説明

排藁搬送装置

【課題】フィードチェーン1で挟持搬送されながら脱穀部Aで脱穀された排藁を受け継いで排藁の株元を挟持搬送装置10で挟持搬送し、穂先を係止搬送装置4で係止搬送する排藁搬送装置において、トルクリミッターを用いて排藁搬送装置に藁詰まりが生じたときに安定して一定以上の過負荷状態で動力を断つことのできるようにすることを目的とする。
【解決手段】排藁搬送装置へ動力を伝達するための入力体42と挟持搬送装置10及び穂先搬送装置4に動力を伝達する駆動軸41との間にトルクリミッター43を介装し、回転する入力体42又は駆動軸41にトルクリミッター43を覆うカバー51を固定して、トルクリミッター43をコンパクトにカバー51で覆うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィードチェーンで挟持搬送されながら脱穀部で脱穀された排藁を受け継いで排藁の株元を挟持搬送装置で挟持搬送するとともに穂先を係止搬送装置で係止搬送する排藁搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排藁の株元を挟持搬送する挟持搬送装置と排藁の穂先を係止搬送する係止搬送装置を備えた排藁搬送装置では、搬送装置に藁詰まり等が起こったときに、一定以上の過負荷状態で搬送用爪がロック状態となるのを防止するために、一定以上の過負荷で破断するシャーピンを用いて、シャーピンが破断することで伝動を絶って過負荷状態を解消するように構成していたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−281206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に示された発明では、藁屑などの埃の多い場所でも藁詰まりが生じると一定以上の安定した過負荷で動力を断つことができる利点があるが、藁詰まりが生じてシャーピンが破断した場合はその都度、新しいシャーピンに取替えなければならないので、改善の余地があった。
【0004】
本発明の目的は、埃の多い排藁搬送装置に藁詰まりが生じたときに安定して一定以上の過負荷状態で動力を断つことのできるようにした排藁搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔第1発明の構成〕
第1の発明は、フィードチェーンで挟持搬送されながら脱穀部で脱穀された排藁を受け継いで排藁の株元を挟持搬送装置で挟持搬送し、穂先を係止搬送装置で係止搬送する排藁搬送装置であって、動力が伝達される入力体と、この入力体から前記挟持搬送装置及び穂先搬送装置に動力を伝達する駆動軸とを備え、入力体に支持された第1咬合部と、駆動軸に支持された第2咬合部と、第1及び第2咬合部が咬合するように付勢するバネとを備えて、所定以上の負荷で動力を断つトルクリミッターを構成し、入力体の動力がトルクリミッターを介して駆動軸に伝達されるように構成し、トルクリミッターを覆うカバーを入力体又は駆動軸に固定してあることを特徴とする。
【0006】
〔作用〕
第1の発明の特徴構成によると、シャーピンに代えて、入力体と駆動軸との間にトルクリミッター(第1及び第2咬合体、バネ)を備えている。一定以上の過負荷が加わってトルクリミッターが作動(第1及び第2咬合部離間)しても、この後に負荷が低下すればトルクリミッターが動力を伝達する状態に自動的に復帰するので、過負荷で動力が断たれる度にシャーピンを取替えるようなことを行う必要がない。
【0007】
藁屑や土埃で汚れやすい環境にある排藁搬送装置に対して、トルクリミッターを露出状態で設けると、過負荷時に動力が断たれるときの過負荷の値が安定せず、比較的軽負荷でも頻繁にトルクリミッターが作動してしまうことがある。
これに対し、第1の発明の特徴構成によると、トルクリミッターをカバーで覆うとともに、カバーを入力体又は駆動軸に固定してあるので、カバーは入力体又は駆動軸と一緒に回転することになるが、トルクリミッターに土埃をかぶることはないから、安定した一定以上の過負荷が加わると駆動軸への動力が断たれるようになるとともに、カバーを入力体又は駆動軸に固定することで、入力体、トルクリミッター及び駆動軸全体をケースで覆うような大きなものでなく、トルクリミッターのみを覆う小型のカバーを設けるだけで済む。
【0008】
〔第1発明の効果〕
トルクリミッターが作動する過負荷値が安定し不測に頻繁にトルクリミッターが作動する不都合もなく、又、搬送排藁による詰まりが生じたとしてもその詰まりを解消するだけでよく、詰まり解消の作業が軽減される。しかもカバーを小型にすることができるので他の構造の邪魔にもならず、生産性も向上させることができるに至った。
【0009】
〔第2発明の構成〕
第2の発明は、第1の発明の構成において、カバーにネジプラグを設けて、潤滑用オイルをカバー内に充填してある。
【0010】
〔作用〕
第2の発明によると、潤滑用オイルをトルクリミッターを覆うカバー内に充填して、トルクリミッターを潤滑用オイルに浸してあるので、トルクリミッターが切れる過負荷値が安定するとともに、潤滑用オイルも少なくて済む。
【0011】
〔第2発明の効果〕
第2の発明によると、トルクリミッターを潤滑用オイルに浸してあるので、トルクリミッターが作動する過負荷値が安定し、又、潤滑用オイルも少なくて済むので資源を有効活用できるとともに、オイルの充填もネジプラグの着脱により容易に行うことができるに至った。
【0012】
〔第3発明の構成〕
第3の発明は、第1の発明の構成において、グリースをカバー内に充填してある。
【0013】
〔作用〕
第3の発明によると、トルクリミッターはグリースで覆われているので、トルクリミッターが切れる過負荷値が安定するとともに、グリースも少なくて済む。
【0014】
〔第3発明の効果〕
第3の発明によると、トルクリミッターはグリースで覆われているので、トルクリミッターが作動する過負荷値が安定し、又、グリースも少なくて済むので資源を有効活用できるに至った。この場合、グリースニップルも省略可能で、製造時にグリースを充填すれば、長期に亘って使用でき、メンテナンスを容易にすることも可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1及び図2に示すように、脱穀フィードチェーン1によって刈取り穀稈の株元側を挟持搬送させてその穀稈の穂先側を扱室2に供給して回転する扱胴3で脱穀処理するように、かつ、脱穀排藁を脱穀フィードチェーン1によって扱室2から後方に搬出するように脱穀部Aを構成し、この脱穀部Aの後方に、脱穀フィードチェーン1からの脱穀排藁を株元側に作用する挟持搬送装置10と穂先側に作用する係止搬送装置4とによって横倒れ状態で穂先側に寄せながら機体後方に搬送する排藁搬送装置Bと、一対のカッター軸5a,5aに複数列の円板型カッタ5d,5dを取り付けて排藁を細断し円板型カッタ5d,5dの間隙より地面に放出する排藁細断装置5とを設けて、コンバイン用の脱穀機を構成してある。
【0016】
挟持搬送装置10は、搬送始端側のチェーンスプロケット11と、搬送終端側のチェーンスプロケット12とにわたって巻回した穀稈搬送突起付きの無端回動チェーン13と、無端回動チェーン13の搬送作用側の下方に位置する挟持レールとによって構成してある。
【0017】
係止搬送装置4は、搬送用ケースとしてのチェーンケース30の前端側の内部に位置する搬送始端側のテンションローラ31と、チェーンケース30の後端側の駆動軸保持部Cの内部に位置する搬送終端側のチェーンスプロケット32とにわたって巻回した無端回動チェーン33によって構成してある。無端回動チェーン33は、チェーンの移動方向での複数個所でチェーンリンクに起伏揺動自在に取り付けた穀稈を係止して搬送する搬送用爪8を備えるとともに搬送終端側のチェーンスプロケット32によって回転駆動され、図2に示すように、搬送始端側のテンションローラ31に作用する自動テンション機構34によって適度なテンション力が与えられている。
【0018】
図2に示すように、自動テンション機構34は、テンションローラ31を回転自在に支持するテンションローラ軸19と、テンションローラ軸19を支持する可動フレーム20と、可動フレーム20の移動をガイドするガイドロッド21と、ガイドロッド21に外嵌されて可動フレーム20をテンション付与側に付勢するスプリング22からなる。
【0019】
図1及び図2に示すように、エンジン(図示せず)からの回転動力を脱穀部Aの動力系を介して伝達される入力軸37aを覆う伝動ケース37を、チェーンケース30の横側に設けるとともに、伝動ケース37の内部において、入力軸37aの回動力をベベルギヤ機構37b及び伝動チェーン37cを介して出力チェーンスプロケット37dに伝達するように構成してある。出力チェーンスプロケット37dの回動力を挟持搬送装置10のチェーンスプロケット12、及び、係止搬送装置4のチェーンスプロケット32に伝達する伝動装置Mを構成してある。
【0020】
伝動装置Mは、脱穀機体から延出の支持フレーム38に連結するベアリングケース39にボールベアリング40を介して回転自在に支持されるように構成するとともに、挟持搬送装置10のチェーンスプロケット12が一端側に、係止搬送装置4のチェーンスプロケット32が他端側にそれぞれ一体回転自在に連結するように構成した駆動軸としての伝動回転軸41、この伝動回転軸41のチェーンスプロケット32が付いている側の端部に相対回転自在に外嵌している出力チェーンスプロケット37dの鍔付きボス部で成る入力体としての鍔付きの伝動筒軸42、及び、この伝動筒軸42と伝動回転軸41とにわたって介装したトルクリミッター43によって構成してある。
【0021】
つまり、出力チェーンスプロケット37dの筒ボスに兼用構成された鍔付きの伝動筒軸42の回動力がトルクリミッター43を介して伝動回転軸41に伝達し、この伝動回転軸41の回動力がキー44の連動作用によってチェーンスプロケット32に、かつ、キー45の連動作用によってチェーンスプロケット12にそれぞれ伝達する。そして、排藁詰まりが発生するなどによって係止搬送装置4や挟持搬送装置10の駆動負荷が予め設定してある設定負荷値を越えると、トルクリミッター43が作動して伝動筒軸42と伝動回転軸41との間で伝動を断つことになる。
【0022】
トルクリミッター43は、伝動回転軸41に対して回転自在に嵌合した伝動筒軸42の鍔42aの外面に設けた第1咬合部としての第1爪46と、伝動回転体41に対して摺動自在にスプライン嵌合させた摺動筒体47の鍔47aの対向面に設けた第2咬合部としての第2爪48と、伝動回転体41に支持されたバネ受け49と摺動筒体47の鍔47aの背面との間に介在されて、第1爪46と第2爪48とが咬合するように付勢するコイル状のバネ50とを備えて、構成してあり、所定以上の過負荷が加わると第1爪46と第2爪48との咬合が離脱して動力が断たれるようになっている。
【0023】
前記トルクリミッター43はカバー51で覆ってあり、カバー51を伝動筒軸42の鍔42aの外面に接合させ、Oリング52でシールを施した状態でボルト53により固定してある。カバー51の回転軸芯にバーリング加工を施して、加工穴の内周に更にネジ加工を施してそのネジ穴から潤滑用オイルを充填し、ネジ穴をネジプラグ56で閉めてある。
前記バネ受け49は、座金54,55を介して伝動回転軸41の端部に形成した雄ネジ57にナット58を螺合して受け止め支持させてある。
【0024】
図2に示すように、搬送用爪8はチェーンリンク33Aに対して軸芯X周りで揺動自在に取り付けられる幅広の基端部8Aとこの基端部8Aより細幅に絞られている先端作用部8Bとに形成されている。チェーンケース30は左右に設けた鋼板製の補強部材23,24で補強して保持するようにしてある。
【0025】
ベアリングケース39に伝動回転軸41を支持する二つのボールベアリング40,40を設け、チェーンケース30に伝動回転軸41を支持するラジアル型のボールベアリング26を設け、ボールベアリング26の外周に円周溝を形成し、板状の補強部材24をその円周溝をチェーンケース30の側面との間に位置させてスポット溶接するとともに、円周溝に軸用止め輪27を装着して止め付け構造の強度向上を図っている。
【0026】
補強部材24の外側にチェーンケース30の側面より離間するブラケット24Aに形成し、ブラケット24Aの裏面側つまりチェーンケース30に向かう面にナット29を溶接固定してある。このナット29を利用して伝動ケース37のカバー部材28をブラケット24Aに着脱可能に取り付けられるようになっている。
他方の補強部材23には無端回動チェーン33に対する注油パイプ59を挿通してある。
【0027】
〔別の実施の態様〕
図4は、トルクリミッター43を覆うカバー51の別実施の態様を示し、このカバー51には、グリースニップルを設けないでカバー51の装着時にカバー51内にグリースを入れた状態でトルクリミッター43を覆ってボルト締めするようにしてある。
前記カバー51にグリースニップルを設けて、グリースニップルからグリースを補給するようにしてもよい。
【0028】
トルクリミッター43としては、駆動軸41の端部に限らず、入力体としての伝動筒軸42とともに駆動軸41の長手方向中間部に設けて、トルクリミッター43を覆うカバー51を伝動筒軸42に固定してもよく、又、入力体42としての入力軸と駆動軸41としての出力軸とが同一軸芯上に配設されている場合には、トルクリミッター43を両軸の接続部に設けて、トルクリミッター43を覆うカバー51を入力体42又は駆動軸41のうちの何れか一方に固定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】脱穀機の脱穀部及び排藁処理部の平面図
【図2】排藁挟持搬送装置及び係止搬送装置に対する伝動装置の断面図
【図3】トルクリミッターを設けている伝動回転軸の平面図
【図4】別実施の態様のトルクリミッターの詳細図
【符号の説明】
【0030】
1 フィードチェーン
4 係止搬送装置
10 挟持搬送装置
41 駆動軸(伝動回転軸)
42 入力体(伝動筒軸)
43 トルクリミッター
46 第1咬合部
48 第2咬合部
50 バネ
51 カバー
56 ネジプラグ
A 脱穀部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードチェーンで挟持搬送されながら脱穀部で脱穀された排藁を受け継いで排藁の株元を挟持搬送装置で挟持搬送するとともに穂先を係止搬送装置で係止搬送する排藁搬送装置において、
動力が伝達される入力体と、この入力体から前記挟持搬送装置及び穂先搬送装置に動力を伝達する駆動軸とを備え、
前記入力体に支持された第1咬合部と、前記駆動軸に支持された第2咬合部と、前記第1及び第2咬合部が咬合するように付勢するバネとを備えて、所定以上の過負荷で動力を断つトルクリミッターを構成し、
前記入力体の動力が前記トルクリミッターを介して駆動軸に伝達されるように構成し、前記トルクリミッターを覆うカバーを前記入力体又は駆動軸に固定してあることを特徴とする排藁搬送装置。
【請求項2】
前記カバーにネジプラグを設けて、潤滑用オイルを前記カバー内に充填してある請求項1記載の排藁搬送装置。
【請求項3】
グリースを前記カバー内に充填してある請求項1記載の排藁搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−81825(P2010−81825A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252358(P2008−252358)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】