説明

振動片、振動片の製造方法および振動子

【課題】製造が容易で、振動効率に優れた振動片を提供する。
【解決手段】3以上の奇数本の振動腕を有し、各振動腕が厚み方向であるZ方向に振動し
、かつ隣り合う振動腕が互いに反対方向に振動する振動片において、振動腕11,12,
13において振動腕11,12,13の厚みを規定する対向する面の一方の面から少なく
とも両側の側面にまで連続して設けられた下部電極21,22,23と、振動腕11,1
2,13の一方の面において下部電極21,22,23の上に形成された圧電膜31,3
2,33と、圧電膜31,32,33の上に形成された上部電極51,52,53と、を
有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動腕を有する振動片、振動片の製造方法および振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
振動腕を有する振動子において、振動腕が屈曲振動のように面内で振動するのではなく
、振動腕の厚み方向に振動する振動片が知られている。この振動片は、一般に複数本の振
動腕を有し、隣り合う振動腕が反対方向の振動を交互に繰り返す、ウォークモード振動を
行う振動片である。
例えば、特許文献1にはウォークモード振動を利用した角速度センサーが開示されてい
る。この角速度センサーはシリコンなどで形成された3本のアーム(振動腕)を有し、そ
れぞれのアームの一面にアーム駆動用の下層電極(下部電極)、圧電薄膜(圧電膜)、上
層電極(上部電極)がこの順に形成されている。これらの下層電極、圧電薄膜、上層電極
にて圧電素子が形成され、圧電薄膜の逆圧電効果により振動片の厚み方向に振動が可能で
ある。そして、隣り合うアームとは逆方向に振動するように各電極の極性が設定されてい
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−224627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような振動片において、下層電極、圧電薄膜、上層電極のそれぞれが重なり合った
部分が有効な圧電素子となり、圧電素子の有効な面積およびアームの中心に対する位置精
度が振動片の特性を確保するために重要となる。下層電極、圧電薄膜、上層電極の形成に
は、それぞれに形成誤差が生じ、その誤差は累積するため、振動片の製造において各アー
ムの下層電極、圧電薄膜、上層電極の形状および位置精度を厳しく管理する必要がある。
また、通常、下層電極、圧電薄膜、上層電極の順に膜を形成するために、上層になるほ
ど面積が小さくなり、圧電素子としての大きさは下層電極よりも小さくなり、所望の特性
が得られないことがある。
特に、振動片の小型化を図る場合には、圧電素子の形成精度に限界があり、振動片の特
性においてばらつきが大きくなり振動片の小型化が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態
または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる振動片は、3以上の奇数本の振動腕を有し、各前記振動
腕が厚み方向に振動し、かつ隣り合う前記振動腕が互いに反対方向に振動する振動片であ
って、前記振動腕において前記振動腕の厚みを規定する対向する面の一方の面から少なく
とも両側の側面にまで連続して設けられた下部電極と、前記振動腕の前記一方の面におい
て前記下部電極の上に形成された圧電膜と、前記圧電膜の上に形成された上部電極と、を
有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、振動腕において振動腕の厚みを規定する対向する面の一方の面から
少なくとも両側の側面にまで連続して設けられた下部電極が形成されている。このように
して、下部電極を振動腕の腕幅と同等の電極幅で形成することができ、従来に比べて圧電
素子を大きく形成することが可能である。そして、圧電素子が大きく形成できることから
、振動腕の振動領域を大きくでき、振動効率の良い振動片を提供できる。
また、振動腕に面積の大きい圧電素子を形成できるため、振動片の小型化が容易となる

【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる振動片において、前記下部電極が前記振動腕を囲んで
形成されていることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、下部電極が振動腕の周囲を囲んで形成されていることから、下部電
極を形成することによる振動腕に与える応力を表裏でキャンセルでき、振動腕にそりが発
生しない振動片を得ることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる振動片において、前記圧電膜が前記振動腕の厚みを規
定する対向する面の一方の面から少なくとも両側の側面にまで連続して設けられているこ
とが望ましい。
【0011】
この構成によれば、下部電極の上に圧電膜が振動腕の厚みを規定する対向する面の一方
の面から少なくとも両側の側面にまで連続して設けられている。
このようにして、下部電極と圧電膜との重なり部分を振動腕の腕幅と同等の電極幅で形
成でき、従来に比べて圧電素子を大きく形成することが可能である。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる振動片において、前記圧電膜が前記振動腕を囲んで形
成されていることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、圧電膜が振動腕の周囲を囲んで形成されていることから、圧電膜を
形成することによる振動腕に与える応力を表裏でキャンセルでき、振動腕にそりが発生し
ない振動片を得ることができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる振動片において、前記圧電膜と前記上部電極の間に絶
縁膜を含むことが望ましい。
【0015】
この構成によれば、圧電膜と上部電極の間に絶縁膜を含み、上部電極と下部電極との間
の電気的な短絡を防止でき、良好な振動片を得ることができる。
【0016】
[適用例6]本適用例にかかる振動子は、上記の振動片と、前記振動片を収納する収容
器を有し、前記振動片が前記収容器内に気密に収容されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、上記の振動片が収容器に収容されていることから、小型化が容易で
特性に優れた振動子を提供することができる。
【0018】
[適用例7]本適用例にかかる振動片の製造方法は、3以上の奇数本の振動腕を有し、
各前記振動腕が厚み方向に振動し、かつ隣り合う前記振動腕が互いに反対方向に振動する
振動片の製造方法であって、振動片の外形をエッチングして形成する外形エッチング工程
と、前記振動腕において前記振動腕の厚みを規定する対向する面の一方の面から少なくと
も両側の側面にまで連続して下部電極を形成する下部電極形成工程と、前記振動腕の前記
一方の面において前記下部電極の上に圧電膜を形成する圧電膜形成工程と、前記圧電膜の
上に上部電極を形成する上部電極形成工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
この製造方法によれば、振動腕において振動腕の厚みを規定する対向する面の一方の面
から少なくとも両側の側面にまで連続して下部電極を形成する。このようにすれば、下部
電極は精度の高いパターニングする必要がなく、上部電極の位置精度および面積に応じた
圧電素子を容易に形成することができる。そして、圧電素子が大きく形成できることから
、振動腕の振動領域を大きくでき、振動効率の良い振動片を提供できる。
【0020】
[適用例8]上記適用例にかかる振動片の製造方法は、前記下部電極形成工程において
、前記下部電極が前記振動腕を囲んで形成することが望ましい。
【0021】
この製造方法によれば、下部電極が振動腕の周囲を囲んで形成されていることから、下
部電極を形成することによる振動腕に与える応力を表裏でキャンセルでき、振動腕にそり
が発生しない振動片を得ることができる。
また、下部電極は精度の高いパターニングする必要がなく、容易に下部電極を形成する
ことができる。
【0022】
[適用例9]上記適用例にかかる振動片の製造方法は、前記圧電膜形成工程において、
前記圧電膜が前記振動腕を囲んで形成することが望ましい。
【0023】
この製造方法によれば、圧電膜が振動腕の周囲を囲んで形成されていることから、圧電
膜を形成することによる振動腕に与える応力を表裏でキャンセルでき、振動腕にそりが発
生しない振動片を得ることができる。
また、圧電膜は精度の高いパターニングする必要がなく、容易に圧電膜を形成すること
ができる。
【0024】
[適用例10]上記適用例にかかる振動片の製造方法において、前記圧電膜と前記上部
電極の間に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を含むことが望ましい。
【0025】
この製造方法によれば、圧電膜と上部電極の間に絶縁膜を含み、上部電極と下部電極の
間で短絡することを防止でき、良好な振動片を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態における振動片の構成を示す概略平面図。
【図2】図1の裏面の概略平面図。
【図3】圧電素子の構成を示す概略断面図。
【図4】第1の実施形態における振動片の動作を説明する模式図。
【図5】下部電極に接続される配線を示し、(a)は表面の概略平面図、(b)は裏面の概略平面図。
【図6】上部電極に接続される配線を示し、(a)は表面の概略平面図、(b)は裏面の概略平面図。
【図7】第1の実施形態における振動片の製造工程を説明する工程図。
【図8】第1の実施形態における振動片の製造工程を説明する工程図。
【図9】第1の実施形態の圧電素子における変形例の構成を示す概略断面図。
【図10】第1の実施形態の圧電素子における他の変形例の構成を示す概略断面図。
【図11】第2の実施形態における振動片を示し、(a)は概略平面図、(b)(c)は振動腕の動作を説明する模式図。
【図12】第3の実施形態における振動子の構成を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明
に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜
変更している。
(第1の実施形態)
【0028】
図1は本実施形態の振動片の構成を示す概略平面図である。図2は本実施形態の振動片
の構成を示し、図1の裏面の概略平面図である。図3は圧電素子の構成を示し、図1のA
−A断線に沿う概略断面図である。
振動片1は水晶またはシリコンなどの基材を用いて振動片1が形成されている。振動片
1は直交座標系でXY平面に展開したときに、Z方向を厚みとする形態である。振動片1
は3本の振動腕11,12,13を有し、振動腕11,12,13はX方向に並列される
と共に、Y方向に互いに平行に延在している。そして、振動腕11,12,13は基部1
5に連結され、各振動腕11,12,13が片持ち構造となる振動片1を構成している。
【0029】
各振動腕11,12,13の基部15に近い位置にはそれぞれ圧電素子61,62,6
3が形成されている。
振動腕11に形成された圧電素子61は、図3に示すように、下部電極21、圧電膜3
1、上部電極51が積層されて形成されている。
下部電極21は、振動腕11の周囲を囲んで形成されている。下部電極21の上には、
下部電極21を覆い振動腕11の周囲を囲んで圧電膜31が形成されている。そして、上
部電極51が、圧電膜31の上の振動腕11の厚みを規定する対向する面(Z方向に垂直
な面)11a,11bの一方の面11a側に設けられている。
このようにして、圧電膜31を挟んで下部電極21と上部電極51とが対向することで
圧電素子61が形成され、各電極間に正負の電圧をかけることで圧電膜が圧縮または伸長
することが可能である。そして、圧電膜が圧縮または伸長することで、振動腕をZ方向に
変位させることができる。
同様に、圧電素子62,63は、下部電極22,23、圧電膜32,33、上部電極5
2,53が積層されて形成されている。
【0030】
下部電極21,22,23および上部電極51,52,53は振動片1の基部15に引
き出され、パッケージなどの基台に固定されて電気的導通が図られる電極パッド部65,
66に接続されている。また、下部電極21,23と上部電極52とを繋ぎ、圧電素子6
1,63と圧電素子62との極性が逆になるように接続部57が設けられている。
【0031】
なお、下部電極および上部電極はAu、Al、Tiなどの金属材料を利用できる。また
、下部電極および上部電極は下地との密着強度を向上させるために下地との間にCr膜を
備えても良い。圧電膜としては、ZnO、AlN、PZT、LiNbO3、KNbO3など
の材料を使用することができるが、特にZnO、AlNがより良好な特性が得られ好まし
い。絶縁膜はSiO2、Si23などが用いられる。
また、振動片1の基材として水晶を用いる場合には、Xカット板、ATカット板、Zカ
ット板などを利用することができる。
【0032】
図4は、第1の実施形態における振動片の動作を説明する模式図である。
上記のような構成の振動片1は、各圧電素子(図示せず)に電圧を加えることで振動腕
はZ方向に変位する。そして、振動腕11と振動腕13は同じ極性の圧電素子が設けられ
ていることから、中央の振動腕12とその両脇の振動腕11,13は逆方向に振動し、交
番電圧を加えることで隣り合う振動腕が反対方向の振動を交互に繰り返す振動(ウォーク
モード振動)を行う。
【0033】
<下部電極および上部電極に接続される配線の構成>
次に、上記のような振動片1の動作を行うための、下部電極および上部電極に接続され
る配線について詳しく説明する。
図5は下部電極に接続される配線を示し、図5(a)は表(おもて)面の概略平面図、
図5(b)は裏面の概略平面図である。図6は上部電極および上部電極に接続される配線
を示し、図6(a)は表(おもて)面の概略平面図、図6(b)は裏面の概略平面図であ
る。
【0034】
まず、図5に示すように、下部電極21,22,23は振動腕11,12,13の周囲
を囲んで形成されている。
振動片の表面では、図5(a)に示すように、振動腕12の両側に位置する振動腕11
,13に形成された下部電極21,23からは、基部15に配線が引き出されて、接続部
27に接続されている。
一方、振動片の裏面では、図5(b)に示すように、中央に位置する振動腕12に形成
された下部電極22からは、基部15に配線が引き出されて、電極パッド部66に接続さ
れている。この電極パッド部66は基部15の側面に形成された配線により振動片の表面
に引き回されて、表裏に電極パッド部66が設けられている。
また、振動腕11に形成された下部電極21からは、同一面の基部15に配線が引き出
されて電極パッド部65に接続されている。この電極パッド部65は基部15の側面に形
成された配線により振動片の表面に引き回されて、表裏に電極パッド部65が設けられて
いる。
【0035】
上部電極51,52,53は下部電極21,22,23の上方の位置に形成される。
図6に示すように、中央に位置する振動腕12に形成された上部電極52からは、同一
面の基部15に配線が引き出されて、接続部57に接続されている。振動腕12の両側に
位置する振動腕11,13に形成された上部電極51,53からは、同一面の基部15に
配線が引き出されて接続され、さらにこれらの配線は電極パッド部66に接続されている
。また、図6(b)に示すように、他方の面(裏面)には配線は形成しなくともよい。
【0036】
このような、下部電極21,22,23および上部電極51,52,53に接続される
配線が構成され、下部電極側の接続部27と上部電極側の接続部57が接続され、下部電
極21,23と上部電極52が接続される。そして、下部電極21を通って電極パッド部
65に接続される。
このようにして、下部電極21,23と上部電極52が電極パッド部65に接続された
配線となる。
また、下部電極側の電極パッド部66と上部電極側の電極パッド部66とが接続され、
下部電極22と上部電極51,53が接続される。
このようにして、下部電極22と上部電極51,53が電極パッド部66に接続された
配線となる。
【0037】
<振動片の製造工程>
次に、本実施形態の振動片の製造工程について説明する。
図7、図8は本実施形態の振動片の製造工程を説明する工程図である。各図中では振動
腕部分の断面(図1におけるA−A断面に相当)を模式図として表している。
【0038】
まず、水晶基板またはシリコン基板などの基板70を用意し、基板70の表裏全面にス
パッタ装置を用いて耐蝕膜71を形成する(図7(a))。耐蝕膜71はCr膜を下地と
して、その上にAu膜で構成されている。そして、耐蝕膜71を覆うレジスト膜72を形
成して、振動片の外形にパターニングして、レジスト膜72をマスクとして耐蝕膜71を
エッチングする(図7(b))。
次に、レジスト膜72と耐蝕膜71をマスクにして、基板70をエッチングして、振動
片の外形エッチングを行う(図7(c)、外形エッチング工程)。この外形エッチングで
は、ドライエッチングまたはウェットエッチングの手法を用いて行われる。そして、レジ
スト膜72、耐蝕膜71を剥離する(図7(d))。
【0039】
続いて、外形が形成された基板の両面に、Cr膜を下地としてその上にAu膜で構成し
た下部電極形成膜を形成する。下部電極形成膜の上からレジスト膜を形成し、レジスト膜
を下部電極および配線の形状にパターニングする。
そして、レジスト膜をマスクとして下部電極形成膜をエッチングし(下部電極形成工程
)、その後、レジスト膜72を剥離する(図8(a))。このようにして、振動腕11,
12,13に下部電極21,22,23およびこの下部電極21,22,23に接続する
配線が形成される。
【0040】
続いて、スパッタ装置などを用いて下部電極21,22,23および配線の上方から基
板の表裏にかかる圧電膜を形成する。そして、圧電膜の上にレジスト膜を形成し、レジス
ト膜をパターニングし、レジスト膜をマスクとして圧電膜をエッチングする(圧電膜形成
工程)。そして、レジスト膜を剥離する(図8(b))。このようにして、下部電極21
,22,23の上から振動腕11,12,13の周囲を囲む圧電膜31,32,33がそ
れぞれ形成される。
【0041】
次に、スパッタ装置などを用いて圧電膜31,32,33の上方から基板の表裏にかか
る上部電極形成膜を形成し、上部電極形成膜の上にレジスト膜の形成、レジスト膜のパタ
ーニング、上部電極形成膜のエッチングを経て、各振動腕11,12,13に上部電極5
1,52,53およびこれに接続される配線を形成する(図8(c)、上部電極形成工程
)。このようにして、図1,2に示す振動片1が得られる。
【0042】
この製造方法のように、先に振動片の外形を加工することで、下部電極、上部電極、圧
電膜を形成してから外形を加工することに比べて、各膜に与えるダメージを低減できる。
このため、電極材料、圧電膜材料の選定する範囲が広がり、振動片の設計自由度が向上す
る。
さらに、下部電極21,22,23、圧電膜31,32,33は、精度の高いパターニ
ングをする必要がなく形成が容易である。
【0043】
なお、本実施形態の振動片1において、圧電膜31と上部電極51の間に絶縁膜を設け
ても良い。
図9は本実施形態の圧電素子における絶縁膜を設けた構成を示す概略断面図である。
図9に示すように、振動腕11には振動腕11の周囲を囲む下部電極21が設けられ、
その上に振動腕11を囲む圧電膜31が形成されている。そして、圧電膜31の上に絶縁
膜41が形成され、絶縁膜41の上に上部電極51が形成されている。
このように、圧電膜31と上部電極51の間に絶縁膜41が設けられてもよく、下部電
極21と上部電極51との間の電気的短絡を確実に防止することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態の振動片1は、振動腕11,12,13において下部電極2
1,22,23が振動腕11,12,13の周囲を囲んで形成されている。このように、
下部電極21,22,23を振動腕11,12,13の腕幅と同等の電極幅で形成するこ
とができ、従来に比べて圧電素子61,62,63を大きく形成することが可能である。
そして、圧電素子61,62,63が大きく形成できることから、振動腕11,12,1
3の振動領域を大きくでき、振動効率の良い振動片1を提供できる。
また、振動腕11,12,13に面積の大きい圧電素子61,62,63を形成できる
ため、振動片1の小型化が容易となる。
さらに、下部電極21,22,23が振動腕11,12,13を囲んで形成されている
ことから、下部電極21,22,23を形成することによる振動腕11,12,13に与
える応力を表裏でキャンセルでき、振動腕11,12,13にそりが発生しない振動片1
を得ることができる。
【0045】
また、下部電極21,22,23の上に圧電膜31,32,33が振動腕11,12,
13の厚みを規定する対向する面の一方の面から少なくとも両側の側面にまで連続して設
けられている。このようにして、下部電極21,22,23と圧電膜31,32,33と
の重なり部分を振動腕11,12,13の腕幅と同等の電極幅で形成でき、従来に比べて
圧電素子61,62,63を大きく形成することが可能である。
さらに、圧電膜31,32,33が振動腕11,12,13を囲んで形成されているこ
とから、圧電膜31,32,33を形成することによる振動腕11,12,13に与える
応力を表裏でキャンセルでき、振動腕11,12,13にそりが発生しない振動片1を得
ることができる。
また、圧電膜31,32,33と上部電極51,52,53の間に絶縁膜41,42,
43を含み、上部電極51,52,53と下部電極21,22,23の間で電気的な短絡
を防止でき、良好な振動片1を得ることができる。
【0046】
さらに、本実施形態の振動片1の製造方法によれば、振動腕11,12,13において
下部電極21,22,23が振動腕11,12,13の周囲を囲んで形成している。この
ようにすれば、下部電極21,22,23は精度の高いパターニングする必要がなく、上
部電極51,52,53の位置精度および面積に応じた圧電素子61,62,63を容易
に形成することができる。そして、圧電素子61,62,63が大きく形成できることか
ら、振動腕11,12,13の振動領域を大きくでき、振動効率の良い振動片1を提供で
きる。
また、圧電膜31,32,33が振動腕11,12,13を囲んで形成されていること
から、圧電膜31,32,33を形成することによる振動腕11,12,13に与える応
力を表裏でキャンセルでき、振動腕11,12,13にそりが発生しない振動片1を得る
ことができる。
さらに、圧電膜31,32,33は精度の高いパターニングする必要がなく、容易に圧
電膜31,32,33を形成することができる。
(変形例)
【0047】
次に、振動腕に形成される圧電素子の膜構造の変形例について説明する。以下の説明で
は一つの振動腕11の断面について図示して説明する。
図10は本実施形態の圧電素子における他の変形例の構成を示す概略断面図である。
図10(a)は、振動腕11に振動腕11の周囲を囲む下部電極21が設けられ、その
上に圧電膜31が振動腕11の一方の面から両側の側面にまで連続して設けられている。
そして、振動腕11における一方の面の圧電膜31上に上部電極51が設けられている。
図10(b)は、振動腕11に振動腕11の周囲を囲む下部電極21が設けられ、その
上に圧電膜31が振動腕11の一方の面に設けられ、圧電膜31の上に上部電極51が設
けられている。
図10(c)は、振動腕11に振動腕11の一方の面から両側の側面にまで連続して、
下部電極21が設けられている。そして、下部電極21の上に圧電膜31が振動腕11の
一方の面に設けられ、圧電膜31の上に上部電極51が設けられている。
【0048】
このように、圧電素子の膜構造として、下部電極21が少なくとも振動腕11の一方の
面から両側の側面にまで連続して設けられていれば良く、どのような形態であっても良い
。下部電極21がこのような構造をとることで、下部電極21が振動腕11の腕幅と同等
な電極幅で形成することが可能であり、大きな面積の圧電素子が得られる。そして、これ
らの変形例の振動片は第1の実施形態と同様の効果を享受できる。
また、これらの形態を適宜選択することで、振動腕にかかる膜応力による振動腕のそり
を調整でき、そりの少ない振動腕を得ることができる。
(第2の実施形態)
【0049】
次に、他の形態の振動片について説明する。
図11は第2の実施形態における振動片を示し、図11(a)は概略平面図、図11(
b)、(c)は(a)のE−E断線に沿う断面図であり、振動腕の動作を説明する模式図
である。
【0050】
振動片2は水晶またはシリコンなどの基材を用いて振動片2の外形が形成されている。
振動片2は直交座標系でXY平面に展開したときに、Z方向を厚みとする形態である。振
動片2は3本の振動腕111,112,113を有し、振動腕111,112,113は
X方向に並列されると共に、Y方向に互いに平行に延在している。そして、振動腕111
,112,113は基部115a,115bに連結され、各振動腕111,112,11
3が両持ち構造となる振動片2を構成している。
【0051】
振動腕111には、基部115a,115bに近い位置にそれぞれ圧電素子161が設
けられている。同様に、振動腕112,113には、基部115a,115bに近い位置
にそれぞれ圧電素子162,163が設けられている。なお、振動腕111,112,1
13の全長にわたって圧電素子161,162,163を設けても良い。
圧電素子161,162,163は下部電極、圧電膜、上部電極を積層して形成されて
おり、前述の図3、図9、図10で示した圧電素子と同様の構造を採用することができる

このように、圧電膜を挟んで下部電極と上部電極とが対向することで圧電素子161,
162,163が形成され、各電極間に正負の電圧をかけることで圧電膜が圧縮または伸
長することが可能である。そして、圧電膜が圧縮または伸長することで、振動腕111,
112,113をZ方向に変位させることができる。
また、圧電素子161,163と圧電素子162との極性が逆になるように構成されて
おり、図11(b)、(c)に示すように、隣り合う振動腕が反対方向の振動を交互に繰
り返す、ウォークモード振動を行う。
【0052】
このような形態の振動片2においても、第1の実施形態にて説明した製造工程と同様な
工程で製造することができ、また同様な効果を享受することができる。
なお、第1の実施形態、第2の実施形態において、3本の振動腕を有する振動片につい
て説明したが、振動腕の数は3以上の奇数本であれば良く、本実施形態に限定されない。
(第3の実施形態)
【0053】
次に、第3の実施形態として、上記で説明した振動片を備えた振動子について説明する

図12は振動子の構成を示し、図12(a)は概略平面図、図12(b)は(a)のG
−G断線に沿う概略断面図である。
振動子5は、振動片1と、収容器としてのセラミックパッケージ81と、蓋体85を備
えている。
セラミックパッケージ81は、振動片1を収納できるように凹部が形成され、その凹部
には振動片1の電極パッド部と接続される接続パッド88が設けられている。接続パッド
88はセラミックパッケージ81内の配線に接続され、セラミックパッケージ81の外周
部に設けられた外部接続端子83と導通可能に構成されている。
また、セラミックパッケージ81の凹部の周囲にはシームリング82が設けられている
。さらに、セラミックパッケージ81の底部には貫通穴86が設けられている。
【0054】
振動片1は、セラミックパッケージ81の接続パッド88に導電性接着剤84を介して
接着固定され、セラミックパッケージ81の凹部を覆う蓋体85とシームリング82とが
シーム溶接されている。セラミックパッケージ81の貫通穴86には金属材料の封止材8
7が充填されている。この封止材87は、減圧雰囲気内で溶融させられ、セラミックパッ
ケージ81内が減圧状態となるように気密に封止されている。
【0055】
このように、振動子5は第1の実施形態または第2の実施形態の振動片がセラミックパ
ッケージ81に収容され、小型化が容易で特性に優れた振動子5を提供することができる

なお、セラミックパッケージ81内に、発振回路を含むICなどの回路素子を収容して
発振器として構成することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1,2…振動片、5…振動子、11,12,13…振動腕、15…基部、21,22,
23…下部電極、27…接続部、31,32,33…圧電膜、41,42,43…絶縁膜
、51,52,53…上部電極、57…接続部、61,62,63…圧電素子、65,6
6…電極パッド部、70…基板、71…耐蝕膜、72…レジスト膜、81…セラミックパ
ッケージ、82…シームリング、83…外部接続端子、84…導電性接着剤、85…蓋体
、86…貫通穴、87…封止材、88…接続パッド、111,112,113…振動腕、
115a,115b…基部、161,162,163…圧電素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3以上の奇数本の振動腕を有し、各前記振動腕が厚み方向に振動し、かつ隣り合う前記
振動腕が互いに反対方向に振動する振動片であって、
前記振動腕において前記振動腕の厚みを規定する対向する面の一方の面から少なくとも
両側の側面にまで連続して設けられた下部電極と、
前記振動腕の前記一方の面において前記下部電極の上に形成された圧電膜と、
前記圧電膜の上に形成された上部電極と、を有することを特徴とする振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の振動片において、
前記下部電極が前記振動腕を囲んで形成されていることを特徴とする振動片。
【請求項3】
請求項2に記載の振動片において、
前記圧電膜が前記振動腕の厚みを規定する対向する面の一方の面から少なくとも両側の
側面にまで連続して設けられていることを特徴とする振動片。
【請求項4】
請求項2に記載の振動片において、
前記圧電膜が前記振動腕を囲んで形成されていることを特徴とする振動片。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の振動片において、
前記圧電膜と前記上部電極の間に絶縁膜を含むことを特徴とする振動片。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の振動片と、前記振動片を収納する収容器を有し

前記振動片が前記収容器内に気密に収容されていることを特徴とする振動子。
【請求項7】
3以上の奇数本の振動腕を有し、各前記振動腕が厚み方向に振動し、かつ隣り合う前記
振動腕が互いに反対方向に振動する振動片の製造方法であって、
振動片の外形をエッチングして形成する外形エッチング工程と、
前記振動腕において前記振動腕の厚みを規定する対向する面の一方の面から少なくとも
両側の側面にまで連続して下部電極を形成する下部電極形成工程と、
前記振動腕の前記一方の面において前記下部電極の上に圧電膜を形成する圧電膜形成工
程と、
前記圧電膜の上に上部電極を形成する上部電極形成工程と、を有することを特徴とする
振動片の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の振動片の製造方法であって、
前記下部電極形成工程において、
前記下部電極が前記振動腕を囲んで形成することを特徴とする振動片の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の振動片の製造方法であって、
前記圧電膜形成工程において、
前記圧電膜が前記振動腕を囲んで形成することを特徴とする振動片の製造方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項に記載の振動片の製造方法において、
前記圧電膜と前記上部電極の間に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を含むことを特徴と
する振動片の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−187195(P2010−187195A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29879(P2009−29879)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】