説明

排気ガス浄化用の触媒担体

【課題】第1に、触媒効率が向上し、有害物質の浄化性能に優れると共に、第2に、攪乱,乱流,そして圧力損失の増大を招くことがなく、第3に、構成が複雑化せず作業性にも優れ、コストアップが少ない、排気ガス浄化用の触媒担体を提案する。
【解決手段】この触媒担体は、帯状をなす金属箔製の波板11と平板が多層に巻き付けられてロール状をなすハニカム構造体が、外筒内に挿入されると共に、波板11と平板に触媒物質が付着せしめられている。そして波板11は、巻き付けられた軸方向Xの前後で、部分的に波の位相が異なっている。すなわち、波板11の位相ズレ部分15は、巻き付けられた軸方向Xの前後で、切断されて形成されており、波板11の位相ズレがないその他の部分16は、巻き付けられた軸方向Xの前後で、一体的に繋がっている。位相ズレ部分15は、波板11全体の50%以上〜95%以下の割合で、形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化用の触媒担体に関する。すなわち、排気ガス中の有害物質を除去して浄化する、触媒担体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
例えば自動車エンジンの排気ガス中には、一酸化炭素,炭化水素,窒素酸化物,その他の有害物質が含有されており、そのまま外気へ排出すると有害である。
そこで、エンジンの排気管には、排気ガス中の有害物質を除去する排気ガス浄化装置が、介装されている。そして、この種の排気ガス浄化装置としては、ハニカム構造をなし触媒物質が付着された構造の触媒担体が、代表的に使用されている。
【0003】
《従来技術》
図4,図5は、この種従来例の説明に供し、図4の(1)図は波板の斜視図、(2)図は平板の斜視図、(3)図は巻き付け状態の斜視図、(4)図は触媒担体の斜視図である。図5の(1)図は触媒担体の正断面図、(2)図は波板成形治具の斜視図である。
これらの図面にも示したように、この種従来例の排気ガスA浄化用の触媒担体1は、帯状をなす金属箔製の波板2と平板3とが多層にロール状に巻き付けられたハニカム構造体4が、外筒ケース5内に挿入された構造よりなる。
そして、エンジンから排気ガスAが、排気管6に介装された触媒担体1のハニカム構造体4の各セル空間7を通過し、含有されていた有害物質が、各セル空間7を形成する波板2や平板3に付着された触媒物質と接触して、反応,除去される。もって、排気ガスAが浄化されて、外気へと排出されるようになっていた。そして、この種従来例では、その波板2として、波のピッチや位相が全体的に一様な、一般的なものが使用されていた。
なお、図5の(2)図中、8,9は、波板成形治具の上下のギヤであり、波板2は、例えばこのようなギヤ8,9を用いて成形されていた。図4の(3)図,(4)図,図5の(1)図中、Xは、軸方向であり、軸を中心に巻き付けられたハニカム構造体4について、巻き取り中心軸方向を示す。
【0004】
《先行技術文献情報》
このような触媒担体1の従来例としては、例えば、次の特許文献1中に示されたものが挙げられる。
【特許文献1】特開2001−321678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来例については、次の問題が指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、触媒担体1のハニカム構造体4は、各セル空間7のセルサイズ(内径)が小さく、レイノルズ数が小さい。そこで、各セル空間7に流入して通過する排気ガスAは、層流となっており、攪乱されることもなく、セル壁である波板2や平板3に付着された触媒物質との接触が、少なく不十分となっていた。特に、各セル空間7の中央を層流となって流れる排気ガスAは、触媒物質と接触することなく通過していた。
このように、多くの排気ガスAは、含有された有害物質が触媒物質と接触することなく通過してしまい、触媒効率が悪く、有害物質の浄化程度が低い、という問題が指摘されていた。
【0006】
第2に、そこで、この種従来例の触媒担体1については、各種の対策が講じられていたが、圧力損失が増大したり、コストアップを伴う、という問題が指摘されていた。
まず、ハニカム構造体4の各セル空間7の更なる径小化を進め、もって、排気ガスAと触媒物質との接触を増やすことが、試みられていた。
しかしながら、径小化した分だけ圧力損失が増大し、例えば、上流側のエンジンに対し負荷,悪影響を及ぼし、出力低下を招くという問題が生じていた。
又、ハニカム構造体4を軸方向Xに複数分割すると共に、相互間に隙間空間を存しつつ並べて設置することも、試みられていた。すなわち隙間空間において、通過する排気ガスAを強制的に攪拌して、層流から乱流化し、もって、排気ガスAがムラなく一様に触媒物質と接触するようにすることも、試みられていた。
しかしながら、ハニカム構造体4の複数分割設置は、大幅なコストアップを伴うという問題が生じていた。
【0007】
更に、ハニカム構造体4のセル壁を形成する波板2や平板3について、孔加工や凹凸スクープ加工を施すことも、試みられていた。すなわち、このような加工により、排気ガスAの流れを強制的に移動,攪乱させて、層流を乱流化し、もって、排気ガスAがムラなく一様に触媒物質と接触するようにすることも、試みられていた。
しかしながら孔加工しても、静圧分に対応した排気ガスAしか移動せず、所期の効果が得られなかった。更に、孔穿け加工用の特殊治具を必要とすると共に、硬くて切れ易い波板2や平板3への孔穿け加工が容易でなく、手間がかかり作業性が悪い等々により、大幅コストアップを招くという問題が生じていた。
凹凸スクープ加工については、凹凸スクープ分だけ圧力損失が増大するという、問題があった。更に、スクープ加工用の特殊治具を必要とすると共に、硬くて切れ易い波板2や平板3へのスクープ加工が容易でなく、手間がかかり作業性が悪かった。特に、波やロール成形前にスクープ加工すると、事後、重なり合う箔との干渉回避のための位置取りが非常に困難であり作業性が悪く、更に、成形後のスクープ加工のためには、特殊治具形状が極めて複雑化する、等々により、大幅なコストアップを招くという問題が生じていた。
【0008】
《本発明について》
本発明の排気ガス浄化用の触媒担体は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、触媒効率が向上すると共に、第2に、圧力損失の増大を招くことがなく、第3に、コストアップも少ない、排気ガス浄化用の触媒担体を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1の排気ガス浄化用の触媒担体は、帯状をなす金属箔製の波板と平板が多層に巻き付けられてロール状をなすハニカム構造体が、外筒内に挿入されると共に、該波板と平板に触媒物質が付着せしめられてなる。そして該波板は、巻き付けられた軸方向の前後で、部分的に波の位相が異なっていること、を特徴とする。
請求項2については、次のとおり。請求項2の排気ガス浄化用の触媒担体は、請求項1において、該波板の位相ズレ部分は、巻き付けられた軸方向の前後で、切断されて形成されている。そして、該波板の位相ズレがないその他の部分は、巻き付けられた軸方向の前後で、一体的に繋がっていること、を特徴とする、。
請求項3については、次のとおり。請求項3の排気ガス浄化用の触媒担体は、請求項2において、該波板の位相ズレ部分は、該波板全体の50%以上〜95%以下の割合で形成されていること、を特徴とする。
【0010】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)有害物質を含有した排気ガスは、触媒担体に供給される。
(2)触媒担体のハニカム構造体は、波板と平板が多層ロール状に巻き付けられてなり、多数のセル空間が形成されると共に、触媒物質が付着せしめられている。
(3)そこで排気ガスは、ハニカム構造体を通過する際、有害物質が触媒物質と接触,反応,除去されて、浄化される。
(4)さて、この触媒担体では、軸方向の前後で部分的に波の位相が異なった波板が、採用されている。
(5)波板の位相ズレ部分は、その部分の箔材が軸方向の前後で、切断空間面を伴いつつ切断されている。
(6)そして排気ガスは、このようなハニカム構造体の各セル空間を、層流となって通過するが、位相ズレに起因して次のようになる。まず、上流側・一方側のセル空間の中央を通過した排気ガスは、下流側・他方側のセル空間の外周側を通過して、触媒物質と接触する。
(7)これに対し、上流側・一方側のセル空間の外周側を通過した排気ガスは、下流側・他方側のセル空間の中央を通過する。
(8)このようにして、大部分の排気ガスが、触媒物質と接触するようになる。
(9)しかも排気ガスは、層流のまま通過し、攪拌,乱流化されて圧力損失増大を招くこともない。
(10)そして、この触媒担体は、位相ズレ部分を備えた波板を採用した簡単な構成よりなると共に、波板が全体的には1枚板よりなり、成形や巻取り等も容易である
(11)さてそこで、本発明の排気ガス浄化用の触媒担体は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0011】
《第1の効果》
第1に、触媒効率が向上する。すなわち、本発明の排気ガス浄化用の触媒担体では、部分的に波の位相が異なった波板が採用されている。
そこで、そのハニカム構造体を層流となって通過する排気ガスは、一方側・上流側の各セル空間の中央を通過した排気ガスが、次に、これとは位相が異なっている他方側・下流側の各セル空間を、触媒物質と接触しつつ通過するようになる。
前述したこの種従来例のように、触媒物質と接触することなく通過してしまう排気ガスが、極めて少なくなる。排気ガス中の有害物質は、ムラなく一様に触媒物質と接触し、全体的に均等に過不足なく十分に、触媒物質と反応するようになる。従って本発明によると、触媒効率が向上し、有害物質の浄化性能に優れている。
【0012】
《第2の効果》
第2に、圧力損失の増大を招くこともない。すなわち、本発明の排気ガス浄化用の触媒担体では、排気ガスが、ハニカム構造体の各セル空間を層流のまま通過することにより、上述した第1の効果を発揮する。
前述したこの種従来例のように、セル空間径小化,孔加工,凹凸スクープ加工等により、圧力損失の増大を招くこともなく、例えば上流側のエンジンに負荷,悪影響を及ぼし、出力低下を招いたりすることもなく、触媒効率の向上が実現される。
【0013】
《第3の効果》
第3に、コストアップも少ない。すなわち、本発明の排気ガス浄化用の触媒担体は、部分的に波の位相が異なった波板を採用したことにより、前述した第1の効果を発揮する。
前述したこの種従来例のように、ハニカム構造体を複数分割設置したり、特殊治具を使用して手間取り、面倒な孔加工や凹凸スクープ加工を行うこともない等、構成が特に複雑化することはなく、簡単な構成により容易に、作業性やコスト面にも優れつつ、触媒効率の向上が実現される。
又、その波板は、部分的に位置ズレ部分が存するに止まり、全体的には1枚の波板よりなるので、その成形そして巻き取りもスムーズに行え、作業性やコスト面に難点を生じることもない。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
《図面について》
以下、本発明の排気ガス浄化用の触媒担体、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。図1,図2,図3は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。
そして、図1の(1)図は、その波板の一例の斜視図、(2)図は、波板の他の例の斜視図である。図2の(1)図は、触媒担体の斜視図、(2)図は、触媒担体の正断面図(なお図中、平板の図示は省略)、(3)図は、波板成形治具の斜視図である。図3の(1)図は、波板の説明図、(2)図は、遷移部の各種例の正面図、(3)図は、遷移部のその他各種例の要部正面図である。
【0015】
《触媒担体10について》
まず、図2の(1)図,(2)図を参照して、本発明の排気ガスA浄化用の触媒担体10について、一般的概要を説明する。
例えば、自動車のエンジンや、発電機,機関車,各種機械設備等の内燃機関のエンジンから排出される排気ガスA中には、一酸化炭素CO,炭化水素HC,窒素酸化物NOx,粒子状物質PM,その他の有害物質が含有されており、そのまま外気に排出されると人体や環境に有害である。
そこで、エンジンの排気管6には、排気ガスA中の有害物質を除去する排気ガス浄化装置の一環として、排気ガスA浄化用の触媒担体10が、途中に介装されている。そして触媒担体10は、帯状をなす金属箔製の波板11と平板12が多層に巻き付けられてロール状をなすハニカム構造体13が、外筒ケース5内に挿入されると共に、波板11と平板12に触媒物質が付着せしめられている。
【0016】
このような触媒担体10について、更に詳述する。まず、ハニカム構造体13のセル壁を構成する波板11と平板12とは、ステンレス箔その他の金属箔製よりなり、同幅平行の帯状をなす。波板11は、波型の凹凸が、帯の長辺に対して直角の短手方向に直線的に平行で、長手方向に繰り返し連続的に、所定ピッチと高さで折曲形成されている。
そして、1枚ずつの波板11と平板12が、中心軸から順次交互に重ね合わせられつつ多層に巻き付けられて、相互間の当接箇所の要部がロウ材で接合され、もって、このような波板11と平板12にてハニカム構造体13が構成されている。
ハニカム構造体13は、全体が例えば円柱ロール状をなすと共に、波板11と平板12とをセル壁として、軸方向Xに沿い各々独立空間に区画形成された中空柱状の各セル空間14の平面集合体よりなり、両端面が開口されている。触媒担体10では、ハニカム構造体13が外筒ケース5内に同軸に挿入されている。
そして、波板11や平板12の外表面には、触媒物質が付着されている。すなわち、単位容積当たりの表面積が大であるという特徴を備えたハニカム構造体13のセル壁である波板11や平板12の外表面を利用して、触媒物質が被膜状に付着,担持せしめられ、もって触媒物質の排気ガスAとの接触面積が、広く確保されている。
触媒物質としては、例えば、酸化反応促進用の白金,その他の貴金属や、還元反応促進用の物質が使用される。
触媒担体10は、概略このようになっている。
【0017】
《波板11について》
次に、図1,図2,図3を参照して、本発明の触媒担体10の波板11について、説明する。
この波板11は、連続した1枚よりなるが、巻き付けられた軸方向Xの前後で、部分的に、波の位相がズレて異なっている。そして、このような波板11において、位相ズレ部分15は、巻き付けられた軸方向Xの前後で、切断空間面を伴いつつ切断されて形成されており、波板11の位相ズレがないその他の部分16は、巻き付けられた軸方向Xの前後で、一体的に繋がっている。
この触媒担体10の波板11において、位相ズレ部分15は、全体の50%以上〜95%以下の割合で形成されている。
【0018】
このような波板11について、更に詳述する。この波板11は、触媒担体10としてロール状に巻き付けられた状態では、軸方向Xの前後で、波の位相が異なっている位相ズレ部分15と、位相ズレがない残りのその他の部分16と、から構成されている。
つまり波板11は、ロール状に巻き付けられる以前の直線帯状の状態では、左右幅方向Bの左右で、波の位相が異なっている位相ズレ部分15と、位相ズレがない残りのその他の部分16とが、連続的に繋がった1枚よりなる。
位相ズレ部分15は、軸方向Xの前後(つまり左右幅方向Bの左右)で、成形時に加圧力にて金属箔が切断空間面を伴いつつ切断され、もって一方側17と他方側18とに分かれると共に、その一方側17と他方側18とで、位相が異なるように加工されている。
これに対し、残りのその他の部分16は、軸方向Xの前後(つまり左右幅方向Bの左右)で、ピッチや位相が同一であり、波が繋がっており、一方側17と他方側18のように金属箔が切断されることなく、分かれず一体をなしている。
なお、波板11全体において、位相ズレ部分15とその他の部分16との比率は、位相ズレ部分15が過半数となるように設定されている。すなわち、位相ズレ部分15が、50%以上に設定されるが、波板11としての一体性保持のため、少なくとも50%は、その他の部分16とされる。
本発明では、このような波板11が使用される。
【0019】
《治具について》
そして波板11は、例えば、図2の(3)図に示した治具を用いて、成形される。すなわち、前述したこの種従来例では(図5の(2)図を参照)、その全外周面に同じピッチや位相の歯を備えたギヤ8,9等が、上下噛み合い治具として使用され、もって、供給される平板3を加圧して、ピッチや位相が一様な波板2が成形されていた。
これに対し本発明では、軸方向Xの前後で(左右幅方向Bの左右で)、部分的に位相ズレ部分19を備えたギヤ20等が、噛み合い治具として使用され、もって、供給される平板12を加圧して、一方側17と他方側18で位相が異なる位相ズレ部分15を、部分的に備えた波板11が成形される。
治具は、このようになっている。
【0020】
《その他》
なお第1に、図2の(3)図のギヤ20の位相ズレ部分19において、それぞれの外周面長さは同一である。
そこで例えば、図1,図3の(1)図において、成形された波板11の位相ズレ部分15の一方側17と他方側18間において、その凹凸をならした全体長さは同一である。つまり両者は、元は共に平板12であり、当然同一となる。
【0021】
なお第2に、波板11を構成する位相ズレ部分15,その一方側17,他方側18,その他の部分16等間において、形成される波の高さはすべて共通である。
しかしながら、より一層の触媒効率向上を目ざし、波のピッチ,波型形状,位相等については、一方側17と他方側18間で位相が異なる点を除き、共通としても良く、共通でなくしても良い。勿論、治具のギヤ20は、これに対応した形状となる。
【0022】
なお第3に、図1の(1)図,図3の(1)図の波板11では、位相ズレ部分15の一方側17と他方側18間で、位相が1/2ピッチだけズレた例が示されている。これに対し、図1の(2)図の波板11では、一方側17と他方側18間で、位相が1/4ピッチだけズレた例が示されている。
又、図3の(1)図の波板11では、位相ズレ部分15の他方側18と、その他の部分16とは、同じピッチや位相となっている。
【0023】
なお第4に、図1,図3中には、位相ズレ部分15とその他の部分16との間について、両者間の遷移部21の各種例が示されている。すなわち、位相ズレ部分15とその他の部分16間には、調整用の遷移部21が介在しているが、その介在位置,介在形状等については、各種態様が考えれる。
まず、遷移部21の位置については、次のとおり。例えば、図1の(1)図,(2)図の例の波板11では、位相ズレ部分15の一方側17と他方側18の双方について、それぞれ、その他の部分16との遷移部21が、片側位置に1つずつ設けられている。
これに対し、図3の(1)図の例では、位相ズレ部分15の一方側17についてのみ、その他の部分16との遷移部21が、両側位置に計2つ設けられ、他方側18には設けられていない。
【0024】
なお第5に、そして遷移部21の形状については、各種考えられる。図3の(2),(3)図の図示例では、僅かな平坦状,小山状(波板11の波形よりは高さ,幅共に小さい),小谷状(波板11の波形よりは高さ,幅共に小さい),これらの組み合わせ等々が可能である。
すなわち遷移部21は、位相ズレ部分19の一方側17と他方側18間で、寸法差が生じないように調整すべく形状設定される。同寸法の平板12から、位相ズレ部分15つまり位相が異なる一方側17と他方側18とを、成形することに鑑み、両者間に生じる寸法差を吸収すべく、遷移部21は設けられるので、その形状は各種可能である。
【0025】
《作用等》
本発明の排気ガスA浄化用の触媒担体10は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)エンジン等からの排気ガスAは、有害物質を含有しており、排気管6にて、排気ガスA浄化用の触媒担体10に、供給される(図2の(2)図を参照)。
【0026】
(2)触媒担体10は、ハニカム構造体13が外筒ケース5内に、挿入された構造よりなる。ハニカム構造体13は、波板11と平板12とが多層にロール状に巻き付けられ、もって波板11と平板12とをセル壁として、多数のセル空間14が形成されると共に、セル壁である波板11と平板12に、触媒物質が付着せしめられている(図2の(1)図を参照)。
【0027】
(3)排気ガスAは、このようなハニカム構造体13の各セル空間14に流入して、通過する。
そしてその際、含有されていた有害物質が、各セル空間14を形成するセル壁つまり波板11や平板12の触媒物質と接触して、例えば酸化や還元反応することにより、除去,無害化される。もって排気ガスAは、浄化されて外気へと排出される(図2の(2)図を参照)(なお、同図において平板12の図示は省略)。
【0028】
(4)さて、このように用いられる触媒担体10において、本発明では、軸方向Xの前後(つまり左右幅方向Bの左右)で、部分的に波の位相がズレて異なった波板11が、採用されている。
この波板11は、位相ズレ部分15とその他の部分16と、から構成されており、位相ズレ部分15が大部分(50%〜95%)を占めており、その他の部分16は、主に波板11としての一体性を維持すべく機能する。両者間には、必要に応じ遷移部21が介在している(図1,図3を参照)。
【0029】
(5)波板11の位相ズレ部分15は、その位相が異なる一方側17と他方側18との間が、軸方向Xの前後(つまり左右幅方向Bの左右)で、切断空間面を伴いつつ、切断された構造よりなる(図1を参照)。
【0030】
(6)排気ガスAは、このようなハニカム構造体13の内径が小さくレイノルズ数が小さい各セル空間14を、層流となって通過するが、セル壁を形成する波板11の位相ズレ部分19に起因して、次のようになる。
まず、軸方向Xの上流側、つまり波板11の位相ズレ部分15の例えば一方側17と平板12とで形成された各セル空間14において、その中央を通過した排気ガスAは、次に、切断空間面を介した後、下流側つまり位相ズレ部分15の他方側18と平板12とで形成された各セル空間14について、その外周側を通過する。
つまり、位相が異なることにより上流側とはズレて,食い違っている下流側のセル壁、つまり波板11や平板12の触媒物質と接触しつつ、通過するようになる(図2の(2)図を参照)。
【0031】
(7)これに対し、上流側・一方側17の各セル空間14の外周側を通過した排気ガスAは、次に、下流側・他方側18の各セル空間14の中央を通過するようにする。
【0032】
(8)このようにして排気ガスAは、その大部分が触媒物質と接触して、各セル空間14を通過するようになる。上流側か下流側のいずれかで、触媒物質と接触するようになり、触媒物質と接触することなく、各セル空間14の中央のみを通過する排気ガスAは、殆どなくなる。
【0033】
(9)しかも、この触媒担体10では、排気ガスAは、層流のままハニカム構造体13の各セル空間14を通過する。つまり排気ガスAは、攪拌されて乱流化されるようなことがなく、もって圧力損失の増大を招くこともない。
【0034】
(10)そして、この触媒担体10は、部分的に波の位相が異なった波板11を採用した点に、特徴が存しており、簡単な構成よりなる。又、この波板11は、全体的には1枚板よりなるので、その成形や巻取り等も容易である(図1,図3の(2)図を参照)。
【0035】
(11)なお以上説明した図示例の触媒担体10において、ハニカム構造体13の波板11の位相ズレ部分15は、軸方向Xに一方側17と他方側18に2分割して形成されていたが(図1等を参照)、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば軸方向Xに3分割して形成すると共に、隣接する相互間の位相が異なるように設定することも可能である。
又、以上説明した図示の波板11では、その他の部分16間に位相ズレ部分15が介在位置していたが、実際上は、このような関係が反復される。すなわち、実際の波板11では、その他の部分16と位相ズレ部分15とが、反復して繰り返されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る排気ガス浄化用の触媒担体について、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、その波板の一例の斜視図、(2)図は、波板の他の例の斜視図である。
【図2】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、触媒担体の斜視図、(2)図は、触媒担体の正断面図、(3)図は、波板成形治具の斜視図である。
【図3】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、波板の説明図、(2)図は、遷移部の各種例の正面図、(3)図は、遷移部のその他各種例の要部正面図である。
【図4】この種従来例の説明に供し、(1)図は、波板の斜視図、(2)図は、平板の斜視図、(3)図は、巻き付け状態の斜視図、(4)図は、触媒担体の斜視図である。
【図5】この種従来例の説明に供し、(1)図は、触媒担体の正断面図、(2)図は、波板成形治具の斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 触媒担体(従来例)
2 波板(従来例)
3 平板(従来例)
4 ハニカム構造体(従来例)
5 外筒ケース(外筒)
6 排気管
7 セル空間(従来例)
8 ギヤ(従来例)
9 ギヤ(従来例)
10 触媒担体(本発明)
11 波板(本発明)
12 平板(本発明)
13 ハニカム構造体(本発明)
14 セル空間(本発明)
15 位相ズレ部分
16 その他の部分
17 一方側
18 他方側
19 位相ズレ部分
20 ギヤ(本発明)
21 遷移部
A 排気ガス
B 左右幅方向
X 軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状をなす金属箔製の波板と平板が多層に巻き付けられてロール状をなすハニカム構造体が、外筒内に挿入されると共に、該波板と平板に触媒物質が付着せしめられた、排気ガス浄化用の触媒担体において、
該波板は、巻き付けられた軸方向の前後で、部分的に波の位相が異なっていること、を特徴とする、排気ガス浄化用の触媒担体。
【請求項2】
請求項1に記載した排気ガス浄化用の触媒担体において、該波板の位相ズレ部分は、巻き付けられた軸方向の前後で、切断されて形成されており、
該波板の位相ズレがないその他の部分は、巻き付けられた軸方向の前後で、一体的に繋がっていること、を特徴とする、排気ガス浄化用の触媒担体。
【請求項3】
請求項2に記載した排気ガス浄化用の触媒担体において、該波板の位相ズレ部分は、該波板全体の50%以上〜95%以下の割合で形成されていること、を特徴とする、排気ガス浄化用の触媒担体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−264596(P2008−264596A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106706(P2007−106706)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000187208)昭和飛行機工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】