説明

折戸パネルの吊り車及びこの吊り車を用いた自動折戸システム

【課題】 折戸パネルのスムースな開閉動作を可能とした折戸パネルの吊り車及びこの吊り車を用いた自動折戸システムを提供する。
【解決手段】 上枠内に設けたガイドレールに沿って走行する折戸パネルの吊り車であって、上枠内に設けた索体の水平移動に連動してガイドレールに沿って走行する走行部と、水平移動を水平回転に変換して折戸パネルを回転させるとともに該折戸パネルを吊る連結軸を有する吊り部とを有し、該吊り部は索体の水平移動を伝えるとともに連結軸に固定される異形回転板に作用して連結軸を回転させる作用板と該作用板の水平移動を伝えるラックと該ラックの水平移動を水平回転力に変換する歯車列を備え、歯車列の出力回転ギヤの回転軸を連結軸として該連結軸の下端側を折戸パネルの上端部に固定して該折戸パネルを吊るとともに回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折戸パネルのスムースな開閉動作を可能とした折戸パネルの吊り車及びこの吊り車を用いた自動折戸システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、吊り車を伴う蝶番ユニットを備える折戸システムを開発している。これは、図14、図15に示すように、回転軸側パネル1と中間パネル2、中間パネル2と把手側パネル3とを、はすば歯車を噛合させてなる蝶番ユニット4で連結し、回転軸側パネル1の上下端部に設けた回転軸部5a,5bで回転軸側パネル1を回動自在に支持するとともに、上枠6に設けた吊りレール7に吊り車8でパネル体2,3を吊り、吊り車8を吊りレール7に沿って走行させることにより、折戸9を手動で開閉する折戸システムである。なお、符号10は把手である。
【0003】
この折戸システムは、折戸9を手動で屈曲させるため、何ら問題なく折戸9を開閉できる。これを自動折戸システムとするために、上枠6の一端部に駆動モータにより駆動される駆動プーリ、他端部に従動プーリを設け、これら駆動プーリと従動プーリとの間にベルトを巻き掛け、該ベルトと吊り車8とを連結具で連結して、ベルトの水平移動に連動させて吊り車8を吊りレール7に沿って走行させ、折戸パネル9を開閉するようにした場合において、全閉状態では、回転軸側パネル1の回転軸5a,5bの軸心と蝶番ユニット4の回転軸心を通る中心線Xは一直線上にくることになる(図15の一点鎖線)。このとき、ベルトの移動に連動する吊り車8が回転軸5a,5b方向に動こうとしても、前記中心線Xが一直線上にくるため回転軸側パネル1は回転することができず、折戸9を開くことができなくなってしまう。
【0004】
このため、自動で回転させるには、回転軸側パネル1を回転させて折戸9を開閉する、即ち、図16に示すように、回転軸側パネル1の壁面側下端角部に駆動モータ11を固定し、モータ本体の回転をピボットアーム12を介して回転軸側パネル1に伝え、該回転軸側パネル1を回転させて折戸9を開閉させることになるが、折戸パネル9が多数枚にわたる場合等は大きな負荷がかかるため、駆動モータ11の出力も大きなものを用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−161300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、ベルトの水平移動に連動する吊り車によって折戸パネルを移動させる自動折戸システムにおいて、折戸パネルのスムースな開閉動作を可能とした折戸パネルの吊り車及びこの吊り車を用いた自動折戸システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明による折戸パネルの吊り車は、上枠と一対の縦枠からなる三方枠体と床面とにより形成される開口に、蝶番ユニットを介して互いに回動可能かつ折り畳み可能に連結された折戸パネルを開閉可能に取り付け、前記上枠内に設けたガイドレールに沿って走行する折戸パネルの吊り車であって、前記上枠内に設けた索体の水平移動に連動して前記ガイドレールに沿って走行する走行部と、水平移動を水平回転に変換して折戸パネルを回転させるとともに該折戸パネルを吊る連結軸を有する吊り部とを有し、該吊り部は前記索体の水平移動を連結具を介して伝えるとともに前記連結軸に固定される異形回転板に作用して前記連結軸を回転させる作用板と該作用板の水平移動を弾性体を介して伝えるラックと該ラックの水平移動を水平回転力に変換する歯車列を備え、該歯車列は少なくとも入力側となるラック側ギヤと出力側となる出力回転ギヤからなる歯車列を吊り車の走行方向に配列してなり、前記出力回転ギヤの回転軸を前記連結軸として該連結軸の下端側を折戸パネルの上端部に固定して該折戸パネルを吊るとともに回転させること、を特徴としている。
ここで、作用板には正転押圧部と逆転押圧部とを設け、異形回転板には折戸パネルの開動作初期時に前記正転押圧部に当接して異形回転板を正転させる正転受圧部と折戸パネルの閉動作時に前記逆転押圧部に当接して異形回転板を逆転させる逆転受圧部とを設けるようにするとよい。
また、本発明による自動折戸システムは、上枠と一対の縦枠からなる三方枠体と床面とにより形成される開口に、蝶番ユニットを介して互いに回動可能かつ折り畳み可能に連結された折戸パネルを開閉可能に取り付けてなる折戸システムであって、前記上枠内の一端部に駆動エンジンにより駆動される駆動プーリを他端部に従動プーリをそれぞれ配置し、これら駆動プーリと従動プーリ間に索体を巻き掛け、前記上枠内に上枠に沿って延びるガイドレールを設け、該ガイドレールに沿って走行する吊り車を設け、この吊り車は連結具を介して前記索体に連結され、前記索体の水平移動に連動して前記ガイドレールに沿って走行する走行部と、水平移動を水平回転に変換して折戸パネルを回転させるとともに該折戸パネルを吊る連結軸を有する吊り部とを有し、該吊り車の吊り部は前記索体の水平移動を連結具を介して伝えるとともに前記連結軸に固定される異形回転板に作用して前記連結軸を回転させる作用板と該作用板の水平移動を弾性体を介して伝えるラックと該ラックの水平移動を水平回転力に変換する歯車列からなり、該歯車列は少なくとも入力側となるラック側ギヤと出力側となる出力回転ギヤからなる歯車列を吊り車の走行方向に配列してなり、前記出力回転ギヤの回転軸を連結軸として該連結軸の下端側を折戸パネルの上端部に固定して該折戸パネルを吊るとともに回転させること、を特徴としている。
ここで、作用板には正転押圧部と逆転押圧部とを設け、異形回転板には折戸パネルの開動作初期時に前記正転押圧部に当接して異形回転板を正転させる正転受圧部と折戸パネルの閉動作時に前記逆転押圧部に当接して異形回転板を逆転させる逆転受圧部とを設けるようにするとよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明による折戸パネルの吊り車によれば、吊り車の吊り部は索体の水平移動を連結具を介して伝えるとともに連結軸に固定される異形回転板に作用して前記連結軸を回転させる作用板と該作用板の水平移動を弾性体を介して伝えるラックと該ラックの水平移動を水平回転力に変換する歯車列を備え、該歯車列は少なくとも入力側となるラック側ギヤと出力側となる出力回転ギヤからなる歯車列を吊り車の走行方向に配列してなり、前記出力回転ギヤの回転軸を前記連結軸として該連結軸の下端側を折戸パネルの上端部に固定して該折戸パネルを吊るとともに回転させるので、作用板が異形回転板に作用して該異形回転板を回転させることにより、異形回転板が固定された連結軸の回転を補助して、折戸パネルのスムースな開閉が可能となる。
ここで、作用板には正転押圧部と逆転押圧部とを設け、異形回転板には折戸パネルの開動作初期時に前記正転押圧部に当接して異形回転板を正回転させる正転受圧部と折戸パネルの閉動作時に前記逆転押圧部に当接して異形回転板を逆回転させる逆転受圧部とを設けるようにすれば、折戸パネルの開動作初期時、折戸パネルの全閉状態から索体が水平移動を開始すると、先ず作用板の正転押圧部が異形回転板の正転受圧部に作用して該異形回転板を正回転させ、該異形回転板が固定された連結軸を正回転させることになる。この連結軸に固定された折戸パネルが正回転し、蝶番ユニット部で屈曲を開始することになる。このため、スムースに折戸パネルを折り畳みはじめることができる。折戸パネルの閉動作時には、作用板の逆転押圧部が異形回転板の逆転受圧部に当接して異形回転板を逆回転させ、該異形回転板が固定された連結軸を逆回転させることになる。この連結軸に固定された折戸パネルが逆回転し、折戸パネルは閉じられることになる。
また、本発明による自動折戸システムによれば、吊り車の吊り部は索体の水平移動を連結具を介して伝えるとともに前記連結軸の上端部に固定される異形回転板に作用して前記連結軸を回転させる作用板と該作用板の水平移動を弾性体を介して伝えるラックと該ラックの水平移動を水平回転力に変換する歯車列からなり、該歯車列は少なくとも入力側となるラック側ギヤと出力側となる出力回転ギヤからなる歯車列を吊り車の走行方向に配列してなり、前記出力回転ギヤの回転軸を連結軸として該連結軸の下端側を折戸パネルの上端部に固定して折戸パネルを吊るとともに回転させるので、作用板が異形回転板に作用して該異形回転板を回転させることにより、異形回転板が固定された連結軸の回転を補助して、折戸パネルのスムースな開閉が可能となる。
ここで、作用板には正転押圧部と逆転押圧部とを設け、異形回転板には折戸パネルの開動作初期時に前記正転押圧部に当接して異形回転板を正回転させる正転受圧部と折戸パネルの閉動作時に前記逆転押圧部に当接して異形回転板を逆回転させる逆転受圧部とを設けるようにすれば、折戸パネルの開動作初期時、折戸パネルの全閉状態から索体が水平移動を開始すると、先ず作用板の正転押圧部が異形回転板の正転受圧部に作用して該異形回転板を正回転させ、該異形回転板が固定された連結軸を正回転させることになる。この連結軸に固定された折戸パネルが正回転し、蝶番ユニット部で屈曲を開始することになる。このため、スムースに折戸パネルを折り畳みはじめることができる。折戸パネルの閉動作時には、作用板の逆転押圧部が異形回転板の逆転受圧部に当接して異形回転板を逆回転させ、該異形回転板が固定された連結軸を逆回転させることになる。この連結軸に固定された折戸パネルが逆回転し、折戸パネルは閉じられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施例による均等3枚折戸からなる自動折戸システムの全体図で、(a)は全閉状態の要部正面図、(b)は全閉状態の要部平面図、(c)は開閉途中の要部平面図、(d)は全開状態の要部平面図である。
【図2】吊り車の説明図で、(a)は全閉状態の吊り車の平面図、(b)は吊り車とパネルとを連結した状態を示す一部断面要部正面図である。
【図3】蝶番ユニット部の連結部材の説明図で、(a)は平面図、(b)はB−B線断面図である。
【図4】図2の全閉状態における吊り車の底面図である。
【図5】上枠内を示す断面側面図である。
【図6】歯車列において中間ギヤを装着する様子を示す説明用正面図である。
【図7】開動作初期時における吊り車の平面図である。
【図8】全開状態における吊り車の平面図である。
【図9】第2実施例による2枚折戸からなる自動折戸システムの全体図で、(a)は全閉状態の要部正面図、(b)は全閉状態の要部平面図、(c)は全開状態の要部平面図である。
【図10】第2実施例において全開状態での吊り車とパネルとを連結した状態を示す要部正面図である。
【図11】第3実施例による両引き4枚折戸からなる自動折戸システムの全体図で、(a)は全閉状態の要部正面図、(b)は全閉状態と開閉途中と全開状態の要部平面図である。
【図12】第4実施例による均等5枚折戸からなる自動折戸システムの全体図で、(a)は全閉状態の要部正面図、(b)は全閉状態と開閉途中と全開状態の要部平面図である。
【図13】第5実施例による異形3枚折戸からなる自動折戸システムの全体図で、(a)は全閉状態の要部正面図、(b)は全閉状態の要部平面図、(c)は全開状態の要部平面図である。
【図14】従来例による折戸システムの一部断面正面図である。
【図15】図10の要部平面図である。
【図16】従来例による自動折戸システムの一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。図1に示す本発明の第1実施例による自動折戸システム20は、均等3枚折戸からなる自動折戸システムとしたものである。回転軸側縦枠21と戸当たり側縦枠22と上枠23からなる三方枠体と床面24により区画される開口部に、3枚のパネル25,26,27からなる折戸28を開閉可能に設けたものである。折戸28は等幅の3枚のパネル(図1において左から回転軸側パネル25、中間パネル26、戸当たり側パネル27)を蝶番ユニット29を介してそれぞれ隣り合うパネル同士が回動可能かつ折り畳み可能に連結してある。回転軸側パネル25の回転軸32a,32bは回転軸側縦枠21側に固定してある。
【0011】
蝶番ユニットは、図1、図2(b)に示すように、パネルに固定された断面略半円状の連結用支柱体30を備え、該支柱体30の上下端面に、スペーサ33を介して平歯車31をビス止め(図示せず)により固着し、両平歯車31,31が互いに噛合した状態で8の字状の連結部材34によってパネルの上端及び下端側を互いに連結してなる。これにより、連結されたパネル体(25,26)(26,27)は互いに回動可能かつ折り畳み可能に連結される。8の字状の連結部材34の外周には外周壁34aを設けて両平歯車31,31を覆い、噛み合い部に手指が挟まることがなく安全性が高い。
【0012】
上枠23内には、戸当たり側の端部に駆動モータ40により駆動される歯付きプーリからなる駆動プーリ41、回転軸側の端部に歯付きプーリからなる従動プーリ42を、それぞれ配置し、これら駆動プーリ41と従動プーリ42との間に歯付きベルトからなる索体43を巻き掛けてある。
【0013】
また、上枠23内には、吊り車36が走行(転動)するガイドレール44を上枠23に沿って取り付けてある。このガイドレール44は、図5に示すように、底板45と背面板46と上板47からなる断面コ字状のレール部48と該レール部48の背面上端部から上方に延設された断面逆L字状の背面部49からなる。そして、上板47の先端側の下面に後述する吊り車36の上ガイドローラ50の走行部となる凹溝51を形成し、底板45の背面側の上面52を吊り車36の加重ローラ53の走行面となし、底板45の先端正面壁54を吊り車36の下ガイドローラ55の走行面としてある。なお、凹溝51内の正面側の側壁56が上ガイドローラ50の走行面となる。
底板45の上面と上板47の下面間の距離は加重ローラ53の径に略対応する距離としてある。底板45の正面側への突出幅は上板47のそれより短寸として、吊り車36本体の背面寄りに下ガイドローラ55を取り付けるようにしてある。
レール部48の上板47に形成した凹溝部51には上ガイドローラ50の上方に該上ガイドローラ50のローラ径より大径の孔57を1箇所形成してある。吊り車36が故障した場合等には、該大径の孔57から上ガイドローラ50を取り外せば、吊り車36をレール部48から簡単に取り外すことができ、故障の修理等が容易に行える。
【0014】
吊り車36は、ガイドレール44(レール部48)に沿って走行(転動)する走行部と、歯付きベルト(索体)43の水平移動を水平回転に変換して折戸パネル26に連結するとともに折戸パネル26を吊る吊り部とからなる。
吊り車36の走行部は、吊り車36本体のガイドレール側の側面に加重ローラ53、上面に上ガイドローラ50、下面に下ガイドローラ55を、吊り車36の走行方向の両端部にそれぞれ設けてなり、前後3輪づつの6輪によって、折戸パネル28の重量を支えつつガイドレール44(レール部48)に沿って安定した走行(転動)ができるようにしてある。ガイドレール44のレール部48と吊り車36とで折戸パネル28を安定して吊りつつ安定走行できるので、折戸パネル28の下端を支持するために、折戸パネル28の下端部にガイドローラ、該ガイドローラの走行を案内するガイドレールを床面に設ける必要もない。
【0015】
吊り車36の吊り部は、図2に示すように、歯付きベルト(索体)43の水平移動を連結具60を介して伝える作用板58と該作用板58の水平移動をコイルバネからなる弾性体59を介して伝える丸棒状のラック61、該ラック61の水平移動を水平回転力に変換する歯車列62からなる。該歯車列62は入力側となるラック側ギヤ62a、該ラック側ギヤ62aに噛合する中間ギヤ62b、該中間ギヤ62bに噛合する出力回転ギヤ62cからなり、これら歯車列62を吊り車36の走行方向に配列してなり、吊り車本体内に収容されている。ラック側ギヤ62aの回転軸の下端部にラック61に噛合するラック連結用ギヤ61aを固定してある。
そして、出力回転ギヤ62cの回転軸を連結軸37としてその下端部をパネル26の上端部に固定して折戸パネル26を吊るとともに回転させるようにしてある。図2では、連結軸37は中間パネル26の蝶番31の回転軸を延設したものである。また、中間ギヤ62bの回転軸63はその下端部を戸当たり側パネル27の蝶番31の回転軸としてパネル27を回転させるとともに吊るようにしてある。
歯車列62にして入力側となるラック側ギヤ62aの軸心と出力側となる出力回転ギヤ62cの軸心との距離をかせぐことにより、てこの原理によって出力軸(連結軸37)に大きな回転力を得る。折戸28のパネル数が増して大きな回転力が必要となる場合は、歯車列62の歯車の数を増やして回転トルクを高めるようにする。一方、パネル数が少ない等連結軸37に大きな回転力を必要としない場合は中間ギヤ62bを省略してもよい。
【0016】
図6において、中間ギヤ62bは着脱可能に設けてある。設置の際、ラック61、ラック側ギヤ62a、連結軸37、折戸パネル26,27、出力回転ギヤ62c等の位置決めをした状態で、最後に中間ギヤ62bをラック側ギヤ62aと出力回転ギヤ62cに噛合させて設置状態の調整をすることができる。具体的には、外周部の4箇所に係合ピン64を起立固定した中間ギヤ受け座65を中間ギヤの回転軸63に固定し、中間ギヤ受け座65の係合ピン64に嵌合するピン孔66を形成した中間ギヤ62bを中間ギヤの回転軸63に挿入し、係合ピン64にピン孔66を嵌合させて中間ギヤ62bをラック側ギヤ62aと出力回転ギヤ62cに噛合させる。
なお、ラック連結用ギヤ61aの径及び歯数とラック側ギヤ62aの径及び歯数とは同径及び同数にしてある。また、図2において、中間ギヤ62aと出力回転ギヤ62c、蝶番ユニット部29の蝶番ギヤ31,31の径及び歯数はそれぞれ同径及び同数にしてある。
【0017】
作用板58は吊り車36の走行方向に延び、吊り車36本体の側面に固定された丸棒状のガイド棒67に案内されて吊り車36に対して吊り車36の走行方向に水平移動可能に設けられる。作用板58は、その先端外側に正転押圧ピン68をそのやや手前内側(図2では右側上方)に逆転押圧ピン69を設けてあり、連結軸37の上端部に固定される異形回転板70に作用して連結軸37を正回転又は逆回転させる。
異形回転板70には折戸パネル28の開動作初期時に作用板58の正転押圧ピン68に当接して異形回転板70を正回転させる正転受圧部71と、折戸パネル28の閉動作時に作用板58の逆転押圧ピン69に当接して異形回転板70を逆回転させるテーパー状の逆転受圧部72を設けてある。正転受圧部71は異形回転板70の回転中心73から距離を隔てて設けてあり、正転押圧ピン68により小さな力で押されても異形回転板70(従って、連結軸37)が容易に回転するようにしてある。
【0018】
なお、図2において、符号74はコイルバネを介して作用板の水平移動に連動してラックを水平移動させるラック連動板であり、符号75は吊り車の下面側に固定されラックの水平移動を案内するラックガイドである。また、符号76a,76bは、軸方向の加重を支えるスラストベアリングである。
また、符号77は、連結軸に固定される異形回転板の受け座であり、符号78は、吊り車36の上面側に設けられ、作用板58の水平移動を案内するスライドガイドである。
【0019】
上枠23は、汎用品の無目材を用いることができ、この無目材からなる上枠23内に、ガイドレール44、吊り車36、駆動モータ40、駆動プーリ41、従動プーリ42、歯付きベル43等が収容可能となっている。上枠23の室内側には、カバー79を着脱可能に取付けてある(図5)。駆動モータ40、駆動プーリ41、従動プーリ42、歯付きベル43等も汎用品を用いることができるので、低コスト化が可能である。なお、図5中に示した数値は寸法を示し、単位はmmである。
【0020】
図1中符号80は、戸当たり側パネル27の端部がこれ以上室内側に進入しないようにするためのストッパーである。図中符号81は、コンピュータが内蔵された制御ボックスである。
上記第1実施例では、3枚のパネルは等幅とし、吊り車の連結軸37を中間パネルの蝶番31の回転軸に一致させているので、全開状態において、ガイドレール(上枠)に対して直角に折り畳まれるようになっており、折り畳んだ3枚のパネルは全て外側(室外側)に出っ張り、室内側に出っ張りは生じない。
【0021】
次に、第2実施例による自動折戸システム20は、図9に示すように、2枚折戸からなる自動折戸システムとしたもので、回転軸側パネル25と戸当たり側パネル27との2枚のパネルにより折戸28が構成される。
回転軸側パネル25の回転軸32aの軸心と蝶番の回転中心29a間と、戸当たり側パネル27の蝶番の回転中心29bと連結軸37の回転中心間との距離が同じとなる位置に吊り車36の連結軸37を固定して、全開状態で折戸がガイドレール44(上枠23)と直角方向を向いて折り畳まれるようにする。この第2実施例では、吊り車36の連結軸37はパネル27の中間部に固定されてパネル27を吊るとともに回転させるので、中間ギヤ62aの回転軸を吊り車本体の下方へ延設していない(図10)。
連結軸37の回転方向は第1実施例と同様に、全閉状態から開く場合に平面視右回転(正回転)する方向となるようする。
この実施例では、折り畳まれたパネル28は、開口の外側(室外側)に大部分が出っ張り、内側(室内側)に少し出っ張ることになる。その他の構成は第1実施例において述べたものと同じであるため、同符号を付して説明を省略する。
【0022】
第3実施例による自動折戸システム20は、図11に示すように、2枚のパネルによる折戸を左右に一対配置してなる自動折戸システムとしたもので、回転軸側パネル25と戸当たり側パネル27との2枚のパネルにより構成される折戸28が左右に一対対称に配置されてなる。
左側の2枚折戸では、第2実施例と同様、下側の歯付きベルト43に固定した連結具60を介して吊り車36に連結してある。一方、右側の2枚折戸では、上側の歯付きベルト43に固定した連結具60を介して吊り車36に連結してあり、折戸の連結軸37の回転方向は全閉状態から開く場合に平面視左回転(正回転)する方向となるようにしてある。その他の構成は第1〜2実施例において述べたものと同じであるため、同符号を付して説明を省略する。
【0023】
第4実施例による自動折戸システム20は、図12に示すように、均等5枚折戸からなる自動折戸システムとしたもので、回転軸側パネル25と戸当たり側パネル27との間に3枚の中間パネル26a,26b,26cを連結した計5枚のパネルにより折戸28が構成される。吊り車36の連結軸37は、第1実施例と同様、中間パネル26cの蝶番31の回転軸を延設したものである。
5枚折戸28を回転軸側パネル25の回転軸部32aと中間パネル26cの連結軸部37,戸当たり側パネル27の回転軸部63だけで吊るのは、中間パネル26a,26bが不安定となるので、中間パネル26a,26bの上端側の蝶番ユニット部29を補助吊り車82で吊るようにしてある。この補助吊り車82は、中間パネル26a,26bの蝶番ユニット29のそれぞれの蝶番31,31の回転軸83,83を上方に延設して、補助吊り車82本体に回転自在に支持するようにしたものである。従って、該補助吊り車82には、歯車列は存在しない。補助吊り車82の走行部は、第1実施例と同様に前後3輪づつの6輪のローラによってガイドレール44(レール部48)に沿って走行できるようになっている。
この実施例では、折り畳んだ5枚のパネルは全て外側(室外側)(図12(b)において上方)に出っ張ることになり、室内側に出っ張りは生じない。その他の構成は第1〜3実施例において述べたものと同じであるため、同符号を付して説明を省略する。
【0024】
第5実施例による自動折戸システム20は、図13に示すように、異形3枚折戸からなる自動折戸システムとしたもので、第1実施例と同様、回転軸側パネル25と中間パネル26と戸当たり側パネル27との3枚のパネルにより折戸28が構成されるが、回転軸側パネル25の幅を他の2枚のパネル26,27の半分としてある。
吊り車36の連結軸37は、戸当たり側パネル27の幅方向中央の上端部に連結してある。また、補助吊り車82の回転軸83は、中間パネル26の幅方向中央の上端部に連結してある。
この実施例では、折り畳んだパネルは、開口の外側(室外側)と内側(室内側)に同じ距離だけ出っ張ることになる(図13(c))。その他の構成は第1〜4実施例において述べたものと同じであるため、同符号を付して説明を省略する。
【0025】
次に、第1実施例による自動折戸システム20における動作について図1,図2,図7,図8を参照しつつ説明する。折戸パネル28が全閉状態(図1(a)(b))において、人が近づくと、これが検知されて駆動モータ40のスイッチがオンし、駆動プーリ41が正回転して歯付きベルト43が矢印方向に水平移動する。これに伴い歯付きベルト43に固定された連結具60を介して吊り車36の作用板58も水平移動する。作用板58が水平移動すると、作用板58の正転押圧ピン68が連結軸37の上端部に固定された異形回転板70の正転受圧部71に当接して押圧し異形回転板70を正回転(平面視右回転)させる(図7)。このとき、異形回転板70の回転中心73と正転受圧部71とは距離を隔てているので、小さな押圧力でも容易に回転させることができる。従って、連結軸37も容易に回転し該連結軸37に固定した折戸パネル26も容易に回転し、これに伴って折戸パネル26,27も容易に屈曲を開始することとなる(図1(c)の一点鎖線)。
さらに歯付きベルト43が水平移動することにより、作用板58の正転押圧ピン68と異形回転板70の正転受圧部71との係合が解除されても、作用板58にコイルバネ59を介して連動するラック61が水平移動する。このラック61の水平移動によりラック61に噛合するラック連結用ギヤ61aを介してラック側ギヤ62aが回転(図2(a)において右回転)し、中間ギヤ62bを介して出力回転ギヤ62cが回転(図2(a)において右回転)する。この出力回転ギヤ62cの回転軸が連結軸37となって該連結軸37が固定された折戸パネル26を右回転させることになる。
こうして、ベルト43の水平移動に伴って吊り車36も水平移動しつつラック61、歯車列62を介して連結軸37が右回転して折戸パネル26,27を屈曲させながら左に移動し、図1(c)に示す状態を経て、同図(d)に示すように全開状態となる。この全開状態では、吊り車36は図8に示す状態となり、異形回転板70は図2(a)の全閉状態から90°右回転した状態となる。この全開状態に達すると、駆動モータ40のスイッチが一時的にオフして止まり、全開状態を保持する。
全開状態から全閉状態に移行するには、上記と逆の動作となる。即ち、全開状態から所定時間経過するとスイッチオンにより駆動プーリ41が逆回転して歯付きベルト43が逆方向に水平移動を開始し、吊り車36も同方向に移動を始め、連結軸37も逆方向に回転を始め、図1(d)の状態から、同図(c)を経て同図(a)(b)に示すように全閉状態に戻る。閉状態に戻ると駆動モータ40のスイッチがオフして止まる。これらの制御はコンピュータ制御により行われる。
上記の閉動作において、作用板58の逆転押圧ピン69が異形回転板70の逆転受圧部72に当接してテーパー状逆転受圧部72を押圧し異形回転板70を逆回転させる。特に、閉動作の終期において、逆転押圧ピン69がテーパー状の逆転受圧部72を押圧することにより、全閉状態を確実に保持できる。
【0026】
次に、第2実施例による自動折戸システム20における動作について、吊り車36の連結軸37がパネルの蝶番の回転中心ではなくパネルの中間部に固定されるが、基本的動作は上記第1実施例における場合と同じである。
第3実施例による自動折戸システム20における動作について、図11を参照しつつ説明する。駆動モータ40のスイッチがオンし、駆動プーリ41が正回転して歯付きベルト43が矢印方向に水平移動すると、これに連動して、左側の折戸28では吊り車36が左方へ水平移動しつつ連結軸37が平面視右回転して折戸が屈曲しながら左へ移動し全開状態に至る。一方、右側の折戸28では吊り車36が右方へ水平移動しつつ連結軸37が平面視左回転して折戸が屈曲しながら右へ移動し全開状態に至る。その他の基本的動作は上記第1実施例、第2実施例における場合と同じである。
第4実施例による自動折戸システム20における動作について、図12を参照しつつ説明する。均等5枚折戸からなり、中間パネル26a,26bの蝶番ユニット部29を補助吊り車82で吊る構造となっている。駆動モータ40のスイッチがオンし、駆動プーリ41が正回転して歯付きベルト43が矢印方向に水平移動すると、これに連動して、吊り車36が左方へ水平移動しつつ連結軸37が平面視右回転して折戸が屈曲しながら左へ移動し開いていく。このとき、補助吊り車82も連動して左方に水平移動する。そして、全開状態に至る。その他の基本的動作は上記第1実施例における場合と同じである。
第5実施例による自動折戸システム20における動作について、図13を参照しつつ説明する。異形3枚折戸からなり、中間パネル26の中央部を補助吊り車82で吊る構造となっている。基本的動作は上記第1実施例及び第4実施例における場合と同じである。
なお、上記した第1実施例から第5実施例は例示であって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0027】
20 自動折戸システム
21 回転軸側縦枠
22 戸当たり側縦枠
23 上枠
24 床面
25 回転軸側パネル
26,26a,26b,26c 中間パネル
27 戸当たり側パネル
28 折戸
29 蝶番ユニット
30 連結用支柱体
31 平歯車
32a,32b 回転軸
33 スペーサ
34 連結部材
34a 外周壁
36 吊り車
37 連結軸
40 駆動モータ
41 駆動プーリ
42 従動プーリ
43 索体(歯付きベルト)
44 ガイドレール
45 底板
46 背面板
47 上板
48 レール部
49 背面部
50 上ガイドローラ
51 凹溝
52 上面
53 加重ローラ
54 先端正面壁
55 下ガイドローラ
56 側壁
57 孔
58 作用板
59 弾性体(バネ)
60 連結具
61 ラック
61a ラック連結用ギヤ
62 歯車列
62a ラック側ギヤ
62b 中間ギヤ
62c 出力回転ギヤ
63 中間ギヤの回転軸
64 係合ピン
65 中間ギヤ受け座
66 ピン孔
67 ガイド棒
68 正転押圧ピン
69 逆転押圧ピン
70 異形回転板
71 正転受圧部
72 逆転受圧部
73 回転中心
74 ラック連動板
75 ラックガイド
76a,76b スラストベアリング
77 異形回転板の受け座
78 スライドガイド
79 カバー
80 ストッパー
81 制御ボックス
82 補助吊り車
83 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠と一対の縦枠からなる三方枠体と床面とにより形成される開口に、蝶番ユニットを介して互いに回動可能かつ折り畳み可能に連結された折戸パネルを開閉可能に取り付け、前記上枠内に設けたガイドレールに沿って走行する折戸パネルの吊り車であって、前記上枠内に設けた索体の水平移動に連動して前記ガイドレールに沿って走行する走行部と、水平移動を水平回転に変換して折戸パネルを回転させるとともに該折戸パネルを吊る連結軸を有する吊り部とを有し、該吊り部は前記索体の水平移動を連結具を介して伝えるとともに前記連結軸に固定される異形回転板に作用して前記連結軸を回転させる作用板と該作用板の水平移動を弾性体を介して伝えるラックと該ラックの水平移動を水平回転力に変換する歯車列を備え、該歯車列は少なくとも入力側となるラック側ギヤと出力側となる出力回転ギヤからなる歯車列を吊り車の走行方向に配列してなり、前記出力回転ギヤの回転軸を前記連結軸として該連結軸の下端側を折戸パネルの上端部に固定して該折戸パネルを吊るとともに回転させることを特徴とする折戸パネルの吊り車。
【請求項2】
作用板には正転押圧部と逆転押圧部とを設け、異形回転板には折戸パネルの開動作初期時に前記正転押圧部に当接して異形回転板を正転させる正転受圧部と折戸パネルの閉動作時に前記逆転押圧部に当接して異形回転板を逆転させる逆転受圧部とを設けてなる請求項1に記載の折戸パネルの吊り車。
【請求項3】
上枠と一対の縦枠からなる三方枠体と床面とにより形成される開口に、蝶番ユニットを介して互いに回動可能かつ折り畳み可能に連結された折戸パネルを開閉可能に取り付けてなる折戸システムであって、前記上枠内の一端部に駆動エンジンにより駆動される駆動プーリを他端部に従動プーリをそれぞれ配置し、これら駆動プーリと従動プーリ間に索体を巻き掛け、前記上枠内に上枠に沿って延びるガイドレールを設け、該ガイドレールに沿って走行する吊り車を設け、この吊り車は連結具を介して前記索体に連結され、前記索体の水平移動に連動して前記ガイドレールに沿って走行する走行部と、水平移動を水平回転に変換して折戸パネルを回転させるとともに該折戸パネルを吊る連結軸を有する吊り部とを有し、該吊り車の吊り部は前記索体の水平移動を連結具を介して伝えるとともに前記連結軸に固定される異形回転板に作用して前記連結軸を回転させる作用板と該作用板の水平移動を弾性体を介して伝えるラックと該ラックの水平移動を水平回転力に変換する歯車列からなり、該歯車列は少なくとも入力側となるラック側ギヤと出力側となる出力回転ギヤからなる歯車列を吊り車の走行方向に配列してなり、前記出力回転ギヤの回転軸を連結軸として該連結軸の下端側を折戸パネルの上端部に固定して該折戸パネルを吊るとともに回転させることを特徴とする自動折戸システム。
【請求項4】
作用板には正転押圧部と逆転押圧部とを設け、異形回転板には折戸パネルの開動作初期時に前記正転押圧部に当接して異形回転板を正転させる正転受圧部と折戸パネルの閉動作時に前記逆転押圧部に当接して異形回転板を逆転させる逆転受圧部とを設けてなる請求項3に記載の自動折戸システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−246713(P2012−246713A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120913(P2011−120913)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(393009493)
【Fターム(参考)】