説明

接着剤組成物

【課題】接着剤としての性能を有したまま、水による剥離が可能な接着剤組成物の提供である。
【解決手段】接着剤組成物を、非水無溶剤接着用樹脂と炭酸水素ナトリウム粉末とを含むように構成する。あるいは、接着剤組成物を、非水無溶剤接着用樹脂とセルロース誘導体の粉末とを含むように構成する。好ましくは、接着剤組成物を、非水無溶剤接着用樹脂と炭酸水素ナトリウム粉末とセルロース誘導体の粉末とを含むように構成する。非水無溶剤接着用樹脂としては、熱硬化性エポキシ樹脂が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削、切断、研削等のため被加工物を台座に仮止めするための接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加工のための仮止め接着剤は熱溶融樹脂、水溶性樹脂、溶剤可溶樹脂、アルカリ水溶液可溶樹脂、酸可溶樹脂によるものなどがあった。それぞれ特徴を有し、熱溶融樹脂は水溶剤には強いものの、加工を上回る高温溶融温度で処理することと完全に樹脂を除去できないことが難点であった。水溶性樹脂は手軽な水ではあるが、水を処理時に使用することができず、溶剤可溶樹脂は溶剤を使い環境として好ましいものではなかった。アルカリ水溶液可溶、酸可溶樹脂は樹脂の設計が難しいものであった。
【0003】
研削加工等の加工を施す加工台等の所定の位置に、被加工物を仮固定する仮固定用ホットメルト接着剤において、仮固定用ホットメルト接着剤が、一種又は複数種の脂肪族化合物から成り、且つ前記接着剤が、室温で固体状であって、融点が50℃以下であることを特徴とするもので、取扱が容易で、固定する時間を短縮し得る仮固定用ホットメルト接着剤が開示されている。(特許文献1)
【0004】
常温で容易に再剥離できる接着剤組成物として、少なくとも一方が多孔質体であること、(A)(a)炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル70〜99.9重量%と、(b)a,b−不飽和カルボン酸0.1〜10重量%と、(c)前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、a,b−不飽和カルボン酸とを除くビニル化合物0〜29.9重量%とをポリビニルアルコール不完全ケン化物の保護コロイドの存在下に水性懸濁重合することによって得られた粘着性重合体微細球を含有してなる水性エマルジョン形樹脂100重量部(固形分換算)に対し、(B)有機ピグメント100〜1000重量部を含み、さらに、吸油量50ml/100g以下の充填剤2000重量部以下を含む条件が開示されている。(特許文献2)
【0005】
接着硬化物の水への溶解性が大きく、機械加工後の小物品を仮固定から取り外す際に、水中に浸漬するだけで容易に取り外し得、低かぶれ性、低毒性、低臭性をも保持した仮固定用紫外線硬化性接着剤組成物として、水に可溶な複素環状2級アミン残基を有する(メタ)アクリルアミドの樹脂成分、例えばアクリロイルモルホリンと、光重合開始剤、好ましくは水溶性光重合開始剤と、必要に応じて水とを含み、前記樹脂成分と、水との二成分間の含有比率は樹脂分50重量%以上、水50重量%以下であって、この配合物に光重合開始剤を所望の適当量添加したものが開示されている。(特許文献3)
【0006】
発泡処理前には耐熱性に優れまた発泡処理後は被着体から容易に剥離することができる発泡性接着剤組成物で、接着性ポリマーと、t−ブチルオキシカルボニル構造を有する発泡性成分と、発泡開始剤と、を備える発泡性接着剤組成物が開示されている。(特許文献4)
【0007】
ベース樹脂100重量部に対して、吸水性架橋高分子を1〜200重量部、熱膨張性粒子を1〜300重量部、および界面活性剤を0.001〜20重量部の範囲で含むことで吸水後に接着力が低下する剥離型接着剤組成物が開示されている。(特許文献5)
【0008】
接着剤組成物が水溶性充填剤を含有することにより、接着した被接着物を水又は加熱水に浸漬した場合に被接着物が容易にもとの部材に分離可能であることが開示されている。(特許文献6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−8780号公報
【特許文献2】特開2005−48078号公報
【特許文献3】特開平6−116534号公報
【特許文献4】特開2004−43732号公報
【特許文献5】特再2002−55625号公報
【特許文献6】特開平11−92728号公報
【特許文献7】特開平7−331216号公報
【特許文献8】特開2002−121534号公報
【特許文献9】特開2004−83878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする課題は、接着剤としての性能を有したまま、水による剥離が可能な接着剤組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、非水無溶剤接着用樹脂と炭酸水素ナトリウム粉末とを含み、水で剥離できることを特徴とする接着剤組成物であり、仮止め接着を水で剥離可能となる。
【0012】
請求項2の発明は、さらに、セルロース誘導体の粉末を含む請求項1に記載の接着剤組成物であり、水で剥離の低温化ができる。
【0013】
請求項3の発明は、前記炭酸水素ナトリウム粉末の平均粒子径が20μm以下である請求項1または請求項2に記載の接着剤組成物で、短時間化ができる。
【0014】
請求項4の発明は、前記非水無溶剤接着用樹脂とセルロース誘導体の粉末とを含み、水で剥離できることを特徴とする接着剤組成物で、仮止め接着を水で、常温水で剥離が可能となる。
【0015】
請求項5の発明は、前記非水無溶剤接着用樹脂が熱硬化性エポキシ樹脂である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の接着剤組成物であり、耐溶剤性や常態での接着性に優れる。
【0016】
請求項6の発明は、さらに、マイケル付加反応可能な(メタ)アクリルエステルモノマーを含む請求項1乃至請求項5いずれかに記載の接着剤組成物であり、 耐水性を調節でき、剥離抵抗を調節できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の接着剤組成物は常態においては接着性等に優れ、水で処理することにより、被接着物を剥離解体することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の接着剤組成物に用いられる材料は、常態で使用される時の特性、接着加工時の特性、混和性、硬化性、接着性などの他、作業効率や使用条件等を考慮して適宜選択される。同時に、硬化剤も適宜選択される。また、本発明の接着剤組成物は、非水無溶剤である。これは被接着材が非多孔質や解放されて乾燥する使途でないこと、すなわち水や溶剤の蒸発逸散により、凝集力が発現するものでなく、接着面積や材質に依存することなく、接着力が安定して得られ、常温或いは低温で乾燥せずに接着力を発現することによる。本明細書において「非水無溶剤」とは実質的に水と溶剤を含まないことを言う。使用材料の製造過程に依拠したもの等、前記特性に支障しない範囲で含有される水、溶剤についてまで排除するものではない。
【0019】
接着剤組成物に用いる接着用樹脂は非水無溶剤の熱硬化性樹脂で前記条件に合えば制限されるものではないが、最も好ましいものにエポキシ樹脂をあげることができる。このエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、反応性希釈剤などエポキシ基を有するもので、反応性、硬度、接着力を鑑みると、エポキシ基が分子中に2つ以上あることが望ましい。
【0020】
非水無溶剤の熱硬化性樹脂とは溶剤を乾燥させる必要がないもので、エポキシ希釈剤、ビニルエステル樹脂のモノマー、添加剤の媒体として溶剤等を含むものは無溶剤を意味する。
【0021】
接着剤組成物の硬化剤はエポキシ樹脂とポリアミン、ポリアミドアミン、メルカプト基を有する硬化剤等の組み合わせが好ましく、マイケル付加反応可能な(メタ)アクリルエステルモノマーを添加し、効果を発現させることができ、炭酸水素ナトリウムが分解し難い常温硬化とすることができる。主剤と硬化剤の2液配合とする場合、前記硬化剤と本発明の構成する炭酸水素ナトリウムやセルロース誘導体と反応する恐れがある場合は、エポキシ樹脂等の主剤側に配合することが好ましい。この他三級アミンによる重合硬化、放射線による硬化、カチオン触媒による硬化などがエポキシ樹脂の硬化剤として挙げることができる。マイケル付加可能な(メタ)アクリルエステルモノマーの添加効果を適応しない場合のビニルエステル樹脂等はラジカル系開始剤を用いる。
【0022】
本発明に用いるセルロース誘導体は粉末であれば良く平均粒子径50μm以下が好ましい。より好ましくは3〜30μmが好ましい。この範囲では容易に混合でき、接着性能を落とすことがない。但し、エポキシ樹脂の希釈剤等に分散後ホモジナイザー等で微粒化すれば、上限もなく、3μm以下とすることもできる。セルロース誘導体としてはメチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等ヒドロキシ化アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム等アルカリ金属カルボキシメチルセルロースを上げることができ、単独或いは混合して用いても良い。中でも膨潤性が高い、カルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましい。なお、ゲル化温度を有するセルロース誘導体は、その温度以上の温度では剥離を抑制する可能性があり、剥離時の温度管理が必要となる。
【0023】
水での短時間剥離性を奏するものは炭酸水素ナトリウム粉末であり、剥離性と常態での特性は樹脂、配合物により変わる。炭酸水素ナトリウム粉末の平均粒子径が20μm以下であり、全体の重量に対して 2重量%以上配合すれば、60℃以上の温水で剥離でき、70℃以上では短時間に剥離することができる。
炭酸水素ナトリウム粉末の平均粒子径は、平均粒子径が30μm以下が好ましい。より好ましくは3〜10μmである。3μmを下回ると、炭酸水素ナトリウム自体が空気中の水分により溶解し固まってしまう不備を生じるものの、エポキシ樹脂の希釈剤等に分散後ホモジナイザー等で微粒化すれば、下限は設定できない。前記セルロース誘導体と併用することにより、相乗効果が得られ、剥離温度の低温化と短時間化ができ好ましい。
【0024】
マイケル付加反応とはα,β-不飽和カルボニル化合物に求核剤が付加するもので、前者は(メタ)アクリルエステルモノマーで後者求核剤がエポキシ樹脂の硬化剤に含まれるアミノ基、メルカプト基等を含む組成物で、(メタ)アクリルエステルモノマーに導入される主鎖により、また、(メタ)アクリル基の官能数により、接着性の調整、エポキシ樹脂の耐水性、或いは親水性の付与ができ、本発明の設計自由度を高めることができる。本発明の水剥離性を高めるには親水性が好ましい。
マイケル付加反応可能な(メタ)アクリルエステルモノマーとはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリシリトールトリアクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、各種エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性品等の(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0025】
水での剥離性は本発明の構成要素の炭酸水素ナトリウムやセルロース誘導体に炭酸カルシウム等の粉末充填剤の配合で大きく改善され、平均粒子径30μm以上の炭酸水素ナトリウム粉末での配合では充填剤を無配合では90℃24時間で剥離することができないが、この実質温水で剥離不可能な粒径でも充填剤の添加で、剥離が可能となり、剥離時間の短縮も可能となる。
【0026】
上記配合物の他、汎用に接着剤として使用される希釈剤、カップリング剤、充填剤、揺変剤、分散剤、界面活性剤、可塑剤、消泡剤、沈降防止剤、充填剤、有機溶剤等を配合することができる。
【0027】
本発明の特徴は水での剥離ができ、しかも、常態での8.5MPa以上の接着強度を有し、熱硬化性による耐クリープ性等の特性を有する。
【0028】
配合調製には、各種の混合、混練、分散機を使用することができる。例えば、2本ロールミル、3本ロールミル、プラネタリーミキサー、高速ミキサー、自公転撹拌機等が挙げられる。
【0029】
本発明の接着剤組成物は通常公知の方法により被着体に塗工し、硬化させて接着層を形成することができる。ここでいう被着体は、特に制限されるものではないが、たとえば、シリコンウエハ切断時のシリコンインゴットと固定治具である台座への仮固定などが挙げられ、非水無溶剤接着剤で常温硬化が適性に適うものとなる。
【0030】
また、水に浸漬する際の時間は1分〜24時間の範囲内で行うことができる。被着体の材質、形状、作業性などから決定する。なお、浸漬の際の加熱手段についても特に制限されるものではないが、オーブン、ドライヤー、加熱蒸気、オイルバス、ウォーターバス、赤外線加熱炉、高周波加熱炉などを用いることができる。
【0031】
以下に実施例・比較例を記して詳細な説明をする。結果を表1、表2に記した。
【実施例1】
【0032】
jER828(ジャパンエポキシレジン(株)、商品名、エポキシ等量184〜194、比重1.17、分子量約370)90重量部と、反応性希釈剤YED216(ジャパンエポキシレジン(株)、商品名、エポキシ等量145〜165、アルキルジグリシジルエーテル)8重量部と、シランカップリング剤KBM−403(信越化学(株)、商品名、化学名γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)2重量部と、炭酸水素ナトリウムとしてエコランダム1200(旭硝子(株)、商品名、D50が7〜8μm)100重量部をそれぞれ配合した後、ミキサーを用いて1時間攪拌し、均一に混合した。次いで、エポキシ樹脂の硬化剤であるRC11(ジャパンエポキシレジン(株)、商品名、変性脂肪族ポリアミン、アミン価(KOHmg/gで345〜385))を60重量部添加した後、さらに5分間攪拌して、実施例1の接着剤組成物とした。
【実施例2】
【0033】
実施例1のエコランダム1200をセルマイクB−819(三協化成(株)、商品名、D50が10μm)に変えた以外実施例1と同じに行い、実施例2の接着剤組成物とした。
【実施例3】
【0034】
実施例1のエコランダム1200をセルマイク266(三協化成(株)、商品名、D50が20μm)に変えた以外実施例1と同じに行い、実施例3の接着剤組成物とした。
【実施例4】
【0035】
実施例1のYED216を(メタ)アクリルエステルモノマーとしてライトアクリレート14EG−A(共栄社化学(株)、商品名、化学名PEG600#ジアクリレート)に変えた以外実施例1と同じに行い実施例4の接着剤組成物とした。
【実施例5】
【0036】
実施例1のエコランダム1200、100重量部を20重量部に、さらに、充填材として炭酸カルシウムA(三共製粉(株)、商品名、D50が15μm)80重量部を配合した以外実施例1と同じに行い、実施例5の接着剤組成物とした。
【実施例6】
【0037】
実施例1のエコランダム1200、100重量部を4重量部に、さらに、炭酸カルシウムA96重量部を配合した以外実施例1と同じに行い、実施例6の接着剤組成物とした。
【実施例7】
【0038】
実施例1のYED216を(メタ)アクリルエステルモノマーとしてライトアクリレート1、9ND−A(共栄社化学(株)、商品名、化学名1,9ノナンジオールジアクリレート)に変えた以外実施例1と同じに行い、実施例7の接着剤組成物とした。
【実施例8】
【0039】
実施例1のエコランダム1200、100重量部をエコランダムKP(旭硝子(株)、商品名、D50が30μm)20重量部さらに炭酸カルシウムA80重量部を配合した以外実施例1と同じに行い、実施例8の接着剤組成物とした。
【実施例9】
【0040】
実施例1のエコランダム1200、100重量部をエコランダムKF(旭硝子(株)、商品名、D50が100μm)20重量部に、さらに炭酸カルシウムA80重量部を配合した以外実施例1と同じに行い、実施例9の接着剤組成物とした。
【0041】
比較例1
実施例1のエコランダム1200を炭酸カルシウムAに変えた以外実施例1と同じに行い比較例1の接着剤組成物とした。
【0042】
【表1】

【0043】
接着強度:初期接着力としてJISK6850に準拠して引っ張りせん断接着力を測定した。実施例1〜9・比較例1の組成物を2枚のSUS板(長さ100mm×幅25mm×厚さ1.5mm)の間に、接着面積が3.125cmとなるように挟み、次いで、23℃、24時間の条件で静置後、接着力測定試料とした。引っ張りせん断強度(初期接着力、n=5)は、温度23℃、相対湿度50%の環境条件下、万能抗張力試験試験機5582型(インストロンジャパン(株)製)を用いた。
【0044】
温水剥離性評価 ガラス板(長さ100mm×幅25mm×厚さ1.5mm)に、実施例1〜9・比較例1の組成物を40〜50g/m塗布し、23℃、24時間の条件で静置し、温水剥離性試験試料とした。次いで、50、60、70、80、90℃の温水に浸漬し、自己剥離するまでの時間を測定した。6時間までは10分ごとにその後、16時間、24時間に観察し、その時に自己剥離していないものを、×とした。
【実施例10】
【0045】
jER828を88重量部とライトアクリレート14EG−A10重量部とKBM−403を2重量部と、セルロース誘導体としてサンローズMAC300HC(日本製紙ケミカル(株)、商品名、カルボキシメチルセルロース、1%水溶液粘度1000〜3000mPa・s、エーテル化度0.8〜1.0)37.5重量部、エコランダム1200を25重量部、炭酸カルシウムA37.5重量部をそれぞれ配合した後、ミキサーを用いて1時間攪拌し、均一に混合した。次いで、エポキシ樹脂の硬化剤であるFXJ−8074―D(富士化成(株)、商品名、変性脂肪族ポリアミン、アミン価409)を30重量部、トーマイド252−A(富士化成(株)、商品名、ポリアミノアミド、アミン価680)を40重量部添加した後、さらに5分間攪拌して、実施例10の接着剤組成物とした。
【実施例11】
【0046】
実施例10のサンローズMAC300HCを、サンローズSLD−F1(日本製紙ケミカル(株)、商品名、カルボキシメチルセルロース、1%水溶液粘度200mPa・s以下、エーテル化度0.2〜0.3)に変えた以外実施例10と同じに行い実施例11の接着剤組成物とした。
【実施例12】
【0047】
実施例10のサンローズMAC300HCを、サンローズF600LC(日本製紙ケミカル(株)、商品名、カルボキシメチルセルロース、1%水溶液粘度6000〜8000mPa・s、エーテル化度0.55〜0.65)に変えた以外実施例10と同じに行い実施例12の接着剤組成物とした。
【実施例13】
【0048】
実施例10のサンローズMAC300HCを、サンローズF1400MC(日本製紙ケミカル(株)、商品名、カルボキシメチルセルロース、1%水溶液粘度12000〜14000mPa・s、エーテル化度0.65〜0.75)に変えた以外実施例10と同じに行い実施例13の接着剤組成物とした。
【実施例14】
【0049】
実施例10のサンローズMAC300HCを、サンローズSN60C(日本製紙ケミカル(株)、商品名、カルボキシメチルセルロース、1%水溶液粘度500〜700Pa・s、エーテル化度0.55〜0.75)に変えた以外実施例10と同じに行い実施例14の接着剤組成物とした。
【実施例15】
【0050】
実施例10のサンローズMAC300HCを、PMC−15US(三星精密化学、商品名、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、2%水溶液粘度12000〜18000mPa・s、グリオキサール表面処理品、低置換度品)に変えた以外実施例10と同じに行い実施例15の接着剤組成物とした。
【実施例16】
【0051】
実施例10のエコランダム1200を、タルクSW(白石カルシウム(株)、商品名、D50が12μm)に変えた以外実施例10と同じに行い炭酸水素ナトリウム無配合の実施例16の接着剤組成物とした。
【実施例17】
【0052】
実施例10のライトアクリレート14EG−Aを、アデカグリシロールED−503((株)ADEKA、商品名、グリシジルエーテルのエポキシ樹脂希釈剤)に変えた以外実施例10と同じに行い(メタ)アクリルエステルモノマー無配合の実施例17の接着剤組成物とした。
【実施例18】
【0053】
実施例10のサンローズMAC300HCを、PMC−40HS(三星精密化学、商品名、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、2%水溶液粘度3500〜5600mPa・s、グリオキサール表面処理、低置換度品)に変えた以外実施例10と同じに行い実施例18の接着剤組成物とした。
【実施例19】
【0054】
実施例10のサンローズMAC300HCを、EMA−70U(三星精密化学、商品名、ヒドロキシエチルメチルセルロース、2%水溶液粘度50000〜70000mPa・s、グリオキサール表面未処理、高置換度品)に変えた以外実施例10と同じに行い実施例19の接着剤組成物とした。
【0055】
比較例2
実施例10のセルロース誘導体、炭酸水素ナトリウムを無配合とし、タルクSW50重量部を配合した以外実施例10と同じく行い、比較例2の接着剤組成物とした。
【0056】
【表2】

【0057】
接着強度:初期接着力としてJISK6850に準拠して引っ張りせん断接着力を測定した。実施例10〜19・比較例2の組成物を2枚のSUS板(長さ100mm×幅25mm×厚さ1.5mm)の間に、接着面積が3.125cmとなるように挟み、次いで、23℃、24時間の条件で静置後、接着力測定試料とした。引っ張りせん断強度(初期接着力、n=5)は、温度23℃、相対湿度50%の環境条件下、万能抗張力試験試験機5582型(インストロンジャパン(株)製)を用いた。
【0058】
水剥離性評価 ガラス板(長さ100mm×幅25mm×厚さ1.5mm)に、実施例10〜19・比較例2の組成物を40〜50g/m塗布し、23℃、18時間の条件で静置し、水剥離性試験試料とした。次いで、20、40、60、75℃の水に浸漬し、剥離するまでの時間を測定した。2時間までは3〜10分の観察、その後、12時間まで30分間隔で観察し、12時間で剥離していないものを、×とした。
【0059】
以下に 特許文献6の実施例の溶剤型エポキシ樹脂に水溶性充填剤を配合した比較例3〜7で、本発明との効果比較を行った。
【0060】
比較例3
エポキー877(三井化学(株)、商品名、溶剤型変性エポキシ樹脂、固形分45%)を100重量部と水溶性充填剤としてサンローズMAC300HCを16.7重量部、エコランダム1200を33.3重量部を配合し1時間攪拌して、比較例3の接着剤組成物とした。
【0061】
比較例4
エポキー877を100重量部とエコランダム1200を50重量部を配合し1時間攪拌して、比較例4の接着剤組成物とした。
【0062】
比較例5
エポキー877を100重量部と粉末EDTA(ナカライテスク、試薬)を50重量部を配合し1時間攪拌して、比較例5の接着剤組成物とした。
【0063】
比較例6
エポキー877を100重量部と粉末アクリルアミド(和光純薬、試薬、乳鉢で粉末状にすりつぶしたもの)を30重量部を配合し1時間攪拌して、比較例6の接着剤組成物とした。
【0064】
比較例7
エポキー877をそのままで比較例3〜6の標準として、比較例7の接着剤組成物とした。
【0065】
【表3】

【0066】
表3は表2と同じに行った(表の後段参照)他に乾燥機中で50℃24時間静置したものも追加した。
【0067】
比較例3〜7の試験結果は 特許文献6のそのまま追試したものではないが、本発明の特徴を対比できる結果となった。水剥離は塗布後解放系静置されたもので、特許文献とは異なる。どのような効果作用かは不明であるが、水剥離性は23℃に静置したものの方が悪い結果となっている。また、比較例5の23℃静置では添加物の特異性が発現され、60℃温水では逆の結果となっている。これら比較例3〜7は本発明とは技術思想が異なるものと思われ、異なる発明である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の接着剤組成物は常態では通常の接着剤の性能が得られ、酸、アルカリ、溶剤等の環境負荷が大きい材料を使うことなく、解体等の接着機能が不要になった時に水で処理することができる。代表的な対象としてシリコンインゴットの切断・研磨等の仮固定があげることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水無溶剤接着用樹脂と炭酸水素ナトリウム粉末とを含み、水で剥離できることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
さらに、セルロース誘導体の粉末を含む請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記炭酸水素ナトリウム粉末の平均粒子径が20μm以下である請求項1または請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記非水無溶剤接着用樹脂とセルロース誘導体の粉末とを含み、水で剥離できることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項5】
前記非水無溶剤接着用樹脂が熱硬化性エポキシ樹脂である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項6】
さらに、マイケル付加反応可能な(メタ)アクリルエステルモノマーを含む請求項1乃至請求項5いずれかに記載の接着剤組成物。

【公開番号】特開2011−184677(P2011−184677A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120170(P2010−120170)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】