説明

揚砂輸送装置および揚砂輸送方法、並びに中継ポット

【課題】沈砂池の沈砂を、高揚程であっても、小さな動力でより効率的に輸送することができるようにする。
【解決手段】沈砂池10と、沈砂池10より高所に設置され該沈砂池10の沈砂を水と共に回収する固液回収タンク12とを結ぶ輸送配管16と、輸送配管16の内部に沈砂池の沈砂を水に懸濁させた輸送用プラグ20を形成するプラグ形成部22と、輸送用プラグ20を輸送配管16に沿って真空輸送する真空輸送手段14と、輸送配管16の途中に設置され、輸送用プラグ20を該輸送用プラグ20の輸送の途中で再形成する中継ポット18a〜18cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂を水と共に輸送する揚砂輸送装置および揚砂輸送方法に係り、特に下水処理施設やし尿処理施設の沈砂池の池底に堆積した沈砂を真空吸引により水と共に吸引して、沈砂池よりも高所に設置された固液回収タンクまで効率的に輸送できるようにした揚砂輸送装置および揚砂輸送方法、並びにこの揚砂輸送に使用される中継ポットに関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設やし尿処理施設などの沈砂池に堆積した沈砂は、し渣、砂利、金属類の沈降物などを含み、かつ、強い臭気を発生する。したがって、沈砂池の沈砂を、自動で、詰まりなどの問題もなく、高揚程にて輸送距離も長く、省エネルギーで効率的かつ安全に除去すること、つまり、沈砂池の沈砂を揚砂して固液回収タンクなどに輸送し、洗浄し、固液分離する技術の開発が求められている。
【0003】
例えば、汚水升内の水を該汚水升の上位の真空本管に揚水する真空揚水設備として、汚水升と真空本管との間に中継槽を設け、真空本管からの負圧によって汚水升内の水を中継槽に揚水し、中継槽内の水を真空本管に更に揚水することで、1段ずつ確実に水の高さを上げていくようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。また、配管を通して排泥を排出する際に、排泥をプラグ状に形成して真空輸送することで、排泥の輸送効率が高められることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−317118号公報
【特許文献2】特開2000−186495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば特許文献1に記載の発明と同じ方法で、例えば沈砂池の池底に溜まった沈砂等の砂や共雑物を多く含む水を高所に揚水しようとすると、中継槽内に堆積する砂や共雑物により中継槽の流出管の入口で閉塞が起こりやすくなり、この閉塞を解除する為には、水や空気による洗浄装置の追加が必要となる。そのため、機器構成および制御方法が複雑化してしまうと考えられる。
【0006】
沈砂池の沈砂を水に懸濁させた沈砂水により輸送用プラグ(水柱)を形成して真空輸送すること(以下、「プラグ輸送」という。)が考えられる。この場合、沈砂水を輸送する工程は、堆積した沈砂を水とともに輸送配管内へ取り込む吸引工程と、取り込んだ沈砂水により輸送用水柱を形成し輸送先まで輸送する輸送工程がセットとなり一回の水柱輸送が行われる。また、輸送用プラグ内の沈砂濃度を高くしすぎると輸送中にプラグ形状を維持する為の表面張力が得られなくなるため、初期の輸送用プラグの沈砂濃度には上限があり、適正な輸送用プラグの沈砂濃度は20容積%(以下、沈砂の濃度は、断らない限り容積%とする)程度までである。しかし、輸送用プラグの中に含まれる沈砂は、比重が2.7程度と水に比べて重いことから、輸送用プラグがその進行方向、特に鉛直方向に延びる輸送配管を高速で上がって行く過程で、加速力や重力の影響を受けて徐々に輸送用プラグの後端部へ集まってその濃度が20%を超えて分離し、輸送用プラグの長さが短くなってプラグ形状が維持できなくってしまう。
【0007】
輸送用プラグから沈砂の分離が起こり、輸送用プラグの長さが減衰してプラグ形状を維持できない長さに達すると、沈砂水が分散して空気の流れに乗って運ばれる浮遊流状態となる。浮遊流状態でも沈砂の輸送は可能であるが、比重の重い沈砂を運ぶためには、輸送用プラグのプラグ形状を維持したまま輸送する場合と比べて大きな風量が必要であり、輸送装置に必要な動力がかなり大きくなってしまう。
【0008】
このため、沈砂池の沈砂を効率よく輸送する為にはプラグ輸送が有効であり、プラグ輸送を効率よく行う為には適正濃度の沈砂を含んだ輸送用プラグ(水柱)を輸送先まで維持し続けることが重要であるが、そのような手段は今までなく、実際の運転では、輸送先まで初期の輸送用プラグ(水柱)長を維持することはできず、輸送配管の途中に沈砂水を残しながら輸送用プラグが輸送されていく状態となっているのが現状であった。
【0009】
また、高揚程輸送において必要な鉛直配管部では、鉛直配管部で崩れて輸送用プラグから分離した沈砂水は、輸送工程後の吸引工程時に輸送配管内への空気の注入が止められ配管内の空気の流れが弱まると、垂直配管底部まで落下して位置エネルギーを大きく損失してしまい、高揚程での輸送効率を下げる最大の原因となっている。この傾向は、輸送揚程が高くなるほど顕著に表れ、このため、実質的な輸送揚程は40m程度であると考えられる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、沈砂池の沈砂を、高揚程であっても、小さな動力でより効率的に輸送することができるようにした揚砂輸送装置および揚砂輸送方法、並びにこの揚砂輸送に使用される中継ポットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、沈砂池と、沈砂池より高所に設置され該沈砂池の沈砂を水と共に回収する固液回収タンクとを結ぶ輸送配管と、前記輸送配管の内部に前記沈砂池の沈砂を水に懸濁させた輸送用プラグを形成するプラグ形成部と、前記輸送用プラグを前記輸送配管に沿って真空輸送する真空輸送手段と、前記輸送配管の途中に設置され、前記輸送用プラグを輸送の途中で再形成する中継ポットを有することを特徴とする揚砂輸送装置である。
【0012】
このように、沈砂池と該沈砂池よりも高所に設置された固液回収タンクとを結ぶ輸送配管の途中に中継ポットを設置し、この中継ポットで輸送用プラグを該輸送用プラグの輸送の途中で再形成することにより、高速かつ加速された輸送の途中で輸送用プラグから分離した沈砂水を中継ポット内に溜めて、揚砂された沈砂の持つ位置エネルギーを有効に利用し、しかも、この中継ポット内の沈砂水を取り込みながら、水と沈砂とが均一に混合された輸送用プラグを中継ポットで再形成して、以降のプラグ輸送の効率を上げることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記中継ポットは、揚程10〜30m毎に前記輸送配管に設置されていることを特徴とする請求項1記載の揚砂輸送装置である。
これにより、揚砂された沈砂の位置エネルギーの損失を10〜30m以内に抑えて、揚砂された沈砂の位置エネルギーが大きく損失してしまうことを防止することができる。中継ポットは、揚程10〜20m毎に輸送配管に設置されていることが、揚砂された沈砂の位置エネルギーの損失を効果的に抑える上で好ましい。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記中継ポットの容積は、前記輸送配管の断面積に揚程2〜10m分を乗じた容積に設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の揚砂輸送装置である。
中継ポットは、吸引工程と輸送工程を繰返す毎に、内部の圧力が真空圧と大気圧に変化し、その容量が大きすぎるとエネルギーの無駄となり、小さすぎると沈砂による閉塞などの問題が発生する。このため、中継ポットの適正な容量は、輸送配管の断面積に揚程2〜10m分を乗じた容積程度であり、しかも中継ポットから伸びる鉛直配管長等により、中継ポットの適正な容量を決めることが望ましい。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記プラグ形成部は、前記輸送配管に接続された大気開放管と、該大気開放管を開閉する大気開放弁を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の揚砂輸送装置である。
これにより、輸送配管内を真空引きして沈砂池の沈砂を水と共に所定の位置まで引き上げ、しかる後、大気開閉弁を開き、大気開放管を通して輸送配管内を大気に開放することで、輸送配管内に輸送用プラグを形成することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記プラグ形成部は、前記輸送配管に接続された空気供給管と該空気供給管から圧縮空気を注入する空気注入弁を更に有することを特徴とする請求項4記載の揚砂輸送装置である。
これにより、輸送配管内を真空引きして沈砂池の沈砂を水と共に所定の位置まで引き上げ、しかる後、空気注入弁を開き、輸送配管の空気供給管との接続部より上の沈砂水を押し上げた後、空気注入弁を閉じて大気開閉弁を開き、大気開放管を通して輸送配管内を大気に開放することで、輸送配管内に輸送用プラグを形成することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記中継ポットは、底部に沈砂を溜める沈砂溜まり部を有し、この沈砂溜まり部内の沈砂と後に送られてくる輸送用プラグとを混合して輸送用プラグを再形成するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の揚砂輸送装置である。
【0018】
このように、砂溜まり部内の沈砂と後に送られてくる輸送用プラグとを混合して輸送用プラグを再形成することにより、輸送に伴って崩れることで不足した沈砂水を中継ポットの沈砂溜まり部内の沈砂水で補って、水と沈砂とが適正濃度で混合された輸送用プラグを再形成することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、沈砂池よりも高所に設置された固液回収タンクに、輸送配管を通して、沈砂池の沈砂を水と共に輸送して回収する揚砂輸送方法であって、前記輸送配管の内部に沈砂池の沈砂を水に懸濁させた輸送用プラグを形成し、前記輸送用プラグを、前記輸送配管を通して前記固液回収タンクに輸送する途中で再形成させながら真空輸送することを特徴とする揚砂輸送方法である。
【0020】
請求項8に記載の発明は、前記輸送配管の途中に中継ポットを設置し、該中継ポットの内部に溜まった沈砂を輸送用プラグに混合して輸送用プラグの再形成を行うことを特徴とする請求項7記載の揚砂輸送方法である。
【0021】
請求項9に記載の発明は、流入管と流出管が接続された密閉構造のポット本体を有し、該ポット本体の底部には、空気の流通を確保しつつ沈砂の自然流出を防止して沈砂を溜める沈砂溜まり部が形成され、該沈砂溜まり部内の沈砂を前記流入管から流入される流体で攪拌して、該流体と共に前記流出管から流出させることを特徴とする中継ポットである。
【0022】
これにより、流出管を通してポット本体内に戻る沈砂を沈砂溜まり部内に確実に溜めて、この沈砂溜まり部に溜まった沈砂を流入管からポット本体内に流入される流体と共に流出管から流出させることができる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、前記沈砂溜まり部は、前記流出管の入口近傍に位置していることを特徴とする請求項9記載の中継ポットである。
これによって、流入管から流入される流体によって攪拌された沈砂溜まり部内の沈砂を、該流体と共に攪拌直後に入口から流出管内にスムーズに流入させることができる。
【0024】
請求項11に記載の発明は、前記ポット本体の内部には、前記流入管から流入する流体を衝突させてその向き変えることで、該流体で前記沈砂溜まり部内の沈砂を攪拌する攪拌板が配置されていることを特徴とする請求項9または10記載の中継ポットである。
これにより、流入管から流入する流体による沈砂溜まり部内の沈砂の拡散効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、沈砂池と該沈砂池より高所に設置された固液回収タンクとを結ぶ輸送配管の途中に中継ポットを設置し、この中継ポットで輸送用プラグを該輸送用プラグの輸送の途中で再形成することにより、沈砂池の沈砂を、高揚程であっても、小さな動力でより効率的に輸送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態の揚砂輸送装置の概要を示す。揚砂輸送装置には、池底に沈砂が堆積した沈砂池10の水位HWLよりも高所に位置して、沈砂池10の沈砂の輸送先に設置される密閉構造の固液回収タンク12が備えられており、この固液回収タンク12に、沈砂池10の沈砂が水と共に輸送されて回収される。固液回収タンク12には、真空輸送手段としての真空ポンプ14が接続されている。なお、沈砂池10の池底に堆積した沈砂には、砂以外に小石等の土砂やし渣等も含まれている。
【0027】
沈砂池10と固液回収タンク12は、主に鉛直配管からなる輸送配管16で結ばれており、この例では、輸送配管16の途中に、第1中継ポット18a、第2中継ポット18b、及び第3中継ポット18cの3つの中継ポットが設置されている。これにより、輸送配管16は、沈砂池10と第1中継ポット18aを結ぶ第1輸送配管16a、第1中継ポット18aと第2中継ポット18bを結ぶ第2輸送配管16b、第2中継ポット18bと第3中継ポット18cを結ぶ第3輸送配管16c、及び第3中継ポット18cと固液回収タンク12を結ぶ第4輸送配管16dの4本の輸送配管に分割されている。そして、これらの各輸送配管16a〜16dの間に、中継ポット18a〜18cが、輸送配管16の一部を構成するが如くに配置されている。つまり、前記真空ポンプ12を駆動することで、固液回収タンク12、第1〜第4輸送配管16a〜16d、及び第1〜第3中継ポット18a〜18cの全ての内部が減圧(真空引き)されるように構成されている。
【0028】
この例では、下記のように、揚砂されて中継ポット18a〜18c内に溜められた沈砂の位置エネルギーの損失を10〜30m、好ましくは10〜20m以内に抑えて、揚砂された沈砂の位置エネルギーが大きく損失してしまうことを防止するため、輸送配管16における揚程H1〜H4が10〜30m、好ましくは10〜20mとなる毎に中継ポットを設置するようにしている。
【0029】
沈砂池10と第1中継ポット18aを結ぶ第1輸送配管16aには、第1輸送配管16aの内部に輸送用プラグ(水柱)20を形成するプラグ形成部22の大気開放管24が、沈砂池10の水位HWLよりも若干(100〜500mm)上方に位置して接続されており、この大気開放管24には、大気開閉弁24を開閉する大気開放弁26が設置されている。
【0030】
これにより、真空ポンプ14を介して、第1輸送配管16a内を真空引きして、沈砂池10の沈砂を水と共に所定の位置まで、つまり第1輸送配管16a内の沈砂を含む水の水位が大気開放管24との接続部より高くなるまで引き上げ、しかる後、大気開閉弁26を開き、大気開放管24を通して、第1輸送配管16aの大気開放管24との接続部を大気開放することで、輸送配管16a内の大気開放管24との接続部の上方に、沈砂池10の沈砂を水に懸濁させた、所定長さの輸送用プラグ(水柱)20を形成することができる。この輸送用プラグ20は、例えばその長さが5m程度で、沈砂濃度は20%程度である。そして、この第1輸送配管16a内に形成された輸送用プラグ20は、第1中継ポット18a、第2輸送配管16b、第2中継ポット18b、第3輸送配管16c、第3中継ポット18c及び第4輸送配管16dを通過して、固液回収タンク12まで一気に輸送される。
【0031】
更に、この例では、プラグ形成部22にコンプレッサ28が備えられ、このコンプレッサ28から延びる空気供給管30が、沈砂池10の水位HWLよりも下方に位置して第1輸送配管16aに接続されている。空気供給管30には、空気注入弁32が設置されている。このコンプレッサ28は、大気開放弁24を開ける前に、第1輸送配管16aの内部に引き揚げられた沈砂水の大気開放管24との接続部より下方に位置する空気供給管30との接続部へ圧縮空気を注入して、引き揚げられた沈砂水を下方から押し上げるためのものであり、このように、コンプレッサ28を備え、第1輸送配管16aの内部の水中に圧縮空気を注入した後、大気開放弁を開けることで長い輸送用プラグ20を形成することが出来、輸送効率をあげることが出来る。
上記大気開放弁26及び空気注入弁32は、図示しない制御部によって制御される。
【0032】
図2及び図3は、第1中継ポット18aを示す。なお、第2中継ポット18b及び第3中継ポット18cも、第1中継ポット18aと同様の構成を備えているので、ここでは、主に第1中継ポット18aのみについて説明する。
【0033】
第1中継ポット18aは、前述の第1輸送配管16aの内部に形成された、所定長さの輸送用プラグ20を再形成しながら第2輸送配管16bに送り込むためのものである。つまり、第2輸送配管16bに沿って輸送される輸送用プラグ20は、この輸送に伴って徐々に崩れ、輸送用プラグ20から分離した沈砂を含む沈砂水は、第2輸送配管16bの周壁に付着し該周壁に沿って下方に落下する。第1中継ポット18aは、図3に示すように、この第2輸送配管16bの周壁に付着し該周壁に沿って下方する沈砂34を含む沈砂水36の該沈砂34を内部に溜め、後に送られてくる輸送用プラグに第1中継ポット18a内に溜められた沈砂34を取り込ませ、水と沈砂とが混合された輸送用プラグを再形成しながら、第2輸送配管16bに送り込むように構成されている。
【0034】
このように、沈砂池10と固液回収タンク12とを結ぶ輸送配管16の途中に第1中継ポット18a(乃至第2,第3中継ポット18b,18c)を設置し、この第1中継ポット18a(乃至第2,第3中継ポット18b,18c)で輸送用プラグ20を該輸送用プラグ20の輸送の途中で再形成することにより、輸送の途中で輸送用プラグ20から分離した沈砂34を第1中継ポット18a(乃至第2,第3中継ポット18b,18c)内に溜めて、揚砂された沈砂34の持つ位置エネルギーを有効に利用することができる。しかも、この第1中継ポット18a(乃至第2,第3中継ポット18b,18c)内の沈砂34を取り込みながら、つまり、輸送に伴って崩れることで不足した沈砂を第1中継ポット18a(乃至第2,第3中継ポット18b,18c)内の沈砂34で補いながら、水と沈砂とが適正濃度で混合された輸送用プラグ20を再形成して、以降のプラグ輸送の効率を上げることができる。
【0035】
ここに、第1中継ポット18a(乃至第2,第3中継ポット18b,18c)の容積は、輸送配管16の断面積に揚程2〜10m分を乗じた容積に設定されている。中継ポットは、下記のように、吸引工程と輸送工程を繰返す毎に、内部の圧力が真空圧と大気圧に変化し、その容量が大きすぎるとエネルギーの無駄となり、小さすぎると沈砂による閉塞などの問題が発生する。このため、中継ポットの適正な容量は、輸送配管の断面積に揚程2〜10m分を乗じた容積程度であり、しかも中継ポットから伸びる鉛直配管長等により、中継ポットの適正な容量を決めることが望ましい。
【0036】
第1中継ポット18aは、この例では、水平方向の一端において、水平方向に延びる第1輸送配管16aに接続される流入管40と、水平方向の他端近傍において、鉛直方向に延びる第2輸送配管16bに接続される流出管42と、密閉構造のポット本体44とを有し、ポット本体44に流入管40及び流出管42が接続されている。つまり、ポット本体44は、底板46、一対の側板48、一対の端板50及び天井板52から密閉された略矩形ボックス状に形成され、一方の端板50に流入管40が接続され、他方の端板50に近接した位置で、天井板52に流出管42が接続されており、これによって、水平方向の流れを第1中継ポット18aで鉛直方向の流れに変換するように構成されている。
【0037】
底板46は、図3に示すように、流れ方向に沿って、徐々に下方に傾斜した後、急速に上方に傾斜し、図2に示すように、一対の側板48にあっては、流れ方向に沿って、徐々にその幅が拡がり、幅が一定になった後、徐々に減少するようになっている。これによって、ポット本体44は、流れ方向に沿って断面積が徐々に増加した後に徐々に減少するように構成されているとともに、ポット本体44の底部に、流入管40の出口40aの下端より流れ方向に沿って徐々に深くなり、これによって、沈砂34の自然流出を防止して該沈砂34を溜める沈砂溜まり部54が設けられている。ここで、沈砂溜まり部54に、図3に示すように、沈砂34を含む沈砂水36が溜まった時に、流出管42の下端の入口42aが沈砂水36の水面より上方に位置することで、ポット本体44内の空気の流通か確保されるように構成されている。また、この例では、流出管42の下端の入口42aが沈砂溜まり部54の最深部に略上方に位置するようになっている。
【0038】
流入管40の出口40aからポット本体44の内部に流入した輸送用プラグ20は、3〜15m/秒、通常は6〜7m/秒と速度が早い状態で沈砂溜まり部54に溜まった沈砂34に当たり攪拌して該水に取り込まれる。すなわち、輸送用プラグ20の運動エネルギーが、ポット本体44の内部に溜まった沈砂34の撹拌のエネルギーに有効に使われてその沈砂を含む輸送用プラグ(水柱)の再形成に利用される。
【0039】
そして、流出管42の入口42aが沈砂溜まり部54の最深部に略上方に位置するため、攪拌によって再形成される輸送用プラグ(水柱)は、形成(攪拌)直後に入口42aから流出管42内にスムーズに流入し、流出管42に接続された第2輸送配管16bに沿って輸送される。
【0040】
この例では、天井板52の下面に、流入管42からポット本体44の内部に流入する輸送用プラグ20を衝突させてその向きを変えることで、輸送用プラグ20で沈砂溜まり部54内の沈砂34を攪拌する攪拌板56が、流れ方向に沿って徐々に下方に傾斜して配置されている。この攪拌板56の両側部には、空気の流通を確保するための空気流通部58が設けられている。これにより、輸送用プラグ20による沈砂溜まり部54内の沈砂34の攪拌効果を高め、しかも沈砂溜まり部54内の沈砂34を、再形成される輸送用プラグに特に前端部へ取り込むことができる。
【0041】
このように、第1中継ポット18a内に流入した輸送用プラグ20は、第1中継ポット18a内で0.5〜2秒程度の滞留時間を持ち、輸送用プラグを再形成しながら中継ポット18aから出て行き、第2輸送配管18bに沿って輸送される。そして輸送工程後の吸引工程で、第2輸送配管16bの壁面についていた沈砂水が落ちた時に、この沈砂水の沈砂は、第1中継ポット18aの内部に閉塞を起こすことなく溜められる。しかも、第2輸送管18bから戻ってきた沈砂水は、第1中継ポット18a内に一定量溜められるが、第1中継ポット18aの流出管42の入口を完全に塞ぐ水位になる前に、第1中継ポット18aの流入管より下方に向けて流出し、これによって、工程において、第1中継ポット18aが吸引および輸送圧力の伝達を阻害することはない。
【0042】
次に、この揚砂装置を用いて沈砂池10の沈砂を引き上げる揚砂動作について説明する。
先ず、大気開放弁26及び空気注入弁32を閉じた状態で真空ポンプ12及びコンプレッサ28を起動して運転を開始する。これにより、真空ポンプ12が接続された固液回収タンク12、第1〜第4輸送配管16a〜16d、及び第1〜第3中継ポット18a〜18cの内部が所定の真空度、例えば−49.0kPa(−5mAq)まで減圧されて、沈砂池10中の沈砂を含んだ水が固液混合体として第1輸送配管16a内に吸引される。
【0043】
そして、第1輸送配管16a内の固液混合体の水位が大気開放管24の接続部よりも上方に上昇したときに、空気注入弁32を開いて水柱を押し上げた後、空気注入弁32を閉じ、大気開放弁26を開いて第1輸送配管16aの大気開放管26との接続部を大気開放する。このように大気開放弁26を開くことにより、図1に示すように、大気開放管24の接続部よりも上方に位置していた第1輸送配管16aの固液混合体は、所定の長さの輸送用プラグ(水柱)20となる。そして、プラグ輸送を行う。
【0044】
このように、プラグ輸送を行うと、輸送用プラグ20は、その形を崩しながら第1輸送配管16aに沿って流れて第1中継ポット18a内に流入する。第1中継ポット18a内に流入した輸送用プラグ20は、プラグ形状を一旦崩した後、輸送用プラグを再形成しながら第2輸送配管16bに送り込まれ、プラグを崩しながら第2輸送配管16bに沿って流れる。同様にして、輸送用プラグ20は、第2中継ポット18b、第3中継ポット18cで再形成されてながら、固定回収タンク12まで一気に輸送される。この例において、輸送用プラグ20の吸引輸送管16内の輸送流速は、例えば3〜15m/秒、通常は6〜7m/秒である。そして、輸送終了後に、大気開放弁26を閉じる。
【0045】
大気開放弁26が閉じられると、第1輸送配管16a内への空気の流入が止まり、この結果、第1〜第4輸送配管16a〜16d内の空気の流れが弱まる。このため、第2輸送配管16bの周壁に付着していた沈砂水の大部分は第1中継ポット18a内に、第3輸送配管16cの周壁に付着していた沈砂水の大部分は第2中継ポット18b内に、第4輸送配管16dの周壁に付着していた沈砂水の大部分は第3中継ポット18cにそれぞれ重力で落下する。そして、第1中継ポット18a、第2中継ポット18b及び第3中継ポット18c内に溜められた沈砂は、次に輸送用プラグの通過の際に該輸送用プラグに取込まれる。
【0046】
このように、沈砂池10と該沈砂池10よりも高所に設置された固液回収タンク12とを結ぶ輸送配管16の途中に中継ポット18a〜18cを設置し、この中継ポット18a〜18cで輸送用プラグ20を該輸送用プラグ20の輸送の途中で再形成することにより、輸送の途中で輸送用プラグ20から分離した沈砂を中継ポット18a〜18c内に溜めて、揚砂された沈砂の持つ位置エネルギーを有効に利用することができる。しかも、中継ポット18a〜18cの沈砂溜まり部54内の沈砂34と後に送られてくる輸送用プラグ20とを混合して輸送用プラグを再形成することにより、輸送に伴って崩れることで不足した沈砂を中継ポット18a〜18cの沈砂溜まり部54内の沈砂34で補って、水と沈砂とが混合された輸送用プラグを再形成することができる。
【0047】
図4乃至図6は、第1中継ポット18の他の例を示す。この例の中継ポット18は、鉛直方向に沿った輸送用プラグ(水柱)の流れを、その向きを変えることなく、鉛直方向に輸送するようにしたもので、鉛直方向に延びて、例えば図1に示す第1輸送配管16aの上端に接続される流入管60と、鉛直方向に延びて、例えば例えば図1に示す第2輸送配管16bの下端に接続される流出管60と、略横向き円筒状のポット本体64を有し、このポット本体64に流出管60の上端及び流出管62の下端が接続されている。
【0048】
ポット本体64は、円形の一対の側板66,68を有し、この一対の側板66,68を所定間隔離間させつつ、水平方向に沿った端部が近接するように互いに対峙させて配置するとともに、一方の側板66の下半分に内方に傾斜するテーパ部66aを設け、更に両側板66,68の周囲の開口部を一枚の略円筒状の端板70で気密的に覆って構成されている。そして、一方の側板66のテーパ部66aに、該側板66の略接線方向延びるように流入管60が下向きで取付けられ、更に、端板68の他方の側板68に近接した位置に、流入管60とほぼ直線状に延びる如く、流出管62が取付けられている。これらの流入管60及び流出管62は、互いに対峙して配置される側板66,68の幅広側に接続されている。
【0049】
これにより、流入管60から輸送用プラグ(水柱)がポット本体64の内部に流入すると、ポット本体64の内部に、端板70に沿った縦方向の渦巻き流が形成され、この渦巻き流が側板66のテーパ部66aに沿って流出管62側に横移動して、流入管62内にスムーズに流入する。これによって、上述の別タイプの中継ポットと同様にエネルギーの変換がなされて下記の沈砂溜まり部72に溜まった沈砂34を確実に攪拌し、しかも、位置エネルギーの損失をより少なくすることができる。
【0050】
また、流入管60の出口60aをポット本体64内所定の位置まで延出させることで、ポット本体64の底部に、沈砂を含む沈砂水の該沈砂の自然流出を防止して該沈砂を溜める沈砂溜まり部72が設けられている。そして、沈砂溜まり部72に、図6に示すように、沈砂34を含む沈砂水36が溜まった時に、流出管62の下端の入口62aが沈砂水36の水面より上方に位置することで、ポット本体64内の空気の流通か確保されるように構成されている。
【0051】
このように、鉛直方向に沿った輸送用プラグ(水柱)の流れを、その向きを変えることなく、鉛直方向に輸送することによって、中継ポットを設けることによるエネルギー損失を少なくすることができる。
【0052】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態の揚砂輸送装置を示す概要図である。
【図2】図1に示す揚砂輸送装置の中継ポットを拡大して示す平面図である。
【図3】図1に示す揚砂輸送装置の中継ポットを拡大して示す正面図である。
【図4】他の中継ポットを示す平面図である。
【図5】図4の正面図である。
【図6】図5の右側面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 沈砂池
12 固液回収タンク
14 真空ポンプ(真空輸送輸送手段)
16,16a〜16d 輸送配管
18,18a〜18c 中継ポット
20 輸送用プラグ
22 プラグ形成部
24 大気開放管
26 大気開放弁
28 コンプレッサ
30 空気供給管
32 空気注入弁
34 沈砂
36 沈砂水
40,60 流入管
40a,60a 出口
42,62 流出管
42a,62a 入口
44,64 ポット本体
46 底板
48,66,68 側板
50,70 端板
52 天井板
54,74 沈砂溜まり部
56 攪拌板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈砂池と、沈砂池より高所に設置され該沈砂池の沈砂を水と共に回収する固液回収タンクとを結ぶ輸送配管と、
前記輸送配管の内部に前記沈砂池の沈砂を水に懸濁させた輸送用プラグを形成するプラグ形成部と、
前記輸送用プラグを前記輸送配管に沿って真空輸送する真空輸送手段と、
前記輸送配管の途中に設置され、前記輸送用プラグを輸送の途中で再形成する中継ポットを有することを特徴とする揚砂輸送装置。
【請求項2】
前記中継ポットは、揚程10〜30m毎に前記輸送配管に設置されていることを特徴とする請求項1記載の揚砂輸送装置。
【請求項3】
前記中継ポットの容積は、前記輸送配管の断面積に揚程2〜10m分を乗じた容積に設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の揚砂輸送装置。
【請求項4】
前記プラグ形成部は、前記輸送配管に接続された大気開放管と、該大気開放管を開閉する大気開放弁を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の揚砂輸送装置。
【請求項5】
前記プラグ形成部は、前記輸送配管に接続された空気供給管と該空気供給管から圧縮空気を注入する空気注入弁を更に有することを特徴とする請求項4記載の揚砂輸送装置。
【請求項6】
前記中継ポットは、底部に沈砂を溜める沈砂溜まり部を有し、この沈砂溜まり部内の沈砂と後に送られてくる輸送用プラグとを混合して輸送用プラグを再形成するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の揚砂輸送装置。
【請求項7】
沈砂池よりも高所に設置された固液回収タンクに、輸送配管を通して、沈砂池の沈砂を水と共に輸送して回収する揚砂輸送方法であって、
前記輸送配管の内部に沈砂池の沈砂を水に懸濁させた輸送用プラグを形成し、
前記輸送用プラグを、前記輸送配管を通して前記固液回収タンクに輸送する途中で再形成させながら真空輸送することを特徴とする揚砂輸送方法。
【請求項8】
前記輸送配管の途中に中継ポットを設置し、該中継ポットの内部に溜まった沈砂を輸送用プラグに混合して輸送用プラグの再形成を行うことを特徴とする請求項7記載の揚砂輸送方法。
【請求項9】
流入管と流出管が接続された密閉構造のポット本体を有し、該ポット本体の底部には、空気の流通を確保しつつ沈砂の自然流出を防止して沈砂を溜める沈砂溜まり部が形成され、該沈砂溜まり部内の沈砂を前記流入管から流入される流体で攪拌して、該流体と共に前記流出管から流出させることを特徴とする中継ポット。
【請求項10】
前記沈砂溜まり部は、前記流出管の入口近傍に位置していることを特徴とする請求項9記載の中継ポット。
【請求項11】
前記ポット本体の内部には、前記流入管から流入する流体を衝突させてその向き変えることで、該流体で前記沈砂溜まり部内の沈砂を攪拌する攪拌板が配置されていることを特徴とする請求項9または10記載の中継ポット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−161946(P2009−161946A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340599(P2007−340599)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(308024395)荏原環境エンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】