説明

排水管路構造、排水管路の施工方法および排水管路施工セット

【課題】可撓管内に排水が溜まるのを防止し、かつ、鞘管内に可撓管を挿着するときの作業性を向上させる。
【解決手段】建物の基礎2内には屈曲鞘管3Aを貫通して埋設し、該屈曲鞘管3A内には可撓管4を挿着して、該可撓管4の上流側には屋内排水設備に連絡する屋内排水管7を接続し、該可撓管4の下流側には屋外排水設備に連絡する屋外排水管9を接続する。そして、該屈曲鞘管3Aは上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜されており、また、該屈曲鞘管3Aの下流端部は下流側が低くなるように傾斜されている排水管路構造1、排水管路の施工方法および排水管路セットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の排水管路構造、排水管路の施工方法および排水管路施工セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の排水管路構造として、建物の床下に形成された建物の基礎部を構成するコンクリート層を貫通して建物の内外で開口するようにさや管が埋設され、建物内の排水を建物外の排水経路に排水する排水管が前記さや管に挿通されており、前記さや管が、水平部と、この水平部から斜めに立ち上がる立ち上がり部とを備え、前期排水管のさや管に挿通される部分がフレキシブル管で形成されているとともに、さや管とフレキシブル管との隙間がさや管の建物外側の端部で、シール剤によって防水状態にされている建物の排水管配管構造が一般に提供されている(特許文献1参照)。
また、従来の建物の排水管路構造として、建物の外部位置で地表面下へと水平に下流端が貫通し、かつ、この下流端に対して傾斜して建物内の地表面より上方へ上流端が貫通した状態で建物のべた基礎に埋設されたベンド管と、このベンド管に挿脱可能に挿通され、このベンド管より径小なフレキシブル管とを具備している排水路装置であって、ベンド管の下流端とフレキシブル管の下流端との間がパッキンによって閉塞されている排水路装置が一般に提供されている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−54203号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】特開2002−116294号公報(第4−7頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成では、さや管またはベンド管の下流端部は水平とされているものの、該さや管内または該ベンド管内に挿通されたフレキシブル管が必ずしも水平となるわけではない。すなわち、上記従来の構成では、該さや管内または該ベンド管内に挿通するときの作業性を向上させるために、該フレキシブル管は十分な可撓性を有しており、更に、該さや管または該ベンド管とフレキシブル管との間には十分な隙間が設けられているため、特に該さや管または該ベンド管の水平な部分が長く設定されている場合には、該さや管内または該ベンド管内にフレキシブル管を挿通したときに該フレキシブル管の下流端部には弛みが生じる場合がある。ここで、該フレキシブル管の弛みの発生を防止するために、より可撓性の小さいフレキシブル管(より撓みが少ないフレキシブル管)を用いることも考えられるが、その場合には、該フレキシブル管をさや管またはベンド管に挿通する作業性が低下してしまう。
そして、フレキシブル管に弛みが生じた場合、上記従来の構成のようにさや管またはベンド管の下流端部が水平とされていると、その弛みによってフレキシブル管の下流端部で逆勾配が生じる場合があるという問題があり、その逆勾配となった部分で排水の流れが阻害され、その部分に排水が溜まることとなるという問題があった。
また、上記従来の構成では、さや管またはベンド管とフレキシブル管との隙間がシール剤またはパッキンによって閉塞されているので、排水路の点検・清掃・補修・交換の際に、該さや管または該ベンド管から該フレキシブル管を引き抜くことが困難であり、点検等の作業に手間や労力がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、建物の基礎2内には鞘管3(以下、3A,3B,3C,3D,3E,3Fをまとめて3と云う。)が貫通して埋設され、該鞘管3内には可撓管4が挿着されており、該可撓管4の上流側には屋内排水設備に連絡する屋内排水管7が接続され、該可撓管4の下流側には屋外排水設備に連絡する屋外排水管9が接続される排水管路構造1において、該鞘管3は上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜されており、また、該鞘管3の下流端部は下流側が低くなるように傾斜されている排水管路構造1を提供するものである。ここで、下流端部とは、下流端のみならず、下流端よりも少し上流側の部分をも含む部分をいう。
該鞘管3の下流端部は、該鞘管3に挿着した該可撓管4に弛みが生じた場合でも該可撓管4の下流端部で逆勾配が生じることのないように、下流側が低くなるように傾斜されていることが望ましい。
また、該可撓管4の下流側には角度調節継手8(以下、8A,8Bをまとめて8と云う。)が接続されており、該可撓管4の下流側には該角度調節継手8を介して該屋外排水管9が水平に接続されていることが望ましい。
更に、該基礎2の外壁面と該角度調節継手8との間にはシール部材13(以下、13A,13Bをまとめて13と云う。)が介在されていることが望ましい。
また更に、該鞘管3の内周面の所定箇所には係止凸部37が設けられており、該角度調節継手8または該可撓管4の外周面の所定箇所には係止部33が設けられており、また、該角度調節継手8は、上流側に該可撓管4が接続され下流側に該屋外排水管9が接続される継手部材27と、該シール部材13が取り付けられるフランジ部材28とを有しており、該フランジ部材28を該継手部材27に螺着することによって、該基礎2の外壁面と該角度調節継手8のフランジ部材28との間に該シール部材13を介在させることが望ましい。
【0006】
また本発明では、建物の基礎2内に鞘管3を貫通して埋設し、可撓管4の下流側に角度調節継手8を接続して、該可撓管4を該鞘管3内に挿着し、該基礎2の外壁面と該角度調節継手8との間にシール部材13を介在させて、該可撓管4の上流側に屋内排水設備に連絡する屋内排水管7を接続する一方、該可撓管4の下流側に該角度調節継手8を介して屋外排水設備に連絡する屋外排水管9を接続する排水管路の施工方法が提供される。
該可撓管4を該鞘管3内に挿着して可撓管4の係止部33を鞘管3の係止凸部37に係止させ、角度調節継手8のフランジ部材28を角度調節部材8の継手部材27に螺着して該基礎2の外壁面と該角度調節継手8との間にシール部材13を介在させることが望ましい。
【0007】
更に本発明では、建物の基礎2内に貫通して埋設される鞘管3と、該鞘管3内に挿着され、上流側には屋内排水設備に連絡する屋内排水管7が接続され、下流側には屋外排水設備に連絡する屋外排水管9が接続される可撓管4とを有する排水管路施工セット19において、該鞘管3は上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜されており、また、該鞘管3の下流端部は下流側が低くなるように傾斜されている排水管路施工セット19が提供される。
該鞘管3の下流端部は、該鞘管3に挿着した該可撓管4に弛みが生じた場合でも該可撓管4の下流端部で逆勾配が生じることのないように、下流側が低くなるように傾斜されていることが望ましい。
また、該可撓管4の下流側に接続される角度調節継手8を有しており、該可撓管4の下流側は該角度調節継手8を介して該屋外排水管9に水平に接続されることが望ましい。
更に、該基礎2の外壁面と該角度調節継手8との間に介在されるシール部材13を有することが望ましい。
また更に、該鞘管3の内周面の所定箇所には係止凸部37が設けられており、該角度調節継手8または該可撓管4の外周面の所定箇所には係止部33が設けられており、また、該角度調節継手8は、上流側に該可撓管4が接続され下流側に該屋外排水管9が接続される継手部材27と、該シール部材13が取り付けられるフランジ部材28とを有しており、該フランジ部材28を該継手部材27に螺着することによって、該基礎2の外壁面と該角度調節継手8のフランジ部材28との間に該シール部材13を介在させることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、鞘管3が上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜しており、また、該鞘管3の下流端部が、下流側が低くなるように傾斜されているため、該鞘管3内に可撓管4を挿着したときに該可撓管4に弛みが生じた場合であっても、該可撓管4の下流端部に水平部分や逆勾配部分(下流側のほうが上流側よりも高くなる部分)ができることがない。そのため、可撓管4内の排水の円滑な流れを確保することができ、該可撓管4内に排水が溜まるのを防止することができる。したがって、本発明では、十分な可撓性を有する可撓管4を使用することができるとともに、該鞘管3と該可撓管4との間に十分な隙間を設けることができるため、鞘管3に可撓管4を挿着するときの作業性を向上させることができる。
また、本発明では、鞘管3が上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜しているので、該鞘管3の上流側が建物の基礎2から外出する位置を、建物の基礎2の端部から近い位置に設定することができる。したがって、建物の屋内排水設備に連絡する屋内排水管7が建物の基礎2の端部から近い位置に設定されている場合、例えば水洗式トイレに連絡する屋内排水管7の場合であっても、屈曲させた複雑な排水経路を別途形成することなく、該鞘管3内に挿着した可撓管4に該屋内排水管7を接続することができる。また、建物の基礎2が深基礎2の場合、例えば傾斜地に建てられた建物の基礎2の場合であっても、該鞘管3の上流側が建物の基礎2から外出する位置を建物の基礎2の端部から近い位置に設定することができる。
更に、本発明では、該鞘管3の下流端部が、下流側が低くなるように傾斜されているため、該鞘管3の下流端部が水平とされている場合に比べて、該鞘管3の上流端部と下流端部との傾斜角度の差を減少させることができ、その上、鞘管3が上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜しているので、該鞘管3の曲率を大きく設定することができる。したがって、より可撓性の小さい可撓管4(より撓みが少ない可撓管4)を使用した場合であっても、該鞘管3内に可撓管4を円滑に挿着することができ、該鞘管3内に可撓管4を挿着するときの作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施例1〜実施例5により詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
本発明を図1〜図7に示す一実施例によって説明する。
図1に示すように、本実施例の建物の排水管路構造1では、建物のべた基礎2には屈曲鞘管3Aが貫通して埋設され、該屈曲鞘管3A内には可撓管4が挿着されている。該可撓管4の上流側には接続継手5が接続されており、該接続継手5には45°エルボ6を介して水平な屋内排水管7が接続され、該屋内排水管7は例えばキッチンやトイレ等の屋内排水設備(図示せず)に接続されている。一方、該可撓管4の下流側には角度調節継手8Aが接続されており、該角度調節継手8Aには水平な屋外排水管9が接続され、該屋外排水管9は例えば屋外排水ますや公共ます等の屋外排水設備(図示せず)に接続されている。
【0011】
該屈曲鞘管3Aの下流端部は下流側が低くなるように角度θだけ傾斜されている。そして、該屈曲鞘管3Aは下流端部よりも上流側の部分(中央部よりも下流側の部分)において上流側が高くなるように角度αだけ屈曲されている。このように、屈曲鞘管3Aの所定箇所を一箇所だけ屈曲させることによって、該屈曲鞘管3Aは上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜されている。
本実施例では、該屈曲鞘管3Aの下流端部の中心線X1と水平線Hとの角度θは10°に設定されており、該屈曲鞘管3Aの下流端部の中心線X1と該屈曲鞘管3Aの上流端部の中心線X2との角度αは35°に設定されている(図1参照)。また、該屈曲鞘管3Aの下流側の開口面は、該屈曲鞘管3Aを配置した場合に該開口面が垂直面(鉛直面)となるように、中心線X1の垂直面に対して角度θだけ傾斜して設けられている(図4参照)。
【0012】
該可撓管4としては、排水の円滑な流れを確保するために内周面が滑らかな独立波付け二重管が使用されており(図5参照)、また、該可撓管4の長さは、角度調節継手8Aと接続継手5を取り付けた可撓管4を屈曲鞘管3A内に下流側から挿着した場合に、接続継手5の上流端部と該屈曲鞘管3Aの上流端部が同じ位置になるように、最適な長さに設定されている(図1参照)。
【0013】
該角度調節継手8Aは、上流側の傾斜受口10と、下流側の水平受口11とを有している。本実施例では、該傾斜受口10は上流側が高くなるように角度θだけ傾斜して屈曲形成されており、一方、該水平受口11は水平に形成されている。
また、該角度調節継手8Aの中央部外周には、フランジ12が側面視で垂直(鉛直)になるように一体的に設けられており、該べた基礎2の外壁面と該角度調節継手8Aのフランジ12の内面との間には、リング状のシール部材13Aが介在されている(図1参照)。なお、該シール部材13Aの材料としては、例えばブタジエンゴム等のように粘性を有するものが使用される。
更に、該角度調節継手8の傾斜受口10の外周面には、袋ナット部材14を螺着するためのねじ溝15が設けられている(図4および図5参照)。
【0014】
該接続継手5は、上流側の直管受口16と、下流側の可撓管受口17とを有している。
そして、該接続継手5の可撓管受口17の外周面には、袋ナット部材14を螺着するためのねじ溝18が設けられている(図4参照)。
【0015】
図4には、本実施例の排水管路施工セット19が示される。
該排水管路施工セット19は、建物のべた基礎2内に貫通して埋設される上記の屈曲鞘管3Aと、該屈曲鞘管3A内に挿着される上記の可撓管4と、該可撓管4の下流側に接続される上記の角度調節継手8Aと、該べた基礎2の外壁面と該角度調節継手8Aのフランジ12との間に介在される上記のシール部材13Aと、該可撓管4の上流側に接続される上記の接続継手5とを有しており、更に、該角度調節継手8Aおよび該接続継手5を該可撓管4に接続する際に使用するシール用のOリング20および固定用のCリング21および袋ナット部材14を具備している。
【0016】
上記の排水管路構造1を構築する場合には、まず、図2に示すように、屈曲鞘管3Aの両側(上流側および下流側)の開口面を封止テープ(図示せず)で封止して、固定ホルダー(図示せず)を用いて該屈曲鞘管3Aを建物の配筋22の所定位置に取り付け固定する。このとき、該屈曲鞘管3Aの下流側の開口面に垂直基準板23を当接させて、該開口面を地面に対して垂直(鉛直)にして、該屈曲鞘管3Aの下流端部を下流側が低くなるように角度θだけ傾斜させる。
このように屈曲鞘管3Aを取り付け固定した後、コンクリートを打設して建物のべた基礎2内に屈曲鞘管3Aを貫通して埋設する。
【0017】
次に、屈曲鞘管3Aの両側の開口面の封止テープを取り外した後、図3において破線で示すように、建物のべた基礎2の厚さに応じて、屈曲鞘管3Aの上流部分であって該建物のべた基礎2から外出している部分をカッター等(図示せず)を用いて切断する。
そして、図4に示すように、切断した屈曲鞘管3Aの長さLと同じ長さの分だけ可撓管4を切断する。そうすると、切断後の可撓管4の長さも、角度調節継手8Aと接続継手5を取り付けた該切断後の可撓管4を屈曲鞘管3A内に下流側から挿着した場合に、接続継手5の上流端部と該切断後の屈曲鞘管3Aの上流端部が同じ位置になるように、最適な長さに設定されることとなる。
【0018】
その後、図5および図6に示すように、可撓管4の下流側に角度調節継手8Aを接続するとともに、該可撓管4の上流側に接続継手5を接続する。
可撓管4の下流側に角度調節継手8Aを接続する場合には、まず、可撓管4の下流側から袋ナット部材14を摺動可能に外嵌しておき、次に、該可撓管4の下流端の外周面の谷部にOリング20を嵌着するとともに、該可撓管4の下流端部の所定箇所の外周面の谷部にCリング21を嵌着する。そして、該角度調節継手8Aの傾斜受口10に該可撓管4の下流端を挿入し、該袋ナット部材14を該角度調節継手8Aのねじ溝15に螺着して、該Cリング21に該袋ナット部材14の係止端部24を係止させる。この場合、角度調節継手8Aのフランジ12の内面にはシール部材13Aが予め接着されている。
可撓管4の上流側に接続継手5を接続する場合には、まず、可撓管4の上流側から袋ナット部材14を摺動可能に外嵌しておき、次に、該可撓管4の上流端の外周面の谷部にOリング20を嵌着するとともに、該可撓管4の上流端部の所定箇所の外周面の谷部にCリング21を嵌着する。そして、該接続継手5の可撓管受口17に該可撓管4の上流端を挿入し、該袋ナット部材14を該接続継手5のねじ溝18に螺着して、該Cリング21に該袋ナット部材14の係止端部24を係止させる。
【0019】
そして、図7に示すように、該屈曲鞘管3Aの下流側から、上記のように角度調節継手8Aや接続継手5を接続した可撓管4を該屈曲鞘管3A内に挿着する。このとき、該角度調節継手8Aのフランジ12に取り付けられているシール部材13Aを建物のべた基礎2の外壁面に接着させて、該べた基礎2の外壁面と該角度調節継手8Aのフランジ12との間にシール部材13Aを介在させて封止する。
【0020】
最後に、該可撓管4の上流側に接続された接続継手5の直管受口16に45°エルボ6の下流側挿口25を接続し、該45°エルボ6の上流側受口26に屋内排水管7の下流側を接続して、該屋内排水管7の上流側を屋内排水設備の排水口(図示せず)に接続し、また、該可撓管4の下流側に接続された角度調節継手8Aの水平受口11に水平な屋外排水管9の上流側を接続して、該屋外排水管9の下流側を屋外排水設備の受口(図示せず)に接続する(図1参照)。
【0021】
上記の排水管路構造1において排水管路の点検・清掃・補修・交換を行う場合には、まず、建物のべた基礎2の外壁面と角度調節継手8Aのフランジ12との間に介在されているシール部材13Aを削り取る。次に、可撓管4の下流側に角度調節継手8Aを介して接続されている屋外排水管9の所定箇所を切断するとともに、可撓管4の上流側に接続継手5を介して接続されている45°エルボ6の接続継手5側の端部を切断して、該可撓管4を該角度調節継手8Aおよび該接続継手5とともに該屈曲鞘管3Aの下流側から引き抜く。そして、該可撓管4の点検等が完了したら、上記のようにして再び排水管路構造1を構築する。
【0022】
上記のように、本実施例では、屈曲鞘管3Aが上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜しており、また、該屈曲鞘管3Aの下流端部が、下流側が低くなるように傾斜されているため、該屈曲鞘管3A内に可撓管4を挿着したときに該可撓管4に弛みが生じた場合であっても、該可撓管4の下流端部に水平部分や逆勾配部分ができることがない。そのため、可撓管4内の排水の円滑な流れを確保することができ、該可撓管4内に排水が溜まるのを防止することができる。したがって、本実施例では、十分な可撓性を有する可撓管4を使用することができるとともに、該屈曲鞘管3Aと該可撓管4との間に十分な隙間を設けることができるため、屈曲鞘管3Aに可撓管4を挿着するときの作業性を向上させることができる。
【0023】
また、本実施例では、屈曲鞘管3Aが上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜しているので、該屈曲鞘管3Aの上流側が建物のべた基礎2から外出する位置を、建物のべた基礎2の端部から近い位置に設定することができる。したがって、建物の屋内排水設備に連絡する屋内排水管7が建物のべた基礎2の端部から近い位置に設定されている場合、例えば水洗式トイレに連絡する屋内排水管7の場合であっても、屈曲させた複雑な排水経路を別途形成することなく、該屈曲鞘管3A内に挿着した可撓管4に45°エルボ6を介して該屋内排水管7を接続することができる。また、建物のべた基礎2が深基礎の場合、例えば傾斜地に建てられた建物のべた基礎2の場合であっても、該屈曲鞘管3Aの上流側が建物のべた基礎2から外出する位置を建物のべた基礎2の端部から近い位置に設定することができる。
【0024】
更に、本実施例では、該屈曲鞘管3Aの下流端部が、下流側が低くなるように角度θだけ傾斜されているため、該屈曲鞘管3Aの下流端部が水平とされている場合(θ=0°、α=45°)に比べて、該屈曲鞘管3Aの上流端部と下流端部との傾斜角度の差αを減少させることができ(θ=10°、α=35°)、その上、屈曲鞘管3Aが上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜しているので、該屈曲鞘管3Aの曲率を大きく設定することができる。したがって、より可撓性の小さい可撓管4(より撓みが少ない可撓管4)を使用した場合であっても、該屈曲鞘管3A内に可撓管4を円滑に挿着することができ、該屈曲鞘管3A内に可撓管4を挿着するときの作業性を向上させることができる。
【0025】
その上、本実施例では、可撓管4の下流側に角度調節継手8Aが接続されているので、可撓管4の下流端部が傾斜しておりかつ屋外排水管9が水平な場合であっても、該角度調節継手8Aを介して該傾斜した可撓管4の下流側に該水平な屋外排水管9を簡単に接続することができ、施工の作業性を向上させることができる。
【0026】
また、本実施例では、建物のべた基礎2の外壁面と該角度調節継手8Aのフランジ12との間にシール部材13Aが介在しているので、該シール部材13Aによって該屈曲鞘管3A内に雨水や地下水等が侵入するのを確実に防止することができる。その上、排水管路の点検・清掃・補修・交換の際には、従来のようにさや管またはベンド管とフレキシブル管との隙間がシール剤またはパッキンによって閉塞されている場合に比べて、該建物のべた基礎2の外壁面と該角度調節継手8Aのフランジ12との間から該シール部材13Aを取り除くのが容易であり、更に、該シール部材13Aを取り除いてしまえば、該屈曲鞘管3Aから該可撓管4を簡単に引き抜くことができ、点検等の作業に手間や労力を削減することができる。
【0027】
更に、本実施例では、可撓管4の上流側に接続継手5が接続されているので、該接続継手5を介して該可撓管4の上流側に45°エルボ6を介して該屋内排水管7を簡単に接続することができ、施工の作業性を向上させることができる。
【0028】
また、従来の排水路の形成方法では、建物の基礎にベンド管を貫通し、該ベンド管の上流側からフレキシブル管を挿通して、一旦、該フレキシブル管を該ベンド管の下流端から外出させ、該外出させたフレキシブル管の下流端にパッキンを取り付けた後に、再びプラスチックハンマー等で該フレキシブル管を叩いて該ベンド管内に圧入する必要があり、施工作業の工程数が多いうえに、ベンド管の上流側と下流側の両方で施工作業を行わなければならず、施工作業に手間や労力を要したのに対して、本実施例では、建物のべた基礎2内に屈曲鞘管3Aを貫通して埋設し、可撓管4の下流側に角度調節継手8Aを接続し、該屈曲鞘管3Aの下流側から該可撓管4を該屈曲鞘管3A内に挿着するとともに、該建物のべた基礎2の外壁面と該角度調節継手8Aのフランジ12との間にシール部材13Aを介在させるので、上記従来の排水路の形成方法に比べて、施工作業の工程数が少なく、該屈曲鞘管3Aの下流側からのみ施工作業を行えば済み、施工作業の手間や労力を削減することができる。
【0029】
更に、本実施例では、建物のべた基礎2内に貫通して埋設される屈曲鞘管3Aと、該屈曲鞘管3A内に挿着される可撓管4と、該可撓管4の下流側に接続される角度調節継手8Aと、該建物のべた基礎2の外壁面と該角度調節継手8Aのフランジ12との間に介在されるシール部材13Aと、該可撓管4の上流側に接続される接続継手5とを有する排水管路施工セット19を使用することにより、上記のような排水管路構造1を簡単に構築することができる。
【実施例2】
【0030】
図8には他の実施例が示される。
図1〜図7に示した実施例1では屈曲鞘管3Aを使用していたのに対して、図8に示す本実施例では、建物のべた基礎2には大曲り鞘管3Bが貫通して埋設され、該大曲り鞘管3B内に可撓管4が挿着されている。該可撓管4の上流側には接続継手5が接続されており、該接続継手5には垂直な屋内排水管7が接続され、該屋内排水管7は例えばキッチンやトイレ等の屋内排水設備(図示せず)に接続されている。一方、該可撓管4の下流側には角度調節継手8Aが接続されており、該角度調節継手8Aには水平な屋外排水管9が接続され、該屋外排水管9は例えば屋外排水ますや公共ます等の屋外排水設備(図示せず)に接続されている。
【0031】
図8に示すように、該大曲り鞘管3Bの下流端部は下流側が低くなるように角度θだけ傾斜されている。そして、該大曲り鞘管3Bは下流端部から上流端部にかけて全体的に大曲りとすることによって、該大曲り鞘管3Bは上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜されている。
本実施例では、該大曲り鞘管3Bの下流端部の中心線X1と水平線Hとの角度θは10°に設定されており、該大曲り鞘管3Bの下流端部の中心線X1と該大曲り鞘管3Bの上流端部の中心線X2との角度αは80°に設定されている。また、該大曲り鞘管3Bの下流側の開口面は、該大曲り鞘管3Bを配置した場合に該開口面が垂直面(鉛直面)となるように、中心線X1の垂直面に対して角度θだけ傾斜して設けられている。
【0032】
本実施例でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
その上、本実施例では、大曲り鞘管3Bを使用しているので、実施例1の場合に比べて、該大曲り鞘管3Bの上流側が建物のべた基礎2から外出する位置を、建物のべた基礎2の端部から近い位置に設定することができる。したがって、建物の屋内排水設備に連絡する屋内排水管7が建物のべた基礎2の端部から近い位置に設定されている場合、例えば水洗式トイレに連絡する屋内排水管7の場合であっても、屈曲させた複雑な排水経路を別途形成することなく、該大曲り鞘管3B内に挿着した可撓管4に該屋内排水管7を直接接続することができる。また、建物のべた基礎2が深基礎の場合、例えば傾斜地に建てられた建物のべた基礎2の場合であっても、該大曲り鞘管3Bの上流側が建物のべた基礎2から外出する位置を建物のべた基礎2の端部から近い位置に設定することができる。
【実施例3】
【0033】
図9には更に他の実施例が示される。
図1〜図7に示した実施例1では一箇所で屈曲した屈曲鞘管3Aを使用していたのに対して、図9に示す本実施例では、二箇所で屈曲する屈曲鞘管3Cが使用される。
【0034】
図9に示すように、該屈曲鞘管3Cの下流端部は下流側が低くなるように傾斜されており、そして、該屈曲鞘管3Cは下流端部よりも上流側の部分(中央部よりも下流側の部分)において上流側が高くなるように角度α1だけ屈曲されており、更に、該屈曲鞘管3Cは上流端部よりも下流側の部分(中央部よりも上流側の部分)において上流側が高くなるように角度α2だけ屈曲されている。このように、屈曲鞘管3Cの所定箇所を二箇所屈曲させることによって、屈曲鞘管3Cは二段階で段階的に傾斜され、該屈曲鞘管3Cは上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜されている。
本実施例では、該屈曲鞘管3Cの下流端部の中心線X1と水平線Hとの角度θは10°に設定されている。該屈曲鞘管3Cの下流端部の中心線X1と該屈曲鞘管3Cの中央部の中心線X2との角度α1は15°に設定され、該屈曲鞘管3Cの中央部の中心線X2と該屈曲鞘管3Cの上流端部の中心線X3との角度α2は20°に設定されており、このようにして、該屈曲鞘管3Cの下流端部の中心線X1と該屈曲鞘管3Cの上流端部の中心線X3との角度α(=α1+α2)は35°に設定されている。また、該屈曲鞘管3Cの下流側の開口面は、該屈曲鞘管3Cを配置した場合に該開口面が垂直面(鉛直面)となるように、中心線X1の垂直面に対して角度θだけ傾斜して設けられている。
【0035】
本実施例でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
その上、本実施例では、屈曲鞘管3Cが上流側から下流側にかけて二段階で段階的に傾斜されているので、実施例1の場合に比べて、該屈曲鞘管3Cの屈曲部分の曲率を更に大きく設定することができる。したがって、実施例1の場合に比べて、より可撓性の小さい可撓管4(より撓みが少ない可撓管4)を使用した場合であっても、該屈曲鞘管3C内に可撓管4を更に円滑に挿着することができ、該屈曲鞘管3C内に可撓管4を挿着するときの作業性を更に向上させることができる。
【実施例4】
【0036】
図10には更に他の実施例が示される。
図1〜図7に示した実施例1では下流側の開口面が角度θだけ傾斜した屈曲鞘管3Aを使用していたのに対して、図10に示す本実施例では、両側(上流側および下流側)の開口面がそれぞれ角度θだけ傾斜している屈曲鞘管3Dが使用される。
【0037】
該屈曲鞘管3Dの下流側の開口面は、図10(a)に示すように該屈曲鞘管3Dの下流側が下流側となる向きに該屈曲鞘管3Dを配置した場合に該開口面が垂直面(鉛直面)となるように、中心線X1の垂直面に対して角度θだけ傾斜して設けられており、更に、該屈曲鞘管3Dの上流側の開口面は、図10(b)に示すように該屈曲鞘管3Dの上流側が下流側となる向きに該屈曲鞘管3Dを配置した場合に該開口面が垂直面(鉛直面)となるように、中心線X2の垂直面に対して角度θだけ傾斜して設けられている。
なお、実施例1と同様、該屈曲鞘管3Dの下流端部は下流側が低くなるように角度θだけ傾斜されており、そして、該屈曲鞘管3Dは下流端部よりも上流側の部分(中央部よりも下流側の部分)において上流側が高くなるように角度αだけ屈曲されている。このように、屈曲鞘管3Dの所定箇所を一箇所だけ屈曲させることによって、該屈曲鞘管3Dは上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜されている。
そして、該屈曲鞘管3Dの下流端部の中心線X1と水平線Hとの角度θは10°に設定されており、該屈曲鞘管3Dの下流端部の中心線X1と該屈曲鞘管3Dの上流端部の中心線X2との角度αは35°に設定されている。
【0038】
本実施例でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
その上、本実施例では、屈曲鞘管3Dの両側(上流側および下流側)の開口面がそれぞれ角度θだけ傾斜しているので、図10(a)に示すように該屈曲鞘管3Dの下流側が下流側となる向きに該屈曲鞘管3Dを配置することができるとともに、図10(b)に示すように該屈曲鞘管3Dの上流側が下流側となる向きに該屈曲鞘管3Dを配置することができる。このとき、該屈曲鞘管3Dの屈曲位置は中央部よりも下流側にずれた位置に設定されているので、該屈曲鞘管3Dの下流側の直線部分の長さL1と上流側の直線部分の長さL2は異なることとなる(L1<L2)。したがって、屈曲鞘管3Dの下流側または上流側のいずれを下流側に向けて配置するかを選択することによって、該屈曲鞘管3Dの上流側が建物のべた基礎2から外出する位置を調節することができる。
【実施例5】
【0039】
図11および図12にはまた更に他の実施例が示される。
図1〜図7に示した実施例1では中央部外周にフランジ12が一体的に設けられた角度調節継手8Aを使用していたのに対して、図11に示す本実施例では、上流側に可撓管4が接続され下流側に屋外排水管9が接続される継手部材27と、シール部材13Bが取り付けられるフランジ部材28とを有する角度調節継手8Bが使用される。
【0040】
該角度調節継手8Bの継手部材27は、上流側の傾斜受口29と、下流側の水平受口30とを有しており、該傾斜受口29は上流側が高くなるように角度θだけ傾斜して屈曲形成されており、該水平受口30は水平に形成されている。
また、該角度調節継手8Bの継手部材27の水平受口30の外周面には、フランジ部材28を螺着するためのねじ溝31が設けられており、該角度調節継手8Bの継手部材27の中央部外周面には、螺着したフランジ部材28の内端が当接する当接リブ32が設けられている。
更に、角度調節継手8Bの継手部材27の傾斜受口29の外周面の所定箇所(挿着された可撓管4の下流端に相当する位置)には係止部33が凸設されており、また、角度調節継手8Bの継手部材27の傾斜受口29の中央部の外周面には、袋ナット部材14を螺着するためのねじ溝34が設けられている。
【0041】
一方、角度調節継手8Bのフランジ部材28の内周面外端の所定箇所には複数個の係止爪35が設けられており、該シール部材13Bの外周には係止フランジ36が設けられている。そして、該角度調節継手8Bのシール部材13Bの係止フランジ36に該フランジ部材28の係止爪35を係止させることによって、該シール部材13Bは該フランジ部材28に係止保持されている。
該フランジ部材28を該継手部材27に螺着した状態では、角度調節継手8Bのフランジ部材28は側面視で垂直(鉛直)になるようにされており、建物のべた基礎2の外壁面と該角度調節継手8Bのフランジ部材28との間にシール部材13Bが介在されるようにされている。なお、該シール部材13Bの材料としては、実施例1と同様、例えばブタジエンゴム等のように粘性を有するものが使用される。
【0042】
更に、本実施例では、図11に示すように、屈曲鞘管3Eの内周面の所定箇所(上記角度調節継手8Bの継手部材27の係止部33に対応する位置)には、内周面全周にわたって係止凸部37が設けられており(図12参照)、角度調節継手8Bを取り付けた可撓管4を屈曲鞘管3Eの上流側から該屈曲鞘管3E内に挿着した状態で、該角度調節継手8Bの継手部材27の係止部33が該屈曲鞘管3Eの係止凸部37に係止するようにされている。
なお、本実施例でも、実施例1と同様、該屈曲鞘管3Eの下流端部は下流側が低くなるように角度θだけ傾斜されている。そして、該屈曲鞘管3Eは下流端部よりも上流側の部分(中央部よりも下流側の部分)において上流側が高くなるように角度αだけ屈曲されている。このように、屈曲鞘管3Eの所定箇所を一箇所だけ屈曲させることによって、該屈曲鞘管3Eは上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜されている。
また、実施例1と同様、該屈曲鞘管3Eの下流端部の中心線X1と水平線Hとの角度θは10°に設定されており、該屈曲鞘管3Eの下流端部の中心線X1と該屈曲鞘管3Eの上流端部の中心線X2との角度αは35°に設定されている。また、該屈曲鞘管3Eの下流側の開口面は、該屈曲鞘管3Eを配置した場合に該開口面が垂直面(鉛直面)となるように、中心線X1の垂直面に対して角度θだけ傾斜して設けられている。
【0043】
上記の屈曲鞘管3Eと角度調節継手8Bを用いて排水管路構造1を構築する場合には、まず、実施例1と同様にして、建物のべた基礎2内に屈曲鞘管3Eを貫通して埋設して、該建物のべた基礎2の厚さに応じて屈曲鞘管3Eと可撓管4の長さを最適な長さに切りそろえる。
その後、実施例1と同様にして、可撓管4の下流側に角度調節継手8Bの継手部材27を接続するとともに、該可撓管4の上流側に接続継手5を接続する。なお、可撓管4の下流側に角度調節継手8Bの継手部材27を接続する場合には、まず、可撓管4の下流側から袋ナット部材14を摺動可能に外嵌しておき、次に、該可撓管4の下流端の外周面の谷部にOリング20を嵌着するとともに、該可撓管4の下流端部の所定箇所の外周面の谷部にCリング21を嵌着する。そして、該角度調節継手8Bの継手部材27の傾斜受口29に該可撓管4の下流端を挿入し、該袋ナット部材14を該角度調節継手8Bの継手部材27のねじ溝34に螺着して、該Cリング21に該袋ナット部材14の係止端部24を係止させる。この場合、角度調節継手8Bのフランジ部材28は、まだ継手部材27に螺着されていない。
【0044】
そして、図11に示すように、屈曲鞘管3Eの上流側から、上記のように角度調節継手8Bの継手部材27や接続継手5を接続した可撓管4を該屈曲鞘管3E内に挿着し、該角度調節継手8Bの継手部材27の係止部33を該屈曲鞘管3Eの係止凸部37に係止させる。その後、下流側において、該角度調節継手8Bの継手部材27のねじ溝31にフランジ部材28を螺着して、該フランジ部材28の内端が継手部材27の当接リブ32に当接させるとともに、該角度調節継手8Bのフランジ部材28を建物のべた基礎2の外壁面に密着させて封止する。
【0045】
最後に、実施例1と同様にして、該可撓管4の上流側に接続された接続継手5に45°エルボ6を介して屋内排水管7の下流側を接続して、該屋内排水管7の上流側を屋内排水設備の排水口(図示せず)に接続し、また、該可撓管4の下流側に接続された角度調節継手8Bの継手部材27の水平受口30に水平な屋外排水管9の上流側を接続して、該屋外排水管9の下流側を屋外排水設備の受口(図示せず)に接続する。
【0046】
上記の排水管路構造1において排水管路の点検・清掃・補修・交換を行う場合には、まず、角度調節継手8Bの継手部材27に螺着されているフランジ部材28を緩めて取り外す。その後、実施例1と同様にして、可撓管4の下流側に角度調節継手8Bを介して接続されている屋外排水管9の所定箇所を切断するとともに、可撓管4の上流側に接続継手5を介して接続されている45°エルボ6の接続継手5側の端部を切断して、該可撓管4を該角度調節継手8Bおよび該接続継手5とともに該屈曲鞘管3Eを引き抜く。そして、該可撓管4の点検等が完了したら、上記のようにして再び排水管路構造1を構築する。
【0047】
本実施例でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
その上、本実施例では、該屈曲鞘管3Eの内周面の所定箇所に係止凸部37が設けられており、該角度調節継手8Bの継手部材27の外周面の所定箇所に係止部33が設けられているので、該屈曲鞘管3Eの上流側から、角度調節継手8Bの継手部材27を接続した可撓管4を該屈曲鞘管3E内に挿着したときに、該角度調節継手8Bの継手部材27の係止部33が該屈曲鞘管3Eの係止凸部37に係止され、該角度調節継手8Bの継手部材27の位置決めをすることができる。
また、このように該角度調節継手8Bの継手部材27の係止部33が該屈曲鞘管3Eの係止凸部37に係止されているので、該フランジ部材28を該継手部材27に螺着したときに、該継手部材27が下流側に移動することがなく、該フランジ部材28を該継手部材27に螺着することによって、該建物のべた基礎2の外壁面と該角度調節継手8Bのフランジ部材28との間に該シール部材13Bを介在させて簡単かつ確実に封止することができる。
更に、本実施例では、該角度調節継手8Bが継手部材27とフランジ部材28とを有しており、該フランジ部材28を該継手部材27に螺着することによって該建物のべた基礎2の外壁面と該角度調節継手8Bのフランジ部材28との間に該シール部材13Bを介在させるようにされているので、可撓管4を交換等する際に、角度調節継手8Bの継手部材27に螺着されたフランジ部材28を緩めて取り外すことによって、屈曲鞘管3E内から可撓管4を簡単に引き抜くことができ、交換等の作業性が向上する。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を実施例1〜実施例5により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0049】
例えば、上記実施例1〜実施例5以外、鞘管3内に可撓管4を円滑に挿入することができ、該鞘管3内に可撓管4を挿着するときの作業性を向上させることができれば、鞘管3の下流端部の中心線X1と水平線Hとの角度θは5°〜15°の範囲で設定されていてもよい。
【0050】
また、上記実施例3以外、鞘管3は三段階以上で段階的に傾斜されていてもよい。
その場合、鞘管3が上流側から下流側にかけて三段階以上で段階的に傾斜されているので、実施例3の場合に比べて、該鞘管3の屈曲部分の曲率を更に大きく設定することができる。したがって、実施例3の場合に比べて、より可撓性の小さい可撓管4(より撓みが少ない可撓管4)を使用した場合であっても、該鞘管3内に可撓管4を更に円滑に挿着することができ、該鞘管3内に可撓管4を挿着するときの作業性を更に向上させることができる。
【0051】
更に、上記実施例5以外、鞘管3の係止凸部37は、角度調節継手8Bを取り付けた可撓管4を鞘管3の上流側から該鞘管3内に挿着したときに該角度調節継手8Bの継手部材27の係止部33が該鞘管3の係止凸部37に係止されるものであれば、間欠した凸条であってもよく、また、周方向に所定間隔で設けた突起であってもよい。
図13に示すように、鞘管3Fの係止凸部37が内周面の両側部のみに設けられている場合には、角度調節継手8Bを取り付けた可撓管4を該鞘管3F内に挿入していくときに当接しやすい部分(すなわち天地方向の部分)において可撓管4および角度調節継手8Bと鞘管3Fとの間に十分な隙間を確保することができ、可撓管4および角度調節継手8Bの挿入作業の作業性がより向上する。
【0052】
また更に、上記実施例5以外、係止部33は、角度調節継手8Bの継手部材27の位置決めをすることができ、かつ、該フランジ部材28を該継手部材27に螺着したときに該継手部材27が下流側に移動するのを防止できるものであれば、角度調節継手8Bの外周面以外の箇所に設けられていてもよく、例えば、可撓管4の中央部の外周面の所定箇所にC字状の固定リング(図示せず)を嵌着することによって設けられてもよく、また、可撓管4の上流側に接続される接続継手5の外周面に設けられていてもよい。その場合、係止凸部37は、係止部33の位置に対応するように、鞘管3の中央部や上流部の内周面に設けられる。
なお、上記実施例5は、鞘管3と可撓管4との係止構造を特に限定するものではなく、可撓管4を鞘管3に対して位置決めすることにより、封止構造を形成できるものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、可撓管内に排水が溜まるのを防止することができ、かつ、鞘管内に可撓管を挿着するときの作業性を向上させることができる建物の排水管路構造、排水管路の施工方法および排水管路施工セットとして、産業上利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1の排水管路構造の説明側断面図である。
【図2】屈曲鞘管を固定して建物のべた基礎を打設する様子を示す説明側断面図である。
【図3】屈曲鞘管を切断して長さを調節する様子を示す説明側断面図である。
【図4】排水管路施工セットの説明側面図である。
【図5】可撓管に角度調節継手を接続する様子を示す説明側断面図である。
【図6】角度調節継手と接続継手を接続した可撓管の説明側断面図である。
【図7】屈曲鞘管に可撓管を挿着した様子を示す説明側断面図である。
【図8】実施例2の排水管路構造の説明側断面図である。
【図9】実施例3の屈曲鞘管を示す説明側断面図である。
【図10】実施例4の屈曲鞘管を示す説明側断面図である。
【図11】実施例5の排水管路構造の説明側断面図である。
【図12】実施例5の屈曲鞘管を示す説明正断面図である。
【図13】鞘管の他の実施例を示す説明正断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 排水管路構造
2 建物の基礎(べた基礎)
3A 鞘管(実施例1の屈曲鞘管)
3B 鞘管(実施例2の大曲り鞘管)
3C 鞘管(実施例3の屈曲鞘管)
3D 鞘管(実施例4の屈曲鞘管)
3E 鞘管(実施例5の屈曲鞘管)
3F 鞘管(鞘管の他の実施例)
4 可撓管
7 屋内排水管
8A 角度調節継手(実施例1〜実施例4の角度調節継手)
8B 角度調節継手(実施例5の角度調節継手)
9 屋外排水管
13A シール部材(実施例1〜実施例4のシール部材)
13B シール部材(実施例5のシール部材)
19 排水管路施工セット
27 継手部材
28 フランジ部材
33 係止部
37 係止凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎内には鞘管が貫通して埋設され、該鞘管内には可撓管が挿着されており、該可撓管の上流側には屋内排水設備に連絡する屋内排水管が接続され、該可撓管の下流側には屋外排水設備に連絡する屋外排水管が接続される排水管路構造において、
該鞘管は上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜されており、また、該鞘管の下流端部は下流側が低くなるように傾斜されていることを特徴とする排水管路構造。
【請求項2】
該鞘管の下流端部は、該鞘管に挿着した該可撓管に弛みが生じた場合でも該可撓管の下流端部で逆勾配が生じることのないように、下流側が低くなるように傾斜されている請求項1に記載の排水配管構造。
【請求項3】
該可撓管の下流側には角度調節継手が接続されており、該可撓管の下流側には該角度調節継手を介して該屋外排水管が水平に接続されている請求項1または請求項2に記載の排水管路構造。
【請求項4】
該基礎の外壁面と該角度調節継手との間にはシール部材が介在されている請求項1〜請求項3に記載の排水管路構造。
【請求項5】
該鞘管の内周面の所定箇所には係止凸部が設けられており、該角度調節継手または該可撓管の外周面の所定箇所には係止部が設けられており、また、該角度調節継手は、上流側に該可撓管が接続され下流側に該屋外排水管が接続される継手部材と、該シール部材が取り付けられるフランジ部材とを有しており、
該フランジ部材を該継手部材に螺着することによって、該基礎の外壁面と該角度調節継手のフランジ部材との間に該シール部材を介在させる請求項4に記載の排水管路構造。
【請求項6】
建物の基礎内に鞘管を貫通して埋設し、可撓管の下流側に角度調節継手を接続して、該可撓管を該鞘管内に挿着し、該基礎の外壁面と該角度調節継手との間にシール部材を介在させて、該可撓管の上流側に屋内排水設備に連絡する屋内排水管を接続する一方、該可撓管の下流側に該角度調節継手を介して屋外排水設備に連絡する屋外排水管を接続することを特徴とする排水管路の施工方法。
【請求項7】
該可撓管を該鞘管内に挿着して可撓管の係止部を鞘管の係止凸部に係止させ、角度調節継手のフランジ部材を角度調節部材の継手部材に螺着して該基礎の外壁面と該角度調節継手との間にシール部材を介在させる請求項6に記載の排水管路の施工方法。
【請求項8】
建物の基礎内に貫通して埋設される鞘管と、該鞘管内に挿着され、上流側には屋内排水設備に連絡する屋内排水管が接続され、下流側には屋外排水設備に連絡する屋外排水管が接続される可撓管とを有する排水管路セットにおいて、
該鞘管は上流側から下流側にかけて低くなるように全体的に傾斜されており、また、該鞘管の下流端部は下流側が低くなるように傾斜されていることを特徴とする排水管路施工セット。
【請求項9】
該鞘管の下流端部は、該鞘管に挿着した該可撓管に弛みが生じた場合でも該可撓管の下流端部で逆勾配が生じることのないように、下流側が低くなるように傾斜されている請求項8に記載の排水管路施工セット。
【請求項10】
該可撓管の下流側に接続される角度調節継手を有しており、
該可撓管の下流側は該角度調節継手を介して該屋外排水管に水平に接続される請求項8または請求項9に記載の排水管路施工セット。
【請求項11】
該基礎の外壁面と該角度調節継手との間に介在されるシール部材を有する請求項8〜請求項10に記載の排水管路施工セット。
【請求項12】
該鞘管の内周面の所定箇所には係止凸部が設けられており、該角度調節継手または該可撓管の外周面の所定箇所には係止部が設けられており、また、該角度調節継手は、上流側に該可撓管が接続され下流側に該屋外排水管が接続される継手部材と、該シール部材が取り付けられるフランジ部材とを有しており、
該フランジ部材を該継手部材に螺着することによって、該基礎の外壁面と該角度調節継手のフランジ部材との間に該シール部材を介在させる請求項11に記載の排水管路施工セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−214140(P2006−214140A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27264(P2005−27264)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】