説明

揚水装置およびそれを利用した散水装置

【課題】電気機器を用いずに圧縮空気で地下水を揚水する。
【解決手段】密閉容器7の底に、地下水が流入する取水弁9を取り付け、容器内に圧縮空気を吹き込む空気弁11を設ける。空気弁を開閉するために、リンク機構12を介してフロート13と連結する。リンク機構12は、第1および第2のリンク15、16の基端同士を固定点17のまわりに回動できるよう枢支し、両リンクの先端同士の間に引張りコイルばね19を取り付け、第2リンク16の途中21に押杆20の基端を枢支し、その先で空気弁11を開閉するようにする。第1リンクの先端には案内棒22を吊り下げ、この案内棒に沿って上下するようにフロート13を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮空気駆動の揚水・散水装置に関し、湿潤な土地での地下水の汲み上げ作業などに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下水の汲み上げには電動ポンプを用い、これを電気的水位コントローラで制御するのが一般的であった。しかし、地中のような湿潤な環境では、電気装置は絶縁不良で故障しやすく、また、設置・保守工事の際の安全性にも難点が多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、電気機器を用いずに圧縮空気で揚水する装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係るこの発明の揚水装置は、密閉容器に、外部から容器に液体が流入するのを許す取水弁とその中に圧縮空気を送って内圧を高める空気弁を設ける。容器内には、液面高さに応じて上下に動くフロートを設け、リンク機構を用いてこのフロートの動きに連動して前記空気弁を開閉するようにする。空気弁が開いて内圧が高まると、それまで溜まった液体が揚水管を通って外部に送り出される。
【0005】
取水弁から容器の中に液体が入って来て液面が上昇すると、それに連れてフロートが上昇し、ある高さまで上昇すると、リンク機構によってフロートの動きに連動して空気弁が開き、容器内に圧縮空気が供給される。こうして容器内の圧力が高まり、容器内の液体は揚水管を通って容器の外に送り出される。
【0006】
液体の送出に伴いフロートが下がり、あるところまで行くと、リンク機構によって空気弁が閉じられ、容器内の内圧が下がって、再び、容器の中に液体が入って来る。こうして、取水と揚水が交互に繰り返される。なお、揚程は容器に吹き込む圧縮空気の圧力で決まる。このようにこの装置は、圧縮空気を動力源とし、空気弁をフロートの浮力で開閉するようにしたので、構造がシンプルになり、動作が確実であって、安価に提供することができる。
【0007】
リンク機構は、共通の固定点周りに回動できるように一端を支持した第1および第2のリンクと、これらリンクの先端を結ぶ引張りコイルばねと、第2リンクの途中に枢支され、空気弁を押し上げて開く押杆と、第1リンクの先から吊り下げられる案内棒から構成される。そして、フロートは案内棒に沿って一定範囲内で上下動できるように支持する(請求項2)。このものでは、フロートが上昇してアームが持ち上げられると、コイルばねを引き延ばすようにして第1リンクが上向きに回動する。やがて、第1リンクと第2リンクが一線上に並んだあと、ばねが一気に収縮し、第2リンクが上向きに回動し、押杆が空気弁を開かせ、容器内に圧縮空気が導入される。
【0008】
こうして容器内の液体が外に送り出され、液面が徐々に低下し、フロートがあるところまで下降すると、ばねが伸びて、第1、第2リンクおよびばねが一線上に並んだ後、ばねが一挙に縮み、第2リンクが下向きに回動する。これに伴って、押杆が下降し、空気弁が閉じて容器内への圧縮空気の噴出は止まる。
【0009】
このように、リンク機構はスナップアクションを備えていて、空気弁が常に全開または全閉のいずれかの状態を保持することができ、また、構造がシンプルであって、動作が確実である。
【0010】
このような揚水装置を地中に埋設し、揚水管の先に繋いだ散水管を地表に沿って導設し、散水管に沿って設けられた噴出孔から地下水が送り出されるように散水装置を構成することができる(請求項3)。このものは、例えば畑に適用することで、水やりだけでなく、地下水の熱(温熱、冷熱)で地面を冬場に暖め、夏は冷すなどして野菜の育成をコントロールすることができる。また、道路に適用すれば、冬場の融雪・凍結防止などの効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は地下水位が高いところで地下水を汲み上げる場合を示したもので、地表にマンホール1を設置し、その底板を貫通する格好で鞘管2を埋設し、その中に揚水装置3を設置する。図示しないコンプレッサから圧縮空気管5がマンホールに導かれており、揚水装置を駆動する圧縮空気はこれから供給される。揚水装置から汲み上げられた地下水は揚水管6を通って送り出される。符号6aは逆止弁である。
【0012】
図2に示すように、揚水装置3は円筒形の密閉容器7の中に収まっている。容器の底に取水弁9を取り付け、取水弁を囲むように容器7の下に取水かご10を取り付ける。取水弁9は容器7への地下水の流入を許すが逆方向の流れは阻止する構造になっている。
【0013】
容器内上部に空気弁11を設け、これに容器内に引き込まれた圧縮空気管5を接続する。空気弁11は、図4に示すように、普段は空気圧で弁球11aが弁座11bに押し付けられて閉じており、鎖線で示すように、下穴から弁球を棒で突き上げると、弁球が弁座から離れて弁が開き、容器内に圧縮空気を放出するようになっている。この空気弁11を開閉するためにリンク機構12を介してフロート13と連結する。
【0014】
図4に拡大して示すように、リンク機構12は、2本のリンク、すなわち第1および第2のリンク15、16の基端同士を固定点17のまわりに回動できるよう枢支し、両リンクの先端同士の間に引張りコイルばね19を取り付ける。第2リンク16の途中の点21に押杆20の基端を枢支し、その先で空気弁11を開閉するようにする。
【0015】
図2に示すように、第1リンク15の先端に金属製の案内棒22を吊り下げる。案内棒は容器7の壁に固定したスリーブ23によって上下に摺動自在に支持されている。この案内棒にドーナツ状断面のフロート13を挿通してあり、フロートは案内棒に沿って上下に動くことができる。案内棒には、フロートの長さより広い間隔を設けて2つのストッパ25が設けてあり、フロートは容器内の水位の変化に応じて上下し、液面がある高さ以上に高くなると、フロートは上側のストッパに当たって、浮力で案内棒を押し上げるようになる。また、液面があるレベルまで低くなると、フロートは下側のストッパに当たり、さらに液面が低くなるとフロートの重さが掛かり案内棒を押し下げるようになる。
【0016】
このように、案内棒22にはフロート13の浮力または重さが交互に作用し、第1リンク15が突き上げられたり、引き下げられたりする。いま、リンク機構が弁閉鎖状態(図4のA状態)にあって、第1、第2リンクが「ハ」の字形になっており、押杆20が下降して空気弁11が閉じているとする。この状態で案内棒22が上に突き上げられると、第1リンク15はばね19を引き伸ばしながら上向きに回動し、やがて第1、第2リンクは一直線になり、ばねは最も引き伸ばされた状態になる(図4のB状態)。この状態からさらに案内棒が突き上げられると、ばねが急激に縮んで、リンクは逆「ハ」の状態に切り替わる(C状態)。こうなると押杆が押し上げられるので、空気弁が開く。このCの弁開放状態から今度は案内棒が引き下げられると、リンクはこれまでと逆の方向をたどり、D状態を経てAの弁閉鎖状態に戻る。
【0017】
容器内の圧力を外に逃すことができるように、図2、図3に示すように、容器内に通気弁26を設ける。この弁は普段閉じているが、レバー26aを下に引くと開いて、容器内の圧力を外に放出するようになっている。レバー26aは、第1リンク15の先端と紐27で結ぶ。
【0018】
図2は取水中の状態を示しており、リンクは弁閉鎖状態(図4のA状態)にある。通気弁26は、紐7が張ってレバー26aが引かれて開放している。この状態では、容器内の圧力が大気圧に保たれているので地下水が取水弁9を通って容器7の中に侵入してくる。液面が徐々に上昇し、それにしたがって、案内棒22に沿ってフロート13が上昇する。やがて、フロートが上側のストッパ25に突き当たるようになり、さらに液面が上昇すると、フロートの浮力で案内棒22が押し上げられるようになり、リンクは図3のC状態(弁開放状態)に切り替わる。同時に、レバーを引いていた紐27が緩んで通気弁26が閉じる。
【0019】
この状態では、図3に示すように、圧縮空気が放出され容器内の圧力が高まり、容器内に溜まっている地下水は揚水管6から外部に送り出される。それに伴い容器内の液面が下降しはじめ、フロートが案内棒に沿って下降し、やがてフロートが、鎖線で示すように下側のストッパ25に突き当たる。さらに液面が下降すると、フロートは徐々に浮力を失っていき、フロートの自重が案内棒に加わるようになリ、やがて、リンクは弁閉鎖状態(図4のA状態)に切り替わり、同時に通気弁26が開いて容器内の圧力が抜け、揚水がストップする。こうなると、図2の状態に戻り、外部の地下水が再び取水弁から容器内に入って来るようになる。
【0020】
この装置は、このように、取水と揚水の行程を繰り返しなから、地下水を地上に汲み上げる。図1に示すものでは、揚水管6の先から散水管29が地面に沿って導設されており、汲み上げられた地下水は、この散水管に間隔を設けて並んでいる噴出口29aから畑の土の中に散水される。こうして散水することで、地表面を潤し野菜等に水分を供給することができ、同時に、地下水の冷熱または温熱により、夏季に地表面を冷し、冬季には暖め、野菜の生育を遅らせたり早めたりコントロールすることができる。散水管29から送出された地下水は、地中を浸透して、再び地中帯水層に戻る。
【0021】
同じような散水管を道路に設ければ、地下水の温熱で冬場に路面を暖めて、凍結や融雪を行い、夏には地下水の冷熱で冷すようにして、舗装路面の温度の上昇を抑えることができる。
【0022】
汲み上げた地下水は、雑用水などとしても利用できる。この装置は、その他、雨水や湧き水などの排水にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】揚水装置の設置図である。
【図2】取水状態の揚水装置の断面図である。
【図3】同じく揚水状態の断面図である。
【図4】リンク機構の作動図である
【符号の説明】
【0024】
6 揚水管
7 容器
9 取水弁
11 空気弁
12 リンク機構
13 フロート
15 第1リンク
16 第2リンク
19 ばね
20 押杆
22 案内棒
26 通気弁
29 散水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、該容器に圧縮空気を送って内圧を高める空気弁と、該容器への液体の流入を許す取水弁と、該容器内の液面に応じて上下に動くフロートと、該フロートの動きに連動して該空気弁を開閉するリンク機構と、該容器から外に押し出される液体が通過する揚水管からなる揚水装置。
【請求項2】
該リンク機構が、共通の固定点まわりに回動できるように基端を支持した第1および第2のリンクと、これらリンクの先端を結ぶ引張りコイルばねと、第2リンクの途中に支持され、該空気弁を押し上げて開く押杆と、第1リンクの先から吊り下げられる案内棒からなり、該フロートは該案内棒に沿って一定範囲内で上下動できるように支持されている請求項1に記載の揚水装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の揚水装置を地中に埋設し、その揚水管の先に繋いだ散水管を地表に沿って導設し、該散水管に沿って設けられた噴出孔から地下水が送り出されるようにした散水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−170082(P2006−170082A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363942(P2004−363942)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(598171427)
【出願人】(593117109)株式会社亀山鉄工所 (17)
【Fターム(参考)】