説明

換気装置

【課題】太陽電池の発電状態を、換気ファンを作動して検出する電流値から判定するときに、発電電力が少ないときの換気ファンの作動を抑える。
【解決手段】マイコンは、発電状態を判定するときに、換気ファンを作動して電流値Iを検出し、電流値Iが基準値Isに達していないと、基準としている発電電力の1/4の発電電力から設定した基準値Iに達しているか否かを確認する(ステップ120〜126)。ここで、電流値が基準値Iに達していれば、インターバル時間ΔTに設定するが、基準値Iに達していない場合、インターバル時間ΔTより長いインターバル時間ΔTに設定する(ステップ128、134)。これにより、夕方などで日射量が低下しているときには、換気ファンの停止時間が長くなり作動回数が抑えられるので、換気ファンの耐久性が低下するのを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内などの被換気室の換気を行う換気装置に係り、詳細には、太陽電池の発電電力によって作動する換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光線の強い炎天下などでは、太陽電池によって電力を得ることができる。また、車両を炎天下などに駐車すると、車室内の温度が上昇し、乗員が乗車したときに不快感を生じさせてしまうことがある。ここから、太陽電池の発電電力を用いて、車室内の換気を行う換気装置の提案がなされえている。
【0003】
太陽電池の発電電力を用いて車室などの被換気室を換気する換気装置としては、太陽電池の発電電力によって複数のファンを駆動するときに、太陽電池の電圧−電流特性における動作点と、該動作点で所定数のファンを駆動するときの風量−静圧特性から、所定静圧値における風量が最大となるように設定した数のファンを駆動する提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、太陽電池を用いた車室内の換気、空調を行うときに、車室内を複数の領域に分割し、分割した領域ごとの空調状態を制御可能として、日射方向を検出し、検出した日射方向に基づいて各領域の空調状態を制御する提案がなされている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
ところで、太陽電池は、日射量が下がることにより発電電力が低下し、換気装置は、発電電力が所定値以下となると換気用のファンが停止されるようにしている。
【0006】
一方、太陽電池を用いた換気装置では、電流センサなどを用いて、換気用のファンを作動させたときに電流値を検出し、発電電力を判定する構成とすることにより、低コスト化を図ることができる。このような換気装置では、太陽電池の発電電力が低下して、ファンを停止させているときに、例えば、一定の時間間隔で、ファンを駆動させて電流値の計測を行い、太陽電池の発電状態(発電電力)を判断するようにしている。これにより、太陽電池の発電電力が所定値以上となっていると判断されると、ファンを連続駆動して車室内の換気が行われる。
【特許文献1】特開平5−238250号公報
【特許文献2】特開2004−291680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、太陽電池の発電電力は、太陽の傾き(時刻)や天候の影響を受けると共に、一時的にであっても日差しが陰ると発電電力が低下する。このときに、一時的な日差しの陰りであれば、ファンの駆動回数は少なくて済むが、日没時などでは、ファンの間欠的な駆動が繰り返されてしまい、ファンモータに耐久性の低下が生じてしまうことがある。
【0008】
これを防止するために、換気ファンの駆動間隔を長くすると、日射が回復して発電電力が増加したにもかかわらず、換気ファンが駆動されない状態が続いてしまう。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で太陽電池の発電状態を判定し、太陽電池を用いて車室内などの被換気室の換気を行うときに、ファンモータなどの間欠的な駆動を抑制可能とする換気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、被換気室の換気を行うときに日射量に応じた電力を発生する太陽電池の発電電力で作動される換気ファンと、前記換気ファンが作動されたときの電流値を検出する電流検出手段と、前記被換気室の換気を行う基準とする日射量に対する前記太陽電池の発電電力に基づいて設定された前記電流値の基準値が記憶された記憶手段と、前記電流検出手段によって検出された前記電流値が前記記憶手段に記憶された前記基準値以上であるか否かを判定する判定する判定手段と、前記判定手段によって前記電流値が前記基準値以上であると判定されているときに前記太陽電池の発電電力で前記換気ファンの作動を継続し、電流値が基準値未満と判定された状態が所定時間以上経過したときに換気ファンの作動を停止する換気駆動手段と、前記換気ファンの作動が停止されるときの電流値に基づいて、電流値が低いときに停止時間が長くなるように前記換気ファンの停止時間を設定する時間設定手段と、前記前記換気ファンが停止されている時間を計測する計測手段と、前記計測手段によって計測された時間が前記時間設定手段によって設定された前記停止時間に達するごとに、前記電流検出手段による電流値の検出が可能となるように前記換気ファンを所定時間作動する間欠駆動手段と、を含む。
【0011】
この発明によれば、日射量によって変化する太陽電池の発電電力を、換気ファンを作動させた状態で、電流検出手段によって検出される電流値によって判定する。この基準値は、例えば、被換気室の換気が必要と判断されるときの日射量に対する発電電力に基づいて設定する。
【0012】
時間設定手段は、電流値が基準値に達していないために換気ファンが停止したときの電流値に基づいて換気ファンの停止時間を設定し、間欠駆動手段は、換気ファンの停止している時間が、この停止時間に達するごとに、換気ファンを作動して、電流値が基準値に達しているか否かが判定されるようにする。
【0013】
このときに、時間設定手段は、換気ファンが停止されたとき又は換気ファンの停止が継続されるときの電流値に基づいて、電流値が小さくなるほど停止時間が長くなるように設定する。すなわち、日射量が少ないほど停止時間が長くなるように設定する。
【0014】
これにより、日射量が低下して換気ファンを間欠的に作動するときに、日射量が低いほど換気ファンの作動回数を抑えることができるので、換気ファンの寿命低下を抑制することができる。
【0015】
このような本発明では、前記電流検出手段によって検出される前記電流値に応じた前記停止時間が記憶される時間記憶手段を含み、前記時間設定手段が、前記電流値に基づいて前記時間記憶手段に記憶された前記停止時間に設定することが好ましく、これにより、的確な停止時間の設定が容易となる。
【0016】
請求項3に係る発明は、前記基準値として、前記基準となる発電電力に基づいて設定された第1の基準値と、前記基準となる発電電力より少ない所定の発電電力に基づいて設定された第2の基準値と、が記憶されると共に、前記停止時間として、第1の停止時間と、第1の停止時間より長い第2の停止時間が予め設定されて記憶され、前記時間設定手段が、前記判定手段によって前記電流値が前記第1の基準値未満で前記第2の基準値以上であると判定されたときに前記第1の停止時間に設定し、電流値が第2の基準値未満であると判定されたきに、前記第2の停止時間に設定する。
【0017】
また、請求項4に係る発明は、前記第2の基準値が、前記基準となる発電電力の1/4の発電電力に基づいて設定されている。
【0018】
この発明によれば、第1の基準値及び第2の基準値と共に、第1の基準値に対する第1の停止時間と、第2の基準値に対する第2の停止時間を設定している。
【0019】
一般に、雲などに日射が遮られた一時的な日射量の低下は、周囲が明るいので、日射量が1/3〜1/4以下となることが少ない。これに対して、夕方などでは、周囲も暗くなるので、日射量が大きく低下する。
【0020】
ここから、基準とされた発電電力に基づいた基準値を第1の基準値とし、第2の基準値して、例えば、太陽電池の発電電力が基準とされる発電電力の1/4となっているときの電流値を設定し、電流値が第2の基準値に満たないときに、停止時間を第1の停止時間より長い第2の停止時間に設定する。
【0021】
これにより、夕方などのように日射が増加する可能性が低いときに、一時的な日射量の低下と判定しうる場合に比べて、停止時間を長くして、換気ファンの作動頻度を確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、日射量の低下に応じて停止時間を長く設定するので、日射量が大きく低下したときに、換気ファンの作動頻度を確実に抑えることができる。
【0023】
また、本発明では、基準とする発電電力に対して、太陽電池の発電電力が例えば、基準とされている発電電力の1/4未満となっているときに、換気ファンの停止時間を長く設定するので、夕方などで日射量が低下したときに、換気ファンの作動回数を確実に抑えることができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1には、本実施の形態に係る換気装置10の概略構成を示している。図2に示されるように、この換気装置10は、自動車等の車両12に設けられて、車両駐車中などにおいて、車外の空気(外気)を被換気室である車室14内に導入する。車両12では、外気が車室14内に導入されることにより、車室14内の空気が、ベントダクト16などを介して車外へ排出されることにより、車室14内の換気が行われる。
【0025】
これにより、例えば、車両12を炎天下などに駐車したときに、車室14内の温度が上昇してしまうのを抑え、乗員が車両12に乗車するときに、車室14内の温度が上昇してしまっていることにより不快感を生じさせてしまうのを防止できるようにしている。なお、以下では、被換気室の一例として、車両12に形成される車室14を例に説明する。また、換気装置10は、車両12に設けられる空調装置(エアコン)によって構成されるものであっても良い。
【0026】
図1に示されるように、換気装置10は、太陽電池18と、太陽電池18の発電電力によって駆動される換気ファン20と、換気ファン20の作動を制御するコントローラ22と、を含んで形成されている。
【0027】
換気ファン20は、ファンモータ24にファン(羽根、羽根車など)26(例えば図2参照)が取付けられた一般的構成となっている。なお、以下では、ファンモータ24とファン26とを区別しないときには、総称して換気ファン20とする。また、換気装置10として空調装置を用いるときには、換気ファン20としてブロワファンを適用し、コントローラ22としてエアコンECUを適用すればよい。さらに、換気装置10の基本的構成は、換気ファン20によって外気を車室14内に導入しながら、車室14内の空気を車外へ排出可能とする構成であれば、公知の一般的構成を適用でき、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0028】
図2に示されるように、太陽電池18は、例えば、車両12のルーフパネル28の上面など、太陽光線が照射される部位に据え付けられる。なお、太陽電池18の据え付け場所は、これに限らず、トランクリッド30の上面、ウインドガラス32の表面など、太陽光線が照射され、かつ、乗員の視界を妨げることのない任意の領域に据え付けたものであればよい。
【0029】
この太陽電池18は、太陽光線を受光することにより、受光した太陽光線の光エネルギーを直流電力に変換して出力する。なお、太陽電池18は、ファンモータ24の駆動電圧に応じた電圧が出力されるように構成されており、このような太陽電池18の構成は、公知の一般的構成を適用することができる。
【0030】
図1に示されるように、太陽電池18は、コントローラ22に接続されており、太陽電池18の発電電力がコントローラ22に入力される。なお、太陽電池18は、例えば、一対の電極の一方(例えば、正極側)がコントローラ22に接続され、他方の電極(例えば、負極側)がコントローラ22と共に、車両10の車体に接地(グランド)されている。
【0031】
コントローラ22には、CPU、ROM、RAM等がバス(何れも図示省略)によって接続された一般的構成のマイクロコンピュータ(以下、マイコン34とする)が設けられている。また、コントローラ22には、太陽電池18から供給される電力を、マイコン34の駆動に用いる所定電圧(例えば、5v)の直流電力を生成する電源回路36を備えている。マイコン34は、この電源回路36から供給される電力によって作動される。
【0032】
これにより、太陽電池18による発電が開始されて、太陽電池18の発電電力が電源回路36を介してマイコン34に供給されることにより、マイコン34が動作を開始する、また、太陽電池18の発電が停止すると、マイコン34の動作が停止される。すなわち、換気装置10では、太陽電池18の発電が開始されることにより作動可能となり、また、太陽電池18の発電が停止されることにより、作動が停止する。
【0033】
なお、本実施の形態では、一例としてマイコン34が太陽電池18の発電電力によって作動するように説明するが、これに限らず、車両12に設けている図示しないバッテリの電力によってマイコン34が作動されるなど、任意の構成を適用することができる。
【0034】
コントローラ22には、電流検出手段とされる電流検出回路38が設けられている。また、コントローラ22には、スイッチ回路40が設けられている。スイッチ回路40は、例えば、FETなどの半導体スイッチング素子を用いたスイッチング素子42及び、保護ダイオード44を含んで形成されている。
【0035】
スイッチング回路40には、換気ファン20が接続されており、太陽電池18の発電電力は、電流検出回路38及びスイッチ回路40を経て換気ファン20へ供給される。
【0036】
マイコン34には、駆動制御部46が形成されており、スイッチング素子42が、この駆動制御部46によってオン駆動されることにより、太陽電池18の発電電力が換気ファン20へ供給される。また、換気ファン20は、駆動制御部46によってスイッチング素子42がオフされることにより電力供給が停止される。このときに、保護ダイオード44が、換気ファン20からの電流の逆流防止を図っている。なお、本実施の形態では、半導体スイッチング素子などの所謂半導体リレーを用いているが、これに限らず、電磁式リレーなどの任意の構成のスイッチング手段を適用することができる。
【0037】
一方、換気ファン20には、ファンモータ24の駆動回路48が設けられており、太陽電池18の発電電力が駆動回路48を介してファンモータ24へ供給される。
【0038】
この駆動回路48には、マイコン34の駆動制御部46が接続されており、駆動制御部46によって、駆動回路48からファンモータ24へ出力される電圧が制御される。これにより、換気装置10では、ファンモータ24のオン/オフ及び回転数、すなわち、換気ファン20のオン/オフ及び、車室14内へ吹き出される空気の風量が制御される。
【0039】
なお、ファンモータ24の回転数制御(換気ファン20の風量制御)は、例えば、駆動回路48からファンモータ24へ出力される直流電圧のデューティー比を制御するなど、ファンモータ24の特性に応じた任意の制御方法を適用して、太陽電池18の発電電力に応じた回転数で駆動される構成とするものであれば良く、これにより、日射量が多く、車室14内の温度が上昇しやすい環境下で、換気量を多くすることが可能となる。
【0040】
コントローラ22に設けている電流検出回路38は、太陽電池18の発電電力によって換気ファン20が駆動されることにより、換気ファン20へ供給される電流値の検出が可能となっている。電流検出回路38は、例えば、電流値に応じた電圧を出力する構成を適用できるが、以下では、電流値Iとして説明する。
【0041】
ところで、マイコン34には、記憶手段及び時間記憶手段とされるメモリ50が設けられていると共に、判定手段とされる比較判定部52が形成されている。メモリ50には、予め設定されている電流値の基準値が記憶されており、比較判定部52は、電流検出回路38によって検出される電流値Iを読み込むと、メモリ50に記憶されている基準値と比較する。
【0042】
太陽電池18は、日射が強くなる(日射量が増加する)ことにより発電電力が増加する。また、駐車された車両12では、日射が強くなることにより車室14内の温度が上昇する。さらに、ファンモータ24は、駆動時間が長くなることにより寿命(耐久性)が低下する。
【0043】
ここから、換気装置10では、日射量及び換気ファン20(ファンモータ24)の耐久性を考慮して、換気ファン20を作動させるときの日射量の下限値が設定されている。コントローラ22のメモリ50には、この日射量が下限値となっているときの太陽電池18の発電電力(例えば、500w/m、以下、発電電力Aとする)が得られている状態で換気ファン20を作動させているときに、電流検出回路38で検出される電流値Iを、第1の基準値とする基準値Isとして記憶されている。
【0044】
比較判定部52では、予め設定されたタイミングで電流検出回路38によって検出される電流値Iを読込み、メモリ50に記憶されている基準値Isと比較することにより、太陽電池18の発電状態が、換気ファン20を作動させる発電状態、すなわち、日射量が、換気ファン20を作動するように設定されている日射量を超えているか否かを確認する。
【0045】
駆動制御部46は、換気ファン20を作動するように設定されている日射量に達している場合、すなわち、電流値Iが基準値Isに達している(I≧Is)と、スイッチング素子42をオンすると共に、発電電力に応じた回転数で換気ファン20が作動するように駆動回路48の出力を制御する。
【0046】
また、駆動制御部46は、比較判定部52で、電流値Iが基準値Isよりも低くなっている(I<Is)と判定され、この判定状態が継続すると、換気ファン20の作動を停止する。
【0047】
マイコン34には、タイマ54及び時間設定部56が形成されている。駆動制御部46は、太陽電池18の発電電力が低下し、電流値Iが基準値Isよりも低くなると、タイマ54によって時間計測を開始し、予め設定されている所定の時間(以下、時間Δtとする)が経過しても、電流値Iが基準値Isを超えないと換気ファン20を停止する(換気停止)。すなわち、マイコン34は、換気ファン20を作動させているときに、時間Δt以上の間、電流値Iが基準値Isを下回っている(太陽電池18の発電状態の低下が継続している)と、換気ファン20の作動を停止する。
【0048】
また、マイコン34の駆動制御部46は、換気ファン20を停止すると、タイマ54によって停止時間の計測を開始し、予め設定されている時間(以下、インターバル時間ΔTsとする)が経過すると、換気ファン20を作動させて電流値Iの検出が可能となるようにし、比較判定部52で太陽電池18の発電状態の判定が行なわれるようにする。
【0049】
このときに、駆動制御部46は、比較判定部52で、電流値Iが基準値Isを超えていると判定されると、太陽電池12が所定以上の発電状態であるとして、換気ファン20を作動する。これにより、車室14内の換気が再開される。また、電流値Iが基準値Isに達していないと判定されると、駆動制御部46は、インターバル時間ΔTsが経過するまでの換気ファン20を停止状態とする。
【0050】
すなわち、マイコン34は、換気ファン20を停止すると、予め設定されているインターバル時間ΔTsの間隔で換気ファン20を作動させて、太陽電池18の発電状態を判定するようにしている。
【0051】
一方、太陽電池18の発電状態の低下は、雲などによって日差しが遮られているときに加え、夕方などで日がかげることにより生じる。ここで、雲などによって日差しが遮られた場合、部分的に日射量が低下し、周囲が比較的明るい状態となっており、このために、日射量が大きく低下することはない。これに対して、日が傾く夕方は、周囲も徐々に暗くなるために、一時的に日差しが遮られるときに比べて、日射量は大きく低下する。
【0052】
一般に、雲などによって日差しが遮られたときの日射量は、周囲が比較的明るいので、発電電力が発電電力Aの1/3〜1/4以下の日射量となることがない。ここから、本実施の形態に適用した換気装置10では、発電電力が発電電力Aの1/4以下となる日射量となっていると、日射量の低下が一時的なものではなく、日が傾くことによって生じているものと判断する。
【0053】
換気装置10では、発電電力が発電電力Aの1/4となっているときに換気ファン20を作動させて検出される電流値Iを、第2の基準値とする基準値Iとして設定されてメモリ50に記憶されている。すなわち、メモリ50には、電流値Iの基準値として基準値Isと、基準値Isよりも低い基準値Iとが記憶されている。
【0054】
マイコン34では、電流回路38で検出される電流値Iと基準値Is、Iから、発電電力の低下が、発電電力の高くなる可能性がある一時的なものか、夕方などで高くなる可能性が低いかを判断するようにしている。
【0055】
また、換気装置10では、インターバル時間ΔTsとして、発電電力が高くなる可能性がある(可能性が高い)ときに適用するインターバル時間ΔTと、発電量が高くなる可能性の低いときに適用するインターバル時間ΔTが設定されている。
【0056】
このインターバル時間ΔT、ΔTは、例えば、インターバル時間ΔTが3minとして設定され、インターバル時間ΔTが10minとして設定されるなど、インターバル時間ΔTが、インターバル時間ΔTよりも長くなっている(ΔT>ΔT)。このインターバル時間ΔT、ΔTは、インターバル時間ΔTsとしてメモリ50に記憶されている。なお、インターバル時間ΔT、ΔTは、これに限らず、太陽電池18の発電能力、換気ファン20の定格及び換気能力、日射に対する車室14の温度上昇のし易さなどを考慮して設定した時間とすることができる。
【0057】
マイコン34に設けられている時間設定部56は、比較判定部52の判定結果に基づいて、インターバル時間ΔTsをインターバル時間ΔT又はインタ時間ΔTに設定する。このときに、時間設定部56は、電流値Iが基準値Iに達していない(I<I)と、インターバル時間ΔTsをインターバル時間ΔTに設定し(ΔTs=ΔT)、電流値Iが基準値I以上となっている(I≦I<Is)と、インターバル時間ΔTsをインターバル時間ΔTに設定する(ΔTs=ΔT)。
【0058】
これにより、換気装置10では、太陽電池18の発電電力が低下しているために換気ファン20を停止しているときに、太陽電池18の発電状態を判定するための換気ファン20の作動頻度が抑制されるようにしている。
【0059】
このように構成されている換気装置10は、車両10を駐車するために図示しないイグニッションスイッチがオフされることにより作動可能となる。なお、換気装置10には、換気スイッチ(図示省略)が設けられており、イグニッションスイッチがオフされた状態で換気スイッチがオンされることにより作動可能となる。
【0060】
換気装置10では、換気動作が可能となっている状態で、太陽電池18の発電が開始されて、太陽電池18の発電電力が電源回路36を介してマイコン34に供給されることにより、マイコン34の作動が開始され、太陽電池18の発電が停止することにより、マイコン34の作動が停止する。
【0061】
ここで、マイコン34は、太陽電池18の発電電力が、予め設定されている発電電力Aを超えると、電流検出回路38で検出される電流値Iが基準値Isを超えて換気ファン20が作動される。これにより、車室14内の換気が行われる。
【0062】
このように、換気装置10では、太陽電池18の発電電力が予め設定された発電電力Aを超え、車室14内の換気が必要と判断されることにより換気ファン20を作動させるので、不必要に換気ファン20を作動させてファンモータ24の寿命を短くしてしまうことなく、日射に起因する車室14内の温度上昇を確実に防止できる。したがって、夏季などにおいて、炎天下に駐車したために、車室14内の温度が上昇し、乗員が乗車するときに不快感が生じてしまうのが防止される。
【0063】
ところで、換気装置10では、太陽電池18の発電状態を、電流検出回路24によって検出する電流値Iから判定するようにしている。これにより日射センサなどを設ける必要が無くなり、太陽電池12の発電状態を検出するためのセンサ等を少なくして、装置の簡略化及び低コスト化が図られるようにしている。
【0064】
ここで、換気装置10では、換気ファン20を停止している状態で電流検出回路38によって電流値Iを検出するためには、換気ファン38を作動させる必要がある。このとき、換気ファン20を頻繁に作動させると、ファンモータ24の寿命低下などの耐久性の低下を招いてしまう。ここから、換気装置10では、太陽電池18の発電電力が低下したときの換気ファン20の作動頻度を効率的に抑えるようにしている。
【0065】
以下に、換気装置10に設けているコントローラ22での、太陽電池18の発電電力を用いた換気ファン20の作動を説明する。
【0066】
図3には、マイコン34で実行される換気ファン20の駆動制御の概略を示している。換気装置10では、太陽電池18の発電が開始されると、換気ファン20の駆動に先立ってマイコン34が起動され、太陽電池18の発電が停止することによりマイコン34の作動が停止される。図3のフローチャートは、マイコン34が起動されることにより所定の時間間隔で実行され、マイコン20の停止と共に終了する。
【0067】
このフローチャートでは、最初のステップ100で太陽電池18の発電状態(発電電力)を判定する。このときに、太陽電池18の発電電力が予め設定されている発電電力Aを超えていると判断されることにより、ステップ102で、スイッチング素子42をオンすると共に、駆動回路48の作動を制御することにより換気ファン20の作動を開始する(ファンモータ24の駆動開始)。これにより、車室14内の換気が開始される。なお、発電電力の判定処理は後述する。
【0068】
マイコン34では、換気ファン20の作動が開始される(換気ファン20の作動による換気中)は、ステップ104で、電流検出回路38で検出される電流値Iを読み込み、次のステップ106で、この電流値Iが基準値Isを超えているか否かを確認する。これにより、太陽電池18が発電電力Aを超える発電状態で、電流値Iが基準値Isを超えている間(I≧Is)は、ステップ106で肯定判定されて、換気ファン20の作動が継続される。
【0069】
一方、太陽の日差しが雲などに遮られたり、夕刻で日が沈みかけると、太陽電池18の発電電力が下がる。これにより、電流値Iが基準値Isより低下する(I<Is)と、ステップ106で否定判定されてステップ108へ移行し、タイマ54をリセット/スタートさせて、電流値Iが低下してからの時間Tの計測を開始する。
【0070】
この後、ステップ110では、電流検出回路38で検出される電流値Iを計測し、この電流値Iが基準値Isを超えたか否かを確認する(ステップ112)。また、ステップ114では、タイマ54によって計測している時間Tが、予め設定されている時間Δtに達したか否かを確認する。
【0071】
ここで、例えば、タイマ54によって計測している時間Tが時間Δtに達する前に、日射量が多くなって太陽電池18の発電電力が増加して、電流値Iが基準値Isを超える(I≧Is)と、ステップ112で肯定判定される。これにより、換気ファン20の作動、すなわち、車室14内の換気が継続される。
【0072】
これに対して、時間Δtが経過しても、日射量が増加せずに発電電力Aを超えず、電流値Iが基準値Isに達しないと、ステップ114で肯定判定されて、ステップ116へ移行する。このステップ116では、スイッチング素子42をオフして、換気ファン20(ファンモータ24)への電力供給を停止する。これにより、換気ファン20の作動が停止され、車室14の換気が中止される。
【0073】
この後に、マイコン34は、ステップ100に移行して、太陽電池12の発電状態、すなわち、日射量の判定を行う。
【0074】
図4には、ステップ100へ移行することにより実行される発電電力の判定処理の概略を示している。
【0075】
このフローチャートでは、最初のステップ120で、換気ファン20を所定時間駆動し、ステップ122でこのときに電流検出回路38によって電流値Iの検出を行う。なお、換気ファン20の駆動時間は、電流値Iの検出が可能な時間であればよい。
【0076】
この後、ステップ124では、電流値Iが基準値Isを超えているか否かを確認する。ここで、太陽電池18の発電電力が発電電力Aを超えて、電流値Iが基準値Isを超えていれば、ステップ124で肯定判定する。すなわち、太陽電池18が発電電力Aを超える発電状態であると判定して、このフローチャートを終了する。
【0077】
これにより、図2のステップ102へ移行することにより換気ファン20が作動されて、車室14内の換気が行われる。
【0078】
一方、図4のフローチャートでは、日射量が多くならず、電流値Iが基準値Isに達していないと(I<Is)、ステップ124で否定判定してステップ126へ移行する。このステップ126では、電流値Iが基準値Iに達しているか否かを判定する。
【0079】
ここで、周囲が比較的明るく、太陽電池18が受ける日射が大きく低下しておらず、電流値Iが、基準値Isには達していないが、基準値Iを超えている(Is>I≧I)と、ステップ126で肯定判定して、インターバル時間ΔTsを、比較的短いインターバル時間ΔTに設定する。
【0080】
この後、ステップ130では、タイマ54をリセット/スタートして、換気ファン20を停止している時間、すなわち、次に太陽電池18の発電状態を判定するまでの時間(電流値Iを検出するまでの時間)の計測を開始する。
【0081】
次のステップ132では、タイマ54によって計測している時間Tを読込み、時間Tがインターバル時間ΔTs(ここでは、インターバル時間ΔT)に達したか否かを確認する。
【0082】
ここで、タイマ54によって計測される時間Tがインターバル時間ΔT(ΔTs)に達する(T≧ΔTs(ΔT))と、ステップ132で肯定判定してステップ120へ移行する。これにより、時間ΔTsだけ経過した後に、太陽電池18の発電状態の判定が行なわれる。
【0083】
すなわち、太陽電池18の発電状態、すなわち、太陽電池18への日射量に応じた電流値Iが、基準値Isに達していないが、基準値Iを超えているときには、インターバル時間ΔTの間隔で換気ファン20が作動される。
【0084】
したがって、太陽が雲などに一時的に隠れたために日射量が低下したときなどには、日差しが復旧して日射量が多くなると、迅速に車室14内の換気が開始(再開)されるので、換気の開始が遅れることにより車室14内の温度が上昇してしまうのを防止することができる。
【0085】
これに対して、太陽電池18への日射量が大きく低下し、太陽電池18の発電電力が、発電電力Aの1/4以下となり、電流値Iが基準値Iを下回っている(I<I)と、ステップ126で否定判定されてステップ134へ移行する。
【0086】
このステップ134では、インターバル時間ΔTsを、インターバル時間ΔTよりも長いインターバル時間ΔTに設定する。すなわち、周囲が比較的暗く、太陽電池18が受ける日射が大きく低下すなどしているために、電流値Iが、基準値Iにも達していなければ(I<I)、インターバル時間ΔTsがインターバル時間ΔT2設定される。
【0087】
この後、ステップ130では、タイマ54をリセット/スタートして、換気ファン20を停止している時間が、インターバル時間ΔTに達する(T≧ΔTs(ΔT))と、ステップ132で肯定判定してステップ120へ移行し、換気ファン20を作動させて太陽電池18の発電状態の判定が行なわれる。
【0088】
ここで、基準値Iは、車室14内の換気を必要とする日射量であるときの太陽電池18の発電電力Aに対して、この発電電力Aの1/4の発電電力に基づいて設定されている。すなわち、基準値Iは、発電電力Aが得られる日射量の略1/4の日射量であるときの電流値Iとなっている。
【0089】
一般に、雲などによって日差しが遮られることによる日射量の低下は、周囲が明るいために大きく低下することがない。これに対して、夕方などの日射量の低下は、車両12の周囲も暗くなることにより大きく低下する。すなわち、一時的な日射量の低下では、太陽電池18の発電電力が、発電電力Aの1/3〜1/4まで低下することはまれであり、大きく低下したときには、日射量の回復にも時間がかかると想定することができる。また、夕方などにおける日射量の低下は、太陽電池18の発電電力を、発電電力Aの1/3〜1/4以下としてしまう。
【0090】
ここから、換気装置10では、発電電力Aの1/4の発電電力であるときの電流値Iを基準値Iとして設定し、電流値Iが基準値Iに達していないときには、インターバル時間ΔTsをインターバル時間ΔTに設定する。これにより、換気ファン20が作動される間隔が長くなり、インターバル時間ΔTで換気ファン20を作動する場合に比べて、換気ファン20の作動回数を減らすことができる。
【0091】
本実施の形態に適用した換気装置10は、太陽電池18の発電電力を、換気ファン20が作動しているときの電流値Iを検出して判定する。このために、換気装置10では、日射量が低下しても、太陽電池18の発電が停止するまで換気ファン20が間欠的に作動される。
【0092】
このときに、日射量が僅かとなっているときに、インターバル時間ΔTで換気ファン20を間欠的に作動することにより、インターバル時間ΔTで間欠的に作動させるよりも確実に作動回数を減らすことができる。これにより、換気ファン20の寿命が短くなるのを抑えることができる。
【0093】
また、日射量が極めて低く、発電電力も発電電力Aの1/4に満たない状態は、明け方にも生じるが、明け方は、外気温や車室14内の温度も低い。したがって、このときにも、インターバル時間ΔTsがインターバル時間ΔTに設定されていることにより、換気ファン20の作動頻度が増加するのを抑えることができ、この点からも、換気ファン20の寿命低下を抑制することができる。
【0094】
したがって、太陽が雲などに一時的に隠れたために日射量が低下したときなどには、日差しが復旧して日射量が多くなると、迅速に車室14内の換気が開始(再開)されるので、換気の開始が遅れることにより車室14内の温度が上昇してしまうのを防止することができる。
【0095】
なお、以上説明した本実施の形態では、インターバル時間ΔTsを、インターバル時間ΔT、ΔTの2段階に設定したが、これに限らず、3段階以上に設定し、日射量が低くなるほどインターバル時間ΔTsが長くなるようにしても良い。
【0096】
また、インターバル時間ΔTsは、これに限らず、日射量又は日射量に基づいた電流値Iが少なくなるほどインターバル時間ΔTsが長くなりように設定したマップを設定してメモリ50に記憶し、このマップに基づいて、インターバル時間ΔTsが無段階で設定されるものであっても良い。
【0097】
さらに、インターバル時間ΔTsは、前回の電流値Iを記憶しておき、電流値Iが減少したときに時間が長くなるように更新し、増加したときに時間が短くなるように更新するようにしても良い。
【0098】
また、同じインターバル時間ΔTsで所定回数だけ換気ファン20の間欠運転を行い、電流値Iが基準値Isに達していなければ、インターバル時間ΔTsが長くなるように更新するようにしても良い。
【0099】
なお、以上説明した本実施の形態では、車両に設けられる換気装置10を例に説明したが、本発明は、これに限らず、太陽電池の発電電力を用いて、被換気室内の換気を行う任意の構成の換気装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本実施の形態にかかる換気装置の概略構成図である。
【図2】換気装置が用いられる車両の概略図である。
【図3】換気ファンの制御の一例を示す流れ図である。
【図4】発電電力の判定の一例を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0101】
10 換気装置
12 車両
14 車室(被換気室)
18 太陽電池
20 換気ファン
22 コントローラ
24 ファンモータ(換気ファン)
34 マイコン
38 電流検出回路(電流検出手段)
46 駆動制御部(換気駆動手段、間欠駆動手段)
50 メモリ(記憶手段、時間記憶手段)
52 比較判定部(判定手段)
54 タイマ(計測手段)
56 時間設定部(時間設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被換気室の換気を行うときに日射量に応じた電力を発生する太陽電池の発電電力で作動される換気ファンと、
前記換気ファンが作動されたときの電流値を検出する電流検出手段と、
前記被換気室の換気を行う基準とする日射量に対する前記太陽電池の発電電力に基づいて設定された前記電流値の基準値が記憶された記憶手段と、
前記電流検出手段によって検出された前記電流値が前記記憶手段に記憶された前記基準値以上であるか否かを判定する判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記電流値が前記基準値以上であると判定されているときに前記太陽電池の発電電力で前記換気ファンの作動を継続し、電流値が基準値未満と判定された状態が所定時間以上経過したときに換気ファンの作動を停止する換気駆動手段と、
前記換気ファンの作動が停止されるときの電流値に基づいて、電流値が低いときに停止時間が長くなるように前記換気ファンの停止時間を設定する時間設定手段と、
前記前記換気ファンが停止されている時間を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測された時間が前記時間設定手段によって設定された前記停止時間に達するごとに、前記電流検出手段による電流値の検出が可能となるように前記換気ファンを所定時間作動する間欠駆動手段と、
を含む換気装置。
【請求項2】
前記電流検出手段によって検出される前記電流値に応じた前記停止時間が記憶される時間記憶手段を含み、
前記時間設定手段が、前記電流値に基づいて前記時間記憶手段に記憶された前記停止時間に設定する請求項1に記載の換気装置。
【請求項3】
前記基準値として、前記基準となる発電電力に基づいて設定された第1の基準値と、前記基準となる発電電力より少ない所定の発電電力に基づいて設定された第2の基準値と、が記憶されると共に、前記停止時間として、第1の停止時間と、第1の停止時間より長い第2の停止時間が予め設定されて記憶され、
前記時間設定手段が、前記判定手段によって前記電流値が前記第1の基準値未満で前記第2の基準値以上であると判定されたときに前記第1の停止時間に設定し、電流値が第2の基準値未満であると判定されたきに、前記第2の停止時間に設定する請求項2に記載の換気装置。
【請求項4】
前記第2の基準値が、前記基準となる発電電力の1/4の発電電力に基づいて設定されている請求項3に記載の換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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