なる6つの株に対するX8W60PCの異なる希釈液(水溶液)の殺胞子活性を図3に示す。図4および5に示すように、X8W60PCは炭疽病の異なる7種類の株の98%超を4時間以内に殺し(図3の株およびエームス、USAMRID)、これは1〜10%漂白剤と同程度に有効である。X8W60PCの異なる培地希釈液についても類似の殺胞子活性を認める(図6)。図7は、室温で0時間と比較した炭疽菌(B. anthracis)のデルリオ、テキサス株に対するX8W60PCの殺胞子活性の経時的変化を示す。示されるように、X8W60PCは、30分もの短いあいだに炭疽胞子を殺すことができる。
【0234】
実施例10
作用機序
以下の実施例は、本発明の乳剤について提唱される作用機序に洞察を与え、その殺細胞活性を示すために提供する。この作用機序は本発明の範囲を制限すると解釈してはならず、作用機序を理解することは本発明を実践するために必要ではなく、本発明は任意の特定の作用機序に限定されない。GMO/CPC脂質乳剤(「W808P」)およびBCTPの大腸菌に及ぼす作用を調べた。W808Pは、大腸菌を殺すが(脱イオン水において)、BCTPはこの生物に対して無効であった。図8は、対照を、図9はBCTPを処置した大腸菌を示す。図9に示すように、BCTP処置大腸菌は正常であるように思われ、明確な構造と無傷の脂質膜を示す。図10は、P10処置大腸菌を示し、この場合細菌は内部に空胞を有し、内容物は腫脹して生物の明確な構造は失われていた。特定の理論に拘束されることなく(作用機序の理解は本発明を実践するために必要ではなく、本発明は如何なる特定の作用機序にも限定されない)、この知見は、W808Pが細菌を溶解することなく殺し、その代わりに空胞形成および腫脹によって示されるように内部構造の変化を引き起こすことを示唆している。第二の研究はビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)について実施した。ビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)は大腸菌の近縁であるにもかかわらず、BCTP、W808PおよびX8W60PCはこの生物を殺した。対照の電子顕微鏡写真(図11)と比較すると、W808P処置ビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae)(図12)は再度、生物内部構造の腫脹および変化を示すが、細胞は無傷のままである。対照的に、BCTP処置ビブリオコレラ(Vibrio cholerae)(図13)は、細胞の屑が残っているのみで完全に溶解する。X8W60PC(図14)は作用の組み合わせを示し、この場合生物のいくつかは腫脹するが無傷でありいくつかは溶解される。このことは、BCTP、W808PおよびX8W60PCが異なる作用機序によって作用することを示唆している。
【0235】
様々な濃度の乳剤の有効性を評価するために第三の比較試験を実施した。表18に示すように、X8W60PCはW808PまたはBCTPのいずれかに対して感受性がある細菌において、より低い濃度(高い希釈度)で殺生物剤としてより有効である。さらに、W808PおよびBCTPに対して抵抗性である他の6つの細菌は全て、X8W60PCに対して感受性を示す。このような活性の差は、W808P、BCTP、およびX8W60PCをインフルエンザ感染性アッセイ法において比較する場合にも認められる。図15に示すように、BCTPおよびX8W60PCはいずれも10倍および100倍希釈で有効であり、さらに、X8W60PCは最も低い濃度、すなわち1000倍希釈でも有効である。対照的に、W808Pは、10倍希釈でもほとんど活性を示さず、このことは、このエンベロープ型生物に対する有効な治療ではないことを示唆している。さらに、X8W60PCはW808PまたはBCTPのいずれによっても殺されない酵母種を殺す。
【0236】
(表18) 選択した微生物の90%以上の殺作用を得るために必要なナノ乳剤の最低濃度
* これより低い濃度のデータは得られていない
# 脱イオン水以外は殺作用なし
10 ND=決定していない
【0237】
実施例11
バシラス(Bacillus)に対するナノ乳剤の殺胞子活性のさらなる証拠
本実施例は、本発明の乳剤の特定の態様が異なるバシラス(Bacillus)種胞子を不活化できるか否かをさらに調べた結果を提供する。これらの試験の方法および結果を下記に概要する。
【0238】
界面活性剤脂質調製物:BCTP
油中水型ナノ乳剤、これは油相が大豆油、トリ-n-ブチルホスフェート、およびトライトンX-100の80%水溶液で構成される。X8W60PCは、モノステアリン酸グリセロール、精製大豆ステロール、ツイーン60、大豆油、陽イオンハロゲン含有CPCおよびペパーミント油で構成されるリポソーム様の化合物であるW808PとBCTPとの等量を混合することによって調製した。
【0239】
胞子調製物:
セレウス菌(Bacillus cereus)(ATCC 14579)、B.サーキュランス(B. circulans)(ATC 4513)、巨大菌(B. megaterium)(ATCC 14581)、および枯草菌(B. subtilis)(ATCC 11774)をNAYEMn寒天(0.1%酵母抽出物および5mg/ml MnSO4を含む栄養寒天)上で37℃で1週間増殖させた。プレートから菌を擦り取って細菌/胞子を滅菌50%エタノールに懸濁して、残っている栄養型細菌を溶解するために室温(27℃)で攪拌しながら2時間インキュベートした。懸濁液を2,500×gで20分間遠心して、ペレットを冷脱イオン水によって2回洗浄した。胞子ペレットをトリプチカーゼ大豆ブロス(TSB)に再懸濁させて、実験に直ちに用いた。炭疽菌(B. anthracis)胞子、エームスおよびボルム1B株は、ブルース・アイビンス博士(Dr. Bruce Ivins)(USAMRIID、フォートデトリック、フレデリック、メリーランド州)の好意により提供され、これまでに記述されているように調製した(アイビンス(Ivins)ら、1995)。他の炭疽菌株は、マーチン・ヒュージジョーンズ博士(Dr. Martin Huge-Jones)(LSU、バトンルージュ、ルイジアナ州)の好意により提供された。これらの株は、南アフリカ;モザンビーク;カナダのバイソン;およびテキサス州のデルリオからの高対立遺伝子不同性を有する単離菌を表す。
【0240】
インビトロ殺胞子アッセイ法:
固体培地の殺胞子活性を評価するために、トリプチカーゼ大豆寒天(TSA)をオートクレーヴして、55℃に冷却した。BCTPをTSAに最終希釈が100倍となるように加え、プレートに注ぐ際に絶えず攪拌した。胞子調製物を連続希釈して(10倍)、アリコット10 μlを1試料あたり2枚ずつ播種した(最高接種量は胞子105個/プレートであった)。プレートを37℃で好気的に48時間インキュベートして、増殖を評価した。
【0241】
液体培地における殺胞子活性を評価するために、胞子をTSBに再懸濁した。胞子2×106個を含む胞子懸濁液(最終濃度は胞子106個/ml)1mlを、試験管においてBCTPまたはX8W60PC(脱イオン水での最終濃度の2倍)1mlと混合した。試験管を試験管回旋器において37℃で4時間インキュベートした。処置後、懸濁液を脱イオン水で10倍希釈した。各希釈液のアリコット(25 μl)2本をTSA上に線条様に播種して、37℃で一晩インキュベートした後、コロニーを計数した。殺菌百分率として表記する殺胞子活性を計算した:
【数2】
【0242】
実験は少なくとも3回繰り返し、殺菌百分率の平均値を計算した。
【0243】
電子顕微鏡:
セレウス菌(B. cereus)胞子を、37℃の振盪インキュベータ内で、エルレンマイヤーフラスコを用いて、BCTPのTSBによる最終希釈100倍液によって処置した。試料50 mlを一定間隔で採取して、2,500×gで20分間遠心して、上清を捨てた。ペレットを4%グルタルアルデヒドの0.1 Mカコジレート溶液(pH 7.3)で固定した。胞子ペレットを透過性電子顕微鏡のために処理して、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛によって染色後に薄切片を調べた。
【0244】
発芽阻害剤/刺激剤:
セレウス菌(B. cereus)胞子(最終濃度は胞子106個/ml)を発芽阻害剤D-アラニン(最終濃度1μM)または発芽刺激剤L-アラニン+イノシン(最終濃度各50 μM)のいずれかと共にTSBに懸濁し(ティトバル(Titball)およびマンキー(Manchee)、1987;フォスター(Foster)およびジョンストン(Johnston)、1990;シバタ(Shibata)ら、1976)、その後BCTP(最終希釈100倍)と直ちに混合して、多様な間隔でインキュベートした。次に、混合物を連続希釈して播種し、一晩インキュベートした。翌日、プレートを計数して殺胞子活性の百分率を計算した。
【0245】
インビボ殺胞子活性:
2つの動物モデルを作製した;最初のモデルでは、セレウス菌(B. cereus)胞子(滅菌生理食塩液に懸濁させる)を最終希釈10倍のBCTPの等量と混合した。対照として、同じセレウス菌(B. cereus)胞子懸濁液を等量の滅菌生理食塩液と混合した。次に、胞子4×107個を含む懸濁液100 μlをCD-1マウスに直ちに皮下注射した。
【0246】
第二のモデルにおいて、マウスの背部の皮膚を切開して刺激された創傷を作製した。先の丸いはさみで皮膚を下の筋肉から離した。この「ポケット」に胞子2.5×107個(生理食塩液)を含む200 μlを接種して、創傷クリップを用いて閉じた。1時間後、クリップを除去して、創傷を滅菌生理食塩液2mlまたはBCTP(滅菌生理食塩液で10倍希釈)2mlのいずれかによって潅注した。動物の臨床兆候を観察した。動物を5日後に安楽死させて、肉眼的および組織病理学的検査を行った。創傷部位は、以下の式によって計算した:1/2a×1/2b×π、式中aおよびbは創傷の2つの垂直方向の直径である。
【0247】
インビトロ殺胞子活性:
BCTPの殺胞子活性を評価するために、バシラス(Bacillus)属の4種、セレウス菌(B. cereus)、B.サーキュランス(B. circulans)、巨大菌(B. megaterium)、および枯草菌(B. subtilis)の胞子を調べた。100倍希釈したBCTPは、セレウス菌(B. cereus)と巨大菌(B. megaterium)に対して4時間で91%以上の殺胞子活性を示した(図16)。B.サーキュランス(B. circulans)はBCTPに対する感受性がより低く、胞子数の80%の減少を示したが、枯草菌(B. subtilis)はBCTPに対して4時間では抵抗性であるように思われた。BCTPのセレウス菌(B. cereus)に対する殺胞子作用(10倍希釈および100倍希釈)を、漂白剤の100倍希釈液(すなわち、0.0525%次亜塩素酸ナトリウム)に対して比較したところ、殺胞子作用の速度または程度のいずれにも有意差を認めなかった。他のナノ乳剤、X8W60PCは、細菌胞子を殺すためにより有効であった。1000倍希釈では、これは、4時間でセレウス菌(B. cereus)胞子の98%殺菌を示した(BCTPの1000倍希釈液での47%と比較して)。1000倍希釈したX8W60PCはBCTPに対するその抵抗性とは対照的に4時間で枯草菌(B. subtilis)胞子の97.6%殺菌を示した。
【0248】
セレウス菌(B. cereus)殺胞子の時間経過:
100倍希釈したBCTPと1000倍希釈したX8W60PCのセレウス菌(B. cereus)に対する殺胞子活性を分析するために8時間での経時的変化を調べた。100倍希釈したBCTPをセレウス菌(B. cereus)胞子と共にインキュベートすると、生存胞子数が1時間で77%減少し、4時間後には95%減少した。この場合も、1000倍希釈したX8W60PCは、100倍希釈したBCTPより有効であり、30分後に胞子数の約95%減少を認めた(図17)。
【0249】
BCTPの炭疽菌(B. anthracis)殺胞子活性:
最初のインビトロ実験の後、BCTP殺胞子活性を、炭疽菌(B. anthracis)の2つの毒性の強い株(エームスとボルム1B)に対して調べた。増殖培地に100倍希釈で組み入れたBCTPは炭疽菌(B. anthracis)胞子1×105個の増殖を完全に阻害することが判明した。同様に、1000倍希釈したBCTPをエームスまたはボルム1B胞子のいずれかと共に4時間インキュベートすると、混合物を室温でインキュベートした場合には91%以上の殺胞子活性が得られ、混合物を37℃でインキュベートした場合には96%以上の殺胞子活性が得られた(表19)。
【0250】
表19:
コロニー減少アッセイ法によって決定した炭疽菌(Bacillus anthracis)胞子の異なる2つの株に対するBCTP殺胞子活性(%殺菌)。BCTPの1000倍希釈液は27℃または37℃のいずれにおいても4時間で双方の胞子を>91%有効に殺した;これらの温度は胞子発芽の程度が著しく異なる条件である。殺胞子活性は1×106個/mlまでの胞子濃度で一貫していた。
【0251】
(表19)
【0252】
X8W60PCの炭疽菌(B. anthracis)殺胞子活性:
X8W60PCはより高い希釈においても、BCTPよりバシラス(Bacillus)胞子の多くの種に対して有効であるため、発芽を防止するために室温で、炭疽菌(B. anthracis)の異なる4つの株に対して10,000倍までの希釈液で調べた。X8W60PCは、1000倍希釈で86%〜99.9%の最大殺菌を示した(表20)。
【0253】
表20:
異なる臨床単離体を表す炭疽菌(B. anthracis)の異なる4つの株に対するX8W60PCの殺胞子活性。胞子を、発芽を防止するために室温でX8W60PCの異なる希釈液によって処理した。低い希釈では有意な殺菌を認めなかった。最大殺胞子作用は1000倍希釈で認めた。
【0254】
(表20)
【0255】
胞子の電子顕微鏡検査:
セレウス菌(B. cereus)は炭疽菌(B. anthracis)に最も近縁であることから、セレウス菌(B. cereus)を用いて試験を行った。BCTPのTSBによる100倍希釈液によって4時間処理したセレウス菌(B. cereus)胞子の透過性電子顕微鏡試験によって、胞子の外皮の広範囲の破壊と、歪んだ皮質、そして中心部の密度喪失を含むセレウス菌(B. cereus)胞子に対する物理的損傷が認められた(図18)。
【0256】
発芽の刺激と阻害:
バシラス(Bacillus)胞子に対するBCTPの殺胞子作用に及ぼす発芽の開始の影響を調べるために、発芽阻害剤であるD-アラニン(ティトバル(Titball)およびマンキー(Manchee)、1987;フォスター(Foster )およびジョンストン(Johnston)、1990)、および発芽刺激剤であるL-アラニンとイノシン(シバタ(Shibata)ら、1976)を胞子およびBCTPと共に1時間インキュベートした。BCTPの殺胞子作用は、10 mM D-アラニンの存在下で遅延し、50 μM L-アラニンおよび50 μMイノシンの存在下では加速した(図19)。
【0257】
インビボ殺胞子活性:
実験動物におけるセレウス菌(Bacillus cereus)感染症は、これまでに、炭疽病を調べるためのモデル系として用いられており、実験的炭疽病感染症と類似の疾患を引き起こす(ウェルコス(Welkos)ら、1986;ドロブニュースキ(Drobniewski)、1993;バードン(Burdon)およびウェンデ(Wende)、1960;バードン(Burdon)ら、1967;フリッツ(Frits)ら、1995;ウェルコス(Welkos)およびフリードランダー(Friedlander)、1988)。BCTPのインビボ有効性を評価するために、皮膚セレウス菌(B. cereus)疾患に関する2つの動物モデルを作製した。これらのモデルはナノ乳剤の皮下投与を含むため、これを適用する前にBCTPのインビボ毒性試験を行った。対照としてBCTPの生理食塩液による10倍希釈液を注入したCD-1マウスは、肉眼的または組織学的分析のいずれにおいても苦痛または炎症反応の兆候を示さなかった(図20A、図20B)。インビボでのセレウス菌(B. cereus)胞子の病原性作用およびBCTPの殺胞子作用を調べるために、セレウス菌(B. cereus)胞子4×107個の懸濁液を生理食塩液またはBCTPの最終10倍希釈液と共に混合した後、CD-1マウスの背部に直ちに皮下注射した。BCTPを含まないセレウス菌(B. cereus)胞子を皮下に感染させたマウスは、6〜8時間で重度の浮腫を発症した。これに続いて18〜24時間で灰色の壊死領域が注射部位周囲に現れ、48時間までに重度のかさぶたが皮膚に形成され、乾燥した赤色の病変が残された(図20C、図20D)。胞子とBCTPとの同時注入によって、胞子をBCTPと予め混合すると、壊死病変の1.68 cm2から0.02 cm2という98%以上の減少を認めた。これは、最小の浮腫または炎症に関連した(図20E、図20F)。
【0258】
さらなる試験において、1cmの皮膚創傷にセレウス菌(B. cereus)胞子2.5×107個を感染させた後、さらなる治療を行わずに閉じた(図21A、図21B)。他の群には、同数の胞子を感染させ、1時間後に創傷にBCTPまたは生理食塩液のいずれかを潅注して、曝露後の汚染除去を刺激した。実験的に感染させた創傷に生理食塩液を還流しても如何なる明白な利益も得られなかった(図21C、図21D)。セレウス菌(B. cereus)胞子に感染させた創傷をBCTPで還流すると、実質的な利益を示し、病変の大きさは4.86 cm2から0.06 cm2へと一貫して98%減少した(図21E、図21F)。病変の大きさのこの減少は、処置を受けていない、または生理食塩液を還流した実験動物と比較して、死亡率の4倍減少(80%から20%へ)を伴った。
【0259】
実施例12
インビトロでインフルエンザA型ウイルス感染症に及ぼす界面活性剤脂質調製物(SLP)の効果
エンベロープ型ウイルスは病原体として非常に懸念されている。それらは迅速に伝幡し、宿主がなくとも長期間にわたって生存することができる。インフルエンザA型ウイルスは、抗ウイルス剤を調べるための良好な容認されたモデルであることからこのウイルスを選択した(カライバノバ(Karaivanova)およびスパイロ(Spiro)、1998;マメン(Mammen)ら、1995;ヒュアン(Huang)ら、1991)。インフルエンザは、非常に接触感染性であり、重度の汎流行性疾患の原因となる臨床的に重要な呼吸器病原体である(マルダー(Mulder)およびハース(Hers)、1972)。
【0260】
エンベロープの糖蛋白質であるヘムアグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)は、インフルエンザのサブタイプの抗原特異性を決定するのみならず(シュルツェ(Shulze)、1997)、それらは容易に変異し、その結果、ウイルスが宿主防御系に浸潤することができる。これによって、近縁の株に対して免疫を有する人において疾患の開始が起こる可能性がある。以下は、インフルエンザA型ウイルス感染を予防するためにSLPの有効性を決定するために用いられる方法および組成物に関する説明である。
【0261】
界面活性剤脂質調製物(SLP):
SLPは2段階方法で合成した。大豆油を表1に記載の試薬と混和して、86℃で1時間加熱することによって油相を調製した(フローレンス(Florence)、1993)。次に、水または1%ビスマス水溶液(SS)を油相に容量/容量比で反復シリンジポンプを用いて注入することによってSLPを形成した。
【0262】
ウイルス:
インフルエンザウイルスA/AA/6/60型(ヘドチャー(Hedocher)ら、1996)は、ヒュネインF. マーサブ博士(Dr. Hunein F. Maassab)(ミシガン大学公衆衛生学)から提供された。インフルエンザA型ウイルスは、標準的な方法(バレット(Barrett)およびイングリス(Inglis)、1985)を用いて、受精した病原体不含鶏卵の尿膜腔(SPAFAS、ノルウィッチ、コネチカット州)において増殖させた。ウイルス保存液は−80℃で感染性の尿膜液の少量(108 cfu/ml)において維持した。アデノウイルスベクター(AD.RSV ntlacZ)は、ベクターコア施設(ミシガン大学医療センター、アナーバー、ミシガン州)によって提供され、一定量ずつ(−80℃で1012 pfu/ml)保存した。ベクターは、E1A〜E1Bに及ぶヌクレオチド配列とE3領域の一部とを欠失するヒトアデノウイルス(血清型5)ゲノム骨格に基づいた。これによって、ウイルスの複製能または非許容細胞の形質転換能が障害される。これは、ラウス肉腫ウイルス長末端反復(RSV-LTR)からのプロモーターの制御下で、β-ガラクトシダーゼをコードする大腸菌のLacZ遺伝子を有する。これは、蛋白質発現の検出を容易にするためにLacZ遺伝子の5'末端に結合した核ターゲティング(ntと呼ばれる)エピトープを含む(バラギ(Baragi)ら、1995)。
【0263】
細胞:
メイディンダービーイヌ腎(MDCK)細胞は米国微生物系統保存機関(ATCC;ロックビル、メリーランド州)から購入し、293細胞(CRL 1573;形質転換した初代培養胎児ヒト腎臓)は、ベクターコア施設(ミシガン大学メディカルセンター、アナーバー、ミシガン州)から得た。293細胞は、アデノウイルス5型の形質転換遺伝子を発現し、したって、宿主細胞においてAd.RSV ntlacZベクターの複製能を回復する(グラハム(Graham)ら、1977)。
【0264】
細胞維持培地:
MDCK細胞は、アール塩、2mM L-グルタミン、および1.5 g/L重炭酸ナトリウム(メディアテック社、ハーンドン、バージニア州)を添加し、10%ウシ胎児血清(FBS;ハイクローンラボラトリーズ、ローガン、ユタ州)を含むイーグル最小基本培地において維持した。培地には、0.1 mM非必須アミノ酸、1.0 mMピルビン酸ナトリウム、100 Uペニシリン/mlおよび100 μg/mlストレプトマイシン(ライフテクノロジーズ、ガイサースバーグ、メリーランド州)を添加した。293細胞は、2mM L-グルタミン、0.1 mM非必須アミノ酸、および1.0 mMピルビン酸ナトリウムを含むダルベッコ改変イーグル培地(メディアテック社、ハーンドン、バージニア州)において維持した。この培地はまた、100 U/mlペニシリンおよび100 μg/mlストレプトマイシン(ライフテクノロジーズ、ガイサースバーグ、メリーランド州)を含み、10%FBS(ハイクローンラボラトリーズ、ローガン、ユタ州)を添加した。
【0265】
ウイルス感染培地:
インフルエンザA型感染培地は、3.0 μg/mlトリルスルホニルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)処置トリプシン(ワーシントンバイオケミカル社、レークウッド、ニュージャージー州)を添加したMDCK細胞維持培地(FBS不含)であった。アデノウイルス感染培地は、低濃度の血清(2%FBS)を含む293細胞維持培地であった。
【0266】
インフルエンザA型重層培地:
重層培地は等量の2×感染培地および1.6%シーケムMEアガロース(FMCバイオプロダクツ社、ロックランド、メリーランド州)で構成された。染色アガロース重層培地は、アガロース重層培地+TPCK処置トリプシンを含まない0.01%ニュートラルレッド溶液(ライフテクノロジーズ、ガイサースバーグ、メリーランド州)で構成された。
【0267】
プラーク減少アッセイ(PRA)法:
プラーク減少アッセイ法は、どこにでも記載されている方法を改変して行った(ヘイデン(Hayden)ら、1980)。MDCK細胞を12ウェルファルコンプレートにおいて細胞1×105個/ウェルで播種し、37℃/5%CO2で3日間インキュベートした。インフルエンザA型ウイルス約1×108 pfuを、下記のように界面活性剤脂質調製物と共にインキュベートした。インフルエンザA型ウイルス-SLP処置および対照は、30〜100 pfu/250 μlを含むように感染培地において希釈した。コンフルエント細胞単層をプレート3枚に1試料あたり3ウェルずつ播種し、37℃/5%CO2で1時間インキュベートした。接種物/培地を吸引し、アガロース重層培地1ml/ウェルを加えて、プレートを37℃/5%CO2でプラークが現れるまでインキュベートした。単層をアガロース重層培地によって染色して、インキュベーションを37℃/5%CO2で継続した。プラークは染色の6〜12時間後に計数した。脂質調製物濃度を含むウェル9個の平均プラーク数を、無処置ウイルスウェルの平均プラーク数と比較した。
【0268】
インサイチュー細胞酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法:
インフルエンザA型ウイルスに感染したMDCK細胞におけるウイルス蛋白質を検出および定量するために、インサイチュー細胞ELISAを最適にした。簡単に説明すると、完全培地100 μl中にMDCK細胞2×104個を平底96ウェルマイクロタイタープレートに加えて、一晩インキュベートした。翌日、培養培地を除去して、細胞を血清不含維持培地によって洗浄した。ウイルス接種物100 μlをウェルに加えて、1時間インキュベートした。ウイルス接種物を除去して、MDCK細胞維持培地+2%FBS 100 μlと交換した。感染したMDCK細胞をさらに24時間インキュベートした。次に、細胞をPBSによって1回洗浄し、氷冷エタノール:アセトン混合液(1:1)によって固定して、−20℃で保存した。アッセイ当日、固定した細胞のウェルをPBSによって洗浄して、1%粉乳のPBS溶液によって37℃で30分間ブロッキングした。1000倍希釈したフェレット抗インフルエンザA型ウイルスポリクローナル抗体100 μl(ミシガン大学公衆衛生学部のヒュネインF. マーサブ博士(Dr. Hunein F. Maassab)の好意により提供された)を37℃で1時間ウェルに加えた。細胞を洗浄緩衝液(PBSおよび0.05%ツイーン20)によって4回洗浄し、ヤギ抗フェレットペルオキシダーゼ結合抗体(カークガード&ペリーラボラトリーズ、ガイサースバーグ、メリーランド州)の1000倍希釈液100 μlと共に37℃で30分間インキュベートした。細胞を4回洗浄して、発色するまで1-段階ターボTMB-ELISA基質(ピアス社、ロックフォード、イリノイ州)100 μlと共にインキュベートした。反応は1N硫酸によって停止させ、ELISAマイクロタイターリーダーにおいて波長450 nmでプレートを読みとった。
【0269】
β-ガラクトシダーゼアッセイ法:
β-ガラクトシダーゼアッセイ法は、既に記述されているように、細胞抽出物について行った(リム(Lim)1989)。簡単に説明すると、293細胞を96ウェル「U」底組織培養プレートに細胞約4×104個/ウェルで播種して、37℃/5%CO2で維持培地において一晩インキュベートした。翌日、培地を除去して、細胞をダルベッコリン酸緩衝生理食塩液(DPBS)100 μlによって洗浄した。アデノウイルス保存液を5×107 pfu/mlとなるように感染培地で希釈して、下記のようにBCTPの異なる濃度と混合した。BCTPによる処置後、ウイルスを感染培地によって濃度1×104 pfu/mlとなるように希釈して、293細胞に上層した。細胞を37℃/5%CO2で5日間インキュベートした後、プレートを遠心して、培地を除去し、Ca++およびMg++を含まないPBSによって細胞を3回洗浄した。3回目の洗浄後、PBSを吸引して、1×レポーター溶解緩衝液(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)100 μlを各ウェルに加えた。細胞溶解を増強するために、プレートを3回凍結融解し、β-ガラクトシダーゼの販売元(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)によって提供された説明書に多少の改変を加えてβ-ガラクトシダーゼアッセイ法を行った。細胞抽出物5μlを96ウェル平底プレートに移して、1×レポーター溶解緩衝液(1:10)45 μlと混合した。その後、2×アッセイ緩衝液50 μl(120 mM Na2HPO4、80 mM NaH2PO4、2mM MgCl2、100 mM β-メルカプトエタノール、1.33 mg/ml ONPG(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州))を加えて細胞抽出物と混合した。かすかな黄色を認めるまでプレートを室温でインキュベートした。黄色を認めれば、1M重炭酸ナトリウム100 μlを加えて反応を停止させた。プレートをELISAマイクロプレートリーダーにおいて波長420 nmで読みとった。全てのアッセイ法について、μu/μlβ-ガラクトシダーゼ(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)を加えた50 mMビシン緩衝液(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)、pH 7.5および1×レポーター溶解緩衝液によって希釈した100 μg/ml BSAからなる標準物質を流した。各細胞抽出物におけるβ-ガラクトシダーゼ単位は、標準物質におけるレベルを参照することによって回帰分析によって計算し、細胞抽出物試料中の蛋白質のミリグラムで除した。
【0270】
脂質調製物による細胞毒性とウイルス処置:
ウイルス感受性試験の前に、MDCKおよび293細胞に及ぼすSLPの細胞障害性を顕微鏡試験およびMTTアッセイ法によって評価した。ウイルスとSLPの混合物の希釈液を、評価したSLPの安全な濃度より少なくとも1次数高くなるように作製した。インフルエンザA型またはアデノウイルスのいずれか約1×108 pfuを最終濃度10倍、100倍、および1000倍希釈の脂質調製物と共に振盪機上で結果に示す異なる期間インキュベートした。インキュベーション後、SLP/ウイルス混合物の連続希釈液を適切な感染培地において作製し、MDCK(インフルエンザA型ウイルス)、または293(アデノウイルス)細胞に上層して、上記のようにPRA、細胞ELISA、またはβ-ガラクトシダーゼアッセイ法を行った。
【0271】
電子顕微鏡:
インフルエンザA型ウイルスは、超遠心を用いて(ベックマンローター、SW 28Ti、20,000 rpmで16時間)、GTNE(グリシン200 mM、トリス塩酸10 mM(pH 8.8)、NaCl 100 mM、およびEDTA1mM)によって調製した30%蔗糖クッションを通過させることによって尿膜液から半精製した。沈降したウイルスをGTNEによって再構築した。各試料(アデノウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス+BCTP、インフルエンザウイルス+BCTP)10 μlを15分間および60分間インキュベートした後、パーロディアン(parlodian)コーティングした200メッシュ銅グリッドに載せた。次に、2%カコジル酸緩衝グルタルアルデヒド5μlを加えた。3分後に液体を濾紙によって除去した。7%酢酸ウラニル10 μlをグリッドに加えて30秒後に濾紙によって除去した。グリッドを10分間乾燥させ、フィリップスEM400T透過型電子顕微鏡上で調べた。顕微鏡写真は、倍率200,000倍でフジFGフィルムに記録した。
【0272】
インフルエンザA型のSLPに対する感受性試験:
4つの界面活性剤脂質調製物(BCTP、NN、W808P、およびSS)のMDCL細胞のインフルエンザA型感染症に及ぼす影響を調べた。試験した調製物は全て、図22に示すように様々な程度にインフルエンザA型ウイルス感染症を阻害した。BCTPおよびSSは、10倍希釈でインフルエンザA型感染症を95%以上阻害した。NNおよびW80SPはインフルエンザA型ウイルスに対してごく中間的な作用を示したに過ぎず、感染症を約40%減少させた。BCTPの殺ウイルス作用は、100倍希釈液でも減弱しなかった。SSは、100倍希釈液ではより弱い作用を示し、インフルエンザA型感染症の阻害は55%であった。1000倍希釈でのこれらの2つの脂質調製物は、22〜29%の範囲でウイルス感染性に及ぼすごく弱い阻害作用を示したに過ぎなかった(図23B)。
【0273】
BCTPおよびSSはいずれも、ウイルス感染性に対して強い阻害作用を示したため、PRAを用いて細胞ELISAから得たデータを確認した。PRAはBCTPおよびSSの有効性を確認した。BCTPは、10倍希釈液でプラーク数を平均で50.88から0に減少させた(表21)。100倍希釈では、BCTPは、殺ウイルス有効性を維持した。100倍希釈では、SSは無処置ウイルスと比較してプラーク数を約7%減少させたに過ぎなかった。
【0274】
(表21)
a ウイルスはSLPと共に30分間インキュベートした。
b プラーク数
【0275】
インフルエンザA型ウイルスに及ぼすBCTPの作用の動力学:
BCTPがインフルエンザA感染性に対して作用を及ぼすために必要な時間を調べるために、ウイルスをBCTPの2つの希釈液(10倍、100倍)と共に4つの異なる時間間隔(5、10、15、30分)でインキュベートした。その後、プラーク減少アッセイ法を行った。表22に示すように、いずれかの希釈のBCTPと共に5分間インキュベートした後、MDCK細胞のインフルエンザA型ウイルス感染性は完全に消失した。濃度または時間に関係なくインフルエンザA型ウイルスとBCTPとの相互作用には有意差を認めなかった。
【0276】
(表22)
【0277】
BCTPの抗インフルエンザA型ウイルス有効性:
トライトンX-100洗剤は抗ウイルス活性を有するため(マハ(Maha)およびイガラシ(Igarashi)、1997;ポートカラ(Portcala)ら、1976)、トライトンX-100は、単独または個々のBCTP成分と組み合わせると、BCTPと同程度にインフルエンザA型感染症を阻害するか否かを調べた。インフルエンザA型ウイルスを、1)BCTP、2)トリ(n-ブチル)ホスフェート、トライトンX-100、および大豆油の組み合わせ(TTO)、3)トライトンX-100および大豆油(TO)、または4)トライトンX-100単独(T)によって処置した。BCTPは、トライトンX-100単独または調べた他の成分と混合した場合より10倍および100倍希釈液(トライトンX-100の500倍希釈、5000倍希釈)でインフルエンザA型ウイルスに対して有意に有効であった(図23)。1000倍希釈では、BCTP(トライトンX-100の50,000倍希釈)は、MDCK細胞のインフルエンザA型感染症を約50%減少させたのに対し、同じ濃度でトライトンX-100単独は完全に無効であった。
【0278】
BCTPは非エンベロープ型ウイルスの感染性に影響を及ぼさない:
BCTPが、非エンベロープ型ウイルスの感染に影響を及ぼすか否かを調べるために、β-ガラクトシダーゼをコードするLacZ遺伝子を含む遺伝子操作したアデノウイルスを用いた。このアデノウイルス構築物は、形質転換遺伝子を欠損し、したがって複製可能で、アデノウイルス5型の形質転換遺伝子を含む許容細胞のみを形質転換することができる。形質転換遺伝子を構成的に発現する293細胞は、アデノウイルス複製およびβ-ガラクトシダーゼ酵素の産生を促進するために用いた。図24に示すように、BCTP処置は、293細胞におけるアデノウイルスの複製能およびβ-ガラクトシダーゼ活性の発現能に影響を及ぼさなかった。BCTP処置および無処置アデノウイルスはいずれも、β-ガラクトシダーゼ酵素約0.11単位を産生した。
【0279】
エンベロープ型ウイルスに及ぼすBCTPの作用:
BCTPのみがエンベロープ型ウイルスの感染を変化させたため、エンベロープ型ウイルスの完全性に及ぼすこのナノ乳剤の作用を、電子顕微鏡を用いてさらに調べた。図25Dに示すように、BCTPの100倍希釈液と60分間インキュベートした後、アデノウイルスの構造は不変である。いくつかの認識可能なインフルエンザA型ビリオンが、BCTPと共に15分インキュベートした後に存在したが(図25B)、認識可能なインフルエンザA型ビリオンは1時間のインキュベーション後には認めなかった。インフルエンザA型ウイルスに対するBCTPの有効性と粘膜に対するその最小の毒性は、エンベロープ型ウイルスによる感染が原因で起こる疾患を予防するための有効な消毒剤および物質としての可能性を示す。
【0280】
実施例13
ネズミチフス菌(S. typhimurium)菌のW205EC処置に及ぼす温度とEDTAの影響
図31および32は、0.1%EDTAを加えた場合の本発明の異なる乳剤によるサルモネラ(Salmonella)菌の処置を示す。EDTAは、40℃(図32)および50℃(図33)の双方において乳剤の殺菌活性を改善した。乳剤は10.0%、1.0%、および0.1%希釈で調べた。
【0281】
実施例14
X8PCおよびW205ECの抗菌剤特性
上記のように、乳剤X8PCは、トライトンX-100約8容量%、TBP約8容量%、CPC約1%、大豆油約64容量%、および脱イオン水約19容量%からなり、乳剤W205ECは、ツイーン20約5容量%、エタノール約8容量%、CPC約1容量%、油約64容量%(例えば、大豆油)、および脱イオン水約22容量%からなる。X8PCおよびW205ECは、様々な条件で多くの微生物の増殖を減少させるか否かを調べた。図35は、室温および37℃でX8PCの10%、1%、および0.1%によるマイコバクテリア・フォーツイタム(Mycobacteria fortuitum)の対数的減少を示す。
【0282】
W205ECの2%乳剤(1%、2%、および3%ナトロソルを含むおよび含まない)はそれぞれ、室温で15分インキュベートした後、大腸菌の乾燥および湿潤細菌の双方に対して約2対数の減少を示した。W205ECの2%乳剤(1%、2%、および3%ナトロソルを含むおよび含まない)はそれぞれ、室温で15分インキュベートした後、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の乾燥および湿潤細菌の双方に対して約4対数の減少を示した。W205ECの2%乳剤(1%、2%、および3%ナトロソルを含むおよび含まない)はそれぞれ、室温で15分インキュベートした後、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)の乾燥および湿潤細菌の双方に対して約3対数の減少を示した。
【0283】
多数の温度および異なる種類の水で希釈した場合の1%W205ECの殺菌活性を調べるために、ゴム表面実験を行った。1フィートの表面に帯状擦過物(belt scrapings)20 gを塗沫した。ネズミチフス菌(S. typhimurium)菌を手動で表面に噴霧して20分間乾燥させた。処置を1分間、それぞれのあいだを1分間空けて3回行った。室温で10分間インキュベートした。結果を図36に示す。データはW205ECが調べた各温度で脱イオン水、蒸留水、および水道水を用いて有効であることを示している。
【0284】
上記の明細書において言及した全ての出版物および特許は参照として本明細書に組み入れられる。本発明の記述した方法および系に関する様々な改変および変更は、本発明の範囲および精神の範囲内であることは当業者に明らかとなると考えられる。本発明は、特定の好ましい態様と結びつけて記載してきたが、請求の本発明は、そのような特定の態様に不当に制限されないと理解すべきである。実際に、本発明を実施するために記載した様式の様々な改変が関連する分野の当業者には明白であるが、これらも添付の特許請求の範囲内であると解釈すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型乳剤が、水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤を含む組成物。
【請求項2】
第一の成分がアルコールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
第一の成分がグリセロールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
第二の成分が界面活性剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
第二の成分がハロゲン含有化合物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
水相が水を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
水相がリン酸緩衝生理食塩液を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
油相が植物油を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
植物油が大豆油、アボガド油、亜麻仁油、ココナツ油、綿実油、スクアレン油、オリーブ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、菜種油、サフラワー油、およびヒマワリ油からなる群より選択される、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
油相が魚油、香味油、水不溶性ビタミン、および鉱油からなる群より選択される油を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
油相がモーター油を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
油相が水中油型乳剤30〜90容量%を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
油相が水中油型乳剤50〜80容量%を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
アルコールがエタノールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
界面活性剤がポリソルベート界面活性剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
ポリソルベート界面活性剤がツイーン20、ツイーン40、ツイーン60、およびツイーン80からなる群より選択される、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
界面活性剤がフェオキシポリエトキシエタノールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
フェオキシポリエトキシエタノールがトライトンX-100、X-301、X-165、X-102、およびX-200からなる群より選択される、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
フェオキシポリエトキシエタノールがチロキサポールを含む、請求項17記載の組成物。
【請求項20】
界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウムを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
ハロゲン含有化合物が塩化セチルピリジニウムを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
ハロゲン含有化合物が、ハロゲン化セチルピリジニウム、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルエチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化セチルトリブチルホスホニウム、ハロゲン化ドデシルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルベンジルジメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、臭化セチルトリブチルホスホニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、および臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項23】
乳剤が第三の成分をさらに含み、第三の成分が界面活性剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項24】
乳剤が第三の成分をさらに含み、第三の成分が発芽増強剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項25】
乳剤が第三の成分をさらに含み、第三の成分がリン酸塩に基づく溶媒を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項26】
リン酸塩に基づく溶媒がトリブチルホスフェートを含む、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
乳剤が第三の成分をさらに含み、第三の成分がニュートラミンゲン、L-アラニン、塩化アンモニウム、トリプチカーゼ大豆ブロス、酵母抽出物、L-アスコルビン酸、レシチン、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、イノシン、水酸化ナトリウム、デキストロース、およびポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項28】
第一の成分がエタノールを含み、第二の成分がトライトンX-100を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項29】
第一の成分がエタノールを含み、第二の成分が塩化セチルピリジニウムを含み、第三の成分がツイーン20を含む、請求項23記載の組成物。
【請求項30】
混合物が、油、水溶液、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、混合物を乳化する段階を含む水中油型乳剤を作製する方法。
【請求項31】
第一の成分がアルコールを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
第一の成分がグリセロールを含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
第二の成分が界面活性剤を含む、請求項30記載の方法。
【請求項34】
第二の成分がハロゲン含有化合物を含む、請求項30記載の方法。
【請求項35】
油が、大豆油、アボガド油、亜麻仁油、ココナツ油、綿実油、スクアレン油、オリーブ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、菜種油、サフラワー油、およびヒマワリ油からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項36】
油が魚油、香味油、水不溶性ビタミン、および鉱油からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項37】
油相がモーター油を含む、請求項30記載の方法。
【請求項38】
アルコールがエタノールを含む、請求項30記載の方法。
【請求項39】
ハロゲン含有化合物が、ハロゲン化セチルピリジニウム、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルエチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化セチルトリブチルホスホニウム、ハロゲン化ドデシルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化セチルベンジルジメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、臭化セチルトリブチルホスホニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、または臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムからなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項40】
混合物が第三の成分をさらに含み、第三の成分が界面活性剤を含む、請求項30記載の方法。
【請求項41】
混合物が第三の成分をさらに含み、第三の成分が発芽増強剤を含む、請求項30記載の方法。
【請求項42】
混合物が第三の成分をさらに含み、第三の成分がリン酸塩に基づく溶媒を含む、請求項30記載の方法。
【請求項43】
混合物が第三の成分をさらに含み、第三の成分がニュートラミンゲン、L-アラニン、塩化アンモニウム、トリプチカーゼ大豆ブロス、酵母抽出物、L-アスコルビン酸、レシチン、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、イノシン、水酸化ナトリウム、デキストロース、およびポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項44】
第一の成分がエタノールを含み、第二の成分がトライトンX-100を含む、請求項30記載の方法。
【請求項45】
第一の成分がエタノールを含み、第二の成分が塩化セチルピリジニウムを含み、第三の成分がツイーン20を含む、請求項42記載の方法。
【請求項46】
水中油型乳剤が、水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤を含む組成物を領域に曝露する段階を含む、前記領域を保護または汚染を除去する方法。
【請求項47】
領域が固体表面を含む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
固体表面が医療用装置を含む、請求項46記載の方法。
【請求項49】
領域が溶液を含む、請求項46記載の方法。
【請求項50】
領域が生物の表面を含む、請求項46記載の方法。
【請求項51】
生物がヒトを含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
生物の表面が生物の外表面を含む、請求項50記載の方法。
【請求項53】
生物の表面が生物の内側部分を含む、請求項50記載の方法。
【請求項54】
領域が食品を含む、請求項46記載の方法。
【請求項55】
以下を含む、乳剤を改変する方法:
a) 水中油型乳剤が、水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤を提供する段階;ならびに
b) 改変された乳剤を作成するために、前記乳剤に成分を加えるまたは乳剤から成分を除去する段階。
【請求項56】
生物定量法において改変された乳剤を試験する段階をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項57】
生物定量法が抗菌剤定量法を含む、請求項55記載の方法。
【請求項58】
改変された乳剤の販売を宣伝する段階をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項59】
改変された乳剤を販売する段階をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項60】
水中油型乳剤が、水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤を含む輸送系を含む系。
【請求項61】
水中油型乳剤が、水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤に接触する材料を含む系。
【請求項62】
材料が医療用装置を含む、請求項61記載の系。
【請求項63】
材料が溶液を含む、請求項61記載の系。
【請求項64】
溶液が食品を含む、請求項63記載の系。
【請求項65】
溶液が洗剤を含む、請求項63記載の系。
【請求項66】
溶液がモーター油を含む、請求項63記載の系。
【請求項67】
材料が生物材料を含む、請求項61記載の方法。
【請求項68】
生物材料がヒト組織を含む、請求項61記載の方法。
【請求項69】
材料が食品を含む、請求項61記載の方法。
【請求項70】
材料がクリームを含む、請求項61記載の方法。
【請求項1】
水中油型乳剤が、水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤を含む組成物。
【請求項2】
第一の成分がアルコールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
第一の成分がグリセロールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
第二の成分が界面活性剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
第二の成分がハロゲン含有化合物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
水相が水を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
水相がリン酸緩衝生理食塩液を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
油相が植物油を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
植物油が大豆油、アボガド油、亜麻仁油、ココナツ油、綿実油、スクアレン油、オリーブ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、菜種油、サフラワー油、およびヒマワリ油からなる群より選択される、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
油相が魚油、香味油、水不溶性ビタミン、および鉱油からなる群より選択される油を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
油相がモーター油を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
油相が水中油型乳剤30〜90容量%を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
油相が水中油型乳剤50〜80容量%を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
アルコールがエタノールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
界面活性剤がポリソルベート界面活性剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
ポリソルベート界面活性剤がツイーン20、ツイーン40、ツイーン60、およびツイーン80からなる群より選択される、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
界面活性剤がフェオキシポリエトキシエタノールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
フェオキシポリエトキシエタノールがトライトンX-100、X-301、X-165、X-102、およびX-200からなる群より選択される、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
フェオキシポリエトキシエタノールがチロキサポールを含む、請求項17記載の組成物。
【請求項20】
界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウムを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
ハロゲン含有化合物が塩化セチルピリジニウムを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
ハロゲン含有化合物が、ハロゲン化セチルピリジニウム、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルエチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化セチルトリブチルホスホニウム、ハロゲン化ドデシルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルベンジルジメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、臭化セチルトリブチルホスホニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、および臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項23】
乳剤が第三の成分をさらに含み、第三の成分が界面活性剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項24】
乳剤が第三の成分をさらに含み、第三の成分が発芽増強剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項25】
乳剤が第三の成分をさらに含み、第三の成分がリン酸塩に基づく溶媒を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項26】
リン酸塩に基づく溶媒がトリブチルホスフェートを含む、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
乳剤が第三の成分をさらに含み、第三の成分がニュートラミンゲン、L-アラニン、塩化アンモニウム、トリプチカーゼ大豆ブロス、酵母抽出物、L-アスコルビン酸、レシチン、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、イノシン、水酸化ナトリウム、デキストロース、およびポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項28】
第一の成分がエタノールを含み、第二の成分がトライトンX-100を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項29】
第一の成分がエタノールを含み、第二の成分が塩化セチルピリジニウムを含み、第三の成分がツイーン20を含む、請求項23記載の組成物。
【請求項30】
混合物が、油、水溶液、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、混合物を乳化する段階を含む水中油型乳剤を作製する方法。
【請求項31】
第一の成分がアルコールを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
第一の成分がグリセロールを含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
第二の成分が界面活性剤を含む、請求項30記載の方法。
【請求項34】
第二の成分がハロゲン含有化合物を含む、請求項30記載の方法。
【請求項35】
油が、大豆油、アボガド油、亜麻仁油、ココナツ油、綿実油、スクアレン油、オリーブ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、菜種油、サフラワー油、およびヒマワリ油からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項36】
油が魚油、香味油、水不溶性ビタミン、および鉱油からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項37】
油相がモーター油を含む、請求項30記載の方法。
【請求項38】
アルコールがエタノールを含む、請求項30記載の方法。
【請求項39】
ハロゲン含有化合物が、ハロゲン化セチルピリジニウム、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルエチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化セチルトリブチルホスホニウム、ハロゲン化ドデシルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化セチルベンジルジメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、臭化セチルトリブチルホスホニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、または臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムからなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項40】
混合物が第三の成分をさらに含み、第三の成分が界面活性剤を含む、請求項30記載の方法。
【請求項41】
混合物が第三の成分をさらに含み、第三の成分が発芽増強剤を含む、請求項30記載の方法。
【請求項42】
混合物が第三の成分をさらに含み、第三の成分がリン酸塩に基づく溶媒を含む、請求項30記載の方法。
【請求項43】
混合物が第三の成分をさらに含み、第三の成分がニュートラミンゲン、L-アラニン、塩化アンモニウム、トリプチカーゼ大豆ブロス、酵母抽出物、L-アスコルビン酸、レシチン、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、イノシン、水酸化ナトリウム、デキストロース、およびポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項44】
第一の成分がエタノールを含み、第二の成分がトライトンX-100を含む、請求項30記載の方法。
【請求項45】
第一の成分がエタノールを含み、第二の成分が塩化セチルピリジニウムを含み、第三の成分がツイーン20を含む、請求項42記載の方法。
【請求項46】
水中油型乳剤が、水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤を含む組成物を領域に曝露する段階を含む、前記領域を保護または汚染を除去する方法。
【請求項47】
領域が固体表面を含む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
固体表面が医療用装置を含む、請求項46記載の方法。
【請求項49】
領域が溶液を含む、請求項46記載の方法。
【請求項50】
領域が生物の表面を含む、請求項46記載の方法。
【請求項51】
生物がヒトを含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
生物の表面が生物の外表面を含む、請求項50記載の方法。
【請求項53】
生物の表面が生物の内側部分を含む、請求項50記載の方法。
【請求項54】
領域が食品を含む、請求項46記載の方法。
【請求項55】
以下を含む、乳剤を改変する方法:
a) 水中油型乳剤が、水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤を提供する段階;ならびに
b) 改変された乳剤を作成するために、前記乳剤に成分を加えるまたは乳剤から成分を除去する段階。
【請求項56】
生物定量法において改変された乳剤を試験する段階をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項57】
生物定量法が抗菌剤定量法を含む、請求項55記載の方法。
【請求項58】
改変された乳剤の販売を宣伝する段階をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項59】
改変された乳剤を販売する段階をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項60】
水中油型乳剤が、水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤を含む輸送系を含む系。
【請求項61】
水中油型乳剤が、水相に分布した不連続な油相、アルコールまたはグリセロールを含む第一の成分、および界面活性剤またはハロゲン含有化合物を含む第二の成分を含む、水中油型乳剤に接触する材料を含む系。
【請求項62】
材料が医療用装置を含む、請求項61記載の系。
【請求項63】
材料が溶液を含む、請求項61記載の系。
【請求項64】
溶液が食品を含む、請求項63記載の系。
【請求項65】
溶液が洗剤を含む、請求項63記載の系。
【請求項66】
溶液がモーター油を含む、請求項63記載の系。
【請求項67】
材料が生物材料を含む、請求項61記載の方法。
【請求項68】
生物材料がヒト組織を含む、請求項61記載の方法。
【請求項69】
材料が食品を含む、請求項61記載の方法。
【請求項70】
材料がクリームを含む、請求項61記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29−1】
【図29−2】
【図29−3】
【図29−4】
【図29−5】
【図30】
【図31A】
【図31B】
【図31C】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
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【図4】
【図5】
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【図9】
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【図11】
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【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29−1】
【図29−2】
【図29−3】
【図29−4】
【図29−5】
【図30】
【図31A】
【図31B】
【図31C】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2012−136533(P2012−136533A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32313(P2012−32313)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【分割の表示】特願2001−549664(P2001−549664)の分割
【原出願日】平成12年12月29日(2000.12.29)
【出願人】(506277410)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【分割の表示】特願2001−549664(P2001−549664)の分割
【原出願日】平成12年12月29日(2000.12.29)
【出願人】(506277410)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (19)
【Fターム(参考)】
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