説明

掻取具

【課題】狭小隙間の汚れを確実に除去する。
【解決手段】可塑性を有する素材により成る線材1に糸2を螺旋状に巻付け、得られた糸巻付線材二本以上を螺旋状に捻じり合わせて形成することによって、糸2を線材1に密着させて、全径を小さく抑える。又、巻付け糸にて螺旋状の狭幅凹凸部を形成し、糸巻付線材にて螺旋状の広幅凹凸部を形成し、これらを交差させると共に、大小の凹凸部を多数混在させることで、被除去物への引っ掛かりを多くし、掻取具合を良好にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器類における部品間の空隙部や、人体に穿設されたピアスホール、外耳道等の狭小隙間の清掃に使用したり、病理学的施術や微生物学的処理、例えば、患者病変部細胞の採取、細菌類培養処理時の菌株接種等に有用な掻取具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピアスホールの清掃具として、複数本の線材を一体的にねじることによって形成した挿入部材と、この挿入部材をその一端に突設したハンドル部とからなる発明(下記特許文献1を参照)が見受けられた。
この清掃具は、螺旋を形成する線材間に空隙が存在し、具体的には、横断面がほぼ円形の複数本の金属製線材を一体的にねじることによって、表面に螺旋状の凹条と凸条を交互に形成した挿入部材と、この挿入部材をその一端に突設したハンドル部とからなる発明が提示されていた。
これらは、線材間の空隙である凹条に消毒液剤が保持され、洗浄性が優れているうえ、凸条によって垢などを効率的に掻き出すことが出来た。
更には、洗浄性、掻き出し効率の向上を図るべく、横断面がほぼ円形の複数本の金属製線材を、それらの間に線状又は板状の可撓体を挟んで一体的にねじることによって、螺旋軸周囲に、螺旋状に可撓体を突出させてなるブラシ部を備えた挿入部材と、この挿入部材をその一端に突設したハンドル部とからなる発明も提示されていた。
【0003】
【特許文献1】特開2004−49596号公報(特許請求の範囲、図1〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のブラシ部有する清掃具は、その径方向に可撓体が突出しているため、ピアスホールよりも狭小の隙間に挿入するには不適であり、また使用時に可撓体が撓み、可撓体と被除去物(垢等)との引っ掛かりが外れて、被除去物を取り残してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、可塑性を有する素材により成る線材に糸を螺旋状に巻付け、得られた糸巻付線材二本以上を螺旋状に捻じり合わせて形成することによって、糸を線材に密着させて、全径を小さく抑える。
又、巻付け糸にて螺旋状の狭幅凹凸部を形成し、糸巻付線材にて螺旋状の広幅凹凸部を形成し、これらを交差させると共に、大小の凹凸部を多数混在させることで、被除去物への引っ掛かりを多くし、掻取具合を良好にする様にして、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0006】
要するに本発明は、可塑性を有する素材により成る線材に糸を螺旋状に巻付け、得られた糸巻付線材二本以上を螺旋状に捻じり合わせて形成したので、糸が線材に密着して、全径を小さくでき、極めて狭小の隙間に挿入することが出来る。
又、巻付け糸に洗浄用薬液等の液剤を含浸保持させられ、その上、巻付け糸にて形成した螺旋状の狭幅凹凸部の凹部と、糸巻付線材にて形成した螺旋状の広幅凹凸部の凹部とによっても、液剤を保持可能であり、液剤を多量に保持させ、狭小隙間の清掃を容易化することが出来る。
又、狭幅凹凸部により、小さな被除去物を捕捉し、一方、広幅凹凸部で大きな被除去物を捕捉することが出来て、更には、狭幅凹凸部と広幅凹凸部とが交差配置されていることから、これらの組み合わせにより、掻取具をどの様に動かしても、被除去物を効率良く掻取ることが出来る。
【0007】
一本の糸巻付線材を二つ折りにし、屈折点かから両端までの二線分部を捻じり合わせたので、捻じり合わせ(製造)が容易となり、また屈折点を先端側にすることによって、先端が尖らず、滑らかになって、ピアスホールや外耳道等の人体部分の清掃に使用する場合に安全である。
【0008】
糸は、その周面に突出部を有し、該突出部の突端面縁には角部が形成されているので、角部により被除去物を確実に捉えて、払拭性を更に向上させることが出来る。
【0009】
掻取具の一端に環状部を突設したので、環状部を先端側にすることによって、ピアスホールや外耳道等の人体部分の清掃に使用する場合の安全性が更に高まり、また広幅凹凸部で捉えられない大きな被除去物でも、環状部により捉えて、取り除くことが出来る。
又、病理学的施術や微生物学的処理に使用する場合に、螺旋状の凹凸部だけではなく、環状部でより大きな、或いは、より多量に被採取物を捉えることが出来る。
【0010】
掻取具の全体を圧扁したので、扁平化により、扁平体幅方向での剛性を確保できると共に、厚み方向では扁平化前の線材径より細く(薄く)なることから、例えば、スリット状の隙間に用いる場合は、より狭小の隙間に対応することが出来る。
【0011】
掻取具の他端に綿球等の吸液体を設けたので、例えば、綿棒の様に、吸液体により、入浴後の外耳道を清掃し、耳垢と共に水分を除去した後、更に反対側で外耳道に残っている乾いた細かな耳垢を除去でき、この様に湿った部分の清掃にも適用可能として、用途拡張を図ることが出来る等その実用的効果甚だ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の掻取具につき、実施例を示し、詳細に説明する。
本実施例の掻取具は、図1に示す様に、線材1に、これより小径の糸2を螺旋状に巻付け、得られた糸巻付線材3を図2に示す様に二つ折りにし、屈折点から両端までの二線分部4、4aを、図3に示す様に、螺旋状に捻じり合わせて形成されている。
又、屈折点側では、二線分部4、4aを捻じり合わせずに残した部分により、環状部5を形成している。
尚、糸2は、線材1に挟まれて、固定されているため、接着剤を必須としないが、線材1に接着剤を塗布した後、糸2を巻付け、より強固に密着固定させる様にしても良い。
【0013】
図4に示す様に、この掻取具は、線材1に糸2を螺旋状に巻付けることによって、線材1の周面上に糸2による小凸部6、6a…と、該小凸部6、6a…間に小凹部7、7a…が交互に出現し、狭幅凹凸部が形成されている。
又、図3に示す様に、糸巻付線材3を螺旋状に捻じり合わせることによって、糸巻付線材3による大凸部8、8a…と、該大凸部8、8a…間に大凹部9、9a…が交互に出現し、広幅凹凸部が形成され、この広幅凹凸部と、狭幅凹凸部は交差しており、掻取具の周面には大小の凹凸部が多数混在しており、この大小の凹凸部と上記の環状部5とにより、被除去物を捉えるのである。
【0014】
線材1は、捻じり合わせが可能な可塑性を有する素材、例えば、金属、合成樹脂、それらの複合材等から成り、また形状記憶機能を有する素材を用いて、捻じり合わせ後の掻取具の形状を記憶させれば、使用により、掻取具が折れ曲げられても、加熱等によって形状を回復させられ、洗浄して繰り返し使用することが可能である。
【0015】
糸2は、天然繊維(木綿、麻、絹等)、半合成繊維(レーヨン等)、合成繊維(ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド等)、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維等)等から成る撚糸の他、これらの単糸でも良く、吸液性の有無は問わない。
【0016】
因みに、液剤の保持量をより多く確保したい場合は、例えば、東洋紡績株式会社により市販のランシール(登録商標)、KBセーレン株式会社のアクシア、帝人ファィバー株式会社のベルオアシス(登録商標)等の様な、吸液性が特に高い特殊な合成繊維の糸2を用いれば良く、或いは、吸液性の高い樹脂や化合物(例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ヒアルロン酸ナトリウム、架橋型ポリグルタミン酸等)を吸液性を有する糸2に含浸固化させたり、非吸液性の糸2の表面に塗布したり、若しくは、糸2の線材1への固着に用いる接着剤として用いても良い。
【0017】
更に、糸2は、その周面に突出部を有し、該突出部の突端面縁に角部が形成されているものが良く、具体的には、例えば、図5(糸径方向での断面図)及び図6(糸長方向での断面図)に示す様に、糸2の周面上に複数の突条(突出部)10、10a…を糸長方向に沿って形成し、該突条10、10a…の上端面の縁に角部11を形成しても良いし、或いは、図示しないが、糸長方向の適宜間隔毎に突条を糸周に沿って形成する様にしても良く、この様な糸2を用いることによって、被除去物が角部11で確実に捉えられる。
尚、図4及び5に示す様な形状の糸としては、KBセーレン株式会社により市販のベリーマ(登録商標)Xが挙げられる。
【0018】
以上、本実施例では、掻取具は一本の糸巻付線材3から形成されているが、独立した二本の糸巻付線材3にて形成しても良く、また若干太くなっても三本以上を用いて剛性を確保したり、またその様なものの全体を圧扁し、扁平化して、狭小のスリット状隙間に対応可能となしても良く、掻取具の径や長さは、目的に応じ適宜に設定すれば良い。
又、上記構成に加えて、掻取具の一端に吸液体12を設けても良く、図7に示す様に、一端に環状部5を設けた掻取具の場合は、他端に吸液体12を設ければ良い。
吸液体12としては、綿棒に用いられる綿球、合成樹脂から成るスポンジ等、或いは、不織布を巻付けて、吸液体12としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る糸巻付線材の概略正面図である。
【図2】図1の糸巻付線材を二つ折りにした状態を表す概略正面図である。
【図3】一端に環状部を設けた掻取具の概略正面図である。
【図4】糸巻付線材の部分拡大図である。
【図5】糸の径方向での断面図である。
【図6】糸の長さ方向での断面図である。
【図7】他端に吸液体を設けた掻取具の概略正面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 線材
2 糸
3 糸巻付線材
4、4a 線分部
5 環状部
10、10a… 突出部
11 角部
12 吸液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑性を有する素材により成る線材に糸を螺旋状に巻付け、得られた糸巻付線材二本以上を螺旋状に捻じり合わせて形成したことを特徴とする掻取具。
【請求項2】
一本の糸巻付線材を二つ折りにし、屈折点から両端までの二線分部を捻じり合わせたことを特徴とする請求項1記載の掻取具。
【請求項3】
糸は、その周面に突出部を有し、該突出部の突端面縁には角部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の掻取具。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の掻取具の一端に環状部を突設したことを特徴とする掻取具。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の掻取具を圧扁したことを特徴とする掻取具。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の掻取具の他端に綿球等の吸液体を設けたことを特徴とする掻取具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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