説明

接触を介する案内部材の状態に特徴的な少なくとも1つの物理的な大きさをモニタリングするための、PIFAアンテナを備えたモジュール

【課題】接触を介する案内部材の状態に特徴的な少なくとも1つの物理的な大きさをモニタリングするための、PIFAアンテナを備えたモジュールを提供する。
【解決手段】PIFAアンテナ5は、電磁波が透過可能な透過性物質製の保護カバー4によって閉鎖される外部を向いた金属の空洞部2の内部に設けられる。さらに、該PIFAアンテナ5は、異なる物質の複数の層を有する基板内に設けられた放射素子を備えている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、接触を介する案内部材の状態に特徴的な少なくとも1つの物理的な大きさをモニタリングするための、PIFAアンテナを備えたモジュール、および、モニタリング用モジュールを最適化するための方法に関する。
【0002】
本願の文脈における接触を介する案内部材とは、滑動またはローリングすることによって、回転案内または直線案内を実現する任意の案内部材を意味する。該案内部材は、特に滑らかな回転ベアリングまたはローラーベアリングを備え、具体的にはベアリングケースに格納されたベアリングを備える。上記案内部材は、さらに、直線案内デバイス、特に、直線状のトラック上でローリングするローラを備えたプレートであって、直線状のトラック上で循環するプレートを有するタイプの直線案内デバイスを備えている。また、上記案内部材は、直線状ベアリングおよびボールネジ用ナットを備えている。
【0003】
〔従来技術〕
ある応用分野では、特に公共輸送、エネルギー、または、工業的な生産に関連して、各種施設の信頼性および利用可能性に関連する要件が特に厳しい。これらの要件の結果、これらの施設の磨耗部材、特に回転部材案内用ベアリング、交流発電機のシャフト用ベアリング、鉄道用車軸などの接触を介する案内部材をモニタリングする必要性が生じる。
【0004】
ただし、これらのベアリングは、異常が現れるまでには、ローラーベアリングの場合であれば例えば数十億回転といった、極めて長い潜在的な寿命を有する。ただし、厳しい作動条件下では、これより短くなることもある。ローラーベアリングの誤動作には様々な原因があり得るが、特に、結合、磨耗、亀裂、ケージの破裂、腐食、剥離などが例としてあげられる。この腐食および剥離は、物質の疲労に起因する、軌道またはローリング体の表面の変化である。
【0005】
鉄道輸送の分野、特に高速列車の場合には、一般に、検査係りが、耳に頼りにして、欠陥を有するベアリングを検出する。次に、異常の報告がメンテナンス部門に伝達され、メンテナンス部門が、異常なベアリングを交換する計画を立てることになる。
【0006】
ただし、(駆動を受ける)駆動用車軸のベアリングは、検査係りが検出することは不可能である。この場合、剥離状態が進行するとケージの破裂につながるおそれがあり、ケージが破裂すると脱線が発生する原因にもなりかねない。
【0007】
このような場合、車両に搭載されているベアリングの欠陥を検出することによって、剥離の開始が検出された場合、即座にメンテナンス作業の計画を立てることを可能にするためのデバイスが必要である。
【0008】
1つの解決方法は、ベアリングの状態をチェックするため、定期的にベアリングを取り外して、系統的な予防メンテナンスを実施することである。
【0009】
ただし、このようなメンテナンスは、車両が使用できないことによる高いコストを生じ、また、こうしてチェックを行ったベアリングの大半が欠陥を有していないことから相対的な有効性しか生み出さないという事実に関連して、このような解決方法には大きな欠点がある。
【0010】
したがって、ベアリングの連続的なモニタリングが、施設の信頼性、利用可能性、維持能力、および、安全性において、特に利用可能性および信頼性において、非常に重要である。
【0011】
これを実行するために、現在の技術的状況では、鉄道車両に搭載された、物理的な大きさのモニタリングおよび測定を行う自律的なモジュールに関連するシステムであって、物体のローリングパラメータをデータの形式で記録し、また、収集したデータを軌道側に配置された無線通信端末へ伝送するためのホイップアンテナを備えた無線通信システムを構成することができるシステムが知られている。
【0012】
ただし、ホイップアンテナの使用には、このようなシステムの信頼性に関連する大きな欠点がある。実際に、このホイップアンテナが設けられている非常に金属が多い環境が、このアンテナのミスマッチがおきてしまうという、相当に高いリスクの原因になり得る。
【0013】
さらに、このようなアンテナは、バラストが舞い上げられることに関連して起こり得る衝撃に耐え得るためには、機械的な観点からは十分に頑丈でないことが分かっている。
【0014】
気温が低い天候および雪の多い気象条件時には、軌道側に設置されて雪や氷に閉じ込められたバラストが、鉄道車両の通過時に舞い上げられることは、実際に頻繁に発生する。
【0015】
従来技術では、このような物理的な大きさのモニタリング用モジュールを、他のタイプのアンテナ、例えば、パッチアンテナ、プリントダイポールアンテナ、または、プリントスロットアンテナなどとともに使用することが知られている。
【0016】
ただし、このようなアンテナも、金属が多い環境に対して非常に敏感であり、上記金属が多い環境は、頻繁なミスマッチによって、上記アンテナの作動を攪乱し得る。
【0017】
さらに、これらのアンテナを鉄道車両に設置されている、物理的な大きさのモニタリングおよび測定を行う自律的なモジュールに組み込むために、該アンテナのサイズの変更を考えることは困難であろう。なぜならば、ミスマッチ現象が発生することに加えて、サイズを制限すると、その直接的な結果として、これらのアンテナの場合には利得の減少が発生するからである。
【0018】
〔発明の説明〕
本発明は、上記の従来技術の欠点の全てまたは一部を解消すること、具体的には、接触を介する案内部材のモニタリング(例えばベアリングケースに格納されたベアリングの、頑健な短距離無線通信リンクを介したモニタリング)を可能にする手段を提案することを目的とする。
【0019】
本発明は、低コストかつ非侵入性を有し、例えば再登録費用の支払いが回避できるという効果を有する解決方法を提供する。なお、非侵入性を有するという理由は、例えば鉄道用軸箱に格納されたローラーベアリングケースに格納されたベアリングの場合、その軸箱を変更することが必要とされるからである。
【0020】
この目的を達成するために、本発明の一態様は、接触を介する案内部材に特徴的な少なくとも1つの物理的な大きさをモニタリングするためのモジュールであって、外部を向き、かつ、電磁波が透過可能な透過性物質製の保護カバーによって閉じられた金属の空洞部の内部に設けられたPIFAアンテナを備え、該PIFAアンテナが、異なる物質の複数の層を有する基板内に設けられた放射素子を有するモジュールに関する。
【0021】
特定の各実施形態によれば:
−上記モニタリング用モジュールは、上記金属の空洞部が設けられている部分を有している;
−上記PIFAアンテナは、上記金属の空洞部に設けられた金属製支持部に固定されている;
−上記PIFAアンテナは、上記放射素子の周囲で折り畳まれた接地面を有している;
−上記接地面は、複数の線部20、19、22、27、および、17を有している;
−上記放射素子21は、コンデンサC1、C2、C3、C4、および、C5によって、上記接地面が互いに異なる線部19、27、22、20、および、17に結合されている;
−上記PIFAアンテナは電力線24の一部を含んでおり、この電力線24は、コネクタ10の中央のコア部から延び、また上記電力線24の一方の端部は、上記接地面の線部22の円形の空洞部28内に出てくる;
−上記電源機構は、SMA(“SubMiniature version A”: サブミニチュアバージョンA)、UMP、または、UFLから選択される型のコネクタを用いて、上記PIFAアンテナに接続されている;
−上記放射素子21は上記電力線24の一部に接続されている;
−上記PIFAアンテナは、該PIFAアンテナと電気的に並列に接続された可変コンデンサを、上記コネクタ10の中央のコア部と接地面との間に有している;
−電磁波が透過可能な上記透過性物質製の保護カバーは、HDPE(“High Density Polyethylene”: 高密度ポリエチレン)またはLDPE(“Low Density Polyethylene”: 低密度ポリエチレン)から選択される物質から形成されている;
−上記基板は、第2の物質の2つの層の間に設けられた第1の物質の層から構成されている;
−上記第1の物質はHDPE類に属し、上記第2の物質はPTFE類に属する;
−上記第2の物質はArlon(登録商標)25Nである;
−上記アンテナは、868MHzの共振周波数において最大利得を示す;
−上記アンテナは、以下の寸法を有している:
−4mm〜20mmの高さ(つまりPIFAアンテナの厚さ);
−40mm〜60mmの長さ;
−18mm〜20mmの幅。
【0022】
−上記放射素子は矩形面を有している;
−上記接触を介する案内部材は、ベアリングケースに格納されたベアリングである;
−上記部分はヒートシンクまたはカバーから選択される;
本発明は、接触を介する案内部材に特徴的な、少なくとも1つの物理的な大きさをモニタリングするためのモジュールを最適化するための方法であって、以下のステップを含む方法にさらに関する。
【0023】
−PIFAアンテナを、外部を向き、かつ、電磁波が透過可能な透過性物質製の保護カバーによって閉じられた、該モニタリング用モジュールの金属の空洞部の内部に集積すること、および
−異なる物質の複数の層を有する基板内に設けられた放射素子の周囲で折り畳まれた接地面を有する該PIFAアンテナを構成すること。
【0024】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の他の特徴および効果は、添付図面を参照した以下に示す記載によって理解されるであろう。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るモニタリング用モジュールの断面図である。
【0026】
図2は、金属の空洞部の4つの異なるモデル化の例を示す図である。
【0027】
図3Aおよび図3Bは、PIFAアンテナの側面図である。
【0028】
図4は、PIFAアンテナの上面図である。
【0029】
図5は、金属の空洞部に設置されたPIFAアンテナの周波数に対する反射係数を示すグラフである。
【0030】
図6は、LDPE(“Low Density Polyethylene”: 低密度ポリエチレン)製の保護カバーを設けた場合および該保護カバーを設けない場合について、金属の空洞部に設置されたPIFAアンテナの周波数に対する反射係数を示す2つのグラフである。
【0031】
図7は、本発明の一実施形態に係るPIFAアンテナの電気回路図である。
【0032】
分かり約するために、全ての図面において、類似または同一の部材には同一の参照記号を付与している。
【0033】
〔一実施形態の詳細な説明〕
本発明は、仏国特許第FR1155993号、第FR1155994号、および、第FR1155995号に記載の、接触を介する案内部材のモニタリング用モジュール1の技術的特徴を全て備えている。
【0034】
本発明の本実施形態において、対象となる接触を介する案内部材は、鉄道用軸箱に格納されたローラーベアリングケースに格納されたベアリングであるが、この特定の実施形態は本発明の権利範囲を必ずしも限定するものではない。
【0035】
図1は、接触を介する案内部材(例えば、ベアリングケースに格納されたベアリング)に特徴的な少なくとも1つの物理的な大きさのモニタリング用モジュール1であって、仏国特許第FR1155993号、第FR1155994号、および、第FR1155995号に記載の複数の技術的な基礎的要素、特に、ベアリングの状態の診断結果を伝送するためのユニットを備えたモニタリング用モジュール1を示している。
【0036】
ベアリングの状態の診断結果を伝送するための該ユニットは、伝送用アンテナをモニタリング用モジュールに集積し、また低電力無線周波数を介して電子的伝送モジュール(無線センサノード)に接続することを可能にする技術的構造を全て備えている。
【0037】
このモニタリング用モジュール1は、少なくともPIFA(“Planar Inverted−F Antenna”: 板状逆Fアンテナ)アンテナ5の最大利得に対応する周波数帯域において電磁波が透過可能である、透過性物質製の保護カバー4によって閉じられ、かつ外部を向いた、金属の空洞部2の内部に設けられたPIFAアンテナ5を備えている。
【0038】
この保護カバー4によって、特に、上記モニタリング用モジュールが厳しい環境(例えば、鉄道車両の台車)に配置される場合に、PIFAアンテナ5は保護される。
【0039】
PIFAアンテナ5の保護カバー4は、PE(“polyethylene”: ポリエチレン)系の物質で形成され、少なくとも3mmの厚さを有する。
【0040】
さらに具体的には、この物質は、例えば、869MHzの周波数において、比誘電率がεr=2.10、誘電損率tanδ=1.7.10−3のLDPE(“Low Density Polyethylene”: 低密度ポリエチレン)である。
【0041】
PEの効果は、高密度(“HD”: high density)であるのか、または、低密度(“LD”: low density)であるのかに関わりなく、衝撃を受けても劣化せずに良好な変形性を有することである。さらに、PEは、868MHzの周波数において、非常に良好な電磁気的挙動を示す。一方で、Plexiglas(登録商標)型のポリマーは、ファイバーガラスをベースにしており、脆弱で、衝撃を受けると粉砕される。
【0042】
別の構成として、PIFAアンテナ5の保護カバー4を形成する上記物質は、LDPEに比べて堅く、しかも非常に良好な誘電特性を有するHDPEであってもよい。
【0043】
金属の空洞部2は、このモニタリング用モジュールの一部内において構成される。この部分は、例えば、カバーまたはヒートシンクに関連する。
【0044】
本実施形態において、この部分は、アルミニウム合金製のヒレ状部を有するヒートシンク3に関連するが、これに限定されるものではない。
【0045】
この部分がヒートシンク3に関連する場合、このモニタリング用モジュール1のPIFAアンテナは、このヒートシンク3によって構成される金属塊に特に適合するように構成される。
【0046】
さらに、PIFAアンテナ5を金属の空洞部2に集積することは、集積として最適である。なぜならば、この集積は、上部、つまり、ヒートシンク3において実施され、したがって、アンテナの離調の潜在的な原因である軸箱のカバーから離れた部分において実施されるからである。
【0047】
しかも、金属の空洞部において、PIFAアンテナ5は、約10mという比較的短い距離に配置された受信機(例えば、軌道わきに配置された無線通信端末)に対して、最適な送信を実施することの実現可能性を保持したままで、外部の環境からは保護されている。
【0048】
図2は、この金属の空洞部2の4つの異なるモデル化例11、12、13、14を提示することによって、PIFAアンテナを金属の空洞部2に集積し固定する様子を示している。
【0049】
PIFAアンテナ5が金属の空洞部において配置される限り、PIFAアンテナ5は同じように放射しないので、金属の空洞部2内では、PIFAアンテナ5を最適に固定するための特別な構成が実現される。
【0050】
金属の空洞部2にIFAアンテナ5を固定するために、中央の機械加工部9を備えた金属製支持部6が設けられる。
【0051】
この中央の機械加工部9は、アンテナ5の装着時に、PIFAアンテナ5が配置され、次に、接地面20のある部分が金属製支持部6に接触し、かつ、この接地面20に隣接するPIFAアンテナ5の側面が金属の空洞部2の角部8に接触はしないが角部8に対向する位置に達するまで、PIFAアンテナ5が金属の空洞部2内へ滑り入れられる際に、コネクタ10を受けるためのものである。こうすることによって、PIFAアンテナは、例えば接着剤などの固定手段を用いて、後部支持部に直接固定される。
【0052】
また、特にコネクタに対して加えられるねじれ力を抑制するためにケーブルを接続するには、中央の機械加工部9が必要であることが理解される。
【0053】
一方で、電源機構は可変コンデンサを備え、この可変コンデンサが、金属の空洞部内へのPIFAアンテナの装着時に、所望の周波数に対するPIFAアンテナの同調を最適化することを可能にする。
【0054】
この可変コンデンサ(バリキァップ)は、コネクタ10の中央のコア部と上記接地面との間で、アンテナ5と電気的に並列に接続される。
【0055】
上記可変コンデンサは、上記アンテナの装着時に、同調の質に直接的に影響するこのような空洞部における配置の許容度と関連して、伝送における利得の最適値が所望の周波数(868MHz)において得られるように、このPIFAアンテナ5を周波数において調節することを可能にする。
【0056】
図3A、図3B、および、図7はPIFAアンテナ5の側面図を示し、図4はこのアンテナ5の上面図を示している。
【0057】
このPIFAアンテナは平面状の矩形の放射素子21および接地面を備え、この接地面は、アンテナ5の物理的なサイズを小さくするために、放射素子の周囲で折り畳まれている。
【0058】
一実施形態において、上記接地面は、接地面が868MHzで共振するように選択された電気長を有する。この接地面は、第1の部分20、左側方部分19、放射素子の上方に折り畳まれた部分22、右側方部分27、および、部分17によって実現される上記接地面の戻り部分を備えている。
【0059】
この放射素子21は、以下のコンデンサによって、互いに異なる部分20、19、22、27、および、上記接地面の戻り部分を形成する17に結合される。
【0060】
−電力線24のセクションと上記接地面の側方部分19との間に設けられ、上記アンテナの電気インピーダンス(50Ω)に最も大きな度合いで関与するコンデンサC1;
−放射素子21と上記接地面の側方部分27との間に設けられているコンデンサC2;
−放射素子21と上記接地面の戻り部分17に対応する部分との間に設けられているコンデンサC3;
−放射素子21と上記接地面の一部22との間に設けられているコンデンサC4、および
−放射素子21と上記接地面20の上記部分との間に設けられているコンデンサC5。
【0061】
この放射素子21は上記接地面20の上記部分の上方に配置され、電力線24とコネクタ10とを備えた電源機構に接続される。
【0062】
図7において、電力線24および放射素子21は、このPIFAアンテナの「正」極を構成し、2つのインダクタL1およびL2、ならびに、直列に接続された2つの抵抗器rc1およびrc2によって表わされる。
【0063】
これらの抵抗器rc1およびrc2は、銅製の導体の特徴に起因するジュール効果による損失の制御素子であるが、本実施形態ではこれに限定されるものではない。
【0064】
上記インダクタL1およびL2は、放射素子21および電力線24のコンポーネントの誘導効果を表わし、コネクタ10から「見た」インピーダンスに関与する。
【0065】
上記電源機構は、上記モニタリング用モジュールから送られて来る情報を伝送することを可能にする無線周波数伝送モジュールに対応する。
【0066】
電力線24のセクションの第1の端部は、例えばSMA型のコネクタ10の中央のコア部から延び、第2の端部は、上記接地面の線部22の円形の空洞部28内に、最小の円形の距離約1mmで現れる。電力線24のセクションのこの役割は、放射素子21を機械的に維持することである。
【0067】
上記接地面は、同じ電気長を保持ししたまま、PIFAアンテナ5のサイズを小さくすることができるように、接地面20の上記部分に平行な折り畳まれた部分22を含む。この電気長は、868MHzで上記アンテナに共振するように選択される。
【0068】
この平行部分22は、PIFAアンテナ5の入力インピーダンスに対して容量的な効果を有し、コネクタ10から見た入力インピーダンスにおいて、インダクタンスL1およびL2に関与する。
【0069】
折り畳まれた部分22は、上記線部17に対応する上記接地面の戻り部分を備えている。この線部17の長さは、PIFAアンテナ5を周波数において同調させるための、つまり、無線周波数の中心を868MHzとし、かつ、このPIFAアンテナの反射係数S11の振幅を最小にするための、調節変数である。
【0070】
この変数は、アンテナ5の精密な調節を可能にする主調節変数である。この場合、目的は、50Ωの電気的インピーダンスを達成し、かつ、反射係数S11の値を所望の周波数(868MHz)まで最小化することである。その結果、伝送係数は最大化される。
【0071】
上記アンテナの作動原理は以下のようである。すなわち、上記放射素子の電力によってこの素子に電流が発生する。この電流の発生によって、折り畳まれた接地面との誘導結合および容量結合ならびに誘導効果を介して、この接地面に表面電流が励起される。このアンテナの放射は、A面では半球状であり、B面でも半球状である(ただし、振幅は小さい)。このアンテナは、主に(保護壁に対向する位置に配置された)A面に向かって放射するが、そのデザインによって後部(B面)に向かっても放射する。
【0072】
上記PIFAアンテナの寸法を決定する上記各パラメータの変化によって、PIFAアンテナを最適に構成することができるようになる。
【0073】
【表1】

【0074】
このような例として、上記PIFAアンテナの寸法を決定するこれらのパラメータのうちの3つを図3Aに示しており、これらは以下の特性を有する:
−上記電力線と接地面19の側面との間の距離に対応するパラメータ25。この距離は、アンテナの入力インピーダンスの大きさの決定に最も大きな度合いで影響し、同調を得るためには50Ωでなければならない;
−放射素子21と上記接地面の部分27との間の距離に対応するパラメータ26。この距離も、上記アンテナの入力インピーダンスに関与するが、パラメータ25に比べると影響の程度は小さい。
【0075】
−上記接地面の部分17の長さに対応するパラメータ23。この長さは、周波数におけるアンテナの精密な調節を可能にする主調節変数を構成する。目的は、50Ωの電気インピーダンス優先的に達成し、かつ、反射係数S11の値を所望の周波数(868MHz)まで最小化することである。その結果、伝送係数は最大化される。
【0076】
放射素子21は、異なる物質の複数の層15、16を備えた基板内に設けられている。この放射素子21は、厚さが35μmの銅に対応する。
【0077】
さらに具体的には、この基板は、厚さがそれぞれ800μmの第2の物質の2つの層15の間に、厚さが3.2mmの第1の物質の層16を備えている。
【0078】
現在の技術的状況では、PIFAアンテナが金属と空気から構成される基板とを除いた物質を備えないことが知られている。
【0079】
本発明の文脈において、空気以外の物質であって、誘電率εおよび透磁率μで表わされる電磁気学的特性を有する物質を用いることによって、上記アンテナの物理的なサイズを小さくすることができるようになる。
【0080】
本発明によれば、上記基板は、異なる厚さ、および、868MHzにおいて異なる複素誘電率の値を有する、少なくとも2つの誘電性物質の積層構造を備えている。
【0081】
本発明に係る本実施形態において、上記第1の物質は、HDPE(“High Density Polyethylene”: 高密度ポリエチレン)類に属し、上記第2の物質はPTFE(“polytetrafluoroethylene”: ポリテトラフルオロエチレン)類に属する。
【0082】
本実施形態において、上記第1の物質は不活性プラスチックであり、上記第2の物質はArlon(登録商標)25Nに対応する。
【0083】
上記HDPEは、868MHzの周波数において比誘電率がεr=2.16であり、誘電損率がtanδ=1.10−3である。
【0084】
物質に関するこの構成は、物質のコストおよび入手可能性に関しては非常に良好な妥協案である。
【0085】
異なる物質の複数の層15、16を備えたこのような基板の使用に関連する効果の1つは、該基板の使用によって、上記アンテナの物理的なサイズを小さくすることができるという事実に関連する。さらに、この基板のもう1つの効果は、該基板の使用によって、上記接地面からの制御された距離において、放射素子の最適な機械的耐性が得られるようになるという事実に関連する。
【0086】
また、100%のArlon(登録商標)、または、100%のPEHBで構成された基板を使用することによって、このPIFAアンテナ5とは別の寸法決定も可能である。
【0087】
さらに、上記基板において使用されるこのような各物質は、どちらも、868MHz(アンテナの所望の動作周波数)において非常に良好な質の電磁気学的特性を有し、損失は5.10−3未満である。
【0088】
PIFAアンテナの寸法は、次に記す表1のように指定する。ただし、これに限定されるものではない。
【0089】
このPIFAアンテナを製造するという文脈の下において、この表に記した各値はこのアンテナの特性に対して相対的であって、製造の許容差(最大で数十mmまで可能)に依存して異なってもかまわない。
【0090】
PIFAアンテナ5のコネクタ10によって、PIFAアンテナ5を電源機構および電子的伝送モジュール(無線センサノード)に接続することが可能になる。
【0091】
これは、50Ωに合わせて構成されたコネクタ10に対応し、SMA10(“SubMiniature version A”: サブミニチュアバージョンA)型、UMP10型、または、UFL10型などであってもよい。
【0092】
本実施形態では、PIFAアンテナのコネクタ10は、低背コネクタに関連し、したがって、UMP型またはUFL型に関連する。このようなコネクタによって、その小さなサイズのため、PIFAアンテナ5を金属の空洞部2により良好に集積することができるようになる。
【0093】
このPIFAアンテナ5の効果の1つは、短距離無線デバイスの受信時の出力値および感度値を考慮することによって、上記金属の空洞部内部の伝播において、適切な性能が提供できるだけの十分な利得値をともなった全方向性を有することである。
【0094】
したがって、PIFAアンテナ5は、水平偏光とともに鉛直偏光を受信する能力を有する。このことは、金属の空洞部2内において起こり得るように、非偏光が蔓延していて偏光の選択が困難な内部環境において大変有利となる。
【0095】
図5に示すように、PIFAアンテナ5は金属の空洞部2に固定され、868MHzの共振周波数で最大利得を示し、帯域幅は8MHzである。必要であれば、保護カバー4の使用を埋め合わせるために、共振周波数を増加させてもかまわない。
【0096】
このような例として、図6は、金属の空洞部2の内部に固定された伝送用PIFAアンテナに対向する位置に設置された、厚さが3.2mmのLDPEで形成される保護カバー4の影響を示している。したがって、このPIFAアンテナは868MHzの周波数で放射する。
【0097】
したがって、この共振周波数は、PIFAアンテナ(5)に対向する位置に誘電性物質を付加することによって、埋め合わせることが可能であることがわかる。
【0098】
例えば、比誘電率がεr=4.5である3mmのFR4を、保護用LDPE製カバーの正面に付加すると、周波数シフトが発生し、送信周波数が878MHzから868MHzに変化する。
【0099】
使用中のLDPEより高い誘電率、または、相当大きな防護厚さを有する保護カバーを選択することによっても、類似の結果が得られる。
【0100】
同様に、帯域幅を変化させることができる効果が、PIFAアンテナ5の厚さを修正することによっても得られる。
【0101】
このPIFAアンテナは、以下の各ステップによって組み立てられる:
−導電性物質を、水平方向の側面上の接地面の一部20および22に関連する基板15、16上に堆積させること;
−基板上の物質15および16を穿孔して、金属化(metallizatiion)を実施する前に線24を形成できるようにすること;
−基板の異なる物質層を積層すること;
−PIFAアンテナの鉛直方向の側面上の接地面および放射素子を構成する導電性物質をメッキし、押圧すること、および
−基板に開けた上記の穴を金属化することによって線24を設置可能にすること、および
−上記接地面の線部20上に、コネクタ10を溶接すること。
【0102】
本発明の本実施形態では、アンテナの周波数調節が、空洞部のアンテナの周波数を測定し、そしてバリキャップ(varicap)によって補正するステップによって、反復的に実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の一実施形態に係るモニタリング用モジュールの断面図である。
【図2】金属の空洞部の4つの異なるモデル化の例を示す図である。
【図3A】PIFAアンテナの側面図である。
【図3B】PIFAアンテナの側面図である。
【図4】PIFAアンテナの上面図である。
【図5】金属の空洞部に設置されたPIFAアンテナの周波数に対する反射係数を示すグラフである。
【図6】LDPE(“Low Density Polyethylene”: 低密度ポリエチレン)製の保護カバーを設けた場合および該保護カバーを設けない場合について、金属の空洞部に設置されたPIFAアンテナの周波数に対する反射係数を示す2つのグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係るPIFAアンテナの電気回路図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触を介する案内部材の状態に特徴的な、少なくとも1つの物理的な大きさをモニタリングするための、PIFAアンテナを備えたモジュールであって、
該PIFAアンテナ(5)が、外部を向き、かつ、電磁波が透過可能な透過性物質製の保護カバー(4)によって閉じられた金属の空洞部(2)の内部に設けられ、
該PIFAアンテナ(5)が、異なる物質の複数の層を有する基板内に設けられた放射素子(21)を備えていることを特徴とするモジュール。
【請求項2】
上記モニタリング用モジュールが、上記金属の空洞部(2)が設けられた部分(3)を有していることを特徴とする、請求項1に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項3】
上記PIFAアンテナ(5)が、上記金属の空洞部(2)内に設けられた金属製支持部(6)上に固定されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項4】
上記PIFAアンテナ(5)が、上記放射素子の周囲で折り畳まれた接地面を有していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項5】
上記接地面が、複数の部分(20)、(19)、(22)、(27)、および、(17)を有していることを特徴とする、請求項4に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項6】
上記放射素子(21)が、コンデンサC1、C2、C3、C4、および、C5によって上記接地面の互いに異なる部分(19)、(27)、(22)、(20)、および、(17)に結合されていることを特徴とする、請求項5に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項7】
上記PIFAアンテナ(5)が電力線(24)を備え、電力線(24)がコネクタ(10)の中央のコア部から延び、電力線(24)の端部の一方が上記接地面の線部(22)の円形の空洞部(28)内に出ることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項8】
上記放射素子(21)が電力線(24)に接続されていることを特徴とする、請求項7に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項9】
SMA(“SubMiniature version A”: サブミニチュアバージョンA)、UMP、または、UFLから選択される型のコネクタ(10)を用いて、電源機構が上記PIFAアンテナ(5)に接続されていることを特徴とする、請求項8に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項10】
上記PIFAアンテナ(5)が、PIFAアンテナ(5)と電気的に並列に接続された可変コンデンサを、コネクタ(10)の中央のコア部と上記接地面との間に有していることを特徴とする、請求項4〜9のいずれか一項に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項11】
電磁波が透過可能な上記透過性物質製の保護カバー(4)が、HDPE(“High Density Polyethylene”: 高密度ポリエチレン)またはLDPE(“Low Density Polyethylene”: 低密度ポリエチレン)から選択される物質から形成されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項12】
上記基板が、第2の物質の2つの層(15)の間に設けられた第1の物質の層(16)を含んで構成されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載のモニタリング用モジュール。
【請求項13】
上記第1の物質がHDPE類に属し、上記第2の物質がPTFE類に属することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項14】
上記第2の物質がArlon(登録商標)25Nであることを特徴とする、請求項13に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項15】
上記PIFAアンテナ(5)が、868MHzの共振周波数において最大利得を示すことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項16】
上記PIFAアンテナ(5)が以下の寸法を有していることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載のモニタリング用モジュール:
−4mm〜20mmの高さ
−40mm〜60mmの長さ
−18mm〜20mmの幅。
【請求項17】
上記放射素子(21)が矩形面を有していることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項18】
上記部分(3)が以下の素材のいずれか1つから選択されることを特徴とする、請求項2〜17のいずれか一項に記載のモニタリング用モジュール:ヒートシンクまたはカバー。
【請求項19】
上記接触を介する案内部材が、ベアリングケースに格納されたベアリングであることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載のモニタリング用モジュール。
【請求項20】
接触を介する案内部材に特徴的な、少なくとも1つの物理的な大きさをモニタリングするためのモジュールを最適化するための方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする方法:
−PIFAアンテナ(5)を、外部を向き、かつ、電磁波が透過可能な透過性物質製の保護カバー(4)によって閉じられた、該モニタリング用モジュールの金属の空洞部(2)の内部に集積すること、および
−異なる物質の複数の層を有する基板内に設けられた放射素子の周囲で折り畳まれた接地面を有する該PIFAアンテナ(5)を構成すること。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−17177(P2013−17177A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−149517(P2012−149517)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(507018894)エヌテエヌ−エスエヌエール ルルモン (22)
【Fターム(参考)】