説明

携帯型薬剤揮散装置

【課題】電池やモータなどの駆動手段を備えることなく薬剤の有効成分を効率的に揮散させて薬剤の種類に応じ害虫を防除するなどの効果を発揮することができ、且つコンパクトで安価に製造することができる携帯型薬剤揮散装置を提供する
【解決手段】薬剤が含浸された担体21を、当該担体21を保持する薬剤保持体20を介して携帯型害虫防除装置(携帯型薬剤揮散装置)1に移動自在に収容して、使用者が携帯型害虫防除装置1を取り付けている身体2や携帯品を動かすことにより、担体21を移動させて薬剤を揮散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型薬剤揮散装置に関し、より詳細には、使用者が身につけて屋外などで使用するのに好適な携帯型薬剤揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者が身につけて使用する携帯型薬剤揮散装置としての従来の携帯型害虫防除装置としては、虫忌避剤と紫外線感光剤を含有する樹脂を環状に形成し、手首や足首などに装着して使用するようにした装飾用リングが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、常温で揮散する忌避剤を担体に含浸させた虫除け本体の一面に粘着剤層を設け、或いは、該虫除け本体を底面に粘着剤層が設けられたプラスチックケースに収納し、粘着剤層によって人体や衣服に貼着して使用するようにした虫除け具が知られている(例えば、特許文献2参照。)。更に、電池駆動されるモータによって送風機を回転させ、揮散性の薬剤を納める薬剤容器に空気を吸い込み、放出して、揮散性の薬剤を積極的に放散するようにした送風式薬剤放散装置が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
【特許文献1】登録実用新案3124897号公報
【特許文献2】特開平9−154470号公報
【特許文献3】特開2005−312335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている装飾用リングや、特許文献2に開示されている虫除け具に使用可能な薬剤成分は、必ずしも害虫防除機能が十分に発揮できない問題があった。また、特許文献3に開示されている送風式薬剤放散装置は、送風機によって薬剤容器の吸込み口から空気を吸い込み、揮散した薬剤を吸い込んだ空気と共に放出口から放散するようにしたものであり、揮散性の薬剤を積極的に放散して効率的に害虫防除機能を発揮することができるものの、送風機の駆動手段としてモータ及び電池が必要であり、製造コストが嵩むばかりでなく、薬剤放散装置が大型となって携帯用として用いるには改善の余地があった。
【0005】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池やモータなどの駆動手段を備えることなく薬剤の有効成分を効率的に揮散させて薬剤の種類に応じ害虫を防除するなどの効果を発揮することができ、且つコンパクトで安価に製造することができる携帯型薬剤揮散装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 身体又は携帯品に取り付けて使用する携帯型薬剤揮散装置であって、
薬剤が含浸された担体を移動自在に収容又は止着し、身体又は携帯品を動かすことにより、前記担体を移動させて前記薬剤の有効成分を揮散させる
ことを特徴とする携帯型薬剤揮散装置。
【0007】
上記構成の携帯型薬剤揮散装置によれば、薬剤が含浸された担体を携帯型薬剤揮散装置に移動自在に収容あるいは止着したので、使用者が携帯型薬剤揮散装置を取り付けている身体や携帯品を動かすこと及び/又は風があたることにより、前記担体を移動させ薬剤の有効成分を揮散させて効果的に害虫を防除することができる。
なお、ここで言う止着とは、前記担体を何らかの容器内に移動可能に収容するのではなく、身体や携帯品、あるいは身体や携帯品に取り付けるための装着手段に、例えばテープや接着剤等によって前記担体を固定的に取り付けることをも含めて意味する。したがって、前記担体を止着した場合には、前記担体は身体や携帯品に対しては移動しないが、止着された身体や携帯品等を動かすこと及び/又は風があたることにより、前記担体が移動することになる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池やモータなどの駆動手段を備えることなく薬剤の有効成分を効率的に揮散させて薬剤の種類に応じ害虫を防除するなどの効果を発揮することができ、且つコンパクトで安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、携帯型薬剤揮散装置としての、本発明に係る携帯型害虫防除装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では薬剤として害虫防除を行うものを採用した場合について説明するが、特にこれに限らず種々の薬剤について適用できる。
図1は本発明の第1実施形態に係る腕装着型の携帯型害虫防除装置の全体斜視図、図2は図1における携帯型害虫防除装置の分解斜視図、図3は下カバーの下面を示す斜視図、図4は装着手段であるリストバンドの斜視図、図5は腕に装着された携帯型害虫防除装置の斜視図である。
【0010】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Aは、身体又は携帯品に取り付けて使用するものであって、器体10A内に薬剤保持体20を移動自在に収容している。器体10Aは、樹脂によって略椀形に形成された上カバー11及び下カバー12とからなり、下カバー12に上カバー11を嵌合させることにより内部に薬剤保持体20を収容するための空間Sが形成される。
なお、器体10Aは、使用者の腕2に装着する装着手段であるリストバンド30に着脱可能に取り付けられて使用される(図5参照)。
【0011】
図2に示すように、上カバー11は、有底円筒状に形成されており、底部11a(図2においては上面)には通気口である開口11bが設けられている。ここでは、底部11aを例えば中心部11dと、中心から放射状に延びる複数(例えば6本)のリブ11eとで構成することにより、開口11bの面積を大きく設けている。底部11aの中心部11dの下面にはL字形状またはJ字形状をした引っ掛け部を有する支持部13が設けられている。また、側壁11cにも通気口となる開口11fが設けられている。
ここでは、例えば側壁11cの周方向に沿って開口11fが2段に設けられている。なお、開口11b及び開口11fの大きさ、形状、個数は、これに限定されることなく、実施を妨げない範囲で任意に設定することができる。
【0012】
図2に示すように、下カバー12は、底部12aと、底部12aの外周に沿って立設された壁部12bとにより略有底円筒状に形成されている。壁部12bの上端には、複数箇所(ここでは2箇所)において外側へ突出した係合片12dが設けられており、上カバー11の側壁11cの内面に設けられている係合部(図示省略)に係合させることにより、上カバー11と下カバー12とが一体化されるようになっている。なお、係合片を上カバー11に設け、係合部を下カバー12に設けるようにしてもよい。
また、図3に示すように、下カバー12の下面12c(図3においては上面)には、下方に突出し更に半径方向外方に突出する略L字形の一対の取付ボス12e、12eが形成されている。
【0013】
図2に示すように、薬剤保持体20は、害虫防除成分を保持するとともに害虫防除成分を揮散させる担体21と、該担体21を収容・保持する保持器22とを有している。担体21は、円盤状の外形を有するとともに中央には貫通穴21aが設けられており、害虫防除成分を含む薬剤が保持されている。
【0014】
担体21は、形態、材質、サイズ等を任意に設定できるが、簡単な構造で、通気性の大きいものが好ましい。例えば、ハニカム形状、スノコ形状、蛇腹形状、網形状、スリット形状、格子形状、粒状、顆粒状、または開孔を設けた紙類等の構造のもの等適宜種々のものを採用できる。各セルの形状も本発明の効果の面では問題にならない。上記した以外の形状として、例えば6角形蜂の巣形状でも、円形状、S字形状でもよい。通気性ケース(保持体ケース)中に、粒体、ブロック、粉砕物等を、通気性を阻害しないように収納した通気性担体も、担体21として使用することができる。
【0015】
担体21を形成する材質は、有効成分を十分に保持できるものであれば特に限定されない。しかし、保持した有効成分を一時に揮散させるようなものより、要求される時間にわたって同じ量の有効成分を連続的に揮散させることができるような材質であることが好ましい。例えば紙類(濾紙、パルプ、リンター、厚紙、ダンボール等)、樹脂類(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、高吸油性ポリマー等)、セラミック、ガラス繊維、炭素繊維、化学繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、天然繊維(木綿、絹、羊毛、麻等)、ガラス繊維、炭素繊維、化学繊維、天然繊維等からなる不織布、編織布等の布綿、多孔性ガラス材料、多孔性金属材料、金網等が挙げられる。
【0016】
また、担体21は、有効成分を含む薬剤が含浸されて、該薬剤を保持し、これらの一種または二種以上を組み合わせて任意の形状にして使用するものであってもよい。担体21に有効成分等を保持させるには、担体21に薬剤を滴下塗布、含浸塗布、スプレー塗布等の液状塗布方法、液状印刷、はけ塗り等の方法、或いは担体21へ貼り付けする方法等を用いることができる。更に、使用する組成物が液状のものでない場合、或いは溶剤を使用しない場合、混練込み、塗布、印刷等の方法を適用できる。
【0017】
担体21に保持させる薬剤の有効成分としては、害虫防除剤、殺菌剤、芳香剤、消臭剤等を例示できる。害虫防除成分として代表的なものを、以下に例示する。
・dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル dl−シス/トランス−クリサンテマート(一般名アレスリン:商品名ピナミン:住友化学工業株式会社製)
・dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−シス/トランス−クリサンテマート(商品名ピナミンフォルテ:住友化学工業株式会社製)
・dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート(一般名バイオアレスリン、商品名エスバイオール:ユクラフ社製)
・d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート(商品名エキスリン:住友化学工業株式会社製)
・(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名レスメトリン:商品名クリスロンフォルテ:住友化学工業株式会社製)
・5−プロパギル−2−フリルメチル−d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名フラメトリン:商品名ピナミンDフォルテ:住友化学工業株式会社製)
・(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロピニル)−2−シクロペンテニル(+)−シス/トランス−クリサンテマート(一般名プラレトリン、商品名エトック:住友化学工業株式会社製)
・dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル−dl−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボシキラート(一般名テラレスリン:住友化学工業株式会社製)
・(1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2−イソインドリル)メチル−dl−シス/トランス−クリサンテマート(一般名フタルスリン、商品名ネオピナミン:住友化学工業株式会社製)
・(1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2−イソインドリル)メチル−d−シス/トランス−クリサンテマート(商品名ネオピナミンフォルテ:住友化学工業株式会社製)
・3−フェノキシベンジル−d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名フェノトリン、商品名スミスリン:住友化学工業株式会社製)
・3−フェノキシベンジル−dl−シス/トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート(一般名ペルメトリン、商品名エクスミン:住友化学工業株式会社製)
・(±)α−シアノ−3−フェノキシベンジル(+)−シス/トランス−クリサンテマート(一般名シフェノトリン、商品名ゴキラート:住友化学工業株式会社製)
・1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル dl−シス/トランス−3−(2,2−ジメチルビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート(一般名エンペントリン、商品名ベーパースリン:住友化学工業株式会社製)
・d−トランス−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート(一般名トランスフルスリン)
・1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル 3−(2,2−ジクロロエテニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート等。
【0018】
また、上記した化合物に例えば構造上類似し、実質的には同様の薬効のある化合物も挙げることができる。例えばエンペントリンの場合3位の2個の置換基はメチル基であるが、その置換基として他のアルキル基、不飽和アルキル基またはハロゲン原子である化合物を用いることもできる。この他にも、フィプロニール、イミプロトリン、フラニル系の殺虫剤であるジノテフラン(化学名:(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン)、トリクロルホン、カルタップ、アセタミプリド、イミダクロプリド(Imidacloprid、日本バイエルアグロケム社製)、ニテンピラム(Nitenpyram、住化武田農薬社製)、チアクロプリド(Thiacloprid、日本バイエルアグロケム社製)、クロチアニジン(Clotianidin、住化武田農薬社製)、チアメトキサム(Thiamethoxam、シンジェンタ社製)、プロポクスル(Propoxur、バイエル薬品社製)、ピメトロジン(Pymetrozine、シンジェンタ社製)、フェニトロチオン(住友化学社製)、フェンチオン(バイエル社製)、メトフルトリン(住友化学社製)、プロフルトリン(住友化学社製)、アミドフルメト(住友化学社製)、植物精油などの殺虫剤やメトプレン(イソプロピル(2E−2E)−11−メトキシ−3,7,11−トリメチル−2,4−トリメチルドデカ−2,4−ジエノエート)、ピリプロキシフェン、82−[1−メチル−2−(フェノキシフェノキシ)エトキシ]ピリジン)などの昆虫幼若ホルモン、ジフルペンズロン(1−(4−クロロフェニル)−3−(2,6−ジフルオロベンゾイル)ウレア)、テフルベンズロン(1−(3,5−ジフルオロベンゾイル)ウレア)などの昆虫キチン形成阻害化合物などが挙げられる。
【0019】
こうした中でも、常温で難揮散性のものが好ましく、さらに、プラレトリン、レスメトリン、バイオアレスリン、フラメトリン、テラレスリン、トランスフルスリン、メトフルトリン、プロフルトリンが特に好ましい。このような害虫防除成分は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。また、これらの類縁体も用いられる。これらのうち常温で揮散しやすいものについては、例えば、揮散を調整するためのカバーを設けたり、ポリブテン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン等の炭化水素類や、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、フタル酸ブチルなどのエステル類からなる揮散調整剤を併用したりすることで、難揮散性となり長時間にわたって害虫防除効果を得ることができる。
【0020】
担体21に薬剤を保持させる際に、担体21に薬剤を容易に含浸させるための理由で液状薬剤を低粘度化する添加剤として、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシルなどの脂肪酸エステルやイソプロピルアルコール、ポリエチレングリコール、脱臭ケロシンなどの溶剤を必要に応じて使用することができる。また、担体21に薬剤を保持させる際に、その他の補助成分とともにこれを保持させることができ、例えば、蒸散促進用助剤として昇華性物質を添加すると揮散効果が高まってよい。害虫防除成分としてピレスロイド系化合物を使用する場合には、これに対して有効な既知の共力剤を混合することも好ましい。さらにBHTやBHAなどの酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加すると光、熱、酸化などに対する安定性が高まる。
【0021】
保持器22は担体21を保持するための部材であり、例えば、中心に設けられた支持部23から45度間隔で放射状に延設された8本のリブ24の先端が、リング状枠体25の下面に接続して形成されている。リング状枠体25の内径及び高さは、担体21の外径及び厚さと同じ寸法となっており、担体21がリング状枠体25内に嵌合して収容される。これにより、保持器22には担体21の下面を露出させる略3角形の複数の開口26が形成されるとともに、担体21の上面は全面露出することになる。また、保持器22の支持部23は上方に突出して設けられており、支持部23の先端にL字形状あるいはJ字形状をした引っ掛け部23aが設けられている。したがって、保持器22に担体21を取り付けた状態では、支持部23が担体21の貫通穴21を貫通して嵌合し、支持部23の上端部および引っ掛け部23aは担体21の上面から突出することになる。
【0022】
図2に示すように、担体21を保持した保持器22は、吊具14によって吊下げ状態で保持される。吊具14は例えばゴム製であり、上端には上カバー11の支持部13に引っ掛けられる上引っ掛け穴14aを有するとともに、下端には保持器22の支持部23の引っ掛け部23aに引っ掛けられる下引っ掛け穴14bを有している。
【0023】
器体10Aを組み立てる際は、薬剤を保持した担体21を保持器22に取り付けておき、吊具14の上引っ掛け穴14aを上カバー11の支持部13の引っ掛け部(図示省略)に引っ掛けるとともに、吊具14の下引っ掛け穴14bを、担体21から突出している保持器22の支持部23の引っ掛け部23aに引っ掛ける。あるいは、吊具14の下引っ掛け穴14bを保持器22の引っ掛け部23aに引っ掛けてから、吊具14の上引っ掛け穴14aを上カバー11の支持部13に引っ掛けるようにしてもよい。その後、下カバー12を上カバー11に取り付けて器体10Aを形成する。
【0024】
したがって、薬剤保持体20は、上カバー11と下カバー12との間に形成される空間Sに吊下げられて、上下方向にある程度自由に移動可能となっている。なお、吊具14をゴム等の柔軟な材質によって形成することにより、薬剤保持体20はある程度の回転移動も可能となっている。さらに、吊具14の上引っ掛け穴14aを支点とした振り子移動も可能となっている。
【0025】
なお、害虫防除成分が保持された担体21は消耗品であり、携帯型害虫防除装置1Aの使用により害虫防除成分が消費されたとき、担体21の交換が必要となる。消耗品の販売形態としては、担体21のみを供給してもよく、或いは担体21および保持器22を一体に組み付けた薬剤保持体20を消耗品として供給してもよい。使用者は、上記した組付け手順と逆の手順により取り出して容易に交換することができる。なお、器体10Aごと交換するようにすると、交換が非常に容易になる。
【0026】
図4に示すように、腕装着型の携帯型害虫防除装置1Aを使用者の腕2に装着する装着手段であるリストバンド30は、柔軟性を有する樹脂やゴムなどで長尺帯体31が形成されており、中央には器体10Aを取り付けるための器体取付部32を有している。器体取付部32には、下カバー12の取付ボス12eを挿入して係合させるために断面略L字型の一対の係合穴33が円周方向に沿って凹設されている。したがって、係合穴33に下カバー12の取付ボス12e(図3参照)を挿入して回転させることにより、器体10Aをリストバンド30に着脱自在に装着することができる。なお、リストバンド30の一部もしくは全体を幅のある伸縮自在のゴム紐としてもよい。
【0027】
長尺帯体31の一端には、球状の頭部34aを柱状部34bの先端に有する係合突起34が設けられており、器体取付部32を挟んで係合突起34と反対側の長尺帯体31には、所定間隔で複数個の係合穴35が設けられている。係合穴35の径は、係合突起34の頭部34aの外径よりも若干小さく、かつ、柱状部34bの外径よりも大き目となっており、係合突起34の頭部34aを係合穴35に押し込んで貫通させることにより、不意の脱落を防止して係止することができる。なお、この係合穴38による係止手段に代えて、マジックテープを利用したものでもよい。
したがって、図5に示すように、長尺帯体31を使用者の腕2にまきつけ、係合突起34を腕2の太さに対応する係合穴35に挿入して係止することにより、リストバンド30を腕2に取り付けることができる。これにより、薬剤保持体20を腕に容易に装着することができる。
【0028】
本実施形態の作用を説明する。
本実施形態の腕装着型の携帯型害虫防除装置1Aは、図5に示すように、リストバンド30によって使用者の腕2に装着され、主に屋外において携帯して使用される。例えば、使用者がウオーキング、ハイキング、または各種作業を行うなどのために腕2を動かすと、携帯型害虫防除装置1Aの器体10Aが移動する。器体10Aの内部空間Sに保持されている薬剤保持体20は、柔軟な吊具14によって吊下げ状態で保持されているので、器体10Aの移動に伴って上下移動、回転移動、および振り子移動等、様々な運動が生じる。薬剤保持体20が移動すると、担体21の周囲の空気との間に相対的に気流が生じ、担体21にあたって該担体21に保持されている害虫防除成分が効率的に揮散する。またこれにより、従来の害虫防除装置で用いられている常温で揮散する害虫防除成分だけでなく、気流によって揮散する害虫防除成分の使用も可能となり、より効果的な害虫防除を行うことができる。
【0029】
以上、説明したように、本発明の第1実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Aによれば、単に携帯型害虫防除装置1Aを腕2に装着しておくだけで、薬剤保持体20を介して担体21が移動して害虫防除成分を揮散させるので、従来の装置のようにモータや電池などの高価な装置を用いることなく害虫防除成分を効果的に拡散させて害虫を防除することができる。また、モータや電池などの駆動装置が不要となるので、害虫防除装置を小型化・軽量化して、携帯に好適な大きさにすることができ、利便性が大幅に向上する。
【0030】
また、薬剤保持体20に保持されている薬剤が揮散して、効力が弱くなった場合には、担体21、薬剤保持体20あるいは器体10Aのみを交換することにより、リストバンド30等を再使用することができ、ランニングコストの低減を図るとともに、ごみの発生を減少させることができる。
【0031】
また、携帯型害虫防除装置1Aは、装着手段であるリストバンド30を装着部位に好適な形態のものに適宜交換することによって、腕だけでなく、首、衣服、帽子、かばん、ベルト等の身体や携帯品の任意の位置に装着することができる。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図6は本発明の第2実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の分解斜視図である。なお、すでに説明した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0033】
図6に示すように、本発明の第2実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Bでは、器体10B内に薬剤保持体20Bを移動自在に収容している。すなわち、器体10Bは、樹脂によって略椀形に形成された上カバー11及び下カバー12Bとからなり、下カバー12Bに上カバー11を嵌合させることにより内部に薬剤保持体20Bを収容するための空間Sが形成される。なお、器体10Bは、使用者の腕2に装着する装着手段であるリストバンド30に着脱可能に取り付けられて使用されるのは前述した実施形態と同様である(図5参照)。
【0034】
図6に示すように、下カバー12Bは、底部12aと、底部12aの外周に沿って立設された壁部12bとにより略有底円筒状に形成されており、底部12aの中心に支持部15が設けられている。支持部15の上面には、L字形状あるいはJ字形状をした引っ掛け部15aが設けられている。なお、下カバー12Bの下面には、前述した略L字形の一対の取付ボス12e、12dが形成されており、器体10Bをリストバンド30に着脱自在に取り付けることができる。
【0035】
下カバー12Bの支持部15等に対応して、図示はしないが、保持器22Bの下面にも保持器22Bの上面に設けた支持部23および引っ掛け部23aと同様の支持部および引っ掛け部が設けられている。そして、保持器22Bの上面側の引っ掛け部23aと上カバー11の引っ掛け部とに取り付ける吊具14Aと同様の吊具14Bが、保持器22Bの下面側の引っ掛け部と下カバー12Bの引っ掛け部15aとの間に取り付けられる。これにより、薬剤保持体20Bは、上カバー11および下カバー12Bに取り付けられることになる。なお、吊具14Aおよび吊具14Bは同じ部材である必要はないが、部材種類の減少の観点から、同じ部材を共通して用いるようにするのが好適である。
【0036】
器体10Bを組み立てる際は、薬剤を保持した担体21を保持器22Bに取り付けておき、上カバー11の支持部13の引っ掛け部(図示省略)と保持器22Bの上側の引っ掛け部23aとの間に吊具14Aを取り付けるとともに、下カバー12Bの支持部15の引っ掛け部15aと保持器22Bの下側の引っ掛け部との間に吊具14Bを取り付ける。その後、下カバー12Bを上カバー11に取り付けて器体10Bを形成する。この際、吊具14A、14Bはともに、例えばゴム製の柔軟な部品なので、上カバー11および下カバー12Bに取り付けた状態で両カバー11、12Bを容易に回転することができる。
【0037】
以上説明した本発明の第2実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Bによっても、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、薬剤保持体20Bを上カバー11および下カバー12Bに取り付けたので、携帯型害虫防除装置1Bを装着した腕2等を移動させた際に、薬剤保持体20Bががたつくのを防止することができる。
【0038】
次に、本発明の第3実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図7(a)は本発明の第3実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の斜視図、図7(b)は図7(a)中B−B位置の断面図である。なお、すでに説明した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0039】
図7に示すように、本発明の第3実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Cでは、器体10C内に全体矩形状の薬剤保持体20Cを移動自在に収容している。すなわち、器体10Cは、樹脂によって略椀形に形成された上カバー11C及び下カバー12Cを有しており、器体10Cの側面を貫通して薬剤保持体20Cが往復移動可能に保持されている。薬剤保持体20Cが貫通する位置は、上カバー11Cあるいは下カバー12Cのいずれでもよく、両カバー11C、12Cに亙ってもよい。薬剤保持体20Cの移動は薬剤保持体20C自身の重量によるものであり、モータ等の移動機構は有していない。
【0040】
薬剤保持体20Cは、全体矩形箱状のカートリッジ27を有しており、カートリッジ27の中央部には矩形状の本体部27aが形成されるとともに、本体部27aの両端は上下に拡大されてストッパ部27bが形成されている。本体部27aの上下面および側面には、開口27cが設けられている。カートリッジ27の内部には、矩形状の担体21Cが収容されている。なお、このとき、担体21Cは粒状、小球状のものが多数入っていてもよい。
【0041】
したがって、携帯型害虫防除装置1Cを装着している腕2等を移動させることにより、薬剤保持体20C自身の重量によって往復移動するため、薬剤保持体20Cに収容されている担体21Cに含浸されている薬剤の揮発を促進することになる。なお、図7では、本体部27aが器体10C内を貫通して往復移動し、ストッパ部27bが器体10Cの側面に当接することにより移動を制限しているため、本体部27aの一部は器体10Cから露出する構造となっているが、薬剤保持体20Cが器体10Cの内部でのみ往復移動するようにして、器体10Cから露出しないようにすることもできる。この場合には、ストッパ部27bは必ずしも必要ではない。
【0042】
以上説明した本発明の第3実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Cによっても、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、薬剤保持体20Cは、携帯型害虫防除装置1Cを装着している腕2等の移動に加えて、器体10Cに対して相対的に移動するため移動量が増加し、担体21Cに含浸されている薬剤を効率よく揮散させることができる。
【0043】
次に、本発明の第4実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図8(a)は本発明の第4実施形態にかかる携帯型害虫防除装置における器体を示す断面図、図8(b)および(c)は変形例である。なお、すでに説明した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0044】
図8(a)に示すように、本発明の第4実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Daでは、器体10Daは円板状の下カバー12Daと、下カバー12Daの中心に立設されている支持部16によって回転自在に支持されている椀状の上カバー11Daを有している。そして、下カバー12Daの上面および上カバー11Daの側部内面に、薬剤を保持した担体21が取り付けられている。下カバー12Daはリストバンド30に対して回転しないため、担体21を下カバーDaの上面全面に設けてもよい。一方、上カバー11Daに設ける担体21は、支持部16によって支持されている回転中心に対して偏心する位置に設けることにより、上カバー11Daを容易に回転するようにする。なお、支持部16の先端部を尖らせて摩擦を少なくして回転し易くするのが望ましい。
【0045】
したがって、上カバー11Daは偏心して取り付けられている担体21を錘として回転するので、より低コスト化が可能となり、また上カバー11Daに取り付けられている担体21に含浸されている薬剤の揮散を促進する。また、上カバー11Daの回転によって器体10Da内部に気流が生じるので、下カバー12Daに取り付けられている担体21に含浸されている薬剤の揮散も促進することになる。
なお、ここで軸と軸受とは抜け止めにより、用事に上カバー11Daが外れないようになっている。
【0046】
また、図8(b)に示すように、この携帯型害虫防除装置1Dbでは、器体10Dbは椀状の下カバー12Dbと、下カバー12Dbの中心に立設されている支持部16によって回転自在に支持されている円板状の上カバー11Dbを有している。そして、下カバー12Dbの上面および側部内面に、薬剤を保持した担体21が取り付けられている。下カバー12Dbはリストバンド30に対して回転しないため、担体21を下カバーDaの上面全面や側部内面全面に設けることも可能である。一方、上カバー11Dbは、ここでは担体や錘を設けずに、単に回転可能となっているが、上カバー11Dbの偏心した位置に錘や担体を設けて、回転し易くすることも可能である。無論、11Dbに担体21を設けて回転し易くしてもよい。
【0047】
したがって、携帯型害虫防除装置1Dbを装着した腕2等を移動させることにより、担体21に含浸されている薬剤の揮散を促進させることができるとともに、上カバー11Dbの回転によって器体10Db内に気流が発生するので、さらに薬剤の揮散を促進することができる。
【0048】
さらに、図8(c)に示すように、この携帯型害虫防除装置1Dcでは、器体10Dcは、円板状の下カバー12Dcと、円板状の上カバー11Dcを有しており、両カバー11Dc、12Dcの間に回転体17を回転自在に有している。なお、回転体17および上カバー11Dcをそれぞれ下カバー12Dcに対して回転自在とすることができるが、上カバー11Dcと下カバー12Dcを一体として、回転体17のみを回転自在とすることもできる。そして、回転体17の側壁17a内面の偏心した位置に担体21を取り付ける。下カバー12Dcの上面にも担体21を取り付ける。なお、上カバー11Dcの偏心した位置に錘や担体を設けて、回転し易くすることも可能である。
【0049】
したがって、回転体17は偏心して取り付けられている担体21を錘として回転するので、回転体17に取り付けられている担体21に含浸されている薬剤の揮散を促進する。また、回転体17の回転によって器体10Dc内部に気流が生じるので、下カバー12Dcに取り付けられている担体21に含浸されている薬剤の揮散も促進されることになる。
【0050】
次に、本発明の第5実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図9(a)は本発明の第5実施形態にかかる携帯型害虫防除装置における器体を示す断面図、図9(b)は変形例である。なお、すでに説明した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0051】
図9(a)に示すように、本発明の第5実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Eaでは、器体10Eaは椀状の下カバー12Eと、椀状の上カバー11Eを組み合わせて内部に空間Sを設けている。内部空間Sの高さ方向中間位置には、支持部16によって回転板18が回転自在に設けられており、回転板18の上下面には、回転板18が全体として偏心する位置に錘18aが設けられている。内部空間Sには、薬剤を含浸した粒状の担体28が多数収容されている。担体28は、紙類、樹脂類、繊維類等を球状にして薬剤を含浸させたものや、薬剤を粒状に成型したもの等を用いることができる。なお、担体28が自由に移動できるように、器体10Ea内には担体28を収容した後もある程度の空間を確保する。また、上カバー11Eの全体および下カバー12Eの側面には適宜開口11b、11f、12fが設けられているが、粒状の担体28が通過できない大きさとする。
【0052】
したがって、器体10Eaの移動に伴って粒状の担体28が移動し、さらに回転板18が回転することにより担体28を攪拌して移動させるので、担体28に含浸されている薬剤の揮散を促進する。
【0053】
図9(b)に示すように、この携帯型害虫防除装置1Ebは、上述した携帯型害虫防除装置1Eaにおける錘18aの代わりに、回転板18の偏心した位置に担体21を取り付けたものである。なお、担体28を例えば魚形状に形成し、上カバー11Eおよび下カバー12Eを透明材料で形成して、あたかも水槽内を魚が遊泳するように見せるようにすることができる。これにより、使用者が視覚的に楽しむこともできる。
【0054】
したがって、粒状の担体28の移動に伴う薬剤の揮散に加えて、回転板18に取り付けられている担体21からも薬剤が揮散することになる。
【0055】
次に、本発明の第6実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図10は本発明の第6実施形態にかかる携帯型害虫防除装置における器体を示す断面図である。なお、すでに説明した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0056】
図10に示すように、本発明の第6実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Fでは、器体10Fは椀状の下カバー12Fと、椀状の上カバー11Fを組み合わせて内部に空間Sを設けている。上カバー11Fおよび下カバー12Fには、それぞれ支持軸11g、12gが中心に向かって設けられており、両支持軸11g、12gの先端を螺合させることにより両カバー11F、12Fを一体化することができるようになっている。あるいは、両支持軸11g、12gの先端を互いに嵌合させて係止するようにしてもよい。
【0057】
内部空間Sには、薬剤を含浸した粒状の担体28が多数収容されている。また、担体28が自由に移動できるように、器体10F内には担体28を収容した後もある程度の空間を確保する。そして、上カバー11Fの全体および下カバー12Fの側面には適宜開口11b、11f、12fが設けられているが、粒状の担体28が通過できない大きさとする。
【0058】
したがって、器体10Fの移動に伴って粒状の担体28が自由に移動するので、担体28に含浸されている薬剤が揮散される。
【0059】
次に、本発明の第7実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図11は本発明の第7実施形態にかかる携帯型害虫防除装置における器体を示す一部破断の平面図である。なお、すでに説明した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0060】
図11に示すように、本発明の第7実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Gでは、器体10Gを構成する上カバー11Gを、揮散した薬剤を透過させることができるガス透過性フィルムによって例えば円形に形成したものである。これにより、上カバー11Gと下カバー12Gとの間に内部空間Sを形成し、この内部空間Sには、薬剤を含浸した微細粒、ペースト状、ゲル状の担体29が多数収容されている。なお、担体29が自由に移動できるように、器体10G内には担体29を収容した後もある程度の移動空間を確保する。
【0061】
また、下カバー12Gとして前述したものと同様のものを用いる場合には、取付ボス12eによってリストバンド30に着脱自在に取り付けることができる。あるいは、器体10G全体をガス透過性フィルムによって形成し、例えば両面テープや接着材等でリストバンド30の器体取付部32に貼り付けるようにすることもできる。この場合には、取付ボスを設ける必要はない。
【0062】
したがって、器体10Gの移動に伴ってペースト状の担体29が自由に移動するので、担体29に含浸されている薬剤が、ガス透過性フィルムを透過して揮散される。
【0063】
次に、本発明の第8実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図12(a)は本発明の第8実施形態にかかる携帯型害虫防除装置における器体を示すA−A位置から見た平面図、図12(b)は図12(a)中B−B位置の断面図である。なお、すでに説明した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0064】
図12(a)および(b)に示すように、本発明の第8実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Hでは、器体10Hが、平板状の下カバー12Hと、下カバー12Hの上面を覆う半球状の上カバー11Hで構成されている。下カバー12Hの上面には、担体として薬剤を含浸した多数本の線状部材19が植設されており、内部空間Sにおいて自由に揺れるようになっている。また、上カバー11Hには、薬剤を揮散させるための開口11bが多数設けられている。この器体10Hは、下カバー12Hの下面に設けられている取付ボス12eによって、リストバンド30に着脱自在に取り付けられる。
【0065】
したがって、器体10Hの移動に伴って薬剤を含浸した線状部材19が揺れるので、線状部材19に含浸されている薬剤が、揮散されることになる。
なお、本実施形態では、線状部材19が上カバー10Hと下カバー12Hとで画成される内部空間S内に収納されて構成されているが、上カバー10Hと下カバー12Hとを取り除いて、線状部材19をリストバンド30に例えばテープや接着剤等によって直接固定的に取り付けるようにしてもよく、この場合にでも同様な効果を得ることができる。
【0066】
次に、本発明の第9実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図13は本発明の第9実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の斜視図である。なお、すでに説明した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0067】
図13に示すように、本発明の第9実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Jでは、器体10Jが、半球状の下カバー12Jと、下カバー12Jの内側で回動軸41を中心として回動自在に設けられた半球状の上カバー11Jで構成されている。上カバー11Jには、薬剤が含浸された担体21が内面に固着されるように取り付けられている。また、上カバー11Jには、薬剤を揮散させるための開口を設けるのが好適である。この器体10Jは、下カバー12Jの下面に設けられている一対の取付ボス12eによって、リストバンド30の器体取付部32に着脱自在に取り付けられる。
【0068】
したがって、器体10Jの移動に伴って上カバー11Jがゆりかごのように回動し、担体21に含浸されている薬剤の揮散を促進する。なお、回動軸41を設けずに、上カバー11Jを下カバー12Jの内側に直接回動自在に軸支してもよい。また、上カバー11Jは、下カバー12Jに対して360°以上回転してもよい。
【0069】
次に、本発明の第10実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図14(a)は本発明の第10実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の平面図、図14(b)は図14(a)中B−B位置の断面図である。なお、すでに説明した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0070】
図14に示すように、本発明の第10実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Kでは、器体10Kは下カバー12Kおよび上カバー11Kを有しており、中央に回転収容部42、回転収容部42の図中上側に第1収容部43、回転収容部42の図中下側に第2収容部44が形成されている。回転収容部42と第1収容部43との境界43aおよび回転収容部42と第2収容部44との境界44aは幅および高さが小さくなっていて全体が砂時計形状をしており、器体10K内部に多数の粒状担体28が収容されている。
【0071】
下カバー12Kは回転軸45によってリストバンド30に回転可能に軸支されており、器体10Kは全体としてリストバンド30に対して図中上下方向(矢印A方向)に回転可能となっている。なお、器体10Kは、第1収容部43および第2収容部44がリストバンド30上に位置する位置で、180°づつ係止可能とし、上下を入れ替える際以外のときに、不意に回転するのを防止するのが望ましい。
【0072】
回転収容部42内部には、例えば十字形状をした回転羽根42aが回転軸45に対して回転自在に設けられており、粒状の担体28が第1収容部43から第2収容部44へ落下移動する際や、反対に第2収容部44から第1収容部43へ落下移動する際に、担体28が衝突して回転される。これにより、担体28が攪拌されるので、薬剤の揮散を促進することになる。なお、担体28が一方の収容部43、44に落下し終わったら、器体10Kを180°回転させるのが望ましい。また、下カバー12Kを直接リストバンド30に回転可能に取り付ける代わりに、下面に取付ボス12e(図3参照)を有する部材を設けて、この部材に下カバー12Kを回転可能に取り付けることもできる。この場合には、器体10Kを容易に交換することができる。
【0073】
次に、本発明の第11実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図15は本発明の第11実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の平面図である。なお、すでに説明した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0074】
図15に示すように、本発明の第11実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Lでは、器体10Lは例えば楕円形状をした下カバー12Lおよび多数の開口11bを有する上カバー11Lを有しており、内部に空間Sが形成されている。この器体10Lは、下カバー12Lの下面に設けられている一対の取付ボス12e(図3参照)によって、リストバンド30の器体取付部32(図4参照)に着脱自在に取り付けられる。
【0075】
下カバー12L上には、中央に第1の歯車46が回転自在に設けられており、この第1の歯車46に噛合する第2の歯車47および第3の歯車48が回転自在に設けられている。また、第1の歯車46には、同心円状の切欠き46aが円周方向に所定長さで設けられており、この切欠き46aの内部には、錘49が回転自在に嵌合されている。このため、携帯型害虫防除装置1Lが装着されて振られるに伴い、当該錘49が切欠き46a内部を転動することにより、第1の歯車46に回転力を付与することとなる。
【0076】
第2の歯車47には、例えば十字形状をした回転羽根47aが同心で設けられており、回転羽根47aは第2の歯車47と一体的に回転する。また、第3の歯車48には、例えば十字の羽根形状をした担体21が設けられており、担体21は第3の歯車48と一体的に回転する。
【0077】
したがって、第1の歯車46の回転によって、第2の歯車47および第3の歯車48が回転するので、担体21が回転して、薬剤の揮散を促進させる。
なお、上カバー11Lを透明の部材で構成して、内部の機構が見えるようにするのが好適である。これにより、特に子供の興味を引くことができる。
【0078】
次に、本発明の第12実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図16は本発明の第12実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の分解斜視図である。なお、すでに説明した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0079】
図16に示すように、本発明の第12実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Mでは、器体10M内に薬剤保持体20Mを回転自在に収納している。すなわち、器体10Mは、樹脂によって略椀形に形成された上カバー11M及び下カバー12Mとからなり、下カバー12Mに上カバー11Mを嵌合することにより内部に薬剤保持体20Mを収容するための空間Sが形成される。なお、器体10Mは、使用者の腕2に装着する装着手段であるリストバンド30に着脱可能に取付けられて使用されるのは前述した実施形態と同様である(図5参照)が、無論リストバンド30以外の器体10M自体にフックなどの係止手段、リング状部材などからなる吊下げ用手段、または粘着材による貼止手段を適宜設けてもよい。また、前記薬剤保持体20Mは、格子状の担体を用いたものであってもよい。
【0080】
図16に示すように、下カバー12Mは、底部12aと、底部12aの外周に沿って立設された壁部12bとにより略有底円筒状に形成されており、底部12aの中心には支持部63が設けられている。支持部63の上面には、薬剤保持体20Mを回転自在に支承するため下部軸受穴63aが形成されている。同様に、軸心を同じくして、上カバー11Mの支持部50の中心の下面にも、他方で薬剤保持体20Mを回転自在に支承するための上部軸受穴(不図示)が形成されている。なお、当該底部12aのも開口を設け、通風可能に当該開口に通じるガイド(例えば、底部と取付面との間に間隔をあけた構成など)を設けてもよい。
【0081】
そして、薬剤保持体20Mは、担体21と、該担体21を収納保持する保持器22Mと、ファン部60と、が組み付けられて構成されている。即ち、担体21は、保持器22Mとファン部60とにより挟持されて収納される。
【0082】
送風機構を構成するファン部60は、図16に示すように、リング状枠体60cと、中心に配置された軸支持部62と、リング状枠体60cと軸支持部62とを連結して72度間隔で放射線状に設けられたリブ60aと、該リブ60aとリング状枠体60cとの連結部に設けられた5枚の羽60bとからなる。軸支持部62には、上カバー11Mの上部軸受穴(不図示)に回転自在に嵌合する支持軸62aが上方に突出して形成されている。5枚の羽60bは、それぞれ周方向断面が略楕円である平板形状により形成されており、その平板形状が軸方向及び周方向に略平行となるようにリング状枠体60cに連結して立設されている。
【0083】
そして、下カバー12Mの下部軸受穴63aに対応して、図示しないが、保持器22Mの下面中心部に軸心が合うように支持軸が下方に突出して形成されている。これにより、薬剤保持体20Mは、上カバー11M及び下カバー12Mに取り付けら、回転自在に支持されることとなる。
【0084】
以上説明した本発明の第12実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Mによっても、前述した実施形態と同様の効果を得ることができるが、特に羽60bを軸方向及び周方向に略平行となるようにリング枠体60cに等間隔となるように設けたので、風向きを問わず薬剤保持体20Mを回転させることができ、極めて効率よく薬剤を揮散させることができる。そして、これに加え、装着時に手を動かす、ないし歩くなどして、風がファン部60に当たり、回転体を回転させるようにしても使用できる利点がある。
【0085】
次に、本発明の第13実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図17は本発明の第13実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の分解斜視図である。なお、薬剤保持体以外の部分については第12実施形態と共通しているので、すでに説明した部位と共通する部分には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0086】
図17に示すように、本発明の第13実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Nの薬剤保持体20Nは、軸方向両端部に支持軸73a(下方のは図示せず)が設けられた軸支持部73と、該軸支持部73に連結されて周方向に突出して設けられたリブ72と、所定の厚みを持って円筒状に形成された担体71と、を備えて構成されている。また、リブ72の周方向先端部には、担体71の中心部で回転自在に担体71を保持する担体保持手段72aが付設されている。そして、担体71の半径が、当該担体保持手段72aと下カバー12Mの壁部12bとの間の距離と等しくなるように設定されている。
これにより、薬剤保持体20Nの回転時において、担体71の周面が壁部12bと係合することとなり、この係合箇所における摩擦により、担体71も同時に担体保持手段72aの保持部を中心として回転することとなる。それ以外の態様は第12実施形態と同様である。
【0087】
以上説明した本発明の第13実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Nによっても、前述した実施形態と同様の効果を得ることができ、また薬剤保持体20Nとともに、担体71も同時に担体保持手段72aの保持部を中心として回転することとなるので、より一層薬剤の揮散を促進させることになる。
【0088】
次に、本発明の第14実施形態にかかる携帯型害虫防除装置を図に基づいて説明する。図18は本発明の第14実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の分解斜視図である。なお、薬剤保持体以外の部分については第12実施形態と共通しているので、すでに説明した部位と共通する部分には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0089】
図18に示すように、本発明の第14実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Pの薬剤保持体20Pは、軸方向両端部に支持軸83a(下方のは図示せず)が設けられた軸支持部83と、基端部で該支持部83に連結されるとともに、周方向先端部が円弧状で形成された碇形状の担体81と、を備えて構成されている。
【0090】
以上説明した本発明の第14実施形態にかかる携帯型害虫防除装置1Pによっても、前述した実施形態と同様の効果を得ることができ、また担体81の重心のバランスが偏って回転し易くするので、より一層薬剤の揮散を促進させることになる。
【0091】
なお、本発明の携帯型害虫防除装置は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した各実施形態においては、担体21、28、29、71、81に含浸されている薬剤を、担体21、28、29、71、81の移動によって揮散させたが、このほか、外気温を利用して薬剤の揮散を促進させることもできる。この場合には、上カバー11に集光レンズを設けるのが好適である。また、人体の体温を利用して薬剤の揮散を促進することもできる。この場合には、装着した状態で人体と接する下カバー12に、蓄熱部材やアルミ等の熱伝導性の高い部材を設けるのが好適である。
【0092】
さらに、前述した各実施形態においては、担体21、28、29、71、81が装置本体内部に収納されているが、特にこれに限らず、外部に露出していても構わない。例えば、上カバーを除いた構成、あるいは担体が風車形状に形成されて回転自在にリストバンドに止着されるように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる腕装着型の携帯型害虫防除装置の全体斜視図である。
【図2】図1における携帯型害虫防除装置の分解斜視図である。
【図3】下カバーの下面を示す斜視図である。
【図4】装着手段であるリストバンドの斜視図である。
【図5】腕に装着された携帯型害虫防除装置の斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の分解斜視図である。
【図7】(a)は本発明の第3実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の斜視図、(b)は(a)中B−B位置の断面図である。
【図8】(a)は本発明の第4実施形態にかかる携帯型害虫防除装置における器体を示す断面図、(b)および(c)は変形例である。
【図9】(a)は本発明の第5実施形態にかかる携帯型害虫防除装置における器体を示す断面図、(b)は変形例である。
【図10】本発明の第6実施形態にかかる携帯型害虫防除装置における器体を示す断面図である。
【図11】本発明の第7実施形態にかかる携帯型害虫防除装置における器体を示す一部破断の平面図である。
【図12】(a)は本発明の第8実施形態にかかる携帯型害虫防除装置における器体を示すA−A位置から見た平面図、(b)は(a)中B−B位置の断面図である。
【図13】本発明の第9実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の斜視図である。
【図14】(a)は本発明の第10実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の平面図、(b)は(a)中B−B位置の断面図である。
【図15】本発明の第11実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の平面図である。
【図16】本発明の第12実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の分解斜視図である。
【図17】本発明の第13実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の分解斜視図である。
【図18】本発明の第14実施形態にかかる携帯型害虫防除装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0094】
1 携帯型害虫防除装置(携帯型薬剤揮散装置)
2 腕(身体)
19 線状部材(担体)
20 薬剤保持体
21,28,29,71,81 担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体又は携帯品に取り付けて使用する携帯型薬剤揮散装置であって、
薬剤が含浸された担体を移動自在に収容又は止着し、身体又は携帯品を動かすことにより、前記担体を移動させて前記薬剤の有効成分を揮散させる
ことを特徴とする携帯型薬剤揮散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−283934(P2008−283934A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134234(P2007−134234)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】