説明

排ガスの浄化筒

【課題】 有害成分を含む排ガスを、浄化剤と接触させることにより有害成分を除去するとともに、有害成分による浄化筒の破過を検知剤により検知する浄化筒であって、浄化筒が破過する前の検知剤の変色を一箇所の覗窓で正確に検知することが可能で、有害成分の浄化筒下流側への流出を防止できる浄化筒を提供する。
【解決手段】 浄化筒の内壁面の水平断面と同等の大きさの外形状を有し外周に沿って切欠部を有する仕切板を1枚使用し、該仕切板を浄化筒の内壁に密着して配置するとともに、有害成分の検知剤の充填部及びその覗窓を、仕切板の切欠部の近辺に一箇所設ける。または、前記のような仕切板を2枚使用し、切欠部の位置が互いに反対側となるように、有害成分の浄化剤の予備充填部の最上流部及び最下流部に配置するとともに、有害成分の検知剤の充填部を、上流側の仕切板の切欠部の近辺に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程等から排出される有害成分を含む排ガスを、浄化剤と接触させて、排ガスから有害成分を除去するとともに、有害成分による浄化筒の破過を検知剤により時間的に余裕を持って正確に検知する排ガスの浄化筒に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工業においては各種のガスが使用されており、水素化物ガスとしては、アルシン、ホスフィン、シラン、ジボラン、セレン化水素等が、酸性ガスとしては、フッ素、塩素、フッ化水素、塩化水素、三フッ化塩素、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、四フッ化珪素、四塩化珪素、四塩化チタン、塩化アルミニウム、四フッ化ゲルマニウム、六フッ化タングステン等が、塩基性ガスとしては、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ヒドラジン等が多量に使用されている。これらのガスは毒性を有するため、半導体製造工程で使用された後、これらの有害成分を含む排ガスは大気中に放出するに先立って浄化する必要がある。
【0003】
従来より、排ガスに含まれる前記の有害成分の除去方法としては、有害成分の浄化剤を浄化筒に充填し、排ガスを浄化筒に導入して、有害成分を浄化剤と接触させて捕捉することにより除去する乾式浄化方法が多く実施されてきた。乾式浄化方法において、各種の浄化剤は、各々有害成分に対する固有の浄化能力(浄化剤単位量当りの有害成分の除去量)を有しており、ある程度の量の有害成分を捕捉できるが、それを超えると捕捉できなくなり、有害成分を下流側へ流してしまう虞があった。そのため、例えば特許文献1〜3に示すように、浄化剤の充填部を主要充填部と予備充填部から構成し、これらのほぼ中間の位置に有害成分と接触して変色する検知剤を充填し、さらに浄化筒の外側から検知剤を観察することができる覗窓を設けて、浄化筒が破過する前に有害成分を検知することが行なわれている。
【0004】
乾式浄化方法においては、有害成分が浄化剤と接触する際に、有害成分と浄化剤が化学反応を起こすか、あるいは有害成分が浄化剤に吸着されて、有害成分が浄化剤に捕捉される。このような有害成分の反応部または吸着部は、浄化剤層の上流側から徐々に下流側に進行する。しかしながら、浄化剤層の中心部と周辺部の位置の違い、排ガスに含まれる粉化物の浄化剤層における堆積状態等により、有害成分の反応部または吸着部は、浄化剤層を均一に進行しないことがあり、特に浄化筒の径が大きい場合はこの傾向が顕著になり、覗窓の検知剤が変色していないにもかかわらず、有害成分が浄化剤の予備充填部を通過し浄化筒の下流側へ流れる虞があった。
【0005】
このため、例えば、浄化剤の充填部を二分割し、浄化剤の充填部間に空間を設け、その空間部に検知剤が充填された覗窓を設けることも考えられたが、空間内における浄化筒半径方向のガスの拡散では、有害成分の濃度が数ppmと低い場合は検知剤の変色が遅くなり、前記の方法と同様に有害成分の捕捉部が浄化筒の中心部で早く進行した場合は浄化筒の破過を見逃す虞があった。また、検知剤及びその覗窓を水平方向に複数箇所設置することにより、検知剤の変色前の浄化筒の破過を防止することが試みられたが、現実においては設置した複数の覗窓を全て確認する作業は、作業スペースの点で問題があり検知剤の変色が確認しにくい箇所がある等の不具合が発生する場合があった。
【特許文献1】特開2005−3475号公報
【特許文献2】特開2005−230679号公報
【特許文献3】特開2007−253082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、半導体製造工程等から排出される有害成分を含む排ガスを、浄化剤と接触させることにより有害成分を除去するとともに、有害成分による浄化筒の破過を検知剤により検知する浄化筒であって、浄化筒が破過する前の検知剤の変色を一箇所の覗窓で正確に検知することが可能で、有害成分の浄化筒下流側への流出を防止できる浄化筒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討した結果、浄化筒の内壁面の水平断面と同等の大きさの外形状を有し外周に沿って切欠部を有する仕切板を1枚使用し、該仕切板を浄化筒の内壁に密着して配置するとともに、有害成分の検知剤の充填部及びその覗窓を、仕切板の切欠部の近辺に一箇所設けることにより、浄化筒の破過を正確に検知することが可能となり、有害成分の浄化筒下流側への流出を防止できることを見出し、本発明の第一の構成の排ガスの浄化筒に到達した。
【0008】
また、前記のような切欠部を有する仕切板を2枚使用し、該仕切板を浄化筒の内壁に密着し、かつ該2枚の仕切板の切欠部の位置が互いに反対側となるように、有害成分の浄化剤の予備充填部の最上流部及び最下流部に配置するとともに、有害成分の検知剤の充填部を、上流側の仕切板の切欠部の近辺に設けることにより、浄化剤の予備充填部における排ガスの進行流路をコントロールし、浄化剤の予備充填部の利用効率を向上させることが可能となり、検知剤変色から浄化筒の破過までの時間的猶予を増加させて、有害成分の浄化筒下流側への流出を防止できることを見出し、本発明の第二の構成の排ガスの浄化筒に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の第一の構成の浄化筒は、有害成分を含む排ガスの導入口、有害成分の浄化剤の主要充填部、有害成分の検知剤の充填部、検知剤の変色を確認する覗窓、検知剤より下流側に有害成分の浄化剤の予備充填部、及び浄化されたガスの排出口を有する排ガスの浄化筒であって、浄化筒の内壁面の水平断面と同等の大きさの外形状を有し外周に沿って切欠部を有する仕切板を、該仕切板の外周部が浄化筒の内壁に密着するように有害成分の浄化剤の主要充填部の最下流部に配置するとともに、有害成分の検知剤の充填部を、鉛直面の位置が有害成分の浄化剤の予備充填部の最下流部より上流側で、かつ水平面の位置が仕切板の切欠部の位置と少なくとも重なるように設けてなることを特徴とする排ガスの浄化筒である。
【0010】
また、本発明の第二の構成の浄化筒は、有害成分を含む排ガスの導入口、有害成分の浄化剤の主要充填部、有害成分の検知剤の充填部、検知剤の変色を確認する覗窓、検知剤より下流側に有害成分の浄化剤の予備充填部、及び浄化されたガスの排出口を有する排ガスの浄化筒であって、浄化筒の内壁面の水平断面と同等の大きさの外形状を有し外周に沿って切欠部を有する2枚の仕切板を、該仕切板の外周部が浄化筒の内壁に密着し、かつ該2枚の仕切板の切欠部の位置が互いに反対側となるように、有害成分の浄化剤の予備充填部の最上流部及び最下流部に配置するとともに、有害成分の検知剤の充填部を、鉛直面の位置が下流側の仕切板より上流側で、かつ水平面の位置が上流側の仕切板の切欠部の位置と少なくとも重なるように設けてなることを特徴とする排ガスの浄化筒である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第一の構成の排ガスの浄化筒は、仕切板の切欠部の近辺に設けられた検知剤の充填部を排ガスが確実に通過するので、検知剤の変色開始を確認することにより、有害成分の浄化筒下流側への流出を防止することが可能である。
また、本発明の第二の構成の排ガスの浄化筒は、上流側の仕切板と検知剤の充填部が前記のような構成であるほか、切欠部の位置が上流側の仕切板と反対側となるように下流側の仕切板が設けられた構成なので、浄化剤の予備充填部における排ガスの進行流路をコントロールし、浄化剤の予備充填部の利用効率を向上させることが可能となり、検知剤変色から浄化筒の破過までの時間的猶予を増加させて、有害成分の浄化筒下流側への流出を確実に防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、半導体製造工程等から排出される有害成分を含む排ガスを、排ガスの導入口から導入し、内部に充填された浄化剤と接触させることにより有害成分を除去するとともに、浄化剤の充填部の大部分を通過した有害成分を検知剤により検知する構成の浄化筒に適用される。尚、本発明における有害成分の浄化剤は、有害成分と接触すると有害成分と化学反応を起こすか、あるいは有害成分を吸着することにより、有害成分を捕捉する固体状の剤である。また、本発明における有害成分の検知剤は、有害成分と接触すると変色する固体状の剤である。
【0013】
本発明における有害成分は、半導体製造工程等から排出され、乾式浄化方法により浄化され得るものであれば特に制限されることがない。これらの有害ガス成分としては、例えば、アルシン、ホスフィン、シラン、ジボラン、セレン化水素等の水素化物ガス、フッ素、塩素、フッ化水素、塩化水素、三フッ化塩素、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、四フッ化珪素、四塩化珪素、四塩化チタン、塩化アルミニウム、四フッ化ゲルマニウム、六フッ化タングステン等の酸性ガス、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ヒドラジン等の塩基性ガス、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム等の有機金属化合物等を挙げることができる。これらは、通常は、窒素、水素、アルゴン、ヘリウム等のベースガスに含有された状態で排出される。
【0014】
以下、本発明の排ガスの浄化筒を図1〜図5に基いて説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
尚、図1は、本発明の第一の構成の排ガスの浄化筒の鉛直方向の構成の一例を示す断面図である。図2は、本発明の第二の構成の排ガスの浄化筒の鉛直方向の構成の一例を示す断面図である。図3、図4は、本発明における仕切板の水平面方向の形状例を示す構成図である。図5は、本発明の排ガスの浄化筒を用いたガス浄化システムの一例を示す構成図である。
【0015】
本発明の第一の構成の排ガスの浄化筒は、図1に示すように、有害成分を含む排ガスの導入口1、有害成分の浄化剤の主要充填部2、有害成分の検知剤の充填部3、検知剤の変色を確認する覗窓4、検知剤より下流側に有害成分の浄化剤の予備充填部5、及び浄化されたガスの排出口6を有する排ガスの浄化筒であって、浄化筒の内壁面の水平断面と同等の大きさの外形状を有し外周に沿って切欠部7を有する図3または図4に示すような仕切板8を、該仕切板の外周部9が浄化筒の内壁に密着するように有害成分の浄化剤の主要充填部の最下流部に配置するとともに、有害成分の検知剤の充填部3を、鉛直面の位置が有害成分の浄化剤の予備充填部5の最下流部より上流側で、かつ水平面の位置が仕切板8の切欠部7の位置と少なくとも重なるように設けてなる排ガスの浄化筒である。
【0016】
また、本発明の第二の構成の排ガスの浄化筒は、図2に示すように、有害成分を含む排ガスの導入口1、有害成分の浄化剤の主要充填部2、有害成分の検知剤の充填部3、検知剤の変色を確認する覗窓4、検知剤より下流側に有害成分の浄化剤の予備充填部5、及び浄化されたガスの排出口6を有する排ガスの浄化筒であって、浄化筒の内壁面の水平断面と同等の大きさの外形状を有し外周に沿って切欠部7を有する2枚の図3または図4に示すような仕切板8を、該仕切板の外周部9が浄化筒の内壁に密着し、かつ該2枚の仕切板の切欠部の位置が互いに反対側となるように、有害成分の浄化剤の予備充填部の最上流部及び最下流部に配置するとともに、有害成分の検知剤の充填部3を、鉛直面の位置が下流側の仕切板より上流側で、かつ水平面の位置が上流側の仕切板の切欠部の位置と少なくとも重なるように設けてなる排ガスの浄化筒である。
【0017】
本発明において、浄化筒の内壁面の水平断面が円形である場合は、仕切板の切欠部7の水平面における形状としては、図3(1)に示すような半月形、図3(2)に示すようなレンズ形、図3(3)に示すような扇形、図3(4)に示すような環の一部分の形状、またはこれらに類似する形状を例示することができる。また、浄化筒の内壁面の水平断面が正方形または長方形である場合は、仕切板の切欠部7の水平面における形状としては、図4(1)に示すような長方形、図4(2)に示すような半月形、図4(3)に示すような正方形、図4(4)に示すような扇形のほか、台形、三角形、またはこれらに類似する形状を例示することができる。これらの切欠部は、本発明の効果が阻害されない条件下で、仕切板の複数箇所に設けることもできる。
【0018】
仕切板の切欠部の水平面の面積は、通常は切欠部を含めた仕切板全体の水平面の面積の10〜45%であり、好ましくは切欠部を含めた仕切板全体の水平面の面積の20〜40%である。仕切板の切欠部の水平面の面積が10%未満の場合は、圧力損失が大きくなる虞があり、45%を超える場合は仕切板の効果が少なくなる虞がある。
尚、外周部に偏って前記のような形状及び面積の貫通部を有する仕切板であって、本発明と同様な効果が認められる仕切板を使用した浄化筒は、本発明の排ガスの浄化筒に含まれる。
【0019】
また、仕切板の切欠部は、仕切板の中心部(浄化筒の水平面の中心部)までおよばないことが好ましい。切欠部が中心部まで及んだ仕切板を使用した場合、浄化筒の中心部を流通する排ガスが、仕切板に遮られることなく浄化剤の充填部を通過する。その結果、第一の構成の排ガスの浄化筒(図1)おいては、検知剤による有害成分の検知が不正確になる虞がある。また、第二の構成の排ガスの浄化筒(図2)おいては、有害成分の検知が不正確になるほか、浄化剤の予備充填部5が有害成分の除去に充分に利用されなくなり、検知剤の変色開始の確認から浄化筒の切替え等の対応までの時間的な余裕が少なくなる虞がある。
【0020】
仕切板に使用される材料としては、非ガス透過性で有害成分に対する耐腐食性があれば特に制限されることがないが、例えば、炭素鋼、マンガン鋼、クロム鋼、モリブデン鋼、ステンレス鋼等の金属の他、セラミックス、耐腐食性樹脂等を使用することができる。
また、仕切板の外径は、浄化筒の内径以下の大きさで、かつ仕切板の外周部と浄化筒の内壁の間隙から排ガスが下流側に流出することを防止できる程度の大きさを有する必要がある。仕切板の厚みは材質にもよるが、通常は0.1〜20mm程度である。0.1mmよりも薄い場合は仕切板の強度が弱くなり、20mmよりも厚くしても効果は変わらない。
【0021】
本発明に用いられる2枚の仕切板は、通常は同一のものであるが、材質、厚み等が互いに異なっていてもよい。また、2枚の仕切板の切欠部も、通常は同一の大きさ及び形状であるが、互いに異なっていてもよい。第二の構成の排ガスの浄化筒において、2枚の仕切板の間隔は、浄化筒の大きさにもよるが。通常は20〜200mm、好ましくは50〜150mmである。2枚の仕切板の切欠部の位置は、仕切板の中心と各々の切欠部の中心を結ぶ2直線の角度が180度となることが好ましいが、30度以内のずれであれば本発明においては許容できる範囲である。尚、本発明においては、図1、図2に示すように、浄化剤の予備充填部の下流側に目皿10を設置することができる。
【0022】
本発明の第一の構成の排ガスの浄化筒において、有害成分の検知剤の充填部は、鉛直面の位置が予備浄化剤の充填部の最下流部より上流側となるように設けられる。しかし、検知剤の充填部の鉛直面の位置は、好ましくは仕切板と浄化剤の予備充填部の最下流部の間、さらに好ましくは、図1に示すように、仕切板の真下となるように設けられる。また、検知剤の充填部の水平面の位置は、仕切板の切欠部の位置と少なくとも重なるように設けられるが、好ましくはその中心位置が仕切板の切欠部の外郭の範囲内となるように設けられる。
【0023】
本発明の第二の構成の排ガスの浄化筒において、有害成分の検知剤の充填部は、鉛直面の位置が下流側の仕切板より上流側となるように設けられる。しかし、検知剤の充填部の鉛直面の位置は、好ましくは上流側の仕切板と下流側の仕切板の間、さらに好ましくは、図1に示すように、上流側の仕切板の真下となるように設けられる。また、検知剤の充填部の水平面の位置は、上流側の仕切板の切欠部の位置と少なくとも重なるように設けられるが、好ましくはその中心位置が上流側の仕切板の切欠部の外郭の範囲内となるように設けられる。
【0024】
検知剤の充填部は、例えば上流側の面及び下流側の面に通気性を有する筒状の容器に検知剤を充填することにより製作される。本発明の浄化筒の側壁には、例えば前記のような検知剤が充填された容器の取付け及び取外しが自由自在で、検知剤の変色を容易に確認できる覗窓8が設けられる。有害成分の検知剤の充填は、浄化筒に有害成分の浄化剤を充填するとともに、前記の容器を浄化筒の覗窓部に設置することにより行なわれる。
【0025】
本発明の排ガスの浄化筒は、半導体製造工程等から排出された排ガスの浄化において、例えば図5に示すようなガス浄化システムに適用することができる。排ガスの浄化は、浄化筒11に切欠部を有する仕切板を配置するとともに、所定の位置に検知剤、浄化剤を充填した後、排ガスの導入ライン12から有害成分を含む排ガスを、片方の浄化筒11に導入することにより行なわれる。ある程度の量の有害成分が浄化剤により除去され、検知剤の変色を確認することにより、浄化筒が破過する前に浄化筒を他の片方の浄化筒に切替えて、排ガスの浄化処理を連続して行なうことができる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
(浄化筒の製作)
図3(1)に示すような半月形の切欠部を有するステンレス製の仕切板(外径400mm、厚さ2mm)を製作した。この仕切板の切欠部の水平面の面積は、切欠部を含めた仕切板全体の水平面の面積の37%であった。
次に、この仕切板を浄化剤の予備充填部の最下流部より120mm上の位置に設けて、図1に示すような、排ガスの導入口、ガスの排出口、覗窓、目皿等を備えたステンレス製の浄化筒(内径400mm)の内壁に密着して配置した。
【0028】
市販の硫酸銅5水和物20.3kgを水に溶解した硫酸銅水溶液(13wt%)と市販の炭酸ナトリウム9kgを水に溶解した炭酸ナトリウム水溶液(10wt%)を混合し、PHを調整して沈殿物を生成させた後、酸化亜鉛1kgを添加した。得られた固体化合物を洗浄、乾燥し、バインダーとしてメチルセルロースを50g添加して押出し成型することにより、塩基性炭酸銅と酸化亜鉛を合計で95wt%以上含有(銅と亜鉛の原子数比1:0.15)する円柱状(直径2mm、長さ3mm)の浄化剤を調製した。
【0029】
また、粒の大きさが5〜10meshの粒状シリカゲル500gに、硝酸コバルト6水和物25gを水750mlに溶解した溶液を含浸させた後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液250mlを加えてかき混ぜたのち、ロータリーエバポレーターで50℃の温度で減圧乾燥させた。これにコンゴーレッド0.5gを水500mlに溶解した溶液を加えてかき混ぜ、再びロータリーエバポレーターで完全に減圧乾燥させて検知剤を調製した。
【0030】
内径45mm、高さ100mmの通気性容器に前記の検知剤を充填し、さらに通気性容器を覗窓部に配置するとともに、前記の浄化剤を充填して、図1に示すような浄化筒とした。浄化剤の主要充填長は150mmであった。また、検知剤の充填部は、図1に示すように、仕切板の切欠部の真下に設けた。
続いて浄化筒に、排ガスの導入ライン、排出ライン等を接続し、図5に示すようなガス浄化システムを製作した。
【0031】
(浄化試験)
前記の浄化筒に、有害成分として2000ppmの塩化水素を含有する窒素を、20℃、常圧下で377L/minの流量で流通させた。有害成分を含むガスを流通してから検知剤の変色開始が確認されるまでの時間、及び、浄化筒の出口ガスの一部をガス検知器(バイオニクス社製)により分析して、検知剤の変色確認から有害成分が浄化筒下流側へ流出するまでの時間を測定した。5回の浄化試験について、測定された時間の平均値及び変動幅((最大値−最小値)/平均値)の結果を表1に示す。
【0032】
[実施例2]
実施例1における浄化筒の製作において、仕切板の切欠部の面積の割合を37%から20%に変えたほかは実施例1と同様に浄化筒を製作した。この浄化筒を用いて実施例1と同様にして浄化試験を行なった結果を表1に示す。
【0033】
[実施例3〜5]
実施例1における浄化筒の製作において、仕切板を図3(2)に示すようなレンズ形の切欠部を有する仕切板(切欠部の面積の割合:35%)、仕切板を図3(3)に示すような扇形の切欠部を有する仕切板(切欠部の面積の割合:30%)、または図3(4)に示すような環の一部分の形状の切欠部を有する仕切板(切欠部の面積の割合:40%)に替えたほかは実施例1と同様に浄化筒を製作した。これらの浄化筒を用いて実施例1と同様にして浄化試験を行なった結果を表1に示す。
【0034】
[実施例6]
(浄化筒の製作)
図3(1)に示すような半月形の切欠部を有するステンレス製の仕切板(外径400mm、厚さ2mm)を2枚製作した。この仕切板の切欠部の水平面の面積は、切欠部を含めた仕切板全体の水平面の面積の37%であった。
次に、これらの2枚の仕切板を、切欠部の位置が互いに反対側となるように、120mmの間隔を設けて、図2に示すような、排ガスの導入口、ガスの排出口、覗窓、目皿等を備えたステンレス製の浄化筒(内径400mm)の内壁に密着して配置した。
【0035】
内径45mm、高さ100mmの通気性容器に実施例1と同様にして調製した検知剤を充填し、さらに通気性容器を覗窓部に配置するとともに、実施例1と同様にして調製した浄化剤を充填して、図2に示すような浄化筒とした。浄化剤の主要浄化剤の充填長は150mmであり、予備浄化剤の充填長は120mmであった。また、検知剤の充填部は、図2に示すように、上流側の仕切板の切欠部の真下に設けた。
続いて浄化筒に、排ガスの導入ライン、排出ライン等を接続し、図5に示すようなガス浄化システムを製作した。
【0036】
(浄化試験)
前記の浄化筒に、有害成分として2000ppmの塩化水素を含有する窒素を、20℃、常圧下で377L/minの流量で流通させた。有害成分を含むガスを流通してから検知剤の変色開始が確認されるまでの時間、及び、浄化筒の出口ガスの一部をガス検知器(バイオニクス社製)により分析して、検知剤の変色確認から有害成分が浄化筒下流側へ流出するまでの時間を測定した。5回の浄化試験について、測定された時間の平均値及び変動幅((最大値−最小値)/平均値)の結果を表1に示す。
【0037】
[実施例7]
実施例6における浄化筒の製作において、仕切板の切欠部の面積の割合を37%から20%に変えたほかは実施例6と同様に浄化筒を製作した。この浄化筒を用いて実施例6と同様にして浄化試験を行なった結果を表1に示す。
【0038】
[実施例8〜10]
実施例6における浄化筒の製作において、仕切板を図3(2)に示すようなレンズ形の切欠部を有する仕切板(切欠部の面積の割合:35%)、仕切板を図3(3)に示すような扇形の切欠部を有する仕切板(切欠部の面積の割合:30%)、または図3(4)に示すような環の一部分の形状の切欠部を有する仕切板(切欠部の面積の割合:40%)に替えたほかは実施例6と同様に浄化筒を製作した。これらの浄化筒を用いて実施例6と同様にして浄化試験を行なった結果を表1に示す。
【0039】
[実施例11〜14]
実施例1における浄化筒の製作において、内壁面の水平断面を正方形(一辺が350mm)に替えたほかは実施例1と同様にして浄化筒を製作した。この浄化筒に、仕切板として図4(1)〜(4)に示すような形状の切欠部を有する仕切板(切欠部の面積の割合:35%)を用いて、実施例1と同様にして浄化試験を行なった結果、有害成分を含むガスを流通してから検知剤の変色開始が確認されるまでの時間及び変動幅、検知剤の変色確認から有害成分が浄化筒下流側へ流出するまでの時間及び変動幅は、実施例1〜5と同程度であった。
【0040】
[実施例15〜18]
実施例6における浄化筒の製作において、内壁面の水平断面を正方形(一辺が350mm)に替えたほかは実施例6と同様にして浄化筒を製作した。この浄化筒に、仕切板として図4(1)〜(4)に示すような形状の切欠部を有する仕切板(切欠部の面積の割合:35%)2枚を用いて、実施例6と同様にして浄化試験を行なった結果、有害成分を含むガスを流通してから検知剤の変色開始が確認されるまでの時間及び変動幅、検知剤の変色確認から有害成分が浄化筒下流側へ流出するまでの時間及び変動幅は、実施例6〜10と同程度であった。
【0041】
[比較例1]
実施例1における浄化筒の製作において、仕切板を用いなかったほかは実施例1と同様に浄化筒を製作した。この浄化筒を用いて実施例1と同様にして浄化試験を行なった結果を表1に示す。尚、比較例1においては、検知剤の変色と有害成分の浄化筒下流側への流出がほぼ同時に確認された場合があった。
【0042】
[比較例2]
比較例1における浄化筒の製作において、同じ高さに検知剤の覗窓を等間隔で4箇所設けたほかは比較例1と同様に浄化筒を製作した。この浄化筒を用いて実施例1と同様にして浄化試験を1回行なった結果、有害成分を含むガスを流通してから各々の覗窓において検知剤の変色開始が確認されるまでの時間の変動幅は約40%であった
【0043】
【表1】

【0044】
以上のように、本発明の実施例の排ガスの浄化筒は、比較例の排ガスの浄化筒よりも浄化剤の破過を正確に検知することが可能で、有害成分の浄化筒下流側への流出を防止できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第一の構成の排ガスの浄化筒の鉛直方向の構成の一例を示す断面図
【図2】本発明の第二の構成の排ガスの浄化筒の鉛直方向の構成の一例を示す断面図
【図3】本発明における仕切板の水平面方向の形状例を示す構成図
【図4】本発明における図3以外の仕切板の水平面方向の形状例を示す構成図
【図5】本発明の排ガスの浄化筒を用いたガス浄化システムの一例を示す構成図
【符号の説明】
【0046】
1 有害成分を含む排ガスの導入口
2 有害成分の浄化剤の主要充填部
3 有害成分の検知剤の充填部
4 検知剤の変色を確認する覗窓
5 有害成分の浄化剤の予備充填部
6 浄化されたガスの排出口
7 切欠部
8 仕切板
9 外周部
10 目皿
11 浄化筒
12 排ガスの導入ライン
13 排出ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害成分を含む排ガスの導入口、有害成分の浄化剤の主要充填部、有害成分の検知剤の充填部、検知剤の変色を確認する覗窓、検知剤より下流側に有害成分の浄化剤の予備充填部、及び浄化されたガスの排出口を有する排ガスの浄化筒であって、浄化筒の内壁面の水平断面と同等の大きさの外形状を有し外周に沿って切欠部を有する仕切板を、該仕切板の外周部が浄化筒の内壁に密着するように有害成分の浄化剤の主要充填部の最下流部に配置するとともに、有害成分の検知剤の充填部を、鉛直面の位置が有害成分の浄化剤の予備充填部の最下流部より上流側で、かつ水平面の位置が仕切板の切欠部の位置と少なくとも重なるように設けてなることを特徴とする排ガスの浄化筒。
【請求項2】
有害成分を含む排ガスの導入口、有害成分の浄化剤の主要充填部、有害成分の検知剤の充填部、検知剤の変色を確認する覗窓、検知剤より下流側に有害成分の浄化剤の予備充填部、及び浄化されたガスの排出口を有する排ガスの浄化筒であって、浄化筒の内壁面の水平断面と同等の大きさの外形状を有し外周に沿って切欠部を有する2枚の仕切板を、該仕切板の外周部が浄化筒の内壁に密着し、かつ該2枚の仕切板の切欠部の位置が互いに反対側となるように、有害成分の浄化剤の予備充填部の最上流部及び最下流部に配置するとともに、有害成分の検知剤の充填部を、鉛直面の位置が下流側の仕切板より上流側で、かつ水平面の位置が上流側の仕切板の切欠部の位置と少なくとも重なるように設けてなることを特徴とする排ガスの浄化筒。
【請求項3】
仕切板の切欠部の水平面の面積が、切欠部を含めた仕切板全体の水平面の面積の10〜45%である請求項1または請求項2に記載の排ガスの浄化筒。
【請求項4】
仕切板の切欠部が、仕切板の中心部までおよばない請求項1または請求項2に記載の排ガスの浄化筒。
【請求項5】
仕切板の水平面の形状が円形で、切欠部の水平面の形状が、半月形、レンズ形、扇形、または環の一部分の形状である請求項1または請求項2に記載の排ガスの浄化筒。
【請求項6】
仕切板の水平面の形状が正方形または長方形で、切欠部の水平面の形状が、正方形、長方形、半月形、または扇形、台形、または三角形である請求項1または請求項2に記載の排ガスの浄化筒。
【請求項7】
有害成分の浄化剤の予備充填部の下流側に、目皿を設けた請求項1または請求項2に記載の排ガスの浄化筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−76008(P2012−76008A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222632(P2010−222632)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000229601)日本パイオニクス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】