携帯電子機器
【課題】小型化・薄型化の要請に応えつつ、導電部を利用した新たな構成のアンテナを有する携帯電子機器を提供すること。
【解決手段】第1導電部24を有する表示部側筐体2と、第2導電部37を有する操作部側筐体3と、第3導電部42を有すると共に、表示部側筐体2上に操作部側筐体3を積層配置させた閉状態と、当該閉状態から操作部側筐体3を表示部側筐体2に対して積層方向に沿った回転軸41を中心として所定の角度回転した開状態とに遷移可能なように表示部側筐体2と操作部側筐体3とを連結する連結部4と、給電部38とを備え、開状態において、第1導電部24と第2導電部37は、第3導電部42を介して電気的に接続され、第1導電部24と第2導電部37と第3導電部42とにより三方を囲まれて形成される対向領域は、給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。
【解決手段】第1導電部24を有する表示部側筐体2と、第2導電部37を有する操作部側筐体3と、第3導電部42を有すると共に、表示部側筐体2上に操作部側筐体3を積層配置させた閉状態と、当該閉状態から操作部側筐体3を表示部側筐体2に対して積層方向に沿った回転軸41を中心として所定の角度回転した開状態とに遷移可能なように表示部側筐体2と操作部側筐体3とを連結する連結部4と、給電部38とを備え、開状態において、第1導電部24と第2導電部37は、第3導電部42を介して電気的に接続され、第1導電部24と第2導電部37と第3導電部42とにより三方を囲まれて形成される対向領域は、給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナを有し外部機器と通信を行う携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器は、小型化・薄型化が進んでおり、また、様々な構成のアンテナが内蔵されている。
例えば、特許文献1では、第1筐体内に配置された第1導電部に切欠部を形成し、当該切欠部に給電することにより、切欠部がスロットアンテナとして動作する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−167420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような携帯電子機器では、導電部を利用したさらなるアンテナ技術が求められている。
【0005】
本発明は、小型化・薄型化の要請に応えつつ、導電部を利用した新たな構成のアンテナを有する携帯電子機器を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る携帯電子機器は、上記課題を解決するために、第1導電部を有する第1筐体と、第2導電部を有する第2筐体と、第3導電部を有すると共に、前記第1筐体上に前記第2筐体を積層配置させた閉状態と、当該閉状態から前記第2筐体を前記第1筐体に対して積層方向に沿った軸を中心として所定の角度回転した開状態とに遷移可能なように前記第1筐体と前記第2筐体とを連結する連結部と、給電部とを備え、前記開状態において、前記第1導電部と前記第2導電部は、前記第3導電部を介して電気的に接続され、前記第1導電部と前記第2導電部と前記第3導電部とにより三方を囲まれて形成される対向領域は、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作する構成である。
【0007】
また、携帯電子機器では、前記第3導電部は、前記第1筐体及び前記第2筐体を固定する板金部材により構成されており、前記開状態において、前記第1導電部と前記第2導電部は、前記板金部材を介して電気的に接続され、前記対向領域は、前記第1導電部と前記第2導電部と前記板金部材により三方が囲まれて形成される領域である構成でも良い。
【0008】
また、携帯電子機器では、前記第1導電部の一方端側と、当該一方端側に対向する前記板金部材の一方端側とは、導電性の第1接続部材により電気的に接続されており、前記第2導電部の一方端側と、当該一方端側に対向する前記板金部材の他方端側とは、導電性の第2接続部材により電気的に接続されており、前記開状態において、前記第1導電部の一方端側と、前記板金部材の一方端側と、前記第1接続部材とにより三方を囲われて形成される第1対向領域及び第2対向領域は、それぞれ前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、前記第2導電部の一方端側と、前記板金部材の他方端側と、前記第2接続部材とにより三方を囲われて形成される第3対向領域及び第4対向領域は、それぞれ前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、前記閉状態において、前記第1対向領域と前記第4対向領域は、積層方向において対向し、前記第1対向領域又は前記第4対向領域のいずれか一方は、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、前記第2対向領域と前記第3対向領域は、積層方向において対向し、前記第2対向領域又は前記第3対向領域のいずれか一方は、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作する構成でも良い。
【0009】
また、携帯電子機器では、前記開状態と前記閉状態との間の回転状態において、積層方向で対向領域が塞がれない、前記第1対向領域及び前記第3対向領域、又は前記第2対向領域及び前記第4対向領域は、前記給電部により給電されてスリット状の磁流アンテナとして動作し、積層方向で対向領域の一部が塞がれることにより、前記第1対向領域及び前記第3対向領域、又は前記第2対向領域及び前記第4対向領域によって形成される領域は、前記給電部により給電されてスロット状の磁流アンテナとして動作する構成でも良い。
【0010】
また、携帯電子機器では、前記第2導電部は、長手方向において左右対称になるように所定形状の第1切欠部及び第2切欠部が形成され、前記第1切欠部及び前記第2切欠部を分断するように前記板金部材が配置されて、第1スリット、第2スリット、第3スリット及び第4スリットが形成され、前記開状態から、前記開状態と前記閉状態との間の中間状態に遷移する過程において、積層方向で塞がれていない前記第3スリット又は前記第4スリットは、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、前記中間状態から前記閉状態に遷移する過程において、積層方向で塞がれていない前記第1スリット又は前記第2スリットは、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作する構成でも良い。
【0011】
また、携帯電子機器では、前記第1導電部又は前記第2導電部は、基準電位に接続されており、前記第1導電部及び前記第2導電部は、前記連結部を介して高周波的に接続されており、逆Fアンテナとして動作する構成でも良い。
【0012】
また、携帯電子機器では、前記第1導電部と前記第2導電部と前記第3導電部とにより三方を囲まれて形成される複数の対向領域は、各辺の長さが同じ長さに形成されており、前記給電部により給電されて、同一の共振周波数帯で送受信を行う磁流アンテナとして動作する構成でも良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小型化・薄型化の要請に応えつつ、導電部を利用した新たな構成のアンテナを有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】開状態における携帯電話装置の外観図を示す。
【図2】時計周り方向に90度回転させたときの携帯電話装置の外観図を示す。
【図3】閉状態における携帯電話装置の外観図を示す。
【図4】携帯電話装置の構成を模式的に示す図である(第1実施例)。
【図5】携帯電話装置の構成を模式的に示す図である(第2実施例)。
【図6】時計周り方向に90度回転させたときに形成される四角形状の領域をスロットアンテナとして利用する実施例についての説明に供する図である。
【図7】時計周り方向に90度回転させたときに形成される四角形状の領域をスロットアンテナとして利用する実施例についての説明に供する図である。
【図8】開状態における携帯電話装置の構成を模式的に示す図である(第3実施例)。
【図9】中間状態及び閉状態における携帯電話装置の構成を模式的に示す図である。
【図10】携帯電話装置の構成を模式的に示す図である(第4実施例)。
【図11】携帯電話装置の構成を模式的に示す図である(第5実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図3は、本発明に係る携帯電子機器の一例である携帯電話装置1の外観図を示す。また、本実施の形態では、携帯電話装置1について説明するが、本発明は携帯電話装置に限定されるものではなく、例えば、PHS(Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ポータブルナビゲーション装置、ノートパソコン等であっても良い。
【0016】
図1に示すように、携帯電話装置1は、第1筐体である表示部側筐体2と第2筐体である操作部側筐体3とを備える。本実施形態の携帯電話装置1は、いわゆる回転式(リボルバ式)の機構構造を有しており、操作部側筐体3と表示部側筐体2との重ね合せ方向に延びる回転軸41を中心に一方の筐体を回転させることが可能である。つまり、操作部側筐体3の上端部と表示部側筐体2の下端部とは、回転軸41を備える連結部4を介して、回転軸41を中心に回転可能に連結される。
【0017】
具体的には、図1は、開状態のときの携帯電話装置1の外観を示し、図2は、回転軸41に沿って時計周り方向に90度回転させたときの携帯電話装置1の外観を示し、図3は、閉状態のときの携帯電話装置1の外観を示す。なお、上述では、開状態から時計回り方向に回転させて閉状態に遷移する機構について説明したが、これに限らず、開状態から反時計回り方向に回転させて閉状態に遷移する機構であっても良いし、さらに、いずれか一方向又は双方向に360度回転する機構であっても良い。
【0018】
表示部側筐体2は、前面側を形成するフロントケース21及び背面側を形成するリアケース(図示せず)により構成される。また、表示部側筐体2は、フロントケース21側に、各種情報を表示するための表示部22と、通話の相手側の音声を出力するレシーバとしての音声出力部23とが露出するように配置されて構成される。
【0019】
また、操作部側筐体3は、前面側を形成するフロントケース31及び背面側を形成するリアケース(図示せず)により構成される。また、操作部側筐体3は、フロントケース31側に、操作キー群32と、使用者が通話時に発した音声が入力されるマイクとしての音声入力部12とがそれぞれ露出するように構成される。
【0020】
操作キー群32は、各種設定や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作キー34と、電話番号の数字やメール等の文字等を入力するための入力操作キー35と、各種操作における決定や上下左右方向のスクロール等を行う操作部材としての決定操作キー36とにより構成される。
【0021】
また、操作キー群32を構成する各キーが押下されると、表示部側筐体2と操作部側筐体3の開閉状態や各種モード、又は起動されているアプリケーション等の種類に応じて、キーアサインテーブルが適宜参照され、当該キーアサインテーブルにしたがった機能が実行される。
【0022】
音声入力部33は、操作部側筐体3の長手方向における連結部4側と反対の外端部側に配置される。つまり、音声入力部33は、携帯電話装置1の開状態において一方の外端部側に配置される。
【0023】
このように構成される携帯電話装置1は、導電部を利用して複数のアンテナを構成することが可能である。このようなアンテナは、例えば、複数アンテナによる同一周波数同時空間多重化伝送(MIMO、Multi Input Multi Output)や、ダイバーシティアンテナとして利用することができる。以下に、具体的な構成について説明する。
【0024】
<第1実施例>
携帯電話装置1は、図4に示すように、表示部側筐体2と、操作部側筐体3と、連結部4と、給電部38とを備える。
表示部側筐体2は、第1導電部24を有する。また、操作部側筐体3は、第2導電部37を有する。また、第1導電部24及び第2導電部37は、回路基板の基準電位部や、基準電位用の板金が相当する。また、本実施例では、給電部38は、第2導電部37が形成される回路基板上に配置されるものとして説明するが、これに限られない。
【0025】
連結部4は、第3導電部42を有すると共に、表示部側筐体2上に操作部側筐体3を積層配置させた閉状態と、当該閉状態から操作部側筐体3を表示部側筐体2に対して積層方向に沿った回転軸41を中心として所定の角度回転した開状態とに遷移可能なように表示部側筐体2と操作部側筐体3とを連結する。
【0026】
開状態において、第1導電部24と第2導電部37は、第3導電部42を介して電気的に接続される。また、第1導電部24と第2導電部37と第3導電部42とにより三方を囲まれて形成される対向領域(図4中においては、領域A及び領域B)は、給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。
【0027】
詳細には、第1導電部24と第2導電部37が対向するそれぞれの側面は、スリットの一部(図4中においては、「a」で示す)を構成する。また、第1導電部24と第2導電部37とに高周波的に接続される第3導電部42は、スリットの一部(図4中においては、「b」で示す)を構成する。このように構成されるスリットは、給電部38により給電されることにより、磁流アンテナとして機能する。
【0028】
このようにして、携帯電話装置1は、開状態において、連結部4、第1導電部24及び第2導電部37により、磁流アンテナを形成することができる。特に、積層方向で電波の放射及び吸収面が遮られない構造であるので、アンテナ間の干渉が生じ難い。
【0029】
また、磁流アンテナは、スリットの長手方向の長さ(図4中の「a」の長さ)によって、通信できる周波数が決定される。具体的には、スリットの長手方向の長さは、送受信を行う高周波信号の周波数fに対応する波長λに対して、nλ/2(但し、n=1、2、3・・・)により決定される。携帯電話装置1では、スリットの長手方向の長さを適宜調節することにより、目的とする周波数の高周波信号による通信を行うことができる。
【0030】
また、第1導電部24と第2導電部37と第3導電部42とにより三方を囲まれて形成される複数の対向領域は、スリットの長手方向における長さが同じ長さに形成されていても良い。
【0031】
このように構成することにより、携帯電話装置1は、各スリットを同一の共振周波数帯で送受信を行う磁流アンテナとして動作させることができ、MIMOやダイバーシティアンテナを実現することができる。
【0032】
<第2実施例>
また、第3導電部42は、表示部側筐体2及び操作部側筐体3を固定する金属製プレート(板金部材)により構成される構成でも良い。このような構成によれば、開状態において、第1導電部24と第2導電部37は、金属製プレート(第3導電部42)を介して電気的に接続される。そして、第1導電部24と第2導電部37と金属製プレート(第3導電部42)により三方が囲まれて対向領域が形成される。
【0033】
具体的には、金属製プレートは、表示部側筐体2と操作部側筐体3を接合する部材としての役割も果たしており、また、第1導電部24と第2導電部37と共にスリットを構成する。このスリット部分は、給電部38により給電されることにより、スリットアンテナ(磁流アンテナ)として機能する。
【0034】
また、第1導電部24の一方端側と、当該一方端側に対向する金属製プレート(第3導電部42)の一方端側とは、図5に示すように、導電性の第1接続部材43により電気的に接続されている。さらに、第2導電部37の一方端側と、当該一方端側に対向する金属製プレート(第3導電部42)の他方端側とは、導電性の第2接続部材44により電気的に接続されている。第1接続部材43及び第2接続部材44は、例えば、回路基板の基準電位パターンにおいて連結部4側に突出した部分である。第1接続部材43及び第2接続部材44は、板金等の金属部材であっても良い。
【0035】
ここで、開状態における携帯電話装置1の構成について、図5(a)を参照しながら以下に説明する。
第1導電部24の一方端側と、金属製プレートの一方端側と、第1接続部材43とにより三方を囲われて形成される第1対向領域(図5(a)中のスリットA)及び第2対向領域(図5(a)中のスリットB)は、それぞれ給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。また、第2導電部37の一方端側と、金属製プレートの他方端側と、第2接続部材44とにより三方を囲われて形成される第3対向領域(図5(a)中のスリットC)及び第4対向領域(図5(a)中のスリットD)は、それぞれ給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。
【0036】
このようにして、携帯電話装置1では、開状態において、スリットA、スリットB、スリットC及びスリットDは、電波の放射及び吸収面が遮られないので、磁流アンテナとして動作させた場合には、干渉が生じ難く、好適なアンテナとして利用することができる。
【0037】
つぎに、閉状態における携帯電話装置1の構成について、図5(b)を参照しながら以下に説明する。なお、図5(b)は、説明の便宜上、表示部側筐体2と操作部側筐体3を分離して示している。
【0038】
第1対向領域(図5(b)中のスリットA)と第4対向領域(図5(b)中のスリットD)は、積層方向において対向する。そして、第1対向領域又は第4対向領域のいずれか一方は、給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。
【0039】
また、第2対向領域(図5(b)中のスリットB)と第3対向領域(図5(b)中のスリットC)は、積層方向において対向する。そして、第2対向領域又は第3対向領域のいずれか一方は、給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。
【0040】
このようにして、携帯電話装置1は、閉状態において、スリットAとスリットDが積層方向で対向し、また、スリットBとスリットCが積層方向で対向する。よって、携帯電話装置1は、スリットA又はスリットDの一方に対して給電部38により給電することにより、磁流アンテナを構成し、かつ、スリットB又はスリットCの一方に対して給電部38により給電することにより、磁流アンテナを構成することができ、電波の放射及び吸収面が遮られないので、干渉が生じ難く、好適なアンテナとして利用することができる。
【0041】
また、携帯電話装置1では、開状態と閉状態の中間となる回転状態において、積層方向で対向領域が塞がれない領域(第1対向領域(スリットA)及び第3対向領域(スリットC)、又は第2対向領域(スリットB)及び第4対向領域(スリットD))は、給電部38により給電されてスリット状の磁流アンテナとして動作する。また、携帯電話装置1では、積層方向で対向領域の一部が塞がれることにより、第1対向領域(スリットA)及び第3対向領域(スリットC)、又は第2対向領域(スリットB)及び第4対向領域(スリットD)によって形成される領域は、給電部38により給電されてスロット状の磁流アンテナとして動作する。
【0042】
本実施形態において、開状態と閉状態の中間となる回転状態とは、図6に示すように、携帯電話装置1を開状態から回転軸41に沿って、90度回転させた状態、又は、携帯電話装置1を閉状態から回転軸41に沿って、90度回転させた状態のことである。
【0043】
また、携帯電話装置1は、開状態から90度回転させる間において、スリットAとスリットCは、積層方向で電波の放射及び吸収面が遮られないので、常に磁流アンテナの性能を好適に維持することができる。
【0044】
また、携帯電話装置1は、開状態と閉状態の中間となる回転状態において、スリットBとスリットDが垂直方向で重なる。これを、平面上から眺めると、図7に示すように、スリットBとスリットDにより、閉じられた四角形Eが形成される。この四角形Eに対して給電部38により給電すると、いわゆるスロットアンテナを構成することができる。
【0045】
したがって、携帯電話装置1は、開状態と閉状態の中間となる回転状態において、三方向が囲まれた二つのスリットアンテナと、四方向が囲まれた一つのスロットアンテナを構成することができる。なお、携帯電話装置1は、開状態と閉状態の中間となる回転状態において、四方向が囲まれた領域をスロットアンテナとして動作させるために、スリットBとスリットDがスロットアンテナを構成できるくらい近接するように設計することが好ましい。
【0046】
<第3実施例>
また、第2導電部37は、図8に示すように、長手方向において左右対称になるように所定形状の第1切欠部39及び第2切欠部40が形成され、第1切欠部39及び第2切欠部40を分断するように金属製プレート(第3導電部42)が配置されて、第1スリットA1、第2スリットA2、第3スリットA3及び第4スリットA4が形成される。
【0047】
開状態から閉状態の中間状態に遷移する過程において、積層方向で塞がれていない第3スリットA3又は第4スリットA4は、給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。なお、本実施形態において、中間状態とは、携帯電話装置1を開状態から回転軸41に沿って、90度回転させた状態のことである。
【0048】
これは、携帯電話装置1を開状態から時計方向に回転させた場合には、第3スリットA3が、積層方向で電波の放射及び吸収面が遮られず、一方、携帯電話装置1を開状態から反時計方向に回転させた場合には、第4スリットA4が、積層方向で電波の放射及び吸収面が遮られないことを意味している。図9(a)では、前者の場合を示している。
【0049】
また、中間状態から閉状態に遷移する過程において、積層方向で塞がれていない第1スリットA1又は第2スリットA2は、給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。なお、中間状態から閉状態に遷移するとは、携帯電話装置1を90度回転させた状態から、回転軸41に沿って回転させて閉状態に遷移することである。図9(b)では、前者の場合を示している。
【0050】
これは、携帯電話装置1を中間状態から時計方向に回転させた場合には、第1スリットA1が、積層方向で電波の放射及び吸収面が遮られず、一方、携帯電話装置1を中間状態から反時計方向に回転させた場合には、第2スリットA2が、積層方向で電波の放射及び吸収面が遮られないことを意味している。
【0051】
携帯電話装置1は、例えば、開状態から回転軸41に沿って、時計方向に回転させる場合を想定すると、開状態から中間状態までは、給電部38により第3スリットA3に対して給電を行って、磁流アンテナとして利用し、中間状態から閉状態までは、給電対象を変更し、給電部38により第1スリットA1に対して給電を行って、磁流アンテナとして利用することができる。
【0052】
このような構成によれば、携帯電話装置1は、開状態から閉状態に遷移する場合において、最低一つのスリットを磁流アンテナとして動作させることができ、通信を切断させることなく動作させることができる。
【0053】
<第4実施例>
また、第1導電部24又は第2導電部37は、基準電位に接続されている。また、第1導電部24及び第2導電部37は、連結部4を介して高周波的に接続されており、逆Fアンテナとして動作する。
【0054】
具体的には、携帯電話装置1は、図10に示すように、導通線aにより第1導電部24と第2導電部37を導通させて、一方の導電部(本実施例においては、第2導電部37)を基準電位(GND)に接続し、他方の導電部(本実施例においては、第1導電部24)に給電部38を接続することにより、逆F型アンテナとして動作をさせることができる。
【0055】
また、逆Fアンテナは、いわゆる電流アンテナとして動作する。ここで、逆Fアンテナと、スリットアンテナ(磁流アンテナ)とは、偏波面が互いに直交するため、高いアイソレーションを図ることができ、低相関となる。よって、携帯電話装置1は、逆Fアンテナとスリットアンテナを同時に動作させることができる。
【0056】
また、携帯電話装置1は、逆Fアンテナのエレメントの長さを調整することにより、スリットアンテナと同一の周波数帯で通信を行うことができるので、逆Fアンテナとスリットアンテナを併用して、MIMOやダイバーシティアンテナを実現することができる。
【0057】
<第5実施例>
携帯電話装置1は、図11に示すように、第1導電部24及び第2導電部37に複数のスリットを形成する構成でも良い。なお、図11では、第1導電部24には、4つのスリット(スリットA1、スリットA2、スリットA3及びスリットA4)を構成し、第2導電部37にも、4つのスリット(スリットB1、スリットB2、スリットB3及びスリットB4)を構成するように示したが、これに限られない。
【0058】
このような構成の場合、携帯電話装置1は、開状態においては、図11(a)に示すように、8つのスリットにそれぞれ給電を行うことにより、8つの磁流アンテナを構成することができる。また、携帯電話装置1は、閉状態においては、図11(b)に示すように、積層方向でそれぞれ対向する、スリットA1又はスリットB4、スリットA2又はスリットB3、スリットA3又はスリットB2、スリットA4又はスリットB1に給電することにより、4つの磁流アンテナを構成することができる。
【0059】
したがって、携帯電話装置1は、開状態及び閉状態のいずれの状態においても、電波の放射及び吸収面が遮られないので、干渉が生じ難く、複数の磁流アンテナを同時に利用することができ、MIMOやダイバーシティアンテナを実現することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 携帯電話装置
2 表示部側筐体
3 操作部側筐体
4 連結部
24 第1導電部
37 第2導電部
38 給電部
41 回転軸
42 第3導電部
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナを有し外部機器と通信を行う携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器は、小型化・薄型化が進んでおり、また、様々な構成のアンテナが内蔵されている。
例えば、特許文献1では、第1筐体内に配置された第1導電部に切欠部を形成し、当該切欠部に給電することにより、切欠部がスロットアンテナとして動作する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−167420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような携帯電子機器では、導電部を利用したさらなるアンテナ技術が求められている。
【0005】
本発明は、小型化・薄型化の要請に応えつつ、導電部を利用した新たな構成のアンテナを有する携帯電子機器を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る携帯電子機器は、上記課題を解決するために、第1導電部を有する第1筐体と、第2導電部を有する第2筐体と、第3導電部を有すると共に、前記第1筐体上に前記第2筐体を積層配置させた閉状態と、当該閉状態から前記第2筐体を前記第1筐体に対して積層方向に沿った軸を中心として所定の角度回転した開状態とに遷移可能なように前記第1筐体と前記第2筐体とを連結する連結部と、給電部とを備え、前記開状態において、前記第1導電部と前記第2導電部は、前記第3導電部を介して電気的に接続され、前記第1導電部と前記第2導電部と前記第3導電部とにより三方を囲まれて形成される対向領域は、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作する構成である。
【0007】
また、携帯電子機器では、前記第3導電部は、前記第1筐体及び前記第2筐体を固定する板金部材により構成されており、前記開状態において、前記第1導電部と前記第2導電部は、前記板金部材を介して電気的に接続され、前記対向領域は、前記第1導電部と前記第2導電部と前記板金部材により三方が囲まれて形成される領域である構成でも良い。
【0008】
また、携帯電子機器では、前記第1導電部の一方端側と、当該一方端側に対向する前記板金部材の一方端側とは、導電性の第1接続部材により電気的に接続されており、前記第2導電部の一方端側と、当該一方端側に対向する前記板金部材の他方端側とは、導電性の第2接続部材により電気的に接続されており、前記開状態において、前記第1導電部の一方端側と、前記板金部材の一方端側と、前記第1接続部材とにより三方を囲われて形成される第1対向領域及び第2対向領域は、それぞれ前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、前記第2導電部の一方端側と、前記板金部材の他方端側と、前記第2接続部材とにより三方を囲われて形成される第3対向領域及び第4対向領域は、それぞれ前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、前記閉状態において、前記第1対向領域と前記第4対向領域は、積層方向において対向し、前記第1対向領域又は前記第4対向領域のいずれか一方は、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、前記第2対向領域と前記第3対向領域は、積層方向において対向し、前記第2対向領域又は前記第3対向領域のいずれか一方は、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作する構成でも良い。
【0009】
また、携帯電子機器では、前記開状態と前記閉状態との間の回転状態において、積層方向で対向領域が塞がれない、前記第1対向領域及び前記第3対向領域、又は前記第2対向領域及び前記第4対向領域は、前記給電部により給電されてスリット状の磁流アンテナとして動作し、積層方向で対向領域の一部が塞がれることにより、前記第1対向領域及び前記第3対向領域、又は前記第2対向領域及び前記第4対向領域によって形成される領域は、前記給電部により給電されてスロット状の磁流アンテナとして動作する構成でも良い。
【0010】
また、携帯電子機器では、前記第2導電部は、長手方向において左右対称になるように所定形状の第1切欠部及び第2切欠部が形成され、前記第1切欠部及び前記第2切欠部を分断するように前記板金部材が配置されて、第1スリット、第2スリット、第3スリット及び第4スリットが形成され、前記開状態から、前記開状態と前記閉状態との間の中間状態に遷移する過程において、積層方向で塞がれていない前記第3スリット又は前記第4スリットは、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、前記中間状態から前記閉状態に遷移する過程において、積層方向で塞がれていない前記第1スリット又は前記第2スリットは、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作する構成でも良い。
【0011】
また、携帯電子機器では、前記第1導電部又は前記第2導電部は、基準電位に接続されており、前記第1導電部及び前記第2導電部は、前記連結部を介して高周波的に接続されており、逆Fアンテナとして動作する構成でも良い。
【0012】
また、携帯電子機器では、前記第1導電部と前記第2導電部と前記第3導電部とにより三方を囲まれて形成される複数の対向領域は、各辺の長さが同じ長さに形成されており、前記給電部により給電されて、同一の共振周波数帯で送受信を行う磁流アンテナとして動作する構成でも良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小型化・薄型化の要請に応えつつ、導電部を利用した新たな構成のアンテナを有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】開状態における携帯電話装置の外観図を示す。
【図2】時計周り方向に90度回転させたときの携帯電話装置の外観図を示す。
【図3】閉状態における携帯電話装置の外観図を示す。
【図4】携帯電話装置の構成を模式的に示す図である(第1実施例)。
【図5】携帯電話装置の構成を模式的に示す図である(第2実施例)。
【図6】時計周り方向に90度回転させたときに形成される四角形状の領域をスロットアンテナとして利用する実施例についての説明に供する図である。
【図7】時計周り方向に90度回転させたときに形成される四角形状の領域をスロットアンテナとして利用する実施例についての説明に供する図である。
【図8】開状態における携帯電話装置の構成を模式的に示す図である(第3実施例)。
【図9】中間状態及び閉状態における携帯電話装置の構成を模式的に示す図である。
【図10】携帯電話装置の構成を模式的に示す図である(第4実施例)。
【図11】携帯電話装置の構成を模式的に示す図である(第5実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図3は、本発明に係る携帯電子機器の一例である携帯電話装置1の外観図を示す。また、本実施の形態では、携帯電話装置1について説明するが、本発明は携帯電話装置に限定されるものではなく、例えば、PHS(Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ポータブルナビゲーション装置、ノートパソコン等であっても良い。
【0016】
図1に示すように、携帯電話装置1は、第1筐体である表示部側筐体2と第2筐体である操作部側筐体3とを備える。本実施形態の携帯電話装置1は、いわゆる回転式(リボルバ式)の機構構造を有しており、操作部側筐体3と表示部側筐体2との重ね合せ方向に延びる回転軸41を中心に一方の筐体を回転させることが可能である。つまり、操作部側筐体3の上端部と表示部側筐体2の下端部とは、回転軸41を備える連結部4を介して、回転軸41を中心に回転可能に連結される。
【0017】
具体的には、図1は、開状態のときの携帯電話装置1の外観を示し、図2は、回転軸41に沿って時計周り方向に90度回転させたときの携帯電話装置1の外観を示し、図3は、閉状態のときの携帯電話装置1の外観を示す。なお、上述では、開状態から時計回り方向に回転させて閉状態に遷移する機構について説明したが、これに限らず、開状態から反時計回り方向に回転させて閉状態に遷移する機構であっても良いし、さらに、いずれか一方向又は双方向に360度回転する機構であっても良い。
【0018】
表示部側筐体2は、前面側を形成するフロントケース21及び背面側を形成するリアケース(図示せず)により構成される。また、表示部側筐体2は、フロントケース21側に、各種情報を表示するための表示部22と、通話の相手側の音声を出力するレシーバとしての音声出力部23とが露出するように配置されて構成される。
【0019】
また、操作部側筐体3は、前面側を形成するフロントケース31及び背面側を形成するリアケース(図示せず)により構成される。また、操作部側筐体3は、フロントケース31側に、操作キー群32と、使用者が通話時に発した音声が入力されるマイクとしての音声入力部12とがそれぞれ露出するように構成される。
【0020】
操作キー群32は、各種設定や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作キー34と、電話番号の数字やメール等の文字等を入力するための入力操作キー35と、各種操作における決定や上下左右方向のスクロール等を行う操作部材としての決定操作キー36とにより構成される。
【0021】
また、操作キー群32を構成する各キーが押下されると、表示部側筐体2と操作部側筐体3の開閉状態や各種モード、又は起動されているアプリケーション等の種類に応じて、キーアサインテーブルが適宜参照され、当該キーアサインテーブルにしたがった機能が実行される。
【0022】
音声入力部33は、操作部側筐体3の長手方向における連結部4側と反対の外端部側に配置される。つまり、音声入力部33は、携帯電話装置1の開状態において一方の外端部側に配置される。
【0023】
このように構成される携帯電話装置1は、導電部を利用して複数のアンテナを構成することが可能である。このようなアンテナは、例えば、複数アンテナによる同一周波数同時空間多重化伝送(MIMO、Multi Input Multi Output)や、ダイバーシティアンテナとして利用することができる。以下に、具体的な構成について説明する。
【0024】
<第1実施例>
携帯電話装置1は、図4に示すように、表示部側筐体2と、操作部側筐体3と、連結部4と、給電部38とを備える。
表示部側筐体2は、第1導電部24を有する。また、操作部側筐体3は、第2導電部37を有する。また、第1導電部24及び第2導電部37は、回路基板の基準電位部や、基準電位用の板金が相当する。また、本実施例では、給電部38は、第2導電部37が形成される回路基板上に配置されるものとして説明するが、これに限られない。
【0025】
連結部4は、第3導電部42を有すると共に、表示部側筐体2上に操作部側筐体3を積層配置させた閉状態と、当該閉状態から操作部側筐体3を表示部側筐体2に対して積層方向に沿った回転軸41を中心として所定の角度回転した開状態とに遷移可能なように表示部側筐体2と操作部側筐体3とを連結する。
【0026】
開状態において、第1導電部24と第2導電部37は、第3導電部42を介して電気的に接続される。また、第1導電部24と第2導電部37と第3導電部42とにより三方を囲まれて形成される対向領域(図4中においては、領域A及び領域B)は、給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。
【0027】
詳細には、第1導電部24と第2導電部37が対向するそれぞれの側面は、スリットの一部(図4中においては、「a」で示す)を構成する。また、第1導電部24と第2導電部37とに高周波的に接続される第3導電部42は、スリットの一部(図4中においては、「b」で示す)を構成する。このように構成されるスリットは、給電部38により給電されることにより、磁流アンテナとして機能する。
【0028】
このようにして、携帯電話装置1は、開状態において、連結部4、第1導電部24及び第2導電部37により、磁流アンテナを形成することができる。特に、積層方向で電波の放射及び吸収面が遮られない構造であるので、アンテナ間の干渉が生じ難い。
【0029】
また、磁流アンテナは、スリットの長手方向の長さ(図4中の「a」の長さ)によって、通信できる周波数が決定される。具体的には、スリットの長手方向の長さは、送受信を行う高周波信号の周波数fに対応する波長λに対して、nλ/2(但し、n=1、2、3・・・)により決定される。携帯電話装置1では、スリットの長手方向の長さを適宜調節することにより、目的とする周波数の高周波信号による通信を行うことができる。
【0030】
また、第1導電部24と第2導電部37と第3導電部42とにより三方を囲まれて形成される複数の対向領域は、スリットの長手方向における長さが同じ長さに形成されていても良い。
【0031】
このように構成することにより、携帯電話装置1は、各スリットを同一の共振周波数帯で送受信を行う磁流アンテナとして動作させることができ、MIMOやダイバーシティアンテナを実現することができる。
【0032】
<第2実施例>
また、第3導電部42は、表示部側筐体2及び操作部側筐体3を固定する金属製プレート(板金部材)により構成される構成でも良い。このような構成によれば、開状態において、第1導電部24と第2導電部37は、金属製プレート(第3導電部42)を介して電気的に接続される。そして、第1導電部24と第2導電部37と金属製プレート(第3導電部42)により三方が囲まれて対向領域が形成される。
【0033】
具体的には、金属製プレートは、表示部側筐体2と操作部側筐体3を接合する部材としての役割も果たしており、また、第1導電部24と第2導電部37と共にスリットを構成する。このスリット部分は、給電部38により給電されることにより、スリットアンテナ(磁流アンテナ)として機能する。
【0034】
また、第1導電部24の一方端側と、当該一方端側に対向する金属製プレート(第3導電部42)の一方端側とは、図5に示すように、導電性の第1接続部材43により電気的に接続されている。さらに、第2導電部37の一方端側と、当該一方端側に対向する金属製プレート(第3導電部42)の他方端側とは、導電性の第2接続部材44により電気的に接続されている。第1接続部材43及び第2接続部材44は、例えば、回路基板の基準電位パターンにおいて連結部4側に突出した部分である。第1接続部材43及び第2接続部材44は、板金等の金属部材であっても良い。
【0035】
ここで、開状態における携帯電話装置1の構成について、図5(a)を参照しながら以下に説明する。
第1導電部24の一方端側と、金属製プレートの一方端側と、第1接続部材43とにより三方を囲われて形成される第1対向領域(図5(a)中のスリットA)及び第2対向領域(図5(a)中のスリットB)は、それぞれ給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。また、第2導電部37の一方端側と、金属製プレートの他方端側と、第2接続部材44とにより三方を囲われて形成される第3対向領域(図5(a)中のスリットC)及び第4対向領域(図5(a)中のスリットD)は、それぞれ給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。
【0036】
このようにして、携帯電話装置1では、開状態において、スリットA、スリットB、スリットC及びスリットDは、電波の放射及び吸収面が遮られないので、磁流アンテナとして動作させた場合には、干渉が生じ難く、好適なアンテナとして利用することができる。
【0037】
つぎに、閉状態における携帯電話装置1の構成について、図5(b)を参照しながら以下に説明する。なお、図5(b)は、説明の便宜上、表示部側筐体2と操作部側筐体3を分離して示している。
【0038】
第1対向領域(図5(b)中のスリットA)と第4対向領域(図5(b)中のスリットD)は、積層方向において対向する。そして、第1対向領域又は第4対向領域のいずれか一方は、給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。
【0039】
また、第2対向領域(図5(b)中のスリットB)と第3対向領域(図5(b)中のスリットC)は、積層方向において対向する。そして、第2対向領域又は第3対向領域のいずれか一方は、給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。
【0040】
このようにして、携帯電話装置1は、閉状態において、スリットAとスリットDが積層方向で対向し、また、スリットBとスリットCが積層方向で対向する。よって、携帯電話装置1は、スリットA又はスリットDの一方に対して給電部38により給電することにより、磁流アンテナを構成し、かつ、スリットB又はスリットCの一方に対して給電部38により給電することにより、磁流アンテナを構成することができ、電波の放射及び吸収面が遮られないので、干渉が生じ難く、好適なアンテナとして利用することができる。
【0041】
また、携帯電話装置1では、開状態と閉状態の中間となる回転状態において、積層方向で対向領域が塞がれない領域(第1対向領域(スリットA)及び第3対向領域(スリットC)、又は第2対向領域(スリットB)及び第4対向領域(スリットD))は、給電部38により給電されてスリット状の磁流アンテナとして動作する。また、携帯電話装置1では、積層方向で対向領域の一部が塞がれることにより、第1対向領域(スリットA)及び第3対向領域(スリットC)、又は第2対向領域(スリットB)及び第4対向領域(スリットD)によって形成される領域は、給電部38により給電されてスロット状の磁流アンテナとして動作する。
【0042】
本実施形態において、開状態と閉状態の中間となる回転状態とは、図6に示すように、携帯電話装置1を開状態から回転軸41に沿って、90度回転させた状態、又は、携帯電話装置1を閉状態から回転軸41に沿って、90度回転させた状態のことである。
【0043】
また、携帯電話装置1は、開状態から90度回転させる間において、スリットAとスリットCは、積層方向で電波の放射及び吸収面が遮られないので、常に磁流アンテナの性能を好適に維持することができる。
【0044】
また、携帯電話装置1は、開状態と閉状態の中間となる回転状態において、スリットBとスリットDが垂直方向で重なる。これを、平面上から眺めると、図7に示すように、スリットBとスリットDにより、閉じられた四角形Eが形成される。この四角形Eに対して給電部38により給電すると、いわゆるスロットアンテナを構成することができる。
【0045】
したがって、携帯電話装置1は、開状態と閉状態の中間となる回転状態において、三方向が囲まれた二つのスリットアンテナと、四方向が囲まれた一つのスロットアンテナを構成することができる。なお、携帯電話装置1は、開状態と閉状態の中間となる回転状態において、四方向が囲まれた領域をスロットアンテナとして動作させるために、スリットBとスリットDがスロットアンテナを構成できるくらい近接するように設計することが好ましい。
【0046】
<第3実施例>
また、第2導電部37は、図8に示すように、長手方向において左右対称になるように所定形状の第1切欠部39及び第2切欠部40が形成され、第1切欠部39及び第2切欠部40を分断するように金属製プレート(第3導電部42)が配置されて、第1スリットA1、第2スリットA2、第3スリットA3及び第4スリットA4が形成される。
【0047】
開状態から閉状態の中間状態に遷移する過程において、積層方向で塞がれていない第3スリットA3又は第4スリットA4は、給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。なお、本実施形態において、中間状態とは、携帯電話装置1を開状態から回転軸41に沿って、90度回転させた状態のことである。
【0048】
これは、携帯電話装置1を開状態から時計方向に回転させた場合には、第3スリットA3が、積層方向で電波の放射及び吸収面が遮られず、一方、携帯電話装置1を開状態から反時計方向に回転させた場合には、第4スリットA4が、積層方向で電波の放射及び吸収面が遮られないことを意味している。図9(a)では、前者の場合を示している。
【0049】
また、中間状態から閉状態に遷移する過程において、積層方向で塞がれていない第1スリットA1又は第2スリットA2は、給電部38により給電されて磁流アンテナとして動作する。なお、中間状態から閉状態に遷移するとは、携帯電話装置1を90度回転させた状態から、回転軸41に沿って回転させて閉状態に遷移することである。図9(b)では、前者の場合を示している。
【0050】
これは、携帯電話装置1を中間状態から時計方向に回転させた場合には、第1スリットA1が、積層方向で電波の放射及び吸収面が遮られず、一方、携帯電話装置1を中間状態から反時計方向に回転させた場合には、第2スリットA2が、積層方向で電波の放射及び吸収面が遮られないことを意味している。
【0051】
携帯電話装置1は、例えば、開状態から回転軸41に沿って、時計方向に回転させる場合を想定すると、開状態から中間状態までは、給電部38により第3スリットA3に対して給電を行って、磁流アンテナとして利用し、中間状態から閉状態までは、給電対象を変更し、給電部38により第1スリットA1に対して給電を行って、磁流アンテナとして利用することができる。
【0052】
このような構成によれば、携帯電話装置1は、開状態から閉状態に遷移する場合において、最低一つのスリットを磁流アンテナとして動作させることができ、通信を切断させることなく動作させることができる。
【0053】
<第4実施例>
また、第1導電部24又は第2導電部37は、基準電位に接続されている。また、第1導電部24及び第2導電部37は、連結部4を介して高周波的に接続されており、逆Fアンテナとして動作する。
【0054】
具体的には、携帯電話装置1は、図10に示すように、導通線aにより第1導電部24と第2導電部37を導通させて、一方の導電部(本実施例においては、第2導電部37)を基準電位(GND)に接続し、他方の導電部(本実施例においては、第1導電部24)に給電部38を接続することにより、逆F型アンテナとして動作をさせることができる。
【0055】
また、逆Fアンテナは、いわゆる電流アンテナとして動作する。ここで、逆Fアンテナと、スリットアンテナ(磁流アンテナ)とは、偏波面が互いに直交するため、高いアイソレーションを図ることができ、低相関となる。よって、携帯電話装置1は、逆Fアンテナとスリットアンテナを同時に動作させることができる。
【0056】
また、携帯電話装置1は、逆Fアンテナのエレメントの長さを調整することにより、スリットアンテナと同一の周波数帯で通信を行うことができるので、逆Fアンテナとスリットアンテナを併用して、MIMOやダイバーシティアンテナを実現することができる。
【0057】
<第5実施例>
携帯電話装置1は、図11に示すように、第1導電部24及び第2導電部37に複数のスリットを形成する構成でも良い。なお、図11では、第1導電部24には、4つのスリット(スリットA1、スリットA2、スリットA3及びスリットA4)を構成し、第2導電部37にも、4つのスリット(スリットB1、スリットB2、スリットB3及びスリットB4)を構成するように示したが、これに限られない。
【0058】
このような構成の場合、携帯電話装置1は、開状態においては、図11(a)に示すように、8つのスリットにそれぞれ給電を行うことにより、8つの磁流アンテナを構成することができる。また、携帯電話装置1は、閉状態においては、図11(b)に示すように、積層方向でそれぞれ対向する、スリットA1又はスリットB4、スリットA2又はスリットB3、スリットA3又はスリットB2、スリットA4又はスリットB1に給電することにより、4つの磁流アンテナを構成することができる。
【0059】
したがって、携帯電話装置1は、開状態及び閉状態のいずれの状態においても、電波の放射及び吸収面が遮られないので、干渉が生じ難く、複数の磁流アンテナを同時に利用することができ、MIMOやダイバーシティアンテナを実現することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 携帯電話装置
2 表示部側筐体
3 操作部側筐体
4 連結部
24 第1導電部
37 第2導電部
38 給電部
41 回転軸
42 第3導電部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電部を有する第1筐体と、
第2導電部を有する第2筐体と、
第3導電部を有すると共に、前記第1筐体上に前記第2筐体を積層配置させた閉状態と、当該閉状態から前記第2筐体を前記第1筐体に対して積層方向に沿った軸を中心として所定の角度回転した開状態とに遷移可能なように前記第1筐体と前記第2筐体とを連結する連結部と、
給電部とを備え、
前記開状態において、
前記第1導電部と前記第2導電部は、前記第3導電部を介して電気的に接続され、
前記第1導電部と前記第2導電部と前記第3導電部とにより三方を囲まれて形成される対向領域は、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作する携帯電子機器。
【請求項2】
前記第3導電部は、前記第1筐体及び前記第2筐体を固定する板金部材により構成されており、
前記開状態において、
前記第1導電部と前記第2導電部は、前記板金部材を介して電気的に接続され、
前記対向領域は、前記第1導電部と前記第2導電部と前記板金部材により三方が囲まれて形成される領域である請求項1記載の携帯電子機器。
【請求項3】
前記第1導電部の一方端側と、当該一方端側に対向する前記板金部材の一方端側とは、導電性の第1接続部材により電気的に接続されており、
前記第2導電部の一方端側と、当該一方端側に対向する前記板金部材の他方端側とは、導電性の第2接続部材により電気的に接続されており、
前記開状態において、
前記第1導電部の一方端側と、前記板金部材の一方端側と、前記第1接続部材とにより三方を囲われて形成される第1対向領域及び第2対向領域は、それぞれ前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、
前記第2導電部の一方端側と、前記板金部材の他方端側と、前記第2接続部材とにより三方を囲われて形成される第3対向領域及び第4対向領域は、それぞれ前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、
前記閉状態において、
前記第1対向領域と前記第4対向領域は、積層方向において対向し、
前記第1対向領域又は前記第4対向領域のいずれか一方は、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、
前記第2対向領域と前記第3対向領域は、積層方向において対向し、
前記第2対向領域又は前記第3対向領域のいずれか一方は、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作する請求項2記載の携帯電子機器。
【請求項4】
前記開状態と前記閉状態との間の回転状態において、
積層方向で対向領域が塞がれない、前記第1対向領域及び前記第3対向領域、又は前記第2対向領域及び前記第4対向領域は、前記給電部により給電されてスリット状の磁流アンテナとして動作し、
積層方向で対向領域の一部が塞がれることにより、前記第1対向領域及び前記第3対向領域、又は前記第2対向領域及び前記第4対向領域によって形成される領域は、前記給電部により給電されてスロット状の磁流アンテナとして動作する請求項3記載の携帯電子機器。
【請求項5】
前記第2導電部は、長手方向において左右対称になるように所定形状の第1切欠部及び第2切欠部が形成され、前記第1切欠部及び前記第2切欠部を分断するように前記板金部材が配置されて、第1スリット、第2スリット、第3スリット及び第4スリットが形成され、
前記開状態から、前記開状態と前記閉状態との間の中間状態に遷移する過程において、
積層方向で塞がれていない前記第3スリット又は前記第4スリットは、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、
前記中間状態から前記閉状態に遷移する過程において、
積層方向で塞がれていない前記第1スリット又は前記第2スリットは、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作する請求項3記載の携帯電子機器。
【請求項6】
前記第1導電部又は前記第2導電部は、基準電位に接続されており、
前記第1導電部及び前記第2導電部は、前記連結部を介して高周波的に接続されており、逆Fアンテナとして動作する請求項1記載の携帯電子機器。
【請求項7】
前記第1導電部と前記第2導電部と前記第3導電部とにより三方を囲まれて形成される複数の対向領域は、各辺の長さが同じ長さに形成されており、前記給電部により給電されて、同一の共振周波数帯で送受信を行う磁流アンテナとして動作する請求項1記載の携帯電子機器。
【請求項1】
第1導電部を有する第1筐体と、
第2導電部を有する第2筐体と、
第3導電部を有すると共に、前記第1筐体上に前記第2筐体を積層配置させた閉状態と、当該閉状態から前記第2筐体を前記第1筐体に対して積層方向に沿った軸を中心として所定の角度回転した開状態とに遷移可能なように前記第1筐体と前記第2筐体とを連結する連結部と、
給電部とを備え、
前記開状態において、
前記第1導電部と前記第2導電部は、前記第3導電部を介して電気的に接続され、
前記第1導電部と前記第2導電部と前記第3導電部とにより三方を囲まれて形成される対向領域は、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作する携帯電子機器。
【請求項2】
前記第3導電部は、前記第1筐体及び前記第2筐体を固定する板金部材により構成されており、
前記開状態において、
前記第1導電部と前記第2導電部は、前記板金部材を介して電気的に接続され、
前記対向領域は、前記第1導電部と前記第2導電部と前記板金部材により三方が囲まれて形成される領域である請求項1記載の携帯電子機器。
【請求項3】
前記第1導電部の一方端側と、当該一方端側に対向する前記板金部材の一方端側とは、導電性の第1接続部材により電気的に接続されており、
前記第2導電部の一方端側と、当該一方端側に対向する前記板金部材の他方端側とは、導電性の第2接続部材により電気的に接続されており、
前記開状態において、
前記第1導電部の一方端側と、前記板金部材の一方端側と、前記第1接続部材とにより三方を囲われて形成される第1対向領域及び第2対向領域は、それぞれ前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、
前記第2導電部の一方端側と、前記板金部材の他方端側と、前記第2接続部材とにより三方を囲われて形成される第3対向領域及び第4対向領域は、それぞれ前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、
前記閉状態において、
前記第1対向領域と前記第4対向領域は、積層方向において対向し、
前記第1対向領域又は前記第4対向領域のいずれか一方は、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、
前記第2対向領域と前記第3対向領域は、積層方向において対向し、
前記第2対向領域又は前記第3対向領域のいずれか一方は、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作する請求項2記載の携帯電子機器。
【請求項4】
前記開状態と前記閉状態との間の回転状態において、
積層方向で対向領域が塞がれない、前記第1対向領域及び前記第3対向領域、又は前記第2対向領域及び前記第4対向領域は、前記給電部により給電されてスリット状の磁流アンテナとして動作し、
積層方向で対向領域の一部が塞がれることにより、前記第1対向領域及び前記第3対向領域、又は前記第2対向領域及び前記第4対向領域によって形成される領域は、前記給電部により給電されてスロット状の磁流アンテナとして動作する請求項3記載の携帯電子機器。
【請求項5】
前記第2導電部は、長手方向において左右対称になるように所定形状の第1切欠部及び第2切欠部が形成され、前記第1切欠部及び前記第2切欠部を分断するように前記板金部材が配置されて、第1スリット、第2スリット、第3スリット及び第4スリットが形成され、
前記開状態から、前記開状態と前記閉状態との間の中間状態に遷移する過程において、
積層方向で塞がれていない前記第3スリット又は前記第4スリットは、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作し、
前記中間状態から前記閉状態に遷移する過程において、
積層方向で塞がれていない前記第1スリット又は前記第2スリットは、前記給電部により給電されて磁流アンテナとして動作する請求項3記載の携帯電子機器。
【請求項6】
前記第1導電部又は前記第2導電部は、基準電位に接続されており、
前記第1導電部及び前記第2導電部は、前記連結部を介して高周波的に接続されており、逆Fアンテナとして動作する請求項1記載の携帯電子機器。
【請求項7】
前記第1導電部と前記第2導電部と前記第3導電部とにより三方を囲まれて形成される複数の対向領域は、各辺の長さが同じ長さに形成されており、前記給電部により給電されて、同一の共振周波数帯で送受信を行う磁流アンテナとして動作する請求項1記載の携帯電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−9214(P2013−9214A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141397(P2011−141397)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]