説明

排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法

【課題】内燃機関のエンジン回転数が低く燃料圧力が低い場合であっても、高精度の流量調整で排気通路に直接燃料を供給することができる排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法を提供する。
【解決手段】内燃機関10の排気通路16に上流側から順に、筒内燃料噴射用の燃料圧力Pfを用いて排気管内に直接燃料を噴射する第1排気管内直接燃料供給装置17と排気ガス浄化装置18を設けた排気ガス浄化システム1において、前記第1排気管内直接燃料供給装置17よりも供給容量が小さく、筒内燃料噴射用の燃料圧力Pfを使用しない第2排気管内直接燃料供給装置30を設ける。更に、前記第2排気管内直接燃料供給装置30を、前記排気通路16に設けたバイパス通路31の負圧により、燃料f2を燃料貯留部からバイパス通路31に吸引して前記バイパス通路31経由で燃料f2を前記排気ガス浄化装置18の上流側の前記排気通路16に供給するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOx吸蔵還元型触媒やディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)等の排気ガス浄化装置に対して排気管内への燃料直接噴射を行う排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガスを浄化するための装置の一つに、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)の浄化のためのNOx浄化触媒装置がある。このNOx浄化触媒装置の一つに、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を貴金属と共に担持して、酸素過剰な排気ガス中のNO(一酸化窒素)を酸化して硝酸塩として触媒上に吸着させて、NOxを浄化するNOx吸蔵還元型触媒を担持した装置がある。
【0003】
このNOx吸蔵還元型触媒は、排気ガスが酸素過剰なリーン空燃比状態では、NOxを吸蔵し、酸素濃度が低いか、空気過剰率が1より小さいリッチ空燃比状態では、吸蔵したNOxを放出すると共に、この放出されたNOxを還元雰囲気中で還元して、NOxを低減する。
【0004】
このNOx吸蔵還元型触媒は、ディーゼルエンジンの通常運転のようなリーン空燃比状態が継続すると、NOx吸蔵材であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の殆どが硝酸塩に変化し、触媒上に吸着させた硝酸塩の量が一定量を超えるとNOx吸蔵機能を失い、NOx浄化性能が低下する。そこで、NOx浄化性能を維持するために、NOx吸蔵能力が飽和に達する前に、酸素濃度に対して燃料由来の還元ガス濃度を増加して排気ガス中の酸素濃度を下げて、一時的に空気過剰率λが1以下のリッチ空燃比状態になるようにして、NOx吸蔵材からNOxを放出させる再生処理を行っている。この再生処理は、一定の時間間隔で行ったり、NOx吸蔵量の蓄積量を監視して、NOx吸蔵能力が飽和に近づいたときに行ったりしている。
【0005】
また、内燃機関の燃料中に硫黄成分が含まれているため、この硫黄成分が硫酸塩として触媒上に吸着されるために、NOx吸蔵材のNOx吸蔵能力が低下するという硫黄被毒の問題がある。この硫黄被毒からNOx吸蔵材を再生するために、触媒を700℃程度まで昇温させて、この温度に維持しながら排気ガス中に含まれる燃料量に対して酸素が不足する状態を作ってNOx吸蔵材の脱硫処理を行っている。
【0006】
これらの再生処理や脱硫処理のための制御では、触媒温度を適正な温度に維持しながら、排気ガス中に含まれる燃料量に対して排気ガス中の酸素が不足する状態を作る必要がある。一定濃度の酸素(吸入空気)が供給されている状態で燃料供給量を増加すると酸素が不足する状態(リッチ空燃比状態)になるが、この状態が継続すると燃料の酸化反応速度が低下し、時間当たりの発熱量が減少し、触媒温度が低下する。そのため、周期的に燃料供給量を減少して排気ガス中の酸素濃度を増加する制御が必要となる。
【0007】
これらの再生処理や脱硫処理のための制御では、エンジンの出力を低下させない程度に、シリンダ内への流入空気量を減らして酸素濃度を下げる吸気制御に加えて、排気ガスの一部を再び燃焼室内に戻すEGR(排気再循環)制御を行っている。また、更に、NOx浄化触媒に流入する排気ガス中の酸素濃度を更に下げる必要がある場合には、エンジンのシリンダ内燃料噴射制御において、ピストンの膨張行程において燃料を添加するポスト噴射制御や、NOx浄化触媒の上流側の排気通路に燃料を直接噴射して、NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチにする排気管内直接燃料噴射制御等を行っている。
【0008】
また、排気ガス中のPM(微粒子状物質)を捕集するパティキュレートフィルタの再生処理に際して、パティキュレートフィルタの床温が第1の温度以上である場合に、燃焼室中燃料添加手段を用い、排気通路温度が第2の温度以上で、かつ、パティキュレート床温が第3の温度以上ならば、排気通路中燃料添加手段を用いる内燃機関の排気浄化装置及び方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
これに関連して、触媒再生型のパティキュレートフィルタの再生に際して、燃料インジェクタからの燃料噴射を加熱して蒸発燃料にすると共に、この混合気を排気管内に送り込む途中で着火し、得られる燃焼ガスをパティキュレートフィルタの上流側に供給する排気ガス浄化装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
これらの排気管内直接燃料噴射では、液体である軽油燃料を微小な液滴となるように噴霧化し、短い時間内で蒸発及び気化させるために、高圧で燃料を噴射できる燃料噴射弁(インジェクタ)を使用している。この燃料噴射弁においては、触媒の温度維持や燃料と酸素との割合を制御の目標値通りに制御するためには、高精度の噴射量制御が求められる。
【0011】
しかしながら、内燃機関の筒内(シリンダ内)への燃料供給用の燃料供給ポンプで昇圧した燃料を使用した燃料噴射弁を用いる場合いは次のような問題がある。つまり、排気通路に直接燃料を供給する場合に、燃料圧力が、燃料供給ポンプの回転数に関係するエンジン回転数によって変化するため、エンジン回転数が低かったり、大きく変動していたりすると燃料圧力が設定圧力とならない。
【0012】
つまり、排気ガス浄化システムを搭載した車両を使用し走行している場合には、エンジン回転数は常に一定速度とは限らず、変動する場合がある。エンジン回転数が、変速機のギアシフトの過程で、例えば、1200rpmから2000rpmへ急激に変化するような場合に、燃料圧力はエンジンの回転数に比例して増加及び減少するので、何らかの手段を設けなければ燃料圧力が変動してしまう。燃料を噴射する時間が短ければ(例えば、1秒)この問題はかなり減らすことができるが、パティキュレートフィルタ(DPF)に捕集された微粒子状物質(PM)の燃焼除去処理やNOx吸蔵還元型触媒(LNT触媒)に吸着した硫黄を除去する脱硫処理では、数秒から数百秒にわたって連続して燃料を排気管内に噴射する場合があるので、このような場合では噴射中に回転数が変動してしまう可能性は高く、噴射中の燃料圧力が定まらない。
【0013】
そして、燃料圧力が設定圧力より低い状態で燃料を噴射する場合には、燃料の噴射量が必要量(制御目標量)よりも少なくなり、排気ガスの温度や触媒の温度が上昇し難くなる。逆に、燃料圧力が設定圧力より高い状態で燃料を噴射する場合には、燃料の噴射量が必要量よりも多くなり過ぎて、排気ガスの温度が上昇し過ぎたり、白煙が発生し易くなったりする。
【特許文献1】特開2003−148132公報
【特許文献2】特開2005−61249公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関のエンジン回転数が低く燃料圧力が低い場合であっても、高精度の流量調整で排気通路に直接燃料を供給することができる排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための本発明の排気ガス浄化システムは、内燃機関の排気通路に上流側から順に、筒内燃料噴射用の燃料圧力を用いて排気管内に直接燃料を噴射する第1排気管内直接燃料供給装置と排気ガス浄化装置を設けた排気ガス浄化システムにおいて、前記第1排気管内直接燃料供給装置よりも供給容量が小さく、筒内燃料噴射用の燃料圧力を使用しない第2排気管内直接燃料供給装置を設けて構成する。
【0016】
この構成により、燃料圧力が設定圧力に達しない低エンジン回転数領域では、エンジン回転数に依存する燃料圧力によらず、小容量の第2排気管内直接燃料供給装置により正確な供給量で排気管内への微少量の燃料供給を行うことができる。また、燃料圧力が設定圧力に達し、設定圧力になっている高エンジン回転数領域では第2排気管内直接燃料供給装置により設定圧力で正確な供給量で排気管内への直接燃料供給を行うことができる。
【0017】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記第2排気管内直接燃料供給装置を、前記排気通路に設けたバイパス通路の負圧により、燃料を燃料貯留部から前記バイパス通路に吸引して前記バイパス通路経由で前記排気ガス浄化装置の上流側の前記排気通路に供給するように構成する。この構成によれば、第2排気管内直接燃料供給装置では、燃料を吸引するので微少量の燃料供給が可能となる。
【0018】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記バイパス通路の前記排気通路からの分岐部位よりも下流の前記排気通路に絞り部を設けると共に、前記排気通路の前記バイパス通路との合流部位に排気絞り弁を設ける。この構成によれば、排気絞り弁の絞りにより、バイパス通路を負圧にして、第2排気管内直接燃料供給装置により微少量の燃料を吸引できる。
【0019】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、更に、前記第2排気管内直接燃料供給装置からの燃料供給量を調整するために、前記バイパス通路に排気ガス量調整装置を設けて構成する。この構成によれば、排気ガス量調整装置により燃料供給量の微小量調整ができる。
【0020】
あるいは、上記の排気ガス浄化システムにおいて、更に、前記第2排気管内直接燃料供給装置からの燃料供給量を調整するために、前記バイパス通路から前記合流部位よりも下流側で前記排気通路に合流する排気ガス量調整用通路を設けると共に、該排気ガス量調整通路に排気ガス量調整装置を設けて構成する。この構成によれば、排気ガス量調整装置により燃料供給量の微小量調整ができる。
【0021】
また、上記の目的を達成するための本発明の排気ガス浄化方法は、上記の排気ガス浄化システムにおいて、エンジン回転数が予め設定したエンジン回転数閾値以下の場合は、前記第2排気管内直接燃料供給装置から燃料を排気通路内に供給し、エンジン回転数が前記エンジン回転数閾値より大きい場合は、前記第1排気管内直接燃料供給装置から燃料を前記排気通路内に供給することを特徴とする方法である。
【0022】
このエンジン回転数閾値は、エンジン回転数がこのエンジン回転数閾値以下では、燃料圧力が設定圧力よりも低く、エンジン回転数によって変化し、エンジン回転数がこのエンジン回転数閾値より大きいと、燃料供給ポンプによる燃料圧力が設定圧力以上になって安定するエンジン回転数である。
【0023】
この方法により、燃料圧力が設定圧力に達しない低エンジン回転数領域では、エンジン回転数に依存する燃料圧力によらず、小容量の第2排気管内直接燃料供給装置により正確な供給量で微少量の燃料供給を行うことができる。また、燃料圧力が設定圧力に達し、設定圧力になっている高エンジン回転数領域では第2排気管内直接燃料供給装置により設定圧力で正確な供給量で燃料供給を行うことができる。
【0024】
上記の排気ガス浄化方法において、前記第2排気管内直接燃料供給装置からの燃料供給は、前記排気絞り弁を絞ることにより、前記バイパス通路に負圧を発生させて行う。この方法によれば、第2排気管内直接燃料供給装置では、発生した負圧により燃料を吸引するので微少量の燃料供給が可能となる。
【0025】
上記の排気ガス浄化方法において、エンジン回転数が予め設定したエンジン回転数領域内において、前記第1排気管内直接燃料供給装置と前記第2排気管内直接燃料供給装置の両方から燃料供給を行う。この方法によれば、エンジン回転数が予め設定したエンジン回転数領域内にあって燃料圧力が比較的安定している場合に、基本的な燃料供給量を第1排気管内直接噴射装置で噴射し、供給量の微調整を第2排気管内直接燃料供給装置からの燃料供給の調整で行うことができるので、高精度で燃料供給できるようになる。
【0026】
また、上記の排気ガス浄化方法において、更に、前記第2排気管内直接燃料供給装置からの燃料供給量を調整するために、前記バイパス通路に排気ガス量調整装置を設けるか、あるいは、前記第2排気管内直接燃料供給装置からの燃料供給量を調整するために、前記バイパス通路から前記合流部位よりも下流側で前記排気通路に合流する排気ガス量調整用通路を設けると共に、該排気ガス量調整通路に排気ガス量調整装置を設けて構成した場合には、前記バイパス通路を通過する排気ガス量を調整することにより、前記第2排気管内直接燃料供給装置からの供給される燃料量を調整する。この方法によれば、排気ガス量調整装置により燃料供給量の微小量調整ができる。
【0027】
また、エンジン始動時や低出力運転等の排気低温時に、触媒の活性温度域に短い時間で昇温できるよう触媒の加熱に必要な燃料を排気管内直接燃料噴射によって供給する場合に、触媒温度の変化に対応させて、燃料供給量と燃焼に必要な空気量を高精度の流量調整で制御しながら供給することにより、排気ガス浄化装置の下流側への未燃燃料(HC)の排出を抑制することができる。
【0028】
また、排気ガス温度が低下することを内燃機関のシリンダに供給される燃料量とエンジン回転数から検知して、排気ガス浄化装置の上流側に供給する燃料と空気量(酸素量)を高精度で制御することにより、触媒温度が活性温度域よりも低温側へ外れることを抑制できる。
【0029】
また、硫黄被毒からの回復のための脱硫処理(硫黄脱離処理)においては、排気ガス浄化装置の触媒に流入する排気ガス中に、燃料と空気を高精度の流量調整で供給して燃料を燃焼させることにより、燃費の悪化を防止しつつ、触媒を高温に加熱し、脱硫可能な温度(700℃付近)の還元雰囲気に保つことができるようになる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法によれば、内燃機関のエンジン回転数が低い場合であっても、高精度の流量調整で排気通路に直接燃料を供給することができる。つまり、燃料噴射弁における燃料噴射圧力がエンジン回転数に依存して変化するようなエンジンの運転領域であっても、排気ガス流量に応じた燃料噴射量の高精度な流量調整制御を可能とすることができる。また、燃料噴射圧によらずに、燃料の微粒化と排気ガスとの混合が可能となる。
【0031】
更に、燃料を高精度で供給することで、排気ガス流量の増加を抑制することができ、排気管内直接燃料供給装置よりも下流側に配置した排気ガス浄化装置から排気ガスへの放熱を抑制できる。従って、エンジン回転数が不安定な過渡運転時の排気ガス浄化装置の保温性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の実施の形態の排気ガス浄化システム1の構成を示す。この排気ガス浄化システム1は、エンジン(内燃機関)10の排気通路16に上流側から順に、筒内燃料噴射用の燃料圧力Pfを用いて排気管(排気通路)16内に直接燃料f1を噴射する第1排気管内直接燃料供給装置17と排気ガス浄化装置18を備えて構成される。
【0033】
この排気ガス浄化システム1のエンジン10は、吸気マニホールド10aに接続される吸気通路11に吸入吸気量センサ12(MAFセンサ)とターボチャージャ13のコンプレッサ13aとインタークーラ14と吸気弁(インテークスロットル)15を備えている。また、排気マニホールド10bに接続される排気通路16に、ターボチャージャ13のタービン13bと、燃料を排気通路16内に直接噴射するための第1排気管内直接燃料供給装置17と排気ガス浄化装置18を備えている。この第1排気管内直接燃料供給装置17は筒内燃料噴射用の燃料圧力Pfを使用する燃料噴射弁で構成される。更に、排気マニホールド10bと吸気マニホールド10aを接続するEGR通路19には、EGRクーラー20とEGR弁21を備えている。
【0034】
排気ガス浄化装置18は、図1の構成では、酸化触媒装置(DOC)18a、NOx吸蔵還元型触媒装置(LNT)18b、触媒付きフィルタ装置(CSF)18cで構成されている。
【0035】
酸化触媒装置18aは、多孔質のセラミックのハニカム構造の担持体に、白金等の酸化触媒を担持させて形成される。この酸化触媒は、排気ガス中のHCやCOを酸化して排気ガスを浄化する役割と、NOx吸蔵還元型触媒3のNOx吸蔵能力を回復するためのNOx再生の際や触媒付フィルタ18cのPM再生の際に、排気通路16内に供給される燃料の一部を酸化して排気ガスGの温度を昇温する役割とを持っている。NOx吸蔵還元型触媒装置18bは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を貴金属と共に担持して形成され、酸素過剰な排気ガス中のNOを酸化して硝酸塩として触媒上に吸着させて、NOxを浄化する。このNOx吸蔵還元型触媒は、排気ガスがリーン空燃比では、NOxを吸蔵し、リッチ空燃比では、吸蔵したNOxを放出すると共に、この放出されたNOxを還元雰囲気中で還元して、NOxを低減する。このNOx放出のリッチ空燃比制御では、排気通路16内に燃料を直接供給する。
【0036】
触媒付フィルタ装置18cは、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を備えた触媒付きDPFで構成される。この触媒付きDPFは、多孔質のセラミックのハニカムのチャンネルの入口と出口を交互に目封じしたモノリスハニカム型ウォールフロータイプのフィルタ等で形成される。このフィルタの部分に白金や酸化セリウム等の触媒を担持する。
【0037】
この触媒付きDPFにより、排気ガス中のPMは、多孔質のセラミックの壁で捕集される。このPMの捕集量が増加した場合には、排気通路16内に燃料を噴射して、この燃料を酸化触媒により酸化して排気ガスの温度を高めて、この高温の排気ガスにより触媒付きDPFをPMの燃焼開始温度まで上昇させて、捕集されたPMを強制的に燃焼除去して、触媒付きDPFのPM再生を行う。
【0038】
更に、排気ガスGの温度を測定するために、排気ガス浄化装置18の入口に第1温度センサ22が、排気ガス浄化装置18の出口に第2温度センサ23とλ(空気過剰率)センサ24が配設される。
【0039】
これらのセンサ22、23、24等の測定値とエンジン10の運転制御に必要なデータを入力してエンジン10の運転状態と排気ガス浄化システム1の排気ガス浄化制御や再生制御を行う制御装置(図示しない)が設けられている。この制御装置はECU(エンジンコントロールユニット)と呼ばれる制御装置であり、エンジン10からのデータと吸入空気量センサ12等の検出値に基づいて、吸気弁15、第1排気管内直接燃料供給装置17、EGR弁22等や後述する第2排気管内直接燃料供給装置30や排気絞り弁16bを制御する。
【0040】
そして、本発明においては、更に、第1排気管内直接燃料供給装置17よりも供給容量が小さく、筒内燃料噴射用の燃料圧力を使用しない第2排気管内直接燃料供給装置30を設けて構成する。図2に示すように、この第2排気管内直接燃料供給装置30は、排気通路16に設けたバイパス通路31が負圧にすることにより、燃料f2を燃料貯留部32から吸引して、バイパス通路31経由で排気ガス浄化装置18の上流側の排気通路16に供給するように構成される。この第2排気管内直接燃料供給装置30では、燃料f2を吸引により排気通路16に供給するので微少量での高精度の流量調整が可能となる。
【0041】
また、バイパス通路31の排気通路16からの分岐部位33よりも下流の排気通路16に絞り部16aを設ける。それと共に、バイパス通路31の排気通路16への合流部位34に排気絞り弁16bを設ける。この排気絞り弁16bの絞りにより、バイパス通路31を負圧にして、微少量の燃料f2を吸引する。つまり、排気ガスGを絞った場所で排気ガスGの流速が上昇して圧力が低下する現象を利用して、バイパス通路31に燃料貯留部32に対して負圧を発生させて微少量の燃料f2を吸引して排気通路16に供給する。この排気絞り弁16bの弁開度の調整により、吸引する燃料f2の流量を調整することができる。
【0042】
更に、第2排気管内直接燃料供給装置30からの燃料供給量を調整するために、バイパス通路31から合流部位34よりも下流側で排気通路16に合流する排気ガス量調整用通路(排気管噴射用燃料バイパスポート部)35を設けると共に、排気ガス量調整通路35に出入可能な調整コーン等で形成される排気ガス量調整装置36を設ける。この排気ガス量調整装置36により、例えば、調整コーンの挿入量を調整することにより、燃料供給量の微小量調整ができるようになる。これにより、必要な燃料以上の燃料f2が排気ガス中に供給されることを防止する。なお、排気ガス量調整用通路23を設けずに、バイパス通路31に排気ガス量調整装置を設けてもよく、この場合には、燃料供給量を完全にゼロにすることもできるようになる。
【0043】
次に、上記の排気ガス浄化システム1における排気ガス浄化方法について説明する。この排気ガス浄化方法は、上記の排気ガス浄化システム1において、エンジン回転数Neが予め設定したエンジン回転数閾値Ns以下の場合は、第2排気管内直接燃料供給装置30から燃料f2を排気通路16内に供給し、エンジン回転数Neが予め設定したエンジン回転数閾値Nsより大きい場合は、第1排気管内直接燃料供給装置17から燃料f1を排気通路16内に供給する。
【0044】
図3に示すように、このエンジン回転数閾値Nsは、エンジン回転数Neがこのエンジン回転数閾値Ns以下では、燃料圧力Pfが設定圧力Pfsよりも低く、エンジン回転数Neによって変化する。また、エンジン回転数Neがこのエンジン回転数閾値Nsより大きいと、燃料供給ポンプによる燃料圧力Pfが設定圧力Pfs以上になって安定するエンジン回転数である。
【0045】
また、上記の制御は、例えば、図4及び図5に示すような制御フローに基づいて行うことができる、これらの制御フローは排気管内へ直接、燃料を供給する要求が生じた場合に呼ばれる制御フローであり、この要求が終了するまで、上級の制御フローに呼ばれて繰り返し実行される。
【0046】
図4の制御フローは、排気管内への燃料噴射を行うか否かを判断するものであり、排気ガス温度Gの温度Tgが低い場合には排気管内に燃料を供給しても、燃料が排気ガス浄化装置18の酸化触媒ユニット18aに到達しても、触媒酸化反応が起こらず、供給した燃料は未燃状態で排気ガス浄化装置18の下流側に流出するので、これを防止するために、酸化触媒ユニット18aでの酸化反応が可能となる排気ガス温度になってから燃料を供給するための制御フローである。
【0047】
図4の制御フローがスタートすると、排気ガスGの温度Tgが予め設定した温度閾値Tg1(例えば、250℃)以下の間は(S12のNO)、排気絞り弁16bの作動を停止し(S14)、排気ガスGの温度Tgが温度閾値Tg1よりも高くなってから(S12のYES)、排気絞り弁16bの作動を開始する(S13)制御フローである。この制御により、排気ガスGの温度が高くなるまで、排気絞り弁16bの絞り、及び、この絞りによる第2排気管内直接燃料供給装置30からの燃料f2の排気通路16内への供給を停止する。
【0048】
図5の制御フローは、エンジン回転数Neが予め設定したエンジン回転数閾値Ns以下の場合は(S22のNO)、排気絞り弁16bの動作を維持しつつ(S24)、第2排気管内直接燃料供給装置30のみから燃料f2を排気通路16内に供給し(S25)、エンジン回転数Neが予め設定したエンジン回転数閾値Nsより高い場合は(S22のYES)、第1排気管内直接燃料供給装置17からのみ燃料f1を排気通路16内に供給する(S23)。
【0049】
この方法により、燃料圧力Pfが設定圧力Pfsに達しない低エンジン回転数領域(Ne≦Ns)では、エンジン回転数Neに依存する燃料圧力Pfによらず、小容量の第2排気管内直接燃料供給装置30により正確な供給量で微少量の燃料供給を行うことができる。また、燃料圧力Pfが設定圧力Pfsとなっている高エンジン回転数領域(Ne>Ns)では第2排気管内直接燃料供給装置17により設定圧力Pfsで正確な供給量で燃料供給を行うことができる。
【0050】
また、第2排気管内直接燃料供給装置30からの燃料供給は、排気絞り弁16bを絞ることにより、バイパス通路31を通過する排気ガスG1の流速を増加して、バイパス通路31に負圧を発生させて行う。この方法によれば、第2排気管内直接燃料供給装置30では、発生した負圧により燃料f2を吸引するので微少量の燃料供給が可能となる。また、排気絞り弁16bの弁開度の調整により、吸引する燃料f2の流量を調整することができる。
【0051】
また、排気ガス量調整装置36でバイパス通路31を通過する排気ガスG1の流量を調整することにより、第2排気管内直接燃料供給装置30から供給される燃料f2の流量を調整する。この排気ガス量調整装置36により燃料供給量の微小量調整ができる。
【0052】
また、通常は、第1排気管内直接燃料供給装置17と第2排気管内直接燃料供給装置30のどちらか一方のみで排気管内に燃料を供給するが、同時に両方を使用するように構成してもよい。この場合は、エンジン回転数Neが予め設定したエンジン回転数領域内において、第1排気管内直接燃料供給装置17と第2排気管内直接燃料供給装置30の両方から燃料供給を行うように構成する。これによれば、エンジン回転数Neが予め設定したエンジン回転数領域内にあって燃料圧力が比較的安定している場合に、基本的な燃料供給量を第1排気管内直接噴射装置17で供給し、供給量の微調整を第2排気管内直接燃料供給装置30からの燃料供給の調整で行うことができるので、高精度で燃料供給射できるようになる。
【0053】
あるいは、燃料供給量の目標量が予め設定した供給量範囲内において、第1排気管内直接燃料供給装置17と第2排気管内直接燃料供給装置30の両方から燃料供給を行うように構成する。これによれば、第2排気管内直接燃料供給装置30だけでは供給量が足りないような場合量であっても両方から燃料供給できるので、高精度で燃料供給射できるようになる。
【0054】
上記の排気ガス浄化システム1及び排気ガス浄化方法によれば、エンジン10のエンジン回転数Neが低い場合であっても、高精度の流量調整で排気通路16に直接燃料を供給することができる。つまり、第1排気管内直接燃料噴射装置17の燃料噴射弁における燃料噴射圧力Pfがエンジン回転数Neに依存して変化するようなエンジン10の運転領域であっても、燃料噴射圧力Pfによらずに、排気ガスGの流量に応じた燃料噴射量の高精度な流量調整制御を可能とすることができ、燃料f2の微粒化と排気ガスGとの混合が可能となる。
【0055】
更に、燃料f1、f2を高精度で供給することで、必要な燃料以上の燃料が排気ガス中に供給されることを防止して、排気ガスGの流量の増加を抑制することができ、燃料直接供給装置17,30よりも下流側に配置した排気ガス浄化装置18から排気ガスGへの放熱を抑制できる。従って、エンジン回転数Neが不安定な過渡運転時の排気ガス浄化装置18の保温性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態の排気ガス浄化システムの構成を示す図である。
【図2】第1排気管内直接燃料供給装置と第2排気管内直接燃料供給装置の構成を示す図である。
【図3】エンジン回転数と燃料圧力との関係を示す図である。
【図4】排気絞り弁の制御フローの一例を示す図である。
【図5】排気管内への直接燃料供給の制御フローの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 排気ガス浄化システム
10 エンジン(内燃機関)
11 吸気通路
16 排気通路
16a 絞り部
16b 排気絞り弁
17 第1排気管内直接燃料供給装置
18 排気ガス浄化装置
30 第2排気管内直接燃料供給装置
31 バイパス通路
32 燃料貯留部
33 分岐部位
34 合流部位
35 排気ガス量調整用通路
36 排気ガス量調整装置
f1、f2 燃料
G 排気ガス
G1 バイパス通路の排気ガス
Ne エンジン回転数
Ns 予め設定したエンジン回転数閾値
Pf 燃料圧力
Pfs 設定圧力
Tg 排気ガスの温度
Tg1 温度閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に上流側から順に、筒内燃料噴射用の燃料圧力を用いて排気管内に直接燃料を噴射する第1排気管内直接燃料供給装置と排気ガス浄化装置を設けた排気ガス浄化システムにおいて、
前記第1排気管内直接燃料供給装置よりも供給容量が小さく、筒内燃料噴射用の燃料圧力を使用しない第2排気管内直接燃料供給装置を設けたことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項2】
前記第2排気管内直接燃料供給装置を、前記排気通路に設けたバイパス通路の負圧により、燃料を燃料貯留部から前記バイパス通路に吸引して前記バイパス通路経由で前記排気ガス浄化装置の上流側の前記排気通路に供給するように構成したことを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化システム。
【請求項3】
前記バイパス通路の前記排気通路からの分岐部位よりも下流の前記排気通路に絞り部を設けると共に、前記排気通路の前記バイパス通路との合流部位に排気絞り弁を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の排気ガス浄化システムにおいて、エンジン回転数が予め設定したエンジン回転数閾値以下の場合は、前記第2排気管内直接燃料供給装置から燃料を排気通路内に供給し、エンジン回転数が前記エンジン回転数閾値より大きい場合は、前記第1排気管内直接燃料供給装置から燃料を前記排気通路内に供給することを特徴とする排気ガス浄化方法。
【請求項5】
前記第2排気管内直接燃料供給装置からの燃料供給は、前記排気絞り弁を絞ることにより、前記バイパス通路に負圧を発生させて行うことを特徴とする請求項4記載の排気ガス浄化方法。
【請求項6】
エンジン回転数が予め設定したエンジン回転数領域内において、前記第1排気管内直接燃料供給装置と前記第2排気管内直接燃料供給装置の両方から燃料供給を行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の排気ガス浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−144572(P2010−144572A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321121(P2008−321121)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】