説明

押出ラミネート積層体

【課題】 帯電防止効果が大幅に改良され、かつ基材との接着性を維持した積層体を提供する。
【解決手段】 少なくとも1層以上の基材と以下の(A)〜(D)を含むエチレン系樹脂組成物からなる表面層から構成されることを特徴とする積層体を用いる。
(A)密度が880〜940kg/mの範囲であり、メルトマスフローレートが1〜50g/10分の範囲であるエチレン系重合体(A)100重量部、(B)モノグリセリン脂肪酸エステル0.03〜0.7重量部、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.03〜0.7重量部、(D)アルキルスルフォン酸金属塩0.01〜0.5重量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止性能に優れた積層体に関するものである。さらに詳しくは、帯電防止性能に優れ、ヒートシール強度の経時低下がなく、更にスリップ性が良好な積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
押出ラミネート法は、特に包装材料の多機能化が可能であるため、食品や医療薬品などの包装材料を提供する方法として広く利用されている。押出ラミネート法に用いられる材料としては高圧法低密度ポリエチレン(以下、LDPEと記す。)が、成形性に優れていることなどの理由から広く用いられている。しかしながら、LDPE等のポリエチレン系樹脂フィルムは、摩擦等により表面に静電気を帯び、フィルム表面に粉体や埃が付着し易くなるという欠点がある。
【0003】
この欠点を改良するため、様々な提案がなされている。
【0004】
オレフィン系樹脂と、帯電防止剤としてポリオキシエチレンアルキルアミン、高級脂肪酸グリセリンエステル及び高級脂肪族アルコールを配合した押出ラミネート成形用オレフィン系樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
また基材の少なくとも片面に密度が0.925g/cm未満の低密度ポリエチレン層並びに密度が0.925g/cm未満の低密度ポリエチレン層に帯電防止剤としてポリオキシエチレンアルキルアミン、高級脂肪酸グリセリンエステル及び高級脂肪族アルコールを配合してなるポリエチレン樹脂組成物層を順次押出ラミネートされてなることを特徴とする薬包材用積層体が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、これら方法によれば帯電防止剤として用いられているポリオキシエチレンアルキルアミンと高級脂肪酸グリセリンエステルとがポリエチレン樹脂組成物ペレットの表面でエステル交換反応し、帯電防止性に乏しいグリセリン、グリセリン高級脂肪酸ジエステル、グリセリン高級脂肪酸トリエステル、アルキルアミンの脂肪酸エステルに変化するため、帯電防止性能が劣り問題となっていた。
【0007】
このような問題を解決するため、エチレン系重合体、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸アミドからなる組成物が提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、該組成物を用いた積層体は、帯電防止性能が不十分であり、一部の基材に貼り合せた場合には帯電防止性能が発現しないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−141932号公報
【特許文献2】特開2002−212350号広報
【特許文献3】特開平4−214343号公報
【特許文献4】特開2005−320357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、帯電防止効果が大幅に改良され、かつ基材との接着性を維持した積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のエチレン系重合体組成物を押出ラミネート成形した積層体を用いることにより、帯電防止性能を大幅に改良できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、少なくとも1層以上の基材と以下の(A)〜(D)を含むエチレン系樹脂組成物からなる表面層から構成されることを特徴とする積層体に関するものである。
(A)JIS K6922−1(1997年)で測定した密度が880〜940kg/mの範囲であり、JIS K6922−1(1997年)によるメルトマスフローレートが1〜50g/10分の範囲であるエチレン系重合体(A)100重量部
(B)下記一般式(I)で表されるモノグリセリン脂肪酸エステル0.03〜0.7重量部、
【0012】
【化1】

(式中、Rは炭素数が8〜22である直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。)
(C)下記一般式(II)で表されるポリグリセリン脂肪酸エステル0.03〜0.7重量部、
【0013】
【化2】

(式中、Rは炭素数が8〜22である直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。nはグリセリンの重合度を表し、1〜11の値をとる。)
(D)アルキルスルフォン酸金属塩0.01〜0.5重量部
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明を構成するエチレン系重合体は、エチレンの単独重合体、及びエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルなどのビニルエステルとの共重合体のことを示す。例えば、低密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、これらエチレン系重合体は、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0015】
これらの中で、低密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体が、コストパフォーマンス、ヒートシール強度等の点で好適である。
【0016】
このようなエチレン系重合体は、一般に市販されているエチレン系重合体から本発明の範囲において便宜選択され、その重合方法は、特に限定されるものではない。例えば、高圧法低密度ポリエチレンやエチレン・酢酸ビニル共重合体等の場合、高圧法によるラジカル重合法を挙げることができ、エチレン・1−ブテン共重合体やエチレン・1−へキセン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体の場合、チーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒を用いた気相法、溶液法、高圧法等の重合法を挙げることができる。
【0017】
本発明を構成するエチレン系重合体は、JIS K6922−1(1997年)で測定した密度が880〜930kg/mの範囲にあると得られたフィルム、積層体のヒートシール性、耐ブロッキングに優れるため好ましい。
【0018】
また、このエチレン系重合体は、JIS K6922−1(1997年)によるメルトマスフローレート(以下、MFRと記す場合がある。)が1〜50g/10分の範囲にあるものがフィルムや積層体の成形性に優れるため好ましく、さらに好ましくは2〜30g/10分の範囲にある。
【0019】
本発明を構成する(B)モノグリセリン脂肪酸エステルは、下記一般式(I)で表され、RCOOHで表される脂肪酸とグリセリンのエステル化反応により得られる化合物である。
【0020】
【化3】

(式中、Rは炭素数が8〜22である直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。)
モノグリセリン脂肪酸エステルを構成するRの炭素数が8未満及び22を超える場合、得られた積層体の帯電防止性が劣るため好ましくない。該化合物としては、例えばモノグリセリンラウリン酸エステル、モノグリセリンパルミチン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸エステル、モノグリセリンオレイン酸エステル、モノグリセリンリノール酸エステル等が挙げられる。これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。該グリセリン脂肪酸エステルとして、リケマールP−100、S−100(理研ビタミン製)、レオドールMS−50(花王製)、モノグリD、モノグリM、モノグリI(日本油脂製)等が市販されている。
【0021】
本発明を構成する(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、一般式(II)で表され、RCOOHで表される脂肪酸とポリグリセリンのエステル化反応により得られる化合物である。
【0022】
【化4】

(式中、Rは炭素数が8〜22である直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。nはグリセリンの重合度を表し、1〜11の値をとる。)
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するRの炭素数が8未満及び22を超える場合、得られた積層体の帯電防止性が劣るため好ましくない。またグリセリンの重合度を表すnが0及び11を超える場合、得られた積層体の帯電防止性が劣るため好ましくない。該化合物としては、例えばジグリセリンラウリン酸エステル、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル、ジグリセリンリノール酸エステル等のジグリセリン脂肪酸エステル類;トリグリセリンラウリン酸エステル、トリグリセリンパルミチン酸エステル、トリグリセリンステアリン酸エステル、トリグリセリンオレイン酸エステル、トリグリセリンリノール酸エステル等のトリグリセリン脂肪酸エステル類;ヘキサグリセリンステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンオレイン酸エステル、ペンタグリセリンステアリン酸エステル、ペンタグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステル等が挙げられ、これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。該ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、リケマールL−71D、S−71D、O−71D、C−71D(以上、理研ビタミン製)、ユニグリGO−102、GL−106、GS−106(以上、日本油脂製)、サンソフトQ−18D、Q−18F、Q−17F、Q−18S、Q−17S、Q−12S、A−181C(以上、太陽化学製)等が市販されている。
【0023】
これらの中では、ジグリセリン脂肪酸エステルが帯電防止性能やヒートシール性の点で好適である。
【0024】
本発明を構成するアルキルスルフォン酸金属塩は、一般に炭素数8〜22の直鎖もしくは分岐状のアルキル基又はアルケニル基を有するスルフォン酸を金属塩基で中和した化合物であり、該アルキルスルフォン酸金属塩を構成する金属は該アルキルスルフォン酸金属塩を構成ことが可能である金属であればいかなるものでもよく、例えばLi,Na,Kなどのアルカリ金属、Ba,Mg,Caなどのアルカリ土類金属、及びZn,Alなどの金属が挙げられ、中でも得られる積層体が高い帯電防止性能を有することから、金属としてNa,Kを有するアルキルスルフォン酸金属塩が好ましい。該アルキルスルフォン酸金属塩としては、例えばラウリルスルフォン酸Na、ラウリルスルフォン酸K、ミリスチルスルフォン酸Na、ミリスチルスルフォン酸K、パルミチルスルフォン酸Na、パルミチルスルフォン酸Kなどが挙げられる。これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。具体例としてはアトマー190(I・C・I・ジャパン社製)、デノン−1886(丸菱油化社製)、ダスパー802D,702D(ミヨシ油脂社製)などが市販されている。
【0025】
本発明のエチレン系樹脂組成物を構成する(A)エチレン系重合体と(B)モノグリセリン脂肪酸エステル、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(D)アルキルスルフォン酸金属塩の配合割合は、(A)エチレン系重合体100重量部に対し、(B)モノグリセリン脂肪酸エステル0.03〜0.7重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部、最も好ましくは0.15〜0.4重量部、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.03〜0.7部、好ましくは0.1〜0.5重量部、最も好ましくは0.15〜0.4重量部、(D)アルキルスルフォン酸金属塩0.01〜0.5重量部、好ましくは0.03〜0.4重量部、最も好ましくは0.05〜0.2重量部である。
【0026】
(B)モノグリセリン脂肪酸エステルの割合が0.03重量部未満の場合、得られたフィルムや積層体の帯電防止効果が劣るため好ましくなく、0.7重量部を超える場合は得られた積層体表面が白化するため好ましくない。
【0027】
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの割合が0.03重量部未満の場合、得られた積層体の帯電防止効果が劣るため好ましくなく、0.7重量部を超える場合は得られた積層体表面が白化するため好ましくない。
【0028】
(D)アルキルスルフォン酸金属塩の割合が0.01重量部未満の場合、得られた積層体の帯電防止効果が劣るため好ましくなく、0.5重量部を超える場合は得られた積層体に水分発泡による穴が生じるため好ましくない。
【0029】
本発明のエチレン系樹脂組成物には、一般式(III)で表される(E)脂肪酸アミドを含むと得られた積層体のスリップ性に優れるため好ましい。
【0030】
【化5】

(式中、Rは炭素数が11〜23である直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。)
該脂肪酸アミドを構成するRの炭素数が11〜23の範囲にあると、押出成形に供し得られた積層体のスリップ性が特に優れるため好ましい。このような脂肪酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が例示され、エルカ酸アミドが帯電防止性能を損なわないため最も好ましい。これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用でき、また脂肪酸ビスアミドなどとの併用も可能である。該脂肪酸アミドとしては、アルフローP−10、E−10、S−10(以上、日本油脂製)等が市販されている。
【0031】
また、エチレン系樹脂組成物は、必要に応じて酸化防止剤、中和剤、ブロッキング防止剤等、通常ポリオレフインに使用される添加剤を添加したものでもかまわない。
【0032】
本発明のエチレン系樹脂組成物の製造は、特に限定するものではないが、通常用いられる樹脂の混合装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、回転ロールなどの溶融混練装置、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーなどが挙げられる。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はオレフィン系重合体の融点〜350℃程度が好ましい。溶融混合した後、冷却しペレット化することができる。
【0033】
本発明の積層体を構成する基材としては合成高分子重合体フィルム及びシート、金属箔、紙類、セロファン等が挙げられる。合成高分子重合体フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等を例示することができる。これら高分子重合体フィルム及びシートはさらにアルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着されたものでもよい。また、これら高分子重合体フィルム及びシートはさらにウレタン系インキ等を用い印刷されたものでもよい。これら基材は、単独で使用することもできるが、2種類以上を積層したものを基材とすることもできる。薬などの粉体包装材料としては、基材としてポリエステルを少なくとも1層以上含む基材であることが耐熱性に優れるため最も好ましい。
【0034】
本発明を構成するエチレン系樹脂組成物は、押出ラミネート成形法、共押出ラミネート法等の各種成形法により基材にラミネートし、本発明の押出ラミネート用樹脂組成物を基材の少なくとも片側の表面に有する積層体とすることができる。その際、基材とエチレン系樹脂組成物からなる表面層以外に他の層を含んでいても良い。具体的には、基材に直接エチレン系樹脂組成物を押出ラミネートする方法、基材にアンカーコート剤を介しエチレン系樹脂組成物を押出ラミネートする方法、基材に接着層としてポリエチレンを押出ラミネートした後エチレン系樹脂組成物を押出ラミネートする方法、基材にアンカーコート剤を介し接着層としてポリエチレンを押出ラミネートした後エチレン系樹脂組成物を押出ラミネートする方法、基材にアンカーコート剤を介し接着層としてポリエチレンとエチレン系樹脂組成物を順次押出ラミネートするタンデムラミネート法、基材にポリエチレンとエチレン系樹脂組成物を共押出ラミネートする方法などが例示される。
【0035】
本発明を構成するエチレン系樹脂組成物層の厚みは、特に限定するものではないが、5〜100μmであることが、ヒートシール強度の点で好ましい。
【0036】
本発明を構成するエチレン系樹脂組成物を押出ラミネート加工に供する際、基材との良好な接着性を得るため、200℃〜350℃の温度でダイより押出すことが好ましい。
【0037】
また基材との接着性を高めるため、基材の接着面に対してアンカーコート剤処理、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理などの公知の表面処理を施してもよい。また、基材とエチレン系重合体を予め貼り合せたものに本発明を構成するエチレン系樹脂組成物層を貼り合わせてもよい。
【0038】
アンカーコート剤としては、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系などが例示される。その塗布量としては、アンカーコート剤固形分として10〜200mg/mが帯電防止性能の経時悪化が少ないため好ましく、10〜50mg/mが最も好ましい。
【0039】
コロナ放電処理は、プラスチックフィルムやシート表面の連続処理技術として広く使用されているものであり、コロナ放電処理機により発生したコロナ雰囲気にフィルムを通過させることにより行われる。コロナ放電密度として、1〜100W・分/mであることが被着体との接着性に優れ好ましい。
【0040】
フレーム処理は、天然ガスやプロパン等を燃焼させたときに生じる火炎にフィルム表面を接することで処理が行われる。
【0041】
プラズマ処理は、アルゴン、ヘリウム、ネオン、水素、酸素、空気等の単体又は混合気体をプラズマジェットで電子的に励起せしめた後、帯電粒子を除去し、電気的に中性とした励起不活性ガスをフィルム表面に吹き付けることにより行われる。
【0042】
本発明の積層体は、表面層の表面同士の動摩擦係数がJIS K7125(1998年)により測定し0.01〜0.9であり、かつ表面層の表面固有抵抗値が加電圧500Vで1014Ω以下であれば、薬充填工程において積層体の蛇行や積層体へのシワ発生、更に薬の付着によるシール不良を抑制することができるため好ましい。
【0043】
本発明の押出ラミネート用樹脂組成物は、薬等の医薬品包装やスナック菓子、削り節、パン粉、小麦粉、粉末調味料等の粉末乾燥食品など広範囲にわたる包装用積層体に用いることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
以下に、評価方法を示す。
【0046】
(1)メルトマスフローレート(MFR)
JIS K6922−1(1997年)に準拠。
【0047】
(2)密度
JIS K6922−1(1997年)に準拠。
【0048】
(3)帯電防止性
実施例及び比較例により得られた積層体の表面層について、アドバンテスト社製TR8601とTR−42を用い、23℃,50%RHの環境下で、加電圧500kVにおける1分後の積層体表面の固有抵抗値を測定した。
【0049】
(4)ヒートシール強度
実施例及び比較例により得られた積層体を40℃の温度で14日間放置した後、表面層同士を重ね合わせ、圧力0.2MPa、時間1秒、シール温度140℃の条件で、ヒートシールバーにより押さえてヒートシールを行った。そして、該ヒートシール部分を、引張試験機(島津製作所(株)製、商品名:オートグラフDCS500)を用い、サンプル巾15mm、剥離速度300mm/分、180度剥離での剥離強度を測定し、該剥離強度をヒートシール強度とした。
【0050】
(5)スリップ性
実施例及び比較例により得られた積層体の表面層同士の動摩擦係数(μk)を、JIS K7125(1998年)に準拠し求めた。
【0051】
(6)薬の充填適性
実施例及び比較例により得られた積層体を40℃の温度で14日間放置した後、表面層同士を重ね合わせ、圧力0.2MPa、時間1秒、シール温度140℃の条件で、長さ10cm、巾8cmの三方袋ができるように三方シールを行い、薬包紙を得た。本薬包紙に粉薬として胃腸薬((株)太田胃散製、商品名:太田胃散)を2g充填し、積層体層III面に粉薬が付着するかどうかを確認した。
【0052】
実施例1
エチレン系重合体(A)として、MFRが13g/10分、密度が919kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(A1)(東ソー(株)製、商品名:ペトロセン212)を100重量部、帯電防止剤(B)を構成する(B−1)グリセリン脂肪酸エステルとしてグリセリンステアリン酸エステル(理研ビタミン(株)製、商品名:リケマールS−100、以下、B−1と記す場合がある。)を0.2重量部、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてジグリセリンステアリン酸エステル(理研ビタミン(株)製、商品名:リケマールS−71D、以下、C−1と記す場合がある。)を0.2重量部、(D)アルキルスルフォン酸金属塩としてアルキルスルフォン酸ナトリウム(ミヨシ油脂(株)製、商品名:ダスパー802D、以下、D−1と記す場合がある。)を0.1重量部、スリップ剤としてエルカ酸アミド(日本油脂(株)製、商品名:アルフローP−10、以下、Eー1と記す場合がある。)を0.1重量部になるよう配合し、単軸押出機にて溶融混練しエチレン系樹脂組成物のペレットを得た。
【0053】
得られたペレットを25mmΦのスクリューを有する押出ラミネーター(プラコー(株)製)の押出機へ供給し、280℃の温度でTダイより押出して溶融フィルムとし、予め押出ラミネート成形法により厚さ25μmのLDPE(東ソー(株)製 商品名ペトロセン203)と基材であるポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製、商品名エステルフィルムE−5100、厚み12μm)とがラミネートされた積層体のLDPE側上に、表面層として上記溶融フィルムが15μmの厚さになるようラミネートし、積層体を得た。得られた積層体の表面層にポリエステルフィルムを常温で貼り合わせた後、23℃の雰囲気にて7日間放置した。帯電防止性評価の直前に、常温で貼り合わせたポリエステルフィルムを剥がし、試料とした。評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

実施例2
アルキルスルフォン酸金属塩(D−1)を0.2重量部とした以外は実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0055】
実施例3
高圧法低密度ポリエチレン(A1)を100重量部、モノグリセリン脂肪酸エステル(B−1)を0.1重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(C−1)を0.1重量部、アルキルスルフォン酸金属塩(D−1)を0.2重量部、スリップ剤(E−1)を0.1重量部とした以外は実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0056】
実施例4
高圧法低密度ポリエチレン(A1)を100重量部、モノグリセリン脂肪酸エステル(B−1)を0.4重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(C−1)を0.4重量部、アルキルスルフォン酸金属塩(D−1)を0.1重量部とした以外は実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0057】
実施例5
高圧法低密度ポリエチレン(A1)の代わりにエチレン・1−ヘキセン共重合体(東ソー(株)製、ニポロンZ TZ420、MFR=10g/10分、密度=913kg/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0058】
比較例1
高圧法低密度ポリエチレン(A1)を100重量部、モノグリセリン脂肪酸エステル(B−1)を0.25重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(C−1)を0.25重量部、スリップ剤(E−1)を0.1重量部とし、アルキルスルフォン酸金属塩を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表2に示すが帯電防止性に劣っていた。
【0059】
【表2】

比較例2
高圧法低密度ポリエチレン(A1)を100重量部、モノグリセリン脂肪酸エステル(B−1)を0.2重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(C−1)を0.2重量部、アルキルスルフォン酸金属塩(D−1)を0.6重量部、スリップ剤(E−1)を0.1重量部とした以外は実施例1と同様にして積層体の製造を試みたが、押出したフィルムが発泡し、積層体を得ることができなかった。
【0060】
比較例3
高圧法低密度ポリエチレン(A1)を100重量部、モノグリセリン脂肪酸エステル(B−1)を0.01重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(C−1)を0.01重量部、アルキルスルフォン酸金属塩(D−1)を0.4重量部、スリップ剤(E−1)を0.1重量部とした以外は実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表2に示すが帯電防止性に劣っていた。
【0061】
比較例4
高圧法低密度ポリエチレン(A1)を100重量部、モノグリセリン脂肪酸エステル(B−1)を1重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(C−1)を1重量部、アルキルスルフォン酸金属塩(D−1)を0.1重量部、スリップ剤(E−1)を0.1重量部とした以外は実施例1と同様にして積層体の製造を試みたが、押出不良が発生し積層体を得ることができなかった。なお、エチレン系樹脂組成物は二軸押出機(東洋精機製、ラボプラストミル)にて製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層以上の基材と以下の(A)〜(D)を含むエチレン系樹脂組成物からなる表面層から構成されることを特徴とする押出ラミネート積層体。
(A)JIS K6922−1(1997年)で測定した密度が880〜940kg/mの範囲であり、JIS K6922−1(1997年)によるメルトマスフローレートが1〜50g/10分の範囲であるエチレン系重合体(A)100重量部
(B)下記一般式(I)で表されるモノグリセリン脂肪酸エステル0.03〜0.7重量部、
【化1】

(式中、Rは炭素数が8〜22である直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。)
(C)下記一般式(II)で表されるポリグリセリン脂肪酸エステル0.03〜0.7重量部、
【化2】

(式中、Rは炭素数が8〜22である直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。nはグリセリンの重合度を表し、1〜11の値をとる。)
(D)アルキルスルフォン酸金属塩0.01〜0.5重量部
【請求項2】
(D)アルキルスルフォン酸金属塩が、アルキルスルフォン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
表面層の表面同士の動摩擦係数がJIS K7125(1998年)により測定し0.01〜0.9であり、かつラミネート層の表面固有抵抗値が加電圧500Vで1014Ω以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
基材がポリエステルを少なくとも1層以上有する基材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の積層体からなることを特徴とする薬包紙。

【公開番号】特開2011−161666(P2011−161666A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24043(P2010−24043)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】