説明

折り畳み式電子機器

【課題】ヒンジ機構を具えた折り畳み式電子機器において、第1筐体と第2筐体にヒンジ機構を組み付ける工程の工数を従来よりも削減する。
【解決手段】第1筐体と第2筐体がヒンジ機構3を介して互いに連結され、ヒンジ機構3は、互いに相対回転可能な第1連結部材41、中間連結部材4及び第2連結部材42を有している。第1筐体には、ヒンジ機構の第1連結部材41と中間連結部材4が収容される開口部が凹設され、中間連結部材4には、開口部を塞ぐカバー部材5がビス44により締結されている。中間連結部材4にはビス44の先端部がねじ込まれるべきねじ孔46が開設されると共に、第1連結部材41には、ビス44の頭部が余裕をもって通過することが可能な切り欠き43が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラや携帯電話機等の電子機器に関し、特に、ヒンジ機構を具えて2つの筐体を折り畳むことが可能な折り畳み式電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2軸ヒンジ機構を具えて2つの筐体を折り畳むことが可能な電子機器が提案されている(特許文献1)。
例えば、静止画や動画を撮影することが可能なビデオカメラにおいては、図14に示す如く、操作部(90)が配備された第1筐体(9)と、液晶ディスプレイ(92)が配備された第2筐体(91)とが、2軸ヒンジ機構(93)によって互いに開閉可能に連結されている。
【0003】
2軸ヒンジ機構(93)は、その大部分が第1筐体(9)の凹部に収容されており、両筐体(9)(91)を開いた状態では、図14に示す様に2軸ヒンジ機構(93)に固定されたカバー部材(94)によって前記凹部が塞がれることなる。従って、2軸ヒンジ機構(93)の内部を通過する多数のリード線等の内部構成が外部に露出することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−111737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の2軸ヒンジ機構(93)を具えた折り畳み式電子機器において、カバー部材(94)は、図14に示す如くビス(96)を用いて2軸ヒンジ機構(93)の構成部材に締結されている。
この様な折り畳み式電子機器の組立工程においては、2軸ヒンジ機構(93)によって第1筐体(9)と第2筐体(91)を互いに連結した後、図14に示す如く両筐体(9)(91)を開き、これによって両筐体(9)(91)の内面側にねじ孔(95)を露出させ、その露出したねじ孔(95)にビス(96)をねじ込むことが行なわれている。
【0006】
従って、第1筐体(9)と第2筐体(91)に2軸ヒンジ機構(93)を組み付ける工程に、第1筐体(9)と第2筐体(91)を開閉させる作業が必要となり、これによって工数の増大を招く問題があった。
第1筐体(9)と第2筐体(91)に2軸ヒンジ機構(93)を組み付ける工程に先だって、治具によって2軸ヒンジ機構(93)を開いてねじ孔(95)を露出させ、その露出したねじ孔(95)にビス(96)をねじ込むことも可能であるが、特別な治具を用いた作業が工数の増大を招くことになる。
【0007】
そこで本発明の目的は、ヒンジ機構を具えた折り畳み式電子機器において、第1筐体と第2筐体にヒンジ機構を組み付ける工程の工数を従来よりも削減することが可能な折り畳み式電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る折り畳み式電子機器においては、第1筐体と第2筐体がヒンジ機構を介して互いに連結され、ヒンジ機構は、第1連結部材と、第1連結部材に対して枢軸回りに回動可能な中間連結部材と、中間連結部材と連結され若しくは一体となった第2連結部材とを有し、第1連結部材に第1筐体が連結されると共に、第2連結部材に第2筐体が連結され、第1筐体に対して第2筐体を前記枢軸回りに回動させることが可能である。
【0009】
ここで、前記第1筐体には、前記ヒンジ機構の第1連結部材と中間連結部材が収容される開口部が凹設され、中間連結部材には、第1筐体と第2筐体が折り畳まれた状態で前記開口部を塞ぐカバー部材がビスにより締結されており、該中間連結部材には、第1筐体に対して第2筐体が閉じられた閉じ状態で第1連結部材と対向する領域に、前記ビスの先端部がねじ込まれるべきねじ孔が開設されると共に、第1連結部材には、前記閉じ状態で前記ねじ孔と対向する領域に、前記ビスの頭部が通過することが可能な開口が形成されている。
【0010】
具体的態様において、前記カバー部材は断面U字状に形成され、前記開口部を覆うカバー部と、該カバー部と対向する固定部とを有し、該固定部に、前記ビスが貫通すべき貫通孔が開設されている。
【0011】
本発明に係る折り畳み式電子機器の組立工程においては、第1筐体と第2筐体をヒンジ機構によって互いに連結する作業に先立って、ヒンジ機構にカバー部材を締結する。
このとき、ヒンジ機構は、第1筐体と第2筐体を閉じたときの動作状態にあり、中間連結部材に開設されているねじ孔と、第1連結部材に形成されている開口とが、互いに重なっている。従って、中間連結部材にカバー部材を装着して、該カバー部材の貫通孔を中間連結部材のねじ孔に重ね合わせた状態で、中間連結部材のねじ孔とカバー部材の貫通孔が、第1連結部材の開口から露出することになる。
【0012】
そこで、第1連結部材の開口を通じて、ビスをカバー部材の貫通孔から中間連結部材のねじ孔にねじ込むことにより、中間連結部材にカバー部材を締結することが出来る。
その後、カバー部材が締結されたヒンジ機構を用いて、第1筐体と第2筐体とを互いに連結する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る折り畳み式電子機器によれば、第1筐体と第2筐体をヒンジ機構によって互いに連結する作業に先立って、ヒンジ機構の中間連結部材にカバー部材を締結することが出来るので、第1筐体と第2筐体にヒンジ機構を組み付ける作業において両筐体を開閉させる必要がなく、これによって従来よりも工数を削減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施態様であるビデオカメラを開き状態で正面側から見た斜視図である。
【図2】図2は、該ビデオカメラを開き状態で背面側から見た斜視図である。
【図3】図3は、該ビデオカメラの開き状態の側面図である。
【図4】図4は、該ビデオカメラの開き状態の正面図である。
【図5】図5は、該ビデオカメラの閉じ状態の背面図である。
【図6】図6は、第1筐体の分解斜視図である。
【図7】図7は、該ビデオカメラにおいてカバー部材を取り外した状態の側面図である。
【図8】図8は、該ビデオカメラにおいてカバー部材を取り付けた状態の側面図である。
【図9】図9は、2軸ヒンジ機構の斜視図である。
【図10】図10は、2軸ヒンジ機構の分解斜視図である。
【図11】図11は、ビスを取り外した状態の2軸ヒンジ機構の背面図である。
【図12】図12は、ビスをねじ込んだ状態の2軸ヒンジ機構の背面図である。
【図13】図13は、2軸ヒンジ機構の正面図である。
【図14】図14は、従来のビデオカメラの開き状態の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を静止画及び動画の撮影が可能なビデオカメラに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施態様であるビデオカメラは、図1及び図2に示す如く第1筐体(1)と第2筐体(2)を具え、両筐体(1)(2)は後述する2軸ヒンジ機構によって互いに開閉可能に連結されおり、図1〜図4に示す開き状態と図5に示す閉じ状態を設定することが可能である。
該ビデオカメラは、図1〜図3に示す如く第2筐体(2)を開いた状態で第1筐体(1)の下部を把持して使用するものである。
図4に示す如く、筐体(1)の底部には、三脚を取り付けるための取付け座(10)が設けられている。
【0016】
図1及び図2に示す如く、第1筐体(1)には、その前部に、撮影レンズ(11)及び照明用のLED(12)が配備されると共に、その後部に、静止画撮影を指示するシャッター釦(13)、ズーム釦(14)、動画撮影を指示する録画釦(15)、及びアクセスランプ(16)が配備されている。
第2筐体(2)には、その内面に液晶ディスプレイ(21)が配備されると共に、その外面に一対のマイクロホン(22)(22)が配備されている。又、第2筐体(2)の内面には、録画/再生キー(23)、メニューキー(24)、十字キー(25)及びセットキー(26)が配備されている。
尚、第2筐体(2)の外面にはメッキ処理が施されている。
【0017】
更に第1筐体(1)の内面には、閉じ状態で第2筐体(2)によって覆われるべき領域に、図3及び図4に示す如く電源釦(17)、カード蓋(18)及び電池蓋(19)が配備されている。
【0018】
第1筐体(1)は、図6に示す如くシャーシ(100)に対して、第1キャビネット部品(101)、第2キャビネット部品(102)及び第2キャビネット部品(103)を取り付けて構成されており、第1キャビネット部品(101)及び第2キャビネット部品(103)は合成樹脂製であるのに対し、第2キャビネット部品(102)はアルミニウム製である。
【0019】
第1筐体(1)と第2筐体(2)を互いに連結する2軸ヒンジ機構(3)は、図9及び図10に示す如く、第1連結部材(41)と、第1連結部材(41)に対して第1枢軸(31)回りに回動可能な中間連結部材(4)と、中間連結部材(4)に対して第1枢軸(31)とは直交する第2枢軸(32)回りに回動可能な第2連結部材(42)とを有している。中間連結部材(4)には、断面U字状のカバー部材(5)がビス(44)によって締結される。
【0020】
第1連結部材(41)は、左右に延びる帯板部の両端に一対のアーム部を突設して構成されている。中間連結部材(4)は、左右に延びる帯板部の両端に一対のアーム部を突設して構成されている。そして、第1連結部材(41)の両アーム部と中間連結部材(4)の両アーム部が左右一対の第1枢軸(31)(31)によって相対回転可能に支持されている。
【0021】
第1連結部材(41)の帯板部と中間連結部材(4)の帯板部とは、両筐体(1)(2)の閉じ状態では互いに直交して隣接し、両筐体(1)(2)の開き状態では互いに平行して対向することになる。
【0022】
第2連結部材(42)は左右に延びる帯板状を呈し、中間連結部材(4)の帯板部の中央部に突設された第2枢軸(32)に、第2連結部材(42)の中央部が回転可能に支持されている。
【0023】
カバー部材(5)は、中間連結部材(4)に固定されるべき固定部(53)と、固定部(53)と所定の間隔をおいて対向するカバー部(52)とを有している。
中間連結部材(4)には、ビス(44)の先端部がねじ込まれるべきねじ孔(46)が開設された舌片(45)が突設され、カバー部材(5)の固定部(53)は、第1連結部材(41)と舌片(45)の間にて、舌片(45)上に設置される。
【0024】
第1連結部材(41)には、第1筐体(1)に対して第2筐体(2)を閉じたときに中間連結部材(4)のねじ孔(46)と対向する領域に、ビス(44)の頭部が余裕をもって通過可能なU字状の切り欠き(43)が形成されている。
又、カバー部材(5)の固定部(53)には、ビス(44)の先端部が貫通すべき貫通孔(51)が開設されている。
尚、図4に示す開き状態においては、第1筐体(1)と第2筐体(2)の間から切り欠き(43)の一部が見えている。
【0025】
図11に示す如く、中間連結部材(4)にカバー部材(5)が装着された状態で、U字状切り欠き(43)には、カバー部材(5)の貫通孔(51)と中間連結部材(4)のねじ孔(46)とが同軸上に露出することになる。
この状態で、図12の如く第1連結部材(41)のU字状切り欠き(43)を通じて、カバー部材(5)の貫通孔(51)から中間連結部材(4)のねじ孔(46)へビス(44)がねじ込まれ、これによってカバー部材(5)が中間連結部材(4)に締結される。
【0026】
中間連結部材(4)にカバー部材(5)が締結された状態で、カバー部材(5)のカバー部(52)は、両第1筐体(1)(2)が閉じられた状態における第1連結部材(41)と対向して、図13の如く中間連結部材(4)の全体を覆うことになる。
【0027】
2軸ヒンジ機構(3)の第1連結部材(41)と中間連結部材(4)は、図7に示す如く第1筐体(1)に凹設された開口部(104)に収容され、第1連結部材(41)には第1筐体(1)が連結されると共に、第2連結部材(42)には第2筐体(2)が連結される。
この状態で、図8に示す如く第1筐体(1)に対して第2筐体(2)が閉じられることによって、カバー部材(5)のカバー部(52)は、第1筐体(1)の開口部(104)を塞ぐことになる。
【0028】
2軸ヒンジ機構(3)の内部には、第1連結部材(41)と中間連結部材(4)によって包囲される内部空間が形成され、該内部空間には、第1筐体(1)内の電子部品と第2筐体(2)内の電子部品とを互いに電気接続する複数本のリード線が収容されることになるが、第1筐体(1)に対して第2筐体(2)を閉じた状態で、第1筐体(1)の開口部(104)は図8の如くカバー部材(5)のカバー部(52)によって塞がれるので、前記複数本のリード線が外部に露出することはない。
【0029】
上記本発明に係る折り畳み式電子機器においては、図12に示す如く2軸ヒンジ機構(3)の中間連結部材(4)にカバー部材(5)を締結した後に、該2軸ヒンジ機構(3)を用いて、第1筐体(1)と第2筐体(2)とを互いに連結することが出来る。
【0030】
従来の如く、図11に示す2軸ヒンジ機構(3)の第1連結部材(41)にU字状切り欠き(43)が形成されていない場合には、図11に示す状態でカバー部材(5)の貫通孔(51)や中間連結部材(4)のねじ孔(46)は第1連結部材(41)によって覆われることになるので、この状態でビス(44)をねじ孔(46)にねじ込むことは出来ない。
そこで、従来においては、図9に示す未締結状態の2軸ヒンジ機構(3)を用いて第1筐体(1)と第2筐体(2)を互いに連結した後、第2筐体(2)を開き、これによって露出したねじ孔(46)にビス(44)をねじ込むことが行なわれていたのである(図14)。
【0031】
これに対し、本発明に係る折り畳み式電子機器においては、2軸ヒンジ機構(3)の中間連結部材(4)にビス(44)を用いてカバー部材(5)を締結した後、該2軸ヒンジ機構(3)を用いて、第1筐体(1)と第2筐体(2)とを互いに連結することが出来るので、第1筐体(1)と第2筐体(2)に2軸ヒンジ機構(3)を組み付ける工程でビス(44)のねじ込みのために第2筐体(2)を開閉する作業は不要であり、これによって工数の削減が可能である。
【0032】
本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、ビス(44)の頭部が通過すべき第1連結部材(41)開口は、上述の切り欠き(43)に限らず、貫通孔や円孔によって形成することも可能である。
又、本発明は、2軸ヒンジ機構に限らず1軸ヒンジ機構でも生じていた課題を解決するものであって、2軸ヒンジ機構に限らず1軸ヒンジ機構を具えた電子機器にも実施することが可能であり、中間連結部材と第2連結部材とを一体的に構成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
(1) 第1筐体
(2) 第2筐体
(3) 2軸ヒンジ機構
(31) 第1枢軸
(32) 第2枢軸
(4) 中間連結部材
(41) 第1連結部材
(42) 第2連結部材
(43) 切り欠き
(44) ビス
(45) 舌片
(46) ねじ孔
(5) カバー部材
(51) 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と第2筐体がヒンジ機構を介して互いに連結され、ヒンジ機構は、第1連結部材と、第1連結部材に対して枢軸回りに回動可能な中間連結部材と、中間連結部材と連結され若しくは一体となった第2連結部材とを有し、第1連結部材に第1筐体が連結されると共に、第2連結部材に第2筐体が連結され、第1筐体に対して第2筐体を前記枢軸回りに回動させることが可能な折り畳み式電子機器において、
前記第1筐体には、前記ヒンジ機構の第1連結部材と中間連結部材が収容される開口部が凹設され、中間連結部材には、第1筐体と第2筐体が折り畳まれた状態で前記開口部を塞ぐカバー部材がビスにより締結されており、該中間連結部材には、第1筐体に対して第2筐体が閉じられた閉じ状態で第1連結部材と対向する領域に、前記ビスの先端部がねじ込まれるべきねじ孔が開設されると共に、第1連結部材には、前記閉じ状態で前記ねじ孔と対向する領域に、前記ビスの頭部が通過することが可能な開口が形成されていることを特徴とする折り畳み式電子機器。
【請求項2】
前記カバー部材は断面U字状に形成されて、前記開口部を覆うカバー部と、該カバー部と対向する固定部とを有し、該固定部に、前記ビスが貫通すべき貫通孔が開設されている請求項1に記載の折り畳み式電子機器。
【請求項3】
前記ヒンジ機構は2軸ヒンジ機構であって、第2連結部材は、中間連結部材に対して前記枢軸とは直交する第2の枢軸回りに回動可能である請求項1又は請求項2に記載の折り畳み式電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−120161(P2011−120161A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277693(P2009−277693)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】