振動型駆動装置
【課題】接触面圧を小さくするために移動体と振動体との接触面積を広げる一方、接触面圧を接触面の全体的に分散させることによって耐久性の向上を図ることが可能となる振動型駆動装置を提供する。
【解決手段】電気−機械エネルギー変換素子が取り付けられ、該電気−機械エネルギー変換素子に駆動電圧が印加されることにより振動する振動部と、
前記振動部と接触部を介して摩擦接触し、前記振動部の振動により該振動部に対して相対移動する被駆動部と、を有する振動型駆動装置であって、
前記接触部は、前記被駆動部または前記振動部のいずれか一方から、それらの他方の側に突出したバネ性を有する材料による二つの支持部によって支えられ、
前記二つの支持部の間に、これらの支持部によって支えられている接触部の幅よりも、間隔が狭くなる領域が形成されている。
【解決手段】電気−機械エネルギー変換素子が取り付けられ、該電気−機械エネルギー変換素子に駆動電圧が印加されることにより振動する振動部と、
前記振動部と接触部を介して摩擦接触し、前記振動部の振動により該振動部に対して相対移動する被駆動部と、を有する振動型駆動装置であって、
前記接触部は、前記被駆動部または前記振動部のいずれか一方から、それらの他方の側に突出したバネ性を有する材料による二つの支持部によって支えられ、
前記二つの支持部の間に、これらの支持部によって支えられている接触部の幅よりも、間隔が狭くなる領域が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動体と移動体とを有し前記移動体を駆動する超音波アクチュエータ等と称される振動型駆動装置に関するものであり、特に移動体もしくは振動体の形状に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、振動体で発生した振動により移動体を駆動する振動型駆動装置(超音波アクチュエータ)が知られている。
このような振動型駆動装置における振動体は、一般に弾性体と、この弾性体上に配置された電気−機械エネルギー変換素子としての圧電素子とで構成されている。
例えば、弾性体に対して空間的に互いに90°の位相差を持った位置に二つの駆動相を有する圧電素子を配置し、この二つの駆動相に互いに90°の位相差を持つ二つの交流信号を印加することによって弾性体上に二つの曲げ振動を発生させる。
この二つの曲げ振動の合成により得られた駆動信号により、振動体に対して移動体を相対的に移動させる。
振動体および移動体の少なくとも一方における接触面には適切な摩擦力を得るための摩擦部材が接着、塗布、または形成されている。
【0003】
この摩擦部材は移動体が振動体に対して摺動されるため、駆動するにつれて摩耗していくが、その摩耗を遅らせることで振動型駆動装置の寿命を高めることが可能となる。
摩耗速度を決める要素の一つとして移動体と振動体との接触面圧が関係することが確認されており、これらの接触面圧を小さくすることで振動型駆動装置の寿命を高めることが可能となる。
接触面圧を小さくするための方法として、接触部の面積を広くすることが考えられる。
また、駆動中に異音を発生させないようにするために、接触部に弾性を持たせる必要がある。
これら二つの要因を解決するため、例えば図18に示す特許文献1のように、接触部を梁状部材で形成し前記接触部の両端を支持する構造を備えた超音波モータが提案されている。
この超音波モータは、図18に示されているように、弾性基板に圧電体を結合した振動体と、炭素繊維を用いて強化した炭素繊維強化複合体により構成しかつ両端支持条件の梁構造の移動体とからなる。
そして、この移動体は移動体梁部と、この梁部の両端部から延出した移動体第一突起と、振動体との接触面側の梁部から延出した移動体第二突起とで構成されている。
移動体の材質が樹脂であり移動体が2段突起構造の梁部を持っているため、移動体と振動体との接触面のうねりを吸収するための効果が発生する。これにより、移動体と振動体との均一接触を安定に維持することが可能となるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第03049931号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された振動型駆動装置のような構造で接触面圧をシミュレーションした結果を図19に示す。
図19は被駆動部に力を加え、振動体と加圧接触させた時の被駆動部と振動体との接触部における接触面圧の分布を表しており、グラフの上方ほど面圧が高いことを示している。
このように、上記従来例の構造では梁部のたわみ等のために第二突起部の両端に接触面圧が集中し、振動型駆動装置の耐久性を向上させる上で課題が生じる。
このような振動型駆動装置の耐久性を向上させるためには、移動体と振動体との接触面積を広げるだけでなく、接触面に全体的に加圧が分散するようにすることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、接触面圧を小さくするために移動体と振動体との接触面積を広げる一方、接触面圧を接触面に全体的に分散させることによって耐久性の向上を図ることが可能となる振動型駆動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の振動型駆動装置は、電気−機械エネルギー変換素子が取り付けられ、該電気−機械エネルギー変換素子に駆動電圧が印加されることにより振動する振動部と、
前記振動部と接触部とを介して摩擦接触し、前記振動部の振動により該振動部に対して相対移動する被駆動部と、を有する振動型駆動装置であって、
前記接触部は、前記被駆動部または前記振動部のいずれか一方から、それらの他方の側に突出した、バネ性を有する材料による二つの支持部によって支えられ、
前記二つの支持部の間に、これらの支持部によって支えられている接触部の幅よりも、間隔が狭くなる領域が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接触面圧を小さくするために移動体と振動体との接触面積を広げる一方、接触面圧を接触面に全体的に分散させることによって耐久性の向上を図ることが可能となる振動型駆動装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1における振動型駆動装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の振動型駆動装置における被駆動部の構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施例1の振動型駆動装置における被駆動部の変形例を示す図である。
【図4】本発明の実施例1の振動型駆動装置における面圧分布を計算した結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例2の振動型駆動装置における被駆動部の変形例を示す図である。
【図6】本発明の実施例2の振動型駆動装置における振動部の駆動状態を示す図である。
【図7】本発明の実施例2の振動型駆動装置における被駆動部のその他の構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施例3における振動型駆動装置の構成例を示す図である。
【図9】本発明の実施例3の振動型駆動装置における被駆動部の構成例を示す図である。
【図10】本発明の実施例3の振動型駆動装置における被駆動部の変形例を示す図である。
【図11】本発明の実施例3の振動型駆動装置における面圧分布を計算した結果を示す図である。
【図12】本発明の実施例4における振動型駆動装置の構成例を示す図である。
【図13】本発明の実施例4の振動型駆動装置における被駆動部の構成例を示す図である。
【図14】本発明の実施例4の振動型駆動装置における被駆動部の変形例を示す図である。
【図15】本発明の実施例4の振動型駆動装置における面圧分布を計算した結果を示す図である。
【図16】本発明の実施例5における振動型駆動装置の構成例を示す図である。
【図17】本発明の実施例5の振動型駆動装置における振動体の構成例を示す図である。
【図18】特許文献1における振動型駆動装置を示す図である。
【図19】特許文献1における構成と同様の構成で面圧分布を計算した結果を示す図である。
【図20】本発明の実施例1の振動型駆動装置における振動波により振動体の上面に楕円軌道状の送り運動が発生する状態を説明する図である。
【図21】(a)は本発明の実施例5における複数の突起を配置した圧電振動子の構成例を示す図である。(b−1)は圧電振動子の二つの曲げ振動モードのうち一方の曲げ振動モードを表した図、(b−2)は圧電振動子の二つの曲げ振動モードのうち他方の曲げ振動モードを表した図である。
【図22】(a)(b)は本発明の実施例1における被駆動部の作成方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、電気−機械エネルギー変換素子が取り付けられ、該電気−機械エネルギー変換素子に駆動電圧が印加されることにより振動する振動部と、前記振動部と接触部とを介して摩擦接触し、前記振動部の振動により該振動部に対して相対移動する被駆動部と、を有する振動型駆動装置であって、前記接触部は、前記被駆動部または前記振動部のいずれか一方から、それらの他方の側に突出した、変形、復元可能な材料による二つの支持部によって支えられ、前記二つの支持部の間に、これらの支持部によって支えられている接触部の幅よりも、間隔が狭くなる領域が形成されていることを特徴とするものである。
本発明の支持部の変形、復元可能な材料には、一定のバネ性又は弾性が求められる。本発明において、支持部の材料としては、ステンレスを用いることができる。具体的にはSUS420J2を用いることが好ましい。その他にも、マルテンサイト径SUSであるSUS440C、SUS420F等を用いることができる。
本発明の支持部の製法としては、切削加工又はプレス加工を用いることができる。そしてこれらの加工法により支持部を一体的に加工することが好ましい。また支持部を、外側支持部、内側支持部、接触部等の複数の部材に分けて加工した後に接合することもできる。また、接触部と本環部と支持部との間に囲まれた空間部を加工する際には支持部のRと一致する円弧上の刃を持つ工具を用いて加工を行うことで正確な形状を作成することができる
本発明を実施するための形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0011】
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用した振動型駆動装置の構成例について説明する。
図1(a)は本実施例における振動型駆動装置の斜視図を、(b)は本実施例における振動型駆動装置のカットモデルを示している。
ここで、まず本実施例の振動型駆動装置について説明する。
本実施例の振動型駆動装置は、電気−機械エネルギー変換素子が取り付けられ、該電気−機械エネルギー変換素子に駆動電圧が印加されることにより振動する振動部を備える。
そして、前記振動部と接触部を介して摩擦接触する被駆動部を、前記振動部の振動により該振動体に対して相対移動させるように構成されている。それらの具体的構成は図1に示されている。
図1において、1は被駆動部、2は振動体(振動部)、3は電気−機械エネルギー変換素子、4は前記被駆動部を前記振動体に加圧接触させるための加圧バネ、10は駆動軸、11は前記振動体を支持する振動体支持部である。
前記加圧バネ4は薄い板状に形成されており、接触する方向に反力がかかるように弾性変形させた状態で前記駆動軸10に固定されることで前記被駆動部1と前記振動体2とを加圧接触させている。
前記振動体2に接合された前記電気−機械エネルギー変換素子3に所定の位相差で二つの交流電圧を流し、振動体2及び電気−機械エネルギー変換素子3からなる振動子に進行性の振動波を励振させる。
この振動波により、図20に示すように前記振動体2の上面に楕円軌道状の送り運動が発生する。
この送り運動により、前記加圧部(加圧バネ)4を受けて前記振動体2と加圧接触した前記被駆動部1が前記振動体2に対して相対駆動される。
【0012】
図2は本実施例における振動型駆動装置の被駆動部の断面図を示した図である。
図2において、前記被駆動部1は本環部5と、変形、復元可能な材料による第一の支持部6と第二の支持部7とによる二つの支持部と、これらの二つの支持部によって支えられる梁状の構造で構成される接触部8とを備える。本発明において、変形、復元可能な材料とはバネ性又は弾性を有する材料を含む。
そして、前記二つの支持部と本環部との間に設けられ、前記二つの支持部の変形を逃がすための空間部9が形成されている。
図2に示すように、前記第一の支持部6と前記第二の支持部7とは、その一部が前記接触部8の幅よりも狭くなるように、前記接触部8の中央部の方向に向かって円弧を描くように構成されている。
【0013】
このように二つの支持部の間に、これらの支持部によって支えられている接触部の幅よりも、間隔が狭くなる領域を形成とすることで、加圧した際に二つの支持部が互いに近づくように変形させることができる。
すなわち、前記加圧部4により、前記被駆動部1が前記振動体2に加圧接触したとき、図3に示すように前記二つの支持部6及び7は、その円弧の弦が小さくなり、互いに近づくように変形する。
この変形により、前記二つの支持部6、7と前記接触部8との接続部が前記振動体2から離れる方向に移動するため矢印A、Bの方向にモーメントが発生し、前記接触部8は前記振動体2の方向に凸の形になるような変形となる。
このとき、図4に示すように被駆動部1と振動体2との接触部における面圧は両端から離れたところで最大値となっており、かつ中央付近においても面圧が0となっていないため、前記接触部8の全面に面圧を分散させることが可能となる。ここで、本実施例における被駆動部の作成方法を説明する。図22に示すように、本環上部51と、第一の支持部6と一体的に形成された本環外周側下部52と、第二の支持部7と一体的に形成された本環内周側下部53と、接触部8とを別々に切削加工で形成しこれらを接合することで被駆動部を構成している。接合方法として接着剤を用いる他、はんだ付け等の金属ろうづけ、レーザや電気抵抗熱などによる溶接などの方法で接合をしてもよい。また、前記本環上部、前記接触部はプレス加工で形成してもよい。
【0014】
[実施例2]
実施例2として、上記実施例1と異なる形態の振動型駆動装置の構成例について説明する。
図5は本実施例における振動型駆動装置の被駆動部の断面図であり、振動型駆動装置全体の構成は実施例1と同様である。
図5において、変形、復元可能な材料による、第一の支持部6の厚さよりも第二の支持部7の厚さが大きいため、内周側の剛性が外周側の剛性よりも高くなっている。
図6は、本実施例における振動型駆動装置の振動部の振動時の接触部の変形を径方向に平行な面から見た図である。
図6に示すように、振動部と被駆動部とが円環形状に形成され振動型駆動装置の振動部はある点を中心として軸方向に傾いた振動となっており、駆動時には接触状態において内周側と外周側とで高さが異なる。
そのため、本実施例のように被駆動部の接触部の剛性を内周側と外周側とで差をつけることで外周側の変形量が内周側の変形量よりも大きくなり、駆動時における内周側と外周側の支持部の変位量に差を出すことが可能となる。
これにより前記接触面8が振動体の接触面にそった変形をしやすくなるため、より効果的に面圧を分散させることが可能となる。
なお、図7に示すように内周側と外周側とで支持部を構成する円弧の径に差をつけ、大きさに差をつけた形状とすることで内周側と外周側との剛性に差を設けてもよい。
【0015】
[実施例3]
実施例3として、上記各実施例と異なる形態の振動型駆動装置の構成例について説明する。
図8(a)は本実施例における振動型駆動装置の斜視図を、(b)は本実施例における振動型駆動装置のカットモデルを示している。
図9は本実施例における振動型駆動装置の被駆動部の構成を示した図である。
図8において、13は被駆動部、2は振動体、3は電気−機械エネルギー変換素子、12は前記振動体を前記被駆動部に加圧接触させるための加圧バネである。14は前記振動体を支持する振動体支持部、15は前記被駆動部を受けて前記振動体支持部14に対して回転可能なようにベアリング16を介して前記振動体支持部14に支持された回転部である。
本実施例において、前記加圧部はウェーブワッシャとなっているが、コイルばね等のバネを用いてもよい。
前記被駆動部13は本環部17と、変形、復元可能な材料による第一の支持部18と第二の支持部19と、これらの二つの支持部によって支えられる梁状の構造で構成される接触部20と、前記二つの支持部と本環部との間に設けられる。そして、前記二つの支持部の変形を逃がすための空間部21が形成されている。
図9に示すように、前記二つの支持部18、19はその一部が前記接触部20の幅よりも狭くなるように、二つの支持部のうちの一方を接触部の中央部の方向に「逆くの字」に折り曲げると共に他方をくの字に折り曲げ、これらを対向させて構成されている。
【0016】
このような構成とすることで、前記加圧部4により、前記被駆動部13が前記振動体2に加圧接触したとき、図10に示すように前記二つの支持部18及び19は、その頂点部が接触部に向かうように変形する。
この変形により、前記二つの支持部18、19と前記接触部20との接続部において矢印A、Bの方向にモーメントが発生し、前記接触部20は前記振動体2の方向に凸の形となる変形をする。
このとき、図11に示すように被駆動部1と振動体2との接触部における面圧は両端から離れたところで最大値となっており、接触部中央以外で面圧がかかるようになっている。これより、前記接触部8の全面に面圧を分散させることが可能となる。
このように、支持部を直線状とすることで実施例1よりも簡単な構造でほぼ同等の効果を得ることができる。
また、加圧部を振動体側に設けることによりモータ中心部を開けることが可能なためレンズなどの光学部材を駆動するのに適した構成とすることができる。
なお、実施例2のように内周側と外周側との剛性に差を設けるために厚さや大きさなどの形状に差を設けてもよい。
【0017】
[実施例4]
実施例4として、上記各実施例と異なる形態の振動型駆動装置の構成例について説明する。
図12(a)は本実施例における振動型駆動装置の斜視図を、(b)は本実施例における振動型駆動装置のカットモデルを示している。図13は本実施例における振動型駆動装置の被駆動部の構成を示した図である。
図12において、22は被駆動部、2は振動体、3は電気−機械エネルギー変換素子、23は前記被駆動部を前記振動体に加圧接触させるための加圧部、24は駆動軸、25は前記振動体を支持する振動体支持部である。
前記被駆動部22は本環部26と、変形、復元可能な材料による第一の支持部27と第二の支持部28と、これらの二つの支持部によって支えられる梁状の構造で構成される接触部29と、前記二つの支持部と本環部との間に設けられる。そして、前記二つの支持部の変形を逃がすための空間部30が形成されている。
図13に示すように、前記第一の支持部27及び前記第二の支持部28それぞれと前記本環部26との接続部の幅L1よりも、前記接触部29の接続部の幅L2の方が広くなるように構成されている。
【0018】
このような構成とすることで、前記加圧部23により前記被駆動部22が前記振動体2に加圧接触したとき、図14に示すように前記二つの支持部27、28は円弧の弦が小さくなる方向に変形して接近する。
そして、前記二つの支持部27、28と前記接触部29との接続部が前記振動体2から浮くため、矢印A、Bの方向にモーメントが発生し、前記接触部29は前記振動体2の方向に凸の形になるような変形をする。
このとき、図15に示すように、接触部における圧力分布が先行例の時よりも広がっており、面圧を広範囲に分散させることが可能となる。
【0019】
このように、接触部の幅を本環部と二つの支持部との接続部の幅よりも広くすることでも面圧を分散させることが可能となる。
実施例1〜実施例3と異なり、二つの支持部の最接近部から再度二つの支持部を離す構成を省くことができるため、二つの支持部の長さをより短くすることが可能となり、厚さ方向に小型化された構成とすることができる。
なお、実施例2のように内周側と外周側との剛性に差を設けるために厚さや形状に差を設けてもよい。
また、実施例3のように振動体の振動体と被駆動部との接触面と対抗する面の側にバネを設けてもよい。
【0020】
[実施例5]
実施例5として、上記各実施例と異なる形態の振動型駆動装置の構成例について説明する。
図16(a)は本実施例における振動型駆動装置の斜視図を、(b)は本実施例における振動型駆動装置のカットモデルを示している。図17は本実施例における振動型駆動装置の振動子の接触部の構成を示した図である。
図16において、31は振動体、32は被駆動部、33は電気−機械エネルギー変換素子であり、前記被駆動部32は磁石で構成されており、前記振動体31は磁性体であり、前記被駆動部と前記振動体との間には磁力による加圧力が働いている。
ここで、振動子の駆動基本構成を簡単に説明する。図21(a)は本実施例に搭載の物と同等の圧電振動子の基本構成を示した図である。
本実施例では突起部が一つであるが駆動原理は同等であり、図21(a)のように複数の突起を配置しても良い。なお、駆動方法の詳細は特開2004−320846号公報に記載されている。
【0021】
図21(b)は該圧電振動子の二つの曲げ振動モードを表した図である。
図21(b−1)における振動モードは、二つの曲げ振動モードのうち一方の曲げ振動モード(送りモードとする)を表している。
この送りモードは、矩形の振動体106の長辺方向(矢印X方向)における二次の屈曲運動であり、短辺方向(矢印Y方向)と平行な3本の節を有している。
ここで、突起部108は送りモードの振動で節となる位置の近傍に配置されており、送りモードの振動により矢印X方向(=電気−機械エネルギー変換素子が接合された面と平行な方向)で往復運動を行う。
また、図21(b−2)に示す振動モードは二つの曲げ振動モードの内他方の曲げ振動モード(突上げモードと呼ぶ)を表している。
この突上げモードは、矩形の振動体106の短辺方向(矢印Y方向)における一次の屈曲振動であり、長辺方向(矢印X方向)と平行な2本の節を有している。
【0022】
ここで、送りモードにおける節と突上げモードにおける節は、XY平面内において略直交するようになっている。
また、突起部108は突上げモードの振動で腹となる位置の近傍に配置されており、突上げモードの振動により矢印Z方向(=電気−機械エネルギー変換素子が接合された面と垂直な方向)に往復運動を行う。
上述した送りモードと突上げモードの振動を所定の位相差で発生させることにより、突起部108の先端に楕円運動を発生させ、図21の矢印X方向(=電気−機械エネルギー変換素子が接合された面と平行な方向)の駆動力を与えている。前記振動体31は、振動板34と、前記被駆動部との接触部37、前記接触部を梁状に支持するための変形、復元可能な材料による二つの支持部35、36とからなる突起部とで構成されている。
前記突起部と前記振動板との間には前記二つの支持部の変形を逃がすための空間部38が設けられている。
図17に示すように前記接触部37との接続部の幅よりも前記二つの支持部35、36の少なくとも一部が狭くなるように前記接触部37の中央部の方向に向かって円弧を描くように構成されている。
このような構成とすることで実施例1の時と同様に前記被駆動部に加圧接触した時に、前記接触部37に面圧を分散させることが可能となる。
本実施例では実施例1と同様の形状の突起としているが、実施例3、実施例4と同様の形状としても良い。また、加圧手段としてバネを用いる構成としてもよい。
【0023】
本発明は、以上で説明したように、前記被駆動部または前記振動部のいずれか一方から、それらの他方の側に突出した二つの支持部によって支えられた接触部が構成されたもとで、前記振動部と前記被駆動部とが加圧接触したとき、幅狭領域が接触部側に移動する。
これにより、前記接触部と前記二つの支持部との接続部付近が接触部から離れるモーメントが作用し、前記接触部は接触する側に凸となる形状に変形し接触部全体に面圧を分散させることが可能となる。
また、本発明は、振動型駆動装置の耐久性、特に特殊環境下での耐久性を上げることができることから、振動型駆動装置(超音波アクチュエータ)の耐久性が求められる分野すべてに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1:被駆動部
2:振動体
3:電気−機械エネルギー変換素子
4:加圧部(加圧バネ)
5:本環部
6:第一の支持部
7:第二の支持部
8:接触部
9:空間部
10:駆動軸
11:振動体支持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動体と移動体とを有し前記移動体を駆動する超音波アクチュエータ等と称される振動型駆動装置に関するものであり、特に移動体もしくは振動体の形状に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、振動体で発生した振動により移動体を駆動する振動型駆動装置(超音波アクチュエータ)が知られている。
このような振動型駆動装置における振動体は、一般に弾性体と、この弾性体上に配置された電気−機械エネルギー変換素子としての圧電素子とで構成されている。
例えば、弾性体に対して空間的に互いに90°の位相差を持った位置に二つの駆動相を有する圧電素子を配置し、この二つの駆動相に互いに90°の位相差を持つ二つの交流信号を印加することによって弾性体上に二つの曲げ振動を発生させる。
この二つの曲げ振動の合成により得られた駆動信号により、振動体に対して移動体を相対的に移動させる。
振動体および移動体の少なくとも一方における接触面には適切な摩擦力を得るための摩擦部材が接着、塗布、または形成されている。
【0003】
この摩擦部材は移動体が振動体に対して摺動されるため、駆動するにつれて摩耗していくが、その摩耗を遅らせることで振動型駆動装置の寿命を高めることが可能となる。
摩耗速度を決める要素の一つとして移動体と振動体との接触面圧が関係することが確認されており、これらの接触面圧を小さくすることで振動型駆動装置の寿命を高めることが可能となる。
接触面圧を小さくするための方法として、接触部の面積を広くすることが考えられる。
また、駆動中に異音を発生させないようにするために、接触部に弾性を持たせる必要がある。
これら二つの要因を解決するため、例えば図18に示す特許文献1のように、接触部を梁状部材で形成し前記接触部の両端を支持する構造を備えた超音波モータが提案されている。
この超音波モータは、図18に示されているように、弾性基板に圧電体を結合した振動体と、炭素繊維を用いて強化した炭素繊維強化複合体により構成しかつ両端支持条件の梁構造の移動体とからなる。
そして、この移動体は移動体梁部と、この梁部の両端部から延出した移動体第一突起と、振動体との接触面側の梁部から延出した移動体第二突起とで構成されている。
移動体の材質が樹脂であり移動体が2段突起構造の梁部を持っているため、移動体と振動体との接触面のうねりを吸収するための効果が発生する。これにより、移動体と振動体との均一接触を安定に維持することが可能となるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第03049931号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された振動型駆動装置のような構造で接触面圧をシミュレーションした結果を図19に示す。
図19は被駆動部に力を加え、振動体と加圧接触させた時の被駆動部と振動体との接触部における接触面圧の分布を表しており、グラフの上方ほど面圧が高いことを示している。
このように、上記従来例の構造では梁部のたわみ等のために第二突起部の両端に接触面圧が集中し、振動型駆動装置の耐久性を向上させる上で課題が生じる。
このような振動型駆動装置の耐久性を向上させるためには、移動体と振動体との接触面積を広げるだけでなく、接触面に全体的に加圧が分散するようにすることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、接触面圧を小さくするために移動体と振動体との接触面積を広げる一方、接触面圧を接触面に全体的に分散させることによって耐久性の向上を図ることが可能となる振動型駆動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の振動型駆動装置は、電気−機械エネルギー変換素子が取り付けられ、該電気−機械エネルギー変換素子に駆動電圧が印加されることにより振動する振動部と、
前記振動部と接触部とを介して摩擦接触し、前記振動部の振動により該振動部に対して相対移動する被駆動部と、を有する振動型駆動装置であって、
前記接触部は、前記被駆動部または前記振動部のいずれか一方から、それらの他方の側に突出した、バネ性を有する材料による二つの支持部によって支えられ、
前記二つの支持部の間に、これらの支持部によって支えられている接触部の幅よりも、間隔が狭くなる領域が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接触面圧を小さくするために移動体と振動体との接触面積を広げる一方、接触面圧を接触面に全体的に分散させることによって耐久性の向上を図ることが可能となる振動型駆動装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1における振動型駆動装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の振動型駆動装置における被駆動部の構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施例1の振動型駆動装置における被駆動部の変形例を示す図である。
【図4】本発明の実施例1の振動型駆動装置における面圧分布を計算した結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例2の振動型駆動装置における被駆動部の変形例を示す図である。
【図6】本発明の実施例2の振動型駆動装置における振動部の駆動状態を示す図である。
【図7】本発明の実施例2の振動型駆動装置における被駆動部のその他の構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施例3における振動型駆動装置の構成例を示す図である。
【図9】本発明の実施例3の振動型駆動装置における被駆動部の構成例を示す図である。
【図10】本発明の実施例3の振動型駆動装置における被駆動部の変形例を示す図である。
【図11】本発明の実施例3の振動型駆動装置における面圧分布を計算した結果を示す図である。
【図12】本発明の実施例4における振動型駆動装置の構成例を示す図である。
【図13】本発明の実施例4の振動型駆動装置における被駆動部の構成例を示す図である。
【図14】本発明の実施例4の振動型駆動装置における被駆動部の変形例を示す図である。
【図15】本発明の実施例4の振動型駆動装置における面圧分布を計算した結果を示す図である。
【図16】本発明の実施例5における振動型駆動装置の構成例を示す図である。
【図17】本発明の実施例5の振動型駆動装置における振動体の構成例を示す図である。
【図18】特許文献1における振動型駆動装置を示す図である。
【図19】特許文献1における構成と同様の構成で面圧分布を計算した結果を示す図である。
【図20】本発明の実施例1の振動型駆動装置における振動波により振動体の上面に楕円軌道状の送り運動が発生する状態を説明する図である。
【図21】(a)は本発明の実施例5における複数の突起を配置した圧電振動子の構成例を示す図である。(b−1)は圧電振動子の二つの曲げ振動モードのうち一方の曲げ振動モードを表した図、(b−2)は圧電振動子の二つの曲げ振動モードのうち他方の曲げ振動モードを表した図である。
【図22】(a)(b)は本発明の実施例1における被駆動部の作成方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、電気−機械エネルギー変換素子が取り付けられ、該電気−機械エネルギー変換素子に駆動電圧が印加されることにより振動する振動部と、前記振動部と接触部とを介して摩擦接触し、前記振動部の振動により該振動部に対して相対移動する被駆動部と、を有する振動型駆動装置であって、前記接触部は、前記被駆動部または前記振動部のいずれか一方から、それらの他方の側に突出した、変形、復元可能な材料による二つの支持部によって支えられ、前記二つの支持部の間に、これらの支持部によって支えられている接触部の幅よりも、間隔が狭くなる領域が形成されていることを特徴とするものである。
本発明の支持部の変形、復元可能な材料には、一定のバネ性又は弾性が求められる。本発明において、支持部の材料としては、ステンレスを用いることができる。具体的にはSUS420J2を用いることが好ましい。その他にも、マルテンサイト径SUSであるSUS440C、SUS420F等を用いることができる。
本発明の支持部の製法としては、切削加工又はプレス加工を用いることができる。そしてこれらの加工法により支持部を一体的に加工することが好ましい。また支持部を、外側支持部、内側支持部、接触部等の複数の部材に分けて加工した後に接合することもできる。また、接触部と本環部と支持部との間に囲まれた空間部を加工する際には支持部のRと一致する円弧上の刃を持つ工具を用いて加工を行うことで正確な形状を作成することができる
本発明を実施するための形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0011】
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用した振動型駆動装置の構成例について説明する。
図1(a)は本実施例における振動型駆動装置の斜視図を、(b)は本実施例における振動型駆動装置のカットモデルを示している。
ここで、まず本実施例の振動型駆動装置について説明する。
本実施例の振動型駆動装置は、電気−機械エネルギー変換素子が取り付けられ、該電気−機械エネルギー変換素子に駆動電圧が印加されることにより振動する振動部を備える。
そして、前記振動部と接触部を介して摩擦接触する被駆動部を、前記振動部の振動により該振動体に対して相対移動させるように構成されている。それらの具体的構成は図1に示されている。
図1において、1は被駆動部、2は振動体(振動部)、3は電気−機械エネルギー変換素子、4は前記被駆動部を前記振動体に加圧接触させるための加圧バネ、10は駆動軸、11は前記振動体を支持する振動体支持部である。
前記加圧バネ4は薄い板状に形成されており、接触する方向に反力がかかるように弾性変形させた状態で前記駆動軸10に固定されることで前記被駆動部1と前記振動体2とを加圧接触させている。
前記振動体2に接合された前記電気−機械エネルギー変換素子3に所定の位相差で二つの交流電圧を流し、振動体2及び電気−機械エネルギー変換素子3からなる振動子に進行性の振動波を励振させる。
この振動波により、図20に示すように前記振動体2の上面に楕円軌道状の送り運動が発生する。
この送り運動により、前記加圧部(加圧バネ)4を受けて前記振動体2と加圧接触した前記被駆動部1が前記振動体2に対して相対駆動される。
【0012】
図2は本実施例における振動型駆動装置の被駆動部の断面図を示した図である。
図2において、前記被駆動部1は本環部5と、変形、復元可能な材料による第一の支持部6と第二の支持部7とによる二つの支持部と、これらの二つの支持部によって支えられる梁状の構造で構成される接触部8とを備える。本発明において、変形、復元可能な材料とはバネ性又は弾性を有する材料を含む。
そして、前記二つの支持部と本環部との間に設けられ、前記二つの支持部の変形を逃がすための空間部9が形成されている。
図2に示すように、前記第一の支持部6と前記第二の支持部7とは、その一部が前記接触部8の幅よりも狭くなるように、前記接触部8の中央部の方向に向かって円弧を描くように構成されている。
【0013】
このように二つの支持部の間に、これらの支持部によって支えられている接触部の幅よりも、間隔が狭くなる領域を形成とすることで、加圧した際に二つの支持部が互いに近づくように変形させることができる。
すなわち、前記加圧部4により、前記被駆動部1が前記振動体2に加圧接触したとき、図3に示すように前記二つの支持部6及び7は、その円弧の弦が小さくなり、互いに近づくように変形する。
この変形により、前記二つの支持部6、7と前記接触部8との接続部が前記振動体2から離れる方向に移動するため矢印A、Bの方向にモーメントが発生し、前記接触部8は前記振動体2の方向に凸の形になるような変形となる。
このとき、図4に示すように被駆動部1と振動体2との接触部における面圧は両端から離れたところで最大値となっており、かつ中央付近においても面圧が0となっていないため、前記接触部8の全面に面圧を分散させることが可能となる。ここで、本実施例における被駆動部の作成方法を説明する。図22に示すように、本環上部51と、第一の支持部6と一体的に形成された本環外周側下部52と、第二の支持部7と一体的に形成された本環内周側下部53と、接触部8とを別々に切削加工で形成しこれらを接合することで被駆動部を構成している。接合方法として接着剤を用いる他、はんだ付け等の金属ろうづけ、レーザや電気抵抗熱などによる溶接などの方法で接合をしてもよい。また、前記本環上部、前記接触部はプレス加工で形成してもよい。
【0014】
[実施例2]
実施例2として、上記実施例1と異なる形態の振動型駆動装置の構成例について説明する。
図5は本実施例における振動型駆動装置の被駆動部の断面図であり、振動型駆動装置全体の構成は実施例1と同様である。
図5において、変形、復元可能な材料による、第一の支持部6の厚さよりも第二の支持部7の厚さが大きいため、内周側の剛性が外周側の剛性よりも高くなっている。
図6は、本実施例における振動型駆動装置の振動部の振動時の接触部の変形を径方向に平行な面から見た図である。
図6に示すように、振動部と被駆動部とが円環形状に形成され振動型駆動装置の振動部はある点を中心として軸方向に傾いた振動となっており、駆動時には接触状態において内周側と外周側とで高さが異なる。
そのため、本実施例のように被駆動部の接触部の剛性を内周側と外周側とで差をつけることで外周側の変形量が内周側の変形量よりも大きくなり、駆動時における内周側と外周側の支持部の変位量に差を出すことが可能となる。
これにより前記接触面8が振動体の接触面にそった変形をしやすくなるため、より効果的に面圧を分散させることが可能となる。
なお、図7に示すように内周側と外周側とで支持部を構成する円弧の径に差をつけ、大きさに差をつけた形状とすることで内周側と外周側との剛性に差を設けてもよい。
【0015】
[実施例3]
実施例3として、上記各実施例と異なる形態の振動型駆動装置の構成例について説明する。
図8(a)は本実施例における振動型駆動装置の斜視図を、(b)は本実施例における振動型駆動装置のカットモデルを示している。
図9は本実施例における振動型駆動装置の被駆動部の構成を示した図である。
図8において、13は被駆動部、2は振動体、3は電気−機械エネルギー変換素子、12は前記振動体を前記被駆動部に加圧接触させるための加圧バネである。14は前記振動体を支持する振動体支持部、15は前記被駆動部を受けて前記振動体支持部14に対して回転可能なようにベアリング16を介して前記振動体支持部14に支持された回転部である。
本実施例において、前記加圧部はウェーブワッシャとなっているが、コイルばね等のバネを用いてもよい。
前記被駆動部13は本環部17と、変形、復元可能な材料による第一の支持部18と第二の支持部19と、これらの二つの支持部によって支えられる梁状の構造で構成される接触部20と、前記二つの支持部と本環部との間に設けられる。そして、前記二つの支持部の変形を逃がすための空間部21が形成されている。
図9に示すように、前記二つの支持部18、19はその一部が前記接触部20の幅よりも狭くなるように、二つの支持部のうちの一方を接触部の中央部の方向に「逆くの字」に折り曲げると共に他方をくの字に折り曲げ、これらを対向させて構成されている。
【0016】
このような構成とすることで、前記加圧部4により、前記被駆動部13が前記振動体2に加圧接触したとき、図10に示すように前記二つの支持部18及び19は、その頂点部が接触部に向かうように変形する。
この変形により、前記二つの支持部18、19と前記接触部20との接続部において矢印A、Bの方向にモーメントが発生し、前記接触部20は前記振動体2の方向に凸の形となる変形をする。
このとき、図11に示すように被駆動部1と振動体2との接触部における面圧は両端から離れたところで最大値となっており、接触部中央以外で面圧がかかるようになっている。これより、前記接触部8の全面に面圧を分散させることが可能となる。
このように、支持部を直線状とすることで実施例1よりも簡単な構造でほぼ同等の効果を得ることができる。
また、加圧部を振動体側に設けることによりモータ中心部を開けることが可能なためレンズなどの光学部材を駆動するのに適した構成とすることができる。
なお、実施例2のように内周側と外周側との剛性に差を設けるために厚さや大きさなどの形状に差を設けてもよい。
【0017】
[実施例4]
実施例4として、上記各実施例と異なる形態の振動型駆動装置の構成例について説明する。
図12(a)は本実施例における振動型駆動装置の斜視図を、(b)は本実施例における振動型駆動装置のカットモデルを示している。図13は本実施例における振動型駆動装置の被駆動部の構成を示した図である。
図12において、22は被駆動部、2は振動体、3は電気−機械エネルギー変換素子、23は前記被駆動部を前記振動体に加圧接触させるための加圧部、24は駆動軸、25は前記振動体を支持する振動体支持部である。
前記被駆動部22は本環部26と、変形、復元可能な材料による第一の支持部27と第二の支持部28と、これらの二つの支持部によって支えられる梁状の構造で構成される接触部29と、前記二つの支持部と本環部との間に設けられる。そして、前記二つの支持部の変形を逃がすための空間部30が形成されている。
図13に示すように、前記第一の支持部27及び前記第二の支持部28それぞれと前記本環部26との接続部の幅L1よりも、前記接触部29の接続部の幅L2の方が広くなるように構成されている。
【0018】
このような構成とすることで、前記加圧部23により前記被駆動部22が前記振動体2に加圧接触したとき、図14に示すように前記二つの支持部27、28は円弧の弦が小さくなる方向に変形して接近する。
そして、前記二つの支持部27、28と前記接触部29との接続部が前記振動体2から浮くため、矢印A、Bの方向にモーメントが発生し、前記接触部29は前記振動体2の方向に凸の形になるような変形をする。
このとき、図15に示すように、接触部における圧力分布が先行例の時よりも広がっており、面圧を広範囲に分散させることが可能となる。
【0019】
このように、接触部の幅を本環部と二つの支持部との接続部の幅よりも広くすることでも面圧を分散させることが可能となる。
実施例1〜実施例3と異なり、二つの支持部の最接近部から再度二つの支持部を離す構成を省くことができるため、二つの支持部の長さをより短くすることが可能となり、厚さ方向に小型化された構成とすることができる。
なお、実施例2のように内周側と外周側との剛性に差を設けるために厚さや形状に差を設けてもよい。
また、実施例3のように振動体の振動体と被駆動部との接触面と対抗する面の側にバネを設けてもよい。
【0020】
[実施例5]
実施例5として、上記各実施例と異なる形態の振動型駆動装置の構成例について説明する。
図16(a)は本実施例における振動型駆動装置の斜視図を、(b)は本実施例における振動型駆動装置のカットモデルを示している。図17は本実施例における振動型駆動装置の振動子の接触部の構成を示した図である。
図16において、31は振動体、32は被駆動部、33は電気−機械エネルギー変換素子であり、前記被駆動部32は磁石で構成されており、前記振動体31は磁性体であり、前記被駆動部と前記振動体との間には磁力による加圧力が働いている。
ここで、振動子の駆動基本構成を簡単に説明する。図21(a)は本実施例に搭載の物と同等の圧電振動子の基本構成を示した図である。
本実施例では突起部が一つであるが駆動原理は同等であり、図21(a)のように複数の突起を配置しても良い。なお、駆動方法の詳細は特開2004−320846号公報に記載されている。
【0021】
図21(b)は該圧電振動子の二つの曲げ振動モードを表した図である。
図21(b−1)における振動モードは、二つの曲げ振動モードのうち一方の曲げ振動モード(送りモードとする)を表している。
この送りモードは、矩形の振動体106の長辺方向(矢印X方向)における二次の屈曲運動であり、短辺方向(矢印Y方向)と平行な3本の節を有している。
ここで、突起部108は送りモードの振動で節となる位置の近傍に配置されており、送りモードの振動により矢印X方向(=電気−機械エネルギー変換素子が接合された面と平行な方向)で往復運動を行う。
また、図21(b−2)に示す振動モードは二つの曲げ振動モードの内他方の曲げ振動モード(突上げモードと呼ぶ)を表している。
この突上げモードは、矩形の振動体106の短辺方向(矢印Y方向)における一次の屈曲振動であり、長辺方向(矢印X方向)と平行な2本の節を有している。
【0022】
ここで、送りモードにおける節と突上げモードにおける節は、XY平面内において略直交するようになっている。
また、突起部108は突上げモードの振動で腹となる位置の近傍に配置されており、突上げモードの振動により矢印Z方向(=電気−機械エネルギー変換素子が接合された面と垂直な方向)に往復運動を行う。
上述した送りモードと突上げモードの振動を所定の位相差で発生させることにより、突起部108の先端に楕円運動を発生させ、図21の矢印X方向(=電気−機械エネルギー変換素子が接合された面と平行な方向)の駆動力を与えている。前記振動体31は、振動板34と、前記被駆動部との接触部37、前記接触部を梁状に支持するための変形、復元可能な材料による二つの支持部35、36とからなる突起部とで構成されている。
前記突起部と前記振動板との間には前記二つの支持部の変形を逃がすための空間部38が設けられている。
図17に示すように前記接触部37との接続部の幅よりも前記二つの支持部35、36の少なくとも一部が狭くなるように前記接触部37の中央部の方向に向かって円弧を描くように構成されている。
このような構成とすることで実施例1の時と同様に前記被駆動部に加圧接触した時に、前記接触部37に面圧を分散させることが可能となる。
本実施例では実施例1と同様の形状の突起としているが、実施例3、実施例4と同様の形状としても良い。また、加圧手段としてバネを用いる構成としてもよい。
【0023】
本発明は、以上で説明したように、前記被駆動部または前記振動部のいずれか一方から、それらの他方の側に突出した二つの支持部によって支えられた接触部が構成されたもとで、前記振動部と前記被駆動部とが加圧接触したとき、幅狭領域が接触部側に移動する。
これにより、前記接触部と前記二つの支持部との接続部付近が接触部から離れるモーメントが作用し、前記接触部は接触する側に凸となる形状に変形し接触部全体に面圧を分散させることが可能となる。
また、本発明は、振動型駆動装置の耐久性、特に特殊環境下での耐久性を上げることができることから、振動型駆動装置(超音波アクチュエータ)の耐久性が求められる分野すべてに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1:被駆動部
2:振動体
3:電気−機械エネルギー変換素子
4:加圧部(加圧バネ)
5:本環部
6:第一の支持部
7:第二の支持部
8:接触部
9:空間部
10:駆動軸
11:振動体支持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換素子が取り付けられ、該電気−機械エネルギー変換素子に駆動電圧が印加されることにより振動する振動部と、
前記振動部と接触部とを介して摩擦接触し、前記振動部の振動により該振動部に対して相対移動する被駆動部と、を有する振動型駆動装置であって、
前記接触部は、前記被駆動部または前記振動部のいずれか一方から、それらの他方の側に突出した、バネ性を有する材料による二つの支持部によって支えられ、
前記二つの支持部の間に、これらの支持部によって支えられている接触部の幅よりも、間隔が狭くなる領域が形成されていることを特徴とする振動型駆動装置。
【請求項2】
前記被駆動部または前記振動部と、前記二つの支持部との間には、前記二つの支持部の変形を逃がすための空間部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置。
【請求項3】
前記振動部と前記被駆動部とが円環形状に形成され、前記接触部が前記被駆動部から前記接触部の側に突出した前記二つの支持部によって支えられ、
前記二つの支持部における内周側の一方の支持部と外周側の他方の支持部とで、支持部の厚さに差をつけて内周側と外周側との剛性に差が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動型駆動装置。
【請求項4】
前記振動部と前記被駆動部とが円環状に形成され、前記接触部が前記被駆動部から前記接触部の側に突出した前記二つの支持部によって支えられ、
前記二つの支持部における内周側の一方の支持部と外周側の他方の支持部とで、支持部の大きさに差をつけて内周側と外周側との剛性に差が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動型駆動装置。
【請求項5】
前記接触部の幅よりも間隔が狭くなる領域が、
前記二つの支持部のうちの一方を前記接触部の中央部の方向に逆くの字に折り曲げると共に他方をくの字に折り曲げ、これらを対向させて構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動型駆動装置。
【請求項6】
前記接触部の幅よりも間隔が狭くなる領域が、
前記二つの支持部における前記被駆動部または前記振動部のいずれか一方との接続部の幅よりも、前記接触部との接続部の幅の方が広くなるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動型駆動装置。
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換素子が取り付けられ、該電気−機械エネルギー変換素子に駆動電圧が印加されることにより振動する振動部と、
前記振動部と接触部とを介して摩擦接触し、前記振動部の振動により該振動部に対して相対移動する被駆動部と、を有する振動型駆動装置であって、
前記接触部は、前記被駆動部または前記振動部のいずれか一方から、それらの他方の側に突出した、バネ性を有する材料による二つの支持部によって支えられ、
前記二つの支持部の間に、これらの支持部によって支えられている接触部の幅よりも、間隔が狭くなる領域が形成されていることを特徴とする振動型駆動装置。
【請求項2】
前記被駆動部または前記振動部と、前記二つの支持部との間には、前記二つの支持部の変形を逃がすための空間部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置。
【請求項3】
前記振動部と前記被駆動部とが円環形状に形成され、前記接触部が前記被駆動部から前記接触部の側に突出した前記二つの支持部によって支えられ、
前記二つの支持部における内周側の一方の支持部と外周側の他方の支持部とで、支持部の厚さに差をつけて内周側と外周側との剛性に差が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動型駆動装置。
【請求項4】
前記振動部と前記被駆動部とが円環状に形成され、前記接触部が前記被駆動部から前記接触部の側に突出した前記二つの支持部によって支えられ、
前記二つの支持部における内周側の一方の支持部と外周側の他方の支持部とで、支持部の大きさに差をつけて内周側と外周側との剛性に差が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動型駆動装置。
【請求項5】
前記接触部の幅よりも間隔が狭くなる領域が、
前記二つの支持部のうちの一方を前記接触部の中央部の方向に逆くの字に折り曲げると共に他方をくの字に折り曲げ、これらを対向させて構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動型駆動装置。
【請求項6】
前記接触部の幅よりも間隔が狭くなる領域が、
前記二つの支持部における前記被駆動部または前記振動部のいずれか一方との接続部の幅よりも、前記接触部との接続部の幅の方が広くなるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動型駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−139080(P2012−139080A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291625(P2010−291625)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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