説明

押出発泡成形用樹脂組成物および押出発泡成形体

【課題】独立気泡率の高い押出発泡成形体の製造に適した押出発泡成形用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】以下の成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する押出発泡成形用樹脂組成物。
(A):エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、メルトフローレート(MFR)が0.01〜10g/10分であり、密度が930Kg/m未満であり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン系共重合体。
(B):密度が915〜925Kg/mである高圧法低密度ポリエチレン
(C):密度が930Kg/m以上であるポリエチレン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出発泡成形用樹脂組成物および押出発泡成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直鎖状低密度ポリエチレンや高圧法低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂からなる発泡体は、柔軟性、断熱性に優れるため、緩衝材あるいは断熱材として利用されている。たとえば特許文献1には、分子量分布が5以上であって、スウェル比が1.15〜1.45であるエチレン−α−オレフィン共重合体からなる押出発泡成形体が、外観および機械強度に優れることが記載されている。しかしながら、エチレン−α−オレフィン共重合体を用いて得られる発泡成形体において、さらなる独立気泡率の向上が求められることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−255988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いて得られる押出発泡成形体に比べて、独立気泡率の高い押出発泡成形体の製造に適した押出発泡成形用樹脂組成物、および独立気泡率の高い押出発泡成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、以下の成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する押出発泡成形用樹脂組成物であって、成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%として、成分(A)の含有量が90〜20重量%であり、成分(B)の含有量が10〜80重量%であり、さらに成分(A)と成分(B)の合計量を100重量部として、成分(C)の含有量が0.5〜5重量部である押出発泡成形用樹脂組成物である。
(A):エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、メルトフローレート(MFR)が0.01〜10g/10分であり、密度が930Kg/m未満であり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン系共重合体。
(B):密度が915〜925Kg/mである高圧法低密度ポリエチレン
(C):密度が930Kg/m以上であるポリエチレン
さらに本発明は、前記押出発泡成形用樹脂組成物からなる押出発泡成形体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、独立気泡率の高い押出発泡成形体を製造することができる。また、本発明の押出発泡成形体は、独立気泡率が高い発泡成形体である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体であり、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体である。炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があげられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。また、上記の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0008】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等があげられ、好ましくはエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体である。
【0009】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量を100重量%とするとき、通常50〜99重量%である。炭素原子数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量を100重量%とするとき、通常1〜50重量%である。
【0010】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は長鎖分岐を有するものであり、このようなエチレン−α−オレフィン共重合体は、流動の活性化エネルギー(Ea)が高い。本発明における成分(A)の流動の活性化エネルギーは、通常40kJ/mol以上であり、より独立気泡率の高い発泡体が得られることから、好ましくは45kJ/mol以上であり、より好ましくは50kJ/mol以上であり、さらに好ましくは60kJ/mol以上である。また、より引張破壊強度および引張破壊伸びに優れる架橋発泡体を得るためには、該Eaは、好ましくは100kJ/mol以下であり、より好ましくは90kJ/mol以下である。
【0011】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea)は、温度−時間重ね合わせ原理に基づいて、190℃での溶融複素粘度(単位はPa・secである。)の角周波数(単位:rad/sec)依存性を示すマスターカーブを作成する際のシフトファクター(aT)からアレニウス型方程式により算出される数値であって、以下に示す方法で求められる値である。すなわち、130℃、150℃、170℃および190℃夫々の温度(T、単位:℃)におけるオレフィン重合体の溶融複素粘度−角周波数曲線(溶融複素粘度の単位はPa・sec、角周波数の単位はrad/secである。)を、温度−時間重ね合わせ原理に基づいて、各温度(T)での溶融複素粘度−角周波数曲線毎に、190℃でのオレフィン重合体の溶融複素粘度−角周波数曲線に重ね合わせた際に得られる各温度(T)でのシフトファクター(aT)を求め、夫々の温度(T)と、各温度(T)でのシフトファクター(aT)とから、最小自乗法により[ln(aT)]と[1/(T+273.16)]との一次近似式(下記(II)式)を算出する。次に、該一次式の傾きmと下記式(III)とからEaを求める。
ln(aT) = m(1/(T+273.16))+n (II)
Ea = |0.008314×m| (III)
T :シフトファクター
Ea:流動の活性化エネルギー(単位:kJ/mol)
T :温度(単位:℃)
上記計算は、市販の計算ソフトウェアを用いてもよく、該計算ソフトウェアとしては、Rheometrics社製 Rhios V.4.4.4などがあげられる。
なお、シフトファクター(aT)は、夫々の温度(T)における溶融複素粘度−角周波数の両対数曲線を、log(Y)=−log(X)軸方向に移動させて(但し、Y軸を溶融複素粘度、X軸を角周波数とする。)、190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線に重ね合わせた際の移動量であり、該重ね合わせでは、夫々の温度(T)における溶融複素粘度−角周波数の両対数曲線は、各曲線ごとに、角周波数をaT倍に、溶融複素粘度を1/aT倍に移動させる。また、130℃、150℃、170℃および190℃の4点の値から(II)式を最小自乗法で求めるときの相関係数は、通常、0.99以上である。
【0012】
溶融複素粘度−角周波数曲線の測定は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800など。)を用い、通常、ジオメトリー:パラレルプレート、プレート直径:25mm、プレート間隔:1.5〜2mm、ストレイン:5%、角周波数:0.1〜100rad/秒の条件で行われる。なお、測定は窒素雰囲気下で行われ、また、測定試料には予め酸化防止剤を適量(例えば1000ppm。)を配合することが好ましい。
【0013】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.01〜10g/10分である。該メルトフローレートは、成形加工性を高める観点、特に押出負荷を低減する観点から、好ましくは0.2g/10分以上である。また、得られる成形体の機械的強度を高める観点から、好ましくは8g/10分以下であり、より好ましくは7g/10分以下、更に好ましくは5g/10分以下である。該メルトフローレートは、JIS K7210−1995に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定される値である。なお、該メルトフローレートの測定では、通常、エチレン−α−オレフィン共重合体に予め酸化防止剤を1000ppm程度配合したものを用いる。
【0014】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の密度(以下、「d」と記載することがある。)は、930kg/m3未満であり、得られる成形体の機械強度のうち衝撃強度を高める観点から、好ましくは926kg/m3以下である。得られる成形体の機械強度のうち引張強度を高める観点から、好ましくは870kg/m3以上であり、より好ましくは880kg/m3以上であり、更に好ましくは890kg/m3以上であり、特に好ましくは900kg/m3以上である。なお、該密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、エチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量により変更することができる。
【0015】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、5以上である。該分子量分布は、発泡体の独立気泡率を高める観点から、好ましくは6以上であり、より好ましくは7以上である。また、該分子量分布は、発泡体の引張破壊強度の観点から、好ましくは25以下であり、より好ましくは20以下であり、更に好ましくは17以下である。なお、該分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ測定によってポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを求め、MwをMnで除した値(Mw/Mn)である。
【0016】
本発明において成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は1種類のみではなく、複数種をブレンドして用いてもよい。ブレンドすることによりMFR、密度、機械的物性などを適宜調整することができる。
【0017】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、例えば、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物などの助触媒成分を粒子状担体に担持させてなる固体粒子状の助触媒成分(以下、成分(イ)と称する。)と、アルキレン基やシリレン基等の架橋基で2つのシクロペンタジエニル型アニオン骨格が結合した構造を持つ配位子を有するメタロセン錯体(以下、成分(ロ)と称する。)とを触媒成分として用いてなる重合触媒の存在下、エチレンとα−オレフィンとを共重合する方法があげられる。
【0018】
上記固体粒子状の助触媒成分としては、メチルアルモキサンを多孔質シリカと混合させた成分、ジエチル亜鉛と水とフッ化フェノールを多孔質シリカと混合させた成分等をあげることができる。
【0019】
上記固体粒子状の助触媒成分のより具体例として、成分(a)ジエチル亜鉛、成分(b)フッ素化フェノール、成分(c)水、成分(d)多孔質シリカおよび成分(e)トリメチルジシラザン(((CH33Si)2NH)を接触させてなる助触媒担体成分(イ)をあげることができる。
【0020】
成分(b)のフッ素化フェノールとしては、ペンタフルオロフェノール、3,5−ジフルオロフェノール、3,4,5−トリフルオロフェノール、2,4,6−トリフルオロフェノール等をあげることができる。成分(A)の流動活性化エネルギー(Ea)、分子量分布(Mw/Mn)を高める観点から、フッ素数の異なる2種類のフッ素化フェノールを用いることが好ましく、この場合、フッ素数が多いフェノールとフッ素数が少ないフェノールとのモル比としては、通常、20/80〜80/20であり、該モル比は高い方が好ましい。
【0021】
上記成分(a)、成分(b)および成分(c)の使用量としては、各成分の使用量のモル比率を成分(a):成分(b):成分(c)=1:y:zとすると、yおよびzが下記の式を満足することが好ましい。
|2−y−2z|≦1
上記の式におけるyとして、好ましくは0.01〜1.99の数であり、より好ましくは0.10〜1.80の数であり、さらに好ましくは0.20〜1.50の数であり、最も好ましくは0.30〜1.00の数である。
【0022】
成分(a)に対して使用する成分(d)の量としては、成分(a)と成分(d)との接触により得られる粒子に含まれる亜鉛原子のモル数が、該粒子1gあたり0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。成分(d)に対して使用する成分(e)の量としては、成分(d)1gあたり成分(e)0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。
【0023】
上記メタロセン錯体としては、2つのインデニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのメチルインデニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのメチルシクロペンタジエニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのジメチルシクロペンタジエニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体等をあげることができる。また、成分(ロ)の金属原子としては、ジルコニウムとハフニウムが好ましく、さらに金属原子が有する残りの置換基としては、ジフェノキシ基やジアルコキシ基が好ましい。成分(ロ)として、好ましくは、エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシドがあげられる。
【0024】
上記の固体粒子状の助触媒成分とメタロセン錯体とを用いてなる重合触媒においては、適宜、有機アルミニウム化合物を触媒成分として併用してもよく、該有機アルミニウム化合物としては、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム等をあげることができる。
【0025】
上記メタロセン錯体の使用量は、上記固体粒子状の助触媒成分1gあたり、好ましくは5×10-6〜5×10-4molである。また有機アルミニウム化合物の使用量として、好ましくは、上記メタロセン錯体の金属原子1モルあたり、有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子が1〜2000モルとなる量である。
【0026】
また、上記の固体粒子状の助触媒成分とメタロセン錯体とを用いてなる重合触媒においては、適宜、電子供与性化合物を触媒成分として併用してもよく、該電子供与性化合物としては、トリエチルアミン、トリノルマルオクチルアミン等をあげることができる。
【0027】
上記成分(b)のフッ素化フェノールとしてフッ素数の異なる2種類のフッ素化フェノールを用いる場合は、電子供与性化合物を用いることが好ましい。
【0028】
電子供与性化合物の使用量としては、上記の触媒成分として用いられる有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数に対して、通常0.1〜10mol%であり、成分(A)の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点から、該使用量は高い方が好ましい。
【0029】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、より具体的には、上記助触媒担体(イ)、架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体および有機アルミニウム化合物を接触させてなる触媒の存在下、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合する方法があげられる。
【0030】
重合方法として、好ましくは、エチレン−α−オレフィン共重合体の粒子の成形を伴う連続重合方法であり、例えば、連続気相重合、連続スラリー重合、連続バルク重合であり、好ましくは、連続気相重合である。気相重合反応装置としては、通常、流動層型反応槽を有する装置であり、好ましくは、拡大部を有する流動層型反応槽を有する装置である。反応槽内に攪拌翼が設置されていてもよい。
【0031】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造に用いられる重合触媒の各成分を反応槽に供給する方法としては、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、エチレン等を用いて、水分のない状態で供給する方法、各成分を溶媒に溶解または稀釈して、溶液またはスラリー状態で供給する方法が用いられる。重合触媒の各成分は個別に供給してもよく、任意の成分を任意の順序にあらかじめ接触させて供給してもよい。
【0032】
また、本重合を実施する前に、予備重合を実施し、予備重合された予備重合触媒成分を本重合の触媒成分または触媒として使用することが好ましい。本重合と予備重合では異なるα−オレフィンを用いてもよく、炭素原子数が4〜12のα−オレフィンとエチレンとを予備重合することが好ましく、炭素原子数が6〜8のα−オレフィンとエチレンとを予備重合することがより好ましい。
【0033】
重合温度としては、通常、エチレン−α−オレフィン共重合体が溶融する温度よりも低く、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃であり、さらに好ましくは50〜90℃である。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点からは、重合温度は高い方が好ましい。
【0034】
重合時間としては(連続重合反応である場合は平均滞留時間として)、通常1〜20時間である。エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点からは、重合時間(平均滞留時間)は長い方が好ましい。
【0035】
また、共重合体のMFRを調節する目的で、重合反応ガスに水素を分子量調節剤として添加してもよく、重合反応ガス中に不活性ガスを共存させてもよい。重合反応ガス中のエチレンのモル濃度に対する重合反応ガス中の水素のモル濃度は、重合反応ガス中のエチレンのモル濃度100モル%として、通常、0.1〜3mol%である。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点からは、該重合反応ガス中の水素のモル濃度は、高い方が好ましい。
【0036】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、必要に応じて、公知の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、無滴剤、顔料、フィラー等があげられる。
【0037】
成分(B)の高圧法低密度ポリエチレンの密度(以下、「d」と記載することがある。)は、発泡体の独立気泡率を高める観点から、好ましくは915〜925kg/m3の範囲であり、より好ましくは、917〜923kg/m3の範囲である。なお、該密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される。
【0038】
成分(B)の高圧法低密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、通常、0.3〜100g/10分である。成形加工性を高める観点、特に押出負荷を低減する観点から、成分(B)のMFRは1.0g/10分以上であることが好ましい。また、得られる発泡体の強度の観点から、好ましくは30g/10分以下である。該メルトフローレートは、JIS K7210−1995に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定される値である。なお、該メルトフローレートの測定では、通常、高圧法低密度ポリエチレンに予め酸化防止剤を1000ppm程度配合したものを用いる。
【0039】
成分(B)の高圧法低密度ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、発泡体の独立気泡率を高める観点から、通常6以上であり、好ましくは7以上であり、より好ましくは8以上であり、更により好ましくは9以上である。また、該分子量分布は、発泡体の引張破壊強度および引張破壊伸びの観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは17以下であり、更に好ましくは14以下である。なお、該分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ測定によってポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを求め、MwをMnで除した値(Mw/Mn)である。
【0040】
発泡体の独立気泡率を高める観点から、成分(B)の高圧法低密度ポリエチレンは、GPCで測定したポリスチレン換算の分子量が700000以上である分子の割合が8.5重量%以上であることが好ましく、12重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることがさらに好ましい(ただし、成分(B)の重量を100%とする)。
【0041】
成分(B)の高圧法低密度ポリエチレンの流動の活性化エネルギー(Ea)は、得られる発泡体の独立気泡率を高める観点から、好ましくは45kJ/mol以上であり、より好ましくは50kJ/mol以上である。また、得られる発泡体の引張破壊強度の観点から、該Eaは、好ましくは100kJ/mol以下であり、より好ましくは90kJ/mol以下である。
【0042】
成分(B)の高圧法低密度ポリエチレンは、必要に応じて、公知の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、無滴剤、顔料、フィラー等があげられる。
【0043】
本発明の発泡用樹脂組成物に含まれる成分(A)および成分(B)の量は、該樹脂組成物に含まれる前記した成分(A)および成分(B)の合計量を100重量%とするとき、成分(A)の含有量が90〜20重量%であり、成分(B)の含有量が10〜80重量%である。好ましくは、成分(A)が80〜50重量%、成分(B)が20〜50重量%である。
【0044】
成分(C)のポリエチレンの密度(以下、「d」と記載することがある。)は、発泡体の独立気泡率を高める観点から、930kg/m3以上であり、好ましくは960kg/m3以下である。該密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される。
【0045】
成分(C)のポリエチレンは、エチレン単独重合体であってもよく、エチレン−α−オレフィン共重合体であってもよい。重合条件等も、特に限定されるものではない。
【0046】
成分(C)のポリエチレンは、必要に応じて、公知の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、無滴剤、顔料、フィラー等があげられる。
【0047】
本発明の押出発泡成形用樹脂組成物に含まれる成分(C)の量は、前記した成分(A)および成分(B)の合計量を100重量部とするとき、0.5〜5重量部である。
【0048】
本発明の押出発泡成形用樹脂組成物(成分(A)、成分(B)、成分(C)の混合物)のHL110は得られる発泡体の柔軟性を高める観点から93.0%以上であり、得られる発泡体の独立気泡率を高める観点から98.0%以下である。HL110とは、以下のDSC測定によって求められる値である。
約10mgの試料を用い、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計DSC−7型)にて、下記条件で融解曲線を測定した。
<測定条件>
測定試料を150℃で5分間保持した後、2℃/分で150℃から20℃まで降温し、20℃で2分間保持する。次に、2℃/分で20℃から150℃まで昇温する。昇温時に得たDSC融解曲線において20℃から完全融解温度(融解曲線が高温側のベースラインに戻る温度)までの全融解熱量に対して110℃以下の融解熱量の割合(HL110「単位:%」)を求める。
【0049】
押出発泡成形体製造時に用いる発泡剤は特に限定されるものではなく、公知の物理発泡剤や化学発泡剤が使用できる。また複数の発泡剤を併用してもよい。
【0050】
物理発泡剤としては、空気、酸素、チッソ、二酸化炭素、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、エチレン、プロピレン、水、石油エーテル、塩化メチル、塩化エチル、モノクロルトリフルオルメタン、ジクロルジフルオルメタン、ジクロテトラフルオロエタン等が挙げられる。この中でも二酸化炭素、窒素、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタンまたはイソペンタンを用いることが経済性の観点から好ましい。
【0051】
化学発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等の無機系発泡剤;アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、アゾビスブチロニトリル、ニトロジグアニジン、N,N-ジニトロペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセルカルバジド、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチロニトリル、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、5-フェニルテトラゾール、トリヒドラジノトリアジン、ヒドラゾジカルボンアミド等の有機系発泡剤等が挙げられる。これらの中でもアゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを用いることが経済性、安全面の観点から好ましい。成形温度範囲が広いことや、気泡が微細な押出発泡成形体が得られることから、アゾジカルボンアミドおよび炭酸水素ナトリウムを含有する発泡剤を用いることが特に好ましい。
【0052】
化学発泡剤を用いる場合、通常は分解温度が140〜180℃である化学発泡剤が用いられる。分解温度が180℃より高い化学発泡剤を使用する場合には、発泡助剤を併用することにより分解温度を180℃に下げ使用することが好ましい。発泡助剤としては、酸化亜鉛、酸化鉛などの金属酸化物;炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;塩化亜鉛等の金属塩化物;尿素;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ラウリン酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸亜鉛、二塩基性フタル酸鉛等の金属石鹸;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート等の有機錫化合物;三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛等の無機塩類をあげることができる。
【0053】
化学発泡剤を用いる場合、通常は前記化学発泡剤、発泡助剤および樹脂から構成されるマスターバッチが用いられる。マスターバッチに用いられる樹脂の種類は本発明の効果が阻害されなければ特に限定はされないが、本発明の組成物に含まれるエチレン−α−オレフィン共重合体または高圧法低密度ポリエチレンであることが好ましい。マスターバッチに含有される化学発泡剤および発泡助剤の合計量は、該マスターバッチを構成する樹脂を100重量部とするとき、通常5〜100重量部である。
【0054】
物理発泡剤を用いる場合には発泡核剤を併用することによって、より微細な気泡を有する押出発泡成形体を得ることができる。発泡核剤としてはタルク、シリカ、マイカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、アルミノシリケート、クレー、石英粉、珪藻土類の無機充填剤;ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンからなる粒径100μm以下のビーズ;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属塩を例示することができ、これらを2種類以上組み合わせてもよい。また物理発泡剤を使用する場合には、発泡核剤として前記の化学発泡剤を使用することもできる。化学発泡剤を発泡核剤として用いる場合は分解温度が低い化学発泡剤を用いることが好ましい。例えば、アゾジカルボンアミド、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、N,N-ジニトロペンタメチレンテトラミン、炭酸水素ナトリウムなどを主成分とする化学発泡剤が好ましい。また複数の化学発泡剤を併用しても構わない。
【0055】
発泡剤の添加量は用いる発泡剤の種類や製造する成形体の発泡倍率によって適宜設定されるが、成形品を構成する樹脂100重量部に対して通常1〜100重量部である。
【0056】
成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する本発明の押出発泡成形用樹脂組成物は、必要に応じ、架橋剤、架橋助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、顔料、充填剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤などの公知の添加剤を含有していてもよい。
【0057】
本発明の押出発泡用樹脂組成物は、必要に応じ、第4樹脂成分として成分(A)、成分(B)、成分(C)とは異なる熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを含有してもよい。該熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーとしては、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリエチレンワックス、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマーワックス、環状ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物などのスチレン系重合体、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6・66などのポリアミド類、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、エチレン・プロピレン共重合ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0058】
成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する本発明の押出発泡成形用樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)および成分(C)と、必要に応じ配合される他の成分とをブレンドして押出発泡成形に使用してもよく、予め混練して使用してもよい。混練方法としては、例えば、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサーなどで混合した後、更に単軸押出機や多軸押出機などにより溶融混練する方法、またはニーダーやバンバリーミキサーなどで溶融混練する方法などの公知の方法があり、これらの方法により混練して樹脂組成物を得ることができる。
【0059】
本発明の押出発泡成形体の製造方法は特に限定されるものではなく、押出発泡成形用樹脂組成物を単軸スクリュウ押出機、二軸スクリュウ押出機等の公知の成形機にて溶融混練し、前記成形機の先端に取り付けられたダイから大気中に押し出す方法である。押出機の温度は通常120−280℃であり、ダイの温度は通常100−260℃である。ダイから押出された直後の溶融状態の押出成形体は発泡している。該溶融状態の押出発泡成形体を冷却ロール、冷却マンドレル、冷却エア、冷却水等により冷却することにより、最終製品としての押出発泡成形体を得ることができる。ダイとしてはスリット型、サーキュラースリット型、円型、異型などから目的に応じて選択できる。成形機とダイとの間には押出量安定化の為にギヤポンプを設けてもよい。また、樹脂と発泡剤を混練する目的でスタティックミキサーなどを押出機とダイの間に設置してもよい。物理発泡剤を用いる場合には、押出発泡成形用樹脂組成物を溶融した後に、成形機の物理発泡剤供給口より物理発泡剤を注入する。
【0060】
本発明の押出発泡成形体は、独立気泡率の高い発泡体である。そのため、緩衝材、断熱材、遮音材、保温保冷材等に好適に用いられる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
実施例および比較例での物性は、次の方法に従って測定した。
【0062】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210−1995に規定された方法において、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定した。
【0063】
(2)樹脂密度(d、単位:Kg/m3
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、試料には、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った。
【0064】
(3)分子量分布(Mw/Mn)
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、下記の条件(1)〜(8)により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、Mw/Mnを求めた。クロマトグラム上のベースラインは、試料溶出ピークが出現するよりも十分に保持時間が短い安定した水平な領域の点と、溶媒溶出ピークが観測されたよりも十分に保持時間が長い安定した水平な領域の点とを結んでできる直線とした。
(1)装置:Waters製Waters150C
(2)分離カラム:TOSOH TSKgelGMH6−HT
(3)測定温度:140℃
(4)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:500μL
(7)検出器:示差屈折計
(8)分子量標準物質:標準ポリスチレン
ポリスチレン換算の分子量70万以上である分子の割合=(ポリスチレン換算の分子量が70万以上の分子の量)/(全分子量成分の量)×100
【0065】
(4)流動の活性化エネルギー(Ea、単位:kJ/mol)
粘弾性測定装置(Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800)を用いて、下記測定条件で130℃、150℃、170℃および190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線を測定し、次に、得られた溶融複素粘度−角周波数曲線から、Rheometrics社製計算ソフトウェア Rhios V.4.4.4を用いて、190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線のマスターカーブを作成し、活性化エネルギー(Ea)を求めた。
<測定条件>
ジオメトリー:パラレルプレート
プレート直径:25mm
プレート間隔:1.5〜2mm
ストレイン :5%
角周波数 :0.1〜100rad/秒
測定雰囲気 :窒素
【0066】
(5)示差走査熱量測定
約10mgの試料を用い、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計DSC−7型)にて、下記条件で融解曲線を測定した。成分(A)と成分(B)のブレンド物や成分(A)、成分(B)、成分(C)のブレンド物の測定はラボプラストミルで溶融混練し、測定を行った。
<測定条件>
測定試料を150℃で5分間保持した後、2℃/分で150℃から20℃まで降温し、20℃で2分間保持した。次に、2℃/分で20℃から150℃まで昇温した。昇温時に得たDSC融解曲線において20℃から完全融解温度(融解曲線が高温側のベースラインに戻る温度)までの全融解熱量に対して110℃以下の融解熱量の割合(HL110「単位:%」)を求めた。
【0067】
(6)発泡体密度(単位:kg/m3)
JIS K7112−1999に規定された方法のA方法に従って測定した。なお、発泡体試料にはアニーリングは行っていない。
【0068】
(7)発泡倍率(単位:倍)
上記の(2)樹脂密度の方法で求めた密度と(6)で求めた発泡体との密度から、下記式により算出した。
発泡倍率=樹脂密度/発泡体密度
ブレンドした樹脂の樹脂密度については(2)の値より以下の計算式より求めた。
ブレンド後の樹脂密度=成分(A)の樹脂密度×配合比+成分(B)の樹脂密度×配合比+成分(C)の樹脂密度×配合比(配合比は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計重量を1としたときの、各成分の割合)
【0069】
(8)独立気泡率(単位:%)
エアピクノメーター(島津製作所(株)製 アキュピック1330密度計)を用いて発泡体の密度ρ(エア)を求め、次式により独立気泡率を算出した。なお押出発泡成形用樹脂組成物の樹脂密度ρ(PE)は、(7)に記載した方法で求めた。また発泡体密度ρ(発泡体)は、上記(6)で求めた値を用いた。
独立気泡率=(ρ(PE)/ρ(エア)-1)/(ρ(PE)/ρ(発泡体))×100
【0070】
実施例および比較例で用いた樹脂組成物は以下の通りである。各物性を表1に示す。
【0071】
成分(A): エチレン−α−オレフィン共重合体(詳細は後述)
成分(B):
(1)G201
住友化学(株)製の商品名がスミカセン G201である高圧法低密度ポリエチレン。
(2)L712
住友化学(株)製の商品名がスミカセン L712である高圧法低密度ポリエチレン。
成分(C)
(1)GA804
住友化学(株)製の商品名がスミカセン-L GA804である直鎖状低密度ポリエチレン。
(2)CS8051
住友化学(株)製の商品名がスミカセンα CS8051である直鎖状低密度ポリエチレン。
(3)G1900
京葉ポリエチレン(株)製の商品名がKEIYOポリエチ G1900である高密度ポリエチレン。
【0072】
[実施例1]
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(A))の製造
下記方法によりエチレン−α−オレフィン共重合体を得た。
【0073】
(1)固体触媒成分の調製
窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(デビソン社製 Sylopol948;50%体積平均粒子径=55μm;細孔容量=1.67ml/g;比表面積=325m2/g)2.8kgとトルエン24kgとを入れて、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン0.9kgとトルエン1.4kgとの混合溶液を反応器の温度を5℃に保ちながら30分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌し、次に95℃に昇温し、95℃で3時間撹拌し、ろ過した。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで6回、洗浄を行った。その後、トルエン7.1kgを加えスラリーとし、一晩静置した。
【0074】
上記で得られたスラリーに、ジエチル亜鉛のヘキサン溶液(ジエチル亜鉛濃度:50重量%)1.73kgとヘキサン1.02kgとを投入し、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、3,4,5−トリフルオロフェノール0.78kgとトルエン1.44kgとの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら60分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌し、次に40℃に昇温し、40℃で1時間撹拌した。その後、22℃に冷却し、H2O0.11kgを反応器の温度を22℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、22℃で1.5時間撹拌し、次に40℃に昇温し、40℃で2時間撹拌し、更に80℃に昇温し、80℃で2時間撹拌した。撹拌後、室温にて、残量16Lまで上澄み液を抜き出し、トルエン11.6kgを投入し、次に、95℃に昇温し、4時間撹拌した。撹拌後、室温にて、上澄み液を抜き出し、固体生成物を得た。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで4回、ヘキサン24リットルで3回、洗浄を行った。その後、乾燥することにより、固体触媒成分を得た。
【0075】
(2)予備重合
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付き反応器に、常温下でブタン80リットルを投入し、次に、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド32.4mmolを投入した。その後、反応器内の温度を50℃まで上昇させ、2時間攪拌した。反応器内の温度を30℃まで降温し、エチレンを0.1kg、水素を常温常圧として0.1L投入した。次に、上記実施例1(1)に記載の方法で調製した、固体触媒成分697 gを投入した。その後、トルエン300mlに溶解したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド2.59mmolを投入した。系内が安定した後、トリイソブチルアルミニウム140mmolを投入して重合を開始した。
【0076】
重合開始後、反応器内の重合温度を30℃で0.5時間運転を行い、その後30分かけて50℃まで昇温して、その後は50℃で重合を行った。最初の0.5時間は、エチレンを0.6kg/hrで供給し、水素を常温常圧として0.7リットル/hrの速度で供給し、重合開始後0.5時間からは、エチレンを3.2kg/hr、水素を常温常圧として9.6リットル/hrの速度で供給し、合計6時間の予備重合を実施した。重合終了後、反応器内圧力を0.6MPaGまでパージし、スラリー状予備重合触媒成分を乾燥器に移送して、窒素流通乾燥を実施して、予備重合触媒成分を得た。該予備重合触媒成分中のエチレン重合体の予備重合量は、粒子状固体触媒成分1g当り21.3gであり、予備重合触媒成分の嵩密度は461kg/m3であった。
【0077】
(3)気相重合
上記(2)で得た予備重合触媒成分を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ブテン、1−ヘキセンの共重合を実施し、重合体パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を81.4℃、重合圧力を2MPa、エチレンに対する水素モル比を1.82%、エチレンと1−ブテンと1−ヘキセンとの合計に対する1−ブテンモル比を2.46%、1−ヘキセンモル比をそれぞれ0.76%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウムを連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間4hrであった。得られた重合体パウダーを押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200〜230℃の条件で造粒することによりエチレン−1−ヘキセン−1−ブテン共重合体(成分(A))を得た。得られた共重合体の物性評価の結果を表1に示した。
【0078】
[押出発泡成形体の製造]
成分(A)を75重量%、成分(B)としてG201を25重量%、さらに成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、成分(C)としてG1900を1.1重量部、同じく成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)5.3重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表2に示す。
【0079】
[実施例2]
成分(A)を78重量%、成分(B)としてL712を22重量%、さらに成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、成分(C)としてGA804を4.4重量部、同じく成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)5.3重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表2に示す。
【0080】
[実施例3]
成分(A)を75重量%、成分(B)としてL712を25重量%、さらに成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、成分(C)としてCS8051を1.1重量部、同じく成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)5.3重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表2に示す。
【0081】
[実施例4]
成分(A)を75重量%、成分(B)としてL712を25重量%、さらに成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、成分(C)としてCS8051を1.1重量部、同じく成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)8.8重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表2に示す。
【0082】
[実施例5]
成分(A)を75重量%、成分(B)としてL712を25重量%、さらに成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、成分(C)としてG1900を1.1重量部、同じく成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)8.8重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表2に示す。
【0083】
[実施例6]
成分(A)を75重量%、成分(B)としてL712を25重量%、さらに成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、成分(C)としてGA804を1.1重量部、同じく成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)10重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表2に示す。
【0084】
[実施例7]
成分(A)を75重量%、成分(B)としてL712を25重量%、さらに成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、成分(C)としてCS8051を1.1重量部、同じく成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)10重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表2に示す。
【0085】
[実施例8]
成分(A)を75重量%、成分(B)としてL712を25重量%、さらに成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、成分(C)としてG1900を1.1重量部、同じく成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)10重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表2に示す。
【0086】
[比較例1]
成分(A)を75重量%、成分(B)としてL712を25重量%、さらに成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)5.3重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表3に示す。
【0087】
[比較例2]
成分(A)を100重量%、さらに成分(A)100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)8.8重量部をタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表3に示す。
【0088】
[比較例3]
成分(A)を75重量%、成分(B)としてL712を25重量%、さらに成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)8.8重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表3に示す。
【0089】
[比較例4]
成分(A)を100重量%、さらに成分(A)100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)10重量部をタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表3に示す。
【0090】
[比較例5]
成分(A)を75重量%、成分(B)としてL712を25重量%、さらに成分(A)を成分(B)の合計量100重量部に対し、化学発泡剤MB(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)10重量部をタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径30mmφ、L/D=25の単軸押出機に供給し、混練部の温度が150〜180℃、ダイ部の温度が130℃、吐出量が5kg/hの条件で押出し発泡体を作成した。結果を表3に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する押出発泡成形用樹脂組成物であって、成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%として、成分(A)の含有量が90〜20重量%であり、成分(B)の含有量が10〜80重量%であり、さらに成分(A)と成分(B)の合計量を100重量部として、成分(C)の含有量が0.5〜5重量部である押出発泡成形用樹脂組成物。
(A):エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、メルトフローレート(MFR)が0.01〜10g/10分であり、密度が930Kg/m未満であり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン系共重合体。
(B):密度が915〜925Kg/mである高圧法低密度ポリエチレン
(C):密度が930Kg/m以上であるポリエチレン
【請求項2】
成分(B)が、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の分子量が700000以上である分子の割合が8.5重量%以上である(ただし、成分(B)の重量を100%とする)請求項1に記載の押出発泡成形用樹脂組成物。
【請求項3】
成分(B)が、GPCで測定した分子量が700000以上である分子の割合が12重量%以上である(ただし、成分(B)の重量を100%とする)請求項1に記載の架橋発泡用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の押出発泡成形用樹脂組成物からなる押出発泡成形体。

【公開番号】特開2012−7064(P2012−7064A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143557(P2010−143557)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】